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  • 特開-教育装置、教育方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007423
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】教育装置、教育方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/335 20190101AFI20240110BHJP
【FI】
G06F16/335
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104527
(22)【出願日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022106341
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509117469
【氏名又は名称】有限会社BOND
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】古川 ひろ美
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175FA01
5B175GB04
5B175HA01
(57)【要約】
【課題】 利用者に対して、データベースの検索結果を伝えることに適した教育装置等を提案する。
【解決手段】 教育装置1は、利用者に対してデータベース部5の検索結果を配信する。教育装置1において、キーワード処理部11は、利用者により入力された状況データを解析してキーワードを生成する。データベース部5は、キーワードに含まれる検索キーワードデータを用いた検索処理により状況検索結果データを得る。シソーラス処理部13は、キーワードに含まれる表現キーワードデータの少なくとも一部を他の単語に置き換える。表現調整部15は、シソーラス処理部13が置き換えた後の処理後表現キーワードデータを用いて表現調整データを生成する。配信制御部17は、出力部19において表現調整データを用いて表現を調整して状況検索結果データを配信する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対してデータベース部の検索結果を配信する教育装置であって、
キーワード処理部と、シソーラス処理部と、配信制御部と、データベース部を備え、
前記キーワード処理部は、前記利用者により入力された状況データを解析してキーワードを生成し、
前記データベース部は、前記キーワードに含まれる検索キーワードデータを用いた検索処理により状況検索結果データを得、
前記シソーラス処理部は、前記キーワードに含まれる表現キーワードデータの少なくとも一部を他の単語に置き換え、
前記配信制御部は、出力部において前記シソーラス処理部が置き換えた後の処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データを配信する、教育装置。
【請求項2】
前記利用者は、前記状況データとは別に索引データを入力し、
前記データベース部は、前記索引データを用いて検索して索引検索結果データを得、
前記配信制御部は、出力部において前記処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データ及び前記索引検索結果データを配信する、請求項1記載の教育装置。
【請求項3】
前記シソーラス処理部は、異なる感情に対応して異なる単語が使用されるキーワードを、同じキーワードに置き換える、請求項1記載の教育装置。
【請求項4】
前記状況データを入力した前記利用者を特定する解析部を備え、
前記配信制御部は、利用者に応じて表現を調整して前記状況検索結果データを配信する、請求項1記載の教育装置。
【請求項5】
利用者に対してデータベース部の検索結果を配信する教育装置における教育方法であって、
前記教育装置は、キーワード処理部と、シソーラス処理部と、配信制御部と、データベース部を備え、
前記キーワード処理部が、前記利用者により入力された状況データを解析してキーワードを生成するステップと、
前記データベース部が、前記キーワードに含まれる検索キーワードデータを用いた検索処理により状況検索結果データを得、
前記シソーラス処理部が、前記キーワードに含まれる表現キーワードデータの少なくとも一部を他の単語に置き換えるステップと、
前記配信制御部が、出力部において前記シソーラス処理部が置き換えた後の処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データを配信するステップを含む教育方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1記載の教育装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、教育装置、教育方法及びプログラムに関し、特に、利用者に対してデータベース部の検索結果を配信する教育装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、例えば特許文献1及び2などにあるように、作成者が入力した情報を利用して番組を制作するシステムを研究・開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4725936号公報
【特許文献2】特許第4725918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は、従来の有識者の知識をデータベース化したシステムの構成の一例を示すブロック図である。利用者は、データベースにおける索引データを入力して、データベースを検索して検索結果を得ることができる。しかしながら、利用者は、データベースを検索することに適した索引の単語を知る必要がある。利用者に一定の知識を要求するため、特に初心者では適切な回答を得ることができず、また、その説明も「わかる人にはわかる」というものとなり、使い勝手の悪いものとなっていた。
【0005】
図4は、出願人が提供する従来の番組制作システムの構成の一例を示すブロック図である。利用者が番組を制作するための素材となる素材データ(文字・音声・画像などの各種データ)を入力すると、素材データを解析して表現すべき内容を示す解析データを生成する。表現調整部は、表現を調整するための表現調整データを生成する。配信制御部は、出力部において、表現調整データによって表現を調整して解析データを出力する。しかしながら、利用者が入力した素材データに合わせて表現することに適しているため、例えば、利用者が困惑の感情に関する素材データを入力してしまうと、困惑の感情をダイレクトに伝える番組になる可能性があった。そのため、利用者に対して有識者の知識などを伝える場合には修正が必要になる。
【0006】
そこで、本願発明は、利用者に対して、データベースの検索結果を伝えることに適した教育装置等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の側面は、利用者に対してデータベース部の検索結果を配信する教育装置であって、キーワード処理部と、シソーラス処理部と、配信制御部と、データベース部を備え、前記キーワード処理部は、前記利用者により入力された状況データを解析してキーワードを生成し、前記データベース部は、前記キーワードに含まれる検索キーワードデータを用いた検索処理により状況検索結果データを得、前記シソーラス処理部は、前記キーワードに含まれる表現キーワードデータの少なくとも一部を他の単語に置き換え、前記配信制御部は、出力部において前記シソーラス処理部が置き換えた後の処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データを配信する。
【0008】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の教育装置であって、前記利用者は、前記状況データとは別に索引データを入力し、前記データベース部は、前記索引データを用いて検索して索引検索結果データを得、前記配信制御部は、出力部において前記処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データ及び前記索引検索結果データを配信する。
【0009】
本願発明の第3の側面は、第1又は第2の側面の教育装置であって、前記シソーラス処理部は、異なる感情に対応して異なる単語が使用されるキーワードを、同じキーワードに置き換える。
【0010】
本願発明の第4の側面は、第1から第3のいずれかの側面の教育装置であって、前記状況データを入力した前記利用者を特定する解析部を備え、前記配信制御部は、利用者に応じて表現を調整して前記状況検索結果データを配信する。
【0011】
本願発明の第5の側面は、利用者に対してデータベース部の検索結果を配信する教育装置における教育方法であって、前記教育装置は、キーワード処理部と、シソーラス処理部と、配信制御部と、データベース部を備え、前記キーワード処理部が、前記利用者により入力された状況データを解析してキーワードを生成するステップと、前記データベース部が、前記キーワードに含まれる検索キーワードデータを用いた検索処理により状況検索結果データを得、前記シソーラス処理部が、前記キーワードに含まれる表現キーワードデータの少なくとも一部を他の単語に置き換えるステップと、前記配信制御部が、出力部において前記シソーラス処理部が置き換えた後の処理後表現キーワードデータを用いて表現を調整して前記状況検索結果データを配信するステップを含む。
【0012】
本願発明の第6の側面は、コンピュータを、第1から第4のいずれかの側面の教育装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の各側面によれば、利用者が状況データを入力することによりデータベースを検索して得られた解析データを、入力された状況データをシソーラス処理した後に表現を調整して配信することにより、利用者に対して有識者の知識などを伝える場合などに適した表現を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の実施の形態に係る教育システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1の教育システムの動作の一例を示すフロー図である。
図3】従来の有識者の知識をデータベース化したシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図4】従来の番組制作システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本願発明の実施の形態に係る教育システムの構成の一例を示すブロック図である。図2は、図1の教育システムの動作の一例を示すフロー図である。
【0017】
図1を参照して、教育システムは、入力処理部3と、出力部19と、教育装置1を備える。
【0018】
入力処理部3は、利用者による入力処理を行うものである。出力部19は、利用者に対して出力するものである。入力処理部3及び出力部19は、例えばカメラ付きタッチパネルのように同じ装置において実現してもよく、入力処理部3はキーボード、マウス、カメラなどにより、出力部19は、スピーカー、ディスプレイなどによって別の装置として実現してもよい。
【0019】
教育装置1は、例えばプログラムの制御によって動作するコンピュータなどで実現することができる。教育装置1は、利用者に対してデータベース部5の検索結果を配信する。教育装置1は、解析部9と、キーワード処理部11と、シソーラス処理部13と、表現調整部15と、配信制御部17と、データベース部5と、回答処理部7を備える。
【0020】
データベース部5は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。データベース部5は、有識者が有する知識(ノウハウなど)を定型化してデータベース化したものであり、索引データなどによって検索することができるシステムである。
【0021】
利用者が入力処理部3によって索引データを入力すると、データベース部5は、索引データを用いて検索処理を行い、一つ又は複数の索引検索結果データを生成する。データベース部5は、例えば、外部サーバにおけるデータベースに対して検索処理を行うものであってもよい。
【0022】
また、利用者は、入力処理部3によって状況データを入力する。状況データは、文字データ、音声データ及び画像データ(静止画、動画など)の少なくとも一つを含む。例えば利用者が道具の使用方法が分からないとき、利用者はカメラで道具を撮影して画像データを入力する。また、道具を使用する具体的な場面を文字データで入力したり、音声データで入力したり、画像データで入力したりすることもできる。なお、状況データは本教育システムが周囲のセンサ、インターネット、その他の情報源から自動的に収集した結果を用いてもよい。
【0023】
索引データは、いわば、データベース部5の検索に適した単語などである。他方、状況データは、利用者の現状を示すものである。そのため、索引データと状況データは、異なるものである。なお、索引データに関する処理は省略してもよい。索引データを省略した場合、以下の処理では索引検索結果データがないものとすれば、同様に実現することができる。
【0024】
解析部9は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。解析部9は、各種データを分析するためのものである。例えば、状況データを分析してキーワードを抽出できる状態にする。例えば、音声データにおいて文字列を抽出して文字データとする。画像データにおいて撮影されている物体を特定して、キーワードを抽出できる状態にする。また、状況データに撮影されている人物を特定して利用者を特定する。
【0025】
キーワード処理部11は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。キーワード処理部11は、解析部9によって状況データからキーワードを抽出できる状態になった後に、キーワードを抽出する処理を行う。キーワードは、表現キーワードデータと、検索キーワードデータを含む。表現キーワードデータと検索キーワードデータは、同じでもよく、異なってもよく、一部が同じで一部が異なるものでもよい。
【0026】
データベース部5は、検索キーワードデータを用いて検索処理を行い、複数の状況検索結果データを生成する。
【0027】
回答処理部7は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。回答処理部7は、索引検索結果データ及び複数の状況検索結果データを分析して、各データに対して特徴データを付与する。例えば、暗黙知の顕在化と整理を行うために、複数の判定部(複数の異なる人工知能(AI)処理など)によって各判定部に個性を持たせた事象判断を行って、索引検索結果データ及び複数の状況検索結果データのそれぞれの特徴を分析する。例えば、何かトラブルが発生した場合に、その原因と解決策になり得るものについての知識を検索するときに、一般的に疑わしいもの、生じることは少ないが深刻なミスが生じるもの、生じることは少なく軽微なもの、など、それぞれの原因と解決策には特徴がある。特徴データは、検索により得られた知識に対して、その特徴を示すために付与されるものである。特徴データは、例えば、AIの判断を比較することによって決定された利用者に伝えるべき優先順位を示すデータである。回答処理部7は、例えば多数決などを利用して優先順位などを決定してもよい。回答処理部7が生成する回答データは、索引検索結果データ及び複数の状況検索結果データのそれぞれと、特徴データとを組み合わせたものである。
【0028】
解析部9は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。解析部9は、状況データを分析して得られた情報と回答データを利用して解析データを生成する。これは、例えば、図4の例における新たな素材データを、状況データに回答データを加えたものとすることにより実現することができる。解析データは、例えば、配信処理に使用するための文字データ、画像データ、音声データなどである。例えば、状況データによって明らかにされた質問などの内容を読み上げるための音声データなどである。また、回答処理部7によって得られた、質問などに対する回答を表現するためのデータであり、例えば、道具の利用方法を示す回答を読み上げるための音声データ、画像データなどである。さらに、特徴データを分析して、状況データより得られる利用者の状況に合った回答を優先的に選択する。例えば利用者が初心者であれば、トラブルに対する一般的な解決策を優先的に伝える。他方、例えば利用者が詳しいはずの状況であるにもかかわらずトラブルに困惑して質問をしている場合には、一般的に生じやすいトラブルよりも、生じることは少ないが深刻なミスが生じるものを優先する。
【0029】
解析部9は、状況データ、ログイン情報などによって利用者を特定してもよい。この場合、解析部9は、利用者ごとに、経歴、検索履歴などを記憶する利用者情報特定部(図示を省略)を備える。解析部9は、例えば、データベース部5及び/又は回答処理部7に対して利用者情報特定部が有する利用者の情報を送って回答処理部7が利用者に応じた一つ又は複数の回答データを生成してもよい。また、利用者に複数の回答データを提示して選択するようにしてもよい。また、解析部9は、利用者情報特定部が有する利用者の情報を使って、利用者に応じて解析データを生成してもよい。また、解析部9は、表現調整部15に対して利用者情報特定部が有する利用者の情報を送って表現調整部15が利用者に応じた表現調整データを生成してもよい。従来のシステムでは、利用者の知識を低く、データベース部5に蓄積された有識者の知識を高く位置づけ、いわば、有識者の高度な知識を、未熟な利用者に伝達する、という一方向での情報の伝達に留まりがちであった。それに対し、教育装置1は、有識者の知識を含む回答データを利用者に応じて生成したり、利用者に応じて回答データを解析データとして文字列などで表現したり、利用者に応じた表現調整データにより利用者に適した表現に調整したりすることができ、より利用者に応じた細やかな表現が可能であるうえ、一の利用者に対する回答を利用者情報特定部、解析部9などの各部に蓄積していくことで教育装置1の利用者に応じた回答の細やかさを増すことができる。そのため、利用者に対する単なる知識の伝達に留まらず、利用者の成長とともに教育装置1も変化して成長させ、利用者に共感しつつ、利用者に自ら考える機会を的確に与え、その成長を促すことができる。
【0030】
シソーラス処理部13は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。シソーラス処理部13は、表現キーワードデータに対して、平常心を主としたシソーラスを用いて、単語に合わせた評価をする。回答に当たっては、利用者の感情に合わせて共感する表現よりも、利用者を落ち着かせて冷静にさせるような表現が必要となるためである。シソーラス処理部13は、例えば、同じ意味合いの表現でも異なる感情に対応して異なる単語が使用されるキーワードに対して、同じキーワードに置き換える。これにより、利用者に対して、利用者が様々な状況にあっても、様々な状況に対応できる平常心でのコミュニケーションを実現することができる。
【0031】
表現調整部15は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。表現調整部15は、シソーラス処理部13による処理後の処理後表現キーワードデータを分析して、利用者に伝える表現を調整するための表現調整データを生成する。例えば状況データでは怒りの感情が含まれた表現で道具の使用方法の質問がなされていたとして、シソーラス処理部13がその質問の表現から怒りの感情を取り除いて平常心で道具の使用方法を質問したように処理後表現キーワードデータを生成する。表現調整部15は、処理後表現キーワードデータによって冷静に道具の使用方法を伝えるように表現を調整するようにして利用者を冷静な状態(平常心)へと導く表現調整データを生成する。
【0032】
配信制御部17は、例えばプログラムの制御によって動作するプロセッサなどで実現することができる。配信制御部17は、出力部19において解析データを出力する。出力は、文字、音声、画像の少なくとも一部を含む。音声などは、キャラクタによって表現してもよい。配信制御部17は、解析データの出力にあたって、表現調整データを利用して表現を調整する。
【0033】
図2を参照して、図1の教育システムの動作の一例を説明する。
【0034】
入力処理部3によって入力されたデータは、解析部9及びデータベース部5に与えられる。解析部9は、入力処理部3から索引データのみが与えられたか否かを判定する(ステップST1)。
【0035】
入力処理部3から索引データのみが与えられ、状況データが与えられなかったならば(ステップST1でNOであるならば)、状況データに関する処理は行わず、データベース部5が索引データによる検索処理を行い(ステップST6)、回答処理部7が検索結果を処理して回答データを生成し(ステップST7)、解析部9が回答データを解析して解析データを生成し(ステップST8)、配信制御部17が出力部19において解析データを出力する(ステップST9)。
【0036】
入力処理部3から状況データが与えられたならば(ステップST1でYESであるならば)、状況データに関する処理を行う。解析部9は、状況データを分析してキーワードを抽出できる状態にする(ステップST2)。キーワード処理部11は、キーワードを示すキーワードデータを抽出する処理を行う(ステップST3)。シソーラス処理部13は、キーワードデータに含まれる表現キーワードデータに対して、シソーラスを用いたキーワードの置き換え処理を行って処理後表現キーワードデータを生成する(ステップST4)。表現調整部15は、シソーラス処理部13による処理後の処理後表現キーワードデータを分析して、利用者に伝える表現を調整するための表現調整データを生成する(ステップST5)。
【0037】
ステップST6において、入力処理部3から状況データのみが与えられ、索引データが与えられなかったならば、データベース部5はキーワードデータに含まれる検索キーワードデータによる検索処理を行う。入力処理部3から状況データ及び索引データが与えられたならば、データベース部5は、索引データ及び検索キーワードデータによる検索処理を行う。
【0038】
回答処理部7が検索結果を処理して回答データを生成し(ステップST7)、解析部9が回答データを解析して解析データを生成し(ステップST8)、配信制御部17が出力部19において解析データを出力する(ステップST9)。
【0039】
なお、例えば、本実施例において、次のように実現することができる。
【0040】
まず、福祉施設における熱中症予防を例に説明する。スタッフは、個々の施設利用者に応じた熱中症リスクへの対応が求められる。しかしながら、暑さ指数のように一般的な情報は容易に判断できるものの、個々の施設利用者に応じた対応を判断できるようになるには一定の専門的な教育を受ける必要がある。そこで、教育システムにおいて、スタッフへの支援として、一般的情報、短期的情報及び中長期的情報を状況データとして、スタッフに対して個々の施設利用者に対応した熱中症予防に関する情報を配信し、環境と、本人の体調及び体力を総合的に勘案した対応を可能にする。なお、状況データは本教育システムが周囲のセンサ、インターネット、その他の情報源から自動的に収集した結果を用いてもよい。
【0041】
一般的情報は、個々の施設利用者に限らずに一般的な熱中症リスクを示す情報であり、例えば暑さ指数などである。暑さ指数は、温度×1+湿度×7+輻射熱×2で計算される。一般的な熱中症リスクは、28以上を目安に判断される。温度、湿度、輻射熱などの情報は、センサで計測することで得ることができ、また、自治体などがホームページなどで公開する情報により得ることができる。
【0042】
短期的情報は、個々の施設利用者の熱中症リスクに短期的な影響を示す情報である。例えば、体温、体調、心理などで判断される。体温は、非接触の温度センサなどで得ることができる。体調は、問診などで得ることができる。心理は、問診や応答の有無などで得ることができる。例えば、スタッフは、個々の施設利用者に対して、施設を利用する前に、体温を測ったり、状況を伺ったりするなどの応対をする。この応対により得られるデータを状況データとする。例えばセンサにより体温を測ったときに体温を状況データに含める。また、スタッフが施設利用者に状況を伺った様子をカメラで撮影し、状況データに含める。また、施設利用者が施設を利用している状況をカメラで撮影し、状況データに含める。
【0043】
中長期的情報は、個々の施設利用者の熱中症リスクに中長期的な影響を示す情報であり、例えばフレイル度、認知症レベルである。フレイルは、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味し、例えば「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」などと説明される。フレイル度は、フレイルの度合いを意味し、健康的な状態に近いほど小さく、介護状態に近いほど大きい値とする。フレイル度は、例えば、Friedの基準、問診などによる転倒予測などにより得ることができる。認知症レベルは、スクリーニングなどにより得ることができる。状況データは、フレイル度及び認知症の度合いを含む。
【0044】
熟練のスタッフであれば個々の施設利用者の状況を把握して対応することができる。例えば、一般的情報及び中長期的情報を踏まえつつ、その時々での短期的情報に応じた柔軟な対応をすることができる。しかしながら、初級レベルのスタッフは、個々の施設利用者の状況を把握できずに対応することとなる。例えば、一般的情報に従ってエアコンなどを利用して温度管理などをするに留まり、個々の施設利用者に応じた短期的及び中長期的な状況を踏まえた対応をすることは困難である。
【0045】
本実施例の教育システムによれば、このような初級レベルのスタッフの技量を補うことができる。一般的情報、短期的情報及び中長期的情報を状況データとして入力することにより、個々の施設利用者に対する熱中症リスクを回答データとして得ることができる。ここで、熱中症リスクへの対応には、重要かつ緊急であるもの、重要だが緊急でないもの、重要でないが緊急であるもの、重要でも緊急でもないもの、として特徴データを付与することができる。
【0046】
また、解析部9は、状況データにおける個々の施設利用者の状況に応じて、回答データによる複数の回答の優先度を決定する。解析部9は、施設利用者の本人の状況に応じた回答を行う。基本的には、施設利用者の心理状況(パニックか否か)と認識力(認知症レベル)により判断する。例えば、施設利用者が落ち着いていてパニックになっていないのであれば、熱中症リスクへの対策としての優先順位に従って対応すればよい。施設利用者がパニックになっているのであれば、熱中症リスクへの対策としては重要でも緊急でもないものでも、施設利用者が落ち着くような対応を優先する。例えば、施設利用者の認知症レベルが低いのであれば、熱中症リスクへの対策としての優先順位に従って対応すればよい。施設利用者の認知症レベルが高ければ、思わぬきっかけで施設利用者がパニックになることもある。熱中症リスクへの対策としては、施設利用者がパニックになりにくいような対応を優先したり、短く簡単に指示するように表現を調整したりする。また、配信制御部17は、必要であれば、センターへ連絡したり、エアコンをオン/オフ制御したり設定温度を変更したりするなどの介入を行う。
【0047】
ここで、本実施例の教育システムには、状況データから得られる状況に応じた柔軟な対応と、データベース部から得られる一般的な専門的知見との調和が求められる。データベース部から得られる一般的な専門的知見における回答の優先度は、例えば、専門家からの聞き取りにより回答ごとに設定してもよく、キーワード検索における頻度(重要度)順を利用してもよく、検索結果から得られる解決策の典型的状況と状況データとの一致度などから求めることができる。
【0048】
またベイズ更新などによって、利用者が回答を受け取るとともに、その回答が利用者の役に立ったか否かも入力させることにより、学習処理を利用するとともに、その回答の精度を向上させてもよい。例えば、典型的状況、関連語(専門用語に関する知識がない場合に一般的に代用される用語)、キーワード及び解決策は、生起確率で結ばれるため、教育システム(例えば解析部9)では、互いの関係(結びつき)を整理して表などで管理しておく。各結びつきの生起確率は、各結びつきの良しあしを示す。そのため、利用者が回答を受け取ったときに入力する利用者の役に立ったか否かの情報により、各結びつきの生起確率を修正することにより、回答の精度を向上させることができる。
【0049】
また、教育という観点からは、スタッフのレベルを、専門家レベルに引き上げることが重要である。そのため、利用者のレベルを把握すること、及び、そのレベルを引き上げることが重要である。
【0050】
利用者のレベルを把握するという観点から、例えば、下記のように実現することが考えられる。
【0051】
例えば、利用者が状況データ及び/又は索引データを入力するときに、データベースの検索に適するように入力できることは、利用者の理解度を示す尺度となる。そのため、解析部9は、キーワード処理部11により得られる検索キーワードデータによる検索結果を利用して、検索キーワードデータが検索に適していた度合いを評価する。例えば利用者が適切な検索キーワードを複数の観点から把握して入力していたことは、利用者の理解度が極めて高い方向に評価する。利用者が入力した検索キーワードよりも適切な検索キーワードが存在しないことは、利用者の理解度が高い方向に評価する。利用者が入力した検索キーワードよりも適切な検索キーワードが存在することは、利用者の理解度が低い方向に評価する。
【0052】
解析部9は、利用者の理解度に応じて解析データを生成する。例えば、利用者の理解度が低い場合には、基本的な事項を優先して順序だてて回答するようにする。利用者の理解度が高い場合には、結論を早めに提示するなどして、求められる回答を迅速に提示する。また、あえて回答を提示しないままに利用者に回答を入力させて、その理解度に応じた回答を行ってもよい。
【0053】
利用者のレベルを引き上げるという観点から、例えば、下記のように実現することが考えられる。
【0054】
説明では、通常、複数の説明事項を順番に提示する。例えば、「はじめに」として一般的な事項を説明し、徐々に具体的な事項を説明する。特に初心者では、前提となる説明事項を十分に理解した上で、次の説明事項を提示されることが重要である。そのため、例えば、解析部9において回答データを複数の説明事項に分割し、配信制御部17は、個々の説明事項の間に、利用者による理解を助ける処理を追加してもよい。例えば、利用者が初心者であれば、専門的な体系を示して説明事項の体系的な位置づけを提示した後に、次の説明事項を配信してもよい。例えば、一つ又は複数の説明事項を説明するための配信を行い、それまでに配信された内容に基づいてまとめとなるポイントを提示したり質問をしたりし、その後に次の説明事項を説明するための配信を行ってもよい。ポイントの提示や質問は、利用者の専門レベルに応じたものでもよく、また、キャラクタの動作などによって実現してもよい。利用者の専門レベルは、解析部9により特定される利用者に応じたものでもよく、状況データ及び/又は索引データによって特定されるものでもよく、両者によって特定されるものでもよい。
【0055】
また、教育では、回答を受けた後の利用者の気持ちが重要である。そのため、配信制御部17は、配信後にフォローする配信を行う。例えば、利用者が初心者であればステップアップを目指す内容の配信を追加したり、キャラクタに動作させて提示したりする。従来のシステムでは、熟練者の動画などを流すだけで、見て学ぶものであった。キャラクタが動作することによって、疑似的に「やってみせ」、「言って聞かせ」ることが可能になる。また、専門レベルの高い利用者は、回答を受けても「わかっていることを回答された」という思いが強くなる。そのような気持ちに寄り添うフォローをすることによって、専門レベルの高い利用者でも回答への理解が深まることとなる。また、フォローとして利用者が教育装置1と会話をすることにより、利用者の理解を深くすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 教育装置
3 入力処理部
5 データベース部
7 回答処理部
9 解析部
11 キーワード処理部
13 シソーラス処理部
15 表現調整部
17 配信制御部
19 出力部
図1
図2
図3
図4