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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074322
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20240524BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240524BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L21/88 T
H01L21/88 M
H01L21/88 R
H01L21/90 M
H01L21/60 301N
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185389
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑島 照弘
(72)【発明者】
【氏名】河合 徹
(72)【発明者】
【氏名】利根川 丘
【テーマコード(参考)】
5F033
5F044
【Fターム(参考)】
5F033HH07
5F033HH13
5F033JJ01
5F033JJ07
5F033JJ13
5F033KK08
5F033KK09
5F033KK18
5F033KK33
5F033MM01
5F033MM02
5F033PP15
5F033PP28
5F033QQ09
5F033QQ31
5F033QQ48
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR08
5F033RR21
5F033SS11
5F033TT06
5F033VV07
5F033WW01
5F033WW02
5F033XX00
5F033XX18
5F033XX20
5F044EE04
5F044EE06
5F044EE12
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】層間絶縁膜IL6上にパッドPDが形成され、層間絶縁膜IL6上にパッドPDを覆うように第1絶縁膜PA1が形成され、第1絶縁膜PA1上にパッドPDを覆うように第2絶縁膜PA2が形成されている。第1絶縁膜PA1は、パッドPDを部分的に露出する第1開口部OP1を有し、第2絶縁膜PA2は、パッドPDを部分的に露出する第2開口部OP2を有し、平面視において第2開口部OP2は第1開口部OP1に内包されている。第1絶縁膜PA1は酸化シリコンからなり、第2絶縁膜PA2は窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。第2開口部OP2から露出するパッドPD上には、ニッケルめっき膜ME1が形成されている。ニッケルめっき膜ME1の厚さに応じて、パッドPDの外周から第1開口部OP1の内壁までの距離を大きくする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成されたパッドと、
前記第1絶縁膜上に前記パッドを覆うように形成され、かつ前記パッドを部分的に露出する第1開口部を有する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成され、かつ、前記パッドを部分的に露出する第2開口部を有する第3絶縁膜と、
前記第2開口部から露出する前記パッド上に形成された金属膜と、
を有し、
前記第2絶縁膜は、酸化シリコンからなり、
前記第3絶縁膜は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなり、
平面視において、前記第1開口部は前記パッドに内包され、
平面視において、前記第2開口部は前記第1開口部に内包され、
前記第2絶縁膜の前記第1開口部の内壁は、前記第3絶縁膜で覆われており、
前記金属膜は、前記パッドに接するニッケルめっき膜を含み、
前記パッドの外周から前記第1開口部の内壁までの距離をL1(μm)とし、前記ニッケルめっき膜の厚さをT1(μm)としたときに、T1は2.5μm以上であり、かつ、次の式1
L1>T1×2.45-4.61μm ・・・式1
が成り立つ、半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
記ニッケルめっき膜の厚さT1は、3μm以上である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜は、ニッケル無電解めっき膜である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、
前記金属膜は、前記ニッケルめっき膜上に形成された金めっき膜を更に含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記金属膜は、前記ニッケルめっき膜上に形成されたパラジウムめっき膜と、前記パラジウムめっき膜上に形成された金めっき膜とを更に含む、半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記パッドは、アルミニウムを主成分とするAl含有導電膜を有している、半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さと前記第3絶縁膜の厚さの合計以下である、半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さと前記第3絶縁膜の厚さの合計よりも大きい、半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置において、
前記第3絶縁膜上に形成された樹脂膜を更に有し、
前記樹脂膜は、平面視において前記第2開口部を内包する第3開口部を有し、
前記ニッケルめっき膜は前記樹脂膜と接していない、半導体装置。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成されたパッドと、
前記第1絶縁膜上に前記パッドを覆うように形成され、かつ前記パッドを部分的に露出する第1開口部を有する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成され、かつ、前記パッドを部分的に露出する第2開口部を有する第3絶縁膜と、
前記第3絶縁膜上に形成された第4絶縁膜と、
前記第2開口部から露出する前記パッド上に形成された金属膜と、
を有し、
前記第2絶縁膜は、酸化シリコンからなり、
前記第3絶縁膜は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなり、
平面視において、前記第1開口部は前記パッドに内包され、
平面視において、前記第2開口部は前記第1開口部に内包され、
前記第2絶縁膜の前記第1開口部の内壁は、前記第3絶縁膜で覆われており、
前記金属膜は、前記パッドに接するニッケルめっき膜を含み、
前記第4絶縁膜は無機絶縁膜であり、
前記第4絶縁膜のヤング率は、前記第3絶縁膜のヤング率よりも低い、半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記第2開口部は、前記第4絶縁膜と前記第3絶縁膜を貫通するように形成されている、半導体装置。
【請求項12】
請求項10記載の半導体装置において、
前記第4絶縁膜は、酸化シリコンからなる、半導体装置。
【請求項13】
請求項10記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜は、ニッケル無電解めっき膜である、半導体装置。
【請求項14】
請求項10記載の半導体装置において、
前記金属膜は、前記ニッケルめっき膜上に形成された金めっき膜を更に含む、半導体装置。
【請求項15】
請求項10記載の半導体装置において、
前記金属膜は、前記ニッケルめっき膜上に形成されたパラジウムめっき膜と、前記パラジウムめっき膜上に形成された金めっき膜とを更に含む、半導体装置。
【請求項16】
請求項10記載の半導体装置において、
前記パッドは、アルミニウムを主成分とするAl含有導電膜を有している、半導体装置。
【請求項17】
請求項10記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さと前記第3絶縁膜の厚さの合計以下である、半導体装置。
【請求項18】
請求項10記載の半導体装置において、
前記ニッケルめっき膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さと前記第3絶縁膜の厚さの合計よりも大きい、半導体装置。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置において、
前記第3絶縁膜上に形成された樹脂膜を更に有し、
前記樹脂膜は、平面視において前記第2開口部を内包する第3開口部を有し、
前記ニッケルめっき膜は前記樹脂膜と接していない、半導体装置。
【請求項20】
請求項18記載の半導体装置において、
記ニッケルめっき膜の厚さは、2.5μm以上である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、パッドを有する半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板にMISFETなどの半導体素子が形成され、その半導体基板上に複数の配線層を有する多層配線構造が形成され、その最上層にパッシベーション膜が形成されて、半導体装置が製造される。また、この半導体装置は、ワイヤボンディング用のパッドを有しており、そのパッドは、パッシベーション膜に設けられた開口部から露出されている。
【0003】
特開2019-12738号公報(特許文献1)には、パッド電極を有する半導体装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-12738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッドを有する半導体装置において、信頼性を向上させることが望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成されたパッドと、前記第1絶縁膜上に前記パッドを覆うように形成された酸化シリコンからなる第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に形成された窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる第3絶縁膜と、を有する。前記第2絶縁膜は、前記パッドを部分的に露出する第1開口部を有し、前記第3絶縁膜は、前記パッドを部分的に露出する第2開口部を有し、平面視において前記第2開口部は前記第1開口部に内包されている。前記第2開口部から露出する前記パッド上にニッケルめっき膜が形成されている。前記ニッケルめっき膜の厚さに応じて、前記パッドの外周から前記第1開口部の内壁までの距離を大きくする。
【0008】
他の実施の形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成されたパッドと、前記第1絶縁膜上に前記パッドを覆うように形成された酸化シリコンからなる第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に形成された窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる第3絶縁膜と、前記第3絶縁膜上に形成された第4絶縁膜と、を有する。前記第2絶縁膜は、前記パッドを部分的に露出する第1開口部を有し、前記第3絶縁膜は、前記パッドを部分的に露出する第2開口部を有し、平面視において前記第2開口部は前記第1開口部に内包されている。前記第2開口部から露出する前記パッド上にニッケルめっき膜が形成されている。前記第4絶縁膜は、無機絶縁膜であり、前記第4絶縁膜のヤング率は、前記第3絶縁膜のヤング率よりも低い。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1の半導体装置の全体平面図である。
図2】実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
図3】パッド形成領域を示す平面図である。
図4】実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
図5】実施の形態1の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図6図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図7図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図8図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図9図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図10図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図11図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図12】検討例の半導体装置の要部断面図である。
図13】検討例のパッド形成領域を示す平面図である。
図14】ニッケルめっき膜の厚さT1と、絶縁膜にクラックが発生するのを防ぐのに必要となる距離L1との相関を示すグラフである。
図15】実施の形態2の半導体装置の要部断面図である。
図16】実施の形態2のパッド形成領域を示す平面図である。
図17】実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図18図17に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図19】実施の形態3の半導体装置の要部断面図である。
図20】実施の形態4の半導体装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体装置の全体構造について>
本実施の形態の半導体装置を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPの全体平面図であり、図1は、半導体装置CPの上面側の全体平面図が示されている。
【0016】
本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPは、一方の主面である上面と、上面とは反対側の主面である裏面(下面)とを有しており、図1には、半導体装置CPの上面が示されている。なお、半導体装置CPにおいて、パッドPDは半導体装置CPの上面上に形成されており、パッドPDが形成された主面(すなわち上面)とは反対側の主面を、半導体装置CPの裏面と呼ぶものとする。
【0017】
半導体装置CPは、図1に示されるように、その上面上に、複数のパッド(パッド電極、電極パッド、ボンディングパッド)PDを有している。パッドPDは、半導体装置CPの外部接続用の端子として機能する。パッドPDは、ワイヤボンディング用のパッドである。また、詳細は後述するが、各パッドPD上には金属膜(めっき膜)MEが形成されており、半導体装置CPの上面を上方から見ると、金属膜MEは観察されるが、パッドPDは金属膜MEの下に隠れている。半導体装置CPを用いて半導体パッケージなどを製造する際には、パッドPD上の金属膜MEにワイヤが接合され、その金属膜MEを介してワイヤとパッドPDとが電気的に接続される。
【0018】
半導体装置CPの平面形状は、四角形状であり、より特定的には、矩形状であるが、矩形の角は丸くなっていてもよい。図1の場合は、半導体装置CPの上面において、パッドPDとパッドPD上に形成された金属膜MEとの積層体が、半導体装置CPの上面の外周に沿って複数並んで配置されている。図1の場合は、半導体装置CPの上面において、四辺に沿って、パッドPDとパッドPD上に形成された金属膜MEとの積層体が複数配置(配列)されているが、これに限定されず、三辺、二辺または一辺に沿って配置(配列)される場合もあり得る。また、図1の場合は、パッドPDとパッドPD上に形成された金属膜MEとの積層体は1列に配列しているが、これに限定されず、複数列(例えば2列)に配列することもでき、また、いわゆる千鳥配列に配列することもできる。また、半導体装置CPが備えるパッドPDとパッドPD上に形成された金属膜MEとの積層体の数は、必要に応じて変更可能である。
【0019】
<半導体装置の内部構造について>
図2は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPの要部断面図であり、パッドPDを横切る断面が示されている。なお、図2では、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示を省略している。また、図3は、パッド形成領域を示す平面図であるが、理解を簡単にするために、図3ではパッドPDを実線で示し、開口部OP1の位置を二点鎖線で示し、開口部OP2の位置を点線で示している。図3のA1-A1線の位置での断面図が、図2にほぼ対応している。
【0020】
図2に示されるように、パッドPDは、層間絶縁膜IL6上に形成されており、層間絶縁膜IL6上に、パッドPDの一部を覆うように、絶縁膜PAが形成されている。絶縁膜PAは、絶縁膜PA1と絶縁膜PA1上の絶縁膜PA2とからなる。絶縁膜PA1は、酸化シリコンからなり、絶縁膜PA2は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。このため、絶縁膜PA1は、酸化シリコン膜であり、絶縁膜PA2は、窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜(SiON膜)である。絶縁膜PA1の上面は、絶縁膜PA2と接している。絶縁膜PAは、複数の絶縁膜(具体的には絶縁膜PA1と絶縁膜PA2の2つの絶縁膜)を積層した積層膜(積層絶縁膜)とみなすこともできる。絶縁膜PA1の厚さは、好ましくは0.2~5.0μm程度とすることができる。また、絶縁膜PA2の厚さは、好ましくは0.1~2.0μm程度とすることができる。
【0021】
パッドPDの一部は、絶縁膜PAの開口部OPから露出されている。但し、パッドPDの他部は、絶縁膜PAで覆われている。すなわち、絶縁膜PAの開口部OPからパッドPDが露出されているが、平面視で開口部OPと重ならない部分のパッドPDは、絶縁膜PAで覆われている。具体的には、パッドPDの中央部は絶縁膜PAで覆われておらず、パッドPDの外周部は絶縁膜PAで覆われている。
【0022】
なお、半導体装置CPの構成要素の平面視について言及する場合は、その半導体装置CPを構成する半導体基板SB(後述の図4参照)の主面に略平行な平面で見た場合に対応している。
【0023】
絶縁膜PAは、パッドPDの一部を露出する開口部OPを有しているが、絶縁膜PAは、絶縁膜PA1と絶縁膜PA2との積層膜であるため、絶縁膜PAの開口部OPは、絶縁膜PA2の開口部OP2と、絶縁膜PA1の開口部OP1とにより形成される。開口部OP2は、絶縁膜PA2を貫通し、開口部OP1は、絶縁膜PA1を貫通している。但し、絶縁膜PA2の開口部OP2と、絶縁膜PA1の開口部OP1とは、以下の関係を有している。
【0024】
すなわち、図2および図3からも分かるように、絶縁膜PA2の開口部OP2の平面寸法(平面積)は、絶縁膜PA1の開口部OP1の平面寸法(平面積)よりも小さく、平面視において、絶縁膜PA2の開口部OP2は絶縁膜PA1の開口部OP1に内包されている。つまり、平面視において、絶縁膜PA2の開口部OP2は、絶縁膜PA1の開口部OP1と重なっており、絶縁膜PA2の開口部OP2の内壁は、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁よりも内側にある。また、絶縁膜PA1の開口部OP1の平面寸法(平面積)は、パッドPDの平面寸法(平面積)よりも小さく、平面視において、絶縁膜PA1の開口部OP1はパッドPDに内包されている。
【0025】
平面視で絶縁膜PA2の開口部OP2が絶縁膜PA1の開口部OP1に内包されているため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁(側壁)は、絶縁膜PA2で覆われている。これにより、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁においても、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1が窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2で覆われているため、絶縁膜PA1が吸湿するのを、より的確に防止することができる。すなわち、酸化シリコン膜は、吸湿しやすい膜であるため、本実施の形態とは異なり、酸化シリコンからなる絶縁膜膜PA1の開口部OP1の内壁が窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜膜PA2で覆われていない場合、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁から絶縁膜PA1が吸湿する懸念がある。それに対して、本実施の形態では、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2で覆われているため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁から絶縁膜PA1が吸湿するのを防止できるので、絶縁膜PA1の吸湿を、より的確に防止することができる。
【0026】
また、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁では、パッドPDを構成するバリア膜BR2の端面が露出されるが、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われているため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁で露出されるバリア導体膜BR2の端面も絶縁膜PA2で覆われる。本実施の形態とは異なり、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われていない場合、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁で露出されるバリア導体膜BR2の端面が、金属膜MEを形成するメッキ工程を行うまでの間に酸化される虞がある。それに対して、本実施の形態では、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われているため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁で露出されるバリア導体膜BR2の端面も絶縁膜PA2で覆われることになる。このため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁で露出されるバリア導体膜BR2の端面が、金属膜MEを形成するメッキ工程を行うまでの間に酸化されるのを防止することができる。
【0027】
本実施の形態では、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は絶縁膜PA2で覆われているため、絶縁膜PAの開口部OPの内壁は、絶縁膜PA2の開口部OP2の内壁(すなわち絶縁膜PA2の端面)と、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁上に位置する絶縁膜PA2の表面とにより、形成されることになる。このため、絶縁膜PAの開口部OPの内壁は、絶縁膜PA2により形成される。パッドPDにおいて絶縁膜PAの開口部OPから露出する部分は、パッドPDにおいて絶縁膜PA2の開口部OP2から露出する部分と一致している。絶縁膜PAの開口部OPの位置と形状(面積)は、実質的には絶縁膜PA2の開口部OP2により規定され、パッドPDの露出面積(パッドPDにおいて絶縁膜PA1の開口部OPから露出される部分の面積)は、絶縁膜PA2の開口部OP2により規定される。
【0028】
絶縁膜PAは、半導体装置CPの最上層の膜であり、表面保護膜として機能することができる。すなわち、絶縁膜PAは、パッシベーション膜である。パッドPDと開口部OPのそれぞれの平面形状は、例えば四角形状(より特定的には矩形状)である。他の形態として、絶縁膜PA上に更に後述する樹脂膜RSを設けることもできるが、樹脂膜RSを形成した場合でも、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)からパッドPDの一部が露出される状態は維持される。
【0029】
パッドPDは、主としてアルミニウム(Al)により形成されたアルミニウムパッドである。具体的には、パッドPDは、バリア導体膜BR1と、バリア導体膜BR1上のAl(アルミニウム)含有導電膜AM1と、Al含有導電膜AM1上のバリア導体膜BR2とを有する積層膜により形成されている。なお、パッドPDのうち、絶縁膜PA1の下に位置する部分(すなわち絶縁膜PA1で覆われている部分)では、Al含有導電膜AM1上にバリア導体膜BR2が形成されている。一方、パッドPDのうち、絶縁膜PA1の開口部OP1から露出された部分(すなわち絶縁膜PA1で覆われていない部分)では、Al含有導電膜AM1上にバリア導体膜BR2は形成されていない。これは、絶縁膜PA1に開口部OP1を形成する際に、絶縁膜PA1の開口部OP1から露出された部分のバリア導体膜BR2を除去するためである。
【0030】
Al含有導電膜AM1は、好ましくは、アルミニウム(Al)を主成分とする導電材料膜(但し金属伝導を示す導電材料膜)からなる。Al含有導電膜AM1としては、アルミニウム膜(純アルミニウム膜)を用いることができるが、これに限定されず、アルミニウム(Al)を主成分とする化合物膜または合金膜を用いることもできる。例えば、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とCu(銅)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)とCu(銅)との化合物膜または合金膜を、Al含有導電膜AM1として好適に用いることができる。Al含有導電膜AM1におけるAl(アルミニウム)の組成比(含有率)は50原子%より大きいが、98原子%以上であれば、より好ましい。
【0031】
バリア導体膜BR1とバリア導体膜BR2とは、いずれも導電膜(好ましくは金属伝導を示す導電膜)である。このうち、バリア導体膜BR1は、下地(例えば層間絶縁膜IL6)に対する密着性を向上させ、剥がれを防止する機能を有している。このため、バリア導体膜BR1は、下地(例えば層間絶縁膜IL6)に対する密着性と、バリア導体膜BR1上に形成するAl含有導電膜AM1に対する密着性とに優れていることが望ましい。
【0032】
バリア導体膜BR2は、絶縁膜PA1に対する密着性を向上させ、剥がれを防止する機能を有している。このため、バリア導体膜BR2は、下地のAl含有導電膜AM1に対する密着性と、バリア導体膜BR2上に形成する絶縁膜PA1に対する密着性とに優れていることが望ましい。
【0033】
バリア導体膜BR1としては、例えば、チタン(Ti)膜の単体膜、窒化チタン(TiN)膜の単体膜、チタン(Ti)膜と窒化チタン(TiN)膜との積層膜、あるいは、チタン(Ti)膜と窒化チタン(TiN)膜とチタン(Ti)膜との積層膜などを用いることができ、これは、バリア導体膜BR2についても同様である。
【0034】
Al含有導電膜AM1は、パッドPDの主導体膜として機能することができる。Al含有導電膜AM1の厚さは、バリア導体膜BR1,BR2の各厚さよりも大きい。パッドPDは、主としてAl含有導電膜AM1により形成されているため、アルミニウムパッドとみなすことができる。Al含有導電膜AM1の厚さは、好ましくは1.3~2.3μm程度とすることができる。バリア導体膜BR1の厚さは、好ましくは0.05~0.5μm程度とすることができる。バリア導体膜BR2の厚さは、好ましくは0.025~0.2μm程度とすることができる。
【0035】
絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)から露出するパッドPD上には、ニッケルめっき膜(Niめっき膜)ME1を含む金属膜MEが形成されている。金属膜MEは、めっき法(好適には無電解めっき法)で形成されためっき膜である。金属膜MEは、パッドPDに接するニッケルめっき膜ME1を含んでいる。好ましくは、金属膜MEは、ニッケルめっき膜ME1と、ニッケルめっき膜ME1上のパラジウムめっき膜(Pdめっき膜)ME2と、パラジウムめっき膜ME2上の金めっき膜(Auめっき膜)ME3との積層膜からなる。
【0036】
ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)から露出するパッドPDと接している。絶縁膜PA1の開口部OP1から露出する部分のパッドPDでは、Al含有導電膜AM1上のバリア導体膜BR2は除去されているため、絶縁膜PAの開口部OP(絶縁膜PA1の開口部OP1)の底部では、パッドPDのAl含有導電膜AM1上に、そのAl含有導電膜AM1と接するように、ニッケルめっき膜ME1が形成されている。ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OPの内壁を構成する絶縁膜PA2の表面および端面とも接している。
【0037】
パラジウムめっき膜ME2は、ニッケルめっき膜ME1の上面と接している。金膜めっきME3は、パラジウムめっき膜ME2の上面と接している。ニッケルめっき膜ME1は、金属膜MEの最下層の膜であり、金膜めっきME3は、金属膜MEの最上層の膜であり、パラジウムめっき膜ME2は、ニッケルめっき膜ME1と金膜めっきME3との間に介在する膜である。
【0038】
金属膜MEは、めっき法(好ましくは無電解めっき法)により形成されている。すなわち、金属膜MEを構成するニッケルめっき膜ME1とパラジウムめっき膜ME2と金めっき膜ME3とは、それぞれ、めっき法(好ましくは無電解めっき法)により形成されている。
【0039】
金属膜MEは、バンプ電極ではなく、ワイヤボンディングを行う際の下地膜であり、OPM(Over Pad Metal)膜として機能し得る。このため、半導体装置CPを用いて半導体パッケージを製造する際には、金属膜MEに接続用部材としてのワイヤ(ボンディングワイヤ)が接合され、その金属膜MEを介してワイヤがパッドPDに電気的に接続される。
【0040】
金属膜MEは、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)から露出するパッドPD上に選択的に形成されており、絶縁膜PAで覆われた部分のパッドPD上には、金属膜MEは形成されていない。金属膜MEは、絶縁膜PAの開口部OPの内壁と接している。
【0041】
ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、パラジウムめっき膜ME2および金めっき膜ME3の各厚さよりも大きく、OPM膜としての金属膜MEは、主としてニッケルめっき膜ME1により構成される。ニッケルめっき膜ME1が、ワイヤボンディング工程で金属膜MEに加えられる力(衝撃)を受け止め、それによって、ワイヤボンディング工程でパッドPDに印加される応力を緩和することができる。このため、ニッケルめっき膜ME1は、ある程度厚いことが好ましい。ニッケルめっき膜ME1を厚くするほど、ワイヤボンディング工程で金属膜MEに加えられる力(衝撃)をニッケルめっき膜ME1が受け止めやすくなる。これにより、ワイヤボンディング時の衝撃で金属膜MEにクラックが発生するのを抑制または防止でき、また、ワイヤボンディング時の衝撃がパッドPDやパッドPDの下の構造(層間絶縁膜や配線)に悪影響を及ぼすのを抑制または防止することができる。このため、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、2.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0042】
金めっき膜ME3は、ニッケルめっき膜ME1の酸化を防止する機能を有している。また、金めっき膜ME3は、半導体装置CPを用いて半導体パッケージを製造する際のワイヤボンディング工程でワイヤを金属膜MEにワイヤを接続しやすくする機能も有している。また、パラジウムめっき膜ME2は、ニッケルめっき膜ME1中のニッケルの拡散を防止するバリア膜としての機能を有している。金属膜MEは、パラジウムめっき膜ME2も含んでいることがより好ましいが、パラジウムめっき膜ME2を含まない場合もあり得、その場合は、ニッケルめっき膜ME1上に、そのニッケルめっき膜ME1に接するように、金めっき膜ME3が形成される。パラジウムめっき膜ME2の厚さは、好ましくは0.05~0.25μm程度とすることができる。金めっき膜ME3の厚さは、好ましくは0.05~0.15μm程度とすることができる。
【0043】
次に、層間絶縁膜IL6よりも下の構造を含む半導体装置CPの断面構造について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態の半導体装置CPの要部断面図であり、図2に示される層間絶縁膜IL6よりも下の構造を含む半導体装置の断面が示されている。
【0044】
本実施の形態の半導体装置CPは、半導体基板SBの主面にMISFETなどの半導体素子が形成され、その半導体基板SB上に、複数の配線層を含む多層配線構造が形成されている。以下に、本実施の形態の半導体装置の構成例について具体的に説明する。
【0045】
図4に示されるように、単結晶シリコンなどからなる半導体基板SBには、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子が形成されている。半導体基板SBには、複数のMISFETが形成されているが、図4には、そのうちの2つのMISFET(ここではnチャネル型MISFET1とpチャネル型MISFET2)が代表して示されている。
【0046】
半導体基板SBの主面には、STI(Shallow Trench Isolation)法などにより素子分離領域STが形成されており、半導体基板SBにおいて、この素子分離領域STにより規定された活性領域に、MISFET1,2が形成されている。素子分離領域STは、半導体基板SBに形成された溝に埋め込まれた絶縁膜からなる。
【0047】
半導体基板SBにp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが形成され、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜GFを介してnチャネル型MISFET1用のゲート電極GE1が形成され、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜GFを介してpチャネル型MISFET2用のゲート電極GE2が形成されている。ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜などからなり、ゲート電極GE1,GE2は、例えば、不純物を導入した多結晶シリコン膜などからなる。
【0048】
半導体基板SBのp型ウエルPW内には、nチャネル型MISFET1のソース・ドレイン用のn型半導体領域NSが形成され、半導体基板SBのn型ウエルNW内には、pチャネル型MISFET2のソース・ドレイン用のp型半導体領域PSが形成されている。ゲート電極GE1と、そのゲート電極GE1の下のゲート絶縁膜GFと、ゲート電極GE1の両側に位置するように半導体基板SB内に形成されたn型半導体領域NS(ソース・ドレイン領域)とにより、nチャネル型MISFET1が形成される。また、ゲート電極GE2と、そのゲート電極GE2の下のゲート絶縁膜GFと、ゲート電極GE2の両側に位置するように半導体基板SB内に形成されたp型半導体領域PS(ソース・ドレイン領域)とにより、pチャネル型MISFET2が形成される。n型半導体領域NSやp型半導体領域PSは、LDD(Lightly doped Drain)構造とすることもでき、この場合、ゲート電極GE1,GE2の側壁上には、サイドウォールスペーサとも称される側壁絶縁膜が形成される。また、n型半導体領域NS、p型半導体領域PS、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各上部に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術を用いて金属シリサイド層(図示せず)を形成してもよい。
【0049】
なお、ここでは、半導体基板SBに形成する半導体素子として、MISFETを例に挙げて説明しているが、この他、容量素子、抵抗素子、メモリ素子、または他の構成のトランジスタなどを形成してもよい。
【0050】
また、ここでは、半導体基板SBとして単結晶シリコン基板を例に挙げて説明しているが、他の形態として、半導体基板SBとして、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることもできる。
【0051】
半導体基板SB上には、複数の層間絶縁膜と複数の配線層とにより多層配線構造が形成されている。
【0052】
すなわち、半導体基板SB上に、複数の層間絶縁膜IL1,IL2,IL3,IL4,IL5が形成され、この複数の層間絶縁膜IL1,IL2,IL3,IL4,IL5に、プラグV1、ビア部V2,V3,V4および配線M1,M2,M3,M4が形成されている。そして、層間絶縁膜IL5上に層間絶縁膜IL6が形成され、この層間絶縁膜IL6上にパッドPDが形成されている。なお、層間絶縁膜IL6上に、パッドPDと同層の配線(図示せず)を形成することもできる。
【0053】
具体的には、半導体基板SB上に、上記MISFET1,2を覆うように、層間絶縁膜IL1が形成されており、この層間絶縁膜IL1にプラグV1が埋め込まれ、層間絶縁膜IL1上に層間絶縁膜IL2が形成され、この層間絶縁膜IL2に配線M1が埋め込まれている。そして、層間絶縁膜IL2上に、層間絶縁膜IL3が形成され、この層間絶縁膜IL3に配線M2が埋め込まれ、層間絶縁膜IL3上に、層間絶縁膜IL4が形成され、この層間絶縁膜IL4に配線M3が埋め込まれている。そして、層間絶縁膜IL4上に、層間絶縁膜IL5が形成され、この層間絶縁膜IL5に配線M4が埋め込まれ、層間絶縁膜IL5上に、層間絶縁膜IL6が形成され、この層間絶縁膜IL6上にパッドPDが形成されている。層間絶縁膜IL1~IL6のそれぞれは、単層の絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)、または複数の絶縁膜の積層膜とすることができる。そして、層間絶縁膜IL6上に、パッドPDを覆うように絶縁膜PAが形成され、この絶縁膜PAには、パッドPDの一部を露出する開口部OPが形成されている。そして、上記図2を参照して説明したように、図4にも示されるように、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)から露出するパッドPD上に、OPM膜として金属膜MEが形成されている。
【0054】
プラグV1は、導電体からなり、配線M1の下に配置されている。プラグV1は、配線M1と、半導体基板SBに形成された種々の半導体領域やゲート電極GE1,GE2などとを、電気的に接続している。
【0055】
ビア部V2は、導電体からなり、配線M2と一体的に形成されており、配線M2と配線M1との間に配置されて、配線M2と配線M1とを電気的に接続している。すなわち、層間絶縁膜IL3には、デュアルダマシン法を用いることにより、配線M2と、配線M2と一体的に形成されたビア部V2とが埋め込まれている。他の形態として、シングルダマシン法を用いることにより、ビア部V2と配線M2とを別々に形成することも可能であり、これは、ビア部V3,V4,V5についても同様である。
【0056】
ビア部V3は、導電体からなり、配線M3と一体的に形成されており、配線M3と配線M2との間に配置されて、配線M3と配線M2とを電気的に接続している。すなわち、層間絶縁膜IL4には、デュアルダマシン法を用いることにより、配線M3と、配線M3と一体的に形成されたビア部V3とが埋め込まれている。
【0057】
ビア部V4は、導電体からなり、配線M4と一体的に形成されており、配線M4と配線M3との間に配置されて、配線M4と配線M3とを電気的に接続している。すなわち、層間絶縁膜IL5には、デュアルダマシン法を用いることにより、配線M4と、配線M4と一体的に形成されたビア部V4とが埋め込まれている。
【0058】
また、ここでは、配線M1,M2,M3,M4は、ダマシン法で形成したダマシン配線(埋込配線)として図示および説明したが、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばアルミニウム配線とすることもできる。
【0059】
層間絶縁膜IL6において、パッドPDと平面視で重なる位置に開口部(スルーホール、貫通孔)SHが形成されており、開口部SH内には、ビア部V5が形成されている(埋め込まれている)。ビア部V5は、導電体からなり、パッドPDと配線M4との間に配置されて、パッドPDと配線M4とを電気的に接続している。すなわち、層間絶縁膜IL6には、シングルダマシン法を用いることにより、ビア部V5が埋め込まれている。
【0060】
なお、本実施の形態では、ビア部V5とパッドPDとを別々に形成しているが、他の形態として、ビア部V5をパッドPDと一体的に形成することも可能である。ビア部V5をパッドPDと一体的に形成する場合は、パッドPDの一部が層間絶縁膜IL6の開口部SH内を埋め込むことにより、ビア部V5が形成される。なお、図4では、ビア部V5を横切る断面が示されているため、ビア部V5も図示されているが、図2では、ビア部V5の図示を省略している。
【0061】
パッドPDと絶縁膜PA(開口部OPを含む)と金属膜MEの構成については、上記図2を参照して説明した通りであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0062】
<半導体装置の製造工程について>
本実施の形態の半導体装置CPの製造工程について、図5図11を参照して説明する。図5図11は、本実施の形態の半導体装置CPの製造工程中の要部断面図である。
【0063】
上記図4に示される第4配線層(配線M4を含む配線層)および第4配線層よりも下の構造は、周知の半導体製造技術を用いて形成することができる。
【0064】
すなわち、図5に示されるように、半導体基板SBにSTI法を用いて素子分離領域STを形成し、イオン注入法を用いてp型ウエルPWおよびn型ウエルNWを形成し、p型ウエルPWおよびn型ウエルNW上にゲート絶縁膜GFを介してゲート電極GE1,GE2を形成し、イオン注入法を用いてn型半導体領域NSおよびp型半導体領域PSを形成する。これにより、半導体基板SBにnチャネル型MISFET1とpチャネル型MISFET2とが形成される。
【0065】
それから、半導体基板SB上に、MISFET1,2を覆うように、層間絶縁膜IL1を形成し、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて層間絶縁膜IL1にコンタクトホールを形成し、そのコンタクトホール内に導電膜を埋め込むことでプラグV1を形成する。
【0066】
それから、層間絶縁膜IL1上に層間絶縁膜IL2を形成してから、層間絶縁膜IL2にシングルダマシン技術を用いて配線M1を埋め込む。それから、層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3を形成してから、層間絶縁膜IL3にデュアルダマシン技術を用いて配線M2およびビア部V2を埋め込む。それから、層間絶縁膜IL3上に層間絶縁膜IL4を形成してから、層間絶縁膜IL4にデュアルダマシン技術を用いて配線M3およびビア部V3を埋め込む。それから、層間絶縁膜IL4上に層間絶縁膜IL5を形成してから、層間絶縁膜IL5にデュアルダマシン技術を用いて配線M4およびビア部V4を埋め込む。
【0067】
層間絶縁膜IL5と層間絶縁膜IL5に埋め込まれた配線M4およびビア部V4とをデュアルダマシン技術を用いて形成した後、層間絶縁膜IL5上に、層間絶縁膜IL6を形成する。
【0068】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、層間絶縁膜IL6に開口部SHを形成する。層間絶縁膜IL6に開口部SHを形成すると、開口部SHの底部では、配線M4の上面が露出される。
【0069】
次に、層間絶縁膜IL6上に、開口部SH内を埋めるようにビア部V5用の導電膜を形成してから、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法またはエッチバック法などを用いて開口部SHの外部の導電膜(ビア部V5用の導電膜)を除去し、開口部SH内に導電膜(ビア部V5用の導電膜)を残す。これにより、開口部SH内に埋め込まれた導電膜(ビア部V5用の導電膜)からなるビア部V5を形成することができる。
【0070】
図5では、半導体基板SBから第4配線層(配線M4および層間絶縁膜IL5)までの積層構造が示されているが、図面の簡略化のために、以降の図6図11では、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示は省略している。なお、図5は、上記図4に対応する断面領域が示されているが、図6図11は、上記図2に対応する断面領域が示されているため、図6図11では、開口部SHおよびビア部V5の図示は省略してある。
【0071】
次に、ビア部V5が埋め込まれた層間絶縁膜IL6上に、図6に示されるように、バリア導体膜BR1とAl含有導電膜AM1とバリア導体膜BR2とからなるパッドPDを形成する。パッドPDは、ビア部V5が埋め込まれた層間絶縁膜IL6上にバリア導体膜BR1とAl含有導電膜AM1とバリア導体膜BR2とをスパッタリング法などを用いて順に形成してから、バリア導体膜BR1とAl含有導電膜AM1とバリア導体膜BR2とからなる積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、形成することができる。この段階では、パッドPD全体が、バリア導体膜BR1と、バリア導体膜BR1上のAl含有導電膜AM1と、Al含有導電膜AM1上のバリア導体膜BR2との積層膜からなる。
【0072】
次に、図7に示されるように、層間絶縁膜IL6上に、パッドPDを覆うように、絶縁膜PA1をCVD(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などを用いて形成する。上述のように、絶縁膜PA1は、酸化シリコン膜である。
【0073】
次に、図8に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜PA1に開口部OP1を形成する。開口部OP1は、開口部OP1が平面視でパッドPDに内包されるように形成される。
【0074】
絶縁膜PA1に開口部OP1を形成するエッチング工程においては、絶縁膜PA1をエッチングして絶縁膜PA1に開口部OP1を形成して開口部OP1からパッドPDのバリア導体膜BR2を露出させてから、更に、開口部OP1から露出するバリア導体膜BR2をエッチングによって除去し、開口部OP1からパッドPDのAl含有導電膜AM1を露出させる。つまり、開口部OP1に平面視で重なる領域では、絶縁膜PA1だけでなく、パッドPDを構成していたバリア導体膜BR2もエッチングされて除去されるため、パッドPDを構成するAl含有導電膜AM1の上面が露出される。一方、開口部OP1を形成した後も絶縁膜PA1で覆われている領域では、バリア導体膜BR2は除去されずに、残存する。
【0075】
次に、図9に示されるように、絶縁膜PA1上に、パッドPDを覆うように、絶縁膜PA2をCVD法などを用いて形成する。上述のように、絶縁膜PA2は、窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜である。絶縁膜PA2は、絶縁膜PA1上と、絶縁膜PA1の開口部OP1から露出するパッドPD上とに形成される。絶縁膜PA2を成膜する前の段階では、絶縁膜PA1の開口部OP1からパッドPDが露出されていたが、絶縁膜PA2を成膜すると、絶縁膜PA1の開口部OP1から露出されていたパッドPDは、絶縁膜PA2で覆われるため、露出していない状態になる。
【0076】
次に、図10に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜PA2に開口部OP2を形成する。開口部OP2は、パッドPD上の絶縁膜PA2を選択的に除去することにより形成され、開口部OP2が平面視で開口部OP1に内包されるように形成される。開口部OP2は、絶縁膜PA2を貫通するように形成され、開口部OP2からパッドPDの一部が露出される。絶縁膜PA2を成膜した段階で、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆われた状態になり、その後で絶縁膜PA2に開口部OP2を形成しても、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆われた状態のままである。
【0077】
このため、パッドPDを形成している平面領域において、絶縁膜PA1は、絶縁膜PA2で覆われているため露出されておらず、この状態は、開口部OP2形成時およびそれ以降も維持される。すなわち、絶縁膜PA2の成膜後は、絶縁膜PA1は露出されない。
【0078】
次に、図11に示されるように、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2の開口部OP2)から露出するパッドPD上に、めっき法(好適には無電解めっき法)を用いて金属膜(めっき膜)MEを形成する。金属膜MEは、好ましくは、ニッケルめっき膜ME1とその上のパラジウムめっき膜ME2とその上の金めっき膜ME3との積層膜からなる。すなわち、絶縁膜PAの開口部OPから露出するパッドPD上に、ニッケルめっき膜ME1とパラジウムめっき膜ME2と金めっき膜ME3とをめっき法(好適には無電解めっき法)を用いて順に形成することにより、ニッケルめっき膜ME1とその上のパラジウムめっき膜ME2とその上の金めっき膜ME3との積層膜からなる金属膜MEを形成する。めっき法を用いることで、絶縁膜PAの開口部OPから露出するパッドPD上に選択的に金属膜MEを形成することができる。
【0079】
その後、必要に応じて半導体基板SBの裏面を研削または研磨して半導体基板SBの厚さを薄くしてから、半導体基板SBを半導体基板SB上の積層構造体とともに、ダイシング(切断)する。この際、半導体基板SBと半導体基板SB上の積層構造体は、スクライブ領域に沿って、ダイシング(切断)される。
【0080】
このようにして、半導体装置(半導体チップ)CPを製造することができる。
【0081】
<検討の経緯>
図12は、本発明者が検討した検討例の半導体装置の要部断面図であり、上記図2に相当するものである。図12においても、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示を省略している。また、図13は、検討例のパッド形成領域を示す平面図であり、上記図3に相当するものである。図13のA2-A2線の位置での断面図が、図12にほぼ対応している。
【0082】
検討例(図12および図13)が本実施の形態(図2および図3)と相違しているのは、以下の点である。
【0083】
すなわち、検討例のパッドPD101は、本実施の形態のパッドPDに相当するものであるが、検討例におけるパッドPD101の外周から開口部OP1の内壁までの距離(間隔)L101は、本実施の形態におけるパッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離(間隔)L1よりも、小さくなっている(L101<L1)。言い換えると、本実施の形態の主要な特徴は、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を、検討例におけるパッドPD101の外周から開口部OP1の内壁までの距離L101よりも大きくしたことである。
【0084】
ここで、距離L1,L101は、平面視における距離であり、従って、半導体基板SBの主面に平行な方向における距離である。より特定的には、距離L1は、平面視におけるパッドPDの外周と開口部OP1の内壁との最近接距離であり、距離L101は、平面視におけるパッドPD101の外周と開口部OP1の内壁との最近接距離である。開口部OP1は、絶縁膜PA1の開口部OP1であるため、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1は、パッドPDにおける絶縁膜PA1で覆われている部分の長さ(距離)と同義である。また、パッドPD101の外周から開口部OP1の内壁までの距離L101は、パッドPD101における絶縁膜PA1で覆われている部分の長さ(距離)と同義である。
【0085】
また、図12では、クラックCRの発生理由は後述するが、パッドPD101の端部(角部)PD101a近傍で、絶縁膜PAにクラックCRが発生した状態が示されている。後述するように、本実施の形態では、そのようなクラックCRの発生を抑制または防止することができる。
【0086】
それ以外については、検討例の半導体装置も、本実施の形態の半導体装置とほぼ同様の構成を有しているので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0087】
本発明者の検討によれば、検討例の場合は、OPM膜である金属膜MEに含まれるニッケルめっき膜ME1の応力に起因して、パッシベーション膜である絶縁膜PAにクラックCRが発生する懸念があることが分かった。これについて、以下に説明する。
【0088】
すなわち、ニッケルめっき膜ME1は、めっき法(好適には無電解めっき法)で形成するが、めっき法で形成した直後は、アモルファス構造を有している。しかしながら、OPM膜である金属膜MEを形成した後に行われる種々の加熱工程(または高温環境)で、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化し、それに起因してニッケルめっき膜ME1の応力が増加する。アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化する可能性がある加熱工程としては、例えば、ウエハテスト工程で行われる加熱工程、組み立て工程で行われる加熱工程、あるいは、製造、出荷された製品を使用する環境に起因した加熱などがある。
【0089】
ウエハテスト工程は、OPM膜である金属膜MEを形成した後で、かつ、ダイシング工程(半導体基板の切断工程)の前に行われる。ウエハテスト工程では、パッド上に形成された金属膜MEに試験用プローブを押し当てるなどして、半導体基板に形成された半導体素子の電気的試験が行われる。このウエハテスト工程では、半導体ウエハを比較的高い温度(例えば250℃以上)に加熱した後で、電気的試験を行う場合がある。この際の加熱工程は、例えばリテンションベーク工程であり、比較的長い時間(例えば1~10時間程度)行われる。
【0090】
また、組み立て工程は、ダイシング工程で取得された半導体チップ(半導体装置CP)を用いて半導体パッケージを製造する工程に対応している。この組み立て工程において、半導体チップが比較的高い温度(例えば250℃以上)に加熱される場合がある。この際の加熱工程は、例えば半田リフロー工程である。
【0091】
アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化し、それに起因してニッケルめっき膜ME1の応力が増加すると、ニッケルめっき膜ME1の応力が硬い絶縁膜PA2を介して伝わり、パッドPD101上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られてしまう。これにより、パッドPD101の端部(角部)PD101a近傍で、絶縁膜PAにクラックが発生しやすくなってしまう。すなわち、図12に示されるようなクラックCRが発生しやすくなる。
【0092】
窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2に比べて酸化シリコンからなる絶縁膜PA1は柔らかい(そのヤング率が低い)。このため、もしも絶縁膜PAが絶縁膜PA2を有していなければ、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化してニッケルめっき膜ME1の応力が増加したとしても、ニッケルめっき膜ME1の応力は、柔らかい絶縁膜PA1によって緩和(吸収)されるため、パッドPD101の端部PD101a近傍で絶縁膜PAにクラックCRが発生する懸念はほとんどない。しかしながら、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1は、吸湿しやすい膜である。このため、絶縁膜PA1上に窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2を形成して、絶縁膜PA1を絶縁膜PA2で覆うことが必要となる。これにより、絶縁膜PA1の吸湿を抑制または防止することができる。従って、絶縁膜PA1を覆う絶縁膜PA2が必要となるが、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2は、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1よりも硬い。このため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化してニッケルめっき膜ME1の応力が増加した場合には、ニッケルめっき膜ME1の応力が硬い絶縁膜PA2を介して伝わってしまい、パッドPD101上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られて上記クラックCRが発生しやすくなる。
【0093】
また、もしも絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われていなければ、ニッケルめっき膜ME1は、開口部OP1の内壁を構成する絶縁膜PA1と接することになる。この場合、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化してニッケルめっき膜ME1の応力が増加したとしても、ニッケルめっき膜ME1の応力は、柔らかい絶縁膜PA1によって緩和(吸収)されやすいため、パッドPD101の端部PD101a近傍で絶縁膜PAにクラックCRが発生するリスクは小さい。しかしながら、もしも絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われていなければ、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁から絶縁膜PA1が吸湿する懸念がある。また、もしも絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁が絶縁膜PA2で覆われていなければ、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁で露出されるバリア導体膜BR2の端面が、金属膜MEを形成するメッキ工程を行うまでの間に酸化される懸念がある。このため、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆っている。
【0094】
パッドPD101の端部PD101a近傍で絶縁膜PAにクラックCRが発生することは、半導体装置の信頼性の低下につながる。例えば、このクラックCRを通って水分が侵入し、パッドPDなどの劣化の原因となる。このため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化してニッケルめっき膜ME1の応力が増加したことに起因して、絶縁膜PAにクラックが発生するのを抑制または防止することが望まれる。
【0095】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体装置CPは、半導体基板SBと、半導体基板SB上に形成された絶縁膜IL6と、絶縁膜IL上に形成されたパッドPDと、を有する。本実施の形態の半導体装置CPは、更に、絶縁膜IL6上にパッドPDを覆うように形成され、かつパッドPDを部分的に露出する開口部OP1を有する絶縁膜PA1と、絶縁膜PA1上に形成され、かつパッドPDを部分的に露出する開口部OP2を有する絶縁膜PA2と、開口部OP2から露出するパッドPD上に形成された金属膜MEと、を有する。絶縁膜PA1は、酸化シリコンからなり、絶縁膜PA2は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。平面視において、開口部OP1はパッドPDに内包され、開口部OP2は開口部OP1に内包されている。絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆われている。金属膜MEは、パッドPDに接するニッケルめっき膜ME1を含んでいる。
【0096】
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が2.5μm以上であり、かつ、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1と、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1とが、次の式1を満たすことである。
L1>T1×2.45-4.61μm ・・・(式1)
【0097】
なお、式1におけるL1とT1の単位は、μmである。これにより、絶縁膜PAに上記クラックCRに相当するものが発生するのを抑制または防止することができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。これについて、以下に具体的に説明する。
【0098】
ニッケルめっき膜ME1は、ワイヤボンディング時の衝撃を受け止める機能を有している。ワイヤボンディング時の衝撃で金属膜MEにクラックが発生しないようにするには、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくすることが有効である。また、ワイヤボンディング時の衝撃がパッドPDやパッドPDの下の構造に伝わらないようにするためには、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくすることが有効である。この観点では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は大きくすることが望ましい。
【0099】
しかしながら、「検討の経緯」の欄でも説明したように、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因して、絶縁膜PAにクラックCRが発生するリスクがあり、そのリスクは、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が大きくなるほど、大きくなる。なぜなら、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力は、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が大きいほど、大きくなるからである。
【0100】
アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力が、絶縁膜PAにクラックを生じさせるのは、ニッケルめっき膜ME1が柔らかい絶縁膜PA1に接しておらず、絶縁膜PA1よりも硬い絶縁膜PA2に接しており、その硬い絶縁膜PA2を介して応力が伝わり、パッドPD上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られるからである。パッドPD上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られると、パッドPDの端部PDa近傍で絶縁膜PAにクラックを生じさせる原因となる。
【0101】
窒化シリコンまたは酸化シリコンからなる絶縁膜PA2は、硬い膜であるため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を緩和する作用はほとんど得られない。それに対して、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1は、比較的柔らかい膜であるため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を緩和する作用を得ることができる。このため、絶縁膜PA1におけるパッドPD上に位置する部分の長さが大きいほど、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を絶縁膜PA1で緩和しやすくなり、パッドPD上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られても、パッドPDの端部PDa近傍で絶縁膜PAにクラックは生じにくくなる。ここで、絶縁膜PA1におけるパッドPD上に位置する部分の長さは、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1と一致している。このため、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1が大きいほど、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を絶縁膜PA1で緩和しやすくなり、パッドPD上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られても、パッドPDの端部PDa近傍で絶縁膜PAにクラックは生じにくくなる。
【0102】
つまり、上記検討例と本実施の形態とを比べると、上記検討例よりも本実施の形態の方が、パッド(PD,PD101)の外周から開口部OP1の内壁までの距離(L1,L101)が大きいため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を絶縁膜PA1で緩和しやすくなる。このため、上記検討例よりも本実施の形態の方が、ニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因してパッド(PD,PD101)上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られても、パッド(PD,PD101)の端部(PDa,PD101a)近傍で絶縁膜PAにクラックは生じにくくなる。
【0103】
そこで、本発明者は、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを防ぐためには、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1をどの程度確保すればよいかについて、検討を行った。図14は、本発明者の検討の結果、得られたグラフである。図14には、ニッケルめっき膜MEの厚さT1と、絶縁膜PAにクラックCRが発生するのを防ぐのに必要となる距離L1との相関を示すグラフである。図14のグラフの横軸は、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1に対応している。図14のグラフの縦軸は、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1に対応しており、従って、絶縁膜PA1におけるパッドPD上に位置する部分の長さに対応している。
【0104】
図14には、ニッケルめっき膜MEの厚さT1を、2.3μm、2.5μm、2.7μm、3.0μm、3.3μmとした場合のそれぞれについて、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を変化させて絶縁膜PAにクラックCRが発生するか否かを調べ、絶縁膜PAにクラックCRが発生しなくなるときの距離L1を求めてそれをプロットしてある。プロットした結果から求めたものが、上記式1である。なお、図14のグラフ中に式2として示した直線は、次の式2の関係にある。
L1=T1×2.45-4.61μm ・・・(式2)
【0105】
図14のグラフにおいて、式2として示した直線よりも下の範囲は、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生する可能性があり、式2として指し示した直線よりも上の範囲であれば、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを防止できる。
【0106】
このため、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1と、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1とが、上記の式1を満たせば、すなわち、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1が、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1の2.45倍から4.61μmを引いた値よりも大きければ、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを抑制または防止することができる。
【0107】
例えば、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が3μmの場合は、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を2.74μmよりも大きくすればよく、それによって、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを抑制または防止することができる。また、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が3.5μmの場合は、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を3.96μmよりも大きくすればよく、それによって、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを抑制または防止することができる。また、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1が4μmの場合は、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を5.19μmよりも大きくすればよく、それによって、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを抑制または防止することができる。
【0108】
上記「検討の経緯」の欄で説明したようなクラックCR発生の課題に気づかなければ、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくした場合でも、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を大きくすることはない。パッドPDにおいて、ワイヤボンディング可能面積は、開口部OP2で規定されるため、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を大きくしてもワイヤボンディング可能面積は増加せず、かえって半導体装置の平面寸法(平面積)の増加を招く虞れがあるからである。本発明者は、上記「検討の経緯」の欄で説明したような課題に気づいたからこそ、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくした場合には、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1に応じて、上記式1が成り立つように、パッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を大きくしている。これにより、絶縁膜PAに上記クラックCRに相当するものが発生するのを抑制または防止することができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0109】
このため、本実施の形態の技術思想は、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくした場合に適用することに意義がある。本実施の形態では、ニッケルめっき膜ME1が有するワイヤボンディング時の衝撃を受け止める機能を向上させるために、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくし、それに伴い、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力が増加することを考慮して、上記式1が成り立つようにパッドPDの外周から開口部OP1の内壁までの距離L1を大きくする。これにより、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因して絶縁膜PAにクラックが発生するのを防ぐことができる。
【0110】
このため、本実施の形態では、ワイヤボンディング時の衝撃を受け止める機能を向上させるために、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を、2.5μm以上とし、より好ましくは、3μm以上としている。これにより、ワイヤボンディング時の衝撃で金属膜MEにクラックが発生するのを抑制または防止でき、また、ワイヤボンディング時の衝撃がパッドPDやパッドPDの下の構造に伝わるのを抑制または防止することができる。
【0111】
(実施の形態2)
図15は、本実施の形態2の半導体装置CPの要部断面図であり、上記図2に相当するものである。図15においても、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示を省略している。また、図16は、本実施の形態2のパッド形成領域を示す平面図であり、上記図3に相当するものである。図16のA3-A3線の位置での断面図が、図15にほぼ対応している。なお、以下では、本実施の形態2のパッドPDを、符号PD1を付してパッドPD1と称することとする。
【0112】
本実施の形態2の半導体装置が、上記実施の形態1の半導体装置と相違しているのは、以下の点である。すなわち、上記実施の形態1では、絶縁膜PAは、酸化シリコンからなる絶縁膜膜PA1と、絶縁膜PA1上の窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2とからなる。一方、本実施の形態2では、絶縁膜PAは、酸化シリコンからなる絶縁膜PA1と、絶縁膜膜PA1上の窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2と、絶縁膜膜PA2上の絶縁膜PA3とからなる。絶縁膜PA3は、絶縁膜PA2上に形成されており、絶縁膜PA3は、絶縁膜PA2の上面と接している。
【0113】
本実施の形態2で用いられる絶縁膜PA3は、無機絶縁膜である。そして、絶縁膜PA3のヤング率は、絶縁膜PA2のヤング率よりも低い。すなわち、絶縁膜PA3は、絶縁膜PA2よりも柔らかい。絶縁膜PA3としては、酸化シリコン膜を好適に用いることができる。絶縁膜PA3の厚さは、好ましくは50nm~500nm程度とすることができる。
【0114】
また、上記実施の形態1では、パッドPDの外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1は、上記式1を満たしている必要があるが、本実施の形態2では、パッドPD1の外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1は、上記式1を満たす必要はない。ニッケルめっき膜ME1の厚さと開口部OP1の平面寸法(平面積)が本実施の形態2と上記実施の形態1とで同じ場合には、本実施の形態2のパッドPD1の平面寸法(平面積)は、上記実施の形態1のパッドPDの平面寸法(平面積)よりも小さくすることが可能となる。このため、上記実施の形態1に比べて、本実施の形態2は、半導体装置の小型化(小面積化)に有利となる。
【0115】
このため、本実施の形態2では、次の式3が成り立つ場合も許容される。
L1≦T1×2.45-4.61μm ・・・(式3)
【0116】
式3を満たす場合は、パッドPD1の外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1を短くできるため、半導体装置の小型化(小面積化)を図ることができる。
【0117】
本実施の形態2では、開口部OP2は、絶縁膜PA3と絶縁膜PA2とを貫通するように形成されている。以下では、絶縁膜PA2と絶縁膜PA2上の絶縁膜PA3との積層膜を、符号LFを付して積層膜LFと称することとする。開口部OP2は、絶縁膜PA2と絶縁膜PA2上の絶縁膜PA3との積層膜LFに形成されており、絶縁膜PA2の開口部OP2の内壁と絶縁膜PA3の開口部OP2の内壁とは、整合している(連続している)。
【0118】
本実施の形態2では、絶縁膜PA2上に絶縁膜PA3が形成されているため、開口部OP2の内壁を構成する絶縁膜PA2の端面は、ニッケルめっき膜ME1と接しているが、その端面以外では、絶縁膜PA2はニッケルめっき膜ME1と接していない。その代わりに、絶縁膜PA3がニッケルめっき膜ME1と接している。
【0119】
本実施の形態2では、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は絶縁膜PA2で覆われており、かつ、絶縁膜PA2上には絶縁膜PA3が形成されている。このため、絶縁膜PAの開口部OPの内壁は、絶縁膜PA2の開口部OP2の内壁(すなわち絶縁膜PA2の端面)と、絶縁膜PA3の開口部OP2の内壁(すなわち絶縁膜PA3の端面)と、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁上に位置する積層膜LFの表面とにより、形成される。なお、積層膜LFの最上層は絶縁膜PA3であるため、積層膜LFの表面は、絶縁膜PA3の表面により構成される。パッドPD1において絶縁膜PAの開口部OPから露出する部分は、パッドPD1において絶縁膜PA2の開口部OP2から露出する部分と一致している。絶縁膜PAの開口部OPの位置と形状(面積)は、実質的には絶縁膜PA2の開口部OP2により規定され、パッドPD1の露出面積(パッドPD1において絶縁膜PA1の開口部OPから露出される部分の面積)は、絶縁膜PA2の開口部OP2により規定される。
【0120】
半導体装置の他の構成については、本実施の形態2も上記実施の形態と基本的には同じであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0121】
次に、本実施の形態2の半導体装置CPの製造工程について、図17および図18を参照して説明する。図17および図18は、本実施の形態の半導体装置CPの製造工程中の要部断面図である。図17および図18では、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示は省略している。
【0122】
本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に絶縁膜PA2形成工程までを行って、上記図7と同様の構造を得る。但し、上記実施の形態1に比べて、本実施の形態2の方が、パッドPD1の平面寸法(平面積)は小さい。なぜなら、上述のように、上記実施の形態1に比べて本実施の形態2の方が、パッドPD1の外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1を小さくできるからである。
【0123】
上記図7の構造を得るまでの工程は、本実施の形態2も上記実施の形態1と基本的には同じであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0124】
本実施の形態2では、絶縁膜PA2を形成した後、図17に示されるように、絶縁膜PA2上に絶縁膜PA3を形成する。絶縁膜PA3は、絶縁膜PA2の上面全体上に形成される。絶縁膜PA3が酸化シリコン膜の場合は、その酸化シリコン膜はCVD法などを用いて形成することができる。
【0125】
次に、図18に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜PA2と絶縁膜PA2上の絶縁膜PA3とからなる積層膜LFに、開口部OP2を形成する。上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、開口部OP2は、平面視で開口部OP1に内包されるように形成される。開口部OP2は、絶縁膜PA3と絶縁膜PA2とを貫通するように形成され、開口部OP2からパッドPD1の一部が露出される。絶縁膜PA2を成膜した段階で、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆われており、その後で絶縁膜PA3を形成してから開口部OP2を形成しても、絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁は、絶縁膜PA2で覆われた状態のままである。
【0126】
このため、パッドPD1を形成している平面領域において、絶縁膜PA1は、絶縁膜PA2で覆われているため露出されておらず、この状態は、開口部OP2形成時およびそれ以降も維持される。すなわち、絶縁膜PA2の成膜後は、絶縁膜PA1は露出されない。
【0127】
次に、上記図15に示されるように、絶縁膜PAの開口部OP(より特定的には絶縁膜PA2,PA3の開口部OP2)から露出するパッドPD1上に、めっき法(好適には無電解めっき法)を用いて金属膜MEを形成する。すなわち、絶縁膜PAの開口部OPから露出するパッドPD1上に、ニッケルめっき膜ME1とパラジウムめっき膜ME2と金めっき膜ME3とをめっき法(好適には無電解めっき法)を用いて順に形成することにより、ニッケルめっき膜ME1とその上のパラジウムめっき膜ME2とその上の金めっき膜ME3との積層膜からなる金属膜MEを形成する。めっき法を用いることで、絶縁膜PAの開口部OPから露出するパッドPD1上に選択的に金属膜MEを形成することができる。
【0128】
その後、必要に応じて半導体基板SBの裏面を研削または研磨して半導体基板SBの厚さを薄くしてから、半導体基板SBを半導体基板SB上の積層構造体とともに、ダイシング(切断)する。この際、半導体基板SBと半導体基板SB上の積層構造体は、スクライブ領域に沿って、ダイシング(切断)される。
【0129】
このようにして、本実施の形態2の半導体装置(半導体チップ)CPを製造することができる。
【0130】
本実施の形態2の主要な特徴のうちの一つは、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2上に、無機絶縁膜である絶縁膜PA3が形成されており、絶縁膜PA3のヤング率は、絶縁膜PA2のヤング率よりも低いことである。開口部OP2は、絶縁膜PA3と絶縁膜PA2とを貫通するように形成されている。
【0131】
絶縁膜PA3のヤング率は、絶縁膜PA2のヤング率よりも低いため、絶縁膜PA3は絶縁膜PA2よりも柔らかく、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を緩和(吸収)しやすい膜である。本実施の形態2では、絶縁膜PA2上に絶縁膜PA3を形成しているため、開口部OP2の内壁を構成する絶縁膜PA2の端面は、ニッケルめっき膜ME1と接しているが、その端面以外では、絶縁膜PA2はニッケルめっき膜ME1と接しておらず、ニッケルめっき膜ME1は、主としてパッドPD1の表面(ここではAl含有導電膜AM1の表面)と絶縁膜PA3とに接している。ニッケルめっき膜ME1が、高いヤング率の(従って硬い)絶縁膜PA2にはほとんど接触せずに、低いヤング率の(従って柔らかい)絶縁膜PA3と接しているため、アモルファス構造のニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を絶縁膜PA3で緩和(吸収)することができる。このため、絶縁膜PA3が形成されていない上記検討例よりも、絶縁膜PA2上に絶縁膜PA3が形成された本実施の形態2の方が、ニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因して、パッド上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られにくくなり、パッド(PD1,PD101)の端部(PDa,PD101a)近傍で絶縁膜PAにクラックは生じにくくなる。
【0132】
また、絶縁膜PA1は酸化シリコン膜であるため、絶縁膜PA1のヤング率は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2のヤング率よりも低い。このため、本実施の形態2では、パッシベーション膜である絶縁膜PAは、高いヤング率の絶縁膜PA2を、絶縁膜PA2よりも低いヤング率の絶縁膜PA1,PA3で挟んだ構造を有している。これにより、ニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力を、絶縁膜PA1と絶縁膜PA3とで緩和(吸収)することができる。そのため、ニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因して、パッドPD1上に位置する部分の絶縁膜PAが金属膜MEに向かって引っ張られにくくなり、パッドPD1の端部PDa近傍で絶縁膜PAにクラックは生じにくくなる。
【0133】
このように、本実施の形態2では、ニッケルめっき膜ME1が、硬い絶縁膜PA2とはほとんど接触せず、主として柔らかい絶縁膜PA3に接触するようにしたことと、硬い絶縁膜PA2を柔らかい絶縁膜PA1,PA3で挟んだ構造を採用している。これにより、ニッケルめっき膜ME1が結晶化したときに発生する応力に起因して絶縁膜PAにクラックが発生するのを抑制または防止することができる。従って、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0134】
また、本実施の形態2は、絶縁膜PA2上に絶縁膜PA3を形成したことで、絶縁膜PAに上記クラックCRが発生するのを防止するため、パッドPD1の外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1は、上記式1を満たす必要はない。このため、上記実施の形態1に比べて、本実施の形態2は、半導体装置の小型化(小面積化)に有利である。
【0135】
一方、上記実施の形態1では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1に応じて、パッドPDの外周から絶縁膜PA1の開口部OP1の内壁までの距離L1を大きくすればよいので、製造工程数を増加させずにすむ。このため、本実施の形態2に比べて、上記実施の形態1は、製造工程数を抑制することができる。
【0136】
また、本実施の形態2では、絶縁膜PA3としては、酸化シリコン膜を好適に用いることができる。しかしながら、絶縁膜PA3が酸化シリコン膜である場合には、絶縁膜PA3が吸湿してしまう可能性がある。たとえ絶縁膜PA3が吸湿したとしても、絶縁膜PA3と絶縁膜PA1との間には、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜PA2が介在しているため、絶縁膜PA3から絶縁膜PA1へ水分が移動するのを抑制または防止することができる。このため、絶縁膜PA3として酸化シリコン膜を用いたとしても、絶縁膜PA1の吸湿の問題は生じずに済む。
【0137】
また、絶縁膜PA3は、樹脂膜のような有機絶縁膜ではなく、無機絶縁膜である。樹脂膜のような有機絶縁膜は、ニッケルめっき膜との密着性が低く、それに比べると、無機絶縁膜は、ニッケルめっき膜との密着性が高い。このため、絶縁膜PA3として、樹脂膜のような有機絶縁膜ではなく、無機絶縁膜を用いることで、ニッケルめっき膜ME1と絶縁膜PA3との密着性を高めることができる。これにより、ニッケルめっき膜ME1の剥離の発生を抑制または防止することができる。従って、半導体装置の信頼性を、より的確に向上させることができる。
【0138】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、上記実施の形態1の変形例に対応している。図19は、本実施の形態3の半導体装置CPの要部断面図であり、上記図2に相当するものである。図19においても、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示を省略している。なお、本実施の形態3のパッド形成領域を示す平面図は、上記図3と同様であるので、ここではその繰り返しの図示は省略する。以下では、本実施の形態3が上記実施の形態1と相違している点について説明する。本実施の形態3が上記実施の形態1と共通している点については、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0139】
上記実施の形態1の場合は、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、絶縁膜PAの厚さT2以下である(T1≦T2)。なお、上記実施の形態1および本実施の形態3の場合は、絶縁膜PAは、絶縁膜PA1および絶縁膜PA2からなるため、絶縁膜PAの厚さは、絶縁膜PA1の厚さと絶縁膜PA2の厚さの合計である。このため、上記実施の形態1では、ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OP外には形成されず、従って、ニッケルめっき膜ME1は、開口部OPの外部で絶縁膜PA(絶縁膜PA2)上に形成されない。
【0140】
それに対して本実施の形態3では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、絶縁膜PAの厚さT2よりも大きい(T1>T2)。このため、本実施の形態3では、ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OP外にも形成されており、従って、ニッケルめっき膜ME1の一部(外周部)は、開口部OPの外部で絶縁膜PA上(より特定的には絶縁膜PA2上)に形成されている。
【0141】
上記実施の形態1に比べて、本実施の形態3では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくしたことで、ニッケルめっき膜ME1がワイヤボンディング時の衝撃を受け止める機能を向上させることができる。これにより、本実施の形態3では、ワイヤボンディング時の衝撃で金属膜MEにクラックが発生するのを、より的確に抑制または防止できる。また、ワイヤボンディング時の衝撃がパッドPDやパッドPDの下の構造に伝わるのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0142】
また、図19には、絶縁膜PA上に樹脂膜RSを形成した場合が示されている。樹脂膜RSは、平面視において開口部OP2を内包する開口部OP3を有している。樹脂膜RSは、必須の構成ではないが、樹脂膜RSを形成すれば、半導体装置(半導体チップ)CPの取り扱いが容易になるという利点を得られる。樹脂膜RSとしては、ポリイミド樹脂膜などを好適に用いることができる。
【0143】
絶縁膜PA上に樹脂膜RSを形成する場合には、ニッケルめっき膜ME1が樹脂膜RSと接しないようにすることが好ましい。本実施の形態3では、ニッケルめっき膜ME1の一部(外周部)が、開口部OPの外部で絶縁膜PA(絶縁膜PA2)上に形成されても、ニッケルめっき膜ME1が樹脂膜RSと接触しないように、樹脂膜RSの開口部OP3の平面寸法(平面積)を設定しておく。
【0144】
もしも、ニッケルめっき膜ME1を形成した際に、ニッケルめっき膜ME1が樹脂膜RSと接触してしまうと、すなわち、ニッケルめっき膜ME1の一部が樹脂膜RS上に形成されてしまうと、以下の不具合が懸念される。すなわち、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などの無機絶縁膜に比べて、樹脂膜は、ニッケルめっき膜に対する密着性が低い。このため、ニッケルめっき膜ME1の一部が樹脂膜RS上に形成されてしまうと、ニッケルめっき膜ME1と樹脂膜RSとが接触している個所では、ニッケルめっき膜ME1と樹脂膜RSとの密着性が低くなり、そこからニッケルめっき膜ME1が剥離することが懸念される。また、ニッケルめっき膜ME1を形成した後、パラジウムめっき膜ME2または金めっき膜ME3を形成する際に、めっき液がニッケルめっき膜ME1と樹脂膜RSとの間に侵入することが懸念される。
【0145】
それに対して本実施の形態3では、ニッケルめっき膜ME1は樹脂膜RSと接していない。すなわち、ニッケルめっき膜ME1は、樹脂膜RS上に形成されていない。ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PA2と接しているが、樹脂膜RSとは接していないため、下地膜(ここでは絶縁膜PA2)に対するニッケルめっき膜ME1の密着性を向上させることができ、ニッケルめっき膜ME1の剥離を的確に防ぐことができる。また、ニッケルめっき膜ME1を形成した後、パラジウムめっき膜ME2または金めっき膜ME3を形成する際に、めっき液がニッケルめっき膜ME1と下地膜(ここでは絶縁膜PA2)との間に侵入するのを、的確に防ぐことができる。
【0146】
(実施の形態4)
本実施の形態4は、上記実施の形態2の変形例に対応している。図20は、本実施の形態4の半導体装置CPの要部断面図であり、上記図15に相当するものである。図20においても、層間絶縁膜IL6よりも下の構造の図示を省略している。なお、本実施の形態4のパッド形成領域を示す平面図は、上記図16と同様であるので、ここではその繰り返しの図示は省略する。以下では、本実施の形態4が上記実施の形態2と相違している点について説明する。本実施の形態4が上記実施の形態2と共通している点については、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0147】
上記実施の形態2の場合は、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、絶縁膜PAの厚さT2以下である(T1≦T2)。なお、上記実施の形態2および本実施の形態4の場合は、絶縁膜PAは、絶縁膜PA1と絶縁膜PA2と絶縁膜PA3とからなる。そのため、絶縁膜PAの厚さは、絶縁膜PA1の厚さと絶縁膜PA2の厚さと絶縁膜PA3の厚さの合計である。このため、上記実施の形態2では、ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OP外には形成されず、従って、ニッケルめっき膜ME1は、開口部OPの外部で絶縁膜PA(絶縁膜PA2)上に形成されない。
【0148】
それに対して本実施の形態4では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1は、絶縁膜PAの厚さT2よりも大きい(T1>T2)。このため、本実施の形態4では、ニッケルめっき膜ME1は、絶縁膜PAの開口部OP外にも形成されており、従って、ニッケルめっき膜ME1の一部(外周部)は、開口部OPの外部で絶縁膜PA上(より特定的には絶縁膜PA3上)に形成されている。
【0149】
上記実施の形態2に比べて、本実施の形態4では、ニッケルめっき膜ME1の厚さT1を大きくしたことで、ニッケルめっき膜ME1がワイヤボンディング時の衝撃を受け止める機能を向上させることができる。その効果は、上記実施の形態3で説明した通りである。
【0150】
また、図20には、絶縁膜PA上に樹脂膜RSを形成した場合が示されている。樹脂膜RSは、平面視において開口部OP2を内包する開口部OP3を有している。樹脂膜RSは、必須の構成ではないが、樹脂膜RSを形成する利点は、上記実施の形態3で説明した通りである。
【0151】
上記実施の形態3と同様に、本実施の形態4においても、絶縁膜PA上に樹脂膜RSを形成する場合には、ニッケルめっき膜ME1が樹脂膜RSと接しないようにすることが好ましい。このため、ニッケルめっき膜ME1の一部(外周部)が、開口部OPの外部で絶縁膜PA(絶縁膜PA2)上に形成されても、ニッケルめっき膜ME1が樹脂膜RSと接触しないように、樹脂膜RSの開口部OP3の平面寸法(平面積)を設定しておく。
【0152】
上記実施の形態3と同様に、本実施の形態4においても、ニッケルめっき膜ME1は樹脂膜RSと接しておらず、従って、ニッケルめっき膜ME1は、樹脂膜RS上に形成されていない。このため、下地膜(ここでは絶縁膜PA2)に対するニッケルめっき膜ME1の密着性を向上させることができ、ニッケルめっき膜ME1の剥離を的確に防ぐことができる。また、ニッケルめっき膜ME1を形成した後、パラジウムめっき膜ME2または金めっき膜ME3を形成する際に、めっき液がニッケルめっき膜ME1と下地膜(ここでは絶縁膜PA2)との間に侵入するのを、的確に防ぐことができる。
【0153】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0154】
1,2 MISFET
AM1 Al含有導電膜
BR1,BR2 バリア導体膜
CP 半導体装置
CR クラック
GE1,GE2 ゲート電極
GF ゲート絶縁膜
IL1,IL2,IL3,IL4,IL5,IL6 層間絶縁膜
M1,M2,M3,M4 配線
ME1 金属膜
ME1 ニッケルめっき膜
ME2 パラジウムメッキ膜
ME3 金めっき膜
NS n型半導体領域
NW n型ウエル
OP,OP1,OP2,OP3 開口部
PA,PA1,PA2,PA3 絶縁膜
PD,PD101 パッド
PDa,PD101a 端部
PS p型半導体領域
PW p型ウエル
RS 樹脂膜
SB 半導体基板
ST 素子分離領域
V1 プラグ
V2,V3,V4,V5 ビア部
図1
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