(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074319
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】カメラ
(51)【国際特許分類】
A61B 1/04 20060101AFI20240524BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61B1/04 530
G02B23/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185386
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平尾 卓也
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】森 謙二
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040AA00
2H040BA00
2H040CA23
2H040DA12
2H040DA18
2H040GA02
4C161CC06
4C161FF26
4C161FF40
4C161JJ12
4C161NN01
4C161PP08
(57)【要約】
【課題】静電気対策を備えたカメラを提供する。
【解決手段】カメラ1は、対物レンズ2と、対物レンズ2に近接し、対物レンズ2を通った光を受光する前面部3aと、前面部3aの反対側を向いた後面部3bと、前面部3aおよび後面部3bを繋ぐ側面部3cと、を有する撮像素子3と、を備える。また、撮像素子3を内部に収容し、導体を有するチューブ4を備える。そして、撮像素子3とチューブ4との間に位置し、撮像素子3の側面部3cを覆う絶縁性の保護部材6を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、
前記対物レンズに近接し、前記対物レンズを通った光を受光する前面部と、前記前面部の反対側を向いた後面部と、前記前面部および前記後面部を繋ぐ側面部と、を有する撮像素子と、
前記撮像素子を内部に収容し、導体を有するチューブと、
前記撮像素子と前記チューブとの間に位置し、前記撮像素子の側面部を覆う絶縁性の保護部材と、
を備えるカメラ。
【請求項2】
前記チューブは、前記チューブの内面を構成する内層と、前記チューブの外面を構成する外層と、前記内層および前記外層の間に位置する中間層と、を有し、
前記内層および前記外層は絶縁性であり、
前記中間層は導電性である、
請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記中間層は、金属製の線材が螺旋状に巻回された筒状のコイル体、または、金属製の線材が交差するように編組された筒状の編組体、の少なくとも一方を有する、
請求項2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記チューブと前記保護部材との間は、絶縁性の接着剤が充填されている、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のカメラ。
【請求項5】
前記保護部材の体積抵抗率は、前記接着剤の体積抵抗率よりも高い、
請求項4に記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、人体の患部を観察するための内視鏡が広く使用されている。一般的な内視鏡は、体内に挿入されるシャフト、操作用のハンドルおよびカメラを備えている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラには、人体の患部を撮像するための撮像素子が設けられている。この場合、医師等の手技者が内視鏡を把持した際に発生する静電気によって、撮像素子が破損しないための静電気対策が必要となる。
【0005】
本開示は上述の事情を鑑みてなされたものであり、静電気対策を備えたカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のカメラは、対物レンズと、対物レンズに近接し、対物レンズを通った光を受光する前面部と、前面部の反対側を向いた後面部と、前面部および後面部を繋ぐ側面部と、を有する撮像素子と、を備える。また、撮像素子を内部に収容し、導体を有するチューブを備える。そして、撮像素子とチューブとの間に位置し、撮像素子の側面部を覆う絶縁性の保護部材を備える。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本開示の一態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示のカメラは、静電気対策を備える。よって、静電気によって撮像素子が破損するおそれが低い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のカメラを先端面の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、本開示のカメラ1を先端面の一例を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
図1および
図2に示すように、本開示のカメラ1は、対物レンズ2、撮像素子3およびチューブ4を備える。
【0012】
対物レンズ2は、被写体(例えば、人体の患部)から反射した光を取り込む。対物レンズ2は、1枚のレンズによって構成されていてもよいし、複数枚の屈折率が異なるレンズが組み合わさって構成されていてもよい。
【0013】
撮像素子3は、対物レンズ2を通った光を電子信号に変換する電子部品である。撮像素子3は、対物レンズ2に近接して配置されている。撮像素子3と対物レンズ2との最短距離は、例えば5mm以下である。なお、撮像素子3と対物レンズ2とは、直に接していても構わない。
【0014】
撮像素子3は、対物レンズ2を通った光を受光する前面部3aと、前面部3aの反対側を向いた後面部3bと、前面部3aおよび後面部3bを繋ぐ側面部3cと、を有する。撮像素子3としては、例えば、CMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ等が挙げられる。
【0015】
撮像素子3の後面部3bは、不図示の導線に電気的に接続され、体外の電源またはコンピュータ等に接続されていてもよい。導線を通じて、電源から撮像素子3への電力の供給、体外のコンピュータの制御装置から撮像素子3への制御信号の伝送、撮像素子3によって撮像された画像信号の体外のコンピュータまたはモニタ等への伝送等が行われてもよい。なお、体外のコンピュータ等と撮像素子3との間の制御信号および画像信号の伝送は、導線を介さずに無線で行われてもよい。
【0016】
チューブ4は、撮像素子3を内部に収容する。チューブ4は、内部に撮像素子3を収容できるならば、どのような形状であっても構わない。一例として、チューブ4は、円筒形状である。なお、チューブ4は、撮像素子3に加えて対物レンズ2も内部に収容していてもよい。
【0017】
チューブ4は、導体を有する。ここで、導体を有するとは、チューブ4全体が導体である必要は必ずしもなく、チューブ4の少なくとも一部が導体であればよい。具体的には、室温(20℃)での体積抵抗率が100μΩcm以下の部位をチューブ4が有していればよい。このように、チューブ4が導体を有することで、医師等の手技者とカメラ1との接触により静電気が発生したとしても、チューブ4を介して静電気を外部に逃がすことができる。また、チューブ4は、撮像素子3を内部に収容する形状(例えば、円筒形状)であることから、チューブ4の中心軸周り360度の方向から飛来する静電気から撮像素子3を保護することができる。よって、本開示のカメラ1は、静電気により撮像素子3が破損するおそれが低い。
【0018】
チューブ4は、チューブ4の内面を構成する内層と、チューブの外面を構成する外層と、内層および外層の間に位置する中間層と、を有していてもよい。そして、内層および外層は絶縁性であって、中間層は導電性であってもよい。ここで、内層および外層が絶縁性であるとは、内層および外層の室温(20℃)での体積抵抗率が1GΩcm以上であることをいう。一方、中間層が導電性であるとは、中間層の室温(20℃)での体積抵抗率が100μΩcm以下であることをいう。以下の記載において、「絶縁性」または「導電性」の用語が用いられる場合には、同様の定義とする。このように、中間層が導電性であれば、中間層が静電気を外部に逃がす役割を果たす。また、外層が絶縁性であれば、漏洩電流が発生した場合に、中間層を介して漏洩電流が手技者へ流入するおそれを低くできる。また、内層が絶縁性であれば、中間層を介して外部に流れる途中の静電気が、撮像素子3へ短絡して流れるおそれを低くできる。
【0019】
内層、中間層および外層の体積抵抗率は、抵抗測定器を用いて測定すればよい。
【0020】
内層と中間層とは、直に接していなくてもよい。例えば、内層と中間層との間に他の層が介在していてもよい。同様に、外層と中間層とは、直に接していなくてもよい。例えば、外層と中間層との間に他の層が介在していてもよい。
【0021】
チューブ4は、本開示のカメラ1の先端から基端まで延びていてもよいし、途中から別部材に接合されていてもよい。また、チューブ4の中間層は、接地により静電気を逃がすための接地部材に電気的に接続されていてもよい。接地部材としては、例えば、金属製のワイヤー等が挙げられる。なお、チューブ4自体が接地部材の役割を果たしてもよい。
【0022】
チューブ4が円筒形状である場合、チューブ4の外径は、例えば0.75mm以上1.1mm以下である。チューブ4の内径は、例えば0.65mm以上1.0mm以下である。内層の厚みは、例えば0.015mm以上0.025mm以下である。中間層の厚みは、例えば0.015mm以上0.025mm以下である。外層の厚みは、例えば0.008mm以上0.012mm以下である。
【0023】
内層は、絶縁性であればよいが、低摩擦性の材料で構成されていてもよい。ここで、低摩擦性とは、動摩擦係数が0.09以下であることをいう。低摩擦性の材料とは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等の樹脂である。内層が低摩擦性の材料で構成されているならば、カメラ1の組み立て時において、対物レンズ2、撮像素子3および光ファイバー5等をチューブ4内に円滑に挿入でき、破損のおそれが低くなる。
【0024】
外層は、絶縁性であればよいが、可撓性および生体適合性を有する材料で構成されていてもよい。可撓性および生体適合性を有する材料とは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂(PEBAX(登録商標))等の樹脂である。
【0025】
中間層は、導電性であればよいが、金属製の線材が螺旋状に巻回された筒状のコイル体、または、金属製の線材が交差するように編組された筒状の編組体、の少なくとも一方を有していてもよい。中間層がコイル体または編組体を有しているならば、カメラ1が湾曲したとしても、折損またはキンクするおそれが低い。よって、カメラ1を各方向に自在に湾曲させることができる。
【0026】
コイル体は、例えば、1本の線材が所定のピッチで螺旋状に巻回されて構成される。編組体は、例えば、右回り方向に所定のピッチで螺旋状に編み込まれた第1線材と、左回り方向に所定のピッチで螺旋状に編み込まれた第2線材とを含み、第1線材と第2線材とが互いに交差するように編組されて構成される。
【0027】
コイル体および編組体を構成する線材は、どのような形状であっても構わない。線材は、例えば、断面形状が円形状の丸線または断面形状が矩形状の角線等である。なお、チューブ4の薄肉化の観点からは、断面形状が平角状(偏平した矩形状)の平角線を線材として用いてもよい。この場合、線材としての平角線は、その厚み方向(断面の短辺の方向)がチューブ4の内外径方向に一致するように中間層に配置される。
【0028】
コイル体および編組体を構成する線材は、金属であればよいが、生体適合性を有する材料で構成されていてもよい。生体適合性を有する材料とは、例えば、ステンレス鋼、コバルト合金、ニッケルチタン合金またはタングステン等の金属である。
【0029】
本開示のカメラ1は、撮像素子3とチューブ4との間に位置し、撮像素子3の側面部3cを覆う絶縁性の保護部材6を備えている。カメラ1を小型化する場合、カメラ1の外径となるチューブ4の外径を小さくする必要がある。この場合、必然的にチューブ4の内径も小さくなり、チューブ4と撮像素子3との間隔が非常に狭くなる。この場合でも、保護部材6の存在により、撮像素子3とチューブ4とが直に接することはない。よって、チューブ4を介して外部に流れる途中の静電気が、撮像素子3へ短絡して流れることが絶縁性の保護部材6により防止される。このように、本開示のカメラ1は、静電気によって撮像素子3が破損しないための効果的な静電気対策を備える。なお、本開示のカメラ1の構成を採用することで、チューブ4の外径を1.1mm以下まで小さくすることができ、カメラ1の小型化を実現できる。
【0030】
保護部材6の厚みは、カメラ1の小型化の観点からは、例えば0.008mm以上0.012mm以下である。保護部材6を構成する材料は、例えば、(PET)またはポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂(PEBAX(登録商標))等の樹脂である。
【0031】
本開示のカメラ1は、対物レンズ2よりも先端側に位置するカバーガラス7を備えていてもよい。カバーガラス7は、被写体とカメラ1との接触の際に、対物レンズ2等を保護するための部材である。なお、カバーガラス7と対物レンズ2とは直に接していてもよい。また、カバーガラス7は、カメラ1の先端面の少なくとも一部を構成するように、チューブ4内に位置していてもよい。
【0032】
本開示のカメラ1は、少なくとも先端部がチューブ4内に位置し、チューブ4の長手方向に沿って延在する、1本以上の光ファイバー5を備えていてもよい。光ファイバー5は、被写体に光を照射するための部材である。光ファイバー5の基端側は体外の光源に接続され、この光源からの光が光ファイバー5の先端面から照射され、撮像素子3の撮像範囲を照明し、被写体の鮮明な画像が得られる。
図1には、光ファイバー5の本数が16本である例を図示している。具体的には、20本の光ファイバー5は、撮像素子3の側面部3cを取り囲むようして、チューブ4と保護部材6との間に配置されている。なお、光ファイバー5の先端面は、カメラ1の先端面の一部を構成していてもよい。
【0033】
本開示のカメラ1において、チューブ4と保護部材6との間は、絶縁性の接着剤8で充填されていてもよい。このような構成を満足するならば、接着剤8により保護部材6を介して撮像素子3を強固に固定することができる。また、接着剤8が絶縁性であることから、チューブ4を介して外部に流れる途中の静電気が、撮像素子3へ短絡して流れることを効果的に防止できる。
【0034】
ここで、保護部材6の体積抵抗率は、接着剤8の体積抵抗率よりも高くてもよい。このような構成を満足するならば、チューブ4から撮像素子3に近づく程絶縁性が高くなることから、撮像素子3へ静電気が流れることを効果的に防止できる。なお、静電気保護の観点から、保護部材6の体積抵抗率は、接着剤8の体積抵抗率よりも1万倍以上高くてもよい。保護部材6および接着剤8の体積抵抗率は、上述した内層、中間層および外層の体積抵抗率の測定方法と同様に、抵抗測定器を用いて測定すればよい。
【0035】
接着剤8としては、紫外線/可視光硬化型アクリル系、シアノアクリレート系、または紫外線/可視光硬化型シリコン系の反応系接着剤、並びに加熱により溶融し冷却により硬化する熱可塑性樹脂(溶融樹脂)等を使用できる。なお、接着剤8の成分および保護部材6を構成する材料の組み合わせにより、接着剤8および保護部材6の体積抵抗率の値を任意のものに設定することができる。
【0036】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0037】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
対物レンズ(2)と、
対物レンズ(2)に近接し、対物レンズ(2)を通った光を受光する前面部(3a)と、前面部(3a)の反対側を向いた後面部(3b)と、前面部(3a)および後面部(3b)を繋ぐ側面部(3c)と、を有する撮像素子(3)と、
撮像素子(3)を内部に収容し、導体を有するチューブ(4)と、
撮像素子(3)とチューブ(4)との間に位置し、撮像素子(3)の側面部(3c)を覆う絶縁性の保護部材(6)と、
を備えるカメラ(1)。
[第2項目]
チューブ(4)は、チューブ(4)の内面を構成する内層と、チューブ(4)の外面を構成する外層と、内層および外層の間に位置する中間層と、を有し、
内層および外層は絶縁性であり、
中間層は導電性である、
第1項目に記載のカメラ(1)。
[第3項目]
中間層は、金属製の線材が螺旋状に巻回された筒状のコイル体、または、金属製の線材が交差するように編組された筒状の編組体、の少なくとも一方を有する、
第2項目に記載のカメラ(1)。
[第4項目]
チューブ(4)と保護部材(6)との間は、絶縁性の接着剤(8)が充填されている、
第1項目ないし第3項目のいずれかに記載のカメラ。
[第5項目]
保護部材(6)の体積抵抗率は、接着剤(8)の体積抵抗率よりも高い、
第4項目に記載のカメラ。
【符号の説明】
【0038】
1:カメラ
2:対物レンズ
3:撮像素子
3a:前面部
3b:後面部
3c:側面部
4:チューブ
5:光ファイバー
6:保護部材
7:カバーガラス
8:接着剤