(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007430
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電力システムにおけるバッテリーの逐次放電
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240110BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H02J7/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023104927
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】63/356,484
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/884,984
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523245193
【氏名又は名称】エントランテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】チェン,コン-チェン
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA04
5G503FA06
5G503GA11
(57)【要約】
【課題】電力システムにおける蓄電装置群のための逐次放電制御および保護を提供する。
【解決手段】EVのバッテリー・パックは、取り外しおよび交換が可能な複数のバッテリーに分割され、EVのバッテリー充電に関連付けられる課題を軽減する。一組の制御スイッチは、バッテリー・パックに配置されたバッテリーからのエネルギーの整然とした放電を制御するために、制御チェーンで連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御スイッチであって、
イネーブル入力信号を受信するイネーブル入力ポートと、
制御出力信号をアサートする制御出力ポートと、
電力入力ポートと、
電力出力ポートと、
電力転送装置と、
外部電圧と基準電圧とを比較し、比較出力を生成するように構成された比較装置と、
前記イネーブル入力信号に結合されたデマルチプレクス入力と、前記比較出力に結合されたデマルチプレクス選択信号とを有する1:2デマルチプレクス論理を含むスイッチング制御であって、前記イネーブル入力信号がアサートされると、
前記デマルチプレクス入力は、前記1:2デマルチプレクス論理によって第1のデマルチプレクス出力ポートに転送され、前記比較出力がアサートされると、前記制御スイッチに関連付けられるバッテリーから受信した前記電力入力ポートにおける入力電力を前記電力出力ポートに転送させ、
前記デマルチプレクス入力は、前記デマルチプレクス選択信号がデアサートされると、後続の制御スイッチのデマルチプレクス入力としてイネーブル入力ポートへの入力である前記制御出力信号をアサートするために、前記1:2デマルチプレクス論理によって第2のデマルチプレクス出力ポートに転送される、スイッチング制御と、
を備える、制御スイッチ。
【請求項2】
前記制御スイッチの前記制御出力ポートが前記後続のスイッチの前記イネーブル入力ポートにリンクされ、これにより、リンクした制御チェーンを形成し、関連付けられるバッテリーの自動電力切換を制御する、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項3】
前記1:2デマルチプレクス論理は、前記デマルチプレクス選択信号の状態が変化したときに、前記制御スイッチと前記後続の制御スイッチとの間の同時切換を促進する、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項4】
前記電力入力ポートはスルーレート制御装置を含む、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項5】
前記デマルチプレクス選択信号は、電流サージ、過電圧ロックアウト、過熱のうちの1つ以上の異常が発生したときにデアサートされる、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項6】
前記電力転送装置が、NMOS電界効果トランジスタ(FET)、PMOS FET、一対の背中合わせのNMOS FET、一対の背中合わせのPMOS FET、バイポーラ接合トランジスタ、電気機械式リレー、およびソリッドステートリレーからなる群から選択される、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項7】
前記比較装置がオペアンプであり、前記比較出力が、前記外部電圧が前記基準電圧よりも高い場合にアサート状態で飽和し、前記外部電圧が前記基準電圧よりも低い場合に非アサート状態で飽和する、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項8】
前記比較出力を外部から観察するために構成された状態出力ビットをさらに備える、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項9】
前記比較装置がAC-DCコンバータ(ADC)であり、前記ADCの出力がマグニチュード・コンパレータに入力されて前記比較出力を生成し、前記ADCの前記出力が前記マグニチュード・コンパレータに印加される設定値よりも高い場合に前記比較出力がアサートされ、前記ADCの前記出力が前記設定値よりも低い場合に前記比較出力がデアサートされる、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項10】
前記マグニチュード・コンパレータの前記設定値は、前記制御スイッチに内蔵されているか、または内部メモリー・デバイスにプログラムされている、請求項9に記載の制御スイッチ。
【請求項11】
I/Oインターフェース・ブロックに結合され、前記ADCの前記出力の観察を可能にする表示装置用に構成された状態I/Oポートをさらに備える、請求項9に記載の制御スイッチ。
【請求項12】
前記外部電圧が前記入力電力の減衰電圧である、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項13】
前記制御スイッチが集積回路として実装されている、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項14】
前記制御スイッチが個別の電子装置で実装されている、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項15】
前記制御スイッチが、マルチチップ・パッケージ(MCP)内で組み立てられたチップレットの組によって実装されている、請求項1に記載の制御スイッチ。
【請求項16】
複数のバッテリと複数の制御スイッチとを備える電力放電システムであって、前記複数の制御スイッチのうちの第1の制御スイッチが、
イネーブル入力信号を受信するイネーブル入力ポートと、
制御出力信号をアサートする制御出力ポートと、
電力入力ポートと、
電力出力ポートと、
電力転送装置と、
外部電圧と基準電圧とを比較し、比較出力を生成するように構成された比較装置と、
前記イネーブル入力信号に結合されたデマルチプレクス入力と、前記比較出力に結合されたデマルチプレクス選択信号とを有する1:2デマルチプレクス論理を含むスイッチング制御と、を含み、
前記イネーブル入力信号がアサートされると、前記デマルチプレクス入力が前記1:2デマルチプレクス論理によって第1のデマルチプレクス出力ポートに転送され、前記比較出力がアサートされると、前記電力転送装置が前記第1の制御スイッチに関連付けられる第1のバッテリーから受信した前記電力入力ポートの入力電力を前記電力出力ポートに転送することを可能にし、
前記デマルチプレクス入力は、前記デマルチプレクス選択信号がデアサートされ、前記複数の制御スイッチのうちの第2の制御スイッチに関連付けられる前記第2のバッテリーが出力に十分なエネルギーを有するときに、前記第2の制御スイッチが第2のバッテリーから受信した電力を前記第2の制御スイッチの電力出力ポートに転送することを可能にするイネーブル入力信号としてイネーブル入力ポートに結合された前記制御出力信号をアサートするために、1:2デマルチプレクス論理によって第2のデマルチプレクス出力ポートに転送され、
前記第1の制御スイッチの前記制御出力ポートは、前記第2の制御スイッチのイネーブル入力ポートにリンクされ、これにより、前記電力放電システム内の関連付けられるバッテリーの電力切換を制御する制御チェーンを形成する、電力放電システム。
【請求項17】
前記切替制御は、前記デマルチプレクス選択信号の状態が変化したときに、前記第1の制御スイッチと前記第2の制御スイッチとの間の同時切替を可能にし、さらに、前記第1のバッテリーと前記第2のバッテリーとの間の同時切替を可能にする、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項18】
前記電力放電システムは、電気自動車(EV)のバッテリー・システムであり、前記バッテリー・システムは、同バッテリー・システム内の複数のバッテリーの電力放電を制御するための前記制御チェーンを形成するように逐次リンクされる複数の関連付けられる制御スイッチの制御下にある複数のバッテリーに分割され、同複数のバッテリーは、前記第1のバッテリーおよび前記第2のバッテリーからなる、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項19】
前記複数のバッテリーは、取り外し可能かつ交換可能である、請求項18に記載の電力放電システム。
【請求項20】
前記第1の制御スイッチの前記電力出力ポートおよび前記第2の制御スイッチの前記電力出力ポートは、前記電力放電システムの出力電力を供給するために互いに結合されている、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項21】
前記デマルチプレクス選択信号は、過電圧ロックアウト、過熱、または電流サージ異常のうちの1つ以上が発生したときにデアサートされる、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項22】
前記比較装置はオペアンプであり、前記比較出力は、前記外部電圧が前記基準電圧よりも高い場合にアサート状態で飽和し、前記外部電圧が前記基準電圧よりも低い場合に非アサート状態で飽和する、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項23】
前記比較装置がAC-DCコンバータ(ADC)であり、同ADCの出力が前記比較出力を生成するためにマグニチュード・コンパレータに入力され、
前記比較出力は、前記ADCの前記出力が前記マグニチュード・コンパレータに印加される設定値よりも高いときにアサートされ、前記比較出力は、前記ADCの前記出力が前記設定値よりも低いときにデアサートされる、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項24】
前記第1のバッテリーおよび前記第2のバッテリーは、前記複数の制御スイッチのうちの1つの制御スイッチに入力される前に直列に接続され、前記電力放電システムの出力電圧を昇圧する、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項25】
前記第1の制御スイッチの前記イネーブル入力ポートは、前記第2の制御スイッチの前記イネーブル入力ポートに結合されて、一組の結合された制御スイッチを形成し、これにより、前記一組の結合された制御スイッチに関連付けられる前記第1のバッテリーおよび前記第2のバッテリーに並列に電力を出力させて、前記電力放電システムの出力電流を高める、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項26】
前記第1の制御スイッチの前記制御出力ポートから出力される信号が、前記第2の制御スイッチの制御出力ポートから出力される信号とOR接続され、これにより、前記複数のバッテリー内の関連付けられる組のバッテリーを作動させて並列に電流を出力させるために、前記複数の制御スイッチのうちの後続の結合された制御スイッチの組をイネーブルにする第2のイネーブル入力信号を形成する、請求項25に記載の電力放電システム。
【請求項27】
前記複数の制御スイッチのうちのk番目の制御スイッチの前記制御出力信号がアサートされ、かつ、(k+1)番目の制御スイッチの前記比較出力がデアサートされる場合に、k番目の制御スイッチからの前記制御出力信号が、前記複数のバッテリーのうちの(k+2)番目のバッテリーに関連付けられる(k+2)番目の制御スイッチを作動させて、(k+2)番目のバッテリーから受信した電圧が前記基準電圧を超えたかどうかを検知し、前記(k+2)番目のバッテリーが前記電力放電システム用の電力を出力できるようにするかどうかを決定する、請求項16に記載の電力放電システム。
【請求項28】
電力放電システムにおいてバッテリーを保護するように構成された装置であって、同装置の入力ポートが前記バッテリーの出力ポートに結合され、前記装置の出力ポートが前記バッテリーの電力出力を制御する制御スイッチの電力入力ポートに結合されている装置において、前記装置は、
前記電力放電システムがオフにされたときに開かれ、前記電力放電システムがオンにされたときに閉じられるキーオンスイッチと、
前記電力放電システムがオフにされたときに閉じられ、前記制御スイッチにより前記バッテリーの電力が予め定められた値よりも小さいことが検知されたときに開かれる連接スイッチと、を備える、装置。
【請求項29】
前記キーオンスイッチおよび前記連接スイッチが直列に接続されている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記装置が、ブールAND関数を実行する1つ以上の論理ゲートによって制御される保護スイッチを備え、
前記AND関数の出力がアサートされ、前記電力放電システムがオンになると前記保護スイッチが閉じられ、
前記AND関数の前記出力がネゲートされ、前記電力放電システムがオフになると前記保護スイッチが開かれ、
前記AND関数の前記出力は、前記制御スイッチによって前記バッテリーの電力が予め定められた値未満であることが検知されたときに、深い電力枯渇を防止するために前記保護スイッチを開くようにネゲートされ、前記AND関数の前記出力は、前記電力放電システムがオンにされている間にネゲートされる、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
複数のバッテリーと、同複数のバッテリーのうちの異なる1つに対応して各々結合された複数のバッテリー保護装置と、同複数のバッテリー保護装置のうちの異なる1つに対応して各々結合された複数の制御スイッチと、を備える電力システムであって、
複数のバッテリーのうちのk番目のバッテリーの出力電力が、前記複数のバッテリー保護装置のうちのk番目のバッテリー保護装置の入力ポートに結合され、
前記k番目の保護装置の出力ポートは、前記複数の制御スイッチのうちのk番目の制御スイッチの電力入力に結合され、各バッテリー保護装置は、
前記電力システムがオフにされたときに開かれ、前記電力システムがオンにされたときに閉じられるキーオンスイッチと、
前記キーオンスイッチと直列に接続された連接スイッチであって、前記電力システムがオフにされたときに前記連接スイッチが閉じられ、前記連接スイッチに関連付けられるバッテリーの電圧が予め定められた値未満であることが検知された場合に開放される、連接スイッチと、
を含む、電力システム。
【請求項32】
各バッテリー保護装置における前記キーオンスイッチおよび前記連接スイッチが、ブールAND関数を実行する1つ以上の論理ゲートによって制御される1つの保護スイッチとして再構成され、
前記AND関数の出力がアサートされ、前記電力システムがオンにされると前記1つの保護スイッチが閉じられ、
前記AND関数の前記出力がネゲートされ、前記電力システムがオフにされると前記1つの保護スイッチが開かれ、
前記AND関数の前記出力は、前記結合された制御スイッチによって前記結合されたバッテリーの電力が予め定められた値未満であることが検知されたときに、前記結合されたバッテリーの深い電力枯渇を防止するために前記1つの保護スイッチを開くようにネゲートされ、前記AND関数の出力は、前記電力システムがオンにされている間、ネゲートされた状態を保持する、請求項31に記載の電力システム。
【請求項33】
前記電力システムがオンにされると、第1の制御スイッチへのイネーブル入力がアサートされて、前記第1の制御スイッチを作動させ、前記複数のバッテリーの各々の電力出力が前記複数の制御スイッチのうちの、その結合された制御スイッチの電力入力に接続されるように、前記複数のバッテリー保護装置内のすべてのキーオンスイッチを閉じ、
第1のバッテリーの電力が前記予め定められた値未満であることが検知されると、
第2の制御スイッチをイネーブルにして、電力出力用の第2のモジュールを作動させ、
前記第1のバッテリーを前記電力システムから切り離すために、第1のバッテリー保護装置の第1の連接スイッチをオフにするように、前記第1の制御スイッチからの第1の制御出力がアサートされ、
第2のバッテリーの電力が前記予め定められたレベル未満であることが検知されると、
第3の制御スイッチをイネーブルにして、電力出力用の第3のバッテリーを作動させ、
前記第2のバッテリーを前記電力システムから切り離すために、第2のバッテリー保護装置の第2の連接スイッチをオフにするように、前記第2の制御スイッチからの第2の制御出力がアサートされる、請求項31に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムにおける蓄電装置群のための逐次放電制御および保護に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)の離陸準備が整った。しかしながら、EVの蓄電容量、つまりバッテリー・パックには限りがあるため、EVの普及には限界がある。EVのバッテリー・パックは、レベル1またはレベル2のAC充電器を使用することにより、家庭でフル充電することができるが、EVの航続距離および走行ルートは、長距離移動の際に公共の急速充電ステーションが利用できるかどうかに左右される。
【0003】
この制限を解決するために、テスラ社が各地で提供している高電圧レベル3直流急速充電ステーションのような、EV用の公共充電インフラをより多く建設することが1つのアプローチである。これは莫大な投資である。加えて、レベル3充電器には独自の技術が使用されていることが多く、EVメーカー間で互換性がない場合がある。
【0004】
EV製造業者が模索しているもうひとつの解決策は、バッテリー・パックの交換技術の使用である。テスラ社のモデルSのように、EVのバッテリー・パック全体をサービスステーションで交換できるEVもある。交換可能なバッテリー・パックのエネルギーを使い切った場合に、ドライバーはEVをバッテリー交換施設まで運転し、そこでロボットによってEV全体を持ち上げ、車両の下にあるバッテリー・パック全体を取り外し、フル充電されたものと交換することができる。バッテリー・パックの交換施設を建設するのは費用対効果が悪いかもしれない。さらに、バッテリー・パックにまだエネルギーが残っているにもかかわらず、目的地に到達するのに不十分な場合は、バッテリー・パックを交換することは消費者にとって無駄であり、エネルギーの効率的な使用方法とは言えない。
【0005】
内燃機関を使用する自動車は、車のメーカーに関係なく、さまざまな製油所のガソリンを便利なガソリンスタンドで給油することができる。しかしながら、異なる製造業者のEVは、異なる容量、異なる構成のバッテリーを搭載していることが多く、充電コネクターも異なるため、急速充電器はEV間で互換性がない。EVドライバーは、よくあることだが、EVバッテリー・パックの電源が不足すると、互換充電器を備えたサービスを提供する近隣の急速充電ステーションを探す必要がある。EVバッテリーの充電は、バッテリー・パックが充電を必要とするときに、特定の急速充電設備に制限されることなく、ガソリンスタンドでガソリンを給油する自動車と同様の利便性を得ることができれば有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EVでは、相当数のバッテリー・セルが直列および並列のうちの少なくともいずれか一方で接続され、バッテリー・モジュールとなっている。バッテリー・モジュールは続いて、EV用の電源を供給するバッテリー・パックに組み立てられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールは、便利なことに取り外し可能かつ交換可能なように構成されている。そのため、エネルギーが枯渇したバッテリー・モジュールをバッテリー・パックから簡単に取り外し、完全に充電されたものと交換することができる。このアプローチは、EVが直面するバッテリー容量不足の課題を解決し得る。交換はドライバー自身が行うことも、バッテリー交換サービスステーションを通じて行うこともできる。一実施形態では、逐次放電の構造体が描かれており、バッテリー・パックに分割されるバッテリー・モジュールの組は、バッテリー・モジュールのエネルギーがEV使用のために逐次放電されるように、関連付けられる制御スイッチの組によって制御される。EVドライバーは、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールのエネルギー使用状況を把握することができる。例えば、どのバッテリー・モジュールが使用中か、エネルギーを使い果たしたバッテリー・モジュールの数および位置、ならびに目的地までの走行にまだ利用可能なエネルギーを有するバッテリー・モジュールの数などである。万が一、EVが目的地に到着するのに十分なバッテリー・エネルギーを有さない場合に、消耗したバッテリー・モジュールの一部は、急速充電ステーションで充電するか、ガソリンスタンドで自動車にガソリンを給油するのと同様に、バッテリー・モジュールの交換サービスを提供する便利なバッテリー・サービス店で簡単に交換することができる。万が一、バッテリー・サービスをしてもらえない人里離れた地域まで運転する必要がある場合に、ドライバーはバッテリー交換用に予備のバッテリー・モジュールを数個、出先で持ち運ぶことができる。これによって、EVオーナーや購入希望者のEV走行距離に対する不安を解消することができる。
【0008】
一実施形態において、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールの逐次電力放電を促進する放電制御スイッチは、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギー・レベルを監視する比較装置と、関連付けられるバッテリー・モジュールに十分な利用可能なエネルギーがある場合に、転送装置を介して関連付けられるバッテリー・モジュールからバッテリー・パック出力への電力転送を制御し、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギーが使い切られた場合に、出力に十分なエネルギーがある後続バッテリー・モジュールに自動的に切り替える1:2デマルチプレクサとを備える。コンパレータの出力に結合された状態バッファは、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギー状態を示すために使用することができる。放電制御スイッチは、本明細書ではこれに代えて「制御スイッチ」とも呼ぶ。制御スイッチは、個別の電子装置を使用して実装することも、マルチチップ・パッケージのチップレットとして実装することもできる。また、1つ以上の集積回路を使用して実装することもできる。
【0009】
制御スイッチには「イネーブル入力」があり、これは制御スイッチ群によるシリアル・リンクである制御チェーン内の先行する制御スイッチからの「制御出力」である。制御スイッチへのイネーブル入力がアサートされ、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギーが出力に十分であれば、制御スイッチはその転送装置を作動させ、バッテリー・モジュールからバッテリー・パックの出力に電力を転送する。
【0010】
先行する制御スイッチからの制御出力をアクティブ制御スイッチのイネーブル入力に接続し、アクティブ制御スイッチからの制御出力を後続の制御スイッチのイネーブル入力に接続することにより、シリアル接続は、一群の制御スイッチをチェーン構成にリンクし、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールの組の整然とした放電を自動的に制御する。これらの接続は、逐次放電制御チェーンを形成し、本明細書ではこれに代えて「制御チェーン」とも呼ばれ、制御チェーンの接続順序に従って、一組のバッテリー・モジュールのエネルギーが予め定められた順序で逐次放電される。
【0011】
制御スイッチ間のリンク構成は、電力の優先順位チェーンを形成する。しかしながら、優先順位の制御は重要な関心事ではない。エネルギー放電の観点からは、制御スイッチによって制御されるすべてのバッテリー・モジュールが同等の役割を果たす。電力優先順位は、主にバッテリー・パック内のバッテリー・モジュール間のエネルギーの秩序ある放出を制御するためのものである。
【0012】
一実施形態では、EVのキーがオンになると、制御信号がアサートされ、出力に十分なエネルギーを有するバッテリー・パック内の第1のバッテリー・モジュールに結合された制御スイッチがイネーブルになる。第1のバッテリー・モジュールのエネルギーが枯渇すると、制御スイッチは、制御チェーンの制御スイッチのリンクシーケンスに従って後続の制御スイッチを作動させるために制御出力をアサートする。後続の制御スイッチは、出力に十分なエネルギーを有するバッテリー・パックのバッテリー・モジュールに結合されたものである。
【0013】
第1のバッテリー・モジュールと後続のバッテリー・モジュールとの間に出力に十分なエネルギーがあるバッテリー・モジュールが無い場合は、それらの消耗したバッテリー・モジュールは制御チェーンによってスキップされる。これは、エネルギー消耗型バッテリー・モジュールに関連付けられる制御スイッチの比較装置が論理ローを出力して制御出力をアサートし、制御チェーンの次の制御スイッチが、次の制御スイッチの比較装置の出力が論理ハイかどうかを確認できるようにすることを理由とする。このプロセスは、関連付けられるバッテリー・モジュールに十分なエネルギーがあることを検知する制御スイッチに到達するまで続けられ、その後、バッテリー・パックに電力を供給するために、その転送装置を作動させる。このような放電プロセスは、バッテリー・パック内のすべてのバッテリー・モジュールのエネルギーが使い切られるまで逐次進行する。バッテリー・モジュールが消耗しているとは、バッテリー・モジュールから出力される減衰電圧が、関連付けられる制御スイッチの比較装置によって監視される基準レベルを下回ることを意味する。
【0014】
バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールが消耗したり空いたりした場合は、制御チェーンによって自動的にスキップされるため、バッテリー・モジュール交換の順序を気にしたり、バッテリー・サービス中にバッテリー・パック内の消耗したバッテリー・モジュールを交換しないことを無視したりすることなく、バッテリー・モジュールの交換プロセスが相当容易になる。
【0015】
制御スイッチの状態出力ポートは、結合バッテリー・モジュールの電源状態を示す。EVドライバーは、状態出力を確認することで、走行に必要なエネルギーが残っているバッテリー・モジュールの数を把握することができる。残りのバッテリー・モジュールが全行程に十分なエネルギーを有する場合は、ドライバーは目的地に到着するまで、消耗したバッテリー・モジュールを充電するのを待つことができる。そうでなければ、消耗したバッテリー・モジュールの一部は、サービス停車場で完全に充電されたものと交換したり、急速充電ステーションで充電したりすることができる。
【0016】
制御スイッチの比較装置は、入力電圧が基準電圧よりも高い場合に論理ハイを出力するかアサート状態で飽和し、入力電圧が基準電圧よりも低い場合に論理ローを出力するか非アサート状態で飽和するオペアンプで構成されるコンパレータであってもよい。
【0017】
一実施形態では、比較装置は、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)で構成することができ、これはADCの出力をマグニチュード・コンパレータに接続して、バッテリー・モジュールの最低電圧要件を反映する基準値と比較し、制御スイッチ間の電力切り替えを制御するためにコンパレータの出力と同様の出力信号を生成する。比較出力は、ADCの出力がマグニチュード・コンパレータの基準値よりも高いときにアサートされる。基準数値は、制御スイッチにハード的に配線されたものであっても、ROM、EPROM、またはEEPROMに保存された値であってもよい。ADC出力は、バッテリー・モジュールの利用可能なエネルギーを観察するためにより高い分解能を提供するように、状態ポートの1つの状態ビットではなく、I2C またはコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)インターフェースのような、制御スイッチのI/Oインターフェース・ポートを介して外部から観察することもできる。
【0018】
一実施形態では、EV電源がオフのときに不要な電力漏れを防止し、EV電源がオンのときに電池寿命が低下することによるバッテリー・モジュールの過消耗を防止するために、バッテリー・モジュールとそれに関連付けられる制御スイッチとの間に保護装置を組み込むことができる。保護装置は、直列に接続された2つの保護スイッチを含むことができ、1つの保護スイッチ、すなわちキーオンスイッチは、デフォルトでは常開であり、EVへの電源がキーオンされると閉じられる。もう1つの保護スイッチ、すなわち連接(conjunction)スイッチは、デフォルトでは常閉であり、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギーが使い切られると開になる。2つのシリアル・スイッチは任意の順番に接続可能である。これらは、上記の2つの保護スイッチの等価な実装によって制御される1つのスイッチ、すなわちバッテリー保護スイッチに組み合わせることができる。
【0019】
バッテリー・モジュールの物理的構成および電源容量の標準化が望まれる。これにより、バッテリー・モジュールを異なるEV間で交換可能である。バッテリー・モジュールの電源容量は、1つ以上の特定のサイズで標準化されてもよく、電力消費の多いEVは容量の大きいものを使用し、一般的なEVや小型のEVは通常の容量のバッテリー・モジュールを使用することができる。
【0020】
一実施形態では、バッテリー・モジュールおよび関連付けられる制御スイッチは、バッテリー・パックの出力電圧および出力電流のうちの少なくともいずれか一方を高めるように構成され得る。これは、バッテリー・パック内の複数のバッテリー・モジュールを複数のサブグループに再配置し、各サブグループのバッテリー・モジュールを直列に接続して出力電圧を上昇させてから、バッテリー・モジュールのサブグループに制御スイッチを接続し、上昇した電圧出力をイネーブルにすることによって行うことができる。同様に、放電制御チェーン内の制御スイッチのサブグループが、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールの関連付けられるサブグループを作動させて同時に電流を出力できるようにすることで、バッテリー・パックの出力電流を高めることが可能である。
【0021】
バッテリー・モジュールのサブグループを作動させて同時に電力を出力するには、バッテリー・モジュールのサブグループに関連付けられる制御スイッチのサブグループへのイネーブル制御入力をともに接続し、これにより、サブグループのすべての制御スイッチが同じイネーブル入力信号を受信するようにする。加えて、制御スイッチのサブグループ内のすべての制御スイッチからの制御出力は、新たなイネーブル入力信号として外部でともにOR接続され、制御スイッチの後続のサブグループが、バッテリー・パック内の関連付けられるバッテリー・モジュールを作動させ、同時に電流を出力することを可能にする。通常の電圧および電流出力ならびに昇圧電圧および電流出力には、同じ制御スイッチ設計が適用できる。
【0022】
バッテリー・パックから高電圧および大電流を同時に出力することは、放電の構成でも可能である。これは、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールをバッテリー・モジュールの複数のサブグループに再配置し、各サブグループのバッテリー・モジュールを予め直列に接続し、制御チェーン内の制御スイッチを制御スイッチの複数のサブグループに再配置し、制御スイッチの各サブグループの制御スイッチをバッテリー・モジュールのサブグループに結合することによって行うことができる。同じイネーブル入力が、制御スイッチのサブグループに入力されることになる。制御スイッチのサブグループ内のすべての制御スイッチに同じイネーブル入力信号をアサートすることにより、制御スイッチのサブグループに関連付けられる、バッテリー・モジュールのすべての対応するサブグループは、電圧上昇と同時に電流を出力する。同様に、制御スイッチの各サブグループのすべての制御スイッチの制御出力は、外部でともにOR接続され、放電制御チェーンの制御スイッチの後続のサブグループをイネーブルにするための新たなイネーブル入力となる。バッテリーのサブグループにおいて直列に接続されるバッテリー・モジュールの数を増やし、同時に電流を出力するバッテリーのサブグループの数を増やして出力電流を高めるだけで、より高い出力電圧およびより高い出力電流を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、制御スイッチを備えた例示的なバッテリー・モジュール放電構成を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態による、バッテリー・モジュールの劣化から疑似エネルギー放電および深いエネルギー枯渇を防止するように構成された保護装置を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態による、バッテリー・モジュール用の保護装置を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、転送装置として背中合わせの(back-to-back)PMOS-FETを使用するバッテリー・モジュールの放電制御スイッチを示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の一実施形態による、1:2デマルチプレクサの論理表現を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態による、放電制御スイッチにおける1:2デマルチプレクサの応用を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態による、転送装置として背中合わせのNMOS-FETを使用する制御スイッチを示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態による、ADCを使用して比較装置を構成する制御スイッチを示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態による、バッテリー・パックの出力電圧を2倍にするために直列に接続された2つのバッテリー・モジュールを備える放電制御構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態による、バッテリー・パックの出力電流を2倍にするために2つの制御スイッチを同時に活性化させることによる放電制御構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
走行距離の不安は、消費者のEV所有意欲を削ぐ。緩慢なレベル1またはレベル2のバッテリー充電は、電気自動車を所有する意欲をさらに冷ます。例えば、レベル1のEV充電器をAC120Vのコンセントに接続した場合、20Aのコンセントで最大2.4KWとなる。テスラ・モデルSのようなバッテリー容量85KWHのEVの場合、レベル1充電器でバッテリーをフル充電するには1日を超える時間がかかる。240Vで40AのACコンセントに接続してレベル2の充電器でバッテリーを充電した場合、最高出力は約9.6KWとなり、レベル1の充電器の約4倍の速さになるが、それでもなおモデルSのバッテリー・パックをフル充電するには一晩かかる。
【0025】
より効果的な充電方式は、テスラのようなレベル3の急速充電器を使用することであり、これは、高い直流電圧を印加し、消耗したバッテリー・パックを約30分でフル容量の約80%まで充電する。しかしながら、テスラのレベル3の充電器がすべての公共の場所で利用できるとは限らないし、他の自動車メーカーのEV充電器との互換性もない。独自の急速充電方式は、道路を走る多くのEVドライバーにとって障害となっている。
バッテリー・モジュール電力逐次放電制御構成
【0026】
ここで、「バッテリー・モジュール」という用語は電池を指す。したがって、本明細書では「バッテリー・モジュール」および「電池」という用語は互換的に使用される。
【0027】
以下、EVバッテリーの不安を解消するための一実施形態について詳しく説明する。一実施形態は、EVのバッテリー・パックを複数の取り外し可能なバッテリー・モジュール(すなわちバッテリー)に分割し、ドライバーやサービス・ショップが容易に取り外して交換できるようにすることである。バッテリー・パック内の取り外し可能なバッテリー・モジュールは、関連付けられる制御スイッチの組の制御下に置かれ、バッテリー・パック全体のエネルギーが使い切られるまで、1つずつ逐次EV用の電力を供給する。EVのバッテリー・モジュールのエネルギー状態を観察できるため、ドライバーはフル充電のバッテリー・モジュールの数が走行に十分かどうかを容易に認識できる。充電が不十分な場合、ドライバーはサービス・ストアに立ち寄って充電したり、消耗したバッテリー・モジュールの一部を満充電のものと交換して、目的地に到着するまで走行を続けることができる。消耗したバッテリー・モジュールはすべて、レベル1またはレベル2の充電器で続いて再充電できる。これは車の給油と同様であり、ドライバーは自動車のガソリンの残量が少なくなると、ガソリンの状態を知ることができ、どのガソリンスタンドでもガソリンを入れることができる。
【0028】
EVに搭載するバッテリー・モジュールの数は、EVの特性や走行ニーズに基づいて決定される。より小型のEVは、バッテリー・パックに搭載するバッテリー・モジュールの数を減らすことができる。より大型のEVや、より多くの電力を必要とするEVは、より多くのバッテリー・モジュールを装備したり、より高いエネルギー容量を有するものを搭載したりすることができる。短時間の通勤であれば、EV用のバッテリー・モジュールの数は少なくても十分かもしれない。バッテリー交換サービスが受けられないような人里離れた場所に行く必要がある場合は、交換用に予備のバッテリー・モジュールを出先で携帯することができる。EVの購入希望者は、EVの所有コストを下げるために、最初は数個のバッテリー・モジュールのみを購入し、その後、例えば長期旅行の際に予備のバッテリー・モジュールのスロットを埋めるために、使用状況に応じてバッテリー・モジュールを追加したり、レンタルしたりすることができる。
【0029】
バッテリー・モジュールは、異なるEV間で互換性があり、交換可能であるように、共通のエネルギー容量を備える標準的なフォームファクタで設計することができる。そうなると、EVのバッテリーを外出時にレベル3の充電ステーションで充電する代わりに、バッテリー・モジュールを提供するバッテリー・サービス・ステーションや店舗でバッテリー・モジュールを交換するサービスに変わるかもしれない。バッテリーの交換は、ガソリンスタンドでガソリンを給油するセルフサービスと同様に、EVドライバーがセルフサービスで行うことができる。
【0030】
図1は、本発明の実施形態による例示的なバッテリー・モジュール電力逐次放電構成100を示しており、バッテリー・パック001は、一組の制御スイッチ110、120、…、190によって対応して制御される複数の取り外し可能なバッテリー・モジュール101、102、…、109に分割されている。キースイッチ005のKEYがONに押されると、第1の制御スイッチ110へのイネーブル入力として制御信号BEN1がアサートされる。バッテリー・パック001は、4つのバッテリー・モジュールを含むものとして示されているが、バッテリー・パックは、より多くのモジュールを有することができることを理解されたい。
【0031】
図1において、バッテリー・モジュール101に結合されている制御スイッチ110は、部分的に、減衰した入力を基準電圧Vrefと比較するコンパレータ111として示されている比較装置を含んでいる。減衰した入力は分圧器R1およびR2から導出され、バッテリー・モジュール101の出力に結合される。基準電圧Vrefは、外部入力であってもよいし、制御スイッチ110に設定される内部電圧であってもよい。コンパレータ111は、減衰した電圧Vatt1がVrefよりも高いこと、すなわちバッテリー・モジュール101に十分なエネルギーがあることを検知した場合に、イネーブルANDゲート112への第2の入力信号、すなわち信号BEN1もアサートされると、論理ハイを出力してイネーブルAND112をアサートする。加えて、Vrefが外部入力の場合、バッテリー・パック内のすべてのバッテリー・モジュールに共通のVrefを共通入力として設定することもできる。
【0032】
イネーブルAND112のアサートは、スイッチ011、021を介してバッテリー・モジュール101から受信され、信号Vatt1がそこから導出される電圧入力VIN1をVout1に転送するために、制御スイッチ110内の転送装置113を作動させる。転送装置113は、NMOS電界効果トランジスタ(FET)、PMOS-FET、一対の背中合わせのNMOS-FET、一対の背中合わせのPMOS FET、バイポーラ接合トランジスタ、ソリッドステートリレー(SSR)、電磁リレー等であってもよい。
【0033】
コンパレータ111の出力から信号を受信し、制御スイッチ110に配置された出力バッファ116は、
図1に示されるように、外部表示装置またはLED117に結合されてもよい。コンパレータ111の出力がハイになるとLED117が点灯し、これは、バッテリー・モジュール101に十分なエネルギーがあることを示す。
【0034】
バッテリー・モジュール101のエネルギーが消耗すると、コンパレータ111の出力信号C1は論理ローに切り替わる。信号C1はインバータ114によって反転され、リンクAND115の第1の入力端子に印加され、リンクAND115の第2の入力端子は別の制御入力信号BEN1を受信する。リンクAND115への入力信号の両者が論理ハイレベルである場合に、リンクAND115の出力は、それによって制御信号BEN2をアサートするためにハイになり、その結果、電力出力のために逐次放電チェーン100内の後続の制御スイッチ120をイネーブルにするように構成される。制御スイッチ110、120、130、…、190も同様に作動する。例えば、スイッチ012および022を介して受信されたバッテリー・モジュール102が出力する電圧は、抵抗器R3およびR4によって減衰され、バッテリー・モジュール102に関連付けられる制御スイッチ120に配置されたコンパレータ121に印加される電圧Vatt2を生成する。減衰電圧Vatt2がVrefよりも高い場合、信号C2は論理ハイになり、イネーブルANDゲート122がアサートされて、制御スイッチ120内の転送装置123がVIN2をバッテリー・モジュール102から電圧VOUT2に転送できるようになる。同様に、バッテリー・モジュール102のエネルギーが事前に予め定められたレベルを下回ると、信号C2により、リンクしたAND125によって信号BEN3がアサートされ、電力出力用の次の制御スイッチ130がイネーブルにされる。制御スイッチ130、…、190でも同じ作動が生じる。
【0035】
リンクANDゲート115、125、…、195は、リンクしたANDチェーンを形成するために直列に接続されてもよい。電力逐次放電制御構成100のリンクしたANDチェーンは、制御スイッチ110、120、…、190の逐次作動を制御し、その結果、バッテリー・モジュール101、102、…、109の電力の逐次放電を制御する。逐次作動は、放電制御チェーン100がオンになると、外部マイクロコントローラーの介入なしに自動的に行われる。
【0036】
リンクしたANDチェーンの制御の下での逐次作動は、バッテリー・パック001内の枯渇したバッテリー・モジュールをスキップすることができる。これは、関連付けられる制御スイッチに配置された比較装置が、そのバッテリー・モジュールのエネルギーが枯渇したときに論理ローを出力することを理由とする。これにより、関連付けられる制御スイッチのリンクしたANDで論理ハイが出力され、その結果、その次の制御スイッチをイネーブルにするイネーブル入力信号がアサートされる。これにより、枯渇したバッテリー・モジュールはエネルギー出力がスキップされる。バッテリー・モジュールの不良、あるいはバッテリー・モジュールの取り外しや未装着が検知された場合に、取り外されたバッテリー・モジュールであっても、それに関連付けられる制御チェーンの制御スイッチのリンクしたANDゲートは同様に動作する。言い換えると、電力逐次放電制御構成100、すなわち電力放電制御チェーンの制御の下で、電力出力中に、バッテリー・パック内の枯渇バッテリー・モジュール、不良バッテリー・モジュール、または空きバッテリー・モジュールに結合されているすべての制御スイッチがスキップされることになる。
【0037】
そのため、EVドライバーは、バッテリー・モジュールが枯渇していれば自由に交換することもできるし、枯渇したバッテリー・モジュールの一部のみを交換して、自宅などの目的地に到着するまでバッテリー・パック全体の充電を延期することもできる。完全に充電されたバッテリー・モジュールがバッテリー・パック001に再充電または再装着されると、リンクしたANDチェーンは、チェーンがオンにされたときに出力に十分なエネルギーを有する電力放電チェーン100の第1の制御スイッチを作動させる。本開示の実施形態に従って、枯渇したバッテリー・モジュールの一部のみを交換することは、EVドライバーがそうすることを選択した場合に、ガソリンスタンドでガソリンを部分的に給油することに類似している。
【0038】
制御回路にローカル電源VLOGICを供給するために、放電制御チェーン100に充電式電池のようなローカル電源199を組み込むことができる。VLOGICは、制御スイッチの内部で導出されることもある。
バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールの漏電防止
【0039】
直列に接続されたスイッチ011および021は、バッテリー・モジュール101とその関連付けられる制御スイッチ110との間に組み込まれ、電池寿命の劣化を緩和することができる。同様に、スイッチ012、022もバッテリー・モジュール102とその関連付けられる制御スイッチ120との間などに組み込むことができる。
【0040】
スイッチセット133を形成するスイッチ011、012、…、019、すなわちキーオンスイッチのデフォルト状態は常開である。キースイッチ005のKEYがONに押されると、制御信号BEN1がアサートされ、第1の制御スイッチ110が作動可能になる。信号BEN1はまた、放電制御チェーン100内のスイッチセット133内の全てのキーオンスイッチ011、012、…、019を閉じる。常開のキーオンスイッチ011、012、…、019は、EVが使用されていないときに、バッテリー・モジュール101、102、…、109の漏電を防止する。
【0041】
スイッチセット134を形成するスイッチ021、022、…、029の他の組、すなわち接続スイッチは、異なる機能を果たす。スイッチセット134の連接スイッチ021、022、…、029のデフォルト状態は常閉である。キーオンスイッチ005のKEYがONに押されると、キーオンスイッチ011、012、…、019と連接スイッチ021、022、…、029との両者が閉じられるので、バッテリー・パック001のバッテリー・モジュール101、102、…、109のエネルギーが比較装置111、121、…、191を介して検知または受信され、対応する制御スイッチ110、120、…、190の出力バッファ116、126、…、129で観測される。
【0042】
状態バッファ116、126、…、129の出力は、LCDパネルまたは
図1に示すLED117、127、…、197のような外部表示装置に接続されてもよい。このため、EVドライバーは、EVのキースイッチ005が押されたときに、バッテリー・パック001全体のエネルギー状態を観察することができる。
【0043】
放電制御チェーン100の連接スイッチ021、022、…、029のデフォルト状態は、通電可能な常閉状態である。バッテリー・モジュール101のエネルギーが枯渇し、制御スイッチ110によって検知されると、制御スイッチ110のリンクAND115がハイになって制御出力信号BEN2をアサートし、後続の制御スイッチ120を作動させる。一方、信号BEN2がアサートされると、バッテリー・モジュール101をEV電源システムから切り離すために、連接スイッチ021も開き、分圧器R1、R2を介したリーク電流など、バッテリー・モジュール101のエネルギーがさらにスプリアスに消耗することが防止される。
【0044】
同様に、制御スイッチ120は、制御出力信号BEN3をアサートして、後続の制御スイッチ130をイネーブルにし、関連付けられるバッテリー・モジュール102内のエネルギーが枯渇すると、接続スイッチ022を開いてバッテリー・モジュール102を電源システムから切り離す。このプロセスは、逐次放電制御チェーン100の制御の下で、バッテリー・パック001全体のすべての枯渇したバッテリー・モジュールを保護するために、全ての常閉型連接スイッチを開放するように進行する。
【0045】
バッテリー・モジュールを関連付けられる制御スイッチに結合する一対のスイッチは、保護装置を形成する。例えば、スイッチ011および021はバッテリー・モジュール101のための第1の対の保護装置を形成し、スイッチ012および022はバッテリー・モジュール102のための第2の対の保護装置を形成する、などである。
図2Aは、保護装置200の一実施形態を示しており、EVが使用されていないときにバッテリーのスプリアス放電を防止し、さらに、EVが電源オンされている間にバッテリーのエネルギーが枯渇したときに、バッテリー・モジュールの劣化による深いエネルギー枯渇を防止する。保護装置200は、放電制御チェーン100における保護装置011および021、012および022、013および023などの任意の対に対応する。
【0046】
図2Aにおいて、キーオンスイッチ220は常開であり、KEYがONに押されると閉じられる。連接スイッチ230のデフォルト状態は常閉であり、バッテリー・モジュール210の電力を制御スイッチに転送することができるが、信号NXEN、すなわち後続の制御スイッチをイネーブルにする制御出力信号がアサートされると開状態になる。信号NXENは、
図1の放電制御チェーン100における信号BEN2、BEN3、BEN4、…、BEN9のいずれかに対応する。開放連接スイッチ230は、バッテリー・モジュール210の出力経路をその制御スイッチに切り離す。これは、バッテリー・モジュール210のエネルギーが最低電圧レベルを下回ったときに起こる。
【0047】
図2Bは、本開示の別の実施形態によるバッテリー・モジュール保護装置の代替的実装を示す。保護装置250では、代わりに常開スイッチ270、すなわちバッテリー保護スイッチが使用される。バッテリー保護スイッチ270には、KEY入力および反転NXEN入力がAND入力される。NXENがネゲートされ、KEY入力がオンである場合に、AND265の出力はハイとなり、常開型バッテリー保護スイッチ270を閉じ、バッテリー・モジュール260内のエネルギーを関連付けられる制御スイッチに出力できるようにする。NXENがアサートされるか、またはKEYがOFFになると、バッテリー保護スイッチ270は開き、つまりデフォルト状態に戻り、バッテリー・モジュール260を関連付けられる制御スイッチから切り離してバッテリー・エネルギーを保持する。
図2Aのキーオンスイッチ220、
図2Aの連接スイッチ230、および
図2Bのバッテリー保護スイッチ270は、電気機械式リレー(EMR)、ソリッドステートリレー(SSR)、またはMOSFETやバイポーラトランジスタの他の電気制御スイッチであってもよい。
【0048】
図1を参照すると、放電制御チェーン100のキースイッチ005の信号KEYがオフに切り替えられると、制御信号BEN1はネゲートされる。BEN1信号のネゲートにより、
図1のすべてのキーオンスイッチ011、012、…、019は、デフォルト状態にリセットされて開放になる。BEN1信号のネゲートは、放電制御チェーン100内のすべての連続するBEN2、BEN3、…、BEN9信号もネゲートするので、一組の連接スイッチ021、022、…、029のいずれかがその前のバッテリー・モジュール内のエネルギーの枯渇により開いていることに関係なく、一組の連接スイッチ021、022、…、029は閉じられる。
【0049】
従って、キースイッチ005のKEYがOFFに押されると、バッテリー・モジュールとその関連付けられる制御スイッチとの接続は、デフォルトの状態に戻り開放になる。その後、KEYがONに押されると、バッテリー・パック001のバッテリー・モジュールは、それらの対応する制御スイッチに再接続され、バッテリー・パック全体のエネルギー状態を漏らし、エネルギーが利用可能であれば、予め定められた順序でバッテリー・モジュールからエネルギーを出力し、バッテリー・モジュールのエネルギーが枯渇した場合には、保護装置が適所に設置された放電制御チェーン100の制御下で、バッテリー・モジュールをその対応する制御スイッチから切り離す。
バッテリー・エネルギー放電制御用の制御スイッチ
【0050】
図3は、本開示の一実施形態による、バッテリー・モジュールの電力出力を制御するための例示的な放電制御スイッチ300を示す。
図3はまた、
図1の転送装置113、123、133、…、193のような転送装置350の詳細を示している。放電制御スイッチ300は、
図1の放電制御スイッチ110、120、130、…、190のいずれかに相当する。転送装置350は、電力転送装置として作動する一対の背中合わせのPMOS-FET317および318を示す。一実施形態において、放電制御スイッチ300は、部分的に、電圧入力ATTVINを基準電圧Vrefと比較するための、ここではコンパレータ311として示される比較装置を含み、ここで、ATTVINは、分圧器R1、R2から導出されたVINの減衰電圧であり、VINは、制御スイッチ300に結合されたバッテリー・モジュールからのエネルギー出力である。Vrefは、内部設定電圧または外部入力VREFに接続される。
【0051】
制御スイッチ300への制御入力ENがアサートされ、コンパレータ311の出力が論理ハイであるとき、すなわち、その関連付けられるバッテリー・モジュールに十分なエネルギーがあるときに、イネーブルAND312も論理ハイ信号となり、転送装置PMOS-FET317、318が端子VINから端子VOUTへ電力を転送することが可能となる。電力転送装置として一対のMOS-FETを使用するのが有利である。PMOS-FET317のドレイン-ソース間ボディー・ダイオードは、関連付けられるバッテリー・モジュールの出力電圧VINがVOUTよりも低い場合に、VOUTからVINへの逆電流を遮断する。PMOS-FET318のドレイン-ソース間ボディー・ダイオードは、制御スイッチ300によって制御されるフル充電のバッテリー・モジュールがまだ電力を出力する準備ができていない場合に、VINからVOUTへの漏れ電流を遮断する。
【0052】
抵抗器R3およびNMOS-FET313は、抵抗器-トランジスタ論理(RTL)でインバータを形成する。抵抗器R3およびNMOS-FET313で形成されるインバータのRTLプルアップ電圧は、PMOS-FET317のボディー・ダイオードを介してVINから供給される。インバータ機能は、一対のアクティブ・ローPMOS-FET317、318には必要であるが、アクティブ・ハイNMOS-FETが制御スイッチの電力転送装置として選択されている場合は必要ない。
【0053】
コンパレータ311の出力がローになる、すなわち、関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギーが低下または枯渇し、もはや十分なエネルギーがない場合に、インバータ314によるコンパレータ311の反転出力は論理ハイ(高)になり、したがって、ENもアサートされる場合、リンクAND315の出力もハイになる。リンクAND315の出力がハイになると、制御出力NXENがアサートされ、放電制御チェーンの後続の制御スイッチが作動する。
図1を例にとると、バッテリー・モジュール102が出力に十分なエネルギーを有する場合に、制御スイッチ120は制御スイッチ110に続く制御スイッチとみなされる。そうでなければ、バッテリー・モジュール103が出力に十分なエネルギーを有する場合など、制御スイッチ130は制御スイッチ110の後続の制御スイッチとみなされる。
【0054】
バッファ316は、制御スイッチ300に結合されたバッテリー・モジュールのエネルギー状態を示すために、外部観察のためにコンパレータ321の出力をBATTERY STATUS端子に送出する。イネーブルAND312、インバータ324、およびリンクAND315は、制御スイッチ300内で1:2デマルチプレクサ320を形成し、コンパレータ311の出力は、ENをデマルチプレクサ入力として、2つのデマルチプレクサ出力、すなわちイネーブルAND312とリンクAND315との間を選択するためのデマルチプレクサ選択制御信号321となる。制御スイッチは集積回路であってもよい。個別の電子装置を使用して実装することもできるし、マルチチップパッケージ(MCP)のチップレットの組として実装することもできる。
【0055】
図4Aは、1:2デマルチプレクサ400の論理表現を示し、デマルチプレクサの選択制御信号CNTLが0の場合に、デマルチプレクサ入力INはデマルチプレクサ出力OUT0に転送される。また、デマルチプレクサ選択制御信号CNTLが1であれば、デマルチプレクサ入力INはデマルチプレクサ出力OUT1に転送される。
【0056】
これによれば、
図4Bは、
図3の制御スイッチ300におけるリンクAND315、イネーブルAND312、およびインバータ314が1:2デマルチプレクサ320を形成し、イネーブル入力ENがデマルチプレクサ入力信号であり、コンパレータ311の出力がデマルチプレクサ選択制御信号321であることを示している。イネーブル入力EN(デマルチプレクサ入力)がアサートされ、コンパレータ出力(デマルチプレクサ選択制御端子)がハイである場合に、イネーブルAND312は、アサートされると、信号ENを受け渡し、制御スイッチに配置された転送装置が、その関連付けられるバッテリー・モジュールから制御スイッチの出力に電力を出力し、さらにバッテリー・パックの出力に電力を出力することを可能にする。
【0057】
逆に、イネーブル入力ENがアサートされてもコンパレータ出力がローであれば、リンクAND315はその出力で信号NXENをアサートし、電力出力のために放電チェーンの後続の制御スイッチを作動させる。しかしながら、イネーブル入力ENがネゲートされると、1:2デマルチプレクサの両出力はネゲートされ、制御スイッチ300は放電制御チェーンにおいて非アクティブになる。
【0058】
図5Aは、本開示の実施形態による、バッテリー・モジュールの電力出力を制御するための別の例示的な放電制御スイッチ500を示す。放電制御スイッチ500は、
図1に示す放電制御スイッチ110、120、130、…、190のいずれかに対応し、背中合わせのNMOS-FET517、518が転送装置を形成する場合に、転送装置113、123、133、…、193のいずれかに対応する。制御スイッチ500の比較装置は、その入力電圧VINATTが基準電圧Vrefよりも高い場合に論理ハイを出力するか、またはアサート状態で飽和し、VINATT入力が基準電圧Vrefよりも低い場合に論理ローを出力するか、または非アサート状態で飽和するオペアンプで構成されるコンパレータ511であってもよい。VINATTは、制御スイッチ500に関連付けられるバッテリー・モジュールの電圧出力から得られる減衰電圧である。Vrefは内部電圧または外部入力VREFであってもよい。Vrefが外部入力の場合、すべての制御スイッチへのVREFを同じ基準電圧に接続し、制御することで、すべてのバッテリー・モジュールのエネルギーを確実に枯渇させるか、同じ低レベルまで低下させることができる。
【0059】
図5Aに示す実施形態のいくつかの態様は、異常が制御スイッチ500を損傷するのを防止する装置を含む。例えば、高電圧サージによる故障から保護するために、制御スイッチ500は、入力電圧が予め定められた制限値を超えたときに制御スイッチ500をロックアウトするためのコンパレータ512を一部に含む過電圧ロックアウト(OVLO)回路を含むように構成されている。電気的な過渡サージ電圧は、ソリッドステートデバイスにアバランシェ降伏を引き起こし、制御スイッチを損傷させる可能性がある。過電圧コンパレータ512は、Vrefを減衰電圧入力OVLOと比較する。抵抗器R2の端子とグランドとの間に抵抗器R3が追加されているため、電圧OVLOはVINATTよりも低い。
【0060】
通常作動時、電圧OVLOはVrefよりも低く、コンパレータ512の出力は論理ハイとなり、ANDゲート513の出力に影響を与えない。しかしながら、電力サージ中に電圧OVLOがVrefよりも高くなると、過電圧コンパレータ512の出力がローになり、その結果、
図4Bを参照して上述したANDゲート515、522およびインバータ521で構成される1:2デマルチプレクサの選択制御端子であるANDゲート513の出力がローになる。デマルチプレクサの選択制御端子で論理ローが発生すると、制御スイッチ500の電力転送装置が無効になり、電力出力のために放電制御チェーンの後続の制御スイッチがイネーブルになる。制御スイッチ500のNMOS-FET517、518によって形成される転送装置は、OVLOがVrefよりも高い場合に、過電圧によってロックアウトされる。
【0061】
制御スイッチ500の追加の保護機構、例えば、バッテリー・モジュールが最初にスイッチオンされたときにVINからの電圧スパイクを平滑化するためのスルーレート制御装置523、または制御スイッチ500に入る電流が予め定められた制限値を超えないように監視し保証するための電流検知装置514、または転送装置が過熱されないように保護するために転送装置の接合部温度を検知する温度センサ、これらのすべてまたは一部が制御スイッチ500に含まれてもよい。異常検知装置の出力は、検知された異常信号がローにアサートされていればAND513に入力され、検知された異常信号がハイにアサートされていればNOR519に入力され、
図5AのAND513でコンパレータ511の出力をネゲートするようにしてもよい。AND513の出力は、デマルチプレクサ選択制御端子に入力される制御信号である。デアサートされたデマルチプレクサ選択制御信号は、放電制御チェーンの後続の制御スイッチを作動させる。
【0062】
制御スイッチ500の一対のアクティブハイNMOS-FET517、518は、チャージポンプ520の出力に接続され、NMOS FETのチャネル伝導を高めるためにゲート電圧をソース電圧よりも高いレベルに昇圧する。一対のNMOS-FET517、518のボディー・ダイオードは、電圧VOUTがVinよりも高いときに逆電流を遮断し、完全に充電されたバッテリー・モジュールがまだ電力出力用に作動していないときに順方向リーク保護を提供する。抵抗器R4は、NMOS-FET527およびインバータ526とともにオープンドレイン状態バッファ525を形成し、コンパレータ511の出力は、制御スイッチ500の関連付けられるバッテリー・モジュールのエネルギー状態を漏らすために出力端子BSTAで観察可能である。
【0063】
本開示の範囲内の制御スイッチ設計の他の実施形態には、
図5Bに示されるようなものが含まれ、比較装置は、
図5AのANDゲート513に入力されるコンパレータ511の出力と同様に、ANDゲート560への入力として比較出力信号を生成するために、関連付けられるバッテリー・モジュールの最低電圧要件を反映する基準値CMPVALと比較するために、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)535の出力がマグニチュード・コンパレータ536に接続されるアナログ/デジタル・コンバータ(ADC)535で構成されてもよい。マグニチュード・コンパレータ536の比較出力は、
図5Bの1:2デマルチプレクサのセレクト制御信号となり、制御スイッチ550の電力切換を制御する。マグニチュード・コンパレータ536は、個別の装置であってもよいし、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)などで実装されてもよい。
【0064】
加えて、インバータ526およびNMOS-FET527を含む
図5Aの状態バッファ525、ならびに制御スイッチ500の状態ビットBSTAは、I/Oインターフェース・ユニット537と、
図5BのSTSTUS PORTの2ビットI
2Cインターフェースまたはコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)インターフェースのような外部I/Oインターフェースに接続されるマルチビットI/O STATUS PORTとに置き換えられてもよい。ADC出力がI/Oインターフェース・ユニット537からアクセス可能であれば、LCDパネルのような外部表示装置で、バッテリー・モジュールのエネルギー状態に関するより高い解像度を観察することができる。マグニチュード・コンパレータ536の最低電圧要件を反映する数値CMPVALは、ハード的に配線されるか、制御スイッチ550に埋め込まれるか、または、I/Oインターフェース・ユニット537およびI/O STATUS PORTを介してアクセス可能な電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)などのメモリ・デバイスにプログラムされる。
【0065】
まとめると、制御スイッチは、イネーブル入力信号を受信するイネーブル入力ポートと、制御出力信号をアサートする制御出力ポートと、電力入力ポートと、電力出力ポートと、電力転送装置がイネーブルのときに電力入力ポートから受信した入力電力を電力出力ポートに転送するように構成された電力転送装置と、外部電圧を基準電圧と比較して比較出力を生成するように構成された比較装置とを備える。
【0066】
制御スイッチは、イネーブル入力信号に結合されたデマルチプレクス入力と、比較出力に結合されたデマルチプレクス選択制御信号とを有する1:2デマルチプレクス論理からなるスイッチング制御をさらに備える。イネーブル入力信号がアサートされると、デマルチプレクス入力、すなわちイネーブル入力信号は、1:2デマルチプレクス論理によって第1のデマルチプレクス出力ポートに転送され、比較出力またはデマルチプレクス選択信号がアサートされると、制御スイッチに関連付けられたバッテリー・モジュールから受信した電力入力ポートにおける電力を電力出力ポートに転送するように構成された電力転送装置をイネーブルにする。さらに、デマルチプレクス入力は、デマルチプレクス選択信号がデアサートされると、後続の制御スイッチのデマルチプレクス入力としてイネーブル入力ポートに入力可能な制御出力信号をアサートするために、1:2デマルチプレクス論理によって第2のデマルチプレクス出力ポートに転送される。
【0067】
さらに、制御スイッチの制御出力ポートは、後続の制御スイッチのイネーブル入力ポートにリンクさせることができ、これにより、バッテリー電力システム内の関連付けられるバッテリー・モジュールの自動電力切換を制御するリンク制御チェーンを形成することができる。
【0068】
制御スイッチにデマルチプレクス論理を組み込むことで、デマルチプレクス選択信号の状態が変化したときに、制御スイッチと後続の制御スイッチとの間、すなわち、関連付けられるバッテリー・モジュールと後続の関連付けられるバッテリー・モジュールとの間の同時切換が可能になり、電源切換中の過渡ノイズおよび異常を最小限に抑えることができる。
バッテリー・パックの出力電圧および電流を高める
【0069】
一実施形態では、バッテリー・モジュールおよび関連付けられる制御スイッチは、バッテリー・パックの出力電圧および出力電流のうちの少なくともいずれか一方を高めるように構成することができる。これは、バッテリー・パック内の複数のバッテリー・モジュールを複数のサブグループに配置し直し、バッテリー・モジュールのサブグループに関連付けられる制御スイッチに入力する前に、各サブグループのバッテリー・モジュールを直列に接続し、制御スイッチから上昇した電圧を出力することによって行うことができる。同様に、放電制御チェーン内の制御スイッチのサブグループをイネーブルにして、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールの関連付けられるサブグループを作動させ、同時に電力を出力させることにより、バッテリー・パックからの出力電流を高めることが可能である。
【0070】
図6は、4つのバッテリー・モジュール610、620、630、640を含む例示的な電力放電制御構成601を示し、バッテリー・モジュール610および620は直列に接続され、バッテリー・モジュール630および640も直列に接続されている。バッテリー・パック600は、4つのバッテリー・モジュールを含むものとして示されているが、バッテリー・パックは、より多くのバッテリー・モジュールを有することができることを理解されたい。電力放電制御構成601は、出力電圧を2倍にするように構成されており、バッテリー・モジュール610の正端子はバッテリー・モジュール620の負端子に接続され、バッテリー・モジュール620の正端子は関連付けられる制御スイッチ650に出力される一方、バッテリー・モジュール610の負端子はEVのシャーシグランドに接続されてもよい。
【0071】
図1を参照して説明したのと同様の方法で、キースイッチ605のKEYがONに押されると、信号DBEN1がアサートされ、制御スイッチ650が、直列接続された一対のバッテリー・モジュール610および620の電圧出力を制御できるようにする。また、信号KEYを活性化することで、放電制御構成601内のすべてのキーオンスイッチ611、621、…、641を閉じる。これにより、バッテリー・パック600のバッテリーモジュール610/620、630/640…の各対のエネルギーが、関連付けられる制御スイッチ650、660に対応して配置されたコンパレータ623、643によって監視される。バッテリー・パック600のバッテリー・モジュールの各対のエネルギー量をそれぞれ表す監視電圧は、対応するバッファ627、647の出力で観測可能である。
【0072】
一対のバッテリー・モジュール610、620からの出力電圧2XVINは、制御スイッチ650に配置されたコンパレータ623に印加される前に、分圧器R1、R2によって減衰される。電圧2XVINは、1つのバッテリー・モジュールの出力電圧VINの2倍の電圧である。コンパレータ623は、減衰された電圧を基準電圧2XVrefと比較するように構成されており、この基準電圧は、例えば、
図1に示す電圧Vrefの2倍である値であってもよいし、別の電圧値であってもよい。電圧2XVrefは、内部電圧であっても、制御スイッチ650への外部入力であってもよい。
【0073】
一対のバッテリー・モジュール610、620に十分なエネルギーがある場合に、関連付けられる制御スイッチ650のコンパレータ623の出力は論理ハイになる。信号DBEN1もアサートされる場合に、イネーブルAND624は、直列に接続された一対のバッテリー・モジュール610、620からバッテリー・パック600の出力ノードVBPACKに電圧2XVINを転送するためにアサートされる。しかしながら、コンパレータ623への減衰電圧入力が2XVrefを下回ると、制御スイッチ650の転送装置625は無効になり、制御出力信号DBEN2がリンクしたAND628によってアサートされ、バッテリー・モジュール610、620に結合された一対の接合スイッチ612、622をオフにすると同時に、バッテリー・モジュールの両者が十分なエネルギーを利用できる場合に、後続の制御スイッチ660がノードVBPACKに2倍電圧を出力することを可能にする。
【0074】
キースイッチ605がONに押される(作動する)と、
図6に示すように、LED629、649などの表示装置が点灯して、バッテリー・パック600内のバッテリー・モジュール610、620および630、640のすべてのサブグループのエネルギー状態を示すことができる。出力電圧が2倍となる放電制御構成601では、制御スイッチの数を半分に低減することができる。
【0075】
一実施形態では、バッテリー・パックからの出力電流を高めるために、放電制御チェーンの制御スイッチのサブグループをともにイネーブルにして、バッテリー・パックの関連付けられるバッテリー・モジュールが並列に電流を出力できるようにすることができる。これは、サブグループ内のすべての制御スイッチに同じイネーブル入力を接続することで可能であり、制御スイッチのサブグループ内のすべての制御スイッチにイネーブル入力をアサートすることで、関連付けられるすべてのバッテリー・モジュールに電流を同時に出力させ、電流出力を高めることができる。加えて、制御スイッチのサブグループ内のすべての制御スイッチからの制御出力は、並列電流出力のための後続の制御スイッチのサブグループへの新たなイネーブル入力となるように、ともにOR接続され得る。より高い電流およびより高い電圧出力に使用される制御スイッチは、通常の電流および電圧出力に使用される制御スイッチと同様である。
【0076】
図7は、バッテリー・パック700からの出力電流を2倍にした例示的な逐次放電制御構成701を示す。バッテリー・パック700は4つのバッテリー・モジュールのみしか含んでいないが、バッテリー・パックはより多くのバッテリー・モジュールで構成されてもよいことが理解される。バッテリー・パック700では、キースイッチ705のKEYがONに押されると、イネーブル信号DBEN1がアサートされて2つの制御スイッチ750、760が作動し、これにより、その2つの関連付けられるバッテリー・モジュール710、720からのエネルギーVIN1、VIN2が2つの制御スイッチ750、760を介してバッテリー・パック出力ノードVBPACKに同時に出力され、出力電流が2倍になる。バッテリー・パック内のすべての制御スイッチの出力はVBPACKでORされる。
【0077】
バッテリー・モジュール710、720のいずれかのエネルギーが枯渇すると、リンクしたAND717、727のうちの少なくとも1つの出力がハイになる。ORゲート728で2つのリンクしたAND717、727の出力をともにORすることにより、ノードDBEN3であるORされた出力がハイになり、電力放電制御構成701の後続の一対の制御スイッチ770、780がイネーブルになり、また、VBPACKへの出力電流が2倍になる。信号DBEN3のアサートはまた、バッテリー・モジュール710、720の出力に結合された一対の接合スイッチ712、722を切り離し、一対の枯渇したバッテリー・モジュール710、720のエネルギーのさらなる枯渇を防止する。
【0078】
一実施形態では、同様の制御スイッチを使用して、より高い電圧およびより高い電流出力をバッテリー・パックから出力することもできる。これは、バッテリー・モジュールのサブグループにおいて、予めバッテリー・モジュールのサブセットを直列に接続して出力電圧を上昇させ、制御スイッチのサブグループの各制御スイッチがバッテリー・モジュールのサブグループの電力出力を制御する制御スイッチのサブグループの制御下で、バッテリー・モジュールの複数の同様のサブグループが同時に電力を出力して出力電流を上昇させることによって達成される。制御スイッチのサブグループからの制御出力は、電力放電制御構成701の制御スイッチの次のサブグループをイネーブルにするための新たなイネーブル制御信号となるようにOR結合される。バッテリー・モジュールのサブグループのいずれかのエネルギーが予め定められた値を下回ると、新しいOR制御出力がアサートされる。
結論
【0079】
バッテリー・パックを取り外し可能かつ交換可能な複数のバッテリー・モジュールに分割し、放電制御チェーンを使用してバッテリー・モジュールからの電力の整然とした放電を制御することにより、EVのバッテリー構成は、外部マイクロコントローラを介することなく、バッテリー・モジュール間のシームレスな電力切り替えで、充電の制約を解決するために、より汎用的かつ効率的なものとなる。
【0080】
また、バッテリー・パック内のバッテリー・モジュールを直列に、それらの関連付けられる制御スイッチを並列にグループ化して放電制御を行うことで、バッテリー・パックからの出力電圧および出力電流を調整することも可能である。また、EVの電源オフ時にバッテリーのスプリアス放電を防止し、EVの電源オン時にバッテリー・モジュールの劣化による深いエネルギー枯渇を防止するためのバッテリー保護装置も放電制御構成に含めることができる。
【0081】
航続距離を伸ばすために、むしろより大きな蓄電容量を備えるより大型のバッテリー・パックを追求し続けると、消費者にとってはEVコストが高くなり、EVにとっては不利なより重いEVになってしまう可能性がある。バッテリー・パックに取り外し可能かつ交換可能なバッテリー・モジュールを採用することは、EVの燃費不安を解消する効果的な方法であり、EVのコストを下げる可能性がある。
【0082】
EVがより大型のバッテリー・パックを常時携帯するのは不適切な場合がある。日常的な短距離の通勤であれば、EVから一部のバッテリー・モジュールを取り外して車両重量超過を最小化し、長距離走行であればEVオーナーの判断でバッテリー・モジュールを追加してEVに戻すことで、EVのエネルギー利用をより効率化できる可能性がある。バッテリーの所有コストを下げることでEVの価格を下げたり、バッテリー・モジュールを広く普及させることで、出先でガソリンスタンドでガソリンを給油するのと同様に枯渇したバッテリーをほとんどの場所で容易に交換したり、短時間のみで充電できるようにしたりすれば、EVドライバーの利便性をより高めることができ、EVの受け入れを加速させる可能性がある。
【外国語明細書】