(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074227
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】橋台ブロックおよび橋梁
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20240523BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E01D19/02
E01D1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082488
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022185039
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592136635
【氏名又は名称】株式会社オーイケ
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀実
(72)【発明者】
【氏名】大池 悦二
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA14
2D059BB39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋梁をさらに効率的に施工あるいは製造できる橋台ブロックを提供する。
【解決手段】
本発明の橋台ブロック10は、橋台101を施工するためのブロックであり、橋梁1の床板を支持する支承部15およびパラペット部16を含む上部11と、上部を支持する竪壁部12と、竪壁部を支持する基礎部13とが一体でプレキャストされた逆T字型の橋台ブロックである。さらに、この橋台ブロックの支承部の上面15aは型枠により成型された面である。この橋台ブロックは、逆T字型の橋台ブロックを一体で製造するための型枠であって、パラペット部および支承部を含む上部が横側または下側となるT字型のコンクリート注入領域を有する型枠を用いて一体成型(プレキャスト)することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の床板を支持する橋台を施工するための橋台ブロックであって、
前記床板を支持する支承部および前記支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部と、前記竪壁部を支持する基礎部とが一体でプレキャストされた逆T字型またはL字型の橋台ブロックであって、少なくとも前記支承部の上面が型枠により成型された面である、橋台ブロック。
【請求項2】
請求項1において、
側面の形状が逆T字型またはL字型の前記橋台を、側面が逆T字型またはL字型となるように複数に分割した、橋台ブロック。
【請求項3】
請求項1において、
複数の当該橋台ブロックを側面が密着するように並べることにより前記橋台を施工するための、橋台ブロック。
【請求項4】
請求項1において、
さらに、前記パラペット部の上面、前面および後面が前記型枠により成型された面である、橋台ブロック。
【請求項5】
請求項4において、
さらに、前記パラペット部の両側面が前記型枠により成型された面である、橋台ブロック。
【請求項6】
請求項1において、
前記支承部の上面の前後方向の幅に対し、前記竪壁部の前後方向の幅が大きい、橋台ブロック。
【請求項7】
請求項6において、
前記上部の前後方向の幅と、前記竪壁部の少なくとも上半部の前後方向の幅とが等しく、前記竪壁部から前記上部が直線状に延びている、橋台ブロック。
【請求項8】
請求項1において、
側面が逆T字型の橋台ブロックであって、
前記基礎部の前側の長さが後側の長さと等しいかまたは短い、橋台ブロック。
【請求項9】
請求項1において、
側面がL字型の橋台ブロック。
【請求項10】
請求項1において、
前記支承部の上面に、当該橋台ブロックを吊り下げる治具を着脱するための埋設金物が埋設されている、橋台ブロック。
【請求項11】
請求項1において、
前記竪壁部の前側の面の、前記支承部の上面から50cm以内に複数の当該橋台ブロックを連結するために用いられる埋設金物が埋設されている、橋台ブロック。
【請求項12】
請求項1において、
前記支承部の上面に、前記床板と連結する連結金具を取り付けるための埋設金物が埋設されている、橋台ブロック。
【請求項13】
請求項1において、
側面が逆T字型の橋台ブロックであって、
前記基礎部の前側に延びた第1の基礎部と後側に延びた第2の基礎部のそれぞれに、高さ調整用のボルトを貫通して取り付けるためのナット部を含む貫通孔が設けられている、橋台ブロック。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の橋台ブロックと、
前記橋台ブロックに支持された床板とを有する、橋梁。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれかに記載の橋台ブロックを複数並べた前記橋台と、
前記橋台に支持された床板とを有する、橋梁。
【請求項16】
請求項15において、
前記床板は、地覆が幅方向の一方の端に一体に形成されたプレキャスト床板を含む、橋梁。
【請求項17】
橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部と、前記竪壁部を支持する基礎部とが一体でプレキャストされた逆T字型またはL字型の少なくとも一対の橋台ブロックを、橋梁の両端に、前記一対の橋台ブロックの前側同士が向かい合うように配置することにより橋台を施工することと、
前記床板を前記支承部に支持されるように配置することとを有する、橋梁の施工方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記橋台を施工することは、前記橋台ブロックを、前記橋台ブロックの前側が護岸構造の裏面に面するように配置することを含む、橋梁の施工方法。
【請求項19】
橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部と、前記竪壁部を支持する基礎部とが一体でプレキャストされた逆T字型またはL字型の複数の橋台ブロックを横方向に並べて前記床板を支持する橋台を施工することと、
前記床板を前記支承部に支持されるように配置することとを有する、橋梁の施工方法。
【請求項20】
橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部と、前記竪壁部を支持する基礎部とを含む逆T字型またはL字型の橋台ブロックを一体で製造するための型枠であって、前記上部が横側または下側となるT字型またはL字型のコンクリート注入領域を有する型枠。
【請求項21】
請求項20において、
前記上部の少なくとも一部を規定する補助型枠であって、前記T字型またはL字型のコンクリート注入領域を長手方向に移動可能な第1の補助型枠を有する、型枠。
【請求項22】
請求項20において、
前記上部の前記パラペット部の高さを規定する第2の補助型枠であって、前記T字型またはL字型のコンクリート注入領域を長手方向に移動可能な第2の補助型枠を有する、型枠。
【請求項23】
請求項21または22において、
前記T字型またはL字型のコンクリート注入領域の、前記上部を規定する第1の部分の前後方向の幅と、前記竪壁部の少なくとも上半部を規定する第2の部分の前後方向の幅とが等しく、前記第2の部分から前記第1の部分が直線状に延びている、型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋台ブロックおよび橋梁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、場所打ちホロースラブ橋やプレストレストコンクリートホロー桁橋などの版構造のコンクリートスラブ橋において、橋脚などの下部工が変位し支承座からスラブ端が外れても橋体が落下しないようにし、落橋による二次災害の発生を防止することが記載されている。そのため、コンクリートスラブ橋の橋軸方向に橋体を貫通して両橋台間にPCケーブルを張設し、このPCケーブルの張力はたるみを除去する程度とし、PCケーブルの端部をそれぞれ両橋台のパラペットに定着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁の橋体を構成する床板を支持する橋台において、床板と接する支承部と支承部から立ち上がったパラペット部とを有する上部(上部構造)は精度とともに十分な強度が要求される。しかしながら、パラペット部を含む上部は、橋台の最も上に位置する構造部分であり、強度を確保することが難しい。例えば、現場で橋台を施工する場合は、底板を打設し(工程1)、その上に竪壁を打設し(工程2)、さらに、竪壁の上にパラペット部を打設する(工程3)という、少なくとも3段階の工程が必要になる。パラペット部を打設する際は、竪壁の上にパラペット用の鉄筋を延ばして、パラペット用のコンクリートを打ち継ぐことになるが、その境界がコールドジョイントとなるリスクがあり、接合部の強度を確保することが難しい。
【0005】
次に、コンクリートにより型枠を用いて橋台を施工する際に、上部の面は、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しやすく、施工時の乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けやすい。このため、支承部となる竪壁の上面については、精度および強度ともに確保することは容易ではなく、橋台の上部の施工は、熟練の作業者が十分な時間をかけて行う必要がある。したがって、経費と時間とを要する作業となっている。このため、橋梁をさらに効率的に施工あるいは製造できる構造および方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、橋梁の床板を支持する橋台を施工するためのプレキャストされた橋台ブロック(橋台用ブロック)である。本発明の橋台ブロックは、支承部および支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部(上部構造)と、上部を支持する竪壁部と、竪壁部を支持する基礎部(フーチング部)とが一体でプレキャストされた逆T字型またはL字型の橋台ブロックである。さらに、この橋台ブロックの少なくとも支承部の上面が型枠により成型された面であることを特徴とする。この橋台ブロックは、典型的には、側面の形状が逆T字型またはL字型の橋台を、側面が逆T字型またはL字型となるように、橋梁の幅方向に、複数に分割したものである。したがって、橋台ブロックの典型的な例は、複数の当該橋台ブロックを側面が密着するように並べることにより橋台を施工するためのものである。橋台を幅方向に分割した形状でブロック化することにより、工場プレハブ(プレキャスト)することが可能となり、現場施工とは異なる方向で橋台をプレキャストすることが可能となる。このため、橋台においては、上方を向き、コンクリートを打設する面とならざるを得ない支承部の上面を、この橋台ブロックをプレキャストする際は、型枠により形成することが可能となる。したがって、床板の加重がかかり、橋台の中で強度が最も必要とされる部分の一つである支承部の上面を、この橋台ブロックを用いることにより、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい状態でプレキャストすることが可能となり、耐久性の高い橋台を施工できる。この橋台ブロックは、さらに、パラペット部の上面、前面および後面が型枠により成型された面であってもよく、パラペット部の両側面が前記型枠により成型された面であってもよい。
【0007】
この橋台ブロックは、橋梁の床板を支持する支承部および支承部から立ち上がったパラペット部を含む上部と、パラペット部を支持する竪壁部と、竪壁部を支持する基礎部とを含む逆T字型またはL字型の橋台ブロックを一体で製造するための型枠であって、支承部およびパラペット部を含む上部が、上側ではなく横側(水平方向)または下側となるT字型またはL字型のコンクリート注入領域を有する型枠を用いて一体成型(プレキャスト)することができる。
【0008】
すなわち、従来、橋台の最上部として製造される支承部およびパラペット部を、本発明においては、プレキャスト用の型枠を用いて、横側または下側、例えば、水平方向で、または最下部として成型することができる。このため、上面(支承面)が型枠により成型された面となる支承部とを備えた橋台ブロックを提供できる。また、このクリート注入領域が水平方向に延びた型枠では、パラペット部の上面、前面、後面および両側面の一方が型枠により成型された面で構成されたパラペット部を備えた橋台ブロックを提供できる。さらに、このクリート注入領域が上下(垂直)方向に延びた型枠では、パラペット部の上面、前面、後面および両側面が型枠により成型された面で構成されたパラペット部を備えた橋台ブロックを提供できる。本発明の橋台ブロックのパラペット部および支承部は、製造時に型枠の面に接して、例えば、側面、下側の面、または最下部の面に接して製造される。このため、型枠で製造される製品の上部で発生する、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい。このため、強度および精度の高い支承部およびパラペット部を備え、プレキャスト(工場プレハブ)された一体型の橋台ブロックを提供できる。特に、床板の荷重を支持する支承部における内部欠陥の発生を防止でき、耐久性の高い橋台ブロックを提供できる。
【0009】
さらに、現場で施工しようとすると上述したように少なくとも3工程を現場で費やすことになる橋台ブロックを、工場プレハブ(プレキャスト)で1工程により量産でき、プレキャストされた橋台ブロックを現場に搬入することにより橋台を施工できる。したがって、この橋台ブロックを用いることにより、橋台ブロックと、橋台ブロックに支持された床板とを有する橋梁を短期間に、低コストで施工でき、また、耐久性の高い橋梁を提供できる。
【0010】
橋台ブロックは、床板を支持する支承部の上面(支承面)の前後の幅(支承幅)に対し、竪壁部の幅が大きくてもよく、支承面およびパラペット部を含む上部の前後方向の幅と、竪壁部の少なくとも上半部の前後方向の幅とが等しく、竪壁部から上部が直線状に延びていてもよい。この形状の橋台ブロックは、支承面およびパラペット部を規定する第1の補助型枠であって、T字型またはL字型のコンクリート注入領域を長手方向(上下、左右)に移動可能な第1の補助型枠を有する型枠により製造することができる。第1の補助型枠を長手方向に移動することにより竪壁部の長さが異なる橋台ブロックを共通の型枠により製造できる。型枠は、パラペット部の高さを規定する第2の補助型枠であって、T字型またはL字型のコンクリート注入領域を長手方向(上下、左右)に移動可能な第2の補助型枠を有していてもよい。
【0011】
型枠は、T字型またはL字型のコンクリート注入領域の、パラペット部を含む上部を規定する第1の部分の前後方向の幅と、竪壁部の少なくとも上半部を規定する第2の部分の前後方向の幅とが等しく、第2の部分から第1の部分が直線状に延びていてもよい。第1の補助型枠および第2の補助型枠が第1の部分および第2の部分を移動でき、竪壁部の長さが異なる橋台ブロックおよび/またはパラペット部の高さの異なる橋台ブロックを製造できる。さらに、補助型枠を入れ替えることにより、パラペット部の形状の異なる橋台ブロックを共通の型枠により製造してもよい。
【0012】
側面が逆T字型の橋台ブロックにおいては、基礎部(フーチング部)の前側の長さは後側(背面)の長さと同じでも、短くても、長くてもよい。基礎部の前側の長さが後側の長さより短いと、より護岸に近い位置に橋台ブロックを設置して橋台を施工できる。さらに、側面がL字型の橋台ブロックを用いることにより、上方が開いた断面がコ字型(C字型)の開渠に隣接して橋台ブロックを設置でき、開渠をまたぐ橋台同士の間隔を短縮できる。
【0013】
本発明の一態様である橋梁の施工方法(製造方法)は、床板を支持する支承部が設けられた側を前側としたときに、橋梁の両端に、少なくとも一対の橋台ブロックの前側同士が向かい合うように配置することにより橋台を施工することと、床板を支承部に支持されるように配置することとを有していてもよい。橋台を施工する際、橋台ブロックを、橋台ブロックの前側が護岸構造の裏面に面するように配置することができ、護岸構造を維持したまま、最短距離で床板を配置した橋脚を施工できる。したがって、簡易な構造で、短期間に耐荷重の高い橋脚を施工できる。橋台を施工する際に、逆T字型またはL字型の複数の橋台ブロックを横方向(橋梁の幅方向)に並べて床板を支持する橋台を施工してもよい。
【0014】
支承部の上面(支承面)に、当該橋台ブロックを吊り下げる治具を着脱するための埋設金物、例えば、インサートあるいはデーハーアンカーなどが埋設されていてもよい。竪壁部の前側に、複数の橋台ブロックにより橋台の施工の際に用いられる埋設金物を設ける際には、床板を支持する支承面から50cm以内にそれらの埋設金物が埋設されていてもよい。橋台ブロックの上面となる支承面またはそこから容易に手の届く範囲に埋設金物を設けることにより、橋脚を施工する際に、護岸構造に接近して橋台ブロックを吊り下げて配置しても、その埋設金物を用いて、橋台ブロックを吊り下げたり、隣接する橋台ブロックを接続して橋台として一体化したりすることができる。
【0015】
プレキャストされた橋台ブロックは、現場での型枠工事などが必要なく、あるいはほとんど必要なく、護岸構造に接近して橋台ブロックを施工できる。このため、護岸構造を壊さずに橋梁を施工できる。さらに、対岸に配置される橋台ブロック同士の距離を縮めることができ、短い床板を用いて橋梁を施工できる。このため、経済的に、耐荷重の大きな橋梁を施工できる。
【0016】
橋台ブロックの支承面に、床板と連結する連結金具を取り付けるための埋設金物、例えば、インサートが埋設されていてもよい。基礎部の前側に延びた第1の基礎部と後側に延びた第2の基礎部のそれぞれに、高さ調整用のボルトを貫通して取り付けるためのナット部を含む貫通孔が設けられていてもよい。
【0017】
橋台ブロックとともに橋脚を構成する床板は、地覆が幅方向の一方の端に一体に形成されたプレキャスト床板を含んでもよい。地覆が現場で施工される床板を用いて橋梁を施工してもよいが、床板から鉄筋を突き出しておいても地覆と床板とのつなぎ目がコールドジョイントとなりやすく、その強度を確保することが難しい。地覆が一体的にプレキャストされた床板を採用すると、地覆を現場施工する必要がなく、強度の低下の心配もなく、さらに短期間に、簡易な方法で橋脚を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】橋台ブロックの一例(
図3(a))およびそれをプレキャスト(プレハブ)する型枠(
図3(b))を示す図。
【
図5】橋台ブロックの他の例(
図5(a))およびそれをプレキャスト(プレハブ)する型枠(
図5(b))を示す図。
【
図6】橋台ブロックの他の例(
図6(a))およびそれをプレキャスト(プレハブ)する型枠(
図6(b))を示す図。
【
図13】橋台ブロックと床板とを接続する部分を示す図。
【
図14】橋台ブロックと床板とを接続する様子を示す図。
【
図15】橋台ブロックと床板とを連結する様子を示す図。
【
図16】橋台ブロックと床板にて橋梁を施工する様子を示す図。
【
図17】床板に設けられた接続用の貫通孔の例を示す図。
【
図20】橋台ブロックの高さ調整を行う様子を示す図。
【
図21】橋台ブロックの高さ調整用の貫通孔を示す図。
【
図28】
図26に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す断面図。
【
図29】
図26に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す斜視図。
【
図32】
図30に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す断面図。
【
図33】
図30に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す斜視図。
【
図36】
図34に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す断面図。
【
図37】
図34に示す橋台ブロックを用いて施工された橋梁の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本発明の一例である橋梁(橋、橋構造体)の概要を示す。
図2に、橋梁1を製造(施工)する様子を示す。橋梁1は、河川2などの障害となるものの上を横断する構造体であり、河川2の護岸5の両側3に配置された橋台101と、両側の橋台101に支持され、河川2を跨ぐように配置された床板103と、床板103の両脇(両縁)に配置された地覆102と、地覆102に設置された防護柵(欄干)40とを含む。本例の両側の橋台101は、それぞれ複数のプレキャストされたコンクリート製の橋台ブロック(橋台用ブロック)10により構成され(施工され)ており、床板103は両側の橋台ブロック10に支持され、河川2を跨ぐように配置されたプレキャストされたコンクリート製の床板ブロック30により構成され(施工され)、地覆102は床板ブロック30と一体にプレキャスト(成形)されたコンクリート製の地覆ブロック20により構成され(施工され)ている。本例の橋梁1の橋台101においては、側面の形状が逆T字型または後述するようなL字型の橋台101を、側面が逆T字型またはL字型となるように、上部11、竪壁部12および基礎部13が一体となった状態で、複数に分割して橋台ブロック10とすることにより、橋台ブロック10を工場プレハブした後に現場に搬入できる程度の重さにすることができる。したがって、橋台ブロック10を工場において量産することにより、低コストで精度の高い橋台ブロック10を供給でき、施工現場では、複数の橋台ブロック10を側面が密着するように左右(橋梁1の幅方向)に並べることにより橋台101を短期間に精度よく施工することが可能となる。
【0020】
この橋梁1の橋台101は、一体型で工場プレハブ(プレキャスト)され、強度の高い上部(上部構造)11を備えた橋台ブロック10を用いて施工される。したがって、スパン(橋台ブロック間の距離)が3mを超え、概ね10m程度以下、さらに好適には、スパンが8m以下の現場で、輪荷重が、例えば、8トン以上の道路4を設置するなどの目的で施工される橋梁1に適している。さらに、河川2などに既存の護岸構造物5がある場所において、護岸構造物5を概ね保存した状態で、河川2を堰き止めたり、流れを変えることなく、最短のスパンで橋梁1を施工する場合に適している。なお、上記の数値は例示であり、これに限定されるものではない。
【0021】
本例の橋台ブロック10は、橋梁の床板(床版)30および31を支持する支承部15と、支承部15から立ち上がったパラペット部16とを含む上部(上部構造、床板支持部、床板支持構造)11を有する。橋台ブロック10は、さらに、この上部11と、上部11を支持する竪壁部12と、竪壁部12を支持する基礎部13とを有し、これらが一体でプレキャストされた逆T字型の橋台ブロックである。例えば、スパンが3m以上で輪荷重8トン以上の橋梁用の橋台になると、支持力を高める必要があり、基礎部13の底面積を増やさなくてはならない。
【0022】
プレキャストタイプの橋台ブロックとして、本願の発明者らは、重力式橋台ブロックを提案している。重力式橋台ブロックは、一定勾配で下側に拡がっている、断面が片台形あるいは両台形である。このため、重力式橋台ブロックは、底部が広くなると深くなり、下側の面積が大きくなる。重力式橋台ブロックは、スパンが4m以下と短くまた、輪荷重が8トン程度以下の橋梁の施工には適しているが、それ以上になると、ブロックの重量が大幅に増え、製品化が難しく、さらに、現場においても、大きなクレーンを用いて、敷設しなければならない。このため、一定以上の輪荷重に対して、重力式橋台ブロックでは、現場打ちとのコスト比較で優位性が減少する。したがって、底板の底面積の大きさは土質、死荷重(自重)および輪荷重を考慮して算出され、底板の面積が大きくなると、従来の工法では、底板は現場打設となる。
【0023】
したがって、基礎部13の面積が大きくなる橋台ブロックとして、フーチングとなった基礎部(フーチング部)13を備えた半重力式または逆T字型の橋台ブロックを本願においては提案する。また、基礎部13が竪壁部12に対して一方向に延びたL字型の橋台ブロックを本願においては提案する。しかしながら、従来のこのタイプの橋台は、現場で施工されており、上述したように、3回に分けて現場で型枠を用いて施工されることが多く、工期が長くなることに加えて、基礎部、竪壁部、パラペット部との接合部分の強度が不足し、支承面の強度も不足しやすいことは上述した通りである。スパンが短い橋梁を施工する方法としては、門型カルバートなどの他の形態を用いることが可能であるが、いずれにしても底板の強度が一定以上になるまで数日の養生期間が必要となる。
【0024】
現場において橋台を施工する場合の課題としては、型枠を組んで、その上面から生コンを打設する。この場合、バイブレーターを使用することにより、砂利が沈下して、橋台の最も上面となるパラペット部の支承部には骨材、例えば、砂分と生コンの中に含まれる空気が気泡となって浮いてくる。また、骨材の分布密度も低下しがちとなる。したがって、この部分の強度が不足しやすい。支承部は、床板を支持する部分であり、橋台の中で最も強度が必要とされ、さらに、振動の影響を受けやすい。このため、橋台の中で支承部が最も破壊されやすい部分の1つである。地震の際に、支承部が破壊されたとの報告も多い。
【0025】
一例として、スパンが8m以下の橋梁では、輪荷重が8トンを超えず、最大荷重が25トン以下であることが多い。すなわち、大型車両の長さを考慮すると同時に、スパンが8m以下であれば、大型車両が2台以上乗ることはない。したがって、プレキャストされた橋台ブロック10を用いた橋梁1のターゲットの1つは、スパンが8m以下の橋梁であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
また、半重力式橋台であって、現場打ちでも地耐力を大きくする必要がある場合、基礎部(底板)を大きく拡げる必要がある。しかしながら、基礎部を前後に伸ばすと、既存の護岸構造(擁壁)5と干渉することが多い。したがって、半重力式橋台を現場で施工する場合は、護岸の擁壁を壊さなくてはならないことが多い。一方、擁壁5を崩さない場合は、擁壁5から大きく後退した位置で橋台ブロックを施工する必要があり、橋梁のスパンが大きくなる。したがって、耐荷重が増加し、橋梁のコストも増加する。また、護岸の擁壁5から大きく後退すると、既存の道路を逆に大きく掘削する必要があるなどの問題も発生することがある。
【0027】
本発明の逆T字型の橋台ブロック10は、
図2に示すように、橋台ブロック10が一体でプレキャストされている。このため、護岸の擁壁5の背面を、橋台ブロック10が搬入および設置できる程度に掘削するだけで橋台ブロック10を設置(施工)でき、簡単に橋台を施工できる。その後、橋台101を構成する橋台ブロック10の上に、床板30および/または、地覆20がプレハブされた地覆付きの床板31を搭載することで、橋梁1を施工できる。橋台ブロックを現場打ちで施工する場合、型枠を組み外すためのスペースがさらに要求されるが、プレキャストされた本例の橋台ブロック10にはそのようなスペースは要さない。
【0028】
橋梁1の両側の地盤6を掘削した領域9に、基礎砕石およびベースコンクリートを含む基礎コンクリート層7を施工し、その上に、高さ調整用のグラウト9を介して橋台ブロック10を設置してもよい。この方法により、擁壁5を崩さずに橋台ブロック10を施工でき、橋台ブロック10はプレキャストされているので養生期間も基本的に不要であり、短期間で橋梁1を施工できる。
【0029】
このように、橋台ブロック10は、プレキャストされているので、搬入して設置するスペースさえ確保できれば、護岸5の極めて近傍に配置できる。したがって、擁壁5を崩さずに、河川2を堰き止めたり、迂回させたりせずに、河川2の幅に対してスパンが短く、耐久性の高い橋梁1を簡単に、短期間で施工できる。また、背面の道路側を掘削することを抑止できるか、掘削が必要となってもその領域を大幅に狭くできる。さらに、この橋台ブロック10は、一例として、基礎部13の前側(河川側)13aの長さ(竪壁より突き出た長さ)w1が後側(後方、背面側、岸側)13bの長さ(竪壁より突き出た長さ)w2よりも短くてもよい。これにより上部11を、より擁壁5に近い位置に配置できる。
【0030】
すなわち、本発明の橋梁1の施工方法は、橋梁1の床板30を支持する上部11と、上部11を支持する竪壁部12と、竪壁部12を支持する基礎部13とが一体でプレキャストされた逆T字型の少なくとも一対の橋台ブロック10を、橋梁1の両端3に、一対の橋台ブロック10の前側19a同士が向かい合うように配置して橋台101を施工する工程と、床板30および/または地覆付きの床板31を支承部15に支持されるように配置して床板103および地覆102を施工する工程とを有する。さらに、橋台101を施工する際に、1つまたは複数の橋台ブロック10を、橋台ブロックの前側19aが護岸構造5の裏面に面するように配置することを含んでもよい。橋台ブロック10の基礎部13の上部11の支承部15が設けられた前側19aの長さw1が後側19bの長さw2より短い場合、施工方法は、その基礎部13の短い前側同士を向かい合わせて配置する工程を含んでいてもよい。
【0031】
さらに、本例の逆T字型の橋台ブロック10においては、支承部15の上面(支承面)15aが型枠により成型された面となっている。さらに、上部11のパラペット部(立ち上がり部)16の上面、前面、後面および両側面をプレキャスト時に型枠により成型された面としてもよい。すなわち、橋台ブロック10においては、上部11の上面である、支承部15の支承面15aが、コンクリートの打設面(注入面)ではなく、型枠に面して成型された面で構成される。したがって、支承部上面15aには砂分と生コンの中に含まれる空気が気泡となって浮いてくることはなく、また、骨材の分布密度が低下することもない。このため、本例の橋台ブロック10の上部11の特に支承部15は強度が高く、振動の影響も受けにくく、破壊され難い。したがって、橋台ブロック10を用いて橋台101を施工することにより、信頼性が高く、耐久性も高い橋梁1を製造および提供できる。さらに、橋台ブロック10は、プレキャストできる、すなわち、向きを自由に選択できる型枠を用いて工場プレハブできるので、パラペット部16の上面16a、前面となるパラペット部16の前面16b、後面となるパラペット部16の後面16cもコンクリートの打設面(注入面)ではなく、型枠に面して成型された面として製造することが可能である。さらに、パラペット部16の両側面となるパラペット部16の側面16dもコンクリートの打設面(注入面)ではなく、型枠に面して成型された面として製造することが可能となる。
【0032】
図3に橋台ブロック10を工場においてプレハブ(プレキャスト)する一例を示している。
図3(a)に示した逆T字型の本例の橋台ブロック10は、
図3(b)に示すように、上部11が下側(最下部)となるT字型の上下に延びたコンクリート注入領域51を有する型枠50を用いて製造できる。この型枠50を用いて橋台ブロック10を製造することにより、上部11の支承部15の支承面15a、パラペット部16の面16a、16b、16cおよび16dが、型枠50のそれぞれの面を規定する面に面し、さらに、上部11が型枠50の最下部となるように、型枠50の上部の開口58から打設(注入)されるコンクリート59により製造される。したがって、基礎部13の裏面(底面)13cがコンクリート59の打設面となり、型枠50の下部で形成される上部11の各面および部分は気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい。このため、強度および精度の高い上部11を備え、プレキャスト(工場プレハブ)された一体型の橋台ブロック10を提供できる。
【0033】
さらに、型枠50は、上部11の上面である支承部15の支承面15a、およびパラペット部16の上面16aおよび前面16bを規定する補助型枠(第1の補助型枠)52を含んでいてもよい。この補助型枠52をT字型のコンクリート注入領域(打設領域)51で上下の長手方向に移動させることにより、高さの異なる、すなわち、竪壁部12の長さの異なる橋台ブロック10をプレキャストして提供することができる。
【0034】
さらに、補助型枠52を交換することにより、上部11のパラペット部16の高さが異なったり、支承部15の支承面15aの前後の幅が異なる橋台ブロック10を、共通の型枠50を用いて製造できる。さらに、パラペット部16の高さを制御するために注入領域51を上下の長手方向に移動する第2の補助型枠53を用いてもよい。床板30および31の厚み、長さは、耐荷重などにより変わり、上部11のパラペット部16の高さは、床板30または31の厚みと同一に設定されることが多い。本例の橋台ブロック10は、共通の型枠50により、異なる床板(床版)の厚みに対応したブロック10を簡単に提供できる。
【0035】
図4に橋台ブロック10を工場においてプレハブ(プレキャスト)する異なる例を示している。
図3(a)に示した逆T字型の本例の橋台ブロック10は、
図4に示すように、上部11が横側(水平方向)となるT字型の左右の長手方向に延びたコンクリート注入領域51を有する型枠50aを用いて製造できる。この型枠50aは、上記の型枠50とほぼ共通の構成を備えており、水平方向に延びた台盤57の上に、上部11が水平方向(横方向)に配置され、橋台ブロック10の一方の側面を構成する面が下側となり、他方の側面を構成する部分が上側の開口58となり、コンクリート59が注入(打設)される。この型枠50aを用いて橋台ブロック10を製造することにより、上部11の支承部15の支承面15a、パラペット部16の上面16a、前面16b、後面16cおよび側面の一方が、型枠50のそれぞれの面を規定する面に面した状態で橋台ブロック10が製造される。したがって、上部11においても、側面の一方がコンクリート59の打設面となるが、上部11の他の各面および部分、特に支承部15の上面(支承面)15aは、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい。このため、強度および精度の高い上部11を備え、プレキャスト(工場プレハブ)された一体型の橋台ブロック10を提供できる。
【0036】
この型枠50aにおいても、上部11の上面である支承部15の支承面15a、およびパラペット部16の上面16aおよび前面16bを規定する補助型枠(第1の補助型枠)52をT字型のコンクリート注入領域(打設領域)51の中で左右の長手方向に移動させることにより、高さの異なる、すなわち、竪壁部12の長さの異なる橋台ブロック10をプレキャストして提供することができる。
【0037】
図5に、第1の補助型枠52を上方に移動して(
図5(b))、
図3に示した橋台ブロック10より高さの低い橋台ブロック10a(
図5(a))を製造する様子を示している。また、
図6(b)に示すように、第1の補助型枠52に加えてパラペット部16の高さを調整する第2の補助型枠53を用いてもよく、補助型枠52を取り換えてもよい。
図6(a)に示すように、パラペット部16の高さを含めた上部11の構造が異なる橋台ブロック10bを、共通の型枠50を用いて製造することができる。これらの橋台ブロック10aおよび10bは、
図4に示したような上部11が横方向(横側、水平方向)に配置された型枠を用いても同様に製造できる。そして、従来、上方に形成される橋台ブロック10の上部11を工場において型枠を用いて、横側または下側に向けて成形(プレハブ、プレキャスト)することにより、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい上部11を備えた橋台ブロック10を提供できる。
【0038】
高さの異なる複数のタイプの橋台ブロック10、10aおよび10bを製造可能な共通の型枠50および50aにおいては、補助型枠52および/または53が上下に移動できるように、T字型のコンクリート注入領域51の、支承部15およびパラペット部16を含めた上部11を規定する第1の部分55の前後方向の幅w11と、竪壁部12の少なくとも上半部を規定する第2の部分56の前後方向の幅w12とが等しく、第2の部分52から第1の部分51が直線状に延びていてもよい。
【0039】
このような型枠50および50aにより製造された橋台ブロック10、10aおよび10bは、上部11の床板30を支持する支承部15の支承面15aの前後方向の幅w5に対し、竪壁部12の幅w7が大きくてもよい。さらに、橋台ブロック10、10aおよび10bは、支承面15aとパラペット部16とを含めた上部11の前後方向の幅w6と、竪壁部12の少なくとも上半部の前後方向の幅w7とが等しく、竪壁部12から上部11が直線状に延びていてもよい。
【0040】
一体成型された橋台ブロック10は、打ち継ぎなどによるコールドジョイントが発生しない。工場で、橋台ブロック10と同じ方向、すなわち、逆T字型の型枠により橋台ブロックをプレハブすることも可能である。しかしながら、コンクリートが上から、すなわち、支承部およびパラペット部を含む上部構造の方向から投入される場合、砂利が沈み、砂やレイタンスが浮いてくる現象により、支承部のコンクリート強度を確保することが難しい。側面から打設する方式の型枠50aを用いて橋台ブロック10をプレハブすることにより、打ち込み面近くの支承部の強度の低下を抑制でき強度の高い橋台ブロック10を提供できる。
【0041】
さらに、上部11が下側に配置されたT字型の型枠を用いた方法では、現場施工とは逆に底面(基礎部)から打設している。この方法により、支承部15の側で砂利が沈み、砂やレイタンスが浮いてくる現象はさらに発生しにくく、さらに強固な支承部15を備えた橋台ブロック10を提供することができる。また、上部11、竪壁部12および基礎部13との間に打ち継ぎも発生せず、全体的に強度が高い橋台ブロック10を提供できる。
【0042】
図7に、プレキャストされた橋台ブロック10により組み立てられた橋台101の一例を上方から見た様子を示し、
図8に橋台ブロック10の一例を側方から見た様子を示す。橋台ブロック10は、橋台101を横方向(橋梁の幅方向)109に分割したものであり、複数の橋台ブロック10を横に並べて配置することにより簡単に橋台101を施工できる。これらの橋台ブロック10においては、型枠50を用いてプレキャストする際に、複数の目的に応じた複数種類の埋設金物を埋設しておくことが可能である。本例の橋台ブロック10は、上部11の支承部15の上方を向いた支承面15aに、橋台ブロック10を工場から搬送したり、現場に搬入する際に吊り下げるための吊り下げ金具を取り付ける埋設金物63と、複数の橋台ブロック10を左右(橋梁の幅方向)に並べて橋台10を施工する際に複数の橋台ブロック10を接続するための埋設金物65と、橋梁1を施工する際に橋台ブロック10と床板31または31とを接続するアンカーを設置するための埋設金物(インサート)61とが予め埋設されている。さらに、逆T字型をなすための基礎部(フーチング部)13の前側に延びた第1の基礎部(前側基礎部)13aと後側に延びた第2の基礎部(後側基礎部)13bのそれぞれに、高さ調整用のボルトを貫通して取り付けるためのナット部を含む貫通孔70が設けられている。
【0043】
吊り用の埋設金物63の一例は、デーハーと称される埋設金物であり、
図9に示すように、橋台ブロック10のコンクリート表面内に突き出た突起に吊り金物としてフック(デーハーカプラ、治具)93を取付けて、チェーン(ワイヤー)91やレバーブロック(登録商標)92を用いて橋台ブロック10を搬出および搬入できる。橋台ブロック10の上部に位置する上部11の支承部15の支承面15aは、上方を向いた面であり、作業スペースも確保しやすい吊り用の埋設金物63を設置する場所として好適である。一方、橋台ブロック10を安定して吊り下げるためには、支承面15aから離れた場所にも吊り金物を取付けられることが望ましい。本例の橋台ブロック10は、上部11のパラペット部16を挟んで反対側の、竪壁部12の裏面側19bの左右方向の中央に埋設金物63を配置し、支承面15の左右に離れて設けられた2つの埋設金物63とともに、3点で橋台ブロック10を吊り下げできるようにしている。なお、吊り用の埋設金物63は、デーハーに限らずインサートなどであってもよく、吊り金物はアイボルトなどであってもよい。
【0044】
このプレキャスト橋台10は既設構造物の極力近くに設置したい。また、吊り下げした後、埋設金物63から、治具93を取り外す必要がある。したがって、治具93は敷設した後、取り外し可能でなければならない。橋台ブロック10が2トンを超える場合は、3点あるいは4点吊りが好ましい。上部11のパラペット部16の高さが変わるなどの事情があると同じ型枠50を用いた製品であっても重心の位置が異なる。この点でも、吊り下げるときは3点あるいは4点吊りが好ましい。支承面15a以外に吊り用の埋設金物63を設ける場合は、それ以外の場所に設けられた埋設金物63から治具93の取り外しが可能な場所であることが好ましく、橋台ブロック10を設置した後を考えると、背面19bは人が入れるスペースがあるのに対し、前面19aは全くないか、広くても15センチ程度であると予想される。したがって、埋め込み金物63は支承部15からの距離H1が1m以内であることが好ましく、50cm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
図10に、複数の橋台ブロック10を接続するための埋設金物(接続金物、フランジ金物、コッター)65の一例を示している。この埋設金物65は、向かい合わせた状態でボルトナットなどにより面合わせで密着することができるフランジ部65bと、フランジ部65bを橋台ブロック10の内部の配筋(鉄筋)と接続するための脚部65aとを含み、フランジ部65bには、接続用のボルトナットを通すための孔(長孔)65cが設けられている。長孔65cは水平方向に対して斜めに傾いており、隣接する橋台ブロック10の位置(高さ)や、埋設金物65の埋設位置が多少変化しても、ボルトナットによりそれらを接続できるようになっている。プレキャスト橋台10の大きなメリットの1つは、工場プレハブしたものを現場で組み立てられることであり、搬入搬出を考慮すると1台の橋台ブロック10の重量には制限がある。したがって、大型になるとプレキャスト橋台10は重いので分割されている。したがって、現場において複数の橋台ブロック10を接続する作業が発生することがある。
【0046】
図8に示すように、接続金物65は、支承面15の端だけではなく、竪壁部12の両側面12cにも、竪壁部12の前面12aおよび後面12bから操作できる位置にも埋設されている。竪壁部12に埋設された接続金物65は、支承面15aから50cm以内の距離に埋設されていてもよい。接続金物65は、支承面15aから作業員がアクセスしやすい位置、例えば、支承面15aからの距離(深さ、高さ)H1が50cm以内の位置に埋設されていてもよい。この橋台ブロック10は、河川2の護岸用に擁壁5の背面にできるだけ近づけて配置されることが多い。接続金物65の位置が支承面15aから50cm以内であれば、橋台ブロック10の前側19aが擁壁5に接近するように埋設されても、支承面15aに乗った作業者により接続金物65にアクセスが可能であり、複数の橋台ブロック10により橋台101を施工する際の接続作業を行うことができる。吊り用の埋設金物を橋台ブロック10の前側19aに設ける場合も同様である。
【0047】
図11に、プレキャストされた複数の橋台ブロック10により施工された橋台101の他の例を上方から見た様子を示し、
図12に橋台ブロック10の他の例を側方から見た様子を示す。この橋台ブロック10は、接続金物65の代わりに、接続プレートを配置するための凹部66と、凹部66に現れるように配置されたインサート67とを含む。橋台101を施工するために隣接する橋台ブロック10を接続する際は、凹部66に隣接する橋台ブロック10にわたるように接続プレートを配置してインサート67を用いてボルトにより固定することができる。
【0048】
図13に、橋台ブロック10の支承部15の支承面15aに埋設されているインサート61に連結金物(アンカー)80を取付けて床板30を組み合わせ、橋梁1を施工する様子を示している。本例においては、単純梁伸縮固定方法により橋梁1を設計および施工する。単純梁の支点条件は、一端が「ピン支点」、他端が「ローラー支点」となっている。「ピン支点」は固定されているが、「ローラー支点」は可動しなければならない。しかしながら、梁に常に振動が加わる場所では、梁が脚から大きくずれたり、外れないようにすることが好ましい。この発明は特に、床板(床版)30の長さが8m以下の小さな橋に有効である。
【0049】
小さな橋を設計する場合、一方をピン固定にして、他方をフリーにすることが多い。すなわち、従来の簡易な橋梁においては、一方の橋台の支承部から鉄筋を突出させ、床板の一方に孔を設けて鉄筋と組み合わせ、床板を設置した後、孔と鉄筋との隙間にコンクリートを流して埋めている。この橋梁の他方の橋台および床板は何もせずフリーとしている。このような従来の簡易な橋梁においては、車両が頻繁に通行する現場、あるいは片方に傾斜している橋、斜角の橋では、床板が橋台からずれてしまう可能性がある。
【0050】
したがって、片側フリーであった部分を多少可動させながらも、地震時、あるいは梁に車両からの振動が加わっても、床板が大きくずれたり、外れることがなく、車が、頻繁に通行できる橋梁を経済的にも安く施工することが求められている。
【0051】
このため、本例の橋梁1の施工方法においては、左右の橋台101を構成する橋台ブロック10に連結される床板(床版、床板ブロック)30の両側に貫通孔33を設け、橋台ブロック10の支承部15に予め埋設されている連結用のインサート61に連結金物(アンカー)を取付けて貫通孔33に挿入し、床板ブロック30と橋台ブロック10とを連結することにより、橋台101と床板103とにより橋梁1を施工できるようにしている。さらに、ピン支点側となる右側3aにおいては、インサート61に鉄筋またはアンカーピン89を取付けて、貫通孔33に挿入した後、モルタル39によりアンカーピン89と床板30とを固定する。
【0052】
一方、ローラー支点側となる左側3bにおいては、
図14に示すように、橋台ブロック10の支承面15aに設けられたインサート61に、ウレタンまたはゴムなどのフレキシブルな素材からなる柱体(カバー、樹脂体、弾性体部材)82でアンカーピン81、例えば鉄筋が覆われたアンカーバー80を取付ける。その後、
図15に示すように、アンカーバー80のキャップ82が貫通孔33に挿入されるように床板30を橋台ブロック10の支承部15の支承面15aに搭載する。さらに、
図16に示すように、アンカーバー80のフレキシブルな弾性体部材82と貫通孔33との間にモルタルなどの充填材39を注入し、橋台ブロック10と床板ブロック30とを連結する。したがって、ローラー支点側3bにおいては、床板30の貫通孔33に固定されたフレキシブルな弾性体部材82の内部で鉄筋などのアンカーピン81が一定程度可動することができる。また、弾性体からなる部材82はショックアブソーバーとしても機能する。このため、地震時、あるいは橋梁1に車両からの振動が加わっても、床板30が大きくずれたり、外れることがなく、車が、頻繁に通行できる安全で耐久性の高い橋梁1を経済的にも安く施工することができる。
【0053】
すなわち、簡易な床板(床版)ブロック30を用いて施工される橋梁1であっても、弾性ゴム付きピンであるアンカーバー80により床板ブロック30からなる床板103と、橋台ブロック10からなる橋台101とを接続することにより、床板103(ブロック30)が上下、左右に可動した際に、その揺れを吸収できる。したがって、簡易な構成でプレキャストされた橋台ブロック10と床板ブロック30とを用いて施工された橋梁1であって、床板103のずれを防ぎ、脱落しにくい構造の橋梁1を提供できる。
【0054】
図17に、床板ブロック30に設けられた貫通孔33のいくつかの例の構造を拡大して示している。
図17(a)および(b)に示した貫通孔33は、モルタル(コンクリート)39が注入される上部36は上側が広く、下側は狭く縮小したテーパー状であり、
図17(a)に示した貫通孔33は、さらに、上部36より径が小さな中間部34を含む。したがって、これらの貫通孔33においては、注入されたモルタル39は、上から圧力が加わっても、下側が狭いテーパー構造や下側が狭い段差構造により下側に移動することがなく、貫通孔33に挿入されたアンカーバー80の弾性体部材82がモルタル39により押しつぶされたり圧力が加わって弾性体内部のピン81の移動範囲が大幅に狭められたりすることを防止できる。貫通孔33の上部の溝(孔)の部分のみをコンクリートで埋めてもよい。貫通孔33に、このような構造を採用することにより、床板30の上部を通過する車両の輪荷重あるいは振動などによりコンクリート39が下方に移動してアンカーバー80のフレキシブルな機能を損ねることを防止できる。また、貫通孔33の表面が凹んだりすることも防止できる。
【0055】
アンカーピン81の上部を弾性体部材82で覆ったアンカーバー80を使用する代わりに、アンカーピン81を橋台ブロック10のインサート61に取り付けて貫通孔33に挿入し、アンカーピン81の周囲に樹脂あるいはゴムなどの弾性体を注入してフレキシブルな領域を施工し、さらに、その上部をモルタル(コンクリート)39で封止してもよい。「ローラー支点」となる貫通孔33は、鋼製のキャップで封をしてもよい。貫通孔33を埋めるコンクリート(モルタル)39は、アンカーバー80に接しないように貫通孔33の上部だけを埋めるようにしてもよい。コンクリート39で貫通孔33を封鎖すると、床板ブロック30はコンクリート製であるため、色やその他の違和感がない。
【0056】
図18に、アンカーバー80の一例を示している。このアンカーバー80は工場で製造することが可能であり、
図18(b)に示すように、ウレタンあるいはゴムなどの弾性体を用いて、ねじ切りした鉄筋(アンカーピン)81を覆う部材(弾性体部材)82を成型する。本例では、弾性体部材82は先端が細くなった円錐台状であり、貫通孔33に差し込みやすい形状となっている。この弾性体部材82には鉄筋81が挿入できる孔84が開いており、鉄筋81を差し込むことにより
図18(a)に示すアンカーバー80を製造できる。このアンカーバー80は、アンカーピンとなる鉄筋81と弾性体部材82とが工場プレハブされており、現場において橋台ブロック10のインサート61に取り付けて、床板30の貫通孔33と組み合わせることによりローラー支点を構成できる。
【0057】
橋台ブロック10のインサート61にねじ切りした鉄筋をねじ込み、床板ブロック30の貫通孔33に挿入したのち、貫通孔33の下部にウレタン、あるいはブチルゴムなどの弾性体を詰め込んでもよい。しかしながら、現場で弾性ウレタン、あるいはブチルゴムなどの弾性体を埋め込みすることは面倒である。例えば、ブチルゴムは冬場は硬くなり挿入し難く、夏場はべとべとして扱いにくい。ウレタンは2液を混ぜるので、現場での作業は面倒である。工場で、所定の形状の弾性体部材82を量産し、鉄筋(アンカーピン)81と組み合わせてアンカーバー80を製造することにより、低コストで、安定した品質のアンカーバー80を提供できる。
【0058】
図19に、アンカーバーの異なる例を示している。
図19(a)のアンカーバー80aは円柱状の弾性体部材83にアンカーピン81が挿入され、一体化されている。
図19(b)のアンカーバー88は、鋼製の円筒状の鉄パイプ(シース)87の内部に弾性体86が注入され、アンカーピン85と一体化されている。このアンカーバー88は、鉄パイプ87により弾性体86がカバーされているので弾性体86はコンクリートによる影響を受けにくい。しかしながら、鉄パイプ87が装着されているので、重く、高価である。
【0059】
図20に、橋台ブロック10を現場に設置する際に高さ調整を行う様子を示している。逆T字型の橋台ブロック10は前後に延びたフーチング部を基礎部13として含む。フーチング部13は前後に高さ調整用のボルト75を貫通して取り付ける貫通孔70が設けられている。
図21に拡大して示すように貫通孔70は、ボルト75を操作するための上部の広い孔71と、その下でボルト75をガイドする孔72と、その下に埋設されたワッシャータイプのナット部73とを含む。フーチング部13の貫通孔70にボルト75を差し込んで回すことによりボルト75がフーチング部13の底面13cから下側に飛び出して、基礎7との間の高さを調整できる。
【0060】
例えば、砕石7bの上に基礎コンクリート7aを打設し、その上に橋台ブロック10を配置し、フーチング部13の前後に設けられた貫通孔70にボルト75を装着することによりフーチング部13の底面13cと基礎コンクリート7aとの間の間隔を調整できる。貫通孔70は、フーチング部13の前後の少なくとも3か所に設けられており、基礎コンクリート7aに対して橋台ブロック10の高さおよび傾きを調整できる。施工現場においては、フーチング部13の前後に型枠79を配置し、橋台ブロック10の高さおよび傾きを調整した後に、型枠79にモルタル39または充填材を注入することにより基礎コンクリート7aに対する橋台ブロック10の姿勢を固定できる。
【0061】
特に、上部11が下側となる型枠50により製造された橋台ブロック10は、製造時に上下が逆転した状態で製造され、基礎部13の底面13cがコンクリートの打設面となり精度の高い平面で仕上げられていない。底面13cと基礎コンクリート7aとの間隔を複数のボルト75で調整することにより、底面13cの精度が低くても、現場において、簡単に、高い精度で橋台ブロック10を設置できる。
【0062】
図22に、橋台ブロック10と、床板ブロック30および31により組み立てられた橋梁1を上方から見た様子を示している。例えば、床板ブロック30および31は幅2m、長さ8mであり、両側に配置された3×2個の橋台ブロック10からなる橋台101と、合計3枚の床板ブロック30および31による床板103とにより、全体の幅が6mでスパンが8mの橋梁1が施工されている。
【0063】
図23(a)に、床板ブロック30および31により組み立てられた橋上部構造41の床板103の端部を示し、
図23(b)に橋上部構造41の床板103の中央の断面を示している。中央の床板ブロック30は、ほぼ平坦な一枚のプレキャスト板で構成され、左右の床板ブロック31は地覆ブロック20と床板部35とが一体成型されたものである。この床板ブロック31においては、一体化された地覆ブロック20の長さが床板ブロック31の長さより短い。したがって、施工された橋梁1の地覆102は床板103より短くなり、コーナーの隅切りが不要となっている。
【0064】
図24に、地覆ブロック20と床板部35とを一体成型された床板ブロック31を製造するための型枠29の一例を示している。地覆20と一体で床板部35とを工場プレハブ(プレキャスト)することにより現場での施工期間を短縮できる。さらに、現場での地覆20と床板部35との間の打ち継ぎがないので鉄筋がさびたり、打ち継ぎ部の強度が低下することを考慮する必要がなく、地覆ブロック20の幅を薄くすることができる。また、地覆ブロック20の長さを床板31の長さより短くすることにより、橋梁1の出入り口において車両と地覆102との干渉を防止できる。
【0065】
図25は、異なる形状の地覆ブロック20が床板部35と一体成型された床板ブロック31を用いた橋梁の上部構造41を上から見た様子を示している。床板ブロック31に一体化された地覆ブロック20は、その内側の長さが床板ブロック31の長さより短く、さらに、端部23は内側が狭くなるように斜めにカットされている。この端部23は、斜めに立ち上がっていてもよい。このような端部23は隅切りの役目を果たし、車が入りやすい橋梁1を施工できる。
【0066】
図26および
図27に、本発明の異なる例の橋台ブロック10cを示している。
図28および
図29に、この橋台ブロック10cを用いて施工された橋梁1を示している。本例の橋台ブロック10cも全体として逆T字型であり、支承部15とパラペット部16とを含めた上部11と、竪壁部12と、フーチング状の基礎部13とを含み、全体として上述した橋台ブロック10と共通した構造を備えている。したがって、橋台ブロック10と同様に、上下逆転した型枠50または上部11が横方向を向いた型枠50aを用いて一体的にプレキャストすることが可能である。本例の橋台ブロック10cは、竪壁部12の前面12aに対して後面12bが上方に広がる(上方に張り出した、下方に狭まる)形状となっており、支承面15aとパラペット部16とを含めた上部11の前後方向の幅w6に対して、竪壁部12の少なくとも下半部の前後方向の幅w7が狭くなっている。したがって、上下逆転した型枠50においては、竪壁部12の後面12bを成形する部分が解放されるような機構を備えていることが望ましい。一方、竪壁部12を、上方が張り出し、下方が狭くなった形状とすることにより、上部11の幅w6を確保しながら、全体として細くすることが可能であり、軽量化を図ることができる。したがって、上下に長い橋台ブロック10cを比較的軽く、低コストで工場プレハブすることができ、製造コストのみならず、輸送コストおよび施工コストを低減できる。
【0067】
図28および
図29に示すように、本例の橋台ブロック10cを複数組み合わせて橋台101を施工することにより、上部11が竪壁部12に対して後方19bに張り出した形状の橋台101を施工できる。この橋台101は、竪壁部12の厚みに対して、支承面15aを比較的広く確保することが可能であり、経済的な橋台101を施工できる。
【0068】
図30および
図31に、本発明の異なる例の橋台ブロック10dを示している。
図32および
図33に、この橋台ブロック10dを用いて施工された橋梁1を示している。本例の橋台ブロック10dは全体としてL字型であり、支承部15とパラペット部16とを含めた上部11と、竪壁部12と、竪壁部12から後方19bにL字型に延びた基礎部13とを含み、全体として上述した橋台ブロック10と共通した構造を備えている。したがって、橋台ブロック10と同様に、上下逆転した型枠50または上部11が横方向を向いた型枠50aを用いて一体的にプレキャストすることが可能であり、強度および耐久性の高い支承面15aを備えた橋台ブロック10dを工場プレハブして提供することができる。さらに、本例の橋台ブロック10dは側面形状がL字型であり、支承面15aとパラペット部16とを含めた上部11の前後方向の幅w6と、竪壁部12の前後方向の幅w7とが同じであり、補助型枠を用いて上下のサイズを変更することが容易な構成となっている。また、本例の橋台ブロック10dは、側面形状がL字型であり、前側19aに基礎部13が突き出ていない。したがって、河川2の護岸5にさらに接近した位置に配置することが可能であり、護岸5に近い位置に橋台101を施工できる。
【0069】
図32および
図33に、本例のL字型の橋台ブロック10dを用いて施工された橋梁1の典型的な例を示す。側面がL字型の本例の橋台ブロック10dを複数組み合わせることにより、河川2の両側に、前方19aへ突出した部分が基本的にはないL字型の橋台101を施工することができる。河川2の護岸5が、断面がコ字型(C字型)で上方が開いた開渠用のブロック500を用いて施工されている場合は、開渠用のブロック500の側壁501に、L字型の橋台ブロック10dを、その前側19aがほとんど密着または隣接するように設置できる。したがって、橋台ブロック10dを用いて河川2の両側の護岸5に極めて近い位置に橋台101を施工することが可能であり、河川2の川幅に対して極めて距離(間隔、スパン)が短い橋梁1を施工することが可能である。このため、低コストで、高強度であり、さらに、両岸の道路などへの影響の小さい橋梁1を施工できる。
【0070】
図34および
図35に、本発明のさらに異なる例の橋台ブロック10eを示している。
図36および
図37に、この橋台ブロック10eを用いて施工された橋梁1を示している。本例の橋台ブロック10eも全体としてL字型であり、支承部15とパラペット部16とを含めた上部11と、竪壁部12と、L字型に後方19bにのみ突き出た基礎部13とを含み、全体として上述した橋台ブロック10と共通した構造を備えている。したがって、橋台ブロック10と同様に、上下逆転した型枠50または上部11が横方向を向いた型枠50aを用いて一体的にプレキャストすることが可能であり、強度および耐久性の高い支承面15aを備えた橋台ブロック10eを工場プレハブして提供することができる。本例の橋台ブロック10eは、上述した橋台ブロック10cと同様に、竪壁部12の前面12aに対して後面12bが上方に広がる(上方に張り出した、下方に狭まる)形状となっており、支承面15aとパラペット部16とを含めた上部11の前後方向の幅w6に対して、竪壁部12の少なくとも下半部の前後方向の幅w7が狭くなっている。したがって、橋台ブロック10cと同様に、上下逆転した型枠50においては、竪壁部12の後面12bを成形する部分が解放されるような機構を備えていることが望ましい。一方、竪壁部12を、上方が張り出し、下方が狭くなった形状とすることにより、上部11の幅w6を確保しながら、全体として細いL字型に成形することが可能であり、比較的大型の橋台ブロック10eを比較的軽量で提供できる。したがって、上下に長いL字型の橋台ブロック10eを比較的軽く、低コストで工場プレハブすることができ、製造コストのみならず、輸送コストおよび施工コストを低減できる。
【0071】
図36および
図37に示すように、本例の橋台ブロック10eを複数組み合わせて橋台101を施工することにより、全体(側面)がL字型で、上部11が竪壁部12に対して後方19bに張り出した形状の橋台101を施工できる。この橋台101は、竪壁部12の厚みに対して、支承面15aを比較的広く確保することが可能であり、経済的な橋台101を施工できる。さらに、橋台ブロック10eは側面がL字型で、前方19aに突き出た部分がないので、上記のL字型の橋台ブロック10dと同様に、河川2の護岸5が、断面がコ字型(C字型)で上方が開いた開渠用のブロック500を用いて施工されている場合は、開渠用のブロック500の側壁501に、ほとんど密着または隣接するように設置できる。したがって、橋台ブロック10eを用いて河川2の両側の護岸5に極めて近い位置に橋台101を施工することが可能であり、河川2の川幅に対して極めて距離(間隔、スパン)が短い橋梁1を施工することが可能となる。
【0072】
以上において説明したように、本発明のプレキャストされた橋台ブロックを採用することにより、短期間で、耐久性の高い橋梁1を低コストで施工し、提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1 橋梁、 10、10a、10b、10c、10d、10e 橋台ブロック
20 地覆ブロック、 30 床板ブロック
101 橋台、 102 地覆、 103 床板