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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074299
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】コークス炉用移動装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/16 20060101AFI20240523BHJP
   C10B 41/04 20060101ALI20240523BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240523BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240523BHJP
   F27D 21/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B65G67/16
C10B41/04
F27D3/12 C
F27D19/00 Z
F27D21/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031825
(22)【出願日】2024-03-04
(62)【分割の表示】P 2020020643の分割
【原出願日】2020-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岩朝 義典
(72)【発明者】
【氏名】川戸 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
(57)【要約】
【課題】本開示は、停電したときに故障を回避可能なコークス炉用移動装置を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】本開示のコークス炉用移動装置100は、外部電源20で駆動される電動機160の出力に基づいて移動する移動部を有するコークス炉用移動装置であって、繰り返し充放電可能な電池であって、外部電源20によって充電される電池120と、電動機160を制御する制御部130と、を備える。制御部130は、停電が発生したとき、電池120の電力を電動機160に供給し、電動機160を制御して移動部を退避方向に移動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源で駆動される電動機の出力に基づいて移動する移動部を有するコークス炉用移動装置であって、
繰り返し充放電可能な電池であって、前記外部電源によって充電される電池と、
前記電動機を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、停電が発生したとき、前記電池の電力を前記電動機に供給し、前記電動機を制御して前記移動部を退避方向に移動させることを特徴とするコークス炉用移動装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室に進退可能に設けられた押出機の進退部を含み、
前記電動機は前記進退部を進退方向に移動させるように構成され、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記炭化室から前記進退部を退出させることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項3】
前記進退部は、押出ラムおよび均し棒の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項4】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室から排出されたコークスをバケット車にガイドするガイド車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記バケット車から離れるように前記ガイド車を移動させることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室から排出されたコークスをガイド車を介して収容するバケット車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記ガイド車から離れるように前記バケット車を移動させることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室の装炭口から石炭を投入する装炭車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記装炭口から離れるように前記装炭車を移動させることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項7】
前記外部電源に基づいて作業用の空間または通路を照らす照明部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部電源が停電したとき、前記電池の電力を前記照明部に供給し、前記照明部を点灯させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項8】
前記電池とは別に、繰り返し充放電可能な電池であって、前記外部電源によって充電される別の電池を備え、
前記制御部は、前記外部電源が停電したとき、前記別の電池の電力によって動作することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のコークス炉用移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉用移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイド車や、押出機などの移動装置を備えたコークス炉が知られている。例えば、特許文献1には、コークス押出機と、装入車と、コークガイド車と、バケット台車とを備えるコークス製造設備が記載されている。このコークス押出機は、乾留されたコークスを押出ラムで押し出す。この装入車は、上方から炭化室内に石炭を投入する。このコークスガイド車は、押し出されたコークスをバケットに導入する。このバケット台車は、コークスをバケットで受け入れて、軌条上を走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-166925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動装置は、外部から供給される電力をトロリーを介して受電し、その電力によって稼働する。したがって、停電などによって外部電力が使えない状態になると、移動装置は停電したときの状態で停止する。コークス炉内は、1000度以上の高温となるため、移動機械が石炭の装入作業中、コークスの押し出し作業中などに停電すると、移動機械が長時間炉内の高温に晒され、故障するかもしれない。
【0005】
この課題は、押出機に限られず、コークス炉にて所定の機能を果たす他の種類の移動装置についても生じうる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、停電したときに故障を回避可能なコークス炉用移動装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のコークス炉用移動装置は、外部電源で駆動される電動機の出力に基づいて移動する移動部を有するコークス炉用移動装置であって、繰り返し充放電可能な電池であって、外部電源によって充電される電池と、電動機を制御する制御部と、を備える。制御部は、停電が発生したとき、電池の電力を電動機に供給し、電動機を制御して移動部を退避方向に移動させる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、停電したときに故障を回避可能なコークス炉用移動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る移動装置を備えるコークス炉の一例を示す図である。
図2】第1移動装置を概略的に示すブロック図である。
図3】第2移動装置を概略的に示すブロック図である。
図4】第3移動装置を概略的に示すブロック図である。
図5】第4移動装置を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。
【0014】
[実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る移動装置100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る移動装置100を備えるコークス炉40の一例を示す図である。
【0015】
以下、主にXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は、図1において紙面左右方向に対応する。Y軸方向は、図1において紙面上下方向に対応する。Z軸方向は、図1において紙面に垂直な方向に対応する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。このような方向の表記は移動装置100の姿勢を制限するものではなく、移動装置100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0016】
図1に示すように、コークス炉40は、炭化室41と、押出装置50と、ガイド車60と、バケット車70と、装炭車80と、移動装置100とを主に含む。移動装置100は、移動部10を駆動する電動機を含む。移動装置100は、押出装置50に設けられる第1移動装置110、ガイド車60に設けられる第2移動装置310、バケット車70に設けられる第3移動装置410および装炭車80に設けられる第4移動装置210を含む。
【0017】
炭化室41は、Z軸方向に並べて複数配置されている。複数の炭化室41は、炉団を構成する。各炭化室41には、X軸方向の一方側に炉口42が設けられ、他方側に排出口43が設けられる。炭化室41の天井部44には、X軸方向に配列された複数の装炭口46が設けられる。装炭口46は、原料の石炭を装入するための開口で、開閉可能な装入蓋(不図示)を有する。
【0018】
押出装置50は、炭化室41の炉口42側をZ軸方向に移動可能にレール51上に配置される。押出装置50は、進退部52と、第1移動装置110とを備える。進退部52は、押出ラム54と、均し棒56とを含む。押出ラム54は、炉口42から炭化室41の内部にX軸方向に進退移動して生成されたコークス90を排出口43から押出す。押出ラム54は、後述する押出用電動機164により駆動される。均し棒56は、炉口42から炭化室41の内部にX軸方向に進退移動してコークス90を均す。均し棒56は、後述する均し用電動機166により駆動される。押出装置50は、車輪50wを有しており、後述する走行用電動機162によって車輪50wを回転させて自力移動できる。第1移動装置110は、走行用電動機162、押出用電動機164および均し用電動機166を含む。第1移動装置110の詳細については後述する。
【0019】
押出装置50には、防熱壁で区画された防熱室58が設けられる。防熱室58には、空調設備(不図示)が設けられる。防熱室58には、コークス炉40を制御するための制御盤(不図示)が配置される。防熱室58には、電池120、無停電電源装置132、停電検知部134、制御部130などが配置される。防熱室58には、作業員が作業するための作業空間58sが設けられる。防熱室58には、押出装置50の走行用電動機の回生ブレーキ用の抵抗器が設置されてもよい。
【0020】
ガイド車60は、炭化室41の排出口43側をZ軸方向に移動可能にレール61上に配置される。ガイド車60は、押出されたコークス90をガイドするフード62と、第2移動装置310とを備える。ガイド車60は、押出されたコークス90をフード62でガイドし、バケット車70のバケット台車72に送出する。また、フード62は、バケット台車72の上方を覆いつつ、バケット車70と同期してZ軸方向に移動し、コークス90から生じる含塵ガスを除塵処理設備(不図示)に導く。第2移動装置310は、走行用電動機を含む。ガイド車60は、車輪60wを有しており、走行用電動機によって車輪60wを回転させて自力移動できる。第2移動装置310については後述する。
【0021】
バケット車70は、炭化室41の排出口43側をZ軸方向に移動可能にレール71上に配置される。バケット車70は、バケット台車72と、バケット台車72を牽引する牽引車73と、第3移動装置410とを含む。バケット台車72は、ガイド車60のフード62から排出されたコークスを積載可能に構成される。バケット台車72は、コークス90を積載して、牽引車73に牽引されてレール71上を移動できる。バケット車70は、積載したコークス90を消火用の設備(不図示)に搬送する。第3移動装置410は、走行用電動機を含む。牽引車73は、車輪73wを有しており、走行用電動機によって車輪73wを回転させて、バケット台車72を牽引しながら自力移動できる。第3移動装置410については後述する。
【0022】
装炭車80は、炭化室41の天井部44の上面をZ軸方向に移動可能にレール81上に配置される。装炭車80は、X軸方向に配列された複数の装炭ホッパー82と、第4移動装置210とを備える。各装炭ホッパー82は、X軸方向で、各装炭口46に対応する位置に配置される。装炭車80は、石炭供給装置(不図示)の近傍に移動し、その装置から装炭ホッパー82へ石炭を受け入れる。装炭車80は、任意の炭化室41の直上に移動し、炭化室41の装炭口46を経由して、装炭ホッパー82から所定量の石炭を炭化室41に装入する。装炭車80は、装入前に装炭口46の蓋を開け、装入後にその蓋を閉じる。第4移動装置210は、走行用電動機を含む。装炭車80は、車輪80wを有しており、走行用電動機によって車輪80wを回転させて自力移動できる。第4移動装置210については後述する。
【0023】
(第1移動装置)
図1図2を参照して第1移動装置110を説明する。図2は、第1移動装置110を概略的に示すブロック図である。図2において、各矢印は、各部電圧の供給元から供給先を向いている。第1移動装置110において、移動部10は押出ラム54および均し棒56の少なくとも1つである。この例では、両方を移動部10として退避動作させる。
【0024】
第1移動装置110は、外部電源20からトロリ線190に供給される電圧を受電するパンタグラフ192を備える。外部電源20は、商用電源または自家発電による電源などである。パンタグラフ192はトロリー機構と称されることがある。一例として、トロリ線190には、外部電源20から交流電圧V1が供給される。交流電圧V1は、AC440VまたはAC400Vである。交流電圧V1は、後述する無停電電源装置132と、整流器140とに供給される。
【0025】
第1移動装置110は、整流器140と、第1コンバータ146と、第1DCリアクトル148と、インバータ150と、電動機160とを備える。インバータ150は、走行用インバータ152と、押出用インバータ154と、均し用インバータ156とを含む。電動機160は、走行用電動機162と、押出用電動機164と、均し用電動機166とを含む。整流器140は、ダイオードを用いてパンタグラフ192から供給される交流電圧V1を整流し、直流電圧V2を第1コンバータ146に供給する。
【0026】
第1コンバータ146は、整流器140から供給される直流電圧V2を、インバータ駆動用の直流電圧V3(例えば、600V)に変換し、駆動ラインLdを介してインバータ150に供給する。第1コンバータ146は、第1DCリアクトル148を用いて、入力電圧を昇圧するとともに直流電圧V3の脈動を低減する。直流電圧V3は、駆動ラインLdを介して後述する第2コンバータ126および照明部172にも供給される。
【0027】
インバータ150は、第1コンバータ146から供給された直流電圧V3を基に3相交流電圧を生成して電動機160に供給する。インバータ150は複数のスイッチング素子からなる3相ブリッジ回路を含んで構成できる。
【0028】
走行用インバータ152は、生成された3相交流電圧を走行用電動機162に供給して回転させる。走行用電動機162は、車輪50wを回転駆動し、押出装置50をZ軸方向に移動させる。
【0029】
押出用インバータ154は、生成された3相交流電圧を押出用電動機164に供給して回転させる。押出用電動機164は、ピニオン歯車(不図示)およびラック歯(不図示)を介して押出ラム54をX軸方向に進退させる。
【0030】
均し用インバータ156は、生成された3相交流電圧を均し用電動機166に供給して回転させる。均し用電動機166は、ワイヤー(不図示)を介して均し棒56をX軸方向に進退させる。
【0031】
第1移動装置110は、無停電電源装置132と、停電検知部134と、制御部130と、電池120と、電磁接触器124と、第2コンバータ126と、第2DCリアクトル128とをさらに備える。電池120は、繰り返し充放電可能な二次電池である。電池120は、無停電電源装置132に備える二次電池132bとは別に設けられ、二次電池132bより大きな放電容量と、高い出力電圧を有する。
【0032】
先に、第2コンバータ126と、電池120とを説明する。第2コンバータ126は、電池120を充電するための定常モード動作と、停電時に電池120の電力を変換する停電モード動作とを有する。
【0033】
定常モード動作では、第2コンバータ126は、第1コンバータ146から駆動ラインLdを介して第1端子126hに供給された直流電圧V3を降圧して直流電圧V4(例えば、30V)を生成し、第2端子126jから出力する。第2コンバータ126は、第2DCリアクトル128を用いて、直流電圧V3を直流電圧V4に降圧するとともに直流電圧V4の脈動を低減する。第2コンバータ126は、直流電圧V4を電磁接触器124を介して電池120に供給し、電池120を充電する。
【0034】
電磁接触器124は、後述する制御部130の制御に基づいて電池120と第2端子126jの間の導通状態と非道通状態とを切り替える継電器として機能する。定常モード動作において、電池120は、電磁接触器124を介して第2コンバータ126から供給される直流電圧V4によって充電される。
【0035】
停電モード動作では、第2コンバータ126は、電磁接触器124を介して電池120から第2端子126jに供給された電池電圧Vbを昇圧して直流電圧V5(例えば、600V)を生成する。直流電圧V5は、駆動ラインLdを介してインバータ150および照明部172に供給される。停電モード動作では、制御部130の制御に基づいて、押出用インバータ154および均し用インバータ156は、押出用電動機164および均し用電動機166を駆動する。
【0036】
照明部172は、押出装置50の防熱室58の作業空間58sの室内灯や通路灯として機能する。照明部172は、直流電圧V5を基に制御部130の制御に応じて点灯する。停電時に照明部172が点灯することで作業空間58sの室内や通路が明るくなり、作業員は容易に作業できる。また、照明部172は、作業空間58sをモニタするカメラ(不図示)の撮影用照明としても機能する。
【0037】
無停電電源装置132を説明する。無停電電源装置132は、パンタグラフ192からの交流電圧V1に基づいて出力電圧V6を供給する。無停電電源装置132は、外部電源20の停電によってパンタグラフ192からの入力電力が断たれた場合にも出力電圧V6を供給し続ける電源装置である。本実施形態の無停電電源装置132は、整流器(不図示)と、二次電池132bと、インバータ(不図示)とを内蔵し、パンタグラフ192からの交流電圧V1を整流して、二次電池132bを充電しながら、インバータによって交流電圧V1に同期した出力電圧V6を常時発生させる。出力電圧V6は、停電検知部134、制御部130、電磁接触器124、第2コンバータ126等に供給される。無停電電源装置132の二次電池132bの容量は、移動部10が退避動作を実行するのに必要な時間に応じて設定される。
【0038】
停電検知部134は、パンタグラフ192からの交流電圧V1をモニタして、外部電源20の停電やトロリ線190の故障などによる給電不良(以下、停電という。)を検知し、その検知結果を制御部130に送る。本実施形態の停電検知部134は、プログラマブルロジックコントローラやリレー回路などで構成されてもよい。
【0039】
制御部130は、停電検知部134から取得した検知結果に基づき、電磁接触器124、第2コンバータ126、第1コンバータ146、走行用インバータ152、押出用インバータ154、均し用インバータ156および照明部172を制御する。特に、制御部130は、停電していない場合は、定常モード動作をするようにこれらの構成要素を制御する。制御部130は、停電している場合は、停電モード動作をするようにこれらの構成要素を制御する。
【0040】
退避動作を説明する。第1移動装置110は、停電が発生したとき、電池120の電力を、押出用インバータ154および均し用インバータ156を介して押出用電動機164および均し用電動機166に供給し、これらの電動機を制御して押出ラム54または均し棒56を退避方向に移動させる。この退避方向は、移動部10が炉内の高温から離れる方向をいい、この例では、炭化室41から室外に向かう方向である。第1移動装置110は、押出ラム54または均し棒56を炭化室41から室外方向に退出させる。このような退避動作を行うことにより、高温コークスの熱による押出ラム54および均し棒56の故障を回避することが可能になる。第1移動装置110は、押出ラム54または均し棒56を炭化室41から退出させた後、走行用電動機162を制御して、押出装置50をZ軸方向に移動させてもよい。
【0041】
第1移動装置110では、外部電源20が停電した場合でも、無停電電源装置132の出力電圧V6が所定の期間供給継続されるので、停電検知部134、制御部130、電磁接触器124および第2コンバータ126は、その期間中動作を継続できる。
【0042】
制御部130は、停電検知部134が停電を検知したとき、以下のような制御を行う。
(1)制御部130は、電池電圧Vbに基づいて直流電圧V5を駆動ラインLdに供給するように電磁接触器124および第2コンバータ126を制御する。
(2)制御部130は、押出ラム54が炭化室41から室外に向かって移動するように、押出用インバータ154を介して押出用電動機164を制御する。
(3)制御部130は、均し棒56が炭化室41から室外に向かって移動するように、均し用インバータ156を介して均し用電動機166を制御する。
(4)制御部130は、所定の作業領域を照らすように、照明部172を点灯させる。
【0043】
停電が解消したら、制御部130は、定常モード動作をするように、電磁接触器124、第2コンバータ126、第1コンバータ146、インバータ150および照明部172を制御する。以上が、第1移動装置110の説明である。
【0044】
(第2移動装置)
図1図3を参照して第2移動装置310を説明する。第1移動装置110と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図3は、第2移動装置310を概略的に示すブロック図である。第2移動装置310において、移動部10はガイド車60を含む。この例では、ガイド車60を移動部10として退避動作させる。
【0045】
第2移動装置310は、押出用インバータ154、均し用インバータ156、押出用電動機164、均し用電動機166および照明部172を有せず、走行用電動機162が、車輪60wを回転駆動し、ガイド車60をZ軸方向に移動させる点で第1移動装置110と相違する。
【0046】
第2移動装置310の退避動作を説明する。停電により、ガイド車60のフード62が、炭化室41から排出された高温コークスを積載したバケット台車72の上方に位置する状態が長時間続くと、フード62が変形してガイド車60が故障する恐れがある。このため、第2移動装置310は、停電が発生したとき、電池120の電力を、走行用インバータ152を介して走行用電動機162に供給し、この電動機を制御してガイド車60を退避方向に移動させる。このような退避動作を行うことにより、高温コークスの熱によるガイド車60の故障を回避することが可能になる。この例では、第2移動装置310は、フード62がバケット台車72の上方空間から離れ、高温コークスの熱の影響を実質的に回避可能な位置まで、ガイド車60をZ軸方向に移動させる。
【0047】
制御部130は、停電検知部134が停電を検知したとき、以下のような制御を行う。
(1)制御部130は、電池電圧Vbに基づいて直流電圧V5を駆動ラインLdに供給するように電磁接触器124および第2コンバータ126を制御する。
(2)制御部130は、フード62がバケット台車72の上方空間から離れる方向に移動するように、走行用インバータ152を介して走行用電動機162を制御する。
【0048】
停電が解消したら、制御部130は、定常モード動作をするように、電磁接触器124、第2コンバータ126、第1コンバータ146および走行用インバータ152を制御する。以上が、第2移動装置310の説明である。
【0049】
(第3移動装置)
図1図4を参照して第3移動装置410を説明する。第1移動装置110と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図4は、第3移動装置410を概略的に示すブロック図である。第3移動装置410において、移動部10はバケット車70を含む。この例では、バケット車70を移動部10として退避動作させる。
【0050】
第3移動装置410は、押出用インバータ154、均し用インバータ156、押出用電動機164、均し用電動機166および照明部172を有せず、走行用電動機162が、車輪73wを回転駆動し、牽引車73で牽引してバケット車70をZ軸方向に移動させる点で第1移動装置110と相違する。
【0051】
第3移動装置410の退避動作を説明する。停電により、高温コークスを積載したバケット台車72がフード62の下方に位置する状態が長時間続くと、フード62が変形しガイド車60が故障する恐れがある。このため、第3移動装置410は、停電が発生したとき、電池120の電力を、走行用インバータ152を介して走行用電動機162に供給し、この電動機を制御して牽引車73およびバケット車70をZ軸方向に移動させる。このような動作を行うことにより、高温コークスの熱によるガイド車60の故障を回避することが可能になる。この例では、第3移動装置410は、バケット台車72がフード62の下方空間から離れ、高温コークスの熱の影響を実質的に与えない位置まで、牽引車73およびバケット車70をZ軸方向に移動させる。
【0052】
制御部130は、停電検知部134が停電を検知したとき、以下のような制御を行う。
(1)制御部130は、電池電圧Vbに基づいて直流電圧V5を駆動ラインLdに供給するように電磁接触器124および第2コンバータ126を制御する。
(2)制御部130は、バケット台車72がフード62の下方空間から離れる方向に移動するように、走行用インバータ152を介して走行用電動機162を制御する。
【0053】
停電が解消したら、制御部130は、定常モード動作をするように、電磁接触器124、第2コンバータ126、第1コンバータ146および走行用インバータ152を制御する。以上が、第3移動装置410の説明である。
【0054】
(第4移動装置)
図1図5を参照して第4移動装置210を説明する。第1移動装置110と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図5は、第4移動装置210を概略的に示すブロック図である。第4移動装置210において、移動部10は装炭車80を含む。この例では、装炭車80を移動部10として退避動作させる。
【0055】
第4移動装置210は、押出用インバータ154、均し用インバータ156、押出用電動機164、均し用電動機166および照明部172を有せず、走行用電動機162が、車輪80wを回転駆動し、装炭車80をZ軸方向に走行させる点で第1移動装置110と相違する。
【0056】
第4移動装置210の退避動作を説明する。前述したように、石炭が炭化室41に装入された後、装炭車80によって装炭口46の蓋が閉じられる。蓋が閉じられた後、その蓋の周囲に漆喰が塗られて密閉される。しかし、蓋が閉じられる際、蓋が正規の状態で閉じられず、蓋と装炭口46との間に隙間ができることがある。この場合、蓋と装炭口46との隙間から高温の炎が吹き出すことがある。停電により、装炭車80の装炭ホッパー82が、装炭口46の上方に位置する状態で、装炭口46から炎が吹き出すと、装炭ホッパー82が故障する恐れがある。
【0057】
このため、第4移動装置210は、停電が発生したとき、電池120の電力を、走行用インバータ152を介して走行用電動機162に供給し、この電動機を制御して装炭車80を退避方向に移動させる。このような退避動作を行うことにより、高温の炎による装炭車80の故障を回避することが可能になる。この例では、第4移動装置210は、装炭車80が装炭口46の上方空間から離れ、装炭口46からの高温の炎の影響を実質的に回避可能な位置まで、装炭車80をZ軸方向に移動させる。
【0058】
制御部130は、停電検知部134が停電を検知したとき、以下のような制御を行う。
(1)制御部130は、電池電圧Vbに基づいて直流電圧V5を駆動ラインLdに供給するように電磁接触器124および第2コンバータ126を制御する。
(2)制御部130は、装炭車80が装炭口46の上方空間から離れる方向に向かって移動するように、走行用インバータ152を介して走行用電動機162を制御する。
【0059】
停電が解消したら、制御部130は、定常モード動作をするように、電磁接触器124、第2コンバータ126、第1コンバータ146および走行用インバータ152を制御する。以上が、第4移動装置210の説明である。
【0060】
このように構成された本実施形態の移動装置100の特徴を説明する。移動装置100の制御部130は、停電が発生したとき、電池120の電力を電動機160に供給し、電動機160を制御して移動部10を退避方向に移動させる。この構成によれば、停電時に、移動部10を故障を起こしやすい位置から退避させることができる。
【0061】
移動部10は、コークス炉40の炭化室41に進退可能に設けられた押出装置50の進退部52を含み、電動機160は進退部52を進退方向に移動させるように構成され、制御部130は、停電が発生したときに、電動機160を制御して、炭化室41から進退部52を退出させる。この場合、停電時に、進退部52を高温の炭化室41から退避させることができる。
【0062】
進退部52は、押出ラム54および均し棒56の少なくとも一つを含む。この場合、停電時に、高温の炭化室41から押出ラム54または均し棒56を退避させることができる。
【0063】
移動部10は、コークス炉40の炭化室41から排出されたコークスをバケット車70にガイドするガイド車60を含み、制御部130は、停電が発生したときに、電動機160を制御して、バケット車70から離れるようにガイド車60を移動させる。この場合、停電時に、ガイド車60を高温のバケット車70から退避させることができる。
【0064】
移動部10は、コークス炉40の炭化室41から排出されたコークスをガイド車60を介して収容するバケット車70を含み、制御部130は、停電が発生したときに、電動機160を制御して、ガイド車60から離れるようにバケット車70を移動させる。この場合、停電時に、高温のバケット車70をガイド車60から離隔させることができる。
【0065】
移動部10は、コークス炉40の炭化室41の装炭口46から石炭を投入する装炭車80を含み、制御部130は、停電が発生したときに、電動機160を制御して、装炭口46から離れるように装炭車80を移動させる。この場合、停電時に、装炭車80を高温の装炭口46から退避させることができる。
【0066】
外部電源20からの給電により作業用の空間または通路を照らす照明部172をさらに備え、制御部130は、外部電源20が停電したとき、電池120の電力を照明部172に供給し、照明部172を点灯させる。この場合、停電時に、照明部172により作業空間58sを明るくできるので、容易に作業できる。
【0067】
電池120とは別に、繰り返し充放電可能な電池であって、外部電源20によって充電される二次電池132bを備え、制御部130は、外部電源20が停電したとき、別の電池120の電力によって動作する。この場合、停電時に、二次電池132bから電力供給を受けるので、制御部130は継続して動作できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0069】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0070】
(変形例)
実施形態では、押出装置50、ガイド車60、バケット車70および装炭車80がレール上を移動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、これらのいずれかはタイヤや無限軌道によって移動するように構成されてもよい。
【0071】
実施形態では、押出装置50が、押出ラム54と均し棒56とを備える例を示したが、この両方を備えることは必須ではない。
【0072】
実施形態では、第2コンバータ126を介して電池120が充電される例を示したが、電池120は第2コンバータ126を介さずに充電されてもよい。
【0073】
実施形態では、電動機160が回転駆動力を出力し、ラック歯とピニオン歯車とによって直線駆動力に変換する例を示したが、電動機は直線駆動力を出力するものであってもよい。
【0074】
実施形態では、定常モード動作では、外部電源により電池120を充電する例を示したが、それに加えて走行用電動機の回生エネルギーにより電池120を充電してもよい。
【0075】
上述の各変形例は実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0076】
上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0077】
10 移動部、 20 外部電源、 40 コークス炉、 41 炭化室、 50 押出装置、 60 ガイド車、 70 バケット車、 72 バケット台車、 80 装炭車、 100、110、210、310、410 移動装置、 120 電池、 126 第2コンバータ、 130 制御部、 132 無停電電源装置、 134 停電検知部、 140 整流器、 146 第1コンバータ、 150 インバータ、 152 走行用インバータ、 154 押出用インバータ、 156 均し用インバータ、 160 電動機、 162 走行用電動機、 164 押出用電動機、 166 均し用電動機。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源で駆動される電動機の出力に基づいて移動する移動部を有するコークス炉用移動装置であって、
前記外部電源によって充電され、繰り返し充放電可能な電池であって、停電が発生したとき前記電動機に電力を供給する電池と、
前記電池からの電力を変換する電池用コンバータと、
前記電池用コンバータからの電力を変換して前記電動機に供給するインバータと、
前記電動機を制御する制御部と、
停電が発生したとき前記制御部に電力を供給する無停電電源装置と、
を備え、
前記制御部は、停電が発生したとき、前記無停電電源装置からの電力によって動作し、前記電池用コンバータ及び前記インバータを制御することで前記電池の電力を前記電動機に供給し、前記電動機を制御して前記移動部を退避方向に移動させることを特徴とするコークス炉用移動装置。
【請求項2】
前記外部電源からの電力を変換する外部電源用コンバータを備え、
前記制御部は、前記外部電源から電力が供給されているとき、前記外部電源からの電力を前記外部電源用コンバータで変換して前記インバータに供給することで前記電動機を駆動するとともに、前記外部電源用コンバータで変換した前記外部電源からの電力を前記電池用コンバータを介して前記電池に供給することで前記電池を充電する、請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記外部電源から電力が供給されているとき、前記電池からの電力と前記外部電源からの電力とによって前記電動機を駆動する、請求項2に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項4】
前記電動機の回生エネルギーによって前記電池を充電する、請求項3に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室の装炭口から石炭を投入する装炭車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記装炭口から離れるように前記装炭車を移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコークス炉用移動装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室から排出されたコークスをバケット車にガイドするガイド車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記バケット車から離れるように前記ガイド車を移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコークス炉用移動装置。
【請求項7】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室から排出されたコークスをガイド車を介して収容するバケット車を含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記ガイド車から離れるように前記バケット車を移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコークス炉用移動装置。
【請求項8】
前記移動部は、前記コークス炉の炭化室に進退可能に設けられた押出機の押出ラムを含み、
前記電動機は前記押出ラムを進退方向に移動させるように構成され、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記電動機を制御して、前記炭化室から前記押出ラムを退出させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコークス炉用移動装置。
【請求項9】
前記電動機を含む複数の電力負荷を備え、
前記制御部は、停電が発生したとき、前記電池の電力を複数の前記電力負荷に供給し、各々の前記電力負荷を個別に制御することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項10】
前記電力負荷は、前記コークス炉の炭化室に進退可能に設けられた押出機の押出ラムを駆動する押出用電動機と、前記コークス炉の炭化室に進退可能に設けられた押出機の均し棒を駆動する均し用電動機とを含み、
前記制御部は、停電が発生したときに、前記押出用電動機及び前記均し用電動機を個別に制御して、前記炭化室から前記押出ラム及び前記均し棒を退出させることを特徴とする請求項9に記載のコークス炉用移動装置。
【請求項11】
前記電力負荷は、前記外部電源に基づいて作業用の空間または通路を照らす照明部を含み、
前記制御部は、前記外部電源が停電したとき、前記電池の電力を前記照明部に供給して前記照明部を点灯させることを特徴とする請求項9または10に記載のコークス炉用移動装置。