(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074356
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】積層バスバ及び端子台
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20240524BHJP
H01M 50/526 20210101ALI20240524BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/526
H01M50/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185451
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】舘 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043FA04
5H043HA04F
5H043JA02F
5H043JA06F
5H043JA21F
5H043LA21F
(57)【要約】
【課題】積層バスバにおいて、固定用孔の位置ずれを抑制することを目的とする。
【解決手段】積層バスバ40は、長尺状に形成された積層バスバであって、積層された複数のバスバ42を備え、複数のバスバ42のそれぞれは固定用孔42h1、42h2を有し、複数のバスバ42の固定用孔42h1、42h2の内周面は、複数のバスバ42の積層方向に沿って連続し、かつ、複数のバスバ42が積層された状態で一括打抜き加工された表面形状を呈している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に形成された積層バスバであって、
積層された複数のバスバを備え、
前記複数のバスバのそれぞれは固定用孔を有し、
前記複数のバスバのそれぞれの前記固定用孔の内周面は、前記複数のバスバの積層方向に沿って連続し、かつ、前記複数のバスバが積層された状態で一括打抜き加工された表面形状を呈している、積層バスバ。
【請求項2】
請求項1に記載の積層バスバであって、
前記複数のバスバのうちの少なくとも1つは、前記固定用孔の縁に位置する剪断バリを含み、
前記複数のバスバのうちの少なくとも1つは、前記固定用孔の縁で前記剪断バリが入り込んでいるバリ収容部を含み、
前記剪断バリが前記バリ収容部に入り込んだ状態で、前記複数のバスバのそれぞれの前記固定用孔の内周面が、前記積層方向に沿って連続した状態となっている、積層バスバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層バスバであって、
前記複数のバスバを繋ぐ折返し部をさらに備える、積層バスバ。
【請求項4】
請求項3に記載の積層バスバであって、
前記折返し部は、前記積層バスバの延在方向の一部に形成されている、積層バスバ。
【請求項5】
請求項4に記載の積層バスバであって、
前記折返し部は、前記積層バスバの延在方向において前記固定用孔の側方領域に形成されている、積層バスバ。
【請求項6】
請求項4に記載の積層バスバであって、
前記積層バスバはその延在方向中間部の曲げ部で曲がっており、
前記折返し部は前記曲げ部の側方領域に形成されている、積層バスバ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の積層バスバであって、
前記複数のバスバは、前記積層方向において一方側に露出する第1外側バスバと、前記積層方向において他方側に露出する第2外側バスバとを含み、
前記第1外側バスバの側縁から前記第2外側バスバの外面に向って延出して、前記複数のバスバを積層状態に保つ保持片をさらに備える積層バスバ。
【請求項8】
機器に固定される端子台であって、
請求項1又は請求項2に記載の積層バスバと、
前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、
を備える、端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層バスバ及び端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バスバを備える端子台においては、モータ側接続端子が動いた場合に、剛性の大きいバスバではその動きに追従できないためバスバがその変動を吸収できないことを開示している。また、特許文献1は、端子間に編組線を介在させることで、端子に加わった振動が編組線で吸収されることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バスバの剛性を低下させるため、金属薄板の積層体によって積層バスバを構成することが検討されている。金属薄板を積層する際に、固定用孔の位置ずれを抑制することが望まれる。
【0005】
そこで、積層バスバにおいて、固定用孔の位置ずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層バスバは、長尺状に形成された積層バスバであって、積層された複数のバスバを備え、前記複数のバスバのそれぞれは固定用孔を有し、前記複数のバスバのそれぞれの固定用孔の内周面は、前記複数のバスバの積層方向に沿って連続し、かつ、前記複数のバスバが積層された状態で一括打抜き加工された表面形状を呈している、積層バスバである。
【0007】
また、本開示の端子台は、機器に固定される端子台であって、上記積層バスバと、前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、を備える、端子台である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、固定用孔の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態1に係る積層バスバを示す斜視図である。
【
図3】
図3は積層バスバの製造方法例を示す説明図である。
【
図4】
図4は実施形態2に係る積層バスバを示す斜視図である。
【
図5】
図5は同上の積層バスバを示す斜視図である。
【
図6】
図6は同上の積層バスバの製造方法例を示す説明図である。
【
図7】
図7は実施形態2の変形例に係る積層バスバを示す斜視図である。
【
図8】
図8は実施形態2の他の変形例に係る積層バスバを示す斜視図である。
【
図9】
図9は実施形態3に係る端子台が組込まれた機電一体化ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の積層バスバは、次の通りである。
【0012】
(1)長尺状に形成された積層バスバであって、積層された複数のバスバを備え、前記複数のバスバのそれぞれは固定用孔を有し、前記複数のバスバのそれぞれの前記固定用孔の内周面は、前記複数のバスバの積層方向に沿って連続し、かつ、前記複数のバスバが積層された状態で一括打抜き加工された表面形状を呈している、積層バスバである。
【0013】
この積層バスバによると、複数のバスバのそれぞれの固定用孔は、複数のバスバが積層された状態で一括打抜き加工されることによって形成されるため、積層バスバにおいて、固定用孔の位置ずれが抑制される。
【0014】
(2)(1)の積層バスバであって、前記複数のバスバのうちの少なくとも1つは、前記固定用孔の縁に位置する剪断バリを含み、前記複数のバスバのうちの少なくとも1つは、前記固定用孔の縁で前記剪断バリが入り込んでいるバリ収容部を含み、前記剪断バリが前記バリ収容部に入り込んだ状態で、前記複数のバスバのそれぞれの前記固定用孔の内周面が、前記積層方向に沿って連続した状態となっていてもよい。
【0015】
この場合、剪断バリがバリ収容部に入り込んでいるため、固定用孔が位置ずれし難い。
【0016】
(3)(1)又は(2)の積層バスバであって、前記複数のバスバを繋ぐ折返し部をさらに備えてもよい。
【0017】
この場合、複数のバスバが折返し部によって繋がった状態であるため、一括打抜き加工が容易になされる。また、折返し部によって複数のバスバの積層状態が保たれ得る。
【0018】
(4)(3)の積層バスバであって、前記折返し部は、前記積層バスバの延在方向の一部に形成されていてもよい。
【0019】
この場合、積層バスバのうち折返し部が形成された部分では複数のバスバが積層状態に保たれ、他の部分では、複数のバスバがすれ違うように容易に変形できる。
【0020】
(5)(4)の積層バスバであって、前記折返し部は、前記積層バスバの延在方向において前記固定用孔の側方領域に形成されていてもよい。
【0021】
この場合、固定用孔の側方領域に位置する折返し部によって固定用孔の位置ずれが生じ難くなる。積層バスバのうち固定用孔が無い部分で、積層バスバが容易に変形できる。
【0022】
(6)(4)又は(5)の積層バスバであって、前記積層バスバはその延在方向中間部の曲げ部で曲がっており、前記折返し部は前記曲げ部の側方領域に形成されていてもよい。
【0023】
これにより、曲げ部で、積層バスバがずれ難くなる。
【0024】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの積層バスバであって、前記複数のバスバは、前記積層方向において一方側に露出する第1外側バスバと、前記積層方向において他方側に露出する第2外側バスバとを含み、前記第1外側バスバの側縁から前記第2外側バスバの外面に向って延出して、前記複数のバスバを積層状態に保つ保持片をさらに備えてもよい。
【0025】
この保持片によって、複数のバスバが積層状態に保たれる。
【0026】
また、本開示の端子台は次の通りである。
【0027】
(8)機器に固定される端子台であって、(1)から(7)のいずれか1つの積層バスバと、前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、を備える、端子台である。
【0028】
この場合、積層バスバによって位置ずれ吸収を行うことが可能な端子台を提供できる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の積層バスバ及び端子台の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る積層バスバについて説明する。
図1は積層バスバ40を示す斜視図である。
図2は
図1のII-II線部分断面図である。
【0031】
積層バスバ40は、長尺形状に形成されている導電部材である。積層バスバ40は、真っ直ぐ延びていてもよいし、途中で曲っていてもよい。本実施形態では、積層バスバ40は、直線状に延びている。
【0032】
積層バスバ40は、積層された複数のバスバ42を備える。バスバ42は、積層バスバ40の全体の厚みよりも薄い。例えば、バスバ42は、0.3mm~1mm厚であってもよい。バスバ42は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属板によって構成される。バスバ42は、細長い板状に形成されている。積層バスバ40は、複数のバスバ42の延在方向を揃えた状態で重ね合わされており、従って、積層バスバ40も細長い板状に形成されている。
【0033】
より具体的には、積層バスバ40は、一方向に長い長方形状に形成されている。積層バスバ40の端部が丸められた形状に形成されていることも想定される。積層バスバ40におけるバスバ42の重ね合せ枚数は任意である。
【0034】
バスバ42は、ニッケルめっきなどの金属めっきを有していてもよい。積層バスバ40において表面となる部分のみに、金属めっきが施されていてもよい。
【0035】
複数のバスバ42のそれぞれは、固定用孔42h1、42h2を有している。固定用孔42h1、42h2は、例えば、ネジが挿通される孔である。本実施形態では、バスバ42の一端に固定用孔42h1が形成され、他端に固定用孔42h2が形成されている。バスバ42の一端のみに固定用孔42h1が形成されてもよい。バスバ42の延在方向中間部に固定用孔が形成されてもよい。
【0036】
積層バスバ40の一端において、複数のバスバ42の固定用孔42h1が重なり合うように配置される。複数の固定用孔42h1の内周面は、複数のバスバ42の積層方向に沿って連続しており、複数のバスバ42が積層された状態で一括打抜きされた表面形状を呈している。つまり、複数のバスバ42が積層された状態で一括打抜きされるため、例えば、複数の固定用孔42h1の内周面は同じ形状でかつバスバ42の延在方向において同じ位置に揃っていることが想定される。つまり、複数の固定用孔42h1の中心軸は、同じ直線上に位置しており、かつ、複数の固定用孔42h1の直径は同じであることが想定される。このため、複数の固定用孔42h1の内周面は、複数のバスバ42の積層方向に沿って段差を生じることなく連続していることが想定される。複数の固定用孔42h1の層間境界は僅かな筋状痕跡等として残る場合もあるし、残らない場合もあり得る。
【0037】
また、複数のバスバ42のうちの少なくとも1つは、固定用孔42h1の縁に位置する剪断バリ42pを含む場合が考えられる(
図2参照)。剪断バリ42pは、固定用孔42h1を形成する際に生じるバリであり、固定用孔42h1のうちプレスによって押出されるの周縁に沿って形成されることが想定される。剪断バリ42pは、固定用孔42h1の周縁全体に亘って形成されてもよいし、当該周縁の一部に形成されてもよい。
【0038】
また、複数のバスバ42のうちの少なくとも1つは、固定用孔42h1の縁で前記剪断バリ42pが入り込んでいるバリ収容部42gを含むことが考えられる(
図2参照)。バリ収容部42gは、例えば、剪断のための金型がバスバ42を押込んだり、剪断のための押出によって形成された剪断バリ42pが入り込むことによって押されて凹んだりして形成された部分である。複数のバスバ42が一括打抜きされるため、隣合うバスバ42の境界付近で、剪断バリ42pがバリ収容部42g内に入り込む構成が実現されている。剪断バリ42pがバリ収容部42gに入り込んだ状態で、複数のバスバ42の固定用孔42h1の内周面が、積層方向に沿って連続した状態となっている。
【0039】
なお、
図2における剪断バリ42p及びバリ収容部42gの大きさ、形状等は、説明のために描かれたものである。剪断バリ42p及びバリ収容部42gは、より微小な突起と凹みとの組み合せであってもよい。
【0040】
また、複数のバスバ42が積層された状態で、一括打抜きされる場合、剪断によって形成されるプレス方向の傷42vが、積層方向において隣合う固定用孔42h1の内周面の間で連続する筋状に形成されていることも想定される。
【0041】
これに対して、複数のバスバ42に対して別々に固定用孔42h1を形成した後、複数のバスバ42を重ね合わせると、固定用孔42h1の内周面の位置がずれ、層間で段差を生じたり、隙間を生じたりすることが想定される。
【0042】
積層バスバ40の他端においても、複数の固定用孔42h2が、上記固定用孔42h1と同様に、積層方向に連続するように形成されるなお、固定用孔42h1と固定用孔42h2とは、異なる形状、大きさの孔であってもよい。
【0043】
複数のバスバ42は、積層保持部材50によって積層状態に保たれていてもよい。積層保持部材50は、例えば、熱収縮された熱収縮チューブであってもよい。熱収縮チューブは、例えば、加熱によって収縮するように形状記憶された樹脂チューブである。例えば、熱収縮前の熱収縮チューブが積層バスバ40の長手方向中間部に外嵌めされた状態で、熱収縮チューブが熱収縮される。これにより、複数のバスバ42が積層状態に保たれる。
【0044】
複数のバスバ42の長手方向の一部が樹脂部品の中にインサートされることで、複数のバスバ42が積層状態に保たれてもよい。
【0045】
複数のバスバ42は、他の構成によって積層状態に保たれてもよい。例えば、複数のバスバ42の長手方向の一部が、超音波接合、抵抗溶接等の溶接によって接合されてもよいし、半田付等のろう接によって接合されてもよい。
【0046】
複数のバスバ42は、接合状態を保つようにプレス加工されてもよい。プレス加工による接合構造は、例えば、カシメ接合と呼ばれる構造であってもよいし、TOX(商標)カシメと呼ばれる構造であってもよいし、メカニカルクリンチと呼ばれる構造であってもよい。
【0047】
複数のバスバ42は、ネジ止等によって接合状態に保たれてもよい。
【0048】
【0049】
例えば、複数の薄板コイルから引出された薄板が、積層されて1つに集約される。集約前に、それぞれの薄板にめっき処理を施すことで、各薄板の両面にめっき処理が可能となる。積層された薄板68が順送金型装置70に送込まれる。
【0050】
順送金型装置70の第1ステージS1において、積層状態で移動する複数の薄板68が、積層バスバ40の外形状に応じた形状に打抜かれる。これにより形成されたバスバ外形状部分40a1の外周の一部が薄板68に連結されたままとされることで、打抜かれたバスバ外形状部分40a1が積層状態で薄板68と共に順送金型装置70内を移動していくことができる。
【0051】
順送金型装置70の第2ステージS2において、積層されたバスバ外形状部分40a1に固定用孔42h1、42h2が一括打抜きされる。
【0052】
次に、順送金型装置70の第3ステージS3において、バスバ外形状部分40a1と薄板68との連結部分が切断され、積層バスバ40が取出される。複数のバスバ42が積層された状態のまま、上記積層保持部材50が複数のバスバ42に外装される。これにより、積層バスバ40が製造される。バスバ外形状部分40a1と薄板68との連結部分が切断される前に、溶接、プレス加工等によって、複数のバスバ42同士が接合されてもよい。
【0053】
以上のように構成された積層バスバ40によると、複数のバスバ42の固定用孔42h1、42h2は、複数のバスバ42が積層された状態で一括打抜き加工されることによって形成されるため、積層バスバ40において、各層の固定用孔42h1又は42h2が位置ずれし難くなる。
【0054】
ここで、例えば、各層の固定用孔42h1が位置ずれしていると、積層方向における共通開口が想定以上に小さくなったり、積層バスバ40の端部において設計上の正しい位置に固定用孔42h1を配置できなかったりする可能性がある。その場合、ねじを円滑に挿入できなかったり、固定用孔42h1を接続対象位置に正確に配置できなかったりするので、積層バスバ40による接続作業を円滑に行えない可能性がある。
【0055】
各層の固定用孔42h1又は42h2の位置ずれを抑制することで、積層方向における共通開口の大きさを狙い通りの大きさに設定したり、接続対象位置に対して正確に配置したりすることが可能となり、積層バスバ40を利用した電気的な接続を容易に実現できる。これにより、積層バスバ40の製造コスト削減も可能となる。
【0056】
また、隣合うバスバ42の間で、剪断バリ42pがバリ収容部42gに入り込んでいると、層間で固定用孔42h1又は固定用孔42h2の位置ずれが生じ難い。この点からも、積層方向における固定用孔42h1又は42h2の共通開口の大きさを狙い通りの大きさに設定し易い。
【0057】
[実施形態2]
実施形態2に係る積層バスバについて説明する。
図4及び
図5は積層バスバ140を示す斜視図である。なお、本実施形態2の説明において、実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
実施形態2に係る積層バスバ140が実施形態1に係る積層バスバ40と異なる点は、積層バスバ140が、複数のバスバ42を繋ぐ折返し部144を備える点である。
【0059】
折返し部144は、バスバ42においてどの部分に存在していてもよい。折返し部144は、バスバ42の長辺側の縁に位置していてもよいし、バスバ42の短辺側に位置していてもよい。本実施形態では、折返し部144は、バスバ42の長辺側の縁に存在している。
【0060】
折返し部144は、バスバ42の長辺側の縁の全体に亘って存在していてもよいし、当該長辺側の縁の一部に存在していてもよい。本実施形態では、折返し部144は、積層バスバ140の延在方向の一部に形成されている。
【0061】
より具体的には、折返し部144は、積層バスバ140の延在方向において固定用孔42h1の側方領域R1と、固定用孔42h2の側方領域R2とに形成されている。積層バスバ140の延在方向中間部では、折返し部144が形成されていないため、バスバ42の側面が露出している。折返し部144が固定用孔42h1、42h2の側方領域R1、R2に形成されているため、固定用孔42h1又は42h2を一定の位置関係に保ち易く、固定用孔42h1又は42h2が位置ずれし難い。また、積層バスバ140の延在方向中間部では、複数のバスバ42が相互にすれ違う方向に移動できるため、積層バスバ140は、長手方向中間部において厚み方向に容易に曲ることができる。
【0062】
折返し部144は、複数のバスバ42をどのような位置関係で繋いでいてもよい。本実施形態では、複数層のバスバ42が扁平な螺旋をなすように折返し部144によって連結されている。換言すれば、薄板がロール状をなすように重ねられることによって積層バスバ140が形成されている。
【0063】
複数のバスバ42の両側が、積層方向において交互に折返し部によって繋がっていてもよい。換言すれば、一側の谷折である折返し部と他側の山折である折返し部とが積層方向において交互に繰返すことによって、積層されたバスバ42が繋がれた構成であってもよい。
【0064】
また、積層バスバ140は、複数のバスバ42を積層状態に保つ保持片146をさらに備える。すなわち、複数のバスバ42のうち積層方向において一方側に露出するものを第1外側バスバ42aとし、他方側に露出するものを第2外側バスバ42bとする。他のバスバ42は、第1外側バスバ42aと第2外側バスバ42bとの間に位置する。保持片146は、第1外側バスバ42aの側縁から中間のバスバ42の側縁の外側を通って第2外側バスバ42bの外面に向って延出するように曲げられている。よって、保持片146は、第1外側バスバ42aと第2外側バスバ42bとが一定の間隔を保つように保持する役割を果す。
【0065】
本実施形態では、積層バスバ140の両端に保持片146が形成されている。また、保持片146は、固定用孔42h1、42h2に対して積層バスバ140の延在方向中央側に位置する。
【0066】
上記保持片146は、折返し部144によるスプリングバックを抑制する役割を果すことができる。すなわち、薄板を折返し部144で曲げると、曲げ加工後に、スプリングバックによって、バスバ42間が開いてしまう可能性がある。折返し部144によって、第1外側バスバ42aと第2外側バスバ42bとの間隔を一定に保つことによって、折返し部144のスプリングバックが抑制され、複数のバスバ42がより密に積層された状態に保たれ易くなる。
【0067】
図6に、積層バスバ140の製造方法例が示される。
図6において、打抜き形状にあわせて、プレス加工による曲げ形状が示されている。ステージT4における曲げ形状は、
図6におけるVI-VI線における形状である。
【0068】
例えば、複数の薄板コイルから引出された薄板が、積層されて1つに集約される。積層された薄板68が順送金型装置170に送込まれる。
【0069】
順送金型装置170の第1ステージT1において、積層状態で移動する複数の薄板68が、積層バスバ140の展開形状に応じた形状に打抜かれる。展開形状は、複数のバスバ42が折返し部144等で繋がった状態で平面に展開された形状である。バスバ展開形状部分140a1の外周の一部が薄板68に連結されたままとされることで、打抜かれたバスバ展開形状部分140a1が積層状態で薄板68と共に順送金型装置170内を移動していくことができる。
【0070】
順送金型装置170の第2ステージT2において、積層されたバスバ展開形状部分140a1が積層方向において一方側に向けて曲るようにプレス曲げ加工される。
【0071】
次に、順送金型装置170の第3ステージT3において、積層されたバスバ展開形状部分140a1がさらに積層方向において一方側に向けて曲るようにプレス曲げ加工される。異なるステージT2、T3において、プレス加工が繰返されることで、バスバ展開形状部分140a1がロール状をなすように曲げられる。バスバ42の積層数が多い場合には、プレス曲げ加工がさらに繰返されることも想定される。
【0072】
打抜き加工工程を含む作業工程において、積層バスバ40の積層状態を維持するための工程も組込まれるため、積層バスバ140の製造コスト削減、加工工数削減及び設備費削減に貢献する。
【0073】
また、本図では省略されているが、ステージT3、T4と同様にプレス曲げ加工を行うことで、上記保持片146が形成されてもよい。
【0074】
順送金型装置170の第4ステージT4において、ロール状をなすように曲げられたバスバ展開形状部分140a1に固定用孔42h1、42h2が一括打抜きされる。この際、ロール状をなすように曲げられたバスバ展開形状部分140a1の両側部のうち両端を除いて一括打抜き加工してもよい。これにより、積層バスバ140の延在方向両端に折返し部144を残して、他の部分で折返し部分を除去できる。
【0075】
実施形態2の積層バスバ140によっても、上記積層バスバ40と同様の作用効果が得られる。加えて、複数のバスバ42が折返し部144によって繋がった状態であるため、固定用孔42h1、42h2の一括打抜き加工が容易になされる。また、一括打抜き加工時及び打抜き加工後において、固定用孔42h1又は42h2の位置ずれが生じ難く、また、複数のバスバ42の積層状態が保たれ易い。
【0076】
また、折返し部144が積層バスバ140の延在方向の一部に形成されていれば、当該折返し部144が形成された部分では、複数のバスバ42が積層状態に保たれ、他の部分では、複数のバスバ42がすれ違うように容易に変形できる。
【0077】
特に、固定用孔42h1、42h2の側方に折返し部144が形成されていれば、固定用孔42h1又は42h2の位置ずれが生じ難くなる。積層バスバ140のうち固定用孔42h1、42h2が無い部分で、積層バスバ140が容易に変形できる。
【0078】
また、保持片146によって、複数のバスバ42が積層状態に保たれ易くなる。
【0079】
図7は実施形態2の変形例に係る積層バスバ140Aを示す斜視図である。
【0080】
この変形例では、積層バスバ140Aの延在方向の中間部が曲げ部140AVで曲っている。より具体的には、積層バスバ140Aの延在方向中央と一端との間の部分が90度に曲っている。折返し部144に対応する折返し部144Aが曲げ部140AVの側方領域に形成されている。より具体的には、一端側の折返し部144Aが固定用孔42h1の側方領域から曲げ部140AVの側方領域にまで延びている。折返し部144Aと、積層バスバ140Aの他端の折返し部144との間には、折返し部が無い領域が存在している。
【0081】
本変形例によると、折返し部144Aが曲げ部140AVの側方領域に存在しているため、当該曲げ部140AVでバスバ42がずれ難くなる。このため、例えば、折返し部144Aを形成した後に、曲げ部140AVを形成する際に、バスバ42の位置ずれを抑制することができる。これにより、バスバ42の端の位置がなるべく揃った積層バスバ140Aが形成される。
【0082】
この場合、固定用孔42h1、42h2は、曲げ部140AVの形成前に形成されてもよいし、曲げ部140AVの形成後に形成されてもよい。曲げ部140AVの形成後に、固定用孔42h1、42h2を一括打抜きすると、固定用孔42h1又は固定用孔42h2の位置が揃い易い。曲げ部140AVの形成前に、固定用孔42h1、42h2を一括打抜きした場合であっても、折返し部144Aが無い構成と比較すると、固定用孔42h1又は42h2の位置ずれが生じ難い。
【0083】
図8は実施形態2の他の変形例に係る積層バスバ140Bを示す斜視図である。
【0084】
この変形例では、積層バスバ140Bの延在方向の2箇所の中間部が曲げ部140BVで曲っている。より具体的には、積層バスバ140Bの延在方向中央と一端との間の部分が90度に曲っており、積層バスバ140Bの延在方向中央と他端との間の部分が90度に曲っている。積層バスバ140Bの一端と積層バスバ140Bの他端とはそれらの中間部に対して同じ方向を向くように曲っている。折返し部144に対応する折返し部144Bが2つの曲げ部140BVの側方領域に形成されている。より具体的には、一端側及び他端側の折返し部144Bが固定用孔42h1又は42h2の側方領域から曲げ部140BVの側方領域にまで延びている。一端側の折返し部144Bと、他端側の折返し部144Bとの間には、折返し部が無い領域が存在している。
【0085】
本変形例においても、曲げ部140BVでバスバ42がずれ難くなる。このため、例えば、折返し部144Bを形成した後に、曲げ部140BVを形成する際に、バスバ42の位置ずれを抑制することができる。これにより、バスバ42の端の位置がなるべく揃った積層バスバ140Bが形成される。
【0086】
なお、上記変形例と同様に、固定用孔42h1、42h2は、曲げ部140BVの形成前に形成されてもよいし、曲げ部140BVの形成後に形成されてもよい。
【0087】
[実施形態3]
実施形態3に係る端子台について説明する。
図9は積層バスバ40を含む端子台30が組込まれた機電一体化ユニット10を示す概略図である。
【0088】
積層バスバ40の一適用例である機電一体化ユニット10の全体構成について説明する。機電一体化ユニット10は、回転電機20と、インバータ12とを備える。
【0089】
回転電機20は、ケース22、電機子24及び界磁28を備える回転電機である。
図9では、筒状のケース22内に、ステータとしての電機子24が固定されている例が示される。界磁28は、ロータとして電機子24内に配置されている。電機子24が発生させる磁界によって界磁28が回転し、又は、界磁28の回転によって電機子24が起電力を発生させる。本実施形態では、回転電機20が3相交流モータとして使用可能な回転電機であることが想定されている。回転電機は、モータとしての動作に加えて又は代えて発電機として動作可能であってもよい。回転電機も機器の一例である。
【0090】
電機子24は、ステータコアと、複数のコイル線とを備える。ステータコアは、複数のティースを含み、複数のティースは、回転軸を囲むように設けられている。各コイル線は、1つ又は複数のティースに巻回されている。複数のコイル線の複数の端部のうちの少なくとも一部は、複数のティースの間から電機子の軸方向一端側に引出されている。
【0091】
電機子24は、コイル接続端26を備える。コイル接続端26は、例えば、細長い導電性板状部分である。コイル接続端26は、電機子24の軸方向一端側に配置される。コイル接続端26にねじ止のためのネジ挿通孔26hが形成されている。コイル接続端26は、コイル線の端部自体であってもよいし、コイル線に溶接、ネジ止等によって接続された金属板であってもよい。本実施形態では、3相に対応する3つのコイル接続端26が間隔をあけて並列状態で、電機子24の一端側に配置されている。コイル接続端26は、積層バスバ40の接続先となる電気部品の一例である。
【0092】
また、インバータ12は、インバータ回路を有する機器である。インバータ12は、回転電機20に一体化されることが想定される。例えば、インバータ12は、回転電機20のケース22に対してボルト固定等によって一体化される。
【0093】
インバータ12は、インバータ回路の出力端に接続されたインバータ側バスバ18を備える。インバータ側バスバ18は、銅、銅合金等の金属板材によって形成された細長板状部材である。インバータ側バスバ18に、ねじ止のためのネジ挿通孔18hが形成されている。本実施形態では、インバータ12から3相に対応する3つのインバータ側バスバ18が間隔をあけて並列状態で回転電機20に向って延びている。インバータ側バスバ18は、積層バスバ40の接続先となる電気部品の一例である。
【0094】
端子台30は、回転電機20のケース22に固定され、回転電機20とインバータ12とを接続する部品である。
【0095】
端子台30は、積層バスバ40と、台本体60とを備える。
【0096】
端子台30は、樹脂等によって金型成形部品であり、ネジ止等によってケース22に固定される。
【0097】
積層バスバ40の延在方向中間部が台本体60によって保持されている。例えば、積層バスバ40の長手方向の中間部の一部をインサート部分として台本体60が金型成形されることが考えられる。台本体60は、例えば、ネジ挿通孔を有するネジ止部64を有しており、ネジが当該ネジ挿通孔に挿通されてケース22に螺合締結される。積層バスバ40の第1接続端41aが台本体60からケース22の外側に延出している。積層バスバ40の第2接続端41bが台本体60からケース22内に延出している。
【0098】
本実施形態では、端子台30は、3本の積層バスバ40を備える。端子台30は、少なくとも1つのバスバを備えればよい。積層バスバ40は、例えば、実施形態1で説明した積層バスバである。端子台30には、実施形態2又はその各変形例で説明された積層バスバ140、140A又は140Bが保持されてもよい。
【0099】
積層バスバ40は、第1接続端41aと第2接続端41bを備える。
【0100】
第1接続端41aは、積層バスバ40のうちケース22の外側を向く端部である。第1接続端41aは、ケース22外を向いてインバータ12のバスバ18の端部に接続可能な位置に支持される。第1接続端41aは、回転電機20にインバータ12が一体化された状態で、バスバ18と重なり合う位置に配置される。
【0101】
第2接続端41bは、積層バスバ40のうちケース22の内側を向く端部である。第2接続端41bは、ケース22内を向いてコイル接続端26の端部に接続される。端子台30がケース22に固定された状態で、第2接続端41bは、コイル接続端26と重なり合う位置に配置される。
【0102】
本実施形態では、3相に対応する3つの積層バスバ40が間隔をあけて並列状態で配置されている。積層バスバ40の数は任意である。
【0103】
第1接続端41aにバスバ18の端部が重ね合わされた状態で、ネジがネジ挿通孔18h及び固定用孔42h1に挿通される。そして、当該ネジがナットに螺合締結される。すると、第1接続端41aとバスバ18の端部とが、ネジの頭部とナットとの間に挟込まれ、両者が電気的に接続された状態で固定される。
【0104】
第2接続端41bにコイル接続端26が重ね合わされた状態で、ネジがネジ挿通孔26h及び固定用孔42h2に挿通される。そして、当該ネジがナットに螺合締結される。すると、第2接続端41bとコイル接続端26とが、ネジの頭部とナットとの間に挟込まれ、両者が電気的に接続された状態で固定される。
【0105】
回転電機20にインバータ12を一体化する際、組付公差の範囲内で、バスバ18の端部と積層バスバ40の第1接続端41aとが位置ずれすることが考えられる。また、回転電機20にインバータ12が一体化された状態で、熱膨張収縮によって、バスバ18の端部と積層バスバ40の第1接続端41aとが位置ずれすることが考えられる。
【0106】
本端子台30は、例えば、積層バスバ40がバスバ42の間ですれ違うように厚み方向に曲って変形することで、バスバ18の端部と積層バスバ40の第1接続端41aとの位置ずれを吸収するための役割を果すことができる。
【0107】
また、組付公差の範囲内で、コイル接続端26が所定位置からずれて配置される場合がある。また、熱膨張収縮等に起因して、コイル接続端26が所定位置からずれて配置される場合がある。このため、コイル接続端26と積層バスバ40の第2接続端41bとが位置ずれする場合がある。この場合にも、バスバ42が変形することで、位置ずれを吸収することができる。
【0108】
本端子台30は、バスバ18の端部と積層バスバ40の第1接続端41aとの位置ずれを吸収する役割に加えて又は代えて、コイル接続端26と積層バスバ40の第2接続端41bとの位置ずれを吸収する役割を果してもよい。
【0109】
この端子台30によると、回転電機20に固定される端子台30が、積層バスバ40を保持した状態で当該回転電機20に固定される台本体60を有している。このため、積層バスバ40の第1接続端41aとバスバ18との間で位置ずれが生じている場合、又は、第2接続端41bとコイル接続端26との間に位置ずれが生じている場合に、積層バスバ40の変形によって、その位置ずれを吸収することができる。
【0110】
積層バスバ40の適用対象例は、実施形態3に係る構成に限られず、各種電気的な接続を行う用途に適用され得る。
【0111】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
10 機電一体化ユニット
12 インバータ
18 インバータ側バスバ
18h、26h ネジ挿通孔
20 回転電機(機器)
22 ケース
24 電機子
26 コイル接続端
28 界磁
30 端子台
40、140、140A、140B 積層バスバ
40a1 バスバ外形状部分
41a 第1接続端
41b 第2接続端
42 バスバ
42a 第1外側バスバ
42b 第2外側バスバ
42g バリ収容部
42h1、42h2 固定用孔
42p 剪断バリ
42v 傷
50 積層保持部材
60 台本体
64 ネジ止部
68 薄板
70、170 順送金型装置
140AV、140BV 曲げ部
140a1 バスバ展開形状部分
144、144A、144B 折返し部
146 保持片
R1、R2 側方領域