(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074335
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】プリンタ、プログラム、及び、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/247 20220101AFI20240524BHJP
H04L 61/4511 20220101ALI20240524BHJP
【FI】
H04L45/247
H04L61/4511
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185417
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩一
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA12
5K030KA04
5K030LB08
5K030MD02
(57)【要約】
【課題】プリンタにおいて、LAN経由でのある装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された別の装置との通信を可能とする。
【解決手段】本発明のある態様は、LAN(Local Area Network)に接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信部と、第1ゲートウェイを介して第1装置と通信中に、第1装置との通信異常が発生した場合に、デフォルトゲートウェイの設定を第1ゲートウェイから第2ゲートウェイに切り替えて、第2の装置と通信するように、通信部を制御する制御部と、を備えたプリンタである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LAN(Local Area Network)に接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信部と、
前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記第2の装置と通信するように、前記通信部を制御する制御部と、
を備えたプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1装置との通信が回復した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第2ゲートウェイから前記第1ゲートウェイに切り替えるように、前記通信部を制御する、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記LAN経由で受信したパケットを解析するLAN解析部を備えた、
請求項1又は2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記LAN解析部は、前記移動体通信ネットワークを介して得られる前記第2装置からの要求に応じて、前記パケットを解析する、
請求項3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記第1装置との通信が遮断された場合に、前記制御部は、前記第2ゲートウェイを介して前記第2の装置と通信を行うときに許可する通信ポートを制限するように前記通信部を制御する、
請求項1又は2に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1装置との通信が遮断された場合に、ドメイン名の解決を行うためにアクセスするDNS(Domain Name System)サーバを、前記LANに接続された第1DNSサーバから前記移動体通信ネットワークに接続された第2DNSサーバに切り替えるように、前記通信部を制御する、
請求項1又は2に記載されたプリンタ。
【請求項7】
プリンタの通信を制御するためのプログラムであって、
コンピュータを、
LAN(Local Area Network)に接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信手段、及び、
前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記第2の装置と通信するように制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
プリンタと、前記プリンタと通信可能なサーバと、を含む情報処理システムであって、
前記プリンタは、
LAN(Local Area Network)に接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされたた第1ゲートウェイを介して情報処理装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して前記サーバと通信を行う通信部と、
前記第1ゲートウェイを介して前記情報処理装置と通信中に、前記情報処理装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記サーバと通信するように、前記通信部を制御する制御部と、
前記LAN経由で受信したパケットを解析するLAN解析部と、を備え、
前記サーバは、
前記プリンタに対して前記LAN解析部によるパケットの解析要求を行う解析要求部と、
前記プリンタから前記LAN解析部による解析結果を取得する取得部と、を備えた、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、プログラム、及び、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上の回線若しくは装置における障害を検出して通信ルートの切り替えを行う技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリンタがLAN(Local Area Network)経由で例えばコンピュータ端末と通信中に、LANケーブルの抜去やルータの不具合などによりネットワークに障害が生じ、当該コンピュータ端末との通信が遮断される等の通信異常が発生する場合がある。その場合、プリンタは、自身が属するネットワークを越えた外部のネットワークに接続される装置(例えば、プリンタを管理するサーバ)と通信を行うことができないという問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は、プリンタにおいて、LAN経由でのある装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された別の装置との通信を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、LANに接続された第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信部と、前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信が遮断された場合に、デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えるように、前記通信部を制御する制御部と、を備えたプリンタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、プリンタにおいて、LAN経由でのある装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された別の装置との通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る通信システムにおいてプリンタとインターネットと間の接続関係を示す図である。
【
図3】一実施形態のプリンタの画面表示例を示す図である。
【
図4】
図2に示す通信システムにおいてプリンタによるLAN通信が遮断された状態を示す図である。
【
図5】
図2に示す通信システムにおいて、プリンタのデフォルトゲートウェイが切り替わった後の状態を示す図である。
【
図6】一実施形態のプリンタにおいて、LAN通信が遮断された場合の処理を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態のプリンタにおいて、LAN通信が遮断された場合の画面の表示変化の例を示す図である。
【
図8】
図2に示す通信システムにおいてプリンタによるSIM経由での通信が遮断された状態を示す図である。
【
図9】一実施形態のプリンタにおいて、SIM経由での通信が遮断された場合の画面の表示変化の例を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る通信システムにおいてLAN通信が遮断された場合に、LANにおけるパケットデータを取得するときのシーケンスチャートである。
【
図11】一実施形態に係る通信システムにおいて管理者端末の画面の一例を示す図である。
【
図12】一実施形態に係る通信システムにおいてパケット解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のプリンタ、プログラム、及び、情報処理システムの一実施形態について説明する。なお、以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
本発明のある態様の第1の態様は、LAN(Local Area Network)に接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信部と、前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記第2の装置と通信するように、前記通信部を制御する制御部と、を備えたプリンタである。
【0010】
本開示において「LAN(Local Area Network)」は、ネットワークアドレスにより一意に定まるネットワーク(サブネットワーク)であれば如何なる大きさのネットワークでもよい。LANは、有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークであってもよい。無線ネットワークの場合、例えば、IEEE802a/b/g/j/n/ac/ad等の規格に準拠する。
本開示において「ゲートウェイ」とは、コンピュータネットワークにおいて、異なるネットワーク間で送受信されるデータを中継する物理ネットワークノードであり、ルータ、スイッチ、スイッチングハブ等である。ルータは、異なるネットワーク間でデータを中継する機器である。スイッチ、スイッチングハブは、スイッチングを利用して、データを受信し、かつデータを宛先装置に転送するように、コンピュータネットワーク上で装置間を接続する機器である。
本開示において「移動体通信ネットワーク」は、特にその仕様を限定するものではなく、移動体通信の通信事業者によって運用されている、又は運用予定の無線通信システムに準拠したものであれば特に限定されない。そのような無線通信システムの例としては、一般的に4Gと呼称されているIMT-Advanced規格に準拠する無線通信システム、一般的に5Gと呼称され、IMT-2020規格に準拠する無線通信システム、あるいは5G以降の無線通信システム等が挙げられる。
本開示において「第1装置」は、LANに接続された装置であれば如何なる装置でもよく、例えば、コンピュータ装置、スマートフォン、タブレット型端末等が挙げられる。本開示において「第2装置」は、移動体通信ネットワークに接続された装置であれば如何なる装置でもよく、例えば、コンピュータ装置、サーバ等の移動体通信ネットワークにアクセス可能な装置である。
【0011】
本発明のある態様の第1の態様によれば、プリンタにおいて、LAN経由での第1装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された第2装置との通信が可能となる。
【0012】
本発明のある態様の第2の態様は、前記制御部が、前記第1装置との通信が回復した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第2ゲートウェイから前記第1ゲートウェイに切り替えるように、前記通信部を制御する、第1の態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第2の態様によれば、第1装置との通信が回復した場合にデフォルトゲートウェイの設定を自動的に元に戻すことが可能となり、利用者の操作を要しない。
【0013】
本発明のある態様の第3の態様は、前記LAN経由で受信したパケットを解析するLAN解析部を備えた、第1又は第2の態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第3の態様によれば、LAN経由での通信異常が発生した原因を解析することが可能となる。
【0014】
本発明のある態様の第4の態様は、前記LAN解析部は、前記移動体通信ネットワークを介して得られる前記第2装置からの要求に応じて、前記パケットを解析する、第3の態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第4の態様によれば、LAN経由での第1の装置との通信が遮断されている間においても第2装置経由でパケットの解析を実行させることができる。
【0015】
本発明のある態様の第5の態様は、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記制御部は、前記第2ゲートウェイを介して前記第2の装置と通信を行うときに許可する通信ポートを制限するように前記通信部を制御する、第1から第4のいずれかの態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第5の態様によれば、第2ゲートウェイを介して通信を行うときのセキュリティを高めることができる。
【0016】
本発明のある態様の第6の態様は、前記制御部が、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、ドメイン名の解決を行うためにアクセスするDNS(Domain Name System)サーバを、前記LANに接続された第1DNSサーバから前記移動体通信ネットワークに接続された第2DNSサーバに切り替えるように、前記通信部を制御する、第1から第5のいずれかの態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第6の態様によれば、デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えた後に、ドメイン名の解決を行ってIP(Internet Protocol)通信を行うことが可能となる。
【0017】
本発明のある態様の第7の態様は、プリンタの通信を制御するためのプログラムであって、コンピュータを、LANに接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行う通信手段、及び、前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記第2の装置と通信するように制御する制御手段、として機能させるためのプログラムである。
本発明のある態様の第7の態様によれば、プリンタにおいて、LAN経由での第1装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された第2装置との通信が可能となる。
【0018】
本発明のある態様の第8の態様は、プリンタと、前記プリンタと通信可能なサーバと、を含む情報処理システムであって、前記プリンタは、LANに接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされたた第1ゲートウェイを介して情報処理装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して前記サーバと通信を行う通信部と、前記第1ゲートウェイを介して前記情報処理装置と通信中に、前記情報処理装置との通信異常が発した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記サーバと通信するように、前記通信部を制御する制御部と、前記LAN経由で受信したパケットを解析するLAN解析部と、を備え、前記サーバは、前記プリンタに対して前記LAN解析部によるパケットの解析要求を行う解析要求部と、前記プリンタから前記LAN解析部による解析結果を取得する取得部と、を備えた、情報処理システムである。
本発明のある態様の第8の態様によれば、プリンタにおいて、LAN経由での情報処理装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続されたサーバとの通信が可能となるとともに、プリンタがLAN経由で受信したパケットの解析結果を取得することが可能となる。
【0019】
本発明のある態様の第9の態様は、LANに接続され、デフォルトゲートウェイの設定がされたた第1ゲートウェイを介して第1装置と通信を行い、移動体通信ネットワークに接続された第2ゲートウェイを介して第2装置と通信を行うステップと、前記第1ゲートウェイを介して前記第1装置と通信中に、前記第1装置との通信異常が発生した場合に、前記デフォルトゲートウェイの設定を前記第1ゲートウェイから前記第2ゲートウェイに切り替えて、前記サーバと通信するように制御するステップと、を備えたプリンタに対する制御方法である。
本発明のある態様の第9の態様によれば、プリンタにおいて、LAN経由での第1装置との通信異常が発生した場合に、外部のネットワークに接続された第2装置との通信が可能となる。
【0020】
本発明のある態様の第10の態様は、利用者の操作に応じて、前記第1ゲートウェイを介した通信の通信設定、又は、前記第2ゲートウェイを介した通信の通信設定を、選択的に表示部に表示する、第1から第6のいずれかの態様に記載のプリンタである。
本発明のある態様の第10の態様によれば、利用者は、任意のタイミングでプリンタの通信設定を確認することができる。
【0021】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1に、一実施形態の通信システム1(情報処理システムの一例)の概略構成について示す。
通信システム1において、LANは、ゲートウェイGW1(第1ゲートウェイの一例)、利用者端末2、プリンタ3、DNSサーバ71、DHCPサーバ72等が接続されたネットワークである。LANには、他にプロキシサーバ等が接続され得る。ゲートウェイGW1は、例えば、LAN経由でのパケットのルーティング機能を有するルータで構成される。ゲートウェイGW1は、LANに接続された装置間で送受信されるデータを中継する。
プリンタ3は、据置き型プリンタであってもよいし携帯型プリンタであってもよく、LANに接続された利用者端末2から印字要求を受信し、受信した印字要求に基づいてラベル等の印字媒体を発行する。プリンタ3は、例えばサーマルプリンタであるが、その限りではない。
利用者端末2(第1装置の一例)は、例えばコンピュータ装置、タブレット端末、スマートフォン等の情報処理装置である。利用者端末2とプリンタ3がLAN通信を行う例としては、プリンタ3が利用者端末2に印字要求を送信する場合や、プリンタ3が利用者端末2に対してステータス情報を送信する場合などがある。
【0022】
ゲートウェイGW1は、LAN経由でのパケットを、LANを超えた他のネットワーク(例えばインターネットIN)に中継する機能も備える。
DNSサーバ71(第1DNSサーバの一例)は、ドメイン名の解決を行うサーバである。LAN内の装置は、例えばURL等、ドメイン名を指定してインターネットINに接続された外部装置と通信を行う場合にDNSサーバ71に対して問合せを行い、宛先IPアドレスを取得する。DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ72は、LAN内の装置がインターネットINに接続された外部装置と通信を行う場合に、IPアドレス等の情報を一定期間、割り当てる(貸し出す)サービスを提供する。
【0023】
インターネットINには、管理サーバ5及び管理者端末6が接続されている。
管理サーバ5(第2装置の一例)は、プリンタ3の稼動状況を管理するサーバである、
図1に示す例では、LANに接続された1台のプリンタ3のみが図示してあるが、管理サーバ5が管理対象とするプリンタはその限りではない。管理サーバ5は、LANに接続された2以上のプリンタの各々や、複数のLANに接続された多数のプリンタの各々を管理することができる。
【0024】
プリンタ3と管理サーバ5の間の通信はインターネットINを経由して行われる。プリンタ3と管理サーバ5の通信プロトコルは限定しないが、例えば、MQTT(Message Queueing Telemetry Transport)又はMQTT over WebSocketである。MQTTは、Pub/Sub型の軽量なデータ通信プロトコルである。
プリンタ3は、管理サーバ5による所定のサービスの提供を受けるために、定期的に、プリンタ3の状態を示す状態情報やプリンタ3の設定を示す設定情報を管理サーバ5に送信する。
管理サーバ5は、プリンタごとに状態情報と設定情報をデータベースに記録する。プリンタの状態情報の限定しない例として、プラテンローラの総搬送距離、プリンタの稼動時間、ラベル発行枚数等の情報やエラー情報が挙げられる。プリンタの設定情報の限定しない例として、プラテンローラの搬送速度、印字濃度、プリンタに設置されるセンサ種別等の情報、通信設定に関する情報が挙げられる。管理サーバ5によって提供される限定しないサービスの例として以下が挙げられる。
・プリンタ3の稼動状況、負荷状況を利用者端末2に通知すること
・プリンタ3の消耗部品の交換時期を利用者端末2に通知すること
・プリンタ3で発生したエラーを利用者端末2に通知すること
【0025】
管理者端末6は、例えば、コンピュータ装置、タブレット端末、スマートフォン等の情報処理端末であり、プリンタ3の管理者が操作する端末である。管理者端末6には、プリンタ管理アプリケーションがインストールされている。プリンタ管理アプリケーションは、インターネットINを介して管理サーバ5と通信を行い、管理サーバ5のデータベースに記録されているプリンタ3の状態情報と設定情報を表示させる。それによって管理者がプリンタ3の情報を閲覧することができる。
【0026】
プリンタ3には、電気通信事業者が提供する移動体通信サービスを利用するためにSIM(Subscriber Identity Module)カードを装着可能に構成されている。プリンタ3に装着されたSIMカードは、ゲートウェイGW2(第2ゲートウェイの一例)を介して移動体通信ネットワークMCNを利用することができる。なお、SIMカードは、利用者ごとに移動体通信ネットワークMCNの利用を管理するための利用者識別情報を記憶する利用者識別モジュールの一例である。利用者識別モジュールの他の例として、UIM(Universal Subscriber Identity Module)カード等が挙げられる。
【0027】
移動体通信ネットワークMCNには、DNSサーバ81(第2DNSサーバの一例)が接続されている。移動体通信ネットワークMCNに接続されたゲートウェイGW3は、移動体通信ネットワークMCN上とインターネットINの間でデータを中継する。移動体通信ネットワークMCN及びゲートウェイGW3は、電気通信事業者によって提供される。したがって、プリンタ3は、管理サーバ5又は管理者端末6と通信を行う際に、ゲートウェイGW1経由ではなく、SIMカード及びゲートウェイGW2を経由してデータ(パケット)を送受信することが可能である。
【0028】
図2は、
図1に示した通信システム1において、プリンタ3からインターネットINまでの通信経路を示した図である。
図2では、プリンタ3、管理サーバ5、及び、管理者端末6の各装置に含まれる構成についても示してある。
図2に示すように、プリンタ3が管理サーバ5あるいは管理者端末6と通信を行うためには、LANに接続されたゲートウェイGW1を経由してインターネットINに接続するか、又は、図示しないSIMカードからゲートウェイGW2、移動体通信ネットワークMCN、及び、ゲートウェイGW3を経由してインターネットINに接続するかのいずれかである。
図2に示すように、プリンタ3の初期状態のデフォルトゲートウェイの設定は、ゲートウェイGW1となっている。したがって、プリンタ3から、LANの外部にある管理サーバ5に送信されるデータは、ゲートウェイGW1に送られて、DNSサーバ71によりドメイン名の解決が行われた後に、インターネットIN経由で管理サーバ5に送信される。
【0029】
次に、
図2を参照して、
図1に示した通信システム1に含まれるプリンタ3、管理サーバ5、及び、管理者端末6の構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、プリンタ3は、制御部31、操作入力部32、表示部33、搬送部34、印字部35、ストレージ36、及び、通信部37を備える。
制御部31は、マイクロプロセッサとメモリを主体として構成され、プリンタ3の全体を制御する。例えば、制御部31に含まれるマイクロプロセッサは、ストレージ36に記録されているファームウェアをロードして実行することで、LAN経由で取得した利用者端末2からの印字要求に基づいてラベル等の印字媒体に情報を印字するように、印字部35を制御する。
制御部31のメモリには、ルートテーブルが格納される。制御部31は、LANの通信異常の際の処理(後に
図6を参照して説明する)を実行する。制御部31は、ゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信中に、利用者端末2との通信異常が発生した場合に、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に切り替えて、管理サーバ5と通信するように、通信部37を制御する。
制御部31は、利用者端末2との通信が遮断された場合に、ドメイン名の解決を行うためにアクセスするDNSサーバを、LANに接続されたDNSサーバ71から移動体通信ネットワークMCNに接続されたDNSサーバ81に切り替えるように、通信部37を制御する。
【0031】
後述するが、一実施形態では、制御部31には、ファームウェアの機能の一部として上述したLANアナライザ(LAN解析部の一例)が組み込まれている。LANアナライザは、通信部37からLAN経由で受信したパケットを解析する。LANアナライザにより得られる解析ファイルに基づいて、LAN経由での通信が遮断された原因を解析することが可能となる。
LANアナライザによるパケットの解析開始、及び、パケットの解析停止は、通信部37から移動体通信ネットワーク等を介して管理サーバ5から受信するコマンドによって制御される。
【0032】
操作入力部32は、例えば、ボタン、あるいは表示部23の表示パネルに実装されるタッチ入力装置等の入力装置を含み、利用者による操作入力を受け付ける。表示部33は、例えばLCD等の表示パネル及び表示駆動回路を含み、ファームウェアの実行結果を表示する。
搬送部34は、図示しないプラテンローラ、モータ駆動回路、および、ステッピングモータを含み、プリンタ3内のラベル等の印字媒体の搬送を行う。
印字部35は、図示しないサーマルヘッドおよびヘッド駆動回路を含み、印字要求に応じて、サーマルヘッドの複数の発熱素子に選択的に電流を流すことで、印字を行う。
【0033】
ストレージ36は、不揮発性のメモリであり、例えばフラッシュメモリ等のSSD(Solid State Drive)である。ストレージ36には、例えばLANアナライザによって得られた解析ファイルが記録される。また、ストレージ36は、ルートテーブルを格納する。
【0034】
通信部37は、LANに接続されたゲートウェイGW1を介して、利用者端末2等のLANに接続された外部の装置と通信を行う。すなわち、通信部37は、制御部31による制御の下、LAN経由でパケットを受信又は送信する。
【0035】
通信部37は、移動体通信ネットワークMCNに接続されたゲートウェイGW2を介して、インターネットIN経由で管理サーバ5又は管理者端末6と通信を行う。例えば、通信部37は、SIMカード等を介して移動体通信ネットワークMCNと接続するための通信回路と、アンテナと、例えばSIMカードが挿入可能なスロット等を備えている。
一実施形態では、通信部37は、制御部31による制御の下、プリンタ3の状態情報やプリンタ3の設定情報を、例えば定期的に管理サーバ5に送信する。状態情報の送信タイミングは特に限定するものではないが、例えば、10~30分の間の所定のタイミング(例えば、15分間隔)である。設定情報の送信タイミングは特に限定しないが、例えば、プリンタ3の設定の変更のイベントが発生したタイミングである。
通信部37と管理サーバ5との間の通信で使用される通信プロトコルは限定しないが、例えばMQTT又はMQTT over WebSocketである。
【0036】
図2に示すように、管理サーバ5は、制御部51、ストレージ52、及び、通信部53を備える
制御部51は、マイクロプロセッサとメモリを主体として構成され、管理サーバ5の全体を制御する。例えば、制御部51に含まれるマイクロプロセッサは、管理プログラムを実行することで、管理対象の複数のプリンタ3の各々について状態情報や設定情報をプリンタ3から取得し、図示しないプリンタ管理データベースを適宜、更新する。プリンタ管理データベースは、複数のプリンタ3の各々について状態情報や設定情報を格納するためのデータベースである。
なお、制御部51は、プリンタ3に対してLANアナライザによるパケットの解析要求を行う解析要求部、及び、プリンタ3からLANアナライザによる解析結果(解析ファイル)を取得する取得部として機能する。
一実施形態では、制御部51は、プリンタ3から取得した解析ファイルをストレージ52に格納する。
ストレージ52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置であり、プリンタ管理データベース及び解析ファイルが格納される。通信部53は、プリンタ3及び管理者端末6と通信を行うための通信インタフェースである。
【0037】
図2に示すように、管理者端末6は、複数のプリンタ3の状態情報や設定情報を一元的に管理し、制御部61、操作入力部62、表示部63、及び、通信部64を備える
制御部61は、マイクロプロセッサとメモリを主体として構成され、管理者端末6の全体を制御する。例えば、制御部61に含まれるマイクロプロセッサは、プリンタ管理アプリケーションを実行する。
プリンタ管理アプリケーション上で管理者等が所定の操作を行うことで、プリンタ管理アプリケーションは、特定のプリンタ3に状態情報や設定情報、あるいは特定のプリンタ3によって得られた解析ファイルを表示部63に表示させる。それによって管理者等が、例えば不具合が生じたプリンタ3の不具合の原因を特定することが容易となるため、プリンタ3の利用者を支援することができる。
操作入力部62は、例えば、マウス及び/又はキーボード、あるいは表示部63の表示パネルに実装されるタッチ入力装置等の入力装置を含み、利用者による操作入力を受け付ける。表示部63は、例えばLCD等の表示パネル及び表示駆動回路を含み、プリンタ管理アプリケーションの実行結果を表示する。
通信部64は、プリンタ3及び管理サーバ5と通信を行うための通信インタフェースである。通信部64と管理サーバ5との間の通信で使用される通信プロトコルは限定しないが、例えばHTTPSである。
【0038】
前述したように、一実施形態では、プリンタ3の表示部33は、タッチパネル式の画面を備えている。プリンタ3の利用者は、画面上のボタンを操作することによりプリンタ3の通信設定を確認することができる。
図3に、一実施形態のプリンタ3において、LAN側の通信設定とSIM側の通信設定の画面表示例を示す。
プリンタ3の利用者は、LANを利用する場合、DHCP又は固定アドレスのいずれかを選択できる。
図3の画面G1はDHCPを選択した場合のLAN側の通信設定の画面例を示し、
図3の画面G2は固定アドレスを選択した場合のLAN側の通信設定の画面例を示す。
図3の画面G3は、SIM側の通信設定の画面例を示す。
図3のLAN側の通信設定において、「ゲートウェイ」の項目はデフォルトゲートウェイのIPアドレス(つまり、ゲートウェイGW1のIPアドレス)を示し、「DNS」の項目はDNSサーバのIPアドレスを示す。
図3のSIM側の通信設定において、「ネクストホップ」の項目は、パケットの転送先のIPアドレス(つまり、ゲートウェイGW2のIPアドレス)を示す。
図2に示すように、SIM側の通信設定では、スタティックルートは「0.0.0.0」の固定であり、利用者は変更できないため、画面G3の項目に含まれていない。
【0039】
次に、プリンタ3の通信部37が、ゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信中に、利用者端末2との通信異常が発生した場合を想定する。利用者端末2との通信異常の原因は、例えば、プリンタ3からのLANケーブルの抜去やゲートウェイGW1の故障等が考えられる。
図4は、
図2と比較して、プリンタ3とゲートウェイGW1の間の通信が遮断された状態を示している。
プリンタ3の制御部31は、ゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信中に、利用者端末2との通信異常が発生した場合、インターネットINとの通信を確保すべく、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に変更するように通信部37を制御する。
図5は、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW2に変更した場合の、プリンタ3からインターネットINまでの通信経路を示している。
【0040】
以下、プリンタ3の通信部37がゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信中であり、SIMを介して管理サーバ5と接続されている場合に、LANの通信異常によりLAN通信が遮断された場合のプリンタ3の制御部31の処理について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、プリンタ3において、LAN通信が遮断された場合の処理を示すフローチャートである。
図7は、プリンタ3において、LAN通信が遮断された場合に、プリンタ3における通信設定の画面の表示変化の例を示す図である。なお、
図7において、LAN通信の遮断前の画面G1は、
図3の画面G1と同じである。
図7においてLAN通信の遮断後のSIM側の通信設定の画面G3は、
図3の画面G3と同じである。
【0041】
プリンタ3の制御部31は、LAN通信の遮断を検出すると(ステップS2:YES)、ストレージ36内のルートテーブルを更新する(ステップS4)。ルートテーブルには、パケットを最初に転送するゲートウェイとしてデフォルトゲートウェイが記述されている。
図7に示すように、LAN通信の遮断後には、LAN側の通信設定が画面G1aになる。画面G1aに示すように、デフォルトゲートウェイの設定が「0.0.0.0」となり、LAN側のDNSサーバ71を利用することができなくなるため、ステップS4では、プリンタ3は、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に切り替えるようにして、ストレージ36内のルートテーブルを更新する。LAN通信が遮断された後においても、セッションが切れていなければSIM側のスタティックルートで管理サーバ5との通信を継続できるが、HTTPS通信のセッションは一時的であり、また、電波状況によってセッションが切れることもある。その場合、LAN側のDNSサーバ71によるドメイン名の解決ができなくなる。
そこで、プリンタ3の制御部31は、デフォルトゲートウェイをゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に切り替える。さらにプリンタ3は、LAN側のDNSサーバ71に代えて移動体通信ネットワークMCN側のDNSサーバ81を利用するように、DNSサーバの設定を更新する(ステップS6)。これによって、プリンタ3は、LAN経由での利用者端末2との通信が遮断された場合に、外部のインターネットINに接続された管理サーバ5や管理者端末6との通信が可能となる。
【0042】
プリンタ3の制御部31は、LAN通信の復旧を検出すると(ステップS8:YES)、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW2からゲートウェイGW1に切り替えるようにして、ストレージ36内のルートテーブルを更新する(ステップS10)。さらに、プリンタ3の制御部31は、移動体通信ネットワークMCN側のDNSサーバ81に代えてLAN側のDNSサーバ71を利用するように、DNSサーバの設定を更新する(ステップS12)。すなわち、LAN経由での利用者端末2との通信が回復した場合に、利用者の操作を要せずにデフォルトゲートウェイの設定が自動的に元に戻り、ゲートウェイGW1経由で外部のインターネットINに接続された管理サーバ5や管理者端末6との通信が可能となる。
【0043】
なお、
図6のフローチャートの処理は、LAN側の通信設定がDHCPの場合に限られる。LAN側の通信設定が固定アドレスの場合にLAN通信が遮断したときには、SIM側の通信は、セッションが切れた後にDNSサーバを参照できずドメイン名の解決ができなくなるため、プリンタ3の制御部31は、例えばMQTT/MQTT over WebSocketを利用した管理サーバ5との接続を切る。そして、LANの通信が回復した後にMQTT/MQTT over WebSocketを利用した管理サーバ5との再接続を試みる。
【0044】
次に、プリンタ3の通信部37が、ゲートウェイGW2を介して管理サーバ5と通信中に、管理サーバ5との通信異常が発生した場合を想定する。管理サーバ5との通信異常の原因は、例えば、プリンタ3からのSIMカードの抜去等が考えられる。
図8は、
図2と比較して、プリンタ3とゲートウェイGW2の間の通信が遮断された状態を示している。
プリンタ3の制御部31は、ゲートウェイGW2を介して例えば管理サーバ5と通信中に、管理サーバ5との通信が遮断された場合、インターネットINとの通信を確保すべく、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW2からゲートウェイGW1に変更する。
【0045】
図9は、プリンタ3によるSIM経由での通信が遮断された場合に、プリンタ3におけるSIM側の通信設定の画面の表示変化の例を示す図である。
図9において、SIM経由での通信の遮断前の画面G3は、
図3の画面G3と同じである。SIM経由での通信の遮断後には、SIM側の通信設定が画面G3aになる。画面G3aに示すように、ネクストホップ及びDNSの設定が「0.0.0.0」となってクリアされる。なお、SIMカードを再度挿入し、SIM経由での通信が可能になると、SIM側の通信設定は画面G3aから画面G3に戻る。
SIMカードが再度挿入されると、SIM側のIPアドレス、ネクストホップ(ゲートウェイGW2)、DNSサーバの設定が再度DHCPサーバ72から割り当てられる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のプリンタ3は、LANに接続されたゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信を行い、移動体通信ネットワークMCNに接続されたゲートウェイGW2を介して管理サーバ5と通信を行う通信部37を備える。プリンタ3の制御部31は、ゲートウェイGW1を介して利用者端末2と通信中に、利用者端末2との通信が遮断された場合に、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に切り替えるように、通信部37を制御する。そのため、プリンタ3は、LAN経由での利用者端末2との通信が遮断された場合に、外部のネットワークに接続された管理サーバ5との通信が可能となる。
【0047】
次に、LAN通信異常が発生したことによりLAN通信が遮断された場合のプリンタ3の処理の一実施形態について説明する。
図6を参照して、LAN通信異常によりLAN通信が遮断された場合のプリンタ3の処理を示したが、この処理によってSIM経由での通信による管理サーバ5及び管理者端末6との通信経路が確保されるため、この通信経路を介してLAN通信が遮断された原因を特定することができる。
以下、
図10に示すシーケンスチャートを参照して、一実施形態において、LAN通信が遮断された場合のプリンタ3の処理について説明する。
図10では、LAN通信が遮断される前に、プリンタ3がMQTTによりゲートウェイGW1経由で管理サーバ5と定期的に通信(例えば状態情報や設定情報の送信)を行っている場合を想定する。
【0048】
図10を参照すると、利用者端末2には、例えば、プリンタ3からラベルを発行させようとしたもののプリンタ3と通信ができない場合、例えば通信できないことを示すメッセージ等が表示される(ステップS21)。利用者端末2は、例えば管理者端末6に対して不具合が発生したことを示すメッセージを送信する(ステップS22)。ステップS22のメッセージは、利用者端末2にプリンタ管理アプリケーションがインストールされている場合には当該アプリケーションにより送信してもよいし、例えば電子メール等で送信してもよい。ステップS22に代えて利用者が管理者に電話で不具合の発生を伝えてもよい。
【0049】
管理者端末6の制御部61は、プリンタ管理アプリケーションにより表示される画面上で、プリンタ3のLANにおける通信状況を分析するため、管理者によりプリンタ3のLANアナライザを遠隔で動作させるための所定の操作を操作入力部62から受け付ける(ステップS24)。
図11に、管理者端末6のプリンタ管理アプリケーションにより表示される画面例である画面G5を示す。画面G5は、複数のタブを含むタブ群100、ボタンb1,b2、テキストボックスbx1、及び、解析ファイル一覧102を含む。プリンタ3のLANアナライザに対する遠隔動作は、ボタンb1を操作することで受け付けられる。なお、LANアナライザに対する遠隔動作は、テキストボックスbx1にポート番号を入力することで解析対象のポート番号を指定することができる。
ステップS24の操作受付に応じて管理者端末6の制御部61は、通信部64を介して、プリンタ管理アプリケーションにより、例えばパケット解析開始要求を管理サーバ5に送信する。管理サーバ5の制御部51は、通信部53を介して、パケット解析開始要求に応じたMQTTメッセージをプリンタ3に送信する(ステップS26)。プリンタ3のLANアナライザは、例えば受信したMQTTメッセージを解釈してLANから受信するパケットの解析を開始する(ステップS28)。すなわち、LANアナライザは、移動体通信ネットワークMCNを介して得られる管理サーバ5からの要求に応じて、パケットを解析する。
【0050】
なお、ステップS26のMQTTメッセージを受信する時点でLANアナライザは起動済みである場合を想定している。LANアナライザが起動していない場合には、パケットの解析はできないが、LANとの通信が回復した後にLANアナライザを起動させることで、再度LANとの通信が遮断された場合にパケットの解析を行うことができる。LANの通信が頻繁に遮断する場合には、LANアナライザを予め起動しておくようにしてもよい。
【0051】
ここで、プリンタ3の制御部31がLAN通信の遮断を検出すると(ステップS30)、ルートテーブルを更新し、デフォルトゲートウェイの設定をゲートウェイGW1からゲートウェイGW2に変更する(ステップS32)。さらにプリンタ3の制御部31は、管理サーバ5との間でMQTTの接続を更新する(ステップS34)。このMQTTの接続の更新では、DNSサーバの設定をLAN側のDNSサーバ71から移動体通信ネットワークMCN側のDNSサーバ81に更新する。なお、ステップS30~S34の処理はそれぞれ、
図6のステップS2~S6の処理と同じである。
【0052】
管理者端末6の制御部61は、プリンタ3のLANにおける通信状況を分析するのに必要な時間が経過すると、プリンタ管理アプリケーションにより管理者端末6に表示される画面上での管理者によるボタンb2(
図11参照)の操作に応じて、パケット解析停止要求を管理サーバ5に送信する。管理サーバ5の制御部51は、通信部53を介して、例えばSIM等を介して移動体通信ネットワークMCNに接続することでパケット解析停止要求に応じたMQTTメッセージをプリンタ3に送信する(ステップS36)。プリンタ3の制御部31は、ステップS36により受信したMQTTメッセージを解釈し、LANから受信するパケットの解析を停止するようにLANアナライザを制御する。
次いで、管理者端末6の制御部61は、通信部64を介して、解析ファイルアップロード要求を管理サーバ5を介してプリンタ3に送信する。プリンタ3のLANアナライザは、パケットの解析結果を示す解析ファイルを圧縮及び暗号化して(ステップS40)、管理サーバ5に送信する(ステップS42)。LANによる通信に障害が発生している場合でも、プリンタ3は、ゲートウェイGW2を介して移動体通信ネットワークMCNに接続することで、解析ファイルを管理サーバ5に送信することができる。管理サーバ5は、受信した解析ファイルを送信元のプリンタ3の識別情報と関連付けて保存する。
【0053】
管理者端末6の制御部61は、プリンタ管理アプリケーション上で管理者により当該解析ファイルを指定する所定の操作を受け付けると、管理サーバ5に対して解析ファイルを要求、取得して解析ファイルを表示部63に表示する。
図11の画面G5では、解析ファイル一覧102に、取得した解析ファイルが表示される。プリンタ管理アプリケーションは、解析ファイル一覧102において解析ファイルを指定した所定の操作に応じてネットワークアナライザを起動させ、解析ファイルを復号及び伸長し(ステップS44)、解析ファイルを管理者により分析しやすい形式で表示させる(ステップS46)。
【0054】
図12に、ステップS46で表示される解析ファイルの一例を示す。
図12に示す画面例は、概要表示部201、及び、詳細表示部202を含む。概要表示部201は、キャプチャされた1以上のパケットの概要を示す部分であり、各行が1パケットに対応している。各行は、パケットキャプチャ時刻(Time)、送信元IPアドレス(Source)、宛先IPアドレス(Destination)、プロトコル(Protocol)、データ長さ(Length)、概要情報(Info)のデータを含む。
図12に例示する画面を参照することで、例えば管理者等は、プリンタ3がLAN経由で利用者端末2と通信ができない等の通信エラーが生じた場合に、通信エラーの発生原因を分析して解決することが可能となる。
その際、管理サーバ5の制御部51は、プリンタ3から取得した解析ファイルに基づいて、自動的にLANに起因する通信異常の有無を判定し、判定結果に基づきプリンタ3に対して通信プロトコルの設定変更の要求等を行ってもよい。例えば、管理サーバ5の制御部51は、プリンタ3から取得する設定情報や状態情報に予め対応させたエラー状態等を特定すると、プリンタ3のLANアナライザに対して、特定したエラー状態に関連する解析要求を行う。管理サーバ5は、予めステータスコマンド等やプリンタ設定情報や状態情報に対応付けられた判定テーブルを参照し、解析パケットから抽出したステータスコマンドやプリンタから取得した設定情報や状態情報に対応させたLANに起因する通信エラーを特定すると、特定した通信エラーに対応させて通信プロトコルの設定変更の要求をプリンタ3に対して行ってもよい。
【0055】
一実施形態では、プリンタ3の制御部31は、LAN通信が遮断された場合に、通信のセキュリティを高めるためにゲートウェイGW2を介して管理サーバ5と通信を行うときに許可する通信ポートを制限するように、通信部37を制御するとよい。
ゲートウェイGW2を介して通信を行うときには、管理サーバ5又は管理者端末6との通信とは無関係な通信ポートの使用を禁止することで外部からのアクセスに対する脅威からプリンタ3を保護できる。一実施形態では、ゲートウェイGW2を介して通信を行うときに許可する通信ポートは、8883番(MQTT)、443番(HTTPS又はMQTT over WebSocket)、53番(DNS)である。
【0056】
以上、本発明のプリンタ、プログラム、及び、情報処理システムの一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…通信システム
3…プリンタ
31…制御部
32…操作入力部
33…表示部
34…搬送部
35…印字部
36…ストレージ
37…通信部
5…管理サーバ
51…制御部
52…記憶部
53…通信部
6…管理者端末
61…制御部
62…操作入力部
63…表示部
64…通信部
71…DNSサーバ
72…DHCPサーバ
81…DNSサーバ
100…タブ群
102…解析ファイル一覧
201…概要表示部
202…詳細表示部
IN…インターネット
GW(GW~GW3)…ゲートウェイ
MCN…移動体通信ネットワーク