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  • 特開-容器詰めナトリウム含有飲料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074285
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】容器詰めナトリウム含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20240523BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240523BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240523BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20240523BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L27/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196100
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022184834
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼子 和洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 明香
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE06
4B047LF07
4B047LG01
4B047LG03
4B047LG38
4B047LG56
4B047LP14
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG05
4B117LK01
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK21
4B117LL09
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、所定濃度のナトリウムを含む飲料に特有な「後引き」が抑制された容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、及び、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株であることを特徴とする、請求項1に記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項4】
1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を300億個/L以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項5】
pHが2~7である、請求項1に記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項6】
乳成分を含有しない、請求項1に記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項7】
果汁をさらに含有する、請求項1~6のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項8】
ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料であって、前記乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、オエノコッカス(Oenococcus)属細菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、ワイセラ(Weissella)属細菌、及び、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上である、前記容器詰めナトリウム含有飲料。
【請求項9】
ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の製造方法。
【請求項10】
ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の飲用時の後引きを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌の死菌体等を含む容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、所定濃度のナトリウムを含む容器詰め飲料において、特有な「後引き」が飲用時に生じるところ、かかる特有な「後引き」が抑制された容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発汗等により失われる水分とナトリウム成分を補給する飲料として、スポーツドリンクが種々上市されている。この他に、近年では、熱中症予防等に適した経口補水飲料にも注目が高まっており、種々上市されている。
【0003】
前述のようなナトリウム含有飲料には、ナトリウムに由来する後引き感が生じることが知られている(特許文献1)。特許文献1には、ナトリウム含有飲料において、炭酸ガス圧を3.5ガスボリューム以上とすることによって、前述の後引き感などを改善できる旨が記載されている。
【0004】
しかし、ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料において、かかる容器詰めナトリウム含有飲料に乳酸菌の死菌体を所定濃度で含有させることによって、ナトリウムに由来する後引きを抑制できることは、これまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-144523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、所定濃度のナトリウムを含む飲料に特有な「後引き」が抑制された容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本発明の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、所定濃度のナトリウムを含む飲料に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させると、前述の「後引き」を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明等が提供される。
(1)ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料;
(2)乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、及び、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上である、上記(1)に記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(3)乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(4)1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を300億個/L以上含有することを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(5)pHが2~7である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(6)乳成分を含有しない、上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(7)果汁をさらに含有する、上記(1)~(6)のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(8)乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、オエノコッカス(Oenococcus)属細菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、ワイセラ(Weissella)属細菌、及び、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の容器詰めナトリウム含有飲料;
(9)ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の製造方法;や、
(10)ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の飲用時の後引きを抑制する方法;
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定濃度のナトリウムを含む飲料に特有な「後引き」(以下、本明細書において単に「後引き」とも表示する)が抑制された容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株と、該株と同等の株(該株に由来する株および該株が由来する株)との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の飲用時の後引きを抑制する方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
【0012】
(乳酸菌の死菌体)
本発明においては1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を用いる。
【0013】
「乳酸菌」とは、分類学的に乳酸菌と認定されたものの全ての総称であり、属、種、株などで限定されるものではない。かかる「乳酸菌」としては、糖を乳酸発酵して多量の乳酸(好ましくは、消費した糖の50%以上の乳酸)を生成する細菌が挙げられ、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、オエノコッカス(Oenococcus)属細菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、ワイセラ(Weissella)属細菌、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属細菌が挙げられる。
なお、本発明におけるラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス属の再分類前にラクトバチルス属に分類されていた細菌を含む。例えば、ラクトバチルス属の再分類に伴い新たにアセチラクトバチルス(Acetilactobacillus)属、アグリラクトバチルス(Agrilactobacillus)属、アミロラクトバチルス(Amylolactobacillus)属、アピラクトバチルス(Apilactobacillus)属、ボンビラクトバチルス(Bombilactobacillus)属、コンパニラクトバチルス(Companilactobacillus)属、デラグリオア(Dellaglioa)属、フルクチラクトバチルス(Fructilactobacillus)属、フルフリラクトバチルス(Furfurilactobacillus)属、ホルザプフェリア(Holzapfelia)属、ラクチカゼイバチルス(Lacticaseibacillus)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、ラピジラクトバチルス(Lapidilactobacillus)属、ラチラクトバチルス(Latilactobacillus)属、レンチラクトバチルス(Lentilactobacillus)属、レビラクトバチルス(Levilactobacillus)属、リジラクトバチルス(Ligilactobacillus)属、リモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)属、リコリリラクトバチルス(Liquorilactobacillus)属、ロイゴラクトバチルス(Loigolactobacillus)属、パララクトバチルス(Paralactobacillus)属、パウチラクトバチルス(Paucilactobacillus)属、シュレイフェリラクトバチルス(Schleiferilactobacillus)属、セクンジラクトバチルス(Secundilactobacillus)属等に分類された細菌を含む。
【0014】
本発明に用いる死菌体の乳酸菌の属や種は特に制限されないが、ラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌、ラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌、オエノコッカス(Oenococcus)属細菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、ワイセラ(Weissella)属細菌、及び、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、また、ラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス属細菌、及び、ラクトバチルス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス、及び、ラクトバチルス・パラカゼイからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、さらに好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられる。
【0015】
本発明における死菌体の、より具体的な好ましい態様として、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(ラクトバチルス・アシドフィルスL-92等)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)(ラクトバチルス・ブルガリクスOLL1073R-1株等)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株及びラクトバチルス・パラカゼイMCC1849株等)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(ラクトバチルス・ガセリSBT2055株)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum;新たな分類ではLactiplantibacillus plantarum)(ラクトバチルス・プランタラムL-137株等)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・フルクティヴォランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC 1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC 11454等)、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM 16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676等)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ピシウム(Lactococcus piscium)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)(ラクトコッカス・プランタラムJCM11056株等)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)(ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC 100934等)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp. hordniae)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM 1180、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040等)、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM 16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676等)、ロイコノストック・ラクチス(Leuconostoc lactis)(ロイコノストック・ラクチスNBRC12455株等)、ロイコノストック・カーノサム(Leuconostoc carnosum)(ロイコノストック・カーノサムJCM9695株等)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)(ペディオコッカス・ダムノサスJCM5886株等)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(ペディオコッカス・アシディラクティシJCM8797株及びペディオコッカス・アシディラクティシK15等)、ペディオコッカス・セリコーラ(Pediococcus cellicola)、ペディオコッカス・クラウッセニー(Pediococcus claussenii)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス・パルヴルス(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・スティレッシー(Pediococcus stilesii)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・アルセディニス(Enterococcus alcedinis)、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)(オエノコッカス・オエニJCM6125株等)、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)(ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシズ・ラクティスJCM10602株等)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)(ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスJCM1222株等)、ラクトバチルス・パラケフィリ(lactobacillus parakefiri)(ラクトバチルス・パラケフィリ(新分類ではレンチラクトバチルス・パラケフィリ)JCM8573株等)、ワイセラ・パラメセンテロイデス(Weissella paramesenteroides)(ワイセラ・パラメセンテロイデスJCM9890株等)、ワイセラ・ビリデスセンス(Weissella viridescens)(ワイセラ・ビリデスセンスJCM1174株等)、及び、テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)(テトラジェノコッカス・ハロフィルスNRIC0098株等)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、また、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(ラクトバチルス・アシドフィルスL-92等)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)(ラクトバチルス・ブルガリクスOLL1073R-1株等)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株及びラクトバチルス・パラカゼイMCC1849株等)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(ラクトバチルス・ガセリSBT2055株)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum;新たな分類ではLactiplantibacillus plantarum)(ラクトバチルス・プランタラムL-137株等)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus;新たな分類ではLactiplantibacillus pentosus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・フルクティヴォランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC 1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC 11454等)、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM 16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676等)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ピシウム(Lactococcus piscium)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)(ラクトコッカス・プランタラムJCM11056株等)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)(ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC 100934等)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp. hordniae)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM 1180、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040等)、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM 16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676等)、ロイコノストック・ラクチス(Leuconostoc lactis)(ロイコノストック・ラクチスNBRC12455株等)、ロイコノストック・カーノサム(Leuconostoc carnosum)(ロイコノストック・カーノサムJCM9695株等)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)(ペディオコッカス・ダムノサスJCM5886株等)、ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(ペディオコッカス・アシディラクティシJCM8797株及びペディオコッカス・アシディラクティシK15等)、ペディオコッカス・セリコーラ(Pediococcus cellicola)、ペディオコッカス・クラウッセニー(Pediococcus claussenii)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス・パルヴルス(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・スティレッシー(Pediococcus stilesii)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及び、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、好ましくは、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・
ファーメンタム、ラクトバチルス・フルクティヴォランス、ラクトバチルス・ヒルガルディー、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(ストレプトコッカス・サーモフィラスSBC8781等)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス、及び、ロイコノストック・ラクチスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、より好ましくは、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・フルクティヴォランス、ラクトバチルス・ヒルガルディー、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、さらに好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトバチルス・パラカゼイ、及び、ラクトバチルス・ラムノーサス(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、また、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、及び、ラクトバチルス・パラカゼイからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNRIC1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC11454、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110、及び、ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、特に好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110、及び、ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、より好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805が挙げられる。
【0016】
また、本発明に用いる死菌体の乳酸菌の属や種の他の好ましい態様として、ラクトコッカス属細菌、及び、ラクトバチルス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス、及び、ラクトバチルス・ラムノーサスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、及び、ラクトバチルス・ラムノーサスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられる。
【0017】
本発明における死菌体の、より具体的な、他の好ましい態様として、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株等)、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・フルクティヴォランス、及び、ラクトバチルス・ヒルガルディーからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、及び、ラクトバチルス・ラムノーサスからなる群から選択される1種又は2種の細菌の死菌体が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNRIC1150、ラクトバチルス・ラムノーサスGG株、及び、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、特に好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、及び、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株から選択される1種又は2種の細菌の死菌体が挙げられ、さらに好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の死菌体、又は、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株の死菌体が挙げられる。
【0018】
本発明における死菌体の、別の好ましい態様として、ラクトコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC 1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC 11454、ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC 100934、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM 1180、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0019】
本明細書において挙げられている死菌体の菌株について、本発明では、所定濃度のナトリウムを含む飲料に、死菌体を所定濃度で含有させた場合に、特有な後引きに対する抑制効果を奏する限り、前記菌株と同等の菌株も、その菌株に含まれる。ここで、同等の菌株とは、上記の菌株から由来している菌株または上記の菌株が由来する菌株若しくはその菌株の子孫菌株をいう。同等の菌株は他の菌株保存機関に保存されている場合もある。図1に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805に由来する菌株、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805が由来する菌株を示す。図1に記載のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の同等の菌株も、所定濃度のナトリウムを含む飲料に、死菌体を所定濃度で含有させた場合に、特有な後引きに対する抑制効果を奏する限り、本発明の死菌体として用いることができる。本明細書において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805(ラクトコッカス・ラクティスJCM5805)という場合、これらの同等の菌株も含む。また、本明細書において、ラクトバチルス・ラムノーサスCRL1505株という場合、これらの同等の菌株も含む。また、上記の乳酸菌株のうち、JCM菌株は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室(茨城県つくば市高野台3丁目1番地の1)から、NBRC菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)から、NRIC菌株は、東京農業大学・菌株保存室(東京都世田谷区桜丘1丁目1番1号)から、ATCC菌株は、American type culture collection(米国)から、それぞれ入手することができる。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805菌株は上記の通り理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室から入手することができるが、本発明では理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室以外の保存機関に保存された、JCM5805菌株の同一菌株を使用することができる。具体的には、JCM5805菌株の同一菌株を、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)、東京農業大学・菌株保存室(東京都世田谷区桜丘1丁目1番1号)およびAmerican type culture collection(米国)等から入手することができる。
【0020】
本明細書における「乳酸菌の死菌体」は、乳酸菌の死菌体である限り特に制限されず、乾燥物であっても、非乾燥物であってもよいが、乳酸菌の死菌体の保存安定性の観点から乾燥物であることが好ましく、例えば乾燥粉末が好適に挙げられる。
【0021】
乳酸菌の死菌体の調製方法は特に制限されず、例えば、乳酸菌を培養した培地を殺菌してから、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌する方法や、乳酸菌を培養した培地から、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌してから、殺菌する方法などを挙げることができ、必要に応じてさらに乾燥処理や破砕処理を行うことができる。
なお、殺菌の手段は特に制限されず、加熱のみならず、紫外線やγ線照射など、菌を死滅させる常套手段を用いることができる。また、飲料調製時の殺菌処理にて、飲料中の乳酸菌を死滅させてもよい。
【0022】
本発明において、容器詰めナトリウム含有飲料における1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体の菌体濃度としては、特に制限されないが、乳酸菌の死菌体の合計で、例えば100億個/L以上であることが挙げられ、特有な後引きに対してより多くの抑制効果を得る観点から、好ましくは200億個/L以上、より好ましくは250億個/L以上、さらに好ましくは300億個/L以上、又は、400億個/L以上、なおさらに好ましくは500億個/L以上、1000億個/L以上、2000億個/L以上、又は、4000億個/L以上が挙げられる。また、容器詰めナトリウム含有飲料における1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体の菌体濃度の上限としては、特に制限されないが、乳酸菌の死菌体の合計で、例えば8兆個/L以下、6兆個/L以下、4兆個/L以下、2兆個/L以下、1兆個/L以下、5000億個/L以下、3500億個/L以下、2000億個/L以下、1750億個/L以下、1500億個/L以下などが挙げられる。これらの下限値および上限値は、下限値および上限値として設定可能な組合せの範囲内で、それぞれ任意に組み合わせることができる。
容器詰めナトリウム含有飲料における乳酸菌の死菌体の菌体濃度は、飲料に配合する乳酸菌の死菌体の量を調整することによって、調整することができる。
なお、容器詰めナトリウム含有飲料中の乳酸菌の死菌体の個数の測定方法としては、公知の乳酸菌の菌数測定法が特に制限なく挙げられ、例えば、直接鏡検法、粒子電気的検知帯法、PCR法またはフローサイトメトリー法等が挙げられ、フローサイトメトリー法が好ましく挙げられる。
【0023】
(ナトリウム)
本発明における容器詰めナトリウム含有飲料のナトリウム濃度は、300mg/L以上である。本明細書における「ナトリウム濃度」とは、容器詰めナトリウム含有飲料中の水分に溶解しているナトリウムの濃度を意味する。したがって、例えば、固形物である乳酸菌の死菌体に含まれるナトリウムは、本明細書におけるナトリウム濃度には考慮されない。
【0024】
本発明における容器詰めナトリウム含有飲料のナトリウム濃度としては、300mg/L以上である限り、特に制限されないが、特有な後引きがより強くなり、本発明の意義をより多く享受する観点から、好ましくは350mg/L以上、400mg/L以上、又は、450mg/L以上、より好ましくは500mg/L以上、さらに好ましくは800mg/L以上、より好ましくは1000mg/L以上が挙げられる。
また、容器詰めナトリウム含有飲料におけるナトリウム濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば5000mg/L以下、3000mg/L以下、1000mg/L以下などが挙げられる。これらの下限値および上限値は、下限値および上限値として設定可能な組合せの範囲内で、それぞれ任意に組み合わせることができる。
容器詰めナトリウム含有飲料におけるナトリウム濃度は、飲料に配合する、ナトリウム、ナトリウム化合物、及び、ナトリウム含有組成物からなる群から選択される1種又は2種以上の量などを調整することによって、調整することができる。
なお、容器詰めナトリウム含有飲料中のナトリウム濃度の測定方法としては、公知の測定法が特に制限なく挙げられ、例えば、原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES法)、イオンクロマトグラフ法等が挙げられる。
【0025】
上記のナトリウム化合物としては、水溶性のナトリウム化合物が好ましく挙げられ、中でも、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが好ましく挙げられ、その中でも塩化ナトリウムがさらに好ましく挙げられる。また、上記のナトリウム含有組成物としては、前述のナトリウム化合物を含有する組成物が挙げられる。前述のナトリウム化合物やナトリウム組成物としては、市販されているものを用いることができる。
【0026】
(任意成分)
本発明の容器詰めナトリウム含有飲料は、例えば、酸味料、香料、色素、甘味料、果汁、酸化防止剤、保存料、安定剤(増粘安定剤など)、乳成分、乳化剤、及び、pH調整剤のいずれか1つ又は2つ以上を含んでいなくてもよいが、含んでいてもよい。また、本発明の容器詰めナトリウム含有飲料の一態様として、ヨーグルトフレーバー(すなわち、ヨーグルト香料)が配合されている飲料であってもよいが、本発明の意義をより多く享受する観点から、飲料中のヨーグルトフレーバーの濃度が0.35重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下であることが好ましく、ヨーグルトフレーバーが配合されていない飲料であることが最も好ましく挙げられる。ヨーグルトフレーバーとしては、例えば、最新香料辞典(2010年5月10日)P319に記載の発酵乳のフレーバーが挙げられる。ヨーグルトフレーバーが配合されている飲料として、「ヨーグルトテイスト」や、「ヨーグルト味」といった表示が付された飲料が挙げられる。また、本発明の容器詰めナトリウム含有飲料は、安定剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいが、安定剤を含んでいる場合、飲料中の安定剤の濃度として、0.5重量%以下、0.45重量%以下、0.4重量%以下、0.35重量%以下、0.3重量%以下、0.28重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下、0.01重量%以下が挙げられる。
【0027】
上記の「酸味料」としては、クエン酸、リン酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、又はそれらの塩が挙げられ、クエン酸又はその塩が好ましく挙げられる。かかる塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩が好ましく挙げられる。酸味料を用いる場合、容器詰めナトリウム含有飲料における酸味料の濃度として、例えば、0.0005~0.5重量%や、0.001~0.3重量%が挙げられる。
【0028】
上記の「甘味料」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ中の単糖、二糖等といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;水あめ、異性化液糖(例えば果糖ブドウ糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料;を挙げることができ、甘味の自然さの観点から、糖類(結晶性糖類及び非結晶性糖類)が好ましく挙げられ、また、カロリーの低さの観点から、糖アルコールや高甘味度甘味料が好ましく挙げられる。甘味料を用いる場合、容器詰めナトリウム含有飲料における甘味料の濃度としては特に制限されないが、甘味料が糖類である場合、例えば、0.1~10重量%や、0.5~8重量%が挙げられ、甘味料が糖アルコールや高甘味度甘味料の場合、ショ糖換算の甘味度で0.1~10重量%や、0.5~8重量%となる濃度が挙げられる。
【0029】
上記の「果汁」の種類は特に限定されないが、例えば、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁、レッドラズベリー果汁、柑橘類果汁(グレープフルーツ果汁、レモン果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、ミカン果汁、ユズ果汁、カボス果汁、イヨカン果汁、カシス果汁等)、リンゴ果汁、モモ果汁、スイカ果汁、イチゴ果汁、メロン果汁、熱帯果実果汁(ライチ果汁、パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等)、及び、その他の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、キウイフルーツ果汁、サクランボ果汁、クリ果汁等)からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、ブドウ果汁、柑橘類果汁、及び、熱帯果実果汁からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられ、ブドウ果汁、グレープフルーツ果汁、及び、ライチ果汁からなる群から選択される1種又は2種がより好ましく挙げられる。果汁を用いる場合、容器詰めナトリウム含有飲料における果汁の濃度としては特に制限されないが、例えばストレート換算で0.01~30重量%、0.1~30重量%、1~25重量%、3~20重量%などが挙げられる。
【0030】
(乳成分)
本明細書において「乳成分」とは、乳脂肪及び/又は無脂乳固形分を意味する。乳成分や、乳成分含有組成物として、具体的には、生乳又はその加工品(例えば、濃厚牛乳、低脂肪乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、調製粉乳、脱脂粉乳、練乳、発酵乳、クリーム、チーズ、バター、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等)が挙げられる。乳成分は含んでいなくても、含んでいてもよいが、本発明の課題がより顕著となり発明の意義を享受しやすい点から、飲料中の乳固形分の濃度が3.0%未満、2.8重量%未満、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下であることが好ましく、乳成分を含んでいないことが最も好ましい。
【0031】
(pH)
本発明における容器詰めナトリウム含有飲料のpHとしては特に制限されないが、例えば2~7、好ましくは2.5~7、より好ましくは3~6、さらに好ましくは4~6が挙げられる。
該pHの調整は、容器詰めナトリウム含有飲料の香味設計に応じて、pH調整剤を用いること等により行うことができる。
容器詰めナトリウム含有飲料のpHは、20℃におけるpHを指し、pHメーター(例えば、本体機器「HM-41X」;電極「ST-5741C」;いずれも東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて常法により測定することができる。
【0032】
(炭酸ガス)
本発明の容器詰めナトリウム含有飲料は、炭酸飲料でなくてもよいが、炭酸飲料であってもよい。本明細書における「炭酸飲料」としては、飲料のガス圧が0.05~0.5MPaである炭酸飲料が挙げられ、好ましくは0.1~0.3MPa、0.15~0.3MPa、又は0.15~0.25MPaである炭酸飲料が挙げられる。
【0033】
本明細書において、ガス圧とは、1気圧、20℃における容器詰めナトリウム含有飲料のガス内圧力をいう。その測定は、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定の値になった時の値をMPaに換算することにより行うことができる。
【0034】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する、容器詰めナトリウム含有飲料である限り特に制限されない。
【0035】
本発明の飲料は、容器詰めナトリウム含有飲料であって、ナトリウム濃度が300mg/L以上であり、かつ、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有すること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の「容器詰めナトリウム含有飲料」と特に相違する点はない。
【0036】
本発明の飲料の種類としては、容器詰めナトリウム含有飲料である限り特に制限されず、例えば、清涼飲料水が挙げられ、中でも、スポーツ飲料、果実飲料、炭酸飲料が好ましく挙げられ、中でも、スポーツ飲料、果実飲料がより好ましく挙げられる。
【0037】
本発明の飲料は、「容器詰めナトリウム含有飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階で、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上とし、かつ、ナトリウム濃度を300mg/L以上に調整することによって製造することができる。
【0038】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0039】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0040】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の製造方法である限り特に制限されない。
【0041】
本発明の飲料は、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上とし、かつ、ナトリウム濃度を300mg/L以上とすること以外は、容器詰めナトリウム含有飲料の従来公知の製造方法にしたがって製造することができる。
【0042】
飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上を含有させる方法として、より具体的には、容器詰めナトリウム含有飲料の製造に際して、前記飲料の製造原料(例えば、「水」、「ナトリウムを300mg/L以上含有する水」、あるいは「水に、任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」)に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させる方法が挙げられる。あるいは、「1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体」及び「ナトリウム、ナトリウム化合物、及び、ナトリウム含有組成物からなる群から選択される1種又は2種以上」を、水に含有させる、又は、任意成分の一部又は全部と同時に水に含有させる方法等も挙げられる。
【0043】
飲料中のナトリウム濃度を300mg/L以上とする方法(好ましくは調整する方法)として、より具体的には、容器詰めナトリウム含有飲料の製造に際して、前記飲料の製造原料(例えば、「水」、「1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有する水」、あるいは「水に、任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」)に、「ナトリウム、ナトリウム化合物、及び、ナトリウム含有組成物からなる群から選択される1種又は2種以上」を含有させて、飲料中のナトリウム濃度を300mg/L以上とする方法が挙げられる。あるいは、「1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体」及び「1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体」及び「ナトリウム、ナトリウム化合物、及び、ナトリウム含有組成物からなる群から選択される1種又は2種以上」を、水に含有させる、又は、任意成分の一部又は全部と同時に水に含有させる方法等も挙げられる。
【0044】
本発明の製造方法においては、乳酸菌の死菌体と、ナトリウムを必須成分として飲料に含有させる。本発明の製造方法としては、任意成分として、酸味料、香料、色素、甘味料、果汁、酸化防止剤、保存料、増粘安定剤、乳化剤、及び、pH調整剤のいずれか1つ又は2つ以上をさらに含有させてもよい。
【0045】
本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料を得ることができる。
【0046】
本発明の製造方法において、加熱殺菌処理は行わなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理する方法としては、特に制限されず、例えば、高温短時間殺菌法(HTST法)、パストライザー殺菌法、超高温加熱処理法(UHT法)、レトルト殺菌法等を挙げることができる。
【0047】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料の製造において、飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させることを特徴とする、前記容器詰めナトリウム含有飲料の飲用時の後引きを抑制する方法である限り特に制限されない。
【0048】
飲料中に、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を100億個/L以上を含有させる方法や、飲料中のナトリウム濃度を300mg/L以上とする方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0049】
(特有な後引きの抑制)
本発明の飲料は、ナトリウム濃度が300mg/L以上である容器詰めナトリウム含有飲料における、飲用時の特有な後引きが抑制された飲料である。
本明細書における上記の「後引き」あるいは「特有な後引き」とは、ナトリウムに由来するえぐみの後引き感を意味する。
【0050】
本発明において、本発明における「特有な後引きが抑制された」飲料とは、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を含まないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、飲用時の特有な後引きが抑制された飲料を意味する。
【0051】
ある飲料における「特有な後引き」が、どの程度であるかや、コントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。本発明における官能を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば2名以上、好ましくは4名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば20名以下、10名以下、7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の各飲料の特有な後引きの評価は、例えば、その飲料の特有な後引きについてのパネル全員の評価の平均を採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価を採用してもよい。各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料の特有な後引きの評価として採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価点を採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位又は第2位(好ましくは小数第2位)を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、本発明における特有な後引きの程度が既知の複数種の標準飲料の官能を各パネルで評価した後、その評価点を比較し、各パネルの評価基準に大きな解離が生じないように確認することが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、各パネルによる特有な後引きの評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0052】
ある飲料における、本発明における特有な後引きが、どの程度であるかの評価は、例えば、後述の実施例の表1に記載の評価基準(1点から5点の5段階評価)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の表1に記載の評価基準(1点から5点の5段階評価)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、複数のパネルで、1点から5点の5段階評価で官能評価試験を行って、それらの評価点の平均点(好ましくは、小数第2位を四捨五入した値)を、その飲料の特有な後引きの程度と評価する方法を好適に用いることができる。このような方法で特有な後引きを評価した場合に、コントロール飲料と比較して、特有な後引きの程度が低下した飲料を、特有な後引きが抑制された飲料とすることができる。また、後述の実施例の表1に記載の評価基準(1点から5点の5段階評価)で特有の後引きの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)が、コントロール飲料の特有の後引きの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)よりも高い飲料、好適には、コントロール飲料の特有の後引きの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)と比較して、好ましくは0.5点以上、より好ましくは0.9点以上、さらに好ましくは1.3点以上、より好ましくは1.7点以上高い飲料も、特有な後引きが抑制された飲料として挙げられる。
【0053】
(総合香味の維持)
本発明の飲料は、総合香味が維持された飲料(例えば、総合香味がやや良好又は良好である飲料)であることが好ましく、総合香味が向上した飲料であることがより好ましい。本明細書において「総合香味」とは、ナトリウム由来の特有な後引き以外の、飲料の総合的な香味を意味し、中でも、ナトリウム由来の塩味が過度でないこと、及び、乳酸菌の死菌体に由来する培地臭が過度でないことからなる群から選択される1種又は2種が好ましく挙げられる。
【0054】
本発明において、本発明における「総合香味が維持された」飲料としては、飲料として、総合香味が不良又はやや不良でない飲料が挙げられる。本発明において、本発明における「総合香味が向上した」飲料としては、1種又は2種以上の乳酸菌の死菌体を含まないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、総合香味が向上した飲料が挙げられる。
【0055】
ある飲料における「総合香味」が、どの程度であるかや、コントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、向上しているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。本発明における官能を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば2名以上、好ましくは4名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば20名以下、10名以下、7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の各飲料の総合香味の評価は、例えば、その飲料の総合香味についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価を採用してもよい。各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料の総合香味の評価として採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価点を採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位又は第2位(好ましくは小数第2位)を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、本発明における総合香味の程度が既知の複数種の標準飲料の官能を各パネルで評価した後、その評価点を比較し、各パネルの評価基準に大きな解離が生じないように確認することが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、各パネルによる総合香味の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0056】
ある飲料における、本発明における総合香味が、どの程度であるかの評価は、例えば、後述の実施例の表2に記載の評価基準(1点から4点の4段階評価)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の表2に記載の評価基準(1点から4点の4段階評価)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、複数のパネルで、1点から4点の4段階評価で官能評価試験を行って、それらの評価点の平均点(好ましくは、小数第2位を四捨五入した値)を、その飲料の総合香味の程度と評価する方法を好適に用いることができる。また、後述の実施例の表2に記載の評価基準(1点から4点の4段階評価)にて評価した場合の総合香味の評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)が2点超、好ましくは2.4点以上、より好ましくは2.4点超である飲料を、「総合香味が維持された」飲料として挙げることができる。また、後述の実施例の表2に記載の評価基準(1点から4点の4段階評価)にて評価した場合の総合香味の評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)が、コントロール飲料の総合香味の評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)よりも高い飲料、好ましくは0.3点以上高い飲料、より好ましくは0.5点以上高い飲料、さらに好ましくは0.8点以上高い飲料を、「総合香味が向上した」飲料として挙げることができる。
【0057】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0058】
[試験1]ナトリウム含有飲料における、飲用時の「後引き」の発生の確認
飲料にナトリウムを含有させることにより、飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0059】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、及び、クエン酸濃度が後述の表3記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、及び、クエン酸をイオン交換水に含有させて、試験例1~8の各サンプル飲料を調製した。
【0060】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~8のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」(すなわち、ナトリウムに由来するえぐみの後引き感)の程度について、訓練した専門パネル7名によって、以下の表1の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の後引きの程度の差、2点と3点の後引きの程度の差、3点と4点の後引きの程度の差、4点と5点の後引きの程度の差は、それぞれ同程度とした。
【0061】
【表1】
【0062】
なお、表1の評価基準において、ナトリウム由来の「後引き」の課題があると判断することができる評価点の一例として、2点以下又は2点未満が挙げられる。
【0063】
また、前述の試験例1~8のサンプル飲料の総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、以下の表2の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の総合香味の程度の差、2点と3点の総合香味の程度の差、3点と4点の総合香味の程度の差、4点と5点の総合香味の程度の差は、それぞれ同程度とした。
【0064】
【表2】
【0065】
なお、表2の評価基準において、総合香味において課題があると判断することができる評価点の一例として、2点以下が挙げられる。
【0066】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
表3の結果から分かるように、ナトリウム濃度が300mg/L以上であると、ナトリウム由来の「後引き」の課題が生じ、その「後引き」はナトリウム濃度に依存的に強くなることが示された。また、ナトリウム濃度が例えば800mg/L以上であると、ナトリウム由来の塩味が過度となり、総合香味がおおむね不良となることが示された。
【0069】
[試験2]乳酸菌の死菌体を含有させることによる、「後引き」への影響
乳酸菌の死菌体を含有させることが、ナトリウム含有飲料におけるナトリウム由来の「後引き」等にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0070】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、及び、乳酸菌の死菌体の濃度が後述の表4記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、及び、JCM5805株の乾燥死菌体粉末をイオン交換水に含有させて、試験例9~17の各サンプル飲料を調製した。また、JCM5805株の乾燥死菌体粉末を用いないこと以外は同様の方法により、試験例6のサンプル飲料を調製した。
【0071】
(2.官能評価試験)
得られた試験例6、9~17のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」の程度と、総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、試験1における官能評価試験と同じ評価基準で官能評価試験を行った。
【0072】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表4の結果から分かるように、ナトリウム含有飲料に、乳酸菌の死菌体を100億個/L以上含有させると、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果が得られることが示された。
【0075】
なお、ナトリウム含有飲料に、乳酸菌の死菌体を50000億個/L含有させた場合は、乳酸菌由来の培地臭が強くなり、総合香味は不良となることが分かった(試験例17)。後引きに対して得られる抑制効果の程度と、総合香味の程度とのバランスの観点から、乳酸菌の死菌体は、好ましくは100~10000億個/L、より好ましくは200~10000億個/L又は200~5000億個/L、さらに好ましくは500~2000億個/Lであることが示された。
【0076】
[試験3]乳酸菌の種類の違いによる、「後引き」の抑制効果への影響
乳酸菌の種類の違いが、「後引き」の抑制効果等に対してどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0077】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、及び、乳酸菌の死菌体の濃度が後述の表5記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、及び、乳酸菌の死菌体の粉末(JCM5805株の乾燥死菌体粉末、ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849株の乾燥死菌体粉末、又は、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株の乾燥死菌体粉末)をイオン交換水に含有させて、試験例14、18、19の各サンプル飲料を調製した。なお、MCC1849株の乾燥死菌体粉末には、マルトデキストリンも含まれており、マルトデキストリンが後引きの抑制効果に影響していないことを示すために、マルトデキストリンを配合した試験例20のサンプル飲料を調製した。
【0078】
(2.官能評価試験)
得られた試験例14、18~20のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」の程度と、総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、試験1における官能評価試験と同じ評価基準で官能評価試験を行った。
【0079】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表5の結果から分かるように、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805以外の乳酸菌の死菌体を用いた場合であっても、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果が得られることが示された。また、表5の結果から分かるように、JCM5805の死菌体を用いた場合は、他の乳酸菌の死菌体を用いた場合よりも、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果をより多く得られることが示された。
【0082】
なお、マルトデキストリンを配合した試験例20における後引きや総合香味の評価が、表1の試験例6のそれらの評価とほぼ変わらなかったことから、マルトデキストリンには、後引きの抑制効果や、総合香味の向上効果は無いことが示された。この結果から、試験例18で確認された後引きの抑制効果や、総合香味の向上効果は、マルトデキストリンの効果ではなく、MCC1849の死菌体粉末による効果であることが示された。
【0083】
[試験4]種類の異なる乳酸菌の乳酸菌数による、「後引き」の抑制効果への影響
種類の異なる乳酸菌の乳酸菌数の違いが、「後引き」の抑制効果等に対してどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0084】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、及び、乳酸菌の死菌体の濃度が後述の表6記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、及び、乳酸菌の死菌体の粉末(ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849株の乾燥死菌体粉末、又は、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株の乾燥死菌体粉末)をイオン交換水に含有させて、試験例21~24の各サンプル飲料を調製した。また、乳酸菌の乾燥死菌体粉末を用いないこと以外は同様の方法により、試験例6のサンプル飲料を調製した。
【0085】
(2.官能評価試験)
得られた試験例6、21~24のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」の程度と、総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、試験1における官能評価試験と同じ評価基準で官能評価試験を行った。
【0086】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
表6の結果から分かるように、ラクトバチルス・パラカゼイのKW3110やMCC1849の死菌体が250億個/Lである場合は、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果のいずれも得られなかったが、KW3110やMCC1849の死菌体が300億個/Lである場合は、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果が得られることが示された。また、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の死菌体が200億個/Lの場合(表4の試験例10)や、500億個/Lの場合(表4の試験例11)の結果と、表6の試験例22、試験例24の結果から、乳酸菌の死菌体が300億個/L以上の場合は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトバチルス・パラカゼイを始めとして、乳酸菌の種類にかかわらず、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果が得られるであろうことが示された。
なお、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の死菌体が200億個/Lである場合は、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果が得られたこと(表4の試験例10)を考慮すると、JCM5805は、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果に関して、KW3110やMCC1849と比較して、顕著な効果を有していることが示された。
【0089】
[試験5]果汁存在下における、「後引き」の抑制効果の確認
乳酸菌の死菌体を含有させることによる、後引きへの抑制効果等が、果汁の存在下でも得られるかを調べるために以下の試験を行った。
【0090】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、果汁濃度、及び、乳酸菌の死菌体の濃度が後述の表7記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、各果汁及び、JCM5805株の乾燥死菌体粉末をイオン交換水に含有させて、試験例26及び27の各サンプル飲料を調製した。また、JCM5805株の乾燥死菌体粉末を用いないこと以外は同様の方法により、試験例25のサンプル飲料を調製した。
なお、ホワイトグレープ果汁としては、糖度68°Bxのホワイトグレープ果汁を用い、グレープフルーツ果汁としては、糖度64.5°Bxの透明なグレープフルーツ果汁を用い、ライチ果汁としては、糖度70°Bxの透明なライチ果汁を用いた。また、果汁中にもナトリウムは含まれているが、果汁中のナトリウムは微量であること、及び、試験例25~27のサンプル飲料における果汁の含有割合も低いことから、試験例25~27のサンプル飲料においては、果汁由来のナトリウムはサンプル飲料中のナトリウム濃度にほとんど影響しない。
【0091】
(2.官能評価試験)
得られた試験例25~27のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」の程度と、総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、試験1における官能評価試験と同じ評価基準で官能評価試験を行った。
【0092】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表7に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
表7の結果から分かるように、乳酸菌の死菌体を含有させることによる、後引きへの抑制効果及び総合香味の向上効果は、果汁の存在下でも得られることが示された。
【0095】
[試験6]pHの違いによる、「後引き」の抑制効果への影響
pHの違いが、「後引き」の抑制効果等に対してどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0096】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、及び、乳酸菌の死菌体の濃度が後述の表8記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、各果汁及び、JCM5805株の乾燥死菌体粉末をイオン交換水に含有させて、試験例14及び28の各サンプル飲料を調製した。また、クエン酸を用いないこと以外は同様の方法により、試験例29のサンプル飲料を調製した。
【0097】
(2.官能評価試験)
得られた試験例14、28~29のサンプル飲料の飲用時の、ナトリウム由来の「後引き」の程度と、総合的な香味(総合香味)について、訓練した専門パネル7名によって、試験1における官能評価試験と同じ評価基準で官能評価試験を行った。
【0098】
ナトリウム由来の「後引き」の評価結果と、総合香味の評価結果を表8に示す。
【0099】
【表8】
【0100】
表8の結果から分かるように、ナトリウム含有飲料のpHが約3.7でない場合であっても、ナトリウム含有飲料に乳酸菌の死菌体を含有させると、ナトリウム由来の「後引き」に対する抑制効果、及び、総合香味の向上効果が得られることが示された。
【0101】
[試験7]乳成分の有無による、飲用時の「後引き」の発生の有無への影響
ナトリウム含有飲料に乳成分を含有させることにより、飲料の「後引き」の発生にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0102】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、脱脂粉乳濃度、及び、安定剤が後述の表9記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、脱脂粉乳、及び、安定剤をイオン交換水に含有させて、試験例6、30、31の各サンプル飲料を調製した。
【0103】
【表9】
【0104】
表9の結果から分かるように、乳成分の含有濃度が高くなるにしたがって、ナトリウム由来の「後引き」の課題が低減していき、課題があまり問題とならない方向に変化していくことが示された。このことから、本発明の意義は、乳成分の含有濃度が低いナトリウム含有飲料、好ましくは乳成分を含まないナトリウム含有飲料において、より多く享受できることが示された。
【0105】
[試験8]ヨーグルトフレーバーの有無による、飲用時の「後引き」の発生の有無への影響
ナトリウム含有飲料にヨーグルトフレーバーを含有させることにより、飲料の「後引き」の発生にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0106】
(1.ナトリウム含有飲料のサンプル飲料の調製)
ナトリウム濃度、液糖濃度、クエン酸濃度、及び、ヨーグルトフレーバーが後述の表10記載の濃度になるように、精製塩(塩化ナトリウム)、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸、及び、ヨーグルトフレーバーをイオン交換水に含有させて、試験例6、32の各サンプル飲料を調製した。
【0107】
【表10】
【0108】
表10の結果から分かるように、ヨーグルトフレーバーを含有する試験例32では、ナトリウム由来の「後引き」の評価が4.0(後引きがほぼない)であり、ナトリウム由来の「後引き」の課題がほぼないことが示された。このことから、本発明の意義は、ヨーグルトフレーバーを含まないナトリウム含有飲料において、より多く享受できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、所定濃度のナトリウムを含む飲料に特有な「後引き」が抑制された容器詰めナトリウム含有飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
図1