(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007432
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】冷却廃液回収装置、ジョイントユニットおよびジョイント構造
(51)【国際特許分類】
B28D 7/02 20060101AFI20240110BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240110BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240110BHJP
B28D 1/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B28D7/02
B23Q11/00 L
B23Q11/10 E
B28D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105117
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022104961
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506162828
【氏名又は名称】FSテクニカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正吾
【テーマコード(参考)】
3C011
3C069
【Fターム(参考)】
3C011EE03
3C011EE08
3C011EE09
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BC01
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA06
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】冷却廃液を適切に回収することができると共に、簡単且つ適切に廃棄処理することができる冷却廃液回収装置等を提供する。
【解決手段】気密性を有する回収タンク31と、回収タンク31に、冷却廃液を回収するための吸引力を作用させる吸引ファン33と、回収タンク31に収容され、冷却廃液を吸引し貯留すると共に使い捨て可能に構成された廃液容器35と、冷却廃液を穿孔箇所Hから廃液容器35に導く廃液チューブ28と、廃液チューブ28と廃液容器35との間に介設され、冷却廃液を導く内部流路83,84および廃液容器35を回収タンク内に開放する開放流路85を有するジョイントユニット36と、を備えたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を吸引・回収する冷却廃液回収装置であって、
気密性を有する回収タンクと、
前記回収タンクに、前記冷却廃液を回収するための吸引力を作用させるエアー吸引機構と、
前記回収タンクに収容され、前記冷却廃液を吸引し貯留すると共に使い捨て可能に構成された廃液容器と、
前記冷却廃液を前記穿孔箇所から前記廃液容器に導く廃液チューブと、
前記廃液チューブと前記廃液容器の上部に設けた容器口との間に介設され、前記冷却廃液を導く内部流路および前記廃液容器の上部を前記回収タンク内に開放する開放流路を有するジョイントユニットと、を備えたことを特徴とする冷却廃液回収装置。
【請求項2】
前記廃液容器は、給水袋型の水タンクで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項3】
前記ジョイントユニットは、
前記回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、前記廃液チューブが接続されるチューブ接続部と、
前記チューブ接続部に連結され、前記容器口を介して前記廃液容器が接続される容器接続部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項4】
前記容器接続部は、前記内部流路を構成すると共に下流側が前記容器口の位置から前記廃液容器の内部に突出するパイプ部材と、前記容器口が接続され、前記パイプ部材の外周面との間に前記開放流路を構成する容器口接続部材と、を有していることを特徴とする請求項3に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項5】
前記チューブ接続部は、水平方向に延在し、
前記チューブ接続部に接続された前記パイプ部材は、鉛直方向下方に延在していることを特徴とする請求項4に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項6】
前記チューブ接続部は、水平方向に延在し、
前記チューブ接続部に接続された前記パイプ部材は、水平方向に延在し、
前記パイプ部材の下流端部には、下向きに湾曲する湾曲部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項7】
前記ドリルビットに冷却液を供給する冷却液供給機構を、更に備え、
前記冷却液供給機構は、前記ドリルビットに連なる供給チューブと、前記供給チューブを介して前記ドリルビットに冷却液を供給する冷却液ポンプと、前記冷却液ポンプに接続された冷却液タンクと、を有し、
前記廃液容器が収容された前記回収タンクが前記冷却液タンクを兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項8】
前記廃液容器が、前記冷却廃液を濾過して前記冷却液を得る濾過材で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の冷却廃液回収装置。
【請求項9】
エアー吸引により回収タンク内を負圧にし、廃液チューブを介して、ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を前記回収タンク内に吸引し貯留する冷却廃液回収装置にあって、前記回収タンクに収容した使い捨て可能な廃液容器に、前記冷却廃液を直接吸引し貯留すべく、前記廃液チューブと前記廃液容器の上部に設けた容器口との間に介設されるジョイントユニットであって、
前記回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、前記廃液チューブが接続されるチューブ接続部と、
前記チューブ接続部に連結され、前記容器口を介して前記廃液容器が接続される容器接続部と、を備え、
前記チューブ接続部および前記容器接続部には、前記廃液チューブの前記冷却廃液を前記廃液容器に導く内部流路が設けられ、
前記容器接続部には、前記廃液容器の上部を前記回収タンク内に開放する開放流路が設けられていることを特徴とするジョイントユニット。
【請求項10】
エアー吸引により回収タンク内を負圧にし、廃液チューブを介して、ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を前記回収タンク内に吸引し貯留する冷却廃液回収装置にあって、前記回収タンクに収容した使い捨て可能な廃液容器に、前記冷却廃液を直接吸引し貯留するための、前記廃液チューブおよび前記廃液容器間に構成されるジョイント構造であって、
前記回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、一方の端部に前記廃液チューブが接続され、他方の端部に前記廃液容器の上部に設けられた容器口に接続された接続継ぎ手と、
前記廃液容器の上部に形成され、前記廃液容器の上部を前記回収タンク内に開放する開放開口と、を備えたことを特徴とするジョイント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を吸引・回収する冷却廃液回収装置、ジョイントユニットおよびジョイント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却廃液回収装置として、冷却剤供給装置と一体に形成された冷却剤回収装置が知られている(特許文献1参照)。
この冷却剤回収装置は、上部に機械室を有する廃液タンクと、機械室に設けられ廃液タンク内を負圧にするファンと、廃液タンクに接続した廃液チューブと、を備えている。廃液チューブの上流端は、ダイヤモンドビットを囲繞する吸引パッドに接続され、下流端は、廃液タンクの上部に接続されている。
ファンを駆動すると廃液タンク内が負圧になり、廃液チューブに吸引力が作用して、コンクリートの切削粉や切削屑が混合した使用済みの冷却剤(冷却廃液)が、廃液チューブを介して廃液タンク内に流入し回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の冷却剤回収装置で回収した汚泥(切削屑)混じりの冷却剤(冷却廃液)は、産業廃棄物として廃棄処理されるが、特にアスベストが混入した冷却廃液は、これを「石綿含有産業廃棄物」として適切に処理する必要がある。かかる場合に、廃液タンク内の汚泥混じりの冷却廃液を、丈夫な密閉容器や密閉袋に移して廃棄処理する必要がある。加えて、廃液タンクを洗浄した後の廃液も同様の処理が必要となり、冷却廃液の廃棄処理が煩雑になる問題があった。
本発明は、冷却廃液を適切に回収することができると共に、簡単且つ適切に廃棄処理することができる冷却廃液回収装置、ジョイントユニットおよびジョイント構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷却廃液回収装置は、ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を吸引・回収する冷却廃液回収装置であって、気密性を有する回収タンクと、回収タンクに、冷却廃液を回収するための吸引力を作用させるエアー吸引機構と、回収タンクに収容され、冷却廃液を吸引し貯留すると共に使い捨て可能に構成された廃液容器と、冷却廃液を穿孔箇所から廃液容器に導く廃液チューブと、廃液チューブと廃液容器の上部に設けた容器口との間に介設され、冷却廃液を導く内部流路および廃液容器の上部を回収タンク内に開放する開放流路を有するジョイントユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、エアー吸引機構により回収タンク内を負圧にすると、廃液チューブに冷却廃液を回収するための吸引力を作用し、冷却廃液が、廃液チューブを介して穿孔箇所から廃液容器に導かれる。すなわち、ジョイントユニットの開放流路により、回収タンクと併せて廃液容器も負圧となるため、冷却廃液は、廃液チューブからジョイントユニットの内部流路を通って廃液容器に直接吸引され貯留される。廃液容器が冷却廃液で満液となったら、ジョイントユニットから廃液容器を取り外し廃棄する(使い捨て)と共に、ジョイントユニットに新しい廃液容器をセットする。
この場合、回収タンク内の負圧を利用して、冷却廃液を廃液容器に吸引回収することができ、回収タンク内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器に貯留した状態で回収タンクから取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【0007】
この場合、廃液容器は、給水袋型の水タンクで構成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、安価で液漏れ等の無い丈夫な廃液容器を構成することができ、使い捨て容器としての適性を有することとなる。
【0009】
また、ジョイントユニットは、回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、廃液チューブが接続されるチューブ接続部と、チューブ接続部に連結され、容器口を介して廃液容器が接続される容器接続部と、を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ジョイントユニットを、回収タンクのタンク壁に取り付けておいて、チューブ接続部に廃液チューブを接続し、且つ容器接続部に容器口を介して廃液容器が接続されることで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。或いは、容器接続部に廃液容器を接続しておいてこれをタンク壁に取り付け、更にこれに廃液チューブを接続することで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。これにより、廃液容器に交換を簡単に行うことができる。
なお、満液となった廃液容器は、ジョイントユニットの容器接続部から取り外すが、その際、容器口を容器キャップで封止して廃棄とすることは、言うまでもない。
【0011】
この場合、容器接続部は、内部流路を構成すると共に下流側が容器口の位置から廃液容器の内部に突出するパイプ部材と、容器口が接続され、前記パイプ部材の外周面との間に前記開放流路を構成する容器口接続部材と、を有していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、廃液容器内に吸引力を作用させる開放流路と、冷却廃液を廃液容器に流入させるパイプ部材の開放端(下流端)とが、容器口廻りにおいて軸方向に位置ずれしている。このため、パイプ部材(内部流路)から吐出した冷却廃液が霧状になって開放流路に吸い込まれる(ショートサーキット)ことが無く、冷却廃液による回収タンク内の汚染を有効に防止することができる。
【0013】
この場合、チューブ接続部は、水平方向に延在し、チューブ接続部に接続されたパイプ部材は、鉛直方向下方に延在していることが好ましい。
【0014】
同様に、チューブ接続部は、水平方向に延在し、チューブ接続部に接続されたパイプ部材は、水平方向に延在し、パイプ部材の下流端部には、下向きに湾曲する湾曲部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、冷却廃液は、廃液容器内において下向きに吐出する。このため、吐出した冷却廃液は、吸引力の作用を受けても霧状に舞い上がり難く、開放流路に吸い込まれることがない。
【0016】
また、ドリルビットに冷却液を供給する冷却液供給機構を、更に備え、冷却液供給機構は、ドリルビットに連なる供給チューブと、供給チューブを介してドリルビットに冷却液を供給する冷却液ポンプと、冷却液ポンプに接続された冷却液タンクと、を有し、廃液容器が収容された回収タンクが冷却液タンクを兼ねていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、廃液容器が占める部分を除いた回収タンク内の空きスペースを冷却液タンクして利用することができ、冷却液供給機構を併設しても、全体としてコンパクトに構成することができる。回収タンクに冷却液を補充した初期状態では、空の廃液容器が冷却液上に浮いた状態となる。作業が進むと、冷却液が減少する一方、冷却廃液は増加する。その際、回収タンク内の冷却液の液位と廃液容器内の冷却廃液とは、同一の液位を維持し、廃液容器の下面が回収タンクの底面に着くまで、冷却液の液位は極端に下がることが無い。よって、回収タンクが冷却液タンクを兼ねる構造であっても、冷却液の供給機能が損なわれることがない。
【0018】
この場合、廃液容器が、冷却廃液を濾過して冷却液を得る濾過材で形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、冷却液の使用に伴って、廃液容器に回収した冷却廃液は、容器を形成する濾過材により濾過され冷却液として廃液容器の外側の回収タンク(冷却液タンク)に流入する。すなわち、冷却液循環型の冷却液供給機構を構成することができる。
【0020】
本発明のジョイントユニットは、エアー吸引により回収タンク内を負圧にし、廃液チューブを介して、ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を回収タンク内に吸引し貯留する冷却廃液回収装置にあって、回収タンクに収容した使い捨て可能な廃液容器に、冷却廃液を直接吸引し貯留すべく、廃液チューブと廃液容器の上部に設けた容器口との間に介設されるジョイントユニットであって、回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、廃液チューブが接続されるチューブ接続部と、チューブ接続部に連結され、容器口を介して廃液容器が接続される容器接続部と、を備え、チューブ接続部および容器接続部には、廃液チューブの冷却廃液を廃液容器に導く内部流路が設けられ、容器接続部には、廃液容器の上部を回収タンク内に開放する開放流路が設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ジョイントユニットを回収タンクのタンク壁に取り付けておいて、チューブ接続部に廃液チューブを接続し、且つ容器接続部に容器口を介して廃液容器が接続されることで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。或いは、容器接続部に廃液容器を接続しておいてこれをタンク壁に取り付け、更にこれに廃液チューブを接続することで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。
エアー吸引により回収タンク内が負圧になると、廃液チューブに冷却廃液を回収するための吸引力を作用し、冷却廃液が、廃液チューブを介して穿孔箇所から廃液容器に導かれる。すなわち、ジョイントユニットの開放流路により、回収タンクと併せて廃液容器も負圧となるため、冷却廃液は、廃液チューブからジョイントユニットの内部流路を通って廃液容器に直接吸引され貯留される。廃液容器が冷却廃液で満液となったら、ジョイントユニットから廃液容器を取り外し廃棄する(使い捨て)と共に、ジョイントユニットに新しい廃液容器をセットする。
これにより、回収タンク内の負圧を利用して、冷却廃液を廃液容器に直接吸引回収することができ、回収タンク内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器に貯留した状態で回収タンクから取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【0022】
本発明のジョイント構造は、エアー吸引により回収タンク内を負圧にし、廃液チューブを介して、ドリルビットの穿孔箇所から切削屑を含んだ冷却廃液を回収タンク内に吸引し貯留する冷却廃液回収装置にあって、回収タンクに収容した使い捨て可能な廃液容器に、冷却廃液を直接吸引し貯留するための、廃液チューブおよび廃液容器間に構成されるジョイント構造であって、回収タンクのタンク壁を貫通した状態で気密に取り付けられ、一方の端部に廃液チューブが接続され、他方の端部に廃液容器の上部に設けられた容器口に接続された接続継ぎ手と、廃液容器の上部に形成され、廃液容器の上部を回収タンク内に開放する開放開口と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、接続継ぎ手を回収タンクのタンク壁に取り付けておいて、その一方の端部に廃液チューブを接続し、且つ他方の端部に容器口を介して廃液容器が接続されることで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。或いは、接続継ぎ手に廃液容器を接続しておいてこれをタンク壁に取り付け、更にこれに廃液チューブを接続することで、廃液容器廻りのセッティングが完了する。
エアー吸引により回収タンク内が負圧になると、廃液チューブに冷却廃液を回収するための吸引力を作用し、冷却廃液が、廃液チューブを介して穿孔箇所から廃液容器に導かれる。すなわち、廃液容器の上部に形成した開放開口により、回収タンクと併せて廃液容器も負圧となるため、冷却廃液は、廃液チューブから接続継ぎ手を通って廃液容器に直接吸引され貯留される。廃液容器が冷却廃液で満液となったら、接続継ぎ手から廃液容器を取り外すと共に、開放開口をテーピング等により封止した後、廃棄する(使い捨て)。また、接続継ぎ手に新しい廃液容器をセットする。
これにより、回収タンク内の負圧を利用して、冷却廃液を廃液容器に吸引回収することができ、回収タンク内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器に貯留した状態で回収タンクから取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る穿孔システムの説明図である。
【
図3】第1実施形態に係るジョイントユニットの側面図である。
【
図4】第1実施形態に係るジョイントユニットの分解図である。
【
図5】第2実施形態に係る穿孔システムの説明図である。
【
図6】第2実施形態に係るジョイントユニットの側面図である。
【
図7】第2実施形態に係るジョイントユニットの分解図である。
【
図8】第3実施形態の穿孔システムにおけるジョイント構造の説明図である。
【
図9】第4実施形態に係る穿孔システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る冷却廃液回収装置、ジョイントユニットおよびジョイント構造を適用した穿孔システムについて説明する。この穿孔システムは、電動ドリルの先端にダイヤモンドビットを装着し、ダイヤモンドビットを介して冷却剤を供給しながら外壁等の壁体(コンクリート)に穿孔を行うと共に、粉塵(切削屑)を含む使用済みの冷却液(冷却廃液)を、使い捨ての廃液容器に回収するものである。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る穿孔システム10である。同図に示すように、穿孔システム10は、ダイヤモンドビット11(ドリルビット)により壁体に穿孔を行う穿孔装置12と、穿孔装置12による穿孔作業において、ダイヤモンドビット11の切り刃に冷却液を供給すると共に、切り刃(穿孔箇所H)から使用済みの冷却廃液を回収する冷却液供給・回収装置13と、を備えている。また、冷却液供給・回収装置13は、冷却液供給装置15(冷却液供給機構)と冷却廃液回収装置16とから成り、冷却液供給装置15の主要部は、冷却廃液回収装置16の内部に一体に組み込まれている。
【0027】
例えば、建物の外壁(コンクリート躯体)等にあと施工アンカー用の下穴を穿孔する場合、先ず穿孔装置12を駆動すると同時に冷却液供給・回収装置13を駆動する。これにより、回転するダイヤモンドビット11により穿孔が開始され、同時にダイヤモンドビット11の先端に冷却液供給装置15から冷却液が供給される。また、ダヤモンドビット11を冷却し、切削屑の混じった冷却廃液は、ダイヤモンドビット11の穿孔箇所Hから冷却廃液回収装置16に吸引・回収される。
【0028】
穿孔装置12は、ダイヤモンドビット11と、これを回転させる電動ドリル21と、ダイヤモンドビット11と電動ドリル21との間に介設された冷却液供給アタッチメント22と、冷却液供給アタッチメント22に取り付けられ、ダイヤモンドビット11による穿孔をガイドするガイドアタッチメント23と、を有している。
【0029】
冷却液供給装置15から供給された冷却液は、供給チューブ25を介して冷却液供給アタッチメント22に供給され、冷却液供給アタッチメント22からダイヤモンドビット11のビット内流路26を通って先端の切り刃に供給される。一方、ガイドアタッチメント23には、その先端部に突当てブロック27が設けられており、使用済みの冷却廃液は、廃液チューブ28を介して突当てブロック27(穿孔箇所H)から冷却廃液回収装置16に吸引・回収される。
【0030】
上述のように、冷却液供給・回収装置13は、冷却液供給ユニット22を介して、ダイヤモンドビット11に冷却液を供給する冷却液供給装置15と、突当てブロック27を介して、冷却液を吸引・回収する冷却廃液回収装置16と、を有している。そして、穿孔装置12と冷却液供給・回収装置13とは、供給チューブ25、廃液チューブ28およびドリル用ケーブル29により接続されている。
【0031】
冷却廃液回収装置16は、上部に、上機械室32aおよび下機械室32bから成る機械室32を有する回収タンク31と、下機械室32bに配設した吸引ファン33(エアー吸引機構)と、上機械室32aに配設され、吸引ファン33を駆動する電源部34と、回収タンク31内に収容した廃液容器35と、突当てブロック27から廃液容器35に冷却廃液を導く廃液チューブ28と、廃液チューブ28と廃液容器35との間に介設したジョイントユニット36と、を備えている。
【0032】
一方、冷却液供給装置15は、回収タンク31に収容した冷却液タンク41と、下機械室32bに配設した冷却液ポンプ42と、冷却液ポンプ42と冷却液供給アタッチメント22とを接続する供給チューブ25と、冷却液ポンプ42と冷却液タンク41とを接続する吸込チューブ43と、逃し弁44を介して冷却液タンク41に接続されたリターンチューブ45と、を備えている。
【0033】
冷却液供給アタッチメント22は、ダイヤモンドビット11を壁体に押し付ける力を利用してビット内流路26を開放する。すなわち、電動ドリル21および冷却液ポンプ42を駆動しておいて、ダイヤモンドビット11を押し込む(穿孔)と切り刃に冷却液が供給される。一方、穿孔直前および穿孔直後においては、電動ドリル21および冷却液ポンプ42は駆動しているが、ビット内流路26は閉塞される。その際、供給チューブ25内の圧力が高まることとなり、逃し弁44が開放され、余剰の冷却液がリターンチューブ45を介して冷却液タンク41に戻されるようになっている。
【0034】
電源部34は、電源部本体51と、上蓋に設けた電源スイッチ52と、電源スイッチ52に対し一次側となる電源ケーブル53と、電源スイッチ52に対し二次側となる二次側コンセント54と、を有している。また、二次側には、吸引ファン33と冷却液ポンプ42とが接続されている。電源スイッチ52をONすると、吸引ファン33および冷却液ポンプ42が駆動し、且つ二次側コンセント54に給電される。二次側コンセント54には、ドリル用ケーブル29を介して電動ドリル21が接続されており、電源スイッチ52をONすることで電動ドリル21のON-OFFが機能する。
【0035】
回収タンク31は、主体を為す有底円筒状のタンク本体61と、タンク本体61と機械室32とを仕切る中蓋62と、中蓋62との間で機械室32を構成するドーム形状の上蓋63と、上機械室32aと下機械室32bを仕切る隔板64と、を有している。中蓋62には、タンク本体61と機械室32とを連通する円形開口65が形成され、この円形開口65に吸引ファン33が臨んでいる。
【0036】
吸引ファン33が駆動すると、円形開口65を介してタンク本体61内のエアーが吸引され、タンク本体61内は負圧となる。詳細は後述するが、廃液容器35はその上部が回収タンク31(タンク本体61)内に開放されており、廃液容器35は、タンク本体61と同圧となる。これにより、冷却廃液は、廃液チューブ28およびジョイントユニット36を通って廃液容器35に流入する。
【0037】
なお、冷却液供給・回収装置13は、足場上において作業者が持ち運べる重量である必要がある。このため、冷却液供給・回収装置13の重みの主体となる冷却液および冷却廃液は、総量として10~15Kg程度としておくことが好ましい。また、冷却液を補充するタイミングで冷却廃液の廃棄(廃液容器35の交換)することが好ましい。
【0038】
ところで、吸引ファン33によるエアー吸引では、吸引力が弱いと冷却廃液の吸引が適切に行われなくなる一方、強すぎるといったん廃液容器35に導かれた冷却廃液が、霧状に舞い上がって(シートサーキット)廃液容器35から回収タンク31内に流れ出てしまう問題がある。そこで、本実施形態では、ジョイントユニット36の近傍に位置してタンク壁31aに、吸引ファン33の吸引力を調整するための圧力調整機構38が設けられている。
【0039】
図2は、圧力調整機構38の構造図である。同図に示すように、圧力調整機構38は、回収タンク31(タンク本体61)のタンク壁31aを貫通する機構本体71と、タンク壁31aの内側から機構本体71に螺合する締結ナット72と、機構本体71の段部とタンク壁31aとの間に介設したゴムパッキン73と、タンク壁31aの内側から機構本体71に螺合する調整ネジ74と、を有している。
【0040】
機構本体71には、段部を存してボルト部75が形成されている。このボルト部75にゴムパッキン73を嵌め入れた状態でタンク壁31aを貫通させ、これに締結ナット72をねじ込むことで、機構本体71がタンク壁31aに気密に取り付けられている。また、機構本体71の内部には、流入流路76と流出流路77とから成るL字のエアー流路78が形成されると共に、流出流路77の延長上において流入流路76を開閉調整する調整ネジ74が螺合している。
【0041】
調整ネジ74を締め込みむと、流入流路76の流路面積が小さくなり、外部から回収タンク31内に流入するエアーの流入量が絞り込まれる。逆に、調整ネジ74を緩めると、流入流路76の流路面積が大きくなり、外部から回収タンク31内に流入するエアーの流入量が多くなる。これにより、定速で回転する吸引ファン33であるが、回収タンク31内のエアー圧を微調整可能となっている。
【0042】
本実施形態では、作業開始時に、冷却廃液の吸引が適切に行われ、且つ廃液容器35に導かれた冷却廃液が霧状に舞い上がらないように、圧力調整を実施するようにしている。なお、圧力調整は、吸引ファン33をインバータ制御するものであってもよい。また、吸引ファン33に代えて真空ポンプを用いるようにしてもよい。
【0043】
廃液容器35は、冷却液タンク41と隣り合うようにして、回収タンク31に収容されている。廃液容器35は、給水袋型の水タンク、例えば防災用品として市販されているポリエチレン製の折り畳み式ウォータータンクで構成されている。廃液容器35には、その上部に広口の容器口35aが形成されており、容器口35aには閉止キャップ(図示省略)が螺合している。
【0044】
実施形態の廃液容器35は、この閉止キャップを外してジョイントユニット36の下流端部に接続される。また、満液となった廃液容器35は、ジョイントユニット36から取り外し廃棄処理するが、その際、この閉止キャップで封止して液漏れを防止するようにしている。なお、特に図示しないが、回収タンク31の内側上部には、廃液容器35から外した閉止キャップを仮置きしておくための、キャップ受けが設けられている。
【0045】
図3および
図4に示すように、ジョイントユニット36は、廃液チューブ28と廃液容器35とを接続する継ぎ手様の部材(金属製)であり、回収タンク31のタンク壁31aを貫通するように取り付けられている。ジョイントユニット36は、タンク壁31aを貫通した状態でこれに気密に取り付けられ、廃液チューブ28の下流端が接続されるチューブ接続部81と、チューブ接続部81に連結され、容器口35aを介して廃液容器35が接続される容器接続部82と、を有している。
【0046】
チューブ接続部81は水平に延び、これに連結した容器接続部82は鉛直に延びており、ジョイントユニット36は、全体として「L」字状に延びている。チューブ接続部81には、廃液チューブ28に連通するチューブ側流路83(内部流路)が形成され、容器接続部82には、チューブ側流路83に連通する容器側流路84(内部流路)が形成されている。また、容器接続部82には、廃液容器35の上部(上部空間)を回収タンク31内に開放する開放流路85が形成されている。
【0047】
チューブ接続部81は、タンク壁31aを貫通する接続部本体86と、接続部本体86を回収タンク31のタンク壁31aに固定するための取付けネジ部材87と、廃液チューブ28の下流端が接続されると共にタンク壁31aに固定した接続部本体86に差込み接合されるワンタッチ接合部材88と、を有している。そして、ワンタッチ接合部材88の内部および接続部本体86の内部に、チューブ側流路83が形成されている。
【0048】
ワンタッチ接合部材88は、廃液チューブ28の接続用パイプ部91を溶着した把持ブロック92と、把持ブロック92から延びる接合凸部93を有している。接合凸部93には、Oリング94が装着されており、廃液チューブ28が接続されたワンタッチ接合部材88は、この接合凸部93を介して、タンク壁31aの内側に位置する接続部本体86に対し、外側からワンタッチで差込み接合される。
【0049】
接続部本体86は、取付けネジ部材87と協働してチューブ接続部81をタンク壁31aに固定するための固定雄ネジ部95を有すると共に、固定雄ネジ部95の内側にワンタッチ接合部材88の接合凸部93が接合される接合凹部96を有している。また、接続部本体86は、容器接続部82が連結される連結雌ネジ部97を有している。接続部本体86の軸方向中間部には、取付けフランジ98が一体に設けられている。ジョイントユニット36は、この取付けフランジ98と取付けネジ部材87とにより、ゴムシール99を挟み込むようにしてタンク壁31aに固定されている(
図2参照)。
【0050】
すなわち、タンク壁31aに形成した貫通開口には、環状のゴムシール99が装着されており、タンク壁31aの内側からゴムシール99に挿通した接続部本体86に対し、タンク壁31aの外側から取付けネジ部材87を螺合、ゴムシール99を強く挟持することで、ジョイントユニット36が回収タンク31(タンク壁31a)に気密に取り付けられている。なお、この取付け作業は、接続部本体86に容器接続部82を連結した状態で行われる。
【0051】
容器接続部82は、上下方向に延びる鉛直パイプ部材101(パイプ部材)と、廃液容器35が接続される容器口接続部材102と、容器口接続部材102との間にフィルタ用の空間を構成するフィルタ受容部材103と、フィルタ受容部材103の上側に配設した締付け円板部材104と、容器口接続部材102とフィルタ受容部材103との間に収容したリング状フィルタ105と、を有している。締付け円板部材104、フィルタ受容部材103および容器口接続部材102は、鉛直パイプ部材101を囲繞し且つ上下に重なるように配設されている。そして、容器口接続部材102の内周面(厳密には、容器口35aの内周面)と、鉛直パイプ部材101の外周面との間には、開放流路85の一部が構成されている。
【0052】
鉛直パイプ部材101は、内部に容器側流路84を形成したものであり、上端部に形成した連結雄ネジ部107と、連結雄ネジ部107に連なるフランジ部108と、フランジ部108に連なり廃液容器35に挿入される挿入パイプ部109とで一体に形成されている。連結雄ネジ部107を接続部本体86の連結雌ネジ部97に螺合することで、チューブ接続部81と容器接続部82とが連結され、また同時にチューブ側流路83と容器側流路84とが接続(連通)される。
【0053】
フランジ部108の外径とフィルタ受容部材103の内径とは略同径に形成され、フィルタ受容部材103はその上縁部がフランジ部108に載るように配設されている。また、フランジ部108には、周方向に均等に位置して複数の丸穴110が形成されており、この複数の丸穴110が上記の開放流路85の一部を構成している。
【0054】
フィルタ受容部材103の下部外周面には太径雄ネジ111が形成され、これに対応して容器口接続部材102の上部内周面には太径雌ネジ112が形成されている。フィルタ受容部材103の内部にリング状フィルタ105を挿入し、フィルタ受容部材103と容器口接続部材102とを相互に螺合することにより、両者の内部にリング状フィルタ105が収容される。このリング状フィルタ105の収容空間も、開放流路85の一部を構成している。
【0055】
なお、太径雄ネジ111および太径雌ネジ112は、左ネジで構成されており、フィルタ受容部材103および容器口接続部材102を回転させて、容器口接続部材102に廃液容器35の容器口35aを螺合するときに、フィルタ受容部材103と容器口接続部材102との間でネジの緩みが生じないようになっている。また、リング状フィルタ105は、吸引力の調整不良により一部冷却廃液が霧状になっても、廃液容器35からの流出を阻止する。
【0056】
容器口接続部材102の下部内周面には、廃液容器35の容器口35aを螺合する口用雌ネジ113が形成されている。この口用雌ネジ113に下側から廃液容器35の容器口35aをあてがい、フィルタ受容部材103と共に容器口接続部材102を回転させることで、ジョイントユニット36(容器接続部82)に、廃液容器35が接続(セット)される。
【0057】
上述のように、フィルタ受容部材103は、鉛直パイプ部材101のフランジ部108に載っている。このため、容器接続部82に廃液容器35が接続された状態で、フィルタ受容部材103および容器口接続部材102は、がたつきを持ってフランジ部108に支持されている。そこで、本実施形態では、フィルタ受容部材103の上側に位置して、鉛直パイプ部材101の連結雄ネジ部107に螺合するように、締付け円板部材104が設けられている。
【0058】
締付け円板部材104は、フィルタ受容部材103よりも幾分大径に形成されており、締付け円板部材104を締め付けることで、締付け円板部材104とフィルタ受容部材103の上縁部との間にフランジ部108が挟み込まれ、上記のがたつきが解消される。また、締付け円板部材104には、周方向に均等に位置して複数の通気穴114が形成されており、この複数の通気穴114がフランジ部108の丸穴110と同様に開放流路85の一部を構成している。
【0059】
このように構成されたジョイントユニット36では、容器接続部82を組み立て且つこれを接続部本体86に螺合して、回収タンク31内の構成部品を予め組み立てておく、そして、この組み立てた構成部品をタンク壁31aに固定する。作業に当たっては、容器接続部82に廃液容器35を接続する一方、廃液チューブ28が接続されたワンタッチ接合部材88を、接続部本体86に差込み接合する。また、冷却液が要補充状態となったタイミングで、冷却液の補充と共に廃液容器35の交換が実施される。
【0060】
以上のように、第1実施形態によれば、廃液チューブ28と廃液容器35とが開放流路85を有するジョイントユニット36で接続されているため、吸引ファン33により回収タンク31内を負圧にすると、廃液チューブ28を介して穿孔箇所Hから廃液容器35に冷却廃液が導かれる。このように、回収タンク31内の負圧を利用して、冷却廃液を廃液容器35に直接吸引回収することができるため、回収タンク31内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器35に貯留した状態で回収タンク31から取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係る穿孔システム10Aについて説明する。同図に示すように、第2実施形態に係る穿孔システム10Aは、第1実施形態の穿孔システム10と冷却液供給・回収装置13において異なるものとなっている。第2実施形態の冷却液供給・回収装置13Aは、全体として第1実施形態のものに比して小型に形成されている。具体的には、回収タンク31A(タンク本体61)が冷却液タンク41を兼ねる構成となっており、回収タンク31Aの小型化が図られると共に、ジョイントユニット36Aも第1実施形態のものに比して単純な構造となっている。
【0062】
この冷却液供給・回収装置13Aでは、回収タンク31Aの中に第1実施形態のような冷却液タンク41が無く、回収タンク31A(タンク本体61)が冷却液タンク41を兼ねている。すなわち、回収タンク31A内に廃液容器35が収容され、この廃液容器35の周囲にこれから供給される冷却液が貯留されている。回収タンク31Aに冷却液を注ぎ込んだ初期状態では、空の廃液容器35が冷却液上に浮いた状態となる。作業が進むと、冷却液が減少する一方、冷却廃液は増加する。その際、回収タンク31A内の冷却液の液位と廃液容器35内の冷却廃液とは、同一の液位を維持し、廃液容器35の下面が回収タンク31Aの底面に着くまで、冷却液の液位は極端に下がることが無い。
【0063】
このように、回収タンク31Aが冷却液タンク41を兼ねる構成としていることで、回収タンク31Aをコンパクトにすることができ、冷却液供給・回収装置13Aの小型化を達成することができる。一方、第2実施形態の回収タンク31Aでは、空の廃液容器35をセットするときに、廃液容器35が冷却液上に浮いた状態となる。これを受けて、廃液容器35をセットが容易になるように、ジョイントユニット36Aも第1実施形態のものと異なる形態を有している。
【0064】
図6および
図7は、第2実施形態のジョイントユニット36Aである。同図に示すように、第2実施形態のジョイントユニット36Aも、第1実施形態と同様に、チューブ接続部121と容器接続部122とで構成されている。但し、このチューブ接続部121と容器接続部122とは、一体的に形成され且つ水平に延在している。この場合も、チューブ接続部121には、廃液チューブ28に連通するチューブ側流路123(内部流路)が形成され、容器接続部122には、チューブ側流路123に連通する容器側流路124(内部流路)が形成されている。また、容器接続部122には、廃液容器35の上部(上部空間)を回収タンク31A内に開放する開放流路125が形成されている。
【0065】
チューブ接続部121は、タンク壁31aを貫通する本体接続部131と、本体接続部131を回収タンク31Aのタンク壁31aに固定するための取付けネジ部材132と、廃液チューブ28が接続されると共にタンク壁31aに固定した本体接続部131に差込み接合されるワンタッチ接合部材133と、を有している。この場合、取付けネジ部材132およびワンタッチ接合部材133は、第1実施形態のものと同様の形態を有している。
【0066】
本体接続部131の端部には取付けフランジ134が形成されており、第1実施形態と同様に、タンク壁31aのゴムシール99に挿通した本体接続部131に、タンク壁31aの外側から取付けネジ部材132を締め付けることで、ジョイントユニット36Aが回収タンク31Aに気密に取り付けられている。
【0067】
一方、容器接続部122は、水平に延びる水平パイプ部材136(パイプ部材)と、廃液容器35が接続される容器口接続部137(容器口接続部材)と、容器口接続部137に装着されるリング状フィルタ138と、水平パイプ部材136に装着される2つのゴムリング139a,139bと、を有している。そして、本体接続部131と容器口接続部137とは、細筒部140を介して一体に形成されている。すなわち、本体接続部131の取付けフランジ134と容器口接続部137の端面とは、空間を存して対峙し且つ中心部において細筒部140により一体に繋がっている。
【0068】
水平パイプ部材136は、内部に容器側流路124を形成したものであり、基端部が細筒部140から本体接続部131に至る部分に嵌合固定されている。容器口接続部137は、水平パイプ部材136の基端側においてこれを囲繞するように配設され、リング状フィルタ138は半部を容器口接続部137に挿入した状態で水平パイプ部材136に装着されている。そして、水平パイプ部材136の中間部には、リング状フィルタ138のズレ止め用にゴムリング139aが装着されている。
【0069】
この場合も、容器口接続部137と水平パイプ部材136との間隙は、開放流路125の一部を構成している。なお、水平パイプ部材136の先端部に装着されたゴムリング139bは、水平パイプ部材136の先端から流下する洗浄廃液が、水平パイプ部材136の外周面を伝ってリング状フィルタ138側(上記の間隙)に流れないようにするものである。
【0070】
容器口接続部137の内周面には、廃液容器35の容器口35aを螺合する口用雌ネジ141が形成されている。また、本体接続部131の取付けフランジ134に対峙する容器口接続部137の端面には、複数の通気穴142が形成されている。複数の通気穴142は、周方向に均等に配設されており、開放流路125の一部を構成している。
【0071】
第2実施形態のジョイントユニット36Aでは、廃液容器35の容器口35aに一体化した本体接続部131および容器口接続部137を取り付けておき、この状態で本体接続部131をタンク壁31aに固定するようになっている。また、廃液容器35を回収タンク31Aから取り出す場合は、逆の手順となる。
【0072】
この第2実施形態においても、回収タンク31内の負圧を利用して、冷却廃液を廃液容器35に直接吸引回収することができるため、回収タンク31内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器35に貯留した状態で回収タンク31から取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【0073】
また、回収タンク31Aが冷却液タンク41を兼ねる構成であるため、回収タンク31Aをコンパクトにすることができ、冷却液供給・回収装置13Aの小型化を達成することができる。
【0074】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る穿孔システム10におけるジョイント構造の説明図である。このジョイント構造は、第2実施形態のジョイントユニット36Aを単純化したものであり、上記のチューブ側流路123および容器側流路124に相当する廃液流路と、上記の開放流路125に相当するエアー流路と、を別の部材に形成したものである。
【0075】
同図に示すように、ジョイント構造は、回収タンク31Aのタンク壁31aを貫通した状態で気密に取り付けられ、一方の端部に廃液チューブ28が接続され、他方の端部に廃液容器35の上部に設けられた容器口35aに接続された接続継ぎ手150と、廃液容器35の上部に形成され、廃液容器35の上部を回収タンク31A内に開放する開放開口151と、を備えている。そして、接続継ぎ手150の内部に廃液流路が形成され、開放開口152によりエアー流路が構成されている。
【0076】
接続継ぎ手150は、タンク壁31aを貫通する継ぎ手本体153と、継ぎ手本体153を回収タンク31Aのタンク壁31aに固定するための取付けネジ部材154と、廃液チューブ28が接続されると共にタンク壁31aに固定した継ぎ手本体153に差込み接合されるワンタッチ接合部材155と、を有している。
【0077】
継ぎ手本体153は、第2実施形態のジョイントユニット36Aにおける本体接続部131と容器口接続部137とを一体化したような形態を有している。すなわち、継ぎ手本体153は、取付けネジ部材154が螺合すると共にワンタッチ接合部材155が接合される貫通接合部157と、廃液容器35(容器口35a)が接続される口接続部158と、貫通接合部157に嵌合固定されたショートパイプ部159と、を有している。
【0078】
口接続部158は貫通接合部157よりも太径に形成され、口接続部158の端部が上記の取付けフランジ134の機能を奏するようになっている。また、取付けネジ部材154およびワンタッチ接合部材155は、第1および第2実施形態のものと同様の形態を有している。
【0079】
このような構成においても、冷却廃液を廃液容器35に直接吸引回収することができるため、回収タンク31内を汚染することなく、冷却廃液を適切に回収することができる。また、回収した冷却廃液は、廃液容器35に貯留した状態で回収タンク31から取り出し、そのまま産業廃棄物として廃棄することができ、冷却廃液を簡単且つ適切に廃棄処理することができる。
【0080】
[第4実施形態]
次に、
図9を参照して、第4実施形態に係る穿孔システム10Bについて説明する。同図に示すように、第4実施形態に係る穿孔システム10Bは、第2実施形態の穿孔システム10と、水平パイプ部材136の先端部にゴムリング139bに代えて湾曲チューブ161(湾曲部材)を設けた点、および廃液容器35Bをポリエチレン製ではなく濾紙製(HEPAフィルタ)とした点、で異なるものとなっている。
【0081】
すなわち、第4実施形態の穿孔システム10Bでは、廃液容器35Bを濾過袋で構成し、冷却廃液を濾過して冷却液とする循環型の冷却液供給・回収装置13Bを構成している。この廃液容器35Bは、エアーフィルタであるHEPAフィルタを構成するガラス繊維製の濾紙を袋状に形成したものであり、これにより冷却廃液をフィルタリング(濾過)して冷却液を得るようにしている。
【0082】
この場合には、冷却液を循環使用するため、冷却液の消耗は極めて少なくなる。また、冷却廃液および冷却液の液位の上下は少なく、且つ廃液容器35B(濾過袋)内の冷却廃液の液位と、その外側の冷却液の液位とは、略同じ液位と維持する。したがって、廃液容器35Bは、粉塵のノロがある1/3~1/2程度溜ったところで、交換を行うようにしている。
【0083】
一方、水平パイプ部材136の先端部に下向きの湾曲チューブ161を接続し、廃液容器35B内において、冷却廃液を下向きに吐出するようにしている。湾曲チューブ161は、ビニールチューブやシリコンチューブで構成されており、水平パイプ部材136の先端部に差し込むようにして接続されている。
【0084】
上述のように、エアー吸引の吸引力が強すぎると、廃液容器35に導かれた冷却廃液が霧状に舞い上がり、開放流路125(通気穴142)を介して廃液容器35Bの外に流れ出てしまう。これとは別に、冷却廃液を水平パイプ部材136から横方向に吐出させると、冷却廃液は霧状に舞い上がり易くなる。そこで、本実施形態では、湾曲チューブ161により冷却廃液を下方に向かって吐出するようにしている。
【0085】
本実施形態では、水平パイプ部材136の下流端部に湾曲チューブ161を接続する構造であるが、単純に水平パイプ部材136の下流端部を折り曲げる構造や、水平パイプ部材136の下流端部にエルボ継手を接続する構造であってもよい。但し、水平パイプ部材136の軸心と湾曲チューブ161等の下流端との間の図示「L」は、3cm程度から冷却廃液の液面近傍までとすることが好ましい。なお、実施形態ものは、「L」寸法を5cm程度としている。
【0086】
これにより、冷却廃液は、湾曲チューブ161の下端から吐出するようにして廃液容器35Bに流入する。したがって、吐出する冷却廃液に吸引力が作用しても、冷却廃液は霧状に舞い上がり難く、開放流路125を介して廃液容器35Bの外に流れ出てしまうことがない。すなわち、回収タンク31Aが汚染されるのを有効に防止することができる。
【符号の説明】
【0087】
10,10A…穿孔システム、11…ダイヤモンドビット、13,13A…冷却液供給・回収装置、15…冷却液供給装置、16…冷却廃液回収装置、27…突当てブロック、28…廃液チューブ、31,31A…回収タンク、31a…タンク壁、35…廃液容器、35a…容器口、36,36A…ジョイントユニット、41…冷却液タンク、61…タンク本体、81…チューブ接続部、82…容器接続部、83…チューブ側流路、84…容器側流路、85…開放流路、121…チューブ接続部、122…容器接続部、123…チューブ側流路、124…容器側流路、125…開放流路、150…接続継ぎ手、151…開放開口、H…穿孔箇所、161…湾曲チューブ、