IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本バイリーン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図1
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図2
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図3
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図4
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図5
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図6
  • 特開-二酸化炭素吸収装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074214
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015664
(22)【出願日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022185034
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022195955
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 博之
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC02
4B029DB19
(57)【要約】
【課題】気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる二酸化炭素吸収装置において、二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置を提供すること。
【解決手段】本発明の二酸化炭素吸収装置は、藻類が培養された担体を支持する支持体を備える藻類担持部材を、水槽内に溜めた水中に浸漬でき、そして、当該水中から引き上げる可動部材を備えている。可動部材により引き上げられた藻類担持部材により気体中の二酸化炭素を水中の藻類に効率よく供給でき、この藻類により気体中の二酸化炭素を高効率で吸収できる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる、二酸化炭素吸収装置であって、
内部に水を溜め前記水中で藻類を培養できる水槽と、
前記藻類を担持可能な担体と、前記担体を支持するための支持体を有しており、前記支持体に前記担体が支持されている藻類担持部材と、
前記藻類担持部材を前記水槽内に溜めた水中に浸漬でき、また、前記水槽内に溜めた水中から前記藻類担持部材を引き上げることができる、可動部材と、
二酸化炭素を含む気体を、前記水槽内に溜めた水中から引き上げられた前記藻類担持部材へ供給する気体供給部と、
気体を排出する気体排出部を備える、
二酸化炭素吸収装置。
【請求項2】
前記担体がプリーツ形状を有する、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項3】
藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源を有する、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項4】
藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源が配置されている、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項5】
内部に光源を有する筒状または枠状の支持体に、藻類を担持可能な担体が支持されている、藻類担持部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる二酸化炭素吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大気中に含まれる二酸化炭素濃度の増大による地球温暖化が問題となっており、二酸化炭素濃度の増大を抑制する手段の一つとして、気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる方法が検討されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2018/0201887号明細書(特許文献1)には、藻類が担持され培養されている帯状の繊維シートの両端同士をつないでなる担体をモーターとローラーで動かすことによって、当該担体の一部分を供給した二酸化炭素濃度の濃い気体に触れさせると共に光を当てる、藻類培養方法が開示されている。なお、特許文献1の発明では、このようにして藻類の培養が行われることで、気体中の二酸化炭素が藻類に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0201887号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法を用いて気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる場合、繊維シートの一部分が水槽内に溜まっている水中に浸漬されており、繊維シートに培養されている藻類の全てが二酸化炭素と触れた状態になるものではなかった。そのため、担体に培養されている藻類による二酸化炭素の吸収効率が悪いものであった。
【0006】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる二酸化炭素吸収装置において、二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させる、二酸化炭素吸収装置であって、内部に水を溜め前記水中で藻類を培養できる水槽と、前記藻類を担持可能な担体と、前記担体を支持するための支持体を有しており、前記支持体に前記担体が支持されている藻類担持部材と、前記藻類担持部材を前記水槽内に溜めた水中に浸漬でき、また、前記水槽内に溜めた水中から前記藻類担持部材を引き上げることができる、可動部材と、二酸化炭素を含む気体を、前記水槽内に溜めた水中から引き上げられた前記藻類担持部材へ供給する気体供給部と、気体を排出する気体排出部を備える、二酸化炭素吸収装置。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記担体がプリーツ形状を有する、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源を有する、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。」である。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源が配置されている、請求項1に記載の二酸化炭素吸収装置。」である。
【0011】
本発明の請求項5にかかる発明は、「内部に光源を有する筒状または枠状の支持体に、藻類を担持可能な担体が支持されている、藻類担持部材。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1にかかる二酸化炭素吸収装置は、藻類が培養された担体を支持する支持体を備える藻類担持部材を、水槽内に溜めた水中に浸漬でき、そして、当該水中から引き上げる可動部材を備えている。
【0013】
可動部材により水中から引き上げられた藻類担持部材の全体が、二酸化炭素を含む気体と触れる。そして、藻類担持部材を構成する担体に含まれる水へ気体中の二酸化炭素が溶け込み、この水に溶け込んだ二酸化炭素を担体に担持され培養されている藻類が取り込む。そのため、担体に培養されている藻類の全てへ気体中に含まれた二酸化炭素を供給して、効率良く藻類に二酸化炭素を吸収させることができる。
【0014】
また、可動部材により藻類担持部材を水槽内に溜めた水中に浸漬されることで、担体に含まれる水に溶け込んだ二酸化炭素が、前記水槽内に溜めた水へ供給される。そのため、前記水槽内に溜めた水に培養されている藻類にも、気体中に含まれた二酸化炭素を効率良く供給でき、前記水槽内に溜めた水に培養されている藻類にも効率良く二酸化炭素を吸収させることができる。
【0015】
その結果、藻類がより多くの二酸化炭素と接触することができ、前記藻類により気体中の二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置である。
【0016】
本発明の請求項2にかかる二酸化炭素吸収装置は、藻類担持部材を構成する担体がプリーツ形状を有する。そのため、藻類担持部材が備える担体の表面積を大きくできる。このことから、より多くの藻類を担体が担持することができ、また、より多くの気体に含まれる二酸化炭素を藻類に吸収させることができる。よって、より気体に含まれる二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置である。
【0017】
本発明の請求項3にかかる二酸化炭素吸収装置は、藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源を有する。光源によって、筒状または枠状の支持体の内部から支持体に支持されている担体に担持された藻類全体へ向かい、効率良く光を照射できるため、藻類の光合成を促進してより多くの二酸化炭素を藻類に吸収させることができる。よって、より気体に含まれる二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置である。
【0018】
本発明の請求項4にかかる二酸化炭素吸収装置は、藻類担持部材が筒状または枠状の支持体に藻類を担持可能な担体を支持したものであり、前記藻類担持部材の内部に光源が配置されている。光源によって、筒状または枠状の支持体の内部から支持体に支持されている担体に担持された藻類全体へ向かい、効率良く光を照射できるため、藻類の光合成を促進してより多くの二酸化炭素を藻類に吸収させることができる。よって、より気体に含まれる二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置である。
【0019】
本発明の請求項5にかかる藻類担持部材は、内部に光源を有する筒状または枠状の支持体に、藻類を担持可能な担体が支持されている。この光源によって、筒状または枠状の支持体の内部から支持体に支持されている担体全体へ向かい、効率良く光を照射できるため、担体に培養される藻類の光合成を促進してより多くの二酸化炭素を藻類に吸収させることができる。
【0020】
そのため、本発明にかかる藻類担持部材によって、気体に含まれる二酸化炭素を高効率で吸収できる二酸化炭素吸収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の二酸化炭素吸収装置において、藻類担持部材が可動部材により水槽内に溜めた水中に浸漬されている態様の一例を示した断面図である。
図2】本発明の二酸化炭素吸収装置において、藻類担持部材が可動部材により水槽内に溜めた水中から引き上げられている態様の一例を示した断面図である。
図3】本発明の二酸化炭素吸収装置を構成する藻類担持部材の一例において、光源が筒状の支持体の内部に配置された藻類担持部材を上部から見た平面図である。
図4】本発明の二酸化炭素吸収装置を構成する藻類担持部材の別の一例において、筒状の支持体の外側に担体を有し、内側に光源が配置された藻類担持部材を上部から見た平面図である。
図5】本発明の二酸化炭素吸収装置を構成する藻類担持部材の別の一例において、2つの担体の外側を囲むように枠状の支持体を有し、光源を枠状の支持体の内部に有する藻類担持部材の、水平方向に切り取った断面図である。
図6】本発明の二酸化炭素吸収装置を構成する藻類担持部材の別の一例において、担体の外側を囲むように枠状の支持体を有する藻類担持部材を2つ有し、この2つの藻類担持部材の間に光源が配置された状態での、水平方向に切り取った断面図である。
図7】本発明の二酸化炭素吸収装置を構成する藻類担持部材の別の一例において、プリーツ形状を有する担体の外側を囲むように枠状の支持体を有する藻類担持部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の二酸化炭素吸収装置の実施に好適な形態例について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、この発明の理解が容易になる程度に、具体的な形状、配置関係など特定条件を例示する。
【0023】
この図1及び図2に示した二酸化炭素吸収装置(1)は、内部に水(2´)を溜め前記水中で藻類を培養できる水槽(2)と、前記藻類を担持可能な担体(3a)と、前記担体(3a)を支持するための支持体(3b)を有しており、前記支持体(3b)に前記担体(3a)が支持されている藻類担持部材(3)と、前記藻類担持部材(3)を前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬でき、また、前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中から前記藻類担持部材(3)を引き上げることができる、可動部材(4)と、二酸化炭素を含む気体を、前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中から引き上げられた前記藻類担持部材(3)へ供給する気体供給部(5)と、前記気体供給部(5)から供給された気体を排出する気体排出部(6)を備える。
【0024】
図1及び図2において、二酸化炭素を含む気体が気体供給部(5)から二酸化炭素吸収装置(1)に供給され、最終的に前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中から引き上げられた前記藻類担持部材(3)へ供給される。また、気体供給部(5)から供給された気体は、気体排出部(6)から排出する。図1及び図2に記載された矢印は、気体供給部(5)から二酸化炭素吸収装置(1)に供給される二酸化炭素を含む気体(7)、あるいは、気体排出部から排出される気体(8)を示している。
【0025】
本発明の二酸化炭素吸収装置(1)は、藻類が培養された担体(3a)と、前記担体を支持する支持体(3b)を備える藻類担持部材(3)を、水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬でき、そして、当該水中から引き上げる可動部材(4)を備えている。可動部材(4)により、水(2´)中から引き上げられた藻類担持部材(3)の全体が二酸化炭素を含む気体と触れる。そして、藻類担持部材(3)を構成する担体(3a)に含まれる水へ気体中の二酸化炭素が溶け込み、この水に溶け込んだ二酸化炭素を担体(3a)に担持されている藻類が取り込む。そのため、担体(3a)に培養されている藻類の全てへ気体中に含まれた二酸化炭素を供給して、効率良く藻類に二酸化炭素を吸収させることができる。また、可動部材(4)により、藻類担持部材(3)を水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬することで、担体(3a)に含まれる水に溶け込んだ二酸化炭素が、前記水槽(2)に溜めた水(2´)に供給される。そのため、前記水槽(2)に溜めた水(2´)に培養されている藻類にも、気体中に含まれた二酸化炭素を供給して、効率良く藻類に二酸化炭素を吸収させることができる。なお、図1においては、可動部材(4)により、藻類担持部材(3)が水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬されている。また、図2においては、可動部材(4)により、藻類担持部材(3)が、水槽(2)内に溜めた水(2´)中から引き上げられている。
【0026】
二酸化炭素吸収装置(1)を構成する藻類担持部材(3)の構成は、藻類が担持できるものであれば特に限定されないが、少なくとも藻類を担持するための担体(3a)と前記担体(3a)を支持するための支持体(3b)を有する。
【0027】
藻類担持部材(3)を構成する担体(3a)は、例えば、不織布、織物、編物、多孔性フィルムなどの多孔性を有するもの、あるいは、無孔フィルムなどの多孔性を有しないものなどであることができ、特に限定するものではないが、担体(3a)内部に藻類が担持でき、より多くの藻類が担持できることから担体(3a)は多孔性を有するものが好ましく、多孔性を有する担体(3a)の中でも空隙が均一でなく、担体(3a)内部に藻類が担持しやすい傾向があることから、不織布が好ましい。また、担体(3a)を構成する物質は藻類が担持できれば特に限定するものではなく、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの有機樹脂や金属、ガラスなどの無機成分であることができる。
【0028】
また、担体(3a)の構造については藻類が担持できれば特に限定するものではなく、例えば、シート状、シート状の担体(3a)が円筒状、棒状に巻き付けられた形状、あるいは、平板状であることができる。更に、担体(3a)の表面積を大きくとり、より多くの藻類を担体(3a)に担持できるよう、図3~7に示すように、担体(3a)がプリーツ形状を有するのが好ましい。なお、図3~4に示している藻類担持部材(3)を構成する担体(3а)の構造は、プリーツ形状を有し、かつ、円筒状であり、図5~7に示している藻類担持部材(3)を構成する担体(3а)の構造は、プリーツ形状を有し、かつ、平板状である。
【0029】
藻類担持部材(3)を構成する支持体(3b)の形状は、筒状(円筒状、角筒状)、棒状、球状、枠状など、種々の形状であることができるが、取り扱い性がよいこと、また、内部に後述の光源を有する、または配置することができることから、筒状など、内部が空洞の形状であるのが好ましい。なお、図1~4に示している藻類担持部材(3)を構成する支持体(3b)の形状は、円筒状であり、図5~7に示している支持体(3b)の形状は、担体(3a)を取り囲む枠状であり、藻類担持部材(3)の中で最も面積が大きい主面側から見た際に、つまり正面図は四角形となっている(図7参照)。
【0030】
また、藻類担持部材(3)を構成する支持体(3b)の構成材料は、担体(3a)を支持できる程度の強度を有していれば特に限定するものではないが、有機樹脂、木材、金属などであることができる。
【0031】
更に、支持体(3b)が筒状である場合、支持体(3b)はネット状であるなど多孔性であるのが好ましい。支持体(3b)が多孔性であることによって、通水性、通気性が向上し、効果的に担体(3a)が藻類を担持、又は効果的に二酸化炭素含有気体と担体(3a)が担持する水とが接触し、効果的に二酸化炭素を吸収することができる。また、後述のように支持体(3b)の内部に光源を有する、または配置した場合、支持体(3b)の外部に担体(3a)を有する場合であっても、支持体(3b)が多孔性であることによって透光し、担体(3a)に担持された藻類の光合成を促進することができる。
【0032】
更に、藻類担持部材(3)において、支持体(3b)が筒状の場合、担体(3a)は筒状の支持体(3b)の内側に有していても、外側に有していても、あるいは内側と外側の両方に有していてもよい。
【0033】
筒状の支持体(3b)の外側に担体(3a)を有している場合、筒状の支持体(3b)が担体(3a)を支持する態様としては、例えば、筒状の支持体(3b)の外壁面に担体(3a)を接着材など化学的に連結している態様、筒状の支持体(3b)の上端部及び/又は下端部に筒状の支持体(3b)から外側に出っ張ったフランジを備え、前記フランジと担体(3a)とが接着剤など化学的に連結されている態様、前記フランジに設けられたフックや剣山などの部材によって、担体(3a)が物理的に固定されている態様、であることができる。
【0034】
また、筒状の支持体(3b)の内側に担体(3a)を有している場合、筒状の支持体(3b)が担体(3a)を支持する態様としては、例えば、筒状の支持体(3b)の内壁面によって、担体(3a)の外側から締め付けて固定した態様、筒状の支持体(3b)の内壁面に担体(3a)を接着材など化学的に連結している態様、筒状の支持体(3b)が内部の空洞を閉鎖するように、天板および/または底板を有し、天板と底板の少なくとも一方と担体(3a)とが接着材など化学的に連結されている態様、あるいは前記天板と底板の少なくとも一方に設けられたフックや剣山などの部材によって、担体(3a)が物理的に固定されている態様であることができる。なお、これら担体の支持手段は併用することができる。
【0035】
なお、図3に示した藻類担持部材(3)においては、筒状の支持体(3b)の内側に担体(3a)を有しており、筒状の支持体(3b)の内壁面に、担体(3a)が接着材などで連結して支持されている。また、図4に示した藻類担持部材(3)においては、筒状の支持体(3b)の外側に担体(3a)を有しており、筒状の支持体(3b)の外壁面に、担体(3a)が接着材などで連結して支持されている。
【0036】
枠状の支持体(3b)を有している場合、枠状の支持体(3b)が担体(3a)を支持する態様としては、例えば、枠状の支持体(3b)の内壁面に担体(3a)を接着剤など化学的に連結している態様であることができる。なお、図5~7に示した藻類担持部材(3)においては、藻類担持部材(3)の中で最も面積が大きい主面側から見た際に四角形の枠状の支持体(3b)の内側にプリーツ形状を有する担体(3a)を有しており(図7参照)、枠状の支持体(3b)の内壁面に、担体(3a)が接着剤などで連結して支持されている。
【0037】
更に、図1、2に示した藻類担持部材(3)は、プリーツ形状を有する担体(3a)の上端部に天板、下端部に底板を有し、この天板と底板が藻類担持部材(3)に保形性を付与し、支持体としてはたらいている。このように、支持体は複数の部材から構成されていても良い。
【0038】
また、図4に示すように、筒状の支持体(3b)の外側に担体(3a)を有する場合、担体(3a)の外側に、筒状の支持体(3b)よりも外径の大きい第2支持体を備え、筒状の支持体(3b)と第2支持体とで担体(3a)を挟み込んで支持することもできる。この態様の場合、筒状の支持体(3b)の上端及び/又は下端から外側に伸びる天板及び/又は底板により、筒状の支持体(3b)と第2支持体とが連結していると、担体(3a)の保形性に優れている。
【0039】
更に、二酸化炭素吸収装置(1)において、藻類担持部材(3)は1つのみであっても、2つ以上であってもよい。藻類担持部材(3)を2つ以上有する場合、藻類担持部材(3)を構成する担体(3a)、支持体(3b)は、同じ材料や構造であっても、異なる材料や構造であってもよい。
【0040】
更に、藻類担持部材(3)における担体(3a)及び支持体(3b)は、図1~4、6に示すように、支持体(3b)1つあたり、1つの担体(3a)を有していてもよいし、図5に示すように、支持体(3b)1つあたり、2つの担体(3a)を有していてもよいし、支持体(3b)1つあたり、3つ以上の担体(3a)を有していてもよい。藻類担持部材(3)において、支持体(3b)1つあたり、2つ以上の担体(3a)を有する場合、担体(3a)の材料や構造は全て同じであっても、一部あるいはすべての材料や構造が異なっていてもよい。
【0041】
前記藻類担持部材(3)には、上述の通り少なくとも藻類を担持するための担体(3a)と前記担体(3a)を支持するための支持体(3b)を有する。担体(3a)、支持体(3b)の他には、担体(3a)に担持された藻類の光合成を促進するための光源(3c)を有している、あるいは、光源(3c)が配置されているのが好ましい。前記光源(3c)は、藻類担持部材(3)の支持体(3b)の内部、支持体(3b)の外部など、いずれの位置に有していても、あるいは配置されていてもよいが、光源(3c)から光が効率よく当たり、担体(3a)内部に担持された藻類の光合成が促進できるように、図3~5に示すように、光源(3c)が藻類担持部材(3)の支持体(3b)の内部(特に、図3~4に示すように藻類担持部材(3)の中心)に有する、または配置されている態様が好ましい。光源(3c)が藻類担持部材(3)の支持体(3b)の内部に有する、または配置されている態様の場合、光源(3c)は支持体(3b)の上部に位置してもよいし、下部に位置してもよいし、中央部に位置してもよいし、上部・中央部・下部を含む全体に有していてもよい。これらの中でも、光源(3c)が支持体(3b)の上部に位置していると、藻類担持部材(3)を水中に浸漬させた際に光源(3c)が濡れないことから光源(3c)が防水対応でなくてもよく、また、光源(3c)の故障リスクが小さいことから好ましい。また、光源(3c)は藻類担持部材(3)内に1つのみ有して、または配置されていてもよいし、2つ以上の光源(3c)を有して、または配置されていてもよい。さらに、この2つ以上の光源(3c)は、同じ種類の光源(3c)でも、異なる種類の光源(3c)でもよい。更に、「藻類担持部材に光源を有している」とは、光源(3c)が藻類担持部材(3)の担体(3a)、支持体(3b)のうち少なくともいずれか一方と一体化していることを意味し、「藻類担持部材に光源が配置されている」とは、光源が藻類担持部材の担体(3a)、支持体(3b)のいずれとも一体化しておらず、別の部材であることを意味する。
【0042】
図3に示すように、支持体(3b)の内側に担体(3a)を有する場合、光源は担体(3a)の内側に有し、あるいは配置され、担体(3a)全体に均一に光を照射できるのが好ましい。特に、図3のように、筒状の支持体(3b)の内側にプリーツ形状を有する担体(3a)を有する場合、藻類担持部材(3)を水槽に浸漬した際の水圧や、藻類担持部材(3)を水槽から引き上げ、二酸化炭素含有気体と接触させる際の風圧によって、担体(3a)は筒状支持体(3b)の内部方向へ圧縮され、隣接するプリーツが密着し、効果的に藻類を担持、又は効果的に二酸化炭素含有気体と担体(3a)が担持する水とが接触できない場合があるが、担体(3a)よりも内側に光源(3c)を有していると、あるいは配置されていると、光源(3c)が担体(3a)の内部方向への圧縮を抑制でき、プリーツ形状を維持して、効果的な藻類の担持、又は効果的な二酸化炭素含有気体と担体(3a)が担持する水との接触に寄与できる。また、光源(3c)としては、LEDや蛍光灯など、種々の光源を採用することができる。
【0043】
また、光源(3c)を有する態様は、例えば、光源(3c)とチェーンなどの紐状物を結合させ、藻類担持部材(3)の上端部に天板を設け、紐状物を前記天板に固定する態様、藻類担持部材(3)の上端部に天板を設け、天板に光源(3c)を直接取付ける態様、藻類担持部材(3)の下端部に底板を設け、底板に光源(3c)を直接取付ける態様、藻類担持部材(3)の担体(3a)あるいは支持体(3b)の内壁部または外壁部と、光源(3c)とを、接着材など化学的に連結し一体化している態様などであることができる。
【0044】
さらに、光源(3c)を配置する態様は、例えば、藻類担持部材(3)の上端部よりも上部に位置する後述する可動部材の固定部に前記紐状物を固定して、藻類担持部材(3)の内部に光源(3c)を紐状物で吊り下げる態様、藻類担持部材(3)の上端部よりも上部に位置する後述する可動部材の固定部に光源(3c)を直接取付ける態様、藻類担持部材(3)の下端部よりも下部に位置する後述する可動部材の固定部に光源(3c)を直接取付ける態様であることができる。なお、図3及び図4に示した藻類担持部材(3)においては、光源とチェーンなどの紐状物(図示せず)を結合させ、前記紐状物を藻類担持部材(3)の上端部よりも上部に位置する、可動部材の固定部(図示せず)に固定して、藻類担持部材(3)の内部に光源(3c)を紐状物で吊り下げており、光源(3c)が前記藻類担持部材(3)の内部に配置されている。図5に示した藻類担持部材(3)においては、光源(3c)とチェーンなどの紐状物(図示せず)を結合させ、前記紐状物を藻類担持部材(3)の上端部に位置し、支持体(3b)の天板に相当する箇所に固定して、藻類担持部材(3)の内部に光源(3c)を紐状物で吊り下げており、光源(3c)が、前記藻類担持部材(3)の支持体(3b)の内部に有する。前述の通り、図5とは異なり、光源(3c)は支持体(3b)の天板又は底板に相当する箇所に固定されていても良い。図6に示した藻類担持部材(3)においては、光源(3c)とチェーンなどの紐状物(図示せず)を結合させ、2つの藻類担持部材(3)の間に、藻類担持部材(3)の上端部よりも上部に位置する後述する可動部材の固定部に前記紐状物を固定して、藻類担持部材(3)の間に光源(3c)を紐状物で吊り下げ、配置されている。前述の通り、図6とは異なり、光源(3c)は可動部材の固定部に直接取付けられて固定されていても良い。
【0045】
本発明における可動部材(4)の構成については、前記藻類担持部材(3)を前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬でき、また、前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中から前記藻類担持部材(3)を引き上げることができれば特に限定するものではないが、例えば、図1及び2に示しているように、藻類担持部材(3)を固定する籠状の固定部(4a)、及び、藻類担持部材(3)を固定した固定部(4a)と連結された、チェーンなどの紐状物と前記紐状物の長さを調節する部材を有し、前記部材による前記紐状物の長さの調節で、前記藻類担持部材(3)を前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中に浸漬でき、また、前記水槽(2)内に溜めた水(2´)中から前記藻類担持部材(3)を引き上げることができる構成であることができる。なお、可動部材(4)の構成が上述の構成の場合、藻類担持部材(3)を固定部(4a)に固定する際に安定して固定できるように、また、藻類担持部材(3)を交換する際に簡単に藻類担持部材(3)を交換できるように、藻類担持部材(3)と固定部(4a)の少なくともいずれか一方に磁石を設け、他方に鉄などの磁性体を設けるのが好ましい。また、藻類担持部材(3)と固定部(4a)をねじやフックなど物理的に連結して固定しても良いし、接着剤など化学的に連結して固定してもよい。また、可動部材(4)を構成する固定部(4a)の構成材料は、藻類担持部材(3)を固定できる程度の強度を有していれば特に限定するものではないが、有機樹脂、木材、金属などであることができる。
【0046】
さらに、可動部材(4)内における気体の動きを制御し、藻類担持部材(3)を構成する担体(3a)に含まれる水へより多くの気体中に含まれた二酸化炭素に吸収させ、前記二酸化炭素を藻類に供給できるように、藻類担持部材(3)に含まれる可動部材(4)の固定部(4a)の一部あるいは全部を覆うように、覆い(図示せず)を有していてもよい。この覆いは担体(3a)と同様の素材、例えば、不織布、織物、編物、多孔性フィルムなどの多孔性を有するもの、あるいは、可動部材(4)の固定部(4a)の一部を覆いによって覆う場合、無孔フィルムなどの多孔性を有しないものなどであることができる。また、この覆いは藻類担持部材(3)の担体(3a)と同じ素材であっても、異なる素材であってもよい。例えば、覆いが藻類担持部材(3)の担体(3a)と異なる素材である場合、覆いにより気体を覆いの内部に滞留させ、藻類担持部材(3)を構成する担体(3a)に含まれる水へより多くの気体中に含まれた二酸化炭素に吸収させることを目的として、覆いに藻類担持部材(3)の担体(3a)を構成する素材よりも密度が高い素材であることができる。さらに、前記覆いを有する場合、覆いは可動部材(4)の固定部(4a)に固定するのが好ましい。覆いを可動部材(4)の固定部(4a)に固定する方法としては、例えば、覆いと可動部材(4)の固定部(4a)を接着材など化学的に連結し固定する方法、覆いと可動部材(4)の固定部(4a)に画鋲を刺して固定するなど、覆い、可動部材(4)の固定部(4a)以外の部材で物理的に固定する方法、可動部材(4)の固定部(4a)に設けられたフックや剣山などの部材によって、可動部材(4)の固定部(4a)に設けられたもので覆いを物理的に固定する方法、あるいは、覆いと可動部材(4)の固定部(4a)の少なくともいずれか一方に磁石を設け、他方に鉄などの磁性体を設け、磁力により覆いを固定する方法であることができる。なお、これら覆いを固定する方法は併用することができる。
【0047】
二酸化炭素吸収装置(1)を構成する水槽(2)は、水槽(2)内に溜まった水(2´)中で藻類が培養されている。水槽(2)内に溜まった水(2´)中で培養されている藻類は特に限定するものではないが、例えば、ユーグレナ(ミドリムシ)やクロレラ、スピルリナであることができる。
【0048】
また、水槽(2)には藻類担持部材(3)が浸漬できる程度の量の水で満たされていればよいが、藻類培養を促進するための栄養剤など、水(2´)以外のものが水槽(2)内に含まれていてもよい。
【0049】
以上、本発明の二酸化炭素吸収装置(1)の実施に好適な形態例について、図面を参照して説明した。本発明は、以上に述べた特定の例示条件のみに限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で任意好適な設計の変更または変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1:二酸化炭素吸収装置
2:水槽
2´:水槽内に溜まった水
3:藻類担持部材
3a:担体
3b:支持体
3c:光源
4:可動部材
4a:固定部
5:気体供給部
6:気体排出部
7:二酸化炭素を含む気体
8:気体排出部から排出される気体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7