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  • 特開-清掃用ウェットシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074339
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】清掃用ウェットシート
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A47L13/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185421
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】長野 真季
【テーマコード(参考)】
3B074
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074CC02
(57)【要約】
【課題】使用後に廃棄することで、同一の場所に廃棄される生ごみから発せられる悪臭を低減することができる清掃用ウェットシートを提供する。
【解決手段】清掃用ウェットシート100は、原紙シート1に薬液2が含浸され、薬液2は、ベタイン化合物を含有する。薬液中のベタイン化合物の含有割合は0.40質量%~1.50質量%であることが好ましい。また、薬液はさらに、水素イオン指数が8.00~9.00であり、エタノールを5.00質量%~15.00質量%含有することが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、ベタイン化合物を含有することを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項2】
前記薬液は、前記ベタイン化合物を0.40質量%~1.50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項3】
前記薬液は、水素イオン指数が8.00~9.00であり、エタノールを5.00質量%~15.00質量%含有することを特徴とする請求項2に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項4】
前記薬液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項5】
前記薬液は、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.05質量%~0.15質量%含有することを特徴とする請求項4に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項6】
前記薬液は、塩化ベンザルコニウムを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項7】
前記薬液は、前記塩化ベンザルコニウムを0.05質量%~0.20質量%含有することを特徴とする請求項6に記載の清掃用ウェットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用ウェットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
床面、キッチン周り等の清掃の際には、使い捨てることのできる専用のウェットシートを使用することが簡便である。そこで、種々の被清掃面を清掃するために用いられる清掃用ウェットシートの発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-216843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家庭から排出されるごみは、ごみ箱、ごみ袋等に廃棄され、ごみ箱、ごみ袋等に詰められて一時的に保管されるのが一般的であるが、ごみがキッチンから排出される場合等において、生ごみを含む場合には、保管中に悪臭を発することがあり、その低減のため消臭が必要となることがある。
【0005】
この点、専用の消臭剤を散布することも考えられるが、廃棄するごみの消臭のためだけに専用の消臭剤を用意することは、費用・手間の両面で好ましくない。この点、キッチン等の清掃に利用される清掃用ウェットシートは、使用後に生ごみと一緒にごみ箱、ごみ袋等に廃棄されることが想定されることから、このような使用後の清掃用ウェットシートによって生ごみから発せられる悪臭を低減できれば、専用の消臭剤が不要となり好ましい。
【0006】
本発明の課題は、使用後に廃棄することで、同一の場所に廃棄される生ごみから発せられる悪臭を低減することができる清掃用ウェットシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、ベタイン化合物を含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、前記ベタイン化合物を0.40質量%~1.50質量%含有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、水素イオン指数が8.00~9.00であり、エタノールを5.00質量%~15.00質量%含有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.05質量%~0.15質量%含有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、塩化ベンザルコニウムを含有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、前記塩化ベンザルコニウムを0.05質量%~0.20質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用後に廃棄することで、同一の場所に廃棄される生ごみから発せられる悪臭を低減することができる清掃用ウェットシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る清掃用ウェットシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用ウェットシート100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて記載する数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含むものとする。
【0017】
[1 構成の説明]
まず、清掃用ウェットシート100の構成について説明する。
【0018】
清掃用ウェットシート100は、図1に示すように、矩形状の原紙シート1に薬液2が含浸されたシートである。なお、ここで原紙シートとは、清掃用ウェットシートの薬液が含浸される前の状態のことをいう。
【0019】
[(1) 原紙シート]
原紙シート1は、所定の繊維間をスパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術によって結合することで製造される不織布である。スパンレース製法を用いて製造された不織布であることが特に好ましい。
【0020】
具体的には、原紙シートとしては、例えば、親水性繊維と疎水性繊維とを混合させた上で、これら繊維を結合させることで製造された不織布を用いる。
【0021】
[a 親水性繊維]
親水性繊維としては、綿、パルプ、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維等を使用することができるが、保水性を維持する観点からパルプ、レーヨン、ポリプロピレンスパンボンド繊維(PPSB)等を使用することが好ましい。
また、原紙シートを構成する繊維中の親水性繊維の配合割合は、40質量%~80質量%であることが好ましい。
【0022】
[b 疎水性繊維]
疎水性繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテフレタレート(PBT)等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の複合繊維としては、相対的に融点の低い樹脂(低融点樹脂)を鞘部、相対的に融点の高い樹脂(高融点樹脂)を芯部とした芯鞘型や、低融点樹脂と高融点樹脂とが所定方向に並列したサイドバック型等が挙げられる。
また、原紙シートを構成する繊維中の疎水性繊維の配合割合は、20質量%~60質量%であることが好ましい。
【0023】
[c 目付け量]
原紙シートの目付け量は、汚れの保持能力と、シートの柔軟性とを両立する観点から、50~100g/mであることが好ましい。なお、目付け量は、JIS P8124:2011に従って測定した坪量のことをいう(以下同じ。)。
【0024】
[d CNF]
原紙シートには、セルロースナノファイバー(CNF)を添加することができる。
CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm~1000nm)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
【0025】
CNFは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でもよいが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、清掃用ウェットシート100は、清掃面等を強く擦っても破れにくくなるからである。
【0026】
[(a) CNFに使用可能なパルプ繊維]
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
[(b) CNFの解繊方法]
CNFの製造に用いられる解繊方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
なお、上記解繊方法などにより機械的処理のみ施した(変性させていない)CNF、すなわち、官能基未修飾のCNFは、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたものに対し、熱安定性が高いため、より幅広い用途に使用可能であるが、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたCNFを本発明に使用することも可能である。
また、例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施してもよいし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3nm~4nmとなるiCNF(individualized CNF)(シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理のみを施したCNFや、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施したCNFでもよい。
【0028】
[e エンボス]
原紙シート1には、図1に示すように、被清掃面の汚れに対する拭き取り性能を向上させるため、シートが厚み方向に圧縮され、かつ凹凸が形成された部分であるエンボス11が備えられている。
【0029】
エンボス11は、シートの一面側へと凸となる凸エンボス111と、シートの他面側へと凸(一面側へと凹)となる凹エンボス112と、を含み、これらが互い違いに並ぶように配置されている。
また、凸エンボス111及び凹エンボス112はいずれも、原紙シート1の平面視において、略楕円形状であり長軸方向略中央部にくびれ部を有する、いわゆるひょうたん形となるように形成されている。
【0030】
なお、エンボスの配置及び形状は、清掃用ウェットシート100の両面について十分に拭き取り性能を向上させる観点から上記のものが好ましいが、これに限られず、適宜変更することが可能である。また、好ましくはないものの、エンボスが備えられていない平面状の原紙シートを使用することも可能である。
【0031】
[(2) 薬液]
上記のような原紙シート1に含浸される薬液2としては、ベタイン化合物を含有するものを使用する。薬液中のベタイン化合物の含有割合は、0.40質量%~1.50質量%であることが好ましい。
【0032】
ベタイン化合物とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物のことをいい、例えば、トリメチルグリシン等のグリシン型ベタインや、イミダゾール型ベタインを含む。
【0033】
また、薬液2は、水素イオン指数(pH)が8.00~9.00の弱アルカリ性であり、エタノールを5.00質量%~15.00質量%含むものを使用することが好ましく、エタノールを8.00質量%~12.00質量%含むものを使用することがさらに好ましい。なお、薬液2のその他の成分は精製水である。
【0034】
また、薬液2は、原紙シート1の乾燥時の質量に対して、150質量%~450質量%含浸させることが好ましく、180質量%~350質量%含浸させることがさらに好ましい。
なお、乾燥時の原紙シートの質量に対する含浸させる薬液の質量の割合のことを薬液含浸率という。
薬液は、乾燥させた原紙シートに対して含浸され、清掃用ウェットシート100の使用時に清掃面から放出されることとなる。
【0035】
[2 効果の説明]
本実施形態の清掃用ウェットシート100によれば、原紙シート1に含浸させる薬液2として、ベタイン化合物を含有するものを使用する。
ベタイン化合物は、例えば、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンといった生ごみから発生し易い悪臭成分に対する消臭効果を有することから、清掃用ウェットシート100を、清掃に使用した後にごみ箱、ごみ袋等に廃棄することで、同一のごみ箱、ごみ袋等に廃棄される生ごみから発せられる悪臭を低減することができる。
【0036】
また、薬液2が、ベタイン化合物を0.40質量%~1.50質量%含有することで、コストの増加を抑えつつ、十分な消臭効果を発揮させ易くなる。
すなわち、ベタイン化合物の含有割合を0.40質量%よりも小さくすると、上記のような生ごみから発生し易い悪臭成分に対して十分な消臭効果を発揮させ難くなり、反対にベタイン化合物の含有割合を1.50質量%よりも大きくしても、消臭効果は1.50質量%の場合と変わらず、コストのみが増大することとなる。
【0037】
本実施形態の清掃用ウェットシート100によれば、原紙シート1に含浸させる薬液2として、水素イオン指数(pH)が8.00~9.00の弱アルカリ性であり、エタノールを5.00質量%~15.00質量%含むものを使用する。
これによって、エタノールの含有量が比較的多いことから油汚れを浮かせることができ、また、乾燥が比較的早く、かつ、pHが9.00以下であることにより、被清掃面の劣化スピードが抑えられることから、被清掃面を傷める可能性を抑えつつ、油汚れ及び液体汚れに対する拭き取り性能を向上させることができる。
【0038】
[3 変形例]
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0039】
薬液2は、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)を含んでいてもよい。薬液2がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する場合、その含有割合は、0.05質量%~0.15質量%であることが好ましい。
【0040】
薬液2がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することで、油汚れ及び液体汚れに対する拭き取り性能をさらに向上させることができる。
【0041】
また、薬液2は、さらに塩化ベンザルコニウムなどの除菌剤を含んでいてもよい。薬液2が除菌剤として塩化ベンザルコニウムを含有する場合、その含有割合は、0.05質量%~0.20質量%であることが好ましい。
【0042】
薬液2が塩化ベンザルコニウムなどの除菌剤を含有することで、清掃用ウェットシート100による除菌力及び清掃用ウェットシート100の保存性を向上させることができる。
【実施例0043】
次に、本発明の実施例及び比較例について評価した結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[1 試験1:キッチン清掃後の薬液含浸率の検証]
まず、前提として、キッチンの清掃によって清掃用ウェットシートの薬液含浸率がどの程度低下するかを検証した結果について説明する。
【0045】
[(1) サンプル作成]
以下の清掃用ウェットシートを作成した。
【0046】
[a 原紙シート]
原紙シートとして、目付け量60g/mで、PET繊維40質量%、レーヨン繊維40質量%、PP/PEバインダー20質量%からなり、スパンレースによって結合することで製造された不織布(長辺300mm、短辺200mmの矩形状)を使用した。なお、エンボス加工は施していない。乾燥時の質量は3.86gである。
【0047】
[b 薬液]
原紙シートに含浸させる薬液としては、ベタイン化合物を0.50質量%、エタノールを10.00質量%含む(残りの成分は精製水)ものを使用した。含浸させた薬液の質量は9.90gである。なお、ベタイン化合物としては、エポリオンN-300とエポリオンOS-660(共に共立製薬株式会社製)とを、1:1の割合で混合したものを使用した。
【0048】
[(2) 試験内容]
上記のサンプルに係る清掃用ウェットシートを用いて、以下の試験を行った。なお、同一の試験を10回実施し、平均値を算出した。
【0049】
[a 工程1]
上記サンプルに係る清掃用ウェットシートを密閉された袋に入れ、24時間静置した。
【0050】
[b 工程2]
工程1を経た清掃用ウェットシートの質量を測定した。
【0051】
[c 工程3]
工程1を経た清掃用ウェットシートを用いて、0.8mの面積を清掃した。具体的には、清掃用ウェットシートを、その一面を上にして、面積0.8mの机(材質:ポリプロピレン)上に置き、その上に重り(質量1000g、平面視で長辺250mm、短辺100mmとなる直方体状)を載せた上で、上記机の全面を一度ずつ擦るように移動させた。
【0052】
[d 工程4]
工程3を経た清掃用ウェットシートを用いて、再度0.8mの面積を清掃した。方法は工程3と同一であるが、清掃用ウェットシートを裏返して(工程3で上にした面を下にして)実施した。
【0053】
[e 工程5]
工程4を経た清掃用ウェットシートの質量を測定した。
【0054】
[(3) 試験結果]
試験の結果を表Iに示す。なお、数値は全て10回の試験の平均値を示している。
【0055】
【表1】
【0056】
[(4) 評価]
原紙シートの質量と清掃前のウェットシートの質量から、工程2での測定時の薬液含浸率を算出すると、約253%となる。
また、原紙シートの質量と清掃後のウェットシートの質量から、工程5での測定時の薬液含浸率を算出すると、約171%となる。
また一般的なキッチンの清掃時に拭き取りを要する面積は、横0.65m×縦2.55m=1.6575mの面積からシンク内の面積を考慮して、1.6m程度であることが想定され、上記工程3及び工程4における清掃面積を合わせると、一般的なキッチンの清掃時に拭き取りを要する面積と一致する。
これらの結果から、一般的なキッチンの清掃時における清掃用ウェットシートの薬液含浸率の低下率は、253%-171%≒80%程度であることが想定される。
【0057】
[2 試験2:品質検証1(検知管法による消臭試験)]
以下の試験によって、ベタイン化合物の含有の有無による消臭性能の差について評価した結果について説明する。
【0058】
[(1) サンプル作成]
以下の実施例及び比較例の清掃用ウェットシートを作成した。
【0059】
[a 実施例]
試験1と同一の原紙シートに、試験1と同一の薬液を7.70g含浸させた。この場合、薬液含浸率は約200%となる。この値は、薬液含浸率300%の清掃用ウェットシートをキッチンの清掃に使用し、薬液含浸率が100%低下した状態を想定している。
なお、薬液含浸率が100%低下した状態としたのは、一般的なキッチンの清掃時における清掃用ウェットシートの薬液含浸率の低下率が約80%であるという試験1の結果を基に、低下率が想定よりも大きくなった場合に備えて20%分の余裕を見たことによる。
【0060】
[b 比較例]
試験1と同一の原紙シートに、試験1と同一の薬液からベタイン化合物を除いたもの(エタノール10.00質量%、残りの成分は精製水)を、実施例と同様に7.70g含浸させた。この場合、薬液含浸率は実施例と同一となる。
【0061】
[(2) 試験内容]
上記の実施例及び比較例に係る清掃用ウェットシートを用いて、一般社団法人繊維評価技術協議会SEKマーク繊維製品認証基準(2022年4月1日改訂版)の21.消臭性試験に記載の検知管法にしたがって、消臭性試験を実施した。ただし、臭気成分を生ごみ臭の主成分であるアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンの4種類とし、初発濃度をアンモニア100ppm、硫化水素4ppm、メチルメルカプタン8ppm、トリメチルアミン28ppmとし、容器の容量を5L、測定時間(放置時間)を1時間とした。
【0062】
[(3) 試験結果]
試験の結果を表IIに示す。
【0063】
【表2】
【0064】
[(4) 評価]
実施例に係る試験結果と比較例に係る試験結果とを比較すると、比較例では減少率が低い硫化水素及びメチルメルカプタンの減少率が、実施例では大幅に改善している。これによって、清掃用ウェットシートにベタイン化合物を加えることで、生ごみ臭に対する消臭効果を改善できることが分かる。
なお、アンモニア及びトリメチルアミンの減少率は実施例の方が極僅かに低くなっているが、いずれにしても高い水準であることに変わりはなく、誤差の範囲内に過ぎないことから、硫化水素及びメチルメルカプタンという除去され難い物質の減少率が大幅に改善していることの方が重要である。
【0065】
[3 試験3:品質検証2(官能評価による消臭試験)]
以下の試験によって、ベタイン化合物の含有の有無による消臭性能の差について評価した結果について説明する。
【0066】
[(1) サンプル作成]
試験2と同一の実施例及び比較例に係る清掃用ウェットシートを作成した。
【0067】
[(2) 試験内容]
上記のサンプルに係る清掃用ウェットシートを用いて、以下の試験を行った。
【0068】
[a 工程1]
芳香消臭脱臭剤協議会のマニュアルに従って生ごみを作成した。具体的には、牛肉、ネギ、卵の殻及び人参を同量ずつ刻んで35℃で72時間熟成した。
【0069】
[b 工程2]
工程1で発生した生ごみより発生した臭気を、容量5Lの密閉された容器に、臭気強度4となるように調整して実施例又は比較例の清掃用ウェットシートと共に入れた。なお、清掃用ウェットシートを入れない容器も用意した。
【0070】
[c 工程3]
工程2から72時間後に、5名の判定者が各バッグについて開封して臭気を確認し、6段階(臭気が強い方から順に5~0)で評価し、その平均値を算出した。
【0071】
[(3) 試験結果]
試験の結果を表IIIに示す。
【0072】
【表3】
【0073】
[(4) 評価]
実施例に係る試験結果と比較例に係る試験結果とを比較すると、比較例では清掃用ウェットシートを入れない場合と比較して、評価平均値の改善が3.5-1.2=2.3にとどまるのに対し、実施例では、清掃用ウェットシートを入れない場合と比較して、評価平均値の改善が3.5-0.2=3.3となり、比較例よりも1ポイント分多く改善している。
これによって、清掃用ウェットシートにベタイン化合物を加えることで、生ごみ臭に対する消臭効果を改善できることが分かる。
【0074】
[4 試験4:品質検証3(消臭剤の比較)]
以下の試験によって、消臭剤毎の消臭性能の差について評価した結果について説明する。
【0075】
[(1) サンプル作成]
以下の実施例及び比較例の清掃用ウェットシートを作成した。
【0076】
[a 実施例]
試験2の実施例と同一である。
【0077】
[b 比較例1]
実施例と同一の原紙シートに、実施例と同一の薬液からベタイン化合物を緑茶乾留エキスに替えたもの(緑茶乾留エキス0.50質量%、エタノール10.00質量%、その他の成分は精製水)を、実施例と同様に7.70g含浸させた。この場合、薬液含浸率は実施例と同一となる。
【0078】
[c 比較例2]
実施例と同一の原紙シートに、実施例と同一の薬液からベタイン化合物をカキタンニンに替えたもの(カキタンニン0.50質量%、エタノール10.00質量%、その他の成分は精製水)を、実施例と同様に7.70g含浸させた。この場合、薬液含浸率は実施例と同一となる。
【0079】
[(2) 試験内容]
上記の実施例及び比較例に係る清掃用ウェットシートを用いて、試験2と同一の方法で試験を行った。ただし、容器の容量は45Lとした。
【0080】
[(3) 試験結果]
試験の結果を表IVに示す。
【0081】
【表4】
【0082】
[(4) 評価]
実施例に係る試験結果と比較例1及び比較例2に係る試験結果とを比較すると、比較例1及び比較例2では減少率が低い硫化水素の減少率が、実施例では大幅に高くなっている。また、同様に比較例1及び比較例2では減少率が低いメチルメルカプタンの減少率も、実施例の方が僅かに高くなっている。これによって、これら消臭剤の中で、ベタイン化合物が最も生ごみ臭に対する消臭効果を有することが分かる。
なお、アンモニア及びトリメチルアミンの減少率に有意な差は見られないが、実施例において、硫化水素という除去され難い物質の減少率が他の二つと比較して大幅に優れ、かつ同様に除去され難いメチルメルカプタンの減少率でも優れていることが重要である。
【符号の説明】
【0083】
100 清掃用ウェットシート
1 原紙シート
2 薬液
図1