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特開2024-74223均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074223
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065503
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202211446277.8
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522391372
【氏名又は名称】山東焦点福瑞達生物股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG FOCUSFREDA BIOTECH CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】イウ ヂィンマァォ
(72)【発明者】
【氏名】リウ レェィ
(72)【発明者】
【氏名】カァン チゥァンリィ
(72)【発明者】
【氏名】ユイ シゥイチィァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン ドゥチィァン
(72)【発明者】
【氏名】リィ チィン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ シゥアィ
(72)【発明者】
【氏名】シィ シィンシィン
(72)【発明者】
【氏名】リウ チィァン
(72)【発明者】
【氏名】タァン リィウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リィェン シァォヂィエ
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン メェィシィア
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA67
4C090BB62
4C090BB71
4C090BB84
4C090BB92
4C090BD34
4C090CA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応において塩を添加することを回避しつつ、生成物のグラフト率を高くし、製品が凝集する現象を効果的に回避する均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法を提供する。
【解決手段】容器に均一溶媒とヒアルロン酸ナトリウム固体を加えて、均一系に溶解するまで加熱したものに、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA)の水溶液を加え、次に塩基性触媒を加え、所定温度で撹拌してグラフト反応を行い、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドがヒアルロン酸ナトリウムのアルキルヒドロキシの酸素原子に結合されたグラフト生成物を取得する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に均一溶媒とヒアルロン酸ナトリウム固体を加えて、均一系に溶解するまで加熱したものに、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの水溶液を加え、次に塩基性触媒を加え、所定温度で撹拌してグラフト反応を行い、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドがヒアルロン酸ナトリウムのヒドロキシメチルの酸素原子上にグラフトされたグラフト生成物を取得するステップを含む、ことを特徴とする均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項2】
前記均一溶媒はHMF、DMF、エタノール、メタノール、酢酸、DMSOのうちの少なくとも1種又はこれらと水との混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項3】
前記均一溶媒はHMFとH2Oとの混合物HMF-H2Oである、ことを特徴とする請求項2に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項4】
前記HMF-H2OにおいてHMFは水の50体積%~80体積%である、ことを特徴とする請求項3に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸ナトリウム固体と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのモル比が1:0.5~10、好ましくは1:2である、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項6】
前記所定温度は40~80℃、反応時間は少なくとも0.5hである、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項7】
前記塩基性触媒はNaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、CH3COONa、CH3COOK、KHCO3、NaHCO3のうちの少なくとも1種を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項8】
グラフト反応完了後、反応系をアルコール沈殿し、沈殿物を含有する混合溶液Aを得て、分離した沈殿物に水を加えて十分に溶解させ、液体材料を得るステップと、
液体材料に1~5%の精製塩NaCl又はKCl溶液を加え、撹拌して十分に溶解し、液体材料のpH値を6.0~7.5に調整するステップと、
二次アルコール沈殿を行い、分離した沈殿に水を加えてさらに溶解し、さらにアルコール沈殿して沈殿を得るステップと、
沈殿に対してアルコール洗浄、脱水及び乾燥を行い、最終生成物を得るステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項9】
アルコール沈殿において、液体材料とエタノールとの体積比は1:1~10であり、沈殿物に水を加えて溶解させるときに、沈殿物と水の質量体積比は1:5~50である、ことを特徴とする請求項1に記載の均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造精製方法で製造され、構造式が以下に示される、ことを特徴とするヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン性ヒアルロン酸塩を生産する技術分野に関し、具体的には、均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン界面活性剤は非常に良い消毒殺菌、防食、帯電防止の性能を持っていて、また、乳化及び湿潤性能を持っていて、医学上の消毒殺菌に用いることができ、また防水剤としても有用であり、医薬、エネルギー、化学工業、食品、洗剤や印刷などの業界に広く利用されている。第四級アンモニウム塩は洗浄力は劣るが消毒殺菌力は強く、カチオン界面活性剤のほとんどは第四級アンモニウム塩であり、第四級アンモニウム塩は生産量が最も多く、用途が広い。
【0003】
ヒアルロン酸ナトリウムのカルボキシル官能基はマイナスに帯電し、人体の表面もマイナスに帯電しているので、ヒアルロン酸類製品は人体の表面の吸収効果が一般的には悪く、水で洗い流されやすく、製品の保湿効果に影響してしまう。ヒアルロン酸がカチオンを持っていると、皮膚表面への製品の付着性を大幅に向上させ、ヒアルロン酸の保湿性が悪いという欠点を改善し、それによって、効率的な保湿が可能で、人の皮膚表面に吸収されやすいスキンケア美容製品を開発することができる。カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムの合成は、ヒアルロン酸ナトリウムの乳化と湿潤機能を大幅に向上させることができ、医薬、美容、化粧品など多くの分野において応用が期待できる。
【0004】
従来技術では、ほとんどの特許は、ヒアルロン酸(塩)を水/エタノール及びその混合溶液で反応させることを採用しており、カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムの製造方法では、いずれも、ヒアルロン酸(塩)を水と有機溶媒の混合液を媒体としてカチオン化試薬と反応させ、例えば、中国特許出願公開第111560086号明細書では、半乾式法でカチオン性ヒアルロン酸塩を製造する方法が記載されているが、半乾式法でカチオン性ヒアルロン酸ナトリウムを製造する過程において、グラフト率が不均一であり、固体粒子内部の分子が有効なカチオン化グラフトを行うことができない。中国特許出願公開第101316864号明細書では、ヒアルロン酸ナトリウムと水が共存する溶媒でカチオン性ヒアルロン酸ナトリウムを製造しているが、原料の溶解性が悪いため、反応転化率が低く、目標生成物を得るのに長い反応時間が必要である。また、水とエタノールの混合溶媒を用いており、アルコール/水系におけるヒアルロン酸ナトリウムの溶解度を増大させるために、反応系に大量の食用塩を添加してイオン強度を増加させる必要があり、これにより塩を除去する煩雑な工程をもたらし、後処理工程にも支障をきたすとともに、環境に不必要な汚染をもたらす特許もある。中国特許出願公開第101715457号明細書におけるカチオン化ヒアルロン酸又はその塩の製造方法では、イオン化プロセスは不均一反応を用い、カチオンのイオン化率が低いだけでなく、イオン化は均一ではなく、溶液中のヒアルロン酸の溶解度を増加させるために、反応中に塩化ナトリウム溶液(通常必要な塩の添加量は1~5%)を大量に添加して系のイオン強度を増加させ、さらに系中のヒアルロン酸の溶解度を増加させる必要があり、このようにして析出した生成物に大量の塩分が包みこまれ、洗浄回数を増加させ、大量の廃水を排出し、また、非均一媒体中のヒアルロン酸ナトリウムは凝集しやすいので、塩分を包みこんだヒアルロン酸ナトリウム製品を毛髪改善剤、角質層修復剤、皮膚改善剤、化粧品に応用すると、凝集現象が生じやすく、製品の使用に影響を与える。さらに、塩溶液の添加は、後処理による溶媒の回収にも大きな支障をきたし、手間と時間がかかるだけでなく、資源の浪費と環境汚染をもたらす。また、このスキームでは、ヒアルロン酸ナトリウムとカチオン化試薬との反応はカルボキシル基部位で起こり、カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムの置換度の測定は、モノマー1モル当たりの活性カルボキシル基の置換モル数を示す。このことから、理論的には最大置換度は1である。置換度が高くなるにつれて、反応液の粘度、透明度が向上し、塩基を添加すると、反応初期にはカチオン性エーテル化試薬の切断が促進され、ヒアルロン酸ナトリウムとの反応が促進されるが、反応後期には、塩基によって、カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムの分子鎖が切断され、反応の進行が阻害され、ヒアルロン酸ナトリウムの分子鎖が長くなるほど反応の置換が困難になる。置換度が増加し続けると、カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムの水溶性がますます向上し、水中での膨潤が激しくなり、分子の伸長範囲が大きくなり、これによって、カチオン性ヒアルロン酸ナトリウムのカチオン化度と収率が一定の範囲内で均衡する傾向ももたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する上記課題に対して、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドがヒアルロン酸ナトリウムのヒドロキシメチルの酸素原子上にグラフトされたグラフト生成物を取得し、反応中に塩を添加することを回避しながら、生成物のグラフト率を0.69と高くし、製品が凝集する現象を効果的に回避する均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が上記技術的課題を解決するために使用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
一態様では、本発明は、
容器に均一溶媒とヒアルロン酸ナトリウム(HA)固体(使用されるヒアルロン酸ナトリウムは分子量100万~120万Dalの高分子量ヒアルロン酸ナトリウム)を加え、均一系に溶解するまで加熱したものに、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA)の水溶液を加え、次に塩基性触媒を加え、所定温度で撹拌してグラフト反応を行い、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドがヒアルロン酸ナトリウムのアルキルヒドロキシの酸素原子に結合されたグラフト生成物を取得するステップを含むことを特徴とする均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法を提供する。グラフト反応中に塩が添加されておらず、合成経路は以下に示される。
【化1】
【0008】
さらに、前記均一溶媒はHMF、DMF、エタノール、メタノール、酢酸、DMSOのうちの少なくとも1種又はこれらと水との混合物である。
【0009】
また、さらに、前記均一溶媒はHMFとH2Oとの混合物HMF-H2Oである。好ましくは、前記HMF-H2OにおいてHMF(ホルムアミド)は水の50体積%~80体積%(HMF/H2O、v/v)である。
【0010】
さらに、前記ヒアルロン酸ナトリウム固体と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのモル比は1:0.5~10、好ましくは1:2である。
【0011】
さらに、前記所定温度は40~80℃、反応時間は少なくとも1hである。
【0012】
さらに、前記塩基性触媒はNaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、CH3COONa、CH3COOK、KHCO3、NaHCO3のうちの少なくとも1種を使用する。塩基性触媒の添加量とHAとのモル比は0.2~1.0の範囲であり、この範囲内では、カチオン化度が高く、好ましくは1:1であり、塩基性触媒の添加量が多すぎると、副反応が増える。
【0013】
さらに、均一媒体においてヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を製造、精製する方法は、
グラフト反応完了後、反応系をアルコール沈殿し、沈殿物を含有する混合溶液Aを得て、分離した沈殿物に水を加えて十分に溶解させ、液体材料を得るステップと、
液体材料に1~5%の精製塩NaCl又はKCl溶液(膨潤抑制剤として)を加え、撹拌して十分に溶解し、液体材料のpH値を6.0~7.5に調整するステップであって、このステップで添加される塩は後続の水洗工程において除去し、製品の塩分をなくすることができるステップと、
二次アルコール沈殿を行い、分離した沈殿に水を加えてさらに溶解させ、さらにアルコール沈殿を行って沈殿を得るステップと、
沈殿に対してアルコール洗浄、脱水及び乾燥を行い、最終生成物を得るステップと、をさらに含む。
【0014】
また、さらに、アルコール沈殿において、液体材料とエタノールとの体積比は1:1~10であり、沈殿物に水を加えて溶解させるときに、沈殿物と水との質量体積比は1:5~50である。
【0015】
別の態様では、本発明は、上記製造精製方法を用いたヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩を提供し、その構造式は以下に示される。
【化2】
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1.本発明は、HA分子を均一媒体中で化学的に修飾することにより、ヒアルロン酸ナトリウム分子中のヒドロキシメチルの酸素原子上に、正に帯電した第4級アンモニウム基をグラフトさせ、分子全体に一定の正の電気特性を持たせ、正負の電荷が引き寄せ合うことで、修飾されたヒアルロン酸ナトリウム第4級アンモニウム塩誘導体は、毛髪や皮膚の表面によく吸着することができ、良好な湿潤性と保湿性を有すると同時に、第4級アンモニウム塩基は親水性のトリメチルアンモニウムクロライド基を有するため、強い親水性を有し、第4級アンモニウム塩基がグラフトされたヒアルロン酸ナトリウム分子の顕著な分子特性により、洗髪・ヘアケア製品やクレンジング系化粧料において、優れた湿潤性と保湿性を発揮する。
2.本発明では、均一反応を使用することにより、塩の添加量が少ない条件又は添加量がない条件で、生成物がより高いグラフト率を得ることができると同時に、本形態では、存在する塩分を水で洗い流すことにより、ヒアルロン酸ナトリウムの凝集を効果的に減少させることができる。製造方法が簡単で操作性がよく、カチオン化プロセスは大量の塩の添加を避け、製品の精製が簡単で、スケールアップが容易である。
3.本発明では、さらに、HAとGTAとのグラフト反応溶媒として作用する特定の均一溶媒であるHMF-H2O系を適用し、ここでは、均一系はHMFが均一系に占める割合が50体積%~80体積%(HMF/H2O、v/v)となるように形成されており、発明者は驚くべきことに、この溶媒系では、そのカチオン化グラフト効率は他のアルコール類又はDMF、DMSO等の溶媒に比べて顕著に向上し、具体的なグラフト率は0.69に達することができ、従来技術から顕著な進歩を有することを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の原理及び特徴を説明するが、挙げられる実施例は本発明を説明するために過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
実施例1
本実施例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は以下のステップを含む。
50体積%のHMF-H2O溶液1000mlを、撹拌器と還流凝縮器を装備した三つ口フラスコに加えて、撹拌して水浴にて65℃に予熱した。分子量1.36MDaのヒアルロン酸ナトリウム固体粉末を50g秤量し、撹拌しながら固体粉末を予熱したHMF溶媒にゆっくりと加えた。次に、水酸化ナトリウム0.42gと2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド40gが水200mlに溶解した溶液(HA/GTAモル質量比=1:2)を順次加え、反応混合物を65℃の水浴にて撹拌して4.0h反応させた。90%エタノール2000mlを加えて固体沈殿を析出させた。濾過して沈殿を収集し、脱イオン精製水を加えて、撹拌し、沈殿を十分に溶解し、溶解後の液体材料に精製後のNaCl塩溶液2%を加え、希塩酸溶液を用いて液体材料のpHを6.8に調整し、その体積に対して1倍のエタノールを加えて沈殿させた。沈殿後、0.5h静置して上清アルコールを除去し、沈殿物をさらに脱イオン精製水に溶解し、その体積に対して1倍のエタノールを加えて二次沈殿をした。
二次沈殿後、上層のアルコールを除去し、60%エタノールで洗浄した。洗浄後の沈殿を無水エタノールで脱水し、脱水後の材料を1時間自然放置し、次に真空乾燥箱にて6h乾燥させ、カチオン化生成物を47.6g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量3.68%、グラフト率0.66、pH 6.8、タンパク質残留0.04%、強熱残分3.2%であった。
【0019】
実施例2
本実施例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は以下のステップを含む。
80体積%のHMF水溶液1000mlを、撹拌器と還流凝縮器を装備した三つ口フラスコに加えて、フラスコ中のHMF溶液を水浴にて40℃に加熱した。分子量1.36MDaのヒアルロン酸ナトリウム固体粉末を50g秤量し、撹拌しながら固体粉末を予熱したHMF溶媒にゆっくりと加えた。次に、水酸化カリウム(0.42g)と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(40g)が水200mlに溶解した溶液(HA/GTAのモル質量比=1:2)を順次加え、反応混合物を40℃で撹拌して6.0h反応させた。90%のエタノール2000mlを加えて固体沈殿を析出させた。濾過して沈殿を収集し、脱イオン精製水を加えて、撹拌し、沈殿を十分に溶解し、溶解後の液体材料に1%の精製後のNaCl溶液を加え、液体材料のpHを6.0に調整して塩素イオンを除去し、その体積に対して1倍のエタノールを加えて沈殿させた。沈殿後、0.5h静置して上清アルコールを除去した、沈殿物を脱イオン精製水にさらに溶解し、さらにその体積に対して1倍のエタノールを加えて二次沈殿をした。
二次沈殿後、上層のアルコールを除去し、60%エタノールで洗浄した。洗浄後の沈殿を無水エタノールで脱水し、脱水後の材料を1時間自然放置し、次に真空乾燥箱にて6h乾燥させ、カチオン化生成物を47.9g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.47%、グラフト転化率0.69、pH 6.8、タンパク質残留0.04%、強熱残分3.9%であった。
【0020】
実施例3
本実施例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は以下のステップを含む。
60% HMF水溶液(HMF/H2O, v/v)1000mlを、撹拌器と還流凝縮器を装備した三つ口フラスコに加えて、水浴にて反応混合物を撹拌して、80℃に予熱した。分子量1.36MDaのヒアルロン酸ナトリウム固体粉末を50g秤量し、撹拌しながら固体粉末を予熱したHMF水溶液にゆっくりと加えた。次に、炭酸ナトリウム(0.42g)と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(40g)が水200mlに溶解した溶液(HAとGTAとのモル比は1:2)を順次加え、反応混合物を80℃で撹拌して3.0h反応させた。90%エタノール2000mlを加えて固体沈殿を析出させた。濾過して沈殿を収集し、脱イオン精製水を加えて、撹拌し、沈殿を十分に溶解し、溶解後の液体材料に精製食塩水4%を加え、液体材料のpH値を6.5に調整し、その体積に対して1倍のエタノールを加えて沈殿させた。沈殿後、0.5h静置して上清アルコールを除去した、沈殿物を脱イオン精製水にさらに溶解し、さらにその体積に対して1倍のエタノールを加えて二次沈殿をした。
二次沈殿後、上層のアルコールを除去し、60%エタノールで洗浄した。洗浄後の沈殿を無水エタノールで脱水し、脱水後の材料を1時間自然放置し、次に真空乾燥箱にて6h乾燥させ、生成物を47.2g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.98%、グラフト率0.63、pH 6.8、タンパク質残留0.03%、強熱残分3.2%であった。
【0021】
実施例4
本実施例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は以下のステップを含む。
60% HMF水溶液1000mlを、撹拌器と還流凝縮器を装備した三つ口フラスコに加えて、水浴にて反応混合物を撹拌して、80℃に予熱した。分子量1.36MDaのヒアルロン酸ナトリウム固体粉末を50g秤量し、撹拌しながら固体粉末を予熱したHMF溶媒にゆっくりと加えた。次に、酢酸カリウム(0.42g)と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(40g)が水200mlに溶解した溶液(HAとGTAとのモル比は1:2)を順次加え、反応混合物を80℃で撹拌して1.2h反応させた。90%エタノール2000mlを加えて固体沈殿を析出させた。濾過して沈殿を収集し、脱イオン精製水を加えて、撹拌し、沈殿を十分に溶解し、溶解後の液体材料に精製食塩水5%を加え、液体材料のpH値を6.5に調整し、その体積に対して1倍のエタノールを加えて沈殿させた。沈殿後、0.5h静置して上清アルコールを除去した、沈殿物を脱イオン精製水にさらに溶解し、さらにその体積に対して1倍のエタノールを加えて二次沈殿をした。
二次沈殿後、上層のアルコールを除去し、60%エタノールで洗浄した。洗浄後の沈殿を無水エタノールで脱水し、脱水後の材料を1時間自然放置し、次に真空乾燥箱にて6h乾燥させ生成物を47.3g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.57%、グラフト率0.63、pH 6.8、タンパク質残留0.03%、強熱残分3.3%であった。
【0022】
比較例1
溶媒としてHMF-H2O溶液を40体積%のHMF-H2O溶液に変更した以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を44.0g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量3.84%、グラフト率0.35、pH 6.7、タンパク質残留0.04%、強熱残分4.3%であった。
【0023】
比較例2
溶媒としてHMF-H2O溶液を90体積%のHMF-H2O溶液に変更した以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を43.5g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量3.93%、グラフト率0.30、pH 6.8、タンパク質残留0.04%、強熱残分2.7%であった。
【0024】
比較例3
溶媒としてHMF-H2O溶液をDMF-H2O溶液に変更した以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を42.1g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量5.67%、グラフト率0.18、pH 6.8、タンパク質残留0.02%、強熱残分2.3%であった。
【0025】
比較例4
HMF-H2O溶液をDMSOに変更した以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を43.1g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量6.78%、グラフト率0.27、pH 6.9、タンパク質残留0.02%、強熱残分2.4%であった。
【0026】
比較例5
HMF-H2O溶液をエタノール(非均一系)に変更した以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を42.6g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.26%、グラフト率0.22、pH 6.8、タンパク質残留0.02%、強熱残分3.1%であった。
【0027】
比較例6
HAとGTAとの質量モル比は1:0.5である以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を43.87g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.13%、グラフト率0.34、pH 6.8、タンパク質残留0.04%、強熱残分2.7%であった。
【0028】
比較例7
HAとGTAとの質量モル比が1:0.2である以外、本比較例のヒアルロン酸ナトリウムカチオン性第4級アンモニウム塩の製造精製方法は実施例1とほぼ同様であった。生成物を40.9g得た。
検出したところ、白色固体粉末は、乾燥減量4.56%、グラフト率0.08、pH 6.8、タンパク質残留0.03%、強熱残分2.9%であった。
【0029】
本発明の前記方法で製造されるヒアルロン酸第4級アンモニウム塩はイオン化して、主にヒアルロン酸分子のヒドロキシメチルの酸素原子上にグラフトされ、グラフト率(置換度)は、メタノールソックスレー抽出によってカチオン性ヒアルロン酸製品を精製し、ケルダール法によってカチオン性ヒアルロン酸中の窒素含有量を計算したものである。置換度(DS)は窒素含有量から算出される。
【数1】
【0030】
上記式において、W1は測定したカチオン性ヒアルロン酸第4級アンモニウム塩の窒素の百分率含有量(ケルダール法により測定)であり、W0は原料であるヒアルロン酸塩の窒素の百分率含有量(ケルダール法により測定)であり、MSはヒアルロン酸ナトリウムの単位のモル分子質量379g/molであり、MGTAはGTAの相対分子質量151.6g/molであり、1400は窒素原子の相対分子量について単位を換算した値である。
上記実施例及び比較例のグラフト率のデータを表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
上記の実施例及び比較例のデータから、本発明は50%HMF-80%HMF水溶液を反応溶媒とし、他の従来の反応溶媒と比較して、グラフト反応中に塩を添加しておらず、得られる生成物は顕著に優れたグラフト率を有することが分かった。ヒアルロン酸ナトリウム固体、塩基性触媒、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドのモル比を1:1:2とすると、良好な収率とカチオン化度が得られた。
【0033】
50%HMF-80%HMF水溶液は、ヒアルロン酸ナトリウムに対する溶解度が最も高く、65℃では1.0~2.0g/100mLの溶解力でヒアルロン酸ナトリウムを完全に溶解することができる。均一媒体においてカチオングラフト反応を行った結果、溶液の粘度が明らかに高くなることは見られず、溶液を放置する過程で生成物は安定して凝集や析出現象が現れなかった。50%HMF及び80%HFM水溶液は、ヒアルロン酸ナトリウムに対する溶解力が最大であることが示され、この均一系では高い第四級アンモニウム塩イオン化反応が得られることが示された。この反応系では、ヒアルロン酸固体微粒子のGTAへの局所吸着を減少させることができ、反応速度を速めることができ、単位分子上のヒドロキシメチルの均一な反応を促進し、GTAの副反応を減少させ、GTAの使用量を大幅に減少させることができる。
【0034】
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(GTA)をホルムアミド(HMF)の均一水溶液中でイオン化グラフト反応を行い、系中に塩基性触媒を加えて、微塩基性環境を提供し、GTAとHAのカップリング反応を促進した。前記無機塩基としては、NaOH、KOH、NaCO3、K2CO3、CH3COONa、CH3COOK、NaHCO3が含まれる。実際の反応ではNaOHが好ましく、NaOHの塩基使用量は、平均単位総モル数に対して0.01、0.02、0.04、0.08、0.12、0.14、0.16、0.18mol/HAである。反応中にpHを塩基で7.0~7.5に調整し、反応が完了するまで撹拌して加熱した。HA:GTA=1:2(モル比)であるとき、HA:HMF-H2O=1:40(質量/体積、kg/L)の混合物をカチオン化した場合、NaOHモル比は0.01~0.18mol/HA、反応温度は65℃であった。反応開始時、反応混合物中のNaOH含有量の増加に伴い、主反応(HAのカチオン化)とGTAの副反応速度がともに速くなる。反応混合物中のNaOH含有量が0.02~0.08mol/HAの範囲であれば、GTAは初期に副反応を起こさず、NaOH含有量が0.18mol/HAを超えれば、GTAの主反応及び副反応はいずれも最初の数分間から進行する。また、触媒使用量を0.02から0.12mol/HAに増加させると、主反応の速度定数(km)が25倍以上増加することが実験を通じて観察された。NaOHの含有量は、副反応速度定数の増加が観察されたときに0.08mol/HAを超えていた。このレベルに達したNaOHでは、主反応が副反応よりも速く進行する。反応混合物中のNaOH含有量が0.08mol/HAの場合、GTAの使用効率は最適であるとの結論が得られた。