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  • 特開-流体式アクチュエータ 図1
  • 特開-流体式アクチュエータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074346
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】流体式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20240524BHJP
   F04B 9/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F15B15/14 340Z
F04B9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185431
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】593102448
【氏名又は名称】株式会社ユキテック
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】深見 琢
(72)【発明者】
【氏名】徳永 明孝
【テーマコード(参考)】
3H075
3H081
【Fターム(参考)】
3H075AA05
3H075BB03
3H075CC31
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB03
3H075DB13
3H075DB22
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC24
3H081DD23
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】圧油を供給して持ち上げた重量物などにおいて急にバルブを開放し、加圧を解除するとき、ネジ結合によりピストンが動作することで、重量物による急激な下降事故を防止する。
【解決手段】
シリンダチューブ内にピストンを往復動自在に設ける。ピストンは機械的に、すなわちネジ結合により作動軸と接合される。シリンダチューブより後端部が突出する作動軸を軸回りに回転させると、ピストンが移動し、作動流体室の容積を狭める。すなわち、流体式アクチュエータが作動流体の圧力を高めることで所定の仕事をなす。そして、作動軸が逆転されると、作動流体室の容積が拡がり一度押し出された作動流体が、作動軸の逆転動作の速度に比例して作動流体室に戻ることとなる。このため、比較的緩やかにピストンが移動し、ジャッキ下降事故などを未然に防止することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ内のピストンの往復動によって非圧縮性流体を圧縮し、または圧縮を解除することにより、この非圧縮性流体の圧力を制御して対象物に外力を付加しまたはこの外力を除去する流体式アクチュエータであって、
上記ピストンはその一端面でシリンダチューブ内の一端部に上記非圧縮性流体が充填された作動流体室を隔成し、このピストンの他端部に作動軸の一端部をネジ結合し、この作動軸に軸線回りの回転を付与し、このネジ結合を介してピストンを往復動させる構成の流体式アクチュエータ。
【請求項2】
上記作動軸の他端部はシリンダチューブの他端部から突出させ、この突出端部にこの作動軸に軸線回りの回転を付与するハンドルを固着し、この作動軸を回転させてピストンを往復動させる請求項1に記載の流体式アクチュエータ。
【請求項3】
上記ピストンはその軸方向に延びて他端面に開口した有底穴を有し、その有底穴の内周面にネジ溝を形成し、このネジ溝に螺合するネジ山を上記作動軸の一端部外周面に形成した請求項1または請求項2に記載の流体式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流体式アクチュエータ、例えばハンドル操作によりネジ結合を介してピストンを往復動させて対象部材に外力を作用させる流体式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ジャッキなどを従来の手押しポンプで操作する場合、上昇時はレバーハンドルを上下させて、ジャッキを上昇させる。下降時は、手押しポンプに付属のストップバルブを緩めて、油圧を抜く作業が一般的である。
その際、急にバルブを緩めると、ジャッキが急速に下降するために重量物が落下する恐れがあり、事故に繋がる可能性がある。
従来の手押しポンプとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平07-052385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような手押しポンプを使用した場合、以下の問題点が生じていた。すなわち、油圧ジャッキなどを手押しポンプで操作する場合、上昇時はレバーハンドルを上下させて、ジャッキを上昇させる。下降時は、手押しポンプに付属のストップバルブを緩めて、油圧を抜く。その際、急にバルブを緩めると、ジャッキが急速に下降し、重量物が落下する恐れがあり、事故に繋がる可能性がある。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、この急激な下降を防ぐため、ピストン駆動にスクリュー方式を採用し、ネジ締めまたはネジをゆるめてピストンが前進すれば、ジャッキが上昇しネジを逆転させてピストンが後退すれば、それに応じた速度でジャッキも下降し、急激な下降動作を行うことがなく,安全にジャッキ作業を行うことができることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、ネジ結合を介してピストンの往復動を行う流体式アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、シリンダチューブ内のピストンの往復動によって非圧縮性流体を圧縮し、または圧縮を解除することにより、この非圧縮性流体の圧力を制御して対象物に外力を付加しまたはこの外力を除去する流体式アクチュエータであって、上記ピストンはその一端面でシリンダチューブ内の一端部に上記非圧縮性流体が充填された作動流体室を隔成し、このピストンの他端部に作動軸の一端部をネジ結合し、この作動軸に軸回りの回転を付与し、このネジ結合を介してピストンを往復動させる構成の流体式アクチュエータである。
【0008】
例えばこの作動軸の他端部をシリンダチューブの他端部から突出させ、この突出端部にこの作動軸に軸回りの回転を付与するハンドルを固着し、この作動軸を回転させてピストンを往復動させる構成の流体式アクチュエータである。
この流体式アクチュエータは、シリンダチューブ内にピストンを直線的な往復動を行うよう支持し、このピストンの往動または復動によりシリンダチューブ内の作動流体を圧縮し、またはその圧縮を解除する。作動流体を外部機器、外部機構などに接続パイプなどを介して作用させることで、その流体圧力を印加またはその印加を解除する。外部機器とは油圧ジャッキないしこれが装着されたリフタその他を含む。
この場合、ピストンはこれを駆動するためのピストン作動軸とはネジ結合されている。ピストン作動軸をハンドルでその軸線回りに回転させることにより、ネジ結合を介してピストンを前進または後退させる構成である。すなわち、ネジ結合は、そのねじ込み、またはネジを緩めることで、ピストンの軸線方向への移動を可能としている。
つまり、このアクチュエータでは、ハンドルで(手動でまたは電動で)作動軸を回転させることにより、ピストンを往復動(直線動)させ、流体を圧縮しその圧力を対象となる機器、機構にとっての外力として使用する。非圧縮性流体には作動油等の液体、空気を含む。また、ハンドルとはバーハンドル、ホイール型ハンドルその他を含むこととする。ハンドルに限らず、作動軸に回転を与えるために例えばステップモータを使用することも可能とする。また、ハンドルと槽軸との間に特に設計された歯車機構を介在させてネジ山のピッチに合わせた角度の回転を付与する構成としても良い。
さらに、上記ネジ結合は、ピストンに有底穴を形成し、この有底穴内面にネジ溝を形成する構造とすることができる。さらに、ピストン他端部を一端部より小径としその小径部外周面にネジ山を形成する構造を採用することもできる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記作動軸の他端部はシリンダチューブの他端部から突出させ、この突出端部にこの作動軸に軸回りの回転を付与するハンドルを固着し、この作動軸を回転させてピストンを往復動させる請求項1に記載の流体式アクチュエータである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記ピストンはその軸方向に延びて他端面に開口した有底穴を有し、その有底穴の内周面にネジ溝を形成し、このネジ溝に螺合するネジ山を上記作動軸の一端部外周面に形成した請求項1または請求項2に記載の流体式アクチュエータである。
ピストンに穴を穿ち、穴の内周面にネジ溝を形成(配設)する構成によれば、シリンダチューブ内周面に摺接するピストン外面を幅広く設計することが可能となり、そのコンパクト化、その作動の安定性を得るものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1~3に記載の発明によれば、ピストンの往復動をネジの螺合を介して行う構成としてあるため、動力源から付与された作動軸の回転は、ネジ結合を介してピストンの摺動(往復動)に転換される。その結果、作動流体が圧縮され、またその圧縮を解除されることにより、外部機器、外部機構に所定の外力を供給し、解除することとなる。よって、外部機器などに付加した外力に対する反力が当該アクチュエータに作用してもピストンおよびネジ結合機構部分により低減される。よって、その安全性の確保が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施例1に係る流体式アクチュエータを示す断面図である。
図2】この発明の実施例1に係る流体式アクチュエータを示すその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。図1図2はこの発明の実施例1に係る流体式アクチュエータを示す。
【実施例0014】
図1図2において、この実施例に係る流体式アクチュエータ10は、有底の円筒体であるシリンダチューブ11と、このシリンダチューブ11の軸孔(同一円形断面の有底孔)111に摺動自在に支持された円柱体であるピストン12とを含む。シリンダチューブ11の軸孔111の一端部(底部)はフロントカバー部13として、また、軸孔111の他端部(開口部)は円筒形状のエンドカバー部14にネジ結合されたエンドプレート14Aにより、それぞれ封止されている。すなわち、シリンダチューブ11の軸孔111の他端部側にはこの円筒形状のエンドプレート14Aが挿入され、このエンドプレート14Aの軸孔(軸孔111と同軸に配設されている)内に上記ピストン12が摺動自在に挿入・支持されているのである。
なお、図2において示すように、エンドプレート14Aは側面視すると円形であって、その円周方向において等間隔に配置された複数個の締結ネジ31によりシリンダチューブ11の他端に固着されている。
したがって、このシリンダチューブ11の軸孔111の一端部には作動流体室13Aが隔成されている。すなわち、フロントカバー部13とピストン12の一端面との間に作動流体室13Aが形成(画成)されており、この作動流体室13A内には非圧縮性流体である作動油が供給・充填されている。また、作動流体室13Aには接続配管などを介して当該アクチュエータによる制御の対象となる機器、例えば遮水扉に設けられた油圧ジャッキの作動油室に連通する作動油ポート15が配設されている。
【0015】
ピストン12にはその他端面に開口する有底穴121が形成されており、この有底穴121はピストン12の軸線に沿って延在し、その開口側端部(ピストンの他端部)の所定範囲でその内周面にはネジ溝17が螺刻・形成されている。
このピストン12の有底穴121には杆状または棒状の作動軸18の一端部が挿入されている。作動軸18はピストン12と同軸的に配設されており、その中間部の外周面には上記ネジ溝17に螺合するネジ山19が形成されている。つまり、作動軸18(その一端部ないし中間部)はピストン12の他端部にネジ結合されている。作動軸18の軸線回りの回転がピストン12の往復動を引き起こす。
具体的には、ピストン12の開口側(他端部)にはフランジ付き円筒41が配設され、この円筒41の内周面に形成されたネジ溝17に上記ネジ山19が螺合されている。この円筒41の外面にはその内周面のネジ溝17とは逆ネジが形成され、逆ネジによりピストン開口端の内周ネジに螺合して円筒41はピストン12に固定されている。すなわち、フランジ付き円筒41はピストン開口端にねじ込まれて固定されるとともに、その内周面のネジ溝17に作動軸18のネジ山19が逆ネジ関係でねじ込み・螺合されている。この結果、作動軸18の回転は円筒41を介してピストン12を軸回りに回転させる構造とされている。
また、図中42は、ピストン12の外面の一部に固定されてその回転止めを行うキーであり、軸方向に延びるキースライド溝43(エンドプレート14Aとシリンダチューブ11とにより形成されている)によりピストン12を非回転状態で所定ストロークでの往復動自在としている。
作動軸18の他端部は上記シリンダチューブ11のエンドカバー14(エンドプレート14A)から突出して設けられている。この突出端部181に例えばホイール型のハンドル(図外)が固着される。なお、作動軸18の他端部はエンドカバー部分14においてベアリング21により回転自在に支持されている。ハンドルは軸端固定構造とし、または、軸端部への着脱自在の構成とすることもできる。
作動軸18はベアリング21に支持されてその軸線回りに回転自在とされ、作動軸18が回転することによりネジ山19と螺合するネジ溝17を介してピストン12が軸方向に沿って前進または後退する構成とされている。つまり、ネジ結合によりピストン12はその軸方向において多点停止機能を発揮する。ハンドルの回転角度を調整することにより、ピストン12はアナログ的に停止位置決めされる。
ピストン12がフロントカバー部13に向かって移動(前進)すると、作動流体室13A内の作動油は圧縮され、作動油ポート15から押し出されて上述の動作の対象となる機器(例えば油圧ジャッキ)のオイル室に送り込まれる(オイル室内の作動油の圧力が高まる)。この結果、機器についてはこの圧力(外力)によりその対象部材または対象部位が移動する。例えば上下動構造の門扉または遮水扉であれば押し上げられる。また、この圧力は各種の機器に外力として作用させることができる。すなわち、流体式アクチュエータ10のピストンの往復動作により対象機器は持ち上げられ(上下方向の移動)、または引っ張り込まれ、さらに水平方向への移動等の動作が可能となる。
もちろん、いったん左に向かって移動(前進)したピストン12はハンドルによる作動軸18の逆回転によりそのネジ結合を介して他端側に向かって移動(後退)し、作動流体室13Aの容積を拡張し、ここで発生させた圧力は低減されることとなる。
そして、このことから、ピストン12によって外力を付加してリフトアップしたジャッキなどで、例えば作動油供給路に設けた開閉バルブを急に全開としたとき急激に圧力が低下しても、ピストン12の動きは作動軸18の回転とされるため、比較的緩い速度でピストン12は後退することとなる。つまり、作動軸18が逆転されると、ピストン12の後退により作動流体室13Aの容積が拡がり一度押し出された作動流体が、作動軸の逆転動作の速度に比例してこの作動流体室13Aに戻ることとなる。このため、比較的緩やかにピストン12が移動し、ジャッキ下降事故などを未然に防止することができる。急激なジャッキ下降が生じることなく、作業者の安全は確保される。
【0016】
以上、要約すると、この実施例に係る流体式アクチュエータ10では、作動軸18とネジ結合したピストン12をハンドル操作で作動軸18の回転によりシリンダチューブ11内で往復動させて、そのシリンダチューブ11内の作動流体の圧力を制御することにより、この圧力に基づいて動作する対象物を動かし、または、停止する。このように、ネジ結合によりピストン12を駆動するため、従来の油圧のみでの直接駆動に比較して制御性に優れたアクチュエータを提供することできる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、例えばポンプを含む流体式アクチュエータを用いた技術として有用である。
【符号の説明】
【0018】
10 流体式アクチュエータ、
11 シリンダチューブ、
12 ピストン、
13A 作動流体室、
17 ネジ溝、
18 作動軸、
19 ネジ山、
121 有底穴。
図1
図2