(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074303
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】樹脂製多層シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240524BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185351
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100184767
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 信之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 等
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB15
3E086BB74
3E086CA01
4F100AK01B
4F100AK04C
4F100AK04E
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK07D
4F100AK07E
4F100AK69B
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00E
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA06C
4F100JA13C
4F100JD02B
4F100JL01
4F100JL11E
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、従来製品と同等な成形加工性、物性を維持しつつ、化石燃料由来PPの一部を、バイオマス由来PEに置き換えた、樹脂製多層シートを提供することである。
【解決手段】
厚さ250~500μmで、両表面層は化石燃料由来PPを主成分とし、中間層のうち、少なくとも1層はガスバリア性のある樹脂層で、少なくとも他の1層は化石燃料由来PPとバイオマス由来PEの混合樹脂を主成分とし、該バイオマス由来PEの密度は0.94~0.97μg/cm3で、該他の1層の重量中、化石燃料由来PPが60~90wt%、バイオマス由来PEが10~30wt%で、樹脂シート全体に対する化石燃料由来PPのが60~90wt%、バイオマス由来PEが10~30wt%である、樹脂製多層シート。
本発明によれば、従来製品と同等な成形加工性、物性を維持しつつ、化石燃料由来の樹脂使用量を大幅に減らした、樹脂製多層シートを提供できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層が積層された樹脂製多層シートであって、
該樹脂製多層シートの厚さは250~500μmで、
該樹脂製多層シートの両表面層は化石燃料由来ポリプロピレンを主成分とする樹脂層で、中間層のうち、少なくとも1層はガスバリア性のある樹脂層で、少なくとも他の1層は化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンを混合した樹脂を主成分とする樹脂層であり、
該バイオマス由来ポリエチレンの密度は0.94~0.97g/cm3で、
該他の1層の重量中、化石燃料由来ポリプロピレンが60~90wt%、バイオマス由来ポリエチレンが10~30wt%で、
樹脂シート全体に対する化石燃料由来ポリプロピレンの重量%が60~90wt%で、バイオマス由来ポリエチレンの重量%が10~30wt%である、樹脂製多層シート。
【請求項2】
化石燃料由来ポリプロピレンのメルトフローレートが0.3~2.0g/10min(230℃)で、バイオマス由来ポリエチレンのメルトフローレートが0.3~10.0g/10min(190℃)である、請求項1の樹脂製多層シート。
【請求項3】
バイオマス由来ポリエチレンの密度が0.950~0.965g/cm3で、
他の1層の重量中、化石燃料由来ポリプロピレンが60~85wt%、バイオマス由来ポリエチレンが15~25wt%で、
樹脂シート全体に対する化石燃料由来ポリプロピレンの重量%が60~90wt%で、バイオマス由来ポリエチレンの重量%が10~20wt%で、
化石燃料由来ポリプロピレンのメルトフローレートが0.3~1.0g/10min(230℃)、バイオマス由来ポリエチレンのメルトフローレートが0.3~2.0g/10min(190℃)である、請求項2の樹脂製多層シート。
【請求項4】
(1)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層、(2)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合物樹脂層、(3)接着層、(4)エチレンビニルアルコール共重合体樹脂層、(5)接着層、(6)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合物樹脂層、(7)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層、をこの順に積層した樹脂製多層シートであって、
その厚さが、(1)(7)は20~50μm、(2)(6)は70~210μm、(4)は5~15μmである、請求項3の樹脂製多層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来ポリエチレンを原料に含む樹脂製多層シートに関する。さらに詳しくは、従来製品と同等な成形加工性、物性を維持しつつ、原料の化石燃料由来ポリプロピレンの一部をバイオマス由来ポリエチレンに置き換えた樹脂製多層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂製品の原料に、環境への配慮が必要となってきている。再生可能な有機資源を原料にして製造するバイオマス由来プラスチックは、カーボンニュートラルの観点から、地球温暖化防止に貢献できると期待され、化石燃料由来プラスチックを少しでも代替しようという動きがでている。例えば、原料の化石燃料由来ポリエチレンの一部をバイオマス由来ポリエチレンに置き換えたポリオレフィン樹脂フィルムが存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(以下、PE)の他に、ポリプロピレン(以下、PP)が多用されている。しかし、化石燃料由来PPを、バイオマス由来PPに置き換えるのは、バイオマス由来PPが普及していない現在のところ、現実的でない。そこで、化石燃料由来PPをバイオマス由来PEに置き換えようとしても、PPとPEでは、同じオレフィン系のプラスチックでも、その加工性や物性が異なるという問題が存在する。
本発明の目的は、従来製品と同等な成形加工性、物性を維持しつつ、化石燃料由来PPの一部を、バイオマス由来PEに置き換えた、樹脂製多層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために、種々検討の結果、バイオマス由来PE、その混合量、シートの厚さについて規定することで、従来製品と同等の成形加工性、物性を維持しつつ、化石燃料由来PPの一部をバイオマス由来PEに置き換えできることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
1.樹脂層が積層された樹脂製多層シートであって、
該樹脂製多層シートの厚さは250~500μmで、
該樹脂製多層シートの両表面層は化石燃料由来ポリプロピレンを主成分とする樹脂層で、中間層のうち、少なくとも1層はガスバリア性のある樹脂層で、少なくとも他の1層は化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンを混合した樹脂を主成分とする樹脂層であり、
該バイオマス由来ポリエチレンの密度は0.94~0.97g/cm3で、
該他の1層の重量中、化石燃料由来ポリプロピレンが60~90wt%、バイオマス由来ポリエチレンが10~30wt%で、
樹脂シート全体に対する化石燃料由来ポリプロピレンの重量%が60~90wt%で、バイオマス由来ポリエチレンの重量%が10~30wt%である、樹脂製多層シート。
2.化石燃料由来ポリプロピレンのメルトフローレートが0.3~2.0g/10min(230℃)で、バイオマス由来ポリエチレンのメルトフローレートが0.3~10.0g/10min(190℃)である、前記1の樹脂製多層シート。
3.バイオマス由来ポリエチレンの密度が0.950~0.965g/cm3で、
他の1層の重量中、化石燃料由来ポリプロピレンが60~85wt%、バイオマス由来ポリエチレンが15~25wt%で、
樹脂シート全体に対する化石燃料由来ポリプロピレンの重量%が60~90wt%で、バイオマス由来ポリエチレンの重量%が10~20wt%で、
化石燃料由来ポリプロピレンのメルトフローレートが0.3~1.0g/10min(230℃)、バイオマス由来ポリエチレンのメルトフローレートが0.3~2.0g/10min(190℃)である、前記2の樹脂製多層シート。
4.(1)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層、(2)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合物樹脂層、(3)接着層、(4)エチレンビニルアルコール共重合体樹脂層、(5)接着層、(6)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合物樹脂層、(7)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層、をこの順に積層した樹脂製多層シートであって、
その厚さが、(1)(7)は20~50μm、(2)(6)は70~210μm、(4)は5~15μmである、前記3の樹脂製多層シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来製品と同等な成形加工性、物性を維持しつつ、化石燃料由来樹脂使用量を大幅に減らした、樹脂製多層シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】食品容器に軽度の凹みが生じた状態を示した。
【
図2】食品容器に中度の凹みが生じた状態を示した。
【
図3】食品容器に重度の凹みが生じた状態を示した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂製多層シートは、真空成形、圧空成形など二次成形に供されるのに好適な成形加工用樹脂製多層シートである。
【0009】
1.樹脂製多層シートの厚さと層構成
本発明の樹脂製多層シートは、複数の樹脂層が積層されたシートで、シートの厚さは、好ましくは250~500μmで、より好ましくは250~420μmである。シートの厚さは、シートの状態で測定したときの厚さである。二次成形の後だと、厚さにムラが生じる可能性があるからである。
本発明の樹脂製多層シートの樹脂層は、両表面層と、その間の中間層からなる。両表面層は、化石燃料由来ポリプロピレンを主成分とする樹脂層である。中間層は2層以上で、ガスバリア性の樹脂層、化石燃料由来PPとバイオマス由来PEを混合した樹脂層(以下、混合樹脂層と記載することもある)、を少なくとも1層ずつ有する。中間層は、ガスバリア性樹脂層とそれを挟む2層の混合樹脂層からなるとより好ましい。また、親和性の低い樹脂層を張り合わせるときなど、必要に応じて、各層の間に接着層を設けてもよい。
シートの厚さを上記範囲の中で厚くするときは、混合樹脂層の割合が高くなるように、厚くするのがより好ましい。
【0010】
2.化石燃料由来ポリプロピレン(PP)
本発明の樹脂製多層シートは、両表面層は化石燃料由来PPを主成分とし、混合樹脂層には化石燃料由来PPが混合されている。化石燃料由来PPを主成分とするとは、化石燃料由来PPを主な原材料とするということで、当然ながら、少量の着色剤などが含まれてもよい(以下、それぞれの樹脂層で「主成分」というときは同様)。
化石燃料とは、石炭,石油,天然ガスなど過去の植物や動物の遺骸が変化して生成した燃料で、化石燃料由来PPとは、これらから、化学的、または生物学的に、合成されたPPである。
本発明のPPは、ホモポリマーであるホモPP、エチレンまたはブテン-1を1~7重量%含むランダムコポリマーであるランダムPP、エチレンプロピレンゴム成分を20重量%以下含むブロックPPのいずれでもよいが、より好ましいのはブロックPPである。
また、二次成形性を考慮すると母材であるPPのMFRは0.3~2.0g/10min(230℃)であるとより好ましく、0.3~1.0g/10min(230℃)であるとさらに好ましく、0.3~0.6g/10min(230℃)であると特に好ましい。
【0011】
3.ガスバリア性のある樹脂層
本発明の樹脂製多層シートは、食品包装材としての使用を想定しており、ガスバリア性のある樹脂層を有する。ガスバリア性のある樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(以下、EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などが挙げられ、ガスバリア性のある樹脂層とはこれらを主成分とする樹脂層である。
【0012】
4.化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンを混合した樹脂層
本発明の樹脂製多層シートは、化石燃料由来PPとバイオマス由来PEを混合した樹脂層を有する。化石燃料由来PPは化石燃料由来ポリプロピレン(PP)の項の記載と同様である。PPは、ホモPP、ランダムPP、ブロックPPいずれも許容されるが、当然ながら割合や重量%を計算するときは、モノマーとしてエチレンが混ざっていても、ランダムPP、ブロックPP全体の重量をPPの重量として計算する。
バイオマス由来PEとは、再生可能な有機資源由来の物質を含む原料より化学的または生物学的に合成することにより得られたPEのことである。
混合した樹脂を主成分とするので、着色剤、ゲル化防止剤など少量の添加物が混ざってもよい。
バイオマス由来PEは、好ましくは密度が0.94~0.97g/cm3の高密度ポリエチレン(以下、HDPE)、より好ましくは0.950~0.965g/cm3のHDPEである。さらに、メルトフローレートは、好ましくは0.3~10.0g/10minで、より好ましくは、0.3~5.0g/10min、さらに好ましくは0.3~2.0g/10min、特に好ましくは0.3~1.0g/10minである。メルトフローレートは、押出プラストメーターによる熱可塑性樹脂のメルトフローレートの標準試験法ASTM D1238で測定したときの値である。温度は190℃、荷重は2.16kg重として測定する。
【0013】
5.バイオマス由来PEの混合割合
「他の1層」の重量中、化石燃料由来PPが60~90wt%かつバイオマス由来PEが10~30wt%であれば好ましく、化石燃料由来PP60~85wt%かつバイオマス由来PE15~25wt%であればより好ましく、化石燃料由来PP60~80wt%かつバイオマス由来PE20~24wt%であればさらに好ましい。化石燃料由来PPとバイオマス由来PEを合わせたwt%は80~95wt%がより好ましい。
樹脂シート全体に対しては、化石燃料由来PPが60~90wt%かつバイオマス由来PEが10~30wt%であれば好ましく、化石燃料由来PPが60~90wt%かつバイオマス由来PEが10~20wt%であればより好ましく、化石燃料由来PPが60~87wt%かつバイオマス由来PEが10~17wt%であればさらに好ましい。化石燃料由来PPとバイオマス由来PEを合わせたwt%は80~95wt%がより好ましい。
PEの混合割合が高すぎると、分散性が低下し、硬さすなわち弾性率が低下するなど物性が変化し、さらに外観不良を引き起こす可能性もあり、製品としての要求特性をみたせなくなる。PEの混合割合が低すぎると、製品のバイオマス度を上げる目的を果たせなくなる。また本発明の母材となる樹脂はPPであり、要求特性を維持するために、PPが一定割合以上含まれている必要がある。
各樹脂の混合割合を示す重量%は、製造時に混合した重量から計算される理論値とする。当然、端材やリサイクル品の粉砕回収物を原料に使用するときはその中の、化石燃料由来PP、バイオマス由来PEなど各成分を計算に含める。
【0014】
6.接着層
親和性の低い樹脂層を張り合わせるときなど、各層の間に接着層を設けてもよい。接着層は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等ポリオレフィンを主成分とした樹脂を使えばよい。
【0015】
7.層構成の例
本発明の積層された層の並びは、特に好ましくは、(1)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層、(2)化石燃料由来PPとバイオマス由来PEの混合物樹脂層、(3)接着層、(4)エチレンビニルアルコール共重合体樹脂層、(5)接着層、(6)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合樹脂層、(7)化石燃料由来PP樹脂層、の並びである。
各層の厚さは、より好ましくは、(1)(7)は20~50μm、(2)(6)は70~210μm、(4)は5~15μmで、さらに好ましくは、(1)(7)は20~30μm、(2)(6)は90~110μm、(4)は5~15μm、である。接着層の厚さに特に制限はないが特に好ましくは5~15μmである。各層の厚さは2次加工前の厚さとする。
【0016】
8(1)本発明の樹脂製多層シートの製造方法
本発明の樹脂製多層シートの製造は、押出成形やカレンダー成形で行うことが出来る。
押出成形であれば、共押出多層Tダイ法である、ダイスの手前で樹脂を合流させるフィードブロック法や、Tダイの吐き出し口付近で樹脂合流させるマルチマニホールドで製造することができる。ダイス内で、多層シートの全ての層を一体化させ、吐出口から一枚のシート状に押し出し、冷却ロールや冷却槽を通して固化させ、シートを巻き取って、本発明の樹脂製多層シートを製造することができる。
カレンダー成形は、ロールの間で樹脂を圧延してシートを製造する方法である。ロールの配置が異なることにより、直線型3本ロールタイプ、逆Lタイプ、Zタイプ等があるが、どのタイプのものを用いてもよい。
【0017】
(2)本発明の樹脂製多層シートの2次成形加工
製造したシートを、真空成形、圧空成形などで、2次加工し、例えば、食品容器とすることができる。
【0018】
9.製造されたシートの物性と加工性
シートの弾性率は700~1800MPaがより好ましい。
【実施例0019】
実施例1 本発明の樹脂製多層シートの製造、及び当該シートを用いた食品容器の製造
(1)シートの製造
(I)原材料
原材料として以下を用いた
・PP:ブロックPP、MFR0.5g/10min、密度0.90g/cm3
・PE:バイオマス由来PE(HDPE):MFR0.34g/10min、密度0.961g/cm3
(II)製造方法
(i)各層を構成する樹脂の準備
・表面層:原材料で示したPPが100wt%となるようにした
・混合樹脂層:原材料で示したPP69wt%、バイオマス由来PE22wt%、その他のゲル化防止剤と着色剤が合わせて9wt%となるように混合した。混合はニーダー混練機で行った。
・接着層:PPベースの接着樹脂を使用した。
・ガスバリア層:EVOHを使用した。
(ii)シートの製造
(i)で準備した各層の樹脂を使用して、押出成形の一種である、共押出多層Tダイ法のフィードブロック法で、製造した。樹脂層の並びは、次の通りとした。「(1)化石燃料由来ポリプロピレン樹脂層(表面層)」、(2)化石燃料由来PPとバイオマス由来PEの混合物樹脂層、(3)接着層、(4)エチレンビニルアルコール共重合体樹脂層(ガスバリア層)、(5)接着層、(6)化石燃料由来ポリプロピレンとバイオマス由来ポリエチレンの混合樹脂層、(7)化石燃料由来PP樹脂層(表面層)」。シートの厚さは270μmとなるようにした。
(III)
混合樹脂層の原材料に、本製造方法で製造した樹脂製多層シートの端材やリサイクル品を粉砕・混合したものも製造した。
(2)2次成形加工による食品容器の製造
(1)(I)(II)で製造したシートを、真空/圧空成形により、成形して、食品容器を製造した。
【0020】
実施例2 本発明の樹脂製多層シートの性能評価
(1)サンプルについて
(I)実験例サンプル
バイオマス由来ポリエチレンとして0.956g/cm
3のHDPEを用い、他は実施例1と同様にして、本発明の樹脂製多層シートを製造した。厚さ280μmの場合は、混合樹脂層の厚みを5μmずつ増加させたものを用いた。これを2次成形加工して、実験例の食品容器を製造した。
(II)比較例サンプル
バイオマス由来PEを化石燃料由来PPに置き換えて、他は実施例1とほぼ同様にして、比較例の容器を製造した。
(2)性能評価
(I)未使用容器の凹み状態確認
(i)方法
実験例サンプルと比較例サンプルの未使用容器を、約200kmトラックによりパレット輸送し、輸送後の凹み状態を調べた。凹み状態は以下の3段階に分けて評価し、結果を比較した。
(a)軽度(
図1):大きさに関わらず、凹み内に折れ目がなく、充填時の熱、圧力で変形が戻ると考えられる凹み
(b)中度(
図2):数mm程度の大きさで、凹みに折れ目があり、充填時の熱、圧力で変形が戻らないと考えられ、製品で余り目立たないと考えられるレベルの凹み
(c)重度(
図3):概ね10mmを超える大きさ、または凹みが深く、凹みに折れ目があり、充填時の熱、圧力で変形が戻らないと考えられ、製品でも目立つと考えられるレベルの凹み
(ii)結果及び考察
それぞれの程度の凹み発生率を[表1]に示した。実験例(厚さ280μm)、実験例(厚さ270μm)とも、製品状態で目立つと考えられる重度の凹み発生率が比較例(厚さ280μm)以下であるため、問題とならないと考えられる
【0021】
【表1】
(II)その他の性能評価
実験例サンプル(厚さ270μm、280μm)について試験を行い評価した。保存試験は食品が入った状態で評価した。
(i)ライン適性
・270、280μm品とも、容器供給、充填、搬送(空容器、充填後容器)適性、シール性に問題なし。
(ii)低温時容器割れ性
・270、280μm品とも、比較例280μmと同等であり問題なし
(iii)単体落下リスク評価試験
・270μm品、280μm品とも、比較例280μmと同等であり問題なし
(iv)輸送試験
・270、280μm品とも、密封性に影響する容器割れ、シール後退等はみられず問題なし
(v)保存試験:対象製品 市販のカレールウ製品
・270、280μm容器とも保存性に問題なく、また、保香性、耐デラミ性、耐油性も問題なし
本発明によれば、従来製品と同等な成形加工性、物性を有する、バイオマス度の高い樹脂製多層シートを製造することが可能となる。環境に配慮した樹脂、プラスチック製品の需要はこれからも伸びると考えられ、樹脂・プラスチック業界に有用である。