(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000743
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】エトフェンプロックスを含有する樹脂組成物、及びそれを用いた徐放性害虫防除樹脂成型体
(51)【国際特許分類】
A01N 31/14 20060101AFI20231226BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20231226BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20231226BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231226BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20231226BHJP
A01K 27/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A01N31/14
A01P7/02
A01P7/04
A01N25/10
A01N43/40 101E
A01K27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099615
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011AC02
4H011AC04
4H011BB03
4H011BB09
4H011BC06
4H011BC17
4H011BC19
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】 動物に直接適用する成型体の作成に適した樹脂組成物及びそれを用いた樹脂成型体を提供する。
【解決手段】 エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を塩化ビニル樹脂に含有させることによって、害虫防除樹脂組成物を調製する。このような樹脂組成物は、さらに任意成分を含んでいてもよい。ここで、害虫は、代表的には、ノミ、ダニ、蚊又はシラミである。このような樹脂組成物は、徐放性害虫防除樹脂成型体の製造に好適に用いられ得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂中に、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸が含有されてなる害虫防除樹脂組成物。
【請求項2】
前記リン酸エステルがリン酸トリエチルである、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸が、イソステアリン酸である、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項4】
前記エトフェンプロックスの含有量が、全組成物中10質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項5】
前記リン酸エステルの含有量が、全組成物中1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸の含有量が、全組成物中0.01質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項7】
前記昆虫成長制御剤が、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンである、請求項1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の害虫防除樹脂組成物を成形してなる徐放性害虫防除樹脂成型体。
【請求項9】
前記徐放性害虫防除樹脂成型体が、首輪である、請求項8に記載の徐放性害虫防除樹脂成型体。
【請求項10】
塩化ビニル樹脂中に、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を併存させることによって、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を、安定的に徐放する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットや家畜などの動物に付着する害虫を防除するためのエトフェンプロックスを含有してなる樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、動物用害虫駆除効果に優れると共に、ペット動物用の首輪等に使用することができる、エトフェンプロックスを含有する樹脂組成物、及びそれを用いた徐放性害虫防除樹脂成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット、又は家畜等の人と関わり合いがある動物に付着する害虫は、これらの動物に重篤な症状をもたらす病気を媒介したり、人に対してアレルギーや有害な作用を及ぼしたりすることがある。これらの害虫に対しては、主にペットや家畜の体表面に、滴下、噴霧、塗布をする為の害虫防除剤が知られている。
【0003】
このような害虫駆除剤の有効成分としては、ピレスロイド系化合物やピレスロイド系化合物と他の化合物の組み合わせが広く用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピレスロイド系化合物であるエトフェンプロックスは、害虫防除剤として知られている。一方で、エトフェンプロックスは、低温下で固まりやすく、かつ常温以上ではブリードが進みやすい性質を有する。この為に、エトフェンプロックスを樹脂組成物に含有させて首輪等に成型することには困難が伴う。すなわち、エトフェンプロックスを用い、かつべたつきを生じることなく、適度なブリードを保持できるような、良好な成型体を製造することは、極めて難しい。
【0006】
本発明は、害虫防除対象の動物に対して、良好な防除効果を有する、エトフェンプロックスを含有する樹脂組成物、それを用いた成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を塩化ビニル樹脂に含有させることで、成型性に優れ、害虫を確実に防除することができる樹脂組成物を調製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる樹脂組成物を提供する。
[1]
塩化ビニル樹脂中に、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸が含有されてなる害虫防除樹脂組成物。
[2]
前記リン酸エステルがリン酸トリエチルである、[1]に記載の害虫防除樹脂組成物。
[3]
前記脂肪酸が、イソステアリン酸である、[1]又は[2]に記載の害虫防除樹脂組成物。
[4]
前記エトフェンプロックスの含有量が、全組成物中10質量%以上25質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1に記載の害虫防除樹脂組成物。
[5]
前記リン酸エステルの含有量が、全組成物中1質量%以上20質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1に記載の害虫防除樹脂組成物。
[6]
前記脂肪酸の含有量が、全組成物中0.01質量%以上15質量%以下である、[1]~[5]のいずれか1に記載の害虫防除樹脂組成物。
[7]
前記昆虫成長制御剤が、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンである、[1]~[6]のいずれか1に記載の害虫防除樹脂組成物。
【0009】
さらに、本発明は、下記に掲げる成型体を提供する。
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の害虫防除樹脂組成物を成形してなる徐放性害虫防除樹脂成型体。
[9]
前記徐放性害虫防除樹脂成型体が、首輪である、[8]に記載の徐放性害虫防除樹脂成型体。
[10]
塩化ビニル樹脂中に、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を併存させることによって、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を、安定的に徐放する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、害虫を確実に防除することができる首輪等に成型することができる優れた樹脂組成物、及びそれを用いた成型体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、含有量の単位「質量%」は、「g/100g」と同義である。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を塩化ビニル樹脂に含有させてなる。
【0013】
(エトフェンプロックス)
エトフェンプロックスとは、2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル=3-フェノキシベンジル=エーテルを意味する。
エトフェンプロックスとしては任意の活性な立体異性体または混合物であっても使用することができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対するエトフェンプロックスの含有量は、10質量%以上25質量%以下であり、11質量%以上22質量%以下が好ましく、12質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(リン酸エステル)
リン酸エステルは、本発明において、塩化ビニル樹脂の可塑剤として用いることができる。このうち、リン酸トリエチル又はリン酸トリブチルが好ましく、リン酸トリエチルが特に好ましい。
【0016】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対するリン酸エステルの含有量は、1質量%以上20質量%未満であり、1.8質量%以上15質量%以下が好ましく、2.2質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対するリン酸トリエチルの含有量は、1質量%以上20質量%未満であり、1.8質量%以上15質量%以下が好ましく、2.2質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
(脂肪酸)
脂肪酸は、本発明において、ブリード促進剤として用いることができる。このような脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸が好ましく、イソステアリン酸が特に好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対する脂肪酸の含有量は、0.01質量%以上15質量%未満であり、0.2質量%以上8.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上4.0質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対するイソステアリン酸の含有量は、0.01質量%以上15質量%未満であり、0.2質量%以上8.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上4.0質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
(昆虫成長制御剤)
昆虫成長制御剤とは、昆虫の変態や脱皮を調節するホルモンのバランスを制御することによって、昆虫の脱皮や羽化を阻害する物質をいう。昆虫成長制御剤には、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン等のベンゾイルウレア系化合物に代表されるキチン合成阻害剤:エクジステロイド等の脱皮ホルモン活性化合物;及びヒドロプレン、キノプレン、フェノキシカルブ、ピリプロキシフェン、ジオフェノラン、エポフェノナン、トリプレン、メトプレン(特には、S-メトプレン)、及びハイドロプレンからなる群より選択される幼若ホルモン様物質が含まれる。これらの昆虫成長制御剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物としては任意の活性な立体異性体またはその混合物であっても使用することができる。
これらのうち、幼若ホルモン様物質が好ましく用いられ、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンがより好ましく用いられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対する昆虫成長制御剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
特に、本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対するピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物において、エトフェンプロックスに対する昆虫成長制御剤の割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.0004質量部以上1質量部以下が好ましく、0.0045質量部以上0.65質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上0.45質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物において、エトフェンプロックスに対するピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンの割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.0004質量部以上1質量部以下が好ましく、0.0045質量部以上0.65質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上0.45質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
(塩化ビニル樹脂)
本発明の樹脂組成物の基材となる樹脂は、塩化ビニル樹脂であり、-CH2-CHCl-で表される基を有するポリマーである。このような塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルモノマーのホモポリマーの他、塩化ビニルモノマーと他の共重合可能なモノマーとの共ポリマーも包含される。さらに、塩素化された塩化ビニル樹脂であっても良い。
【0027】
塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、α-オレフィン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸エステル類;芳香族ビニル類;N-置換マレイミド類等が例示される。これらの他のモノマーは、さらに組み合わせて使用しても良い。
【0028】
本発明の樹脂組成物の基材となる樹脂は、好ましくは、ホモポリマーからなる塩化ビニル樹脂であり、例えば、異なる重合度の2種類以上のホモポリマーの塩化ビニルモノマーを用いることも可能である。
【0029】
本発明の塩化ビニル樹脂の平均重合度は、成型性及びブリードの両立の観点から、少なくとも一部として、重合度1000~1600のホモポリマーを含むことが好ましく、重合度1350~1500のホモポリマーを含むことがより好ましい。ここで、平均重合度は、ポリ塩化ビニル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K-6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度である。
【0030】
本発明の塩化ビニル樹脂としては、市販されているものを使用してもよく、例えば、新第一塩ビ株式会社のポリ塩化ビニル「ZEST1400Z」(平均重合度1450)及び、信越化学株式会社のポリ塩化ビニル「TK-1400」(平均重合度1400)等を使用することができる。
【0031】
さらに、このような樹脂に加えて、異なる特性を有するホモポリマーからなる塩化ビニル樹脂を併用することも可能である。異なる特性とは、平均重合度が異なるか、あるいは、粒度が異なるような場合を指す。例えば、微粉末状(粒径が100μm以下程度)のポリ塩化ビニル樹脂を、混合することも好ましい。
【0032】
代表的な使用例としては、新第一塩ビ株式会社のポリ塩化ビニル「ZEST1400Z」(平均重合度1450)及び「ZESTP24Z」(平均重合度1200~1390)の組み合わせであるが、これに限定されない。
【0033】
特に、本発明の樹脂組成物において、本発明の効果を発揮する観点から、樹脂組成物の全量に対する塩化ビニル樹脂の含有量は、40質量%以上65質量%以下が好ましく、45質量%以上60質量%以下がより好ましく、47質量%以上55質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物において、重合度の異なる2種以上の塩化ビニル樹脂を含有する場合には、例えば、ZEST 1400Zに対するZEST P24Zの割合は、ZEST 1400Z1質量部に対して、0.005質量部以上0.8質量部以下が好ましく、0.03質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0035】
(害虫)
本明細書でいう害虫としては、限定はされないが、特には、ノミ(イヌ、ネコ等に寄生するノミ等を含む)、ダニ(マダニ、ツツガムシ、ササラダニ、ヒゼンダニ、ケモノツメダニ等を含む)、又はシラミ、蚊等の寄生又は吸血害虫が挙げられる。特に好ましい防除対象害虫は、ノミ、ダニ、蚊又はシラミである。
【0036】
本発明の動物には、各種ペット、家畜、家禽などの各種動物が含まれる。特に、犬、猫、兎、ハムスターなどのペット、牛、馬、豚、鶏などの家畜や家禽が挙げられる。
【0037】
(その他の成分)
本発明の効果を阻害しない限り、本発明の樹脂組成物には、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸以外の任意の成分を塩化ビニル樹脂に含有させても良い。一例を挙げると、任意成分は、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤以外の他の害虫防除成分、追加の可塑剤、安定化剤、色素、香料などが挙げられる。
【0038】
本発明に用いることができる追加の可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸、及び2-エチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0039】
本発明に用いることができる安定化剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、バリウム/亜鉛系液状安定剤、及びステアリン酸バリウムからなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらの全てを併用することも望ましい。
【0040】
(樹脂組成物及び成型体の製造方法)
本発明の樹脂組成物は、限定はされないが、例えば、以下のような方法で製造することができる。
まず、塩化ビニル樹脂及び色素以外の原料成分を混合し、混合物を調製する。攪拌時の温度は、1~30℃の範囲で、時間は、1~20分程度であり得る。その後、塩化ビニル樹脂と原料成分の混合物とを攪拌する。攪拌後、高温で乾燥させる。この時の温度は限定はされないが、100℃以上150℃以下程度であることが好ましい。攪拌と加熱乾燥を、樹脂がドライアップまで繰り返す。この時、例えば、バンバリーミキサー、スーパーミキサー等を使用することもできる。
【0041】
次にこのようにして得られる樹脂組成物を害虫防除用樹脂成形体にする。この時、例えば、溶融して成型することもできる。成型体の製造方法としては、樹脂の成形加工で通常用いられる方法を使用できる。このような方法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、粉末成形、又はプレス成形等が、挙げられる。限定はされないが、好ましくは、射出成形機を使用して成型体を製造できる。
【0042】
(用途等)
本発明の樹脂組成物は、限定はされないが、特には、首輪、耳標、尾標、肢帯、又は端綱等として用いることができる。このうち、特に、害虫防除用首輪として、好ましく用いることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、用途に応じて、形状、大きさ、厚さ等を適宜選択し、フィルム状、シート状、リング状、繊維状、ネット状等に成型することもできる。害虫防除用首輪として使用する目的で、まず、帯状もしくはバンド状に成型することもできるが、射出成型機等で樹脂を溶融後、用途に応じた形に直接成型することも可能である。例えば、首輪の形の金型に流し込んで冷却し、直接首輪に成型することができる。
【0044】
限定はされない一例として、射出成型機にて、138~145℃の温度設定で、射出時間2~3秒、冷却時間8~15秒で、長さ35cm、巾1.0cm、厚み0.3cmの首輪の形に成型することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、用途等に応じて、6カ月に1度又は1年に1度程度の頻度で交換しながら使用することも可能である。特には、中型犬や大型犬用の首輪として、これらの頻度で使用することができる。
【0046】
[安定的な徐放方法]
本発明はまた、塩化ビニル樹脂中に、エトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸を併存させることによって、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を、安定的に徐放する方法に関する。本発明の徐放方法において、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤、リン酸エステル、及び脂肪酸とそれらの含有量については、前記樹脂組成物で記載した内容に準じる。
【実施例0047】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表における各成分量の単位は、表中特に断りがない限り、質量%である。
【0048】
実施例の樹脂組成物からなる首輪を以下の方法で製造した。表1に示す塩化ビニル樹脂及び色素以外の原料成分を室温にて、10分程度混合し、混合物を調製した。
【0049】
その後、塩化ビニル樹脂、色素、及び原料成分の混合物とを攪拌し、高温で乾燥させた。この時の温度は、120℃であった。攪拌と加熱乾燥を、樹脂がパラパラになるまで繰り返した。
【表1】
【0050】
次にこのようにして得られた樹脂組成物を、射出成形機(SE180D)を使用して成型体の首輪を製造した。射出成型機にて、138~145℃の温度設定で、射出時間2~3秒、冷却時間8~15秒で、長さ35cm、巾1.0cm、厚み0.3cmの首輪の形の金型に流し込んで冷却し、直接首輪に成型した。
【0051】
[1]滲みだし試験
それぞれの成型体である首輪を、35℃の恒温槽内に吊るした。0日から、10日経過毎に、紙ワイプ(大王製紙株式会社製プロワイプ)にて首輪の表面ににじみ出た薬液を、薬液がなくなり、表面が乾燥状態になるまでふき取った。ふき取った後の紙ワイプを、溶媒(アセトン)に浸漬し、30分間室温にて、超音波(3510J-DTH)抽出を行った。得られた溶媒を、HPLC(機材LC-2010AHT)にて、分析し、有効成分であるエトフェンプロックスとピリプロキシフェンの量を分析した。
【0052】
この結果を、1日当たりに換算した滲みだし量(μg/cm2/日)として表2に示す。
【0053】
【0054】
試験の結果、実施例の組成物から得られた成型体では、いずれも、表面のべたつきがなく、良好な有効成分の徐放性が示された。