(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074280
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】薄型半導体ダイのハイブリッド接合
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240523BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L21/60 311T
H01L21/52 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023195895
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】17/989,775
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユー・ミン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】マン・ホン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シウ・チュン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・イン・クォック
(72)【発明者】
【氏名】ミン・リ
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5F044KK05
5F044KK11
5F044LL15
5F044PP16
5F044QQ06
5F047AA03
5F047FA07
(57)【要約】
【課題】半導体ダイを基板上に配置する方法および半導体ダイを基板上に配置するためのボンディングツールを提供すること。
【解決手段】半導体ダイを基板上に配置するとき、突部を有するボンディングツールのダイ保持表面により、ダイが捕捉および担持される。ボンディングツールの突部は、ダイ保持表面内の後退位置とダイ保持表面から突出する伸長位置との間で移動可能であるように構成されている。突部が伸長位置に配置されると、ボンディングツールがダイを担持しているとき、ダイは曲がる。その後、伸長位置から後退位置に向かって後退するように基板が突部を付勢する間、ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールが移動される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ダイを基板上に配置する方法であって、
突部を有するボンディングツールのダイ保持表面により前記ダイを捕捉および担持するステップであって、前記突部は、前記ダイ保持表面内の後退位置と前記ダイ保持表面から突出する伸長位置との間で移動可能であるように構成され、前記突部は、前記ボンディングツールが前記ダイを担持しているとき、前記ダイを曲げるために前記伸長位置に配置されている、ステップと、
前記伸長位置から前記後退位置に向かって後退するように前記基板が前記突部を付勢する間、前記ダイを前記基板に対して平坦にするように前記ボンディングツールを移動させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記突部を前記伸長位置に配置することにより、前記ダイが平面形態から凸状形態へ曲がる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記突部は、前記ダイの周辺に対して前記ダイの中心領域を変位させることによって、前記ダイを前記凸状形態へと曲げるように配置されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ダイ保持表面内に配置された付勢機構により、前記突部を前記伸長位置へ付勢するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ダイを前記基板に対して平坦にするように前記ボンディングツールを移動させるステップは、最初に前記ダイの中心領域を前記基板に対して接触させるように前記ボンディングツールを前記基板に向かって移動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイを前記基板に対して平坦にするように前記ボンディングツールを移動させることにより、前記付勢機構に打ち勝って前記突部が前記後退位置へ後退して、前記ダイと前記基板との間の接触が、前記突部の位置に対応する領域から前記ダイの周辺に向かって伝播することが可能になる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記突部を前記ダイ保持表面内に完全に後退させるように前記ボンディングツールを移動させ続けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ダイ保持表面は、平面である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記突部を前記ダイ保持表面内に完全に後退させることにより、前記ダイが平面形態に戻ることが可能になる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ボンディングツールを移動させ続けることにより、前記ダイが前記基板に対して平坦になる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ダイを担持するステップは、前記突部によって凸状形態へと前記ダイを曲げることを容易にするように前記ダイ保持表面に対して前記ダイの周辺を保持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ダイを担持するステップは、真空力を生成して前記ダイ保持表面に対して前記ダイの周辺を保持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ダイの前記周辺を保持する前記真空力は、前記突部が前記伸長位置にあるとき、付勢機構に打ち勝たないように構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ダイ保持表面に対して前記ダイの前記周辺を保持するのをやめて、前記ダイと前記基板との間の接触に続いて前記ダイが平面形態に留まることを可能にして、前記ダイと前記基板との間の接触が、前記突部の位置に対応する領域から前記ダイの前記周辺に向かって伝播することを可能にするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
半導体ダイを基板上に配置するためのボンディングツールであって、
前記ダイを捕捉および担持するためのダイ保持表面であって、前記ダイ保持表面は、前記ダイ保持表面内の後退位置と前記ダイ保持表面から突出する伸長位置との間で移動可能であるように構成されている突部を有し、前記突部は、前記ボンディングツールが前記ダイを担持しているとき、前記ダイを曲げるために前記伸長位置に配置されている、ダイ保持表面と、
前記伸長位置から前記後退位置に向かって後退するように前記基板が前記突部を付勢する間、前記ダイを前記基板に対して平坦にするように前記ボンディングツールを移動させるように構成された作動機構と
を備える、ボンディングツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ダイを基板上に配置する方法、および半導体ダイを基板上に接合するための突部を有するボンディングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
銅のハイブリッド接合プロセス(ハイブリッド接合と呼ばれることもある)により、三次元集積回路用途のための室温での直接銅対銅接合によって、シリコンダイのボンドパッドとシリコン基板との間(または一対のシリコン基板のボンドパッド間)にバンプレスインターコネクトが提供される。
【0003】
しかしながら、シリコンダイとシリコン基板との間でこのようなハイブリッド接合を実行すると、汚染物質が特に低い閾値量を下回ることが要求される環境においてダイのボイドフリー接合を提供しようとするとき、いくつかの問題に遭遇することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、先行技術の前述の問題のうちの少なくともいくつかを克服する構成を提供しようと努めることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、半導体ダイを基板上に配置する方法が提供され、これは、突部を有するボンディングツールのダイ保持表面によりダイを捕捉および担持するステップであって、突部は、ダイ保持表面内の後退位置とダイ保持表面から突出する伸長位置との間で移動可能であるように構成され、突部は、ボンディングツールがダイを担持しているとき、ダイを曲げるために伸長位置に配置されている、ステップと、伸長位置から後退位置に向かって後退するように基板が突部を付勢する間、ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールを移動させるステップと、を含む。
【0006】
いくつかの既存の技術に伴う問題は、ダイと基板との間に要求されるボイドフリー接触領域を提供するようにダイを曲げるために用いられるツールが、汚染物質が特定の閾値量未満であることが要求される用途での使用に不適切である可能性があり、および/またはダイの表面全体にわたってボイドフリー接触を提供する方法でダイを基板と接触させることができないということであることを、第1の態様は認識している。
【0007】
したがって、方法が提供される。この方法は、ダイを基板上に配置するためのものであり得る。この方法は、ダイを捕捉および担持または保持するステップを含むことができる。ダイはボンディングツールのダイ保持表面により捕捉および担持することができる。ボンディングツールのダイ保持表面は、突部、突起または伸長部を有することができる。突部は、突部がダイ保持表面内で格納または維持される後退位置と、突部がダイ保持表面から突出または延在する伸長位置と、の間で移動可能であるように構成することができる。突部は、ボンディングツールがダイを担持するとき、ダイを屈曲、湾曲、または変形させるように伸長位置に配置することができる。この方法は、ダイの形状を基板に対して平坦化、平滑化または復元するようにボンディングツールを移動または並進させるステップを含むことができる。移動により、伸長位置から後退位置に向かって後退するように突部を付勢することができる。このように、不適切なレベルの汚染物質を受けにくいボンディングツールを提供することができ、その突部により、ダイと基板との間に要求されるボイドフリー初期接触ゾーンを提供するダイの初期変形が引き起こされる。接触ゾーンは次いで、基板とダイとの間の接触前線を拡大することができるようにボンディングツール内に突部を後退させながら、ダイを基板に対して平坦にするように基板に向かってボンディングツールを移動させることによって拡大され、ダイにわたるボイドフリー接触を提供することができる。
【0008】
移動させるステップは、ダイを基板に対して接触させるように基板に向かってボンディングツールを移動させるステップを含むことができる。
【0009】
突部を伸長位置に配置することにより、ダイを平面形態から凸状形態へ曲げることができる。したがって、突部は、ダイをその自然の、無応力の、平面形態から、凸状のまたは湾曲した形態へ屈曲または変形させるのに役立ち得る。
【0010】
突部は、ダイの周辺または縁部領域に対してダイの中心領域を変位させることによって、ダイを凸状形態へと曲げるように配置することができる。したがって、中心領域はダイの縁部と比較して基板に向かって盛り上がり得る。
【0011】
伸長位置により、スタンドオフ量だけダイ保持表面から離れてダイを曲げることができる。
【0012】
この方法は、ダイ保持表面内に配置された付勢機構により、突部を伸長位置へ付勢または誘導するステップを含むことができる。したがって、突部は、最初にダイを曲げるように伸長位置に向かわせるように付勢することができる。
【0013】
ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールを移動させるステップは、最初にダイの中心領域を基板に対して接触させるようにボンディングツールを基板に向かって移動させるステップを含むことができる。
【0014】
ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールを移動させることにより、付勢機構に打ち勝って突部を後退位置へ後退させることができ、ダイと基板との間の接触が、突部の位置に対応する領域からダイの周辺に向かって伝播することが可能になる。したがって、ボンディングツールを基板に向かって押すことにより、ダイを基板に対して接触させ、これにより今度は突部をボンディングツールに押し込む。
【0015】
この方法は、突部をダイ保持表面内に完全に後退させるようにボンディングツールを移動させ続けるステップを含むことができる。
【0016】
ダイ保持表面は平面であり得る。
【0017】
突部をダイ保持表面内に完全に後退させることにより、ダイが平面形態に戻ることが可能になり得る。
【0018】
ボンディングツールを移動させ続けることにより、ダイを基板に対して平坦にすることができる。
【0019】
ダイを担持するステップは、突部によって凸状形態へとダイを曲げることを容易にするようにダイ保持表面に対してダイの周辺を保持するステップを含むことができる。
【0020】
ダイを担持するステップは、真空力を生成してダイ保持表面に対してダイの周辺を保持するステップを含むことができる。
【0021】
ダイの周辺を保持する真空力は、突部が伸長位置にあるとき、付勢機構に打ち勝たないように構成することができる。換言すれば、ダイの縁部で生成される真空は、突部によってダイを曲げることを防止するには不十分である。
【0022】
この方法は、ダイ保持表面に対してダイの周辺を保持するのをやめて、ダイと基板との間の接触に続いてダイが平面形態に留まることを可能にして、ダイと基板との間の接触が、突部の位置に対応する領域からダイの周辺に向かって伝播することを可能にするステップを含むことができる。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、半導体ダイを基板上に配置するためのボンディングツールが提供され、これは、ダイを捕捉および担持するためのダイ保持表面であって、ダイ保持表面は、ダイ保持表面内の後退位置とダイ保持表面から突出する伸長位置との間で移動可能であるように構成されている突部を有し、突部は、ボンディングツールがダイを担持しているとき、ダイを曲げるために伸長位置に配置されている、ダイ保持表面と、伸長位置から後退位置に向かって後退するように基板が突部を付勢する間、ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールを移動させるように構成された作動機構と、を含む。
【0024】
突部を伸長位置に配置することにより、ダイを平面形態から凸状形態へ曲げることができる。
【0025】
突部は、ダイの周辺に対してダイの中心領域を変位させることによって、ダイを凸状形態へと曲げるように配置することができる。
【0026】
ボンディングツールは、突部を伸長位置へ付勢するように構成されたダイ保持表面内に配置された付勢機構を含むことができる。
【0027】
作動機構は、最初にダイの中心領域を基板に対して接触させるようにボンディングツールを基板に向かって移動させるように構成することができる。
【0028】
作動機構は、ダイを基板に対して平坦にして付勢機構に打ち勝って突部を後退位置へ後退させ、ダイと基板との間の接触が、突部の位置に対応する領域からダイの周辺に向かって伝播することが可能になるように構成することができる。
【0029】
作動機構は、突部をダイ保持表面内に完全に後退させるようにボンディングツールを移動させ続けるように構成することができる。
【0030】
ダイ保持表面は平面であり得る。
【0031】
作動機構は、突部をダイ保持表面内に完全に後退させてダイが平面形態に戻ることを可能にするようにボンディングツールを移動させ続けるように構成することができる。
【0032】
作動機構は、ダイを基板に対して平坦にするようにボンディングツールを移動させ続けるように構成することができる。
【0033】
ダイ保持表面は、突部によって凸状形態へとダイを曲げることを容易にするようにダイ保持表面に対してダイの周辺を保持することによってダイを担持するように構成することができる。
【0034】
この装置は、真空力を生成してダイ保持表面に対してダイの周辺を保持するように構成された真空生成器を含むことができる。
【0035】
真空生成器は、突部が伸長位置にあるとき、付勢機構に打ち勝たないように真空力を生成するように構成することができる。
【0036】
生成される真空は、真空力を生成することを停止してダイ保持表面に対してダイの周辺を保持するのをやめて、ダイと基板との間の接触に続いてダイが平面形態に留まることを可能にし、ダイと基板との間の接触が、突部の位置に対応する領域からダイの周辺に向かって伝播することを可能にするように構成することができる。
【0037】
これらおよび他の特徴、態様、および利点は、説明の項、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に関して、よりよく理解されるであろう。
【0038】
添付の図面を参照して、単なる例として、本発明の実施形態を次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】平坦な薄型シリコンダイおよび平坦なシリコン基板の断面図である。
【
図3】突出先端および真空穴分布を例示する、ボンディングツールの底面図である。
【
図5】真空チャネルを備えたボンディングツールの断面図である。
【
図6】薄型シリコンダイを捕捉し、真空吸込みによってその表面に対してダイを保持するときのボンディングツールの断面図である。
【
図7】ボンディングツールによって中心突出先端で保持されているときの薄型シリコンダイの凸状表面湾曲の三次元描写図である。
【
図8】ダイの凸状表面がシリコン基板の平坦な表面上にちょうど接触するように下げられているときのボンディングツールおよび薄型シリコンダイの断面図である。
【
図9】薄型シリコンダイが平坦になり、その無応力状態に回復するように、ツールの真空吸込みがオフにされているときのボンディングツールおよび薄型シリコンダイの断面図である。
【
図10】突出先端が押し戻されて後退するように、通常の圧縮力がツールに印加されているときのボンディングツールおよび薄型シリコンダイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面において、同様の部分は同様の参照数字によって示す。
【0041】
次のことは、いくつかの実施形態の技術を理解するために役立つ有用な背景情報であり得る。上記のとおり、銅のハイブリッド接合プロセス(時折ハイブリッド接合と呼ばれる)により、三次元集積回路用途のための室温での直接銅対銅接合によってシリコンダイとシリコン基板との間のボンドパッドにバンプレスインターコネクトが提供される。ハイブリッド接合プロセスは通常2ステップのプロセスである。第一に、シリコンダイは室温でシリコン基板上へ事前接合される。第二に、事前接合されたダイおよび基板のための後続のサーマルアニーリングプロセスが、オーブンにおいて特定のアニーリングプロファイルで実行される。事前接合プロセスでは、シリコンダイはボンドツールによって保持され、基板上のその接合位置に正確に位置合わせされる。基板は、事前接合プロセス中、ワークチャック上に固定されるシリコンウエハ、シリコンインターポーザまたは活性シリコンダイとすることができる。事前接合は、室温で最適化された圧縮力で正確な所望の場所で基板上にシリコンダイを置くことによって実行される。
【0042】
10ミクロン未満のピッチのパッドインターコネクトを得るため、事前接合プロセスのために基板上にダイを設置する位置合わせの精度は、0.5ミクロン、またはこれより良好であるべきである。ハイブリッド接合プロセスのための適切な接合界面を得るため、シリコンダイおよび基板の表面は、非常に清潔かつ滑らかで、粒子なしでなければならず、これらの表面はプラズマ活性される必要がある。これらの表面は通常、どのような誘電体表面層でも0.5ナノメートル未満の粗さ(RA)に化学機械研磨(CMP)によって研磨される。これらの表面は通常、メガソニック活性脱イオン水で徹底的に洗浄され、次いで窒素プラズマ処理によって活性化される。これらの滑らかな表面が近接すると(通常100ナノメートル未満離れて)、これらの表面上の-OHラジカル間のファンデルワールス引力により、シリコンダイとシリコン基板を互いに接着する。両表面とも粒子がなければ、完全な界面を得ることができる。
【0043】
シリコンダイと基板との間の接合界面は誘電体パッシベーションおよび銅パッドからなる。誘電体パッシベーションは酸化シリコンまたは炭窒化シリコンによって提供することができる。事前接合プロセスにより接合表面が一緒になり、ファンデルワールス引力により誘電体パッシベーションの界面で初期接合が引き起こされる。この事前接合構成は次いで特定のプロファイルでのサーマルアニーリングのためにオーブンに置かれる。ダイの誘電体界面と基板との間の接合は、第1の高温での後続のサーマルアニーリングプロセス中、通常1時間より多く、共有結合に変わることになる。両表面上の銅パッドは互いに結合して、アニーリングプロファイルによる通常さらに高い第2の温度でオーブン内の構成がアニールされると、シリコンダイとシリコン基板との間に完全な冶金のインターコネクトを形成する。
【0044】
完全な接合界面を得るため、重要な要件は、シリコンダイおよび基板の両方について、これらが一緒になる前に、粒子および汚染物質なしの接合表面を提供することである。しかしながら、他の条件が、完全なボイドフリー接合界面を提供することに影響する可能性がある。誘電体層(通常SiO2またはSiCN)に用いられる材料、個片化されたシリコンウエハの保護的コーティングを除去するために用いられるウエットプロセス、ならびにプラズマ表面の活性化に用いられるパラメータが、ボイドフリー銅ハイブリッド接合のために重要な役割を果たす。接合のための組み立てプロセスは通常、中心から始まる。2つの接合表面間の接触は中心から始まり、次いでその接触領域を拡大する。接合表面間の接触領域は、接触領域が表面全体にわたって拡張するまで、通常中心領域から周囲に向かって放射状に大きくなる。これは、ウエハとウエハの接合のためのボイドフリーで完全な接合界面を達成するのに役立ち得る。しかしながら、所与の厚さの相対的に小さなダイサイズのため、この接合プロセスは、標準的なボンディングツールでダイとダイおよびダイとウエハの接合を実行するために用いることができない可能性がある。
【0045】
ボイドフリー接合界面を得る1つの方法は、実質的に凸状の接触表面を備えた変形可能な凸状のピックアップツールを利用するものである。可撓性フィルムまたはダイが捕捉されて変形可能ツール上に保持され、このツール上の穴を通る真空吸込みによって凸状表面の湾曲で保持される。可撓性フィルムまたはダイが平坦な基板に載っているときに下向きの圧縮力がツールに印加されると、可撓性フィルムまたはダイ、ならびに変形可能ツールは平坦になる。しかしながら、このような変形可能なピックアップツールは通常、表面粗さが低く、汚染物質を捕らえ得るゴム材料で作製されている。したがって、このアプローチは、汚染物質が閾値量より低いことが要求される環境に適していない。別のアプローチにおいて、可撓性フィルムまたはダイは、変形不可能なツールの凸状表面湾曲に従うように曲がる。しかしながら、このアプローチではダイの外側コーナーでの周辺縁部に沿う圧縮力は、このツールが変形可能ではないので、これらの地域に作用する直接の圧縮力がないため、最小である。
【0046】
実施形態をさらに詳細に議論する前に、まず概観を提供する。いくつかの実施形態は、ダイを基板上に配置するための技術を提供する。ボンディングツールを用いて、ボンディングツールの表面上にダイを保持する。ボンディングツールの表面は、伸長位置から移動させることができる突部を有し、これは、ボンディングツール上のダイを最初に湾曲または屈曲させるようにダイ保持表面から突出する。突部は、基板上でダイを平坦にするように後退位置に向かって移動させる。通常、基板に向かうボンディングツールの移動により、ダイが基板に接触し、これにより、今度は、ダイが基板上で平坦になるにつれて、突部が後退位置へ移動する。これによりダイの初期領域がまず基板の隣接領域に接触すること、そして突部がボンディングツールのダイ保持表面内へ後退するにつれて、この接触領域が拡大することが可能になる。突部を完全に後退させることによって、ボンディングツールは、ダイの周辺縁部へ圧力を印加してダイの表面全体にわたる基板との適切な接触を保証することが可能である。このアプローチにより、汚染物質が指定された閾値量より少ないことが要求される環境における接合に適している、そしてダイと基板との間の接触領域における望まれないボイドの生成を回避するボンディングツールを用いて、ダイと基板との間の制御された拡張する接触前線で、ダイと基板との間の信頼できる初期接触が可能になる。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態は、通常複数の真空穴を備えた平坦なまたは平面のダイ保持または接触表面と、接触表面の中心領域に通常配置された後退可能な突出先端と、を備えたボンディングツールを有する真空ピックアンドプレイスツールを提供する。真空穴を通る真空吸込みを用いてこのボンディングツールによって薄型ダイを捕捉することができる。ダイは次いで、その中心領域が突出先端によって押し出され、屈曲または変形している間、真空吸込みによって接触表面上にしっかり保持される。突出先端は通常、真空吸込みによって作成されたダイに対する圧縮力に耐えるのに十分抵抗性があるコンプライアント構造によって予圧されている。突出先端はボンディングツールの接触表面から突出または延在し、ダイの接触後部側を押してダイの接合表面上に凸状の湾曲を形成する。接合表面のこの湾曲が、ハイブリッド接合のためのボイドフリー誘電体接合界面を達成するのを支援する。接合プロセスの始まりで、ダイがまず基板に対して接触するときの初期接着中の最小の接触力で、ダイの凸状表面湾曲により、中心領域においてダイと基板との間に初期最小接触領域が提供され、これはいかなるボイドをも回避するのに役立つ。真空吸込みが減少するにつれて、ダイはその無応力状態に回復して基板上で平坦になる。ダイと基板との間の接合前線が大きくなってダイの縁部に向かって伝播し、接合界面を閉じることになる。突出先端がボンディングツールの接触表面内に完全に後退し、ボンディングツールの平坦な接触表面が適切な圧縮力でダイを基板に対して押しつけるまで、ボンディングツールを基板に向かって駆動するように追加の通常の下向き圧縮力を次いで印加することができる。
【0048】
この構成は、ゴムまたは他の同様の可撓性接触表面の使用を回避するため、低汚染が要求される非常に清潔な環境での使用に適したボンディングツールを提供する。また、突部がボンディングツール内に完全に後退可能であるため、これにより、ダイのコーナーでの縁部に沿う適切な圧縮力を提供することができない凸形状ボンディングツールと比較して、ハイブリッド接合中の接合界面全体にわたって接触表面がより均一な圧縮を提供することができる。したがって、この構成は、SiO2またはSiCNのいずれかの界面誘電体層を備えた構成のハイブリッド接合を行うのにより適している。
【0049】
ダイおよび基板
図1は、その無応力、自立または普通の状態にある平坦なダイ10および平坦な基板20を示す断面図である。この例において、ダイ10および基板20は共にシリコンである。しかしながら、他のタイプのダイ10および基板20をハイブリッド接合で用いることができるということが理解されるであろう。ダイ10および基板20の両方が誘電体パッシベーション層およびその接合表面上の銅ボンドパッドを含む。明確さを向上させるため、これらの構造はこの概略図で示されていない。通常、誘電体層は、通常およそ200ナノメートルより大きな厚さを有するTEOS構造またはSiCN層から作製されたSi0
2とすることができる。これらの誘電体接合表面は通常、化学機械研磨(CMP)プロセスによって研磨されて通常およそ0.5ナノメートル未満の表面粗さ(RA)を備えた非常に平坦な表面を達成する。しかしながら、銅ボンドパッド30のCMP研磨表面は通常、
図2に示すように、一定の荒さで誘電体層の表面の下方に窪んでいる。研磨銅パッド30の窪みはしばしば、CMPプロセスに起因する銅ボンドパッド30のディッシングとして説明される。ディッシングの深さAは通常、銅ボンドパッド30の直径およびCMPプロセスのプロセス制御に依存する。ディッシング深さの典型的な値は、5マイクロメートルの直径を有する銅ボンドパッドについておよそ5~8ナノメートルである。
【0050】
ボンディングツール
図3は、一実施形態による、ボンディングツール40の平面図を概略的に示す。ボンディングツール40は、ダイ保持表面50を画定するツールベース45を有する。ダイ保持表面50は平坦または平面であり、基板20(図示せず)に接合されるべきダイ10(図示せず)の実質的に表面全体を受け取るような寸法である。すなわち、通常、ダイ保持表面50は、実質的に少なくともダイ10の外側周辺縁部に延在するような寸法である。ダイ保持表面50の中心領域に配置された中心開口110に、凸状先端または突部60が配置されている。真空吸込み力を生成してダイ10を保持するためにダイ保持表面50の内側周辺の周りに複数の真空開口100が形成されている。
【0051】
図4はボンディングツール40を通る断面図を概略的に示す。突部60は、
図4に示すような伸長位置と、突部60がボンディングツール40内に完全に窪んでいる後退位置(
図10参照)と、の間で変位可能である。換言すれば、突部60は、後退または窪み位置にあるときダイ保持表面50から突出しない。
図4に示すように伸長位置に向かって突部60を付勢するように弾力性がある付勢機構70がツールベース45内に設けられている。しかしながら、付勢機構70の弾性特性は、突部60に対する適切な力が、突部60に対して付勢機構70によって生成された付勢力に打ち勝つことができるように選択され、以下でより詳細に説明するように、突部60が伸長位置からボンディングツール40内の後退位置へ移動するようになっている。
【0052】
図5はボンディングツール40の別の断面図を概略的に示す。ツールベース45は、ダイ保持表面50によって画定された複数の真空開口100と真空ポート90を結合する真空導管80を画定する。したがって、ツールベース45は、ダイ保持表面50によって提供される平坦な底部表面、その中心で突部60によって提供される凸状先端、および真空開口100によって平坦表面上で突出先端の周りに提供される真空穴を有することが分かる。上記のとおり、突部60は、ばねとして作用する付勢機構70に接続されている。真空開口100は真空導管80および真空ポート90を介して真空源と連通する。突部60を押す力があれば、このような力は、付勢機構70がツールベース45の内側の空洞120内へ内向きに曲がるにつれて、ダイ保持表面50に画定された中心開口110内へ突部60を後退させるように作用することになる。付勢機構70の変形は本質的に弾性であるため、これは、圧縮力が除去されると、その元の構成に回復することになり、突部は再びダイ保持表面50から突出するように付勢されることになる。
【0053】
したがって、ダイ10がダイ保持表面50上の位置に維持されているとき、突部60は付勢機構70によって伸長位置へ付勢されることになり、これによりダイ10は凸状構成へと曲がり、突部60の近傍におけるダイ10の中心部分がダイ保持表面50から最も遠くに配置されることが理解されるであろう。ダイ10が基板20に接触するとき、ダイ10の中心部分がまず基板20に接触することになり、基板20に対するダイ10の継続的な移動により、付勢機構70によって生成される力に打ち勝って突部60を後退位置に向かって移動させる圧縮力が生成されることになる。これによりダイ10が基板20に対して緩やかに平坦化し、ダイ10と基板20との間の接合前線が初期中心領域からダイ10の外側周辺縁部に向かって拡大する。最終的に、以下で詳細に説明するように、ダイ10全体がダイ保持表面50によって基板20に対して完全に平坦化される。
【0054】
ボンディングツールの動作
図6に見られるように、ダイ10の捕捉に続いて、ダイ10は、真空開口100によって提供される真空吸込みによってダイ保持表面50に対して保持される。しかしながら、ダイ10の中心領域130にある突部60の、ダイ10の中心領域130をダイ保持表面50から離すように押す動作のため、ダイ10はダイ保持表面50に対して平坦にならない。通常、突部60はダイ保持表面50からおよそ30から40ミクロンだけ延在する。
【0055】
ダイ10が真空吸込み力によってダイ保持表面50に対して保持されるとき、突部は、ダイ保持表面50からおよそ20ミクロンだけ延在するように僅かに後退する。突部60がダイ保持表面50から延在する量および付勢機構70の堅さは大きすぎるべきでなく、さもなければ、250ミクロン未満の厚さのダイでさえ、ピックアッププロセス中、チップ10に十分な真空吸込みを構築することが可能でないことがあるということが理解されるであろう。
【0056】
ダイ10は、真空によってダイ保持表面50上に保持されるとき変形し、ボンディングツール40による捕捉の成功に続いて、
図7に示すものと同様の凸状表面湾曲を形成する。ダイ10の中心領域130で生成されたその周辺縁部140に対する凸状表面湾曲により、ボイドフリーハイブリッド接合プロセスの提供が容易になる。
【0057】
図8に示すように、ボンディングツール40が基板20に接近するにつれて、ダイ10の中心領域130と基板20の初期接触がなされ、ボイドフリー界面の接合領域が形成される。初期界面の接合領域の大きさは、突部60の形状および構成、付勢機構70によって生成される付勢力、およびボンディングツール40に作用する接触力によって決定される。この接触力により初期圧縮が突部60に導入され、したがってその高さが減少する。したがって、接触力は、中心領域130が凸状であるダイ10が基板20に触れてこれとの初期接触をなすとき、突部の高さHが小さな初期中心接触領域を維持するのに十分大きいことを保証するのに十分低くあるべきである。スタンドオフの高さHは接合プロセスについて最適化することができ、ボンディングツールに作用する圧縮力によって制御可能である。
【0058】
図9に示すように、初期接触がなされたら、真空吸込みは通常オフに切り替わる。これによりダイ10が真空吸込みから解放され、その無応力形態に回復して、平坦な、平面の構成に戻ることが可能になる。ダイ10が平坦になるにつれて、ダイ10と基板20との間の界面の接触領域は大きくなり、中心領域130から拡大し、ダイ10の外側周辺縁部140に達するまで、接合前線が外向きに移動する。これは、ダイ10の誘電体層と基板20との間のボイドフリー接合界面を達成するのに役立つ。
【0059】
図10に示すように、より高い圧縮力が次いでボンディングツール40によって印加される。これにより突部60は、付勢機構70によって生成された付勢力にさらに打ち勝ち、ダイ保持表面50を越えてここから最早突出しないように、突部60はツールベース45内に完全に後退する。ダイ保持表面50は次いでダイ10の実質的に表面全体にわたって均一な接合圧力を印加することができる。事前接合プロセスが完了したら、後続のサーマルアニーリングプロセスを次いで行うことができる。
【0060】
この構成により、ダイ10の接合表面が基板20との初期接触をなすとき、接触力を変えることによって、接着中、突部60のダイ保持表面50からの高さを制御することが可能になる。これにより接合プロファイルの最適化が可能になり、ハイブリッド接合プロセスについてボイドフリー接合界面が達成される。加えて、ダイ10と基板20との間に十分な量の圧縮力があるとき、突部60をボンディングツール内へ完全に後退させ、均一な接合圧力を提供して事前接合プロセスの完了を支援することができる。
【0061】
したがって、いくつかの実施形態が、室温での直接銅対銅接合によってシリコンダイ10のボンドパッドとシリコン基板20との間のバンプレスインターコネクトを実現するために用いられる銅ハイブリッド接合プロセスを提供することが分かる。事前接合は、室温で最適化された圧縮力で基板20上へダイ10を置くことによって達成される。2つの接合表面間の接触はダイ10の中心から始まり、次いでその接触を拡大する。接触表面がダイ10全体を覆うまで、接触表面領域はダイ10の中心から周辺に向かって放射状に大きくなる。いくつかの実施形態のボンディングツール40は、複数の真空穴100およびその中心で後退可能な突出先端60を備えた平坦接触表面50を有する。ダイ10は次いで、その中心領域130がツールの中心突出先端60によって押し出される間、真空吸込みによってツール40の平坦接触表面50上にしっかり保持することができる。突出先端60は、真空吸込みによって作成されるダイ10の圧縮力に耐えるのに十分強いコンプライアントまたは付勢構造によって予圧されている。突出先端60はツール40の平坦表面50から突出してダイ10の裏側を押し、ダイ10の接合側で凸状湾曲を形成する。ボンディングツール40の真空吸込みがオフになると、ダイ10はその無応力状態に復元されることになり、シリコン基板上で平坦になる。接合中、接合前線はダイ10の周辺縁部140に向かって成長および伝播して、接合界面を完全に閉じることになる一方、突出先端60は圧縮接合力のためツール40内へ後退することができる。
【0062】
本発明をいくつかの実施形態を参照してかなり詳細に説明してきたが、他の実施形態が可能である。
【0063】
したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書に含まれている実施形態の説明に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0064】
10 ダイ
20 基板
30 ボンドパッド
40 ボンディングツール
45 ツールベース
50 ダイ保持表面
60 突部
70 付勢機構
80 真空導管
90 真空ポート
100 真空開口
110 中心開口
120 空洞
130 中心領域
140 周辺縁部
【外国語明細書】