(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074258
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】圧造機
(51)【国際特許分類】
B21J 13/02 20060101AFI20240523BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240523BHJP
B30B 15/28 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B30B15/00 B
B30B15/28 K
B30B15/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191088
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022184642
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 達哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅希
【テーマコード(参考)】
4E087
4E088
4E089
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087CA11
4E087EA15
4E087EA31
4E087EA37
4E087EB07
4E088JJ09
4E089FC05
4E089GA02
4E089GC04
(57)【要約】
【課題】ダイスやパンチの状態または加工実施状況を検出して監視する構成において、従来よりも故障を削減するとともに、故障発生時の復旧を容易化することができる圧造機を提供する。
【解決手段】圧造機1は、フレーム21に設けられてワーク8を保持する複数のダイス23と、ダイス23と組になってワーク8に圧造加工を実施する複数のパンチ26と、複数のダイス23または複数のパンチ26の現在の状態または加工実施状況を表す物理量を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出部(ロードセル3)と、フレーム21の内部に設けられて複数の検出部(ロードセル3)に接続され、複数の検出信号をまとめて通信信号に変換し、フレーム21の外部に向けて送信する信号変換送信部(4A、4B)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに設けられてワークを保持する複数のダイスと、
前記ダイスと組になって前記ワークに圧造加工を実施する複数のパンチと、
複数の前記ダイスまたは複数の前記パンチの現在の状態または加工実施状況を表す物理量を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出部と、
前記フレームの内部に設けられて複数の前記検出部に接続され、複数の前記検出信号をまとめて通信信号に変換し、前記フレームの外部に向けて送信する信号変換送信部と、
前記フレームの外部に設けられて前記通信信号を受信し、検出された前記物理量に基づいて、前記ダイスまたは前記パンチの現在の状態または加工実施状況の異常を判定する異常判定部と、
を備える圧造機。
【請求項2】
フレームに設けられてワークを保持する複数のダイスと、
前記ダイスと組になって前記ワークに圧造加工を実施する複数のパンチと、
複数の前記ダイスまたは複数の前記パンチの現在の状態または加工実施状況を表す物理量を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出部と、
前記フレームの内部に設けられて複数の前記検出部に接続され、複数の前記検出信号をまとめて通信信号に変換し、前記フレームの外部に向けて送信する信号変換送信部と、
を備える圧造機。
【請求項3】
前記信号変換送信部は、有線のシリアル通信を用いて前記通信信号を送信する、請求項2に記載の圧造機。
【請求項4】
前記信号変換送信部は、所定数以下の前記検出部に対して共通に設けられ、かつ、前記所定数を超過する前記検出部に対して複数が設けられて直列接続される、
請求項3に記載の圧造機。
【請求項5】
複数の前記パンチは、前記フレームの内部に配置されて往復動作するラムに設けられ、
複数の前記検出部は、前記ラムに設けられて、複数の前記パンチの前記物理量を個別に検出し、
前記信号変換送信部は、前記ラムに設けられる、
請求項4に記載の圧造機。
【請求項6】
前記物理量は、圧造加工の際に前記パンチで発生する圧造力である、請求項5に記載の圧造機。
【請求項7】
複数種類の前記物理量をそれぞれ検出する複数種類の前記検出部と、
複数種類の前記検出部に対して共通に設けられる前記信号変換送信部と、
を備える請求項2~6のいずれか一項に記載の圧造機。
【請求項8】
前記フレームの外部に設けられて前記信号変換送信部に通信接続され、前記通信信号を受信して前記物理量を表示または記録する受信部を備える、
請求項2~6のいずれか一項に記載の圧造機。
【請求項9】
前記受信部は、前記検出部の故障と前記信号変換送信部の故障とを分けて判定する故障判定部を含む、請求項8に記載の圧造機。
【請求項10】
前記物理量は、圧造加工の際に前記ダイスまたは前記パンチで発生する圧造力であり、
前記故障判定部は、圧造加工を実施中の加工時間帯、および前記加工時間帯以外の非加工時間帯のうち少なくとも一方の時間帯において、前記検出部によって検出された前記圧造力を所定の上限値および下限値と比較して前記検出部の故障を判定する、
請求項9に記載の圧造機。
【請求項11】
前記故障判定部は、前記加工時間帯において、
検出された前記圧造力が第一上限値を超過した超過状態の継続時間が所定の第一規定時間よりも長い場合に、前記検出部の測定範囲超過故障と判定し、または、
検出された前記圧造力が前記第一上限値と第一下限値の間に入る圧造力発生状態の継続時間が所定の第二規定時間よりも短い場合に、前記検出部の未検出故障と判定する、
請求項10に記載の圧造機。
【請求項12】
前記故障判定部は、前記非加工時間帯において、検出された前記圧造力が第二上限値と第二下限値の間から逸脱した逸脱状態の継続時間が所定の第三規定時間よりも長い場合に、前記検出部の誤検出故障と判定する、請求項10に記載の圧造機。
【請求項13】
前記故障判定部は、前記通信信号を受信できない場合に、前記信号変換送信部の故障または電源異常、あるいは通信路の故障と判定する、請求項9に記載の圧造機。
【請求項14】
前記受信部は、検出された前記物理量に基づいて、前記ダイスまたは前記パンチの現在の状態または加工実施状況の異常を判定する異常判定部を含む、
請求項8に記載の圧造機。
【請求項15】
前記物理量は、前記圧造加工の際に前記ダイスまたは前記パンチで発生する圧造力であり、
前記異常判定部は、時系列的に検出された前記圧造力の波形を積分した圧造力積分値、および前記波形を微分した圧造力微分値の少なくとも一方に基づいて、加工実施状況の異常を判定する、
請求項14に記載の圧造機。
【請求項16】
フレームに設けられてワークを保持するダイスと、
前記ダイスと組になって前記ワークに圧造加工を実施するパンチと、
前記圧造加工の際に前記ダイスまたは前記パンチで発生する圧造力を検出する検出部と、
時系列的に検出された前記圧造力の波形の複数を平均化した基準波形、前記波形を積分した圧造力積分値、および前記波形を微分した圧造力微分値の少なくとも一つに基づいて、加工実施状況の異常を判定する異常判定部と、を備える圧造機。
【請求項17】
前記異常判定部は、
前記圧造力積分値の前回値から今回値への変化量が所定量を超過している場合に異常と判定し、または、
前記基準波形から前記圧造力積分値の許容範囲を求め、前記圧造力積分値の今回値が前記許容範囲を逸脱している場合に異常と判定する、
請求項16に記載の圧造機。
【請求項18】
前記異常判定部は、
前記圧造力微分値の前回値から今回値への変化量が所定量を超過している場合に異常と判定し、または、
前記基準波形から前記圧造力微分値の許容範囲を求め、前記圧造力微分値の今回値が前記許容範囲を逸脱している場合に異常と判定する、
請求項16に記載の圧造機。
【請求項19】
前記異常判定部は、前記圧造力の前記波形を複数の時間エリアに分割して、前記時間エリアごとに異常を判定する、請求項17または18に記載の圧造機。
【請求項20】
前記異常判定部は、前記圧造力の前記波形を、部分的にオーバーラップする複数の前記時間エリアに分割する、請求項19に記載の圧造機。
【請求項21】
前記異常判定部は、前記基準波形を用いる場合に、前記基準波形を求めるまでの間、前記圧造力の前記波形に関する前回値から今回値への変化量に基づいて異常を判定する、請求項16~18のいずれか一項に記載の圧造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスおよびパンチが組になってワークに圧造加工を実施する圧造機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数組のダイスおよびパンチを用いてワークに圧造加工を実施する多工程圧造機が知られている。多工程圧造機では、トランスファー装置によりワークを上流側工程から下流側工程に順送りに搬送して圧造加工を進めてゆく。ここで、ダイスやパンチの現在の状態または加工実施状況を検出して監視することが行われる。例えば、特許文献1の鍛造機は、基台と固定金型の間あるいは可動部と可動金型の間に嵌着される受圧部材と、受圧部材に貼設されて荷重(圧造力)を電気的特性の変化として検出する荷重検出素子と、荷重検出素子を電気的に接続するフレキシブル配線部材とを有する。これによれば、圧造加工のたびに荷重を検出して、ワークの全数検査を行うことができる、とされている。
【0003】
前記の荷重検出素子として、例えば、特許文献2に開示されたブリッジ回路の変換器や、特許文献3に開示された圧力センサを適用することができる。特許文献2に開示された変換器の異常検出装置は、ひずみや荷重を測定するブリッジ回路の変換器の各辺を切り換える手段と、各辺に定電流を供給する手段と、定電流によって発生する電圧を測定する手段と、電圧値からブリッジ回路の各辺の異常を判断する手段と、を具備する。これによれば、ブリッジ回路の各辺および接続ケーブルの断線状態の検出ができる、とされている。
【0004】
また、特許文献3に開示された圧力センサは、ハウジング内に圧電素子と、圧電素子から得られる電気信号を処理する回路基板部と、圧電素子と回路基板部とを接続するリード部とを備え、リード部の一端を回路基板部に貫通させて反対側で接続するとともに、リード部の他端を導電性の弾性部材を介して圧電素子に接続する。これによれば、内部構造の単純化による製造性の向上、製造工数の低減および製造コストの削減を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-168305号公報
【特許文献2】特開2005-156193号公報
【特許文献3】特開2008-286589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の構成において、荷重検出素子の電源供給用および信号出力用に多芯ケーブルを用いて別置きの制御盤まで配線すると配線長が長くなる。このため、配線ルートの途中に適宜中継ボックスを設ける構造が用いられる。このような配線構造では、断線や接触不良等の不具合が生じやすくなる。詳述すると、長い配線長に加え、パンチやダイスの数量に応じて多芯ケーブルの芯線数が増加するため、芯線の断線や中継ボックス内での接触不良のおそれが増大する。加えて、パンチの圧造力を検出する構成では、往復動作に適合させるために用いる可撓性の多芯ケーブルが往復動作のたびに変形するので、十分な耐久性および信頼性を確保することが難しい。
【0007】
また、荷重検出素子から出力される微弱信号を長い配線長に渡って伝送するため、外部ノイズの影響を受け易くなっている(S/N比の低下)。さらに、荷重(圧造力)の適正な測定値が得られない故障時に、故障の原因箇所を特定することが容易でなく、復旧作業には多大な時間と専門技術が必要とされていた。特に、圧造機のフレーム内は狭隘であるため、立ち入っての原因調査は、大いに難儀であった。仮に、特許文献2や特許文献3に開示された技術を適用することができたとしても、荷重検出素子、多芯ケーブル、および中継ボックスのいずれが故障の原因箇所であるかを特定することが容易でない。
【0008】
さらに、検出された荷重(圧造力)の波形に基づいて異常を判定する異常判定技術には、改良の余地がある。なお、ダイスやパンチの監視項目、換言するとダイスやパンチの状態または加工実施状況を表す物理量は、前記した荷重に限定されない。例えば、ダイスやパンチの温度、往復動作するパンチの三方向の加速度などを監視する構成が実用化されている。温度や加速度を監視する構成でも、荷重の監視と同様に、断線および接触不良のおそれや、復旧作業の難しさなどの問題点がある。
【0009】
本発明は、上述した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ダイスやパンチの現在の状態または加工実施状況を検出して監視する構成において、従来よりも故障を削減するとともに、故障発生時の復旧を容易化することができる圧造機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧造機は、フレームに設けられてワークを保持する複数のダイスと、前後方向に往復動作することにより前記ダイスと組になって前記ワークに圧造加工を実施する複数のパンチと、複数の前記ダイスまたは複数の前記パンチの現在の状態または加工実施状況を表す物理量を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出部と、前記フレームの内部に設けられて複数の前記検出部に接続され、複数の前記検出信号をまとめて通信信号に変換し、前記フレームの外部に向けて送信する信号変換送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧造機において、信号変換送信部は、複数の検出部から出力された複数の検出信号をまとめて通信信号に変換し、フレームの外部に向けて送信する。これによれば、複数の検出部の電源供給用および信号出力用に用いる多芯ケーブルをフレームの外部まで引き出す従来構成と比較して、芯線数が少ない通信ケーブルを用いることができる。加えて、中継ボックス等を簡素化した配線構造とすることができるので、従来よりも故障を削減することができ、さらに故障発生時の復旧を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】圧造力を検出するロードセルの設置状況を示す側面断面図である。
【
図3】信号変換送信部に関する配線構造を模式的に説明する図である。
【
図4】信号変換送信部を構成する回路基板の回路構成図である。
【
図5】ワークに実施する多工程の圧造加工の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示される圧造加工を実施したときに検出される圧造力の波形を例示する図であり、故障判定部が用いる諸量が併記されている。
【
図7】異常判定部が判定に用いるエンベロープ法を模式的に説明する波形図である。
【
図8】異常判定部が判定に用いる積分演算法を模式的に説明するための前回の波形図である。
【
図9】異常判定部が判定に用いる積分演算法を模式的に説明するための今回の波形図である。
【
図10】異常判定部が判定に用いる微分演算法を模式的に説明する波形図である。
【
図11】積分演算法の改良を模式的に説明する波形図である。
【
図12】微分演算法の改良を模式的に説明する波形図である。
【
図13】積分演算法の更なる改良を模式的に説明する波形図である。
【
図14】微分演算法の更なる改良を模式的に説明する波形図である。
【
図15】従来技術の圧造機の全体構成、および配線構造を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施形態の圧造機1の全体構成
まず、実施形態の圧造機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。圧造機1は、フレーム21、ラム24、七組のダイス23およびパンチ26、トランスファー装置27、線材供給装置80、ならびに主駆動部9などで構成される。圧造機1は、複数のパンチ26が水平方向に往復動作する横型の多段圧造機である。圧造機1は、七組の対向するダイス23およびパンチ26により第1~第7工程が形成されている。
図1の紙面左右方向が圧造機1の前後方向となり、紙面上下方向が圧造機1の幅方向となる。
図1において、第1~第7工程は、幅方向の紙面上側から紙面下側へと並んでいる。なお、圧造機1の工程数は、7工程に限定されず、1~8工程程度が一般的になっている。
【0014】
フレーム21は、各部を配設するための筐体である。7個のダイスホルダ22は、フレーム21の前寄り位置に幅方向に並んで設けられる。7個のダイス23の各々は、各ダイスホルダ22の後部に交換可能に取り付けられる。各ダイス23の図中の左方向を向いた後側に、所定の加工型が形成されている。ダイス23は、加工型の内部にワークを保持する。
【0015】
ラム24は、平面視で概ね矩形であり、フレーム21の内部の略中央に配置される。ラム24は、フレーム21に対して前後方向に往復移動する。7個のパンチホルダ25は、ラム24の前寄り位置に幅方向に並んで設けられる。7個のパンチ26の各々は、各パンチホルダ25の前部に交換可能に取り付けられる。各パンチ26の図中の右方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ26は、ラム24とともに往復動作する。各工程において、パンチ26は、ダイス23に対向しつつ前後方向に往復動作することにより、ダイス23と組になってワークに圧造加工を施す。
【0016】
線材供給装置80は、フレーム21の前部の第1工程の隣の位置から前方にかけて配置される。線材供給装置80は、切断刃81、固定把持部82、および可動把持部83などで構成される。可動把持部83は、前方から供給される長尺の線材を把持して後方に移動することにより、線材を切断刃81に送給する。可動把持部83が線材を解放して前方に戻る間、固定把持部82が線材を把持する。切断刃81は、線材が貫通する環状の固定刃および可動刃からなり、線材を切断してワークを作製する。作製されたワークは、図略のプッシャ部材によりトランスファー装置27に向かって押し出される。通常、線材は円形断面を有し、ワークは、円柱状の初期形状を有する。線材およびワークの材質として、鉄やアルミ、各種の合金などを例示することができる。なお、固定把持部82および可動把持部83に代え、線材を挟んで回転する一対以上のローラを有する線材送り機構を用いてもよい。
【0017】
トランスファー装置27は、ダイスホルダ22の上方からダイス23の後方にかけて配設される。トランスファー装置27は、ワークを把持する8対のフィンガ対を有する。最上流の第1のフィンガ対は、線材供給装置80から押し出されたワークを把持して、第1工程まで搬送する。第2~第7のフィンガ対は、上流側の工程でワークを把持して、下流側の工程まで搬送する。最下流の第8のフィンガ対は、第7工程でワークを把持して、図略の搬出部まで搬送する。
【0018】
パンチ26の往復動作を駆動するために主駆動部9が設けられる。主駆動部9は、線材供給装置80およびトランスファー装置27を併せて駆動する。主駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、クラッチ機構93、ディスクブレーキ94、および減速機構95を介して、クランク軸96に入力される。
【0019】
クランク軸96とラム24の間に、コンロッド29が配置される。コンロッド29は、その一端がクランク軸96に連結され、その他端がラム24に連結される。主駆動源91に駆動されてクランク軸96が回転すると、コンロッド29の一端は円軌道に沿って回転し、コンロッド29の他端は前後方向に往復移動する。これにより、ラム24が前後方向に往復動作し、ラム24上の7個のパンチ26も前後方向に往復動作する。
【0020】
クランク軸96に接触するように電子カム9Jが設けられる。電子カム9Jは、クランク軸96の回転角度を検出するものである。電子カム9Jの検出信号に基づいて、ラム24の後死点から前死点までの動作範囲内の位置を求めることが可能であり、後述する加工時間帯TAが設定される。なお、電子カム9Jに代えて、クランク軸96の回転角度を非接触で検出するロータリエンコーダ、またはラム24の前後方向の位置を直接的に検出する近接センサやリニアエンコーダなどを用いることができる。
【0021】
コンロッド29の上方に、7個のキックアウトカム98が設けられて回転駆動される。キックアウトカム98は、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第7工程の位置にそれぞれ対応する。キックアウトカム98は、各パンチ26に設けられた図略のパンチ側キックアウトピンを前後方向に駆動する。また、クランク軸96から分岐歯車対97を介してサイド軸99へと、駆動力が分岐伝達される。
【0022】
サイド軸99は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム9Aを回転駆動する。トランスファカム9Aは、トランスファー装置27の工程間の往復移動を駆動する。また、サイド軸99からトランスファドライブ9Bを経由した先に、8個のオープンクローズカム9Cが回転駆動されるように連結される。オープンクローズカム9Cは、幅方向に等間隔で配置される。オープンクローズカム9Cは、トランスファー装置27の各フィンガ対を開閉駆動する。
【0023】
さらに、サイド軸99には、カッタカム9Dが設けられるとともに、プッシャカム9E、フィードカム9F、および7個のキックアウトカム9Hが連結される。カッタカム9Dは、切断刃81の切断動作を駆動する。プッシャカム9Eは、プッシャ部材の押し出し動作を駆動する。フィードカム9Fは、可動把持部83の往復動作を駆動する。キックアウトカム9Hは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第7工程の位置にそれぞれ対応する。第1~第7工程のキックアウトカム9Hは、それぞれダイス23からワークを突き出す動作を駆動する。
【0024】
2.ロードセル3および信号変換送信部(4A、4B)
圧造機1は、圧造加工の際にパンチ26で発生する圧造力の検出および監視を行うために、ロードセル3および信号変換送信部(4A、4B)が設けられる。
図2に示されるように、パンチ26は、パンチホルダ25の概ね中央に取り付けられる。パンチ26の後側に受圧部材261および受圧部材262を介してロードセル3が設置される。ロードセル3は、第1~第7工程のパンチ26に対して個別に設けられる。ロードセル3は、パンチ26で発生する圧造力を時系列的に検出して検出信号を出力する検出部の一形態である。また、圧造力は、パンチ26の加工実施状況を表す物理量の一例である。ロードセル3は、四つの歪みゲージがブリッジ接続されて構成される。なお、ロードセル3以外の検出方式の圧力センサなどが検出部に用いられてもよい。
【0025】
図3に示されるように、二つの信号変換送信部(4A、4B)は、図略の取付金具を用いてラム24に設けられる。取付金具がレイアウトの自在性をもつので、信号変換送信部(4A、4B)は、圧造機の様々な機種に取り付け可能となっている。下流側の信号変換送信部4Aは、第1~第4工程のロードセル3が接続される。上流側の信号変換送信部4Bは、第5~第7工程のロードセル3が接続される。二つの信号変換送信部(4A、4B)は、互いに同一構成であり、図略の筐体および回路基板41などで構成される。
【0026】
筐体は、回路基板41を収納して保護する。筐体は、例えばアルミダイキャスト製とされ、パッキンを用いて耐油性能(加工油や潤滑油の侵入防止性能)が高められる。さらに、筐体は、樹脂材料が充填されて回路基板41が固定される。これにより、耐油性能がさらに向上するとともに、圧造加工時の耐衝撃性が高められる。加えて、回路基板41は、樹脂材料で覆われて劣化が抑制される。筐体は、二つの通信用レセプタクル(4C、4D)、四つの入力用レセプタクル4L、および二つの点検用レセプタクル4Mを有する(
図4参照)。
【0027】
回路基板41は、小型化を志向して4層基板が用いられる。回路基板41の4層のうち内部の2層に電源パターンが形成され、表側および裏側の2層に電気部品が実装される。回路基板41の回路構成は、
図4に単線接続図および複線接続図が併用されて示される。図示されるように、回路基板41は、筐体の内部で各レセプタクルに接続される。回路基板41は、CPU42、電源回路44、四つの入力回路45、および通信回路46などで構成される。
【0028】
第一の通信用レセプタクル4Cは、上流側への接続に用いられる。第一の通信用レセプタクル4Cにおいて、第1端子および第2端子は電源供給用、第3端子および第4端子は通信用、第5端子~第8端子は未使用、第9端子および第10端子は接地用である。一方、第二の通信用レセプタクル4Dは、下流側への接続に用いられる。第二の通信用レセプタクル4Dにおいて、第1端子および第2端子は電源供給用、第3端子および第4端子は通信用、第5端子および第6端子は終端接続用、第7端子および第8端子は下流表示用、第9端子および第10端子は接地用である。
【0029】
通信用レセプタクル4Dの第1端子および第2端子は、通信用レセプタクル4Cの第1端子および第2端子に接続されて電源供給路を構成する。通信用レセプタクル4Dの第3端子および第4端子は、通信用レセプタクル4Cの第3端子および第4端子に接続されて通信路を構成する。通信用レセプタクル4Dの第5端子と第6端子の間には、通信規格に定められた所定の抵抗値の終端抵抗4Eが接続されている。第3端子と第5端子の間を短絡ピンSP1で接続し、第4端子と第6端子の間を短絡ピンSP2で接続することにより、通信路の終端が終端抵抗4Eを用いて接続される。通信用レセプタクル4Dの第7端子と接地される第8端子の間は、短絡ピンSP3による接続が可能とされている。第7端子と第8端子の間の短絡状態は下流側の信号変換送信部4Aを表示し、開放状態は上流側の信号変換送信部4Bを表示する。
【0030】
四つの入力用レセプタクル4Lの各々は、ロードセル3の信号ケーブル31が接続される。つまり、信号変換送信部(4A、4B)は、四つ(所定数)以下のロードセル3(検出部)に対して共通に設けられる。入力用レセプタクル4Lの第1端子および第2端子は、電源回路44からロードセル3に電源を供給する。入力用レセプタクル4Lの第3端子および第4端子(基準電位)は、ロードセル3の検出信号を入力回路45に入力する。入力用レセプタクル4Lの第5端子は、信号ケーブル31のシールドを筐体に接地する。二つの点検用レセプタクル4Mは、点検時や調整時に用いられるものであり、通常時には使用されない。
【0031】
回路基板41の電源回路44は、上流側から供給される直流電源電圧を変換して、各部に電源を供給する。詳述すると、電源回路44は、ノイズフィルタ441、第一直流変換部442、および第二直流変換部443などで構成される。ノイズフィルタ441の入力側端子は、通信用レセプタクル4Cの第1端子および第2端子に接続されている。ノイズフィルタ441は、直流電源電圧に含まれるノイズ成分を除去する。ノイズフィルタ441の出力側端子に、第一直流変換部442および第二直流変換部443が並列接続される。
【0032】
第一直流変換部442は、直流電源電圧を第一直流電圧に変換して、四つの入力用レセプタクル4Lの第1端子および第2端子に供給する。第一直流電圧は、ロードセル3の電源に相当する。第二直流変換部443は、直流電源電圧を第二直流電圧に変換して、回路基板41上のCPU42やその他の電気部品に供給する。直流電源電圧として24V、第一直流電圧として5V、第二直流電圧として3.3Vを用いることができ、これに限定されない。
【0033】
四つの入力回路45の各々は、入力用レセプタクル4Lの第3端子およびCPU42に接続される。入力回路45は、例えば、ロードセル3から入力される検出信号を増幅する増幅器、および増幅した検出信号をディジタルデータに変換してCPU42に入力するA/D変換器を用いて構成される。A/D変換器の変換速度(単位時間当たりのデータ数)は、圧造力の波形の精度を確保しつつ通信回路46の通信負荷が過重とならないように適正に設定される。なお、四つの入力回路45とCPU42との間にマルチプレクサを設けて、四つの検出信号を順番にCPU42に入力するように回路構成してもよい。
【0034】
CPU42は、水晶発振器43が付属されており、タイマおよびクロックの機能を具備する。CPU42は、通信用レセプタクル4Dの第7端子に接続される。CPU42は、第7端子と第8端子との間が短絡状態および開放状態のどちらであるかを認識して、自身が下流側の信号変換送信部4Aおよび上流側の信号変換送信部4Bのどちらであるかを認識する。これにより、CPU42は、七つのロードセル3の各々が設置された工程を区別することができる。CPU42は、必要に応じて二つの点検用レセプタクル4Mから外部制御機器に接続され、点検や調整が可能な状態となる。CPU42は、入力回路45から入力された四つの検出信号をまとめて、通信規格に定められた所定フォーマットの通信信号に変換し、通信回路46に受け渡す。
【0035】
通信回路46は、CPU42から受け取った通信信号をフレーム21の外部に向けて送信する。通信回路46は、その一端がCPU42に接続され、その他端が通信用レセプタクル4Cの第3端子および第4端子に接続される。通信回路46は、CPU42の側から順番に通信インターフェース461、通信ドライバ462、およびパルストランス463が直列接続されて構成される。
【0036】
通信回路46は、有線のシリアル通信を用いて通信信号を送信する。例えば、通信インターフェース461および通信ドライバ462として、CUNET(登録商標)とRS422通信方式とを組み合わせて有線のシリアル通信を行うIC部品を用いることができる。なお、有線のシリアル通信として、他の通信方式を用いてもよい。パルストランス463は、通信信号を遮断することなくノイズを遮断し、加えて、通信路の絶縁耐圧を向上する。
【0037】
回路基板41は、ユーザの要望に応じて電気部品が実装されるオプション入力部47を有する。オプション入力部47は、圧造力と相違する第二物理量を検出する第二検出部の第二検出信号の入力が可能となっている。また、オプション入力部47は、必要に応じて第二検出部に電源を供給することが可能となっている。CPU42は、オプション入力部47に接続されており、四つの圧造力の検出信号および第二検出信号をまとめて通信信号に変換し、通信回路46に受け渡すことができる。第二物理量として、ラム24で発生する三方向の加速度(パンチ26の加工実施状況に相当)、複数のパンチ26の各々の温度(現在の状態に相当)などを例示することができる。このように、信号変換送信部(4A、4B)は、複数種類の検出部に対して共通に設けられてもよい。
【0038】
3.配線構造
次に、二つの信号変換送信部(4A、4B)に関する配線構造について説明する。
図3に示されるように、フレーム21の外側に中継ボックス50が設けられる。また、フレーム21の外部に離隔して制御装置6が設けられる。制御装置6は、圧造機1の主駆動源91の動作を制御するとともに、電子カム9Jから検出信号を受け取る。制御装置6は、信号変換送信部(4A、4B)に直流電源電圧を供給する。さらに、制御装置6は、信号変換送信部(4A、4B)が送信した通信信号を受信する受信部7の機能を含む。
【0039】
図3に示されるように、制御装置6と中継ボックス50の間に、第一通信ケーブル51が配線される。また、中継ボックス50と上流側の信号変換送信部4Bの通信用レセプタクル4Cの間に、第二通信ケーブル52が配線される。第一通信ケーブル51および第二通信ケーブル52の芯線の相互間は、中継ボックス50の内部で接続される。さらに、上流側の信号変換送信部4Bの通信用レセプタクル4Dと下流側の信号変換送信部4Aの通信用レセプタクル4Cの間に、第三通信ケーブル53が配線される。換言すると、四つ(所定数)を超過する検出部(ロードセル3)に対して、複数の信号変換送信部(4A、4B)が設けられて直列接続される。
【0040】
第一通信ケーブル51、第二通信ケーブル52、および第三通信ケーブル53は、電源供給用の2芯および通信用の2芯からなり、かつシールドが付加された4芯ケーブルが用いられる。これにより、通信用レセプタクル(4C、4D)の第1端子~第4端子が接続され、第5端子~第8端子が非接続とされ、第9端子および第10端子がシールドを用いて接地される。
【0041】
また、第二通信ケーブル52は、ラム24の往復動作に応じて繰り返し変形するため、十分な長さ裕度、十分な可撓性および耐久性を有するケーブルが用いられる。さらに、第二通信ケーブル52および第三通信ケーブル53は、少なくともその一部が図略のコンジットチューブに収容されて保護される。コンジットチューブとして、例えばビニル製チューブや金属製チューブを用いることができる。コンジットチューブにより、フレーム21の内部において第二通信ケーブル52および第三通信ケーブル53の機械的強度(点検者が踏むおそれ等への対策)が向上し、加えて耐油性能(加工油や潤滑油の侵入防止性能)が向上する。
【0042】
下流側の信号変換送信部4Aの通信用レセプタクル4Dは、ケーブルが接続されない。この通信用レセプタクル4Dでは、短絡ピンSP1および短絡ピンSP2が使用されて終端抵抗4Eが接続される。さらに、短絡ピンSP3が使用されて第7端子と第8端子の間が短絡状態とされ、下流側の信号変換送信部4Aであることが表示される。
【0043】
4.受信部7
前述したように制御装置6は受信部7の機能を含んでいる。受信部7は、制御装置6を構成するコンピュータ装置のソフトウェアを用いて構成される。受信部7は、信号変換送信部(4A、4B)が送信した通信信号を受信して、検出された圧造力を表示または記録する。例えば、受信部7は、第1~第7工程のパンチ26の各々で検出された圧造力の波形を全て表示および記録してもよい。また、受信部7は、一部のパンチ26を対象外として、特定のパンチ26の圧造力のみを表示または記録してもよい。さらに、通信回路46や通信路の性能制約に応じて、受信部7は、パンチ26の各々で発生する圧造力の波形を抜き取り(例えば、10波形のうちの1波形)で受信し、表示または記録してもよい。また、受信部7は、圧造力の生データに移動平均処理を実施して、波形を滑らかに整形することが好ましい。なお、信号変換送信部(4A、4B)のCPU42が移動平均処理を実施してもよい。
【0044】
図5に例示される圧造加工が実施されたとき、受信部7は、
図6に例示される圧造力Fの波形を受信して表示する。
図5において、ワーク8は、右側から左側へと各工程で順番に圧造加工される。詳述すると、第1工程#1は、ブランク工程とされており、ワーク8は圧造加工されない。第2工程#2で、ワーク8の先端(
図5の下端)の周囲が圧造加工されて、テーパ部分が形成される。第3工程#3で、ワーク8の中程から先端までが縮径されて、軸部8Aが形成される。第4工程#4で、ワーク8の基端側(
図5の上側)が圧造加工されて、段差およびテーパをもつ頭部8Hが形成される。第5工程#5で、ワーク8の頭部8Hの一部分が拡径されてフランジ部8Fが形成される。第6工程#6で、ワーク8の軸部8Aに、軸長方向に延びる溝が形成される。第7工程#7で、ワーク8のフランジ部8Fの周囲が圧造加工される(例えば、六角形に加工される)。
【0045】
図6において、横軸は時間Tを示し、縦軸は定格最大圧造力を1(PU)とする圧造力Fを示す。また、#2~#7が付された6本のグラフは、それぞれ
図5の第2工程#2~第7工程#7で発生した圧造力Fの波形を示す。第1工程#1は、ブランク工程であるので、圧造力Fの波形は表示されていない。
図6に示された時間範囲は、パンチ26が往復動作する周期時間の一部であり、圧造力Fが発生しない時間帯の一部が省略されている。図示されるように、第2工程#2~第7工程#7で発生した圧造力Fは、工程によって発生時間帯が相違し、かつ、圧造力Fの最大値が0.30~0.76(PU)程度と相違している。また、圧造力Fが発生していないと推定される時間帯において、非ゼロの検出誤差が認められる。なお、
図6には、後述する第一上限値FH1、第一下限値FL1、第二上限値FH2、第二下限値FL2、第一規定時間TK1、第二規定時間TK2、および第三規定時間TK3の設定例が併記されている。
【0046】
5.故障判定部71
受信部7は、故障判定部71を含む。故障判定部71は、圧造力Fの検出が良好に行われているか否かを監視する機能部位である。故障判定部71は、圧造力Fの検出が不調となった場合に、ロードセル3の故障と信号変換送信部(4A、4B)の故障とを分けて判定する。詳述すると、故障判定部71は、圧造加工を実施中の加工時間帯TA、および加工時間帯TA以外の非加工時間帯TBのうち少なくとも一方の時間帯において、圧造力Fを所定の上限値および下限値と比較して、ロードセル3の故障を判定する。本実施形態において、故障判定部71は、加工時間帯TAおよび非加工時間帯TBの両方を対象として、ロードセル3の故障を判定する。
【0047】
加工時間帯TAおよび非加工時間帯TBは、電子カム9Jの検出信号に基づいて、各パンチ26に共通に設定される。例えば、加工時間帯TAは、パンチ26がワーク8に当接する瞬間から圧造加工を終えてワーク8から離れる瞬間までの時間帯に、裕度時間が考慮されて設定される。
図6の下部に例示される加工時間帯TAは、当然ながら、第2工程#2~第7工程#7で圧造力Fが発生した時間帯を包含している。なお、加工時間帯TAおよび非加工時間帯TBは、パンチ26の各々に対して個別に設定されてもよい。
【0048】
故障判定部71は、加工時間帯TAにおいて、検出された圧造力Fが第一上限値FH1を超過した超過状態の継続時間が所定の第一規定時間TK1よりも長い場合に、ロードセル3の測定範囲超過故障と判定する。例えば、第一上限値FH1は定格最大圧造力の1(PU)に設定され、第一規定時間TK1は10msecに設定される。これによれば、故障判定部71は、ロードセル3が定格最大圧造力よりも大きな圧造力Fを検出したという不合理が発生した場合に、故障と判定することができる。また、第一規定時間TK1を設定したことにより、パルス性ノイズ等の影響で圧造力Fの検出値が瞬間的に定格最大圧造力を超過する誤検出が仮に発生しても、故障判定部71は故障と誤判定しない。
【0049】
また、故障判定部71は、加工時間帯TAにおいて、検出された圧造力Fが第一上限値FH1と第一下限値FL1の間に入る圧造力発生状態の継続時間が所定の第二規定時間TK2よりも短い場合に、ロードセル3の未検出故障と判定する。例えば、第一下限値FL1は、ロードセル3の正の最大検出誤差に設定され、圧造力Fの発生状態であるか否が正確に判定される。また、第二規定時間TK2は、圧造加工の負荷が軽い第2工程#2の圧造力Fの波形でも十分に超過する程度に短く設定され、例えば10msecに設定される。これによれば、故障判定部71は、圧造力Fが第二規定時間TK2を超えて発生する正常動作以外の場合に、故障と判定することができる。
【0050】
さらに、故障判定部71は、非加工時間帯TBにおいて、検出された圧造力Fが第二上限値FH2と第二下限値FL2の間から逸脱した逸脱状態の継続時間が所定の第三規定時間TK3よりも長い場合に、ロードセル3の誤検出故障と判定する。例えば、第二上限値FH2は、ロードセル3の正の最大検出誤差に設定され、第二下限値FL2はロードセル3の負の最大検出誤差に設定され、第三規定時間TK3は10msecに設定される。これによれば、故障判定部71は、圧造力Fが発生し得ない非加工時間帯TBに、ロードセル3が何らかの圧造力Fを検出したという不合理が発生した場合に、故障と判定することができる。また、第三規定時間TK3を設定したことにより、パルス性ノイズ等の影響で圧造力Fの検出値が瞬間的に逸脱状態となる誤検出が仮に発生しても、故障判定部71は故障と誤判定しない。
【0051】
また、故障判定部71は、通信信号を受信できない場合に、信号変換送信部(4A、4B)の故障または電源異常、あるいは通信路の故障と判定する。詳述すると、(A)信号変換送信部(4A、4B)が故障した場合に、通信信号が送信されなくなる。また、(B)信号変換送信部(4A、4B)の電源回路44に異常が発生して第二直流電圧が過大または過小になると、CPU42および通信回路46の少なくとも一方が一時的に停止して、通信信号を送信しなくなる。さらに、(C)通信路に相当する中継ボックス50、第一通信ケーブル51、第二通信ケーブル52、および第三通信ケーブル53のいずれかで断線や接触不良などの故障が発生すると、送信された通信信号が受信部7まで到達しない。故障判定部71は、前記(A)~(C)のいずれかが発生した場合に、故障と判定することができる。さらに、故障判定部71は、前記(A)の場合に、二つの信号変換送信部(4A、4B)のどちらが故障の原因箇所であるかを判別することができる。
【0052】
なお、信号変換送信部(4A、4B)のCPU42は、加工時間帯TAおよび非加工時間帯TBの情報を故障判定部71と共有することができる。CPU42は、加工時間帯TAには、ロードセル3の検出信号の入力処理および図略のメモリへの一時記憶を優先して実施する。また、CPU42は、非加工時間帯TBには、検出信号の入力処理を行わずに、一時記憶した検出信号の通信信号への変換処理および送信処理を優先して実施する。これにより、信号変換送信部(4A、4B)は、検出信号の入力処理および通信信号の送信処理を効率的に実施することができる。
【0053】
6.異常判定部72
受信部7は、異常判定部72を含む。異常判定部72は、圧造加工が良好に行われているか否かを監視する機能部位である。異常判定部72は、検出された圧造力Fに基づいて、パンチ26の加工実施状況の異常を判定する。異常判定部72は、三つの異常判定方法、すなわちエンベロープ法、積分演算法、および微分演算法を併用する。
【0054】
エンベロープ法では、まず、いくつかのワーク8の圧造加工が試行され、複数の圧造力Fの波形が取得される。次に、複数の圧造力Fの波形が平均化され、
図7に実線で示される基準波形WMが求められる。その次に、基準波形WMに変動幅△Eを加算した上側エンベロープ波形WH、および基準波形WMから変動幅△Eを減算した下側エンベロープ波形WLが設定される。なお、加算される変動幅△Eと減算される変動幅△Eとが相違してもよい。ここまでは、保守員の手間を必要とする。異常判定部72は、試行後の実際の圧造加工時に検出された圧造力Fの波形が上側エンベロープ波形WHおよび下側エンベロープ波形WLの間の帯状部に収まっているか否かを調査し、圧造力Fの波形の一部分が帯状部から外れている場合に異常と判定する。
【0055】
積分演算法では、異常判定部72は、圧造力Fの波形を取得する都度、波形を積分した圧造力積分値(波形の面積に相当)を演算する。異常判定部72は、圧造力積分値の前回値から今回値への変化量(負値の場合は絶対値)が所定量を超過している場合に異常と判定する。例えば、
図8に示される前回の波形W1が
図9に示される今回の波形W2に変化した場合に、異常判定部72は、
図9において波形W1に相当する破線と波形W2の間の変化量△Sが所定量を超過していることに基づいて、異常と判定する。なお、
図8~
図10に示された多数の縦線は、圧造力Fを検出したサンプリング周期を示すものである。なお、別法として、異常判定部72は、基準波形WMから圧造力積分値の許容範囲を求め、圧造力積分値の今回値が許容範囲を逸脱している場合に異常と判定してもよい。
【0056】
微分演算法では、異常判定部72は、圧造力Fの波形を取得する都度、波形を微分した圧造力微分値を波形の複数箇所で演算する。異常判定部72は、圧造力微分値が所定の許容範囲から逸脱している場合に異常と判定する。例えば、
図10に示される波形W3では、異常判定部72は、圧造力微分値△F1(正値)が許容範囲の上限を上回り、圧造力微分値△F2(負値)が許容範囲の下限を下回っていることから異常と判定する。上記した許容範囲は、基準波形WMを求める過程で適正に設定することができる。なお、別法として、異常判定部72は、圧造力微分値の前回値から今回値への変化量が所定量を超過している場合に異常と判定してもよい。
【0057】
エンベロープ法では、変動幅△Eを適正に設定するために、保守員の熟練やノウハウが必要とされる。また、稼働時間の経過に伴い各部が温度上昇によって熱膨張する影響を回避するために、基準波形WMを再度求め、または微調整する手間が煩雑化しがちである。これに対して、積分演算法および微分演算法は、長い稼働時間の影響を受けにくく、加えて、設定や調整の手間が軽減される。さらに、積分演算法および微分演算法では、エンベロープ法よりも小さな波形の変化に基づいて、高い精度で異常の早期の段階を判定することができる。例えば、
図9および
図10に例示される異常は、エンベロープ法では判定が難しく、積分演算法または微分演算法によって確実に判定される。
【0058】
さらに、積分演算法では、圧造力積分値の一量を記憶部に記憶し、微分演算法では圧造力微分値の正負の最大値の二量を記憶して長期保存することができる。これによれば、圧造力Fの波形をそのまま保存する場合と比較して小さな記憶容量でよいので、長期にわたるトレンドグラフを保存することができ、トレーサビリティの要請に十分に対応することができる。加えて、積分演算法および微分演算法は、記憶部の記憶容量を節約することができるので、一般的な鍛造機と比較して生産速度が速い圧造機1に好適である。
【0059】
異常判定部72は、前記した三つの異常判定方法を併用することで、下記の各種異常を判定することができる。
・搬送ミスにより、工程内にワーク8が無い。
・搬送ミスにより、同じ工程でワーク8に2回の圧造加工を実施(2度打ち)。
・抜き加工を実施したときの抜きカスの残留。
・加工実施領域への異物の侵入。
・ワーク8の質量の不足、および長さの不足。
・ワーク8の質量の過多、および長さの超過。
・ダイス23やパンチ26の摩耗。
・ダイス23やパンチ26の取り付け不備。
・ダイス23やパンチ26の割れや欠けなどの破損。
・加工油や潤滑油の不足。
【0060】
7.異常判定部72の改良
前記した積分演算法および微分演算法では、異常判定部72が一部の異常を精度よく判定することができない場合が生じ得る。例えば、積分演算法に関して、
図11に正常時の波形W4が実線で例示されており、破線で示される異常が発生した場合を想定する。この場合、破線と波形W4の間の二つの変化量(△S1、ΔS2)が概ね相殺して圧造力積分値の変化量が僅少となるため、異常判定部72は異常を判定することができない。
【0061】
これに対する改良策で、異常判定部72は、圧造力Fの波形を複数の時間エリアに分割して、時間エリアごとに異常を判定する。例えば、異常判定部72は、
図11に示されるように、波形W4を第1エリアA1、第2エリアA2、および第3エリアA3の三つのエリアに分割し、エリアごとに許容する所定量を設定する。すると、第1エリアA1の圧造力積分値は、変化量△S1の分だけ増加して所定量を越え、第2エリアA2の圧造力積分値は、変化量△S2の分だけ減少し、所定量を越えて減少したことが明らかになる。したがって、異常判定部72は、異常を精度よく判定することができる。
【0062】
また、微分演算法に関して、
図12に正常時の波形W5が実線で例示されており、破線で示される異常が発生した場合を想定する。この場合、圧造力Fが急峻に増減する傾斜部分K1、K2に基づいて正負両方の許容範囲が定められる。すると、波形W5の概ね平坦な時間帯に異常が発生しても、緩慢な傾度の圧造力微分値ΔF3(正値)が求められても許容範囲内となるため、異常判定部72は異常を判定することができない。
【0063】
これに対する改良策で、異常判定部72は、圧造力Fの波形を複数の時間エリアに分割して、時間エリアごとに異常を判定する。例えば、異常判定部72は、
図12に示されるように、波形W5を第4エリアA4、第5エリアA5、および第6エリアA6の三つのエリアに分割し、エリアごとに許容範囲を設定する。第4エリアA4は、圧造力Fが増加する時間帯に設定され、第5エリアA5および第6エリアA6は、圧造力Fが減少する時間帯に設定されている。圧造力微分値の許容範囲は、第4エリアA4では、ゼロから傾斜部分K1の最大傾度(正値)までの範囲となる。また、圧造力微分値の許容範囲は、第5エリアA5では、傾斜部分K2の最大傾度(負値)からゼロまでの範囲となる。すると、第5エリアA5内に発生した異常に起因する圧造力微分値ΔF3(正値)は、第5エリアA5の許容範囲を逸脱していることが明らかになる。したがって、異常判定部72は、異常を精度よく判定することができる。
【0064】
さらに、上記のエリア分割を行っても、エリアの境界で異常が発生した場合に異常判定部72の判定精度の低下が懸念される。例えば、積分演算法に関して、
図11に一点鎖線の波形W6で示されるように、第2エリアA2と第3エリアA3の境界で異常が発生した場合を想定する。この場合、異常に起因する変化量ΔS3が第2エリアA2および第3エリアA3の圧造力積分値に分散されてしまうため、異常判定部72は異常を精度よく判定することができない。
【0065】
これに対する改良策で、異常判定部72は、圧造力Fの波形を部分的にオーバーラップする複数の時間エリアに分割し、時間エリアごとに異常を判定する。例えば、異常判定部72は、
図13に示されるように、波形W6を第7エリアA7、第8エリアA8、および第9エリアA9の三つのエリアに分割し、エリアごとに許容する所定量を設定する。図示されるように、第7エリアA7と第8エリアA8が部分的にオーバーラップし、第8エリアA8と第9エリアA9が部分的にオーバーラップしている。そして、異常に起因する変化量ΔS3は、第8エリアA8内に位置してエリアの境界から離れているので、正確に検出される。つまり、異常に起因する圧造力積分値の変化量は、異常の発生時間帯を問わず、少なくとも一つの時間エリアで正確に検出される。したがって、異常判定部72は、異常を精度よく判定することができる。
【0066】
微分演算法に関しても積分演算法と同様の懸念がある。例えば、微分演算法に関して、
図12に一点鎖線の波形W7で示されるように、第5エリアA5と第6エリアA6の境界付近で異常が発生した場合を想定する。この場合、エリアの境界位置における圧造力微分値ΔF4および圧造力微分値ΔF5を正確に求めることが難しく、異常判定部72は異常を精度よく判定することができない。
【0067】
これに対する改良策で、異常判定部72は、例えば
図14に示されるように、波形W7を部分的にオーバーラップする第10エリアA10、第11エリアA11、および第12エリアA12の三つのエリアに分割し、エリアごとに許容範囲を設定する。図示されるように、第10エリアA10と第11エリアA11が部分的にオーバーラップし、第11エリアA11と第12エリアA12が部分的にオーバーラップしている。そして、異常に起因する圧造力微分値ΔF4および圧造力微分値ΔF5は、第11エリアA11内に位置してエリアの境界から離れているので、正確に検出される。つまり、異常に起因する圧造力微分値の異常値は、異常の発生時間帯を問わず、少なくとも一つの時間エリアで正確に検出される。したがって、異常判定部72は、異常を精度よく判定することができる。
【0068】
さらに、基準波形WMを用いる異常判定方法の場合、異常判定部72は、基準波形WMを求めるまでの間は異常の判定を行うことができない。これを補うために、異常判定部72は、基準波形WMを求めるまでの間、圧造力Fの波形に関する前回値から今回値への変化量に基づいて異常を判定する方法を併用する。前回値および今回値の具体例として、圧造力Fのピーク値、時間エリアごとの圧造力積分値、時間エリアごとの増加方向の圧造力微分値および減少方向の圧造力微分値、等を用いることができる。異常判定部72は、過去の生産実績などを参考にして予め定められた判定閾値と、前記した変化量とを比較して異常を判定する。これによれば、異常判定部72は、基準波形WMを求めるために圧造加工を試行する時点から加工実施状況の異常を判定することができる。
【0069】
8.従来構成の圧造機1Xとの対比
次に、従来技術の圧造機1Xとの対比により、実施形態の圧造機1の作用および効果について説明する。
図11に示される従来技術の圧造機1Xでは、ラム24の前側(パンチ26に近い側)の上部に二つの集約ボックス54が設けられ、ラム24の後側に第一中継ボックス55が設けられていた。さらに、フレーム21の後側上部に第二中継ボックス56が設けられていた。第1~第7工程の各々に設けられた七つのロードセル3の信号ケーブル31は、二つの集約ボックス54に分けて配線される。二つの集約ボックス54の各々は、四つの信号ケーブル31の合計で16芯(4芯×4)を一つの接続用レセプタクルに集約する。
【0070】
二つの集約ボックス54の各々と第一中継ボックス55の間に、第一中継ケーブル57が配線される。したがって、2本の第一中継ケーブル57の各々は、16芯以上が必要となる。また、第一中継ボックス55と第二中継ボックス56の間に、2本の第二中継ケーブル58が配線される。したがって、2本の第二中継ケーブル58の各々は、16芯以上が必要となる。第二中継ケーブル58は、ラム24の往復動作(矢印GB参照)に応じて変形するが、実施形態の第二通信ケーブル52と比較して多芯であるため可撓性および信頼性の確保が難しい。第二中継ボックス56は、2本の第二中継ケーブル58の合計で32芯を一つの接続用レセプタクルに集約する。第二中継ボックス56と制御装置6Xの間に、第三中継ケーブル59が配線される。したがって、第三中継ケーブル59は、32芯以上が必要となる。
【0071】
前記したように、ロードセル3の信号ケーブル31は、第一中継ケーブル57、第二中継ケーブル58、および第三中継ケーブル59で中継されて制御装置6Xまで接続される。制御装置6Xは、ロードセル3の検出信号を増幅する増幅部、増幅された検出信号に信号処理を施して圧造力Fを求める信号処理部、および圧造力Fの波形を表示する表示部などで構成される。制御装置6Xは、第三中継ケーブル59から検出信号が入力されない場合に故障と判定することができる。ただし、制御装置6Xは、故障の原因箇所を判定することができない。つまり、ロードセル3(信号ケーブル31を含む)、集約ボックス54、第一中継ケーブル57、第一中継ボックス55、第二中継ケーブル58、第二中継ボックス56、および第三中継ケーブル59のいずれが故障の原因箇所であるか特定されない。
【0072】
前記した従来構成の圧造機1Xと対比して、実施形態の圧造機1によれば、次の(1)~(6)の作用および効果が生じる。
(1)中継ケーブル(57、58、59)に代えて芯線数が少ない細径の通信ケーブル(51、52、53)を用いることができる。加えて、中継ボックス50の数量を減らす等、配線構造を簡素化することができる。これにより、芯線の断線や、中継ボックス50の内部の接続不良などの故障を従来よりも削減することができる。さらには、故障時の原因箇所の特定が容易となるので、復旧作業を容易化して、早期復旧を可能とすることができる。加えて、製造時および復旧作業時の配線作業が大幅に軽減される。
(2)ラム24の往復動作に応じて変形する第二通信ケーブル52では、細径ゆえに可撓性の確保が容易となり、繰り返し変形に対する耐久性および信頼性が向上する。
【0073】
(3)故障判定部71がロードセル3の故障と信号変換送信部(4A、4B)の故障とを分けて判定することにより、故障の原因箇所の特定がさらに一層容易になる。特に、フレーム21の内部の狭隘箇所に立ち入っての原因調査を簡略化および容易化できる効果が顕著となる。その結果、復旧作業が容易化および効率化され、復旧に要する手間と時間が大幅に短縮される。
(4)異常判定部72が積分演算法および微分演算法を併用することにより、保守員の手間を軽減しつつ、高い精度で異常の早期の段階を判定することができる。
【0074】
(5)微弱な検出信号の伝送先を制御装置6Xから信号変換送信部(4A、4B)に変更して伝送距離を短縮したので、外部ノイズの影響が低減されてS/N比が向上する。
(6)信号変換送信部(4A、4B)を4つのロードセル3に対応する回路構成としたことにより、圧造機1の工程数に応じて信号変換送信部(4A、4B)の数量を変更できるので、製造コストの面で有利となる。
【0075】
9.実施形態の変形および応用
なお、検出部は、ロードセル3に限定されず、パンチ26またはダイス23の温度を個別に検出する温度センサ、例えば、三線式測温抵抗体であってもよい。この態様では、7個の三線式測温抵抗体の各々の三芯の信号ケーブルを信号変換送信部(4A、4B)まで配線すればよく、制御装置6Xまで中継して接続する必要がなくなる。一方、異常判定部72は、パンチ26またはダイス23の過熱異常を判定して、ワーク8の仕上がり精度の低下を抑制したり、パンチ26またはダイス23の破損を未然に防止したりすることができる。
【0076】
さらに、検出部は、変位センサやAEセンサであってもよい。変位センサは、分割型のパンチ26またはダイス23が圧造加工時に径方向や軸長方向に変位する変位量を検出して、加工実施状況を判定するための指標にすることができる。AEセンサは、圧造加工時にパンチ26またはダイス23で発生する弾性波(アコースティックエミッション)を検出して、加工実施状況を判定するための指標にすることができる。
【0077】
また、ロードセル3は、ダイス23の側に設けられ、信号変換送信部(4A、4B)はフレーム21の内部に設けられてもよい。この態様において、前記(1)~(5)の作用および効果(第二通信ケーブル52の可撓性に関する事項は除外)が生じる。また、通信回路46と受信部7の間の有線通信は、周辺のノイズ環境が良好であることを条件にして、無線通信に置き換えることができる。ただし、信号変換送信部(4A、4B)に電源を供給するケーブルを無くすことはできない。また、通信回路46と受信部7の間のシリアル通信をパラレル通信に置き換えることができる。ただし、通信ケーブル(51、52、53)の芯線数を削減する効果が低減または消失する。
【0078】
さらに、故障判定部71が用いる第一規定時間TK1、第二規定時間TK2、および第三規定時間TK3は、実施形態では全て10msecに設定されているが、互いに相違してもよい。また、異常判定部72は、前記した三法のうちエンベロープ法を省略し、積分演算法および微分演算法の少なくとも一法を用いるものであってもよい。さらに、異常判定部72は、複数の圧造力積分値を対象として分散解析などの統計手法を適用し、判定用の所定値を可変に設定してもよい。同様に、異常判定部72は、複数の圧造力微分値を対象として分散解析などの統計手法を適用し、判定用の許容範囲を可変に設定してもよい。本発明およびその実施形態は、上記した以外にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、1X:圧造機 21:フレーム 23:ダイス 24:ラム
26:パンチ 3:ロードセル 31:信号ケーブル
4A、4B:信号変換送信部 41:回路基板 42:CPU
44:電源回路 45:入力回路 46:通信回路
50:中継ボックス 51:第一通信ケーブル 52:第二通信ケーブル
53:第三通信ケーブル 6、6X:制御装置
7:受信部 71:故障判定部 72:異常判定部
8:ワーク 91:主駆動源 9J:電子カム
TA:加工時間帯 TB:非加工時間帯
FH1:第一上限値 FL1:第一下限値 FH2:第二上限値
FL2:第二下限値 WM:基準波形 W1~W7:波形
△S、ΔS1~ΔS3:圧造力積分値の変化量
△F1~△F5:圧造力微分値
A1~A12:第1エリア~第12エリア