(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074294
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】小水力発電用水車
(51)【国際特許分類】
F03B 7/00 20060101AFI20240523BHJP
F03B 1/00 20060101ALI20240523BHJP
F03B 11/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F03B7/00
F03B1/00 A
F03B11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023208878
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2023098810の分割
【原出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2022195965
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512037370
【氏名又は名称】雷電テクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 一郎
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA05
3H072BB31
3H072CC69
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小河川に設置する小水力発電用水車の効率増加を図る装置を提供する。
【解決手段】小河川の段差を利用して段差上流部と段差下流部とに河川流水のエネルギー密度を高める誘導ダクト62を掛け、段差下流の狭窄出口に本発明の水車70を接続して用いる。水車70と誘導ダクト62とは接続されて一体化し、河川の両岸に渡された渡し架台60に取り付けられた懸垂架台61に水車70、増速機65、発電機67等主な機械類を取り付け、渡し架台60の付近には、蓄電池室兼発電制御盤69等を設ける。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横軸のエンクロージャー型の水車で、ランナー全長を略等分に区切り、流水方向に対して二つのランナー室を設けたもので、それぞれのランナー室には取付け位置を1/2の位相をずらした同数のランナーブレードを取り付けた構造(デュアルランナーと称する)を特徴とした小水力発電用水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山野に点在する小河川の段差を利用する小水力発電用水車の効率を改善する装置として、▲1▼横型封水ラビリンス、▲2▼縦型封水ラビリンス及び▲3▼デュアルランナー等を備えた小水力発電用水車を提供する。
【背景技術】
【0002】
横型、縦型封水ラビリンスについて
従来のラビリンス構造は、1輪の凸型ランナーリングの内、外を2輪のケーシングリングで挟んでラビリンス構造を形成し、流水の粘性効果を利用して圧力水流を封じる構造であったが、その後の運用により意図した効果は得られなかった。
一つには河川の水質が一雨毎に微粒子交じりになるが故のリング間隙間が大きかったこと。 一つには精密ギャップラビリンスの工作上の問題があった。
【0003】
デュアルランナーについて
当該水車の出力は、ランナーの回転数とブレードが受け持つトルクの積であらわされる。然るに当該水車は、ある有効範囲に於いて回転数とトルクの関係は二律背反の関係にあり、出力を上げようとブレード枚数を増やすと回転数は落ちてしまい、結局出力増加には結びつかない。
これでは発展途上国でも入手が容易な「事故車の安価な発電機」の採用など望むべくもなく、当発電装置の用途の半分でしかない。無論この特性を持った水車であれば、国内で入手が容易で高価な多極性発電機(低速用)などの採用は論を待たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2015-169204号公報
【特許文献2】特開第2018-100656号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該のエンクローズド水車にとって肝要な問題は、ランナー室に流入した高圧水流を如何に無駄なくランナーブレードに衝動させるかにある。その一つとして
図4の流水抑制板42、流水変向板43及びラビリンス構造等があるが、今回改良を加えたものはより封水効果のある「封水ラビリンス」である。これには水車のサイズや流入圧力によって選択できる2種類(横型と縦型)の封水ラビリンスを発明した。
【0006】
従来の1室ランナー水車では、出力と回転数とは相反する関係にあった為、安価な事故車の発電機の利用は望めなかった。そこで新たに発明したのが今回の「デュアルランナー」である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
横型封水ラビリンスの採用
当該水車ランナーを横軸方向の両側から抑え込むエンクロージャー型の水車で、ランナー側板の外周に取り付けたランナーリング14をケーシング側板の内側に取り付けた2つのケーシングリング15、16で挟み、1対のラビリンスを成す構造で、且つ2つのケーシングリング15、16の内部に複数のグランドパッキン17を挿入し、その表面をランナーリング14が摺動して高圧水流を封水する構造とした。
【0008】
縦型封水ラビリンスの採用
横軸のエンクロージャー型の水車で、水車ケーシングの内側に取り付けたケーシングリングの凸部23がランナー側板の外側に取り付けたランナーリングの凹部26とが組み合わされ、ケーシングリングの凹部22には、ランナーリングの凸部27とが組み合わされてラビリンス構造を成す封水装置で、各凹部の溝内にグランドパッキン25を挿入し、
当該グランドパッキンの表面をケーシングリングの凸部23とランナーリングの凸部27とが摺動して封水する構造とした。
【0009】
デュアルランナーの採用
横軸のエンクロージャー型の水車で、ランナー全長を略等分に区切り、流水方向に対して二つのランナー室を設けたもので、それぞれのランナー室には取付位置を1/2の位相をずらした同数のランナーブレードを取り付けた構造を特徴とした水車ランナーの採用である。
【発明の効果】
【0010】
横型、縦型封水ラビリンスの効果
横型について、固定したケーシング側板1と回転するランナー側板13との間に設ける封水装置で、従来は剛性リングの凹凸だけで封水を図ったが、今回は固定したケーシングリング15、16の凹部の溝内に、耐水性の編組製グランドパッキンを詰め、その表面を回転するランナーリング14の凸部が摺動して封水する構造に改めた。また縦型についても同様の思考で、ケーシングリングの凹部22内とランナーリングの凹部26内に耐水性の編組製グランドパッキンを詰め、双方の凸部が相手方凹部のグランドパッキンの表面を摺動して封水する構造に改めた。その結果、従来の剛性ラビリンスに比べ封水性は格段に良くなった。また、ラビリンスを形成する凹リングと凸リングの精密機械加工の必要がなく、従来の加工レベルで製作が可能になった。ここでは▲1▼横型封水ラビリンスと▲2▼縦型封水ラビリンスを提示したが、その採用に当たっては水車のサイズ、流水圧力の大きさ等により選択される。
【0011】
デュアルランナーの効果
ランナー室を2つのランナー室32L,32Rに略等分し、左右のランナー室には1/2の位相差を持った同数のランナーブレード30L,30Rを取り付けた構造により当該水車の負の特性であった出力とランナー回転数の二律背反の関係は解消された。またランナーの回転周期が2倍になることかより滑らかな回転を持った水車となり、発電装置全体の振動軽減に役立つ結果をもたらした。これにより水車の回転数と出力とはほぼ比例関係に入り、600rpm回転程度の水車でも2倍程度の増速機(安価な)を設けることで定格出力時1200rpm回転の安価な発電機(オールタネータ)の利用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】横型封水ラビリンスの図である。
図1ーa 水車横割り断面図
図1ーb 水車縦割り断面図
図1ーc 横型封水ラビリンス部拡大図
図1ーd 外側ケーシングリング図
図1ーe 内側ケーシングリング図
図1ーf ランナーリング図
図1-j GP押込みリング
【
図2】縦型封水ラビリンスの図である。
図2-a 水車縦割り断面図
図2-b 縦型封水ラビリンス部拡大図
図2-c 小径外側ケーシングリング
図2-d 大径ケーシングリング
図2-e 小径内側ケーシングリング
図2-f 大径外側ランナーリング
図2-g 小径内側ランナーリング
【
図3】主要部品構成図である。
図4-a 水車横断面図
図4-b 水車縦断面図
図4-c GP押込みリング
図4―d 水車流入口接続フランジ
【
図4】誘導ダクト図である。
図5―a ダクト流入口正面図
図5―b ダクト流出口フランジ正面図
図5―c 誘導ダクト平面図
図5―d 誘導ダクト側面図
【
図5】小水力発電装置設置例を示す図である。
図6―a 水車下流から見た図
図6-b 水車側面図
【
図6】水車ケーシングの別な実施例の図である。
図7-a 水車ケーシングの側面図である。
図7-b 水車の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
図6は、当該小水力発電装置の設概要図を示す。本発明の小水力発電用水車70は特許6464492号のエンクローズド水車の更なる効率改善を図ったもので、小河川の段差を利用して段差上流部と段差下流部とに河川流水のエネルギー密度を高める誘導ダクト62を掛け、段差下流の狭窄出口に本発明の水車70を接続して用いる。当該水車と誘導ダクトとは接続されて一体化し、河川の両岸に渡された渡し架台60に取り付けられた懸垂架台61に当該水車70、増速機65、発電機67等主な機械類を取り付け、渡し架台の付近には、蓄電池室兼発電制御盤69等を設ける。
【0014】
図1は、横型封水ラビリンス10の構成を説明する図である。
図1-c(拡大図)で示すように、ケーシング側板1の内側に取り付けられた2つのケーシングリング15、16とランナー側板13の外側に取り付けられた1つのランナーリング14とで構成されるラビリンス構造に於いて、凹型を形成する2つのケーシングリング15、16の溝内に耐水性の編組製グランドパッキン17を挿入し、その表面をランナーリング14の凸部が摺動して封水する構造である。 流水圧が更に高圧の場合は、このユニットを2段、3段と増加させて対応する。また長期運転によりグランドパッキンが擦り減った場合は、
図1―cに示すグランドパッキン調整ボルト19でGP押込みリング18を押込み、再度グランドパッキンの摺動位置を調整して対処する。それ以上の漏水防止にはグランドパッキンを更新する。
【0015】
図2は、縦型封水ラビリンス20の構成を説明する図である。
図2―b(拡大図)で示すように、ケーシング側板の内側に2分割された小径リング2枚21、23と大径リング1枚22との組合わせから成る凹型のケーシングリングをケーシングボルト24で一体形成し、その溝内に耐水性の編組製グランドパッキンを挿入する。一方ランナーリングに於いては、ランナー側板13と外径が同径の大径リング1枚27と小径リング1枚26とランナー側板13との組合わせから成る凹型のランナーリングをランナーボルト28で一体形成し、その溝内に同種のグランドパッキンを挿入する。
ケーシングリングの凹凸部とランナーリングの凹凸部は互いに噛み合わされ、ケーシングリングの凸部は、ランナーリングの凹部のグランドパッキンの表面を摺動し、ランナーリングの凸部は、ケーシングリングの凹部のグランドパッキンの表面を摺動して封水する構造である。流水圧が更に高圧の場合はこのユニットを2段、3段と増加させて対応する。
また長期運転によりグランドパッキンが擦り減った場合は、ケーシング側板1、ケーシングリング21、22、23に開けられた大きめのケーシングボルト穴24a(バカ穴)を利用してケーシングリングを狭め、双方の凸部とグランドパッキン間の隙間を調整して対応する。それ以上の漏水防止にはグランドパッキンを更新する。また水車径が大きい場合は、ケーシングリングを4分割、6分割と分割数を増やして摺動隙間を調整する。
【0016】
図3は、デュアルランナーの図である。
図3-bで示すようにランナーの横全長を略等分して二つのランナー室32Lと32Rを設け、左右のランナー室には1/2位相をずらした同数のランナーブレード30L,30Rを取り付けた構造である。これにより水車出力とランナー回転数とが相反する現象は解消され、水車の回転数と出力とがほぼ比例する水車となり得る。この構造は、落差は小さいが河川幅が広い場合、ランナー室を2室以上増室しても各室のブレード枚数は同数にして、ブレードの取り付け位置のみ増室数で除した値ずつ位相をずらして取り付ければ同様の効果が得られる。
【0017】
図4は、当該水車の主要部品構成図である。横型封水ラビリンス図を例にケーシング側板1は、水車ランナー(デュアルランナー)を側面から抑え込む半円板で、内側には凹型を形成する2つのケーシングリング15、16及びパッキン箱9が取り付けられ、外側には水車を懸架するブラケット45が取り付けられる。 ベースフレーム44の内側には、流入した水流を徐々にランナーブレードに衝動させる流水変向板43及び誘導ダクトに接続する水車接続フランジ40が取り付けられる。 また、水車接続フランジには、必要に応じて逆流水を抑制する流水抑制板42が取り付けられ反回転方向への流水を抑制し、水車内に流入した高圧水流は極力ランナーブレードを衝動し、水車ランナーの回転力に変換させるための構成部品である。
【0018】
図5は、河川流水のエネルギー密度を高める耐圧性の誘導ダクトの図である。 広口の流入口フレーム50と狭窄した流出口フレーム52とを耐圧板55のダクトで接続し、流入口フレームには、小動物や子供らの侵入を防ぐ最終防護柵54を設け、流出口フレームには水車と接続するボルト穴を設けた耐圧性の誘導ダクトの図である。
【0019】
図6は、当該水車発電装置設置例の概要図である。
図6-bに於いて、まず段差上流の河川水は、誘導ダクト62に導かれて流速と圧力とを増す。そのエネルギーは水車接続フランジ71から水車ランナー室に入り、順次ランナーブレード6を衝動して水車ランナー(デュアルランナー)70を回転させる。その回転力は、水車外側のスプロケット63、チェーン64を介して小径スプロケットと大径スプロケットから成る中間増速機65に伝達され、さらに高速化した回転力はVベルト66によって発電機67のプーリーを回転させて電気エネルギーへと変換される。その電気エネルギーは使用する発電機により直流系と交流系とに大別されるが、蓄電池、インバーター、コンバーター等を駆使して、いずれの発電機にせよ小河川のエネルギーを電気エネルギーとして取り出し、照明、通信、動力、等々我々の日常生活に寄与する装置になり得る。
【0020】
図7は、水車ケーシングの 他の実施例として作成したものである。
第7図に於いて、ランナー下部と変向板とのすき間を広くし、圧力水流を変向板の末端まで導く構造とした。
これにより圧力水流を受けるランナーブレードの枚数が増え、水車効率が上昇することが分かった。
本発明の小水力発電用水車の開発は、東日本大震災の惨状に感化された事に起因する。わが国土の持つ「潜在エネルギーの活用」に始まった当プロジェクトは、「CO2の削減」が声高になってきた昨今、益々その実用性が問われる事となった。数ある“再生可能なエネルギー”の中で、製造段階から最もCO2発生が少なく、河川ゴミにも強い安価な発電装置としての当小水力発電装置は、国内に於いてLED電照栽培や防犯灯の電源,農薬軽減に寄与する誘蛾灯の電源,害獣用電気柵の電源として、またスコールの多発する南太平洋の島々や東南アジアの村落に在っては夜間の照明,生活用電化製品の電源,非常時の通信電源等々多種多様な用途がある。1kw~15kw付近の負荷帯をカバーできる当水車の採用は有用な小水力発電装置となり得る。