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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074362
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】無人飛行体の着陸システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/08 20060101AFI20240524BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240524BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240524BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240524BHJP
   B64F 1/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B64D45/08
B64C27/04
B64C39/02
B64D47/08
B64F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185465
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 紘司
(72)【発明者】
【氏名】笹川 憲二
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊一
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直孝
(72)【発明者】
【氏名】松崎 謙司
(57)【要約】
【課題】着陸用のマーカを一時的に認識できなくなっても、無人飛行体の着陸動作を継続できる。
【解決手段】カメラ14が搭載されたドローンを、マーカが設置された充電ポートに着陸させるドローン着陸システムであって、カメラが撮影したマーカを認識して、ドローン座標系における充電ポート位置情報を算出するマーカ認識部21と、基準座標系におけるドローン位置情報を算出する自己位置推定部22と、基準座標系におけるドローン位置情報とドローン座標系における充電ポート位置情報とを用いて、基準座標系における充電ポート位置情報を算出し、ドローンを充電ポートへ降下させるための指令速度を生成する指令速度生成部23とを有し、指令速度生成部は、マーカ認識部によりマーカが認識されなかった場合に、マーカが直前に認識された際に算出した基準座標系における充電ポート位置情報に基づき、ドローンを充電ポートへ降下させるための指令速度を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着陸地点に設置されたマーカを無人飛行体に搭載されたカメラが撮影し、前記マーカの認識により前記無人飛行体を前記着陸地点に着陸させる無人飛行体の着陸システムであって、
前記カメラが撮影した前記マーカを認識して、無人飛行体座標系における着陸地点位置情報を算出するマーカ認識部と、
基準座標における無人飛行体位置情報を算出する自己位置推定部と、
前記基準座標系における無人飛行体位置情報と前記無人飛行体座標系における着陸地点位置情報とを用いて、基準座標系における着陸地点位置座標を算出して、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成する指令速度生成部と、を有し、
前記指令速度生成部は、前記マーカ認識部により前記マーカが認識されなかった場合に、前記マーカが直前に認識された際に算出した前記基準座標系における着陸地点位置座標を用いて、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成するよう構成されたことを特徴とする無人飛行体の着陸システム。
【請求項2】
無人飛行体に設置されたマーカを着陸地点に設置されたカメラが撮影し、前記マーカの認識により前記無人飛行体を前記着陸地点に着陸させる無人飛行体の着陸システムであって、
前記カメラが撮影した前記マーカを認識して、着陸地点座標系における無人飛行体位置情報を算出するマーカ認識部と、
基準座標における無人飛行体位置情報を算出する自己位置推定部と、
前記基準座標系における無人飛行体位置情報と前記着陸地点座標系における無人飛行体位置情報とを用いて、基準座標系における着陸地点位置座標を算出して、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成する指令速度生成部と、を有し、
前記指令速度生成部は、前記マーカ認識部により前記マーカが認識されなかった場合に、前記マーカが直前に認識された際に算出した前記基準座標系における着陸地点位置座標を用いて、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成するよう構成されたことを特徴とする無人飛行体の着陸システム。
【請求項3】
前記指令速度生成部は、基準座標系における着陸地点位置座標を算出する際に、基準座標系の垂直軸と、カメラ光軸の方向と一致する着陸地点座標系の垂直軸とのそれぞれの方向が一致していると仮定して、基準座標系における無人飛行体位置情報と着陸地点座標系における無人飛行体位置情報とから、着陸地点に設置されたカメラの光軸と直交する軸回りの無人飛行体の姿勢情報を破棄することを特徴とする請求項2に記載の無人飛行体の着陸システム。
【請求項4】
前記マーカは、無人飛行体に搭載されて姿勢を調整するためのジンバル機構に設置されたことを特徴とする請求項2または3に記載の無人飛行体の着陸システム。
【請求項5】
前記指令速度生成部は、無人飛行体を着陸地点の上方から降下させ、前記着陸地点の上方に設定された位置決め完了ゾーン内に前記無人飛行体が一定時間滞在すれば位置決めが完了したとして前記無人飛行体を前記着陸地点に着陸させ、
前記無人飛行体が前記位置決め完了ゾーンの一定高度まで降下しても位置決めが完了していない場合に、前記無人飛行体を前記一定高度以上の所定高度まで上昇させた後、再度降下させるよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の無人飛行体の着陸システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無人飛行体を着陸地点に着陸させる無人飛行体の着陸システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山間部や洋上などの人のアクセスが容易ではない場所に建設された発電・送電設備において、点検作業を省力化するために、人に代って定期的に巡回して点検するドローンを配備する取り組みが行われている。ドローンがこのような巡視点検を繰り返し行えるように、充電機能を持つ充電ポートも併せて配置する。このようなドローンは、充電ポートに精度よく自動的に着陸する必要がある。
【0003】
従来、目標とする地点に精度よく着陸させるため、着陸地点に目標標識(マーカ)を配置し、ドローンに搭載したカメラでそのマーカの位置を認識し、その位置を目指して降下する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-172318号公報
【特許文献2】特開2021-62719号公報
【特許文献3】特開平5-24589号公報
【特許文献4】特開2019-51741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1には、着陸地点にサイズの異なるマーカを配置し、降下開始時には距離があっても認識しやすい大きなマーカを用いて着陸地点近くまで降下していき、大きなマーカがカメラ画角内に収まらなくなると、小さなマーカを使って更に降下する手法が提案されている。
【0006】
この特許文献1は、カメラとマーカとの距離の変化によって、マーカを認識できなくなる課題に対応したものである。この他にも、突風などでドローンが水平方向に流されてマーカがカメラの画角から外れたり、マーカがカメラの画角内に収まっていてもドローンの振動などにより映像がブレてしまったり、太陽光や照明などの明るさに変化が生じ、あるいは反射したりした際などに、マーカを一時的に認識できなくなり着陸地点を見失う場合がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、着陸のために用いられるマーカを一時的に認識できなくなった場合でも、無人飛行体の着陸動作を継続させることができる無人飛行体の着陸システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における無人飛行体の着陸システムは、着陸地点に設置されたマーカを無人飛行体に搭載されたカメラが撮影し、前記マーカの認識により前記無人飛行体を前記着陸地点に着陸させる無人飛行体の着陸システムであって、前記カメラが撮影した前記マーカを認識して、無人飛行体座標系における着陸地点位置情報を算出するマーカ認識部と、基準座標における無人飛行体位置情報を算出する自己位置推定部と、前記基準座標系における無人飛行体位置情報と前記無人飛行体座標系における着陸地点位置情報とを用いて、基準座標系における着陸地点位置座標を算出して、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成する指令速度生成部と、を有し、前記指令速度生成部は、前記マーカ認識部により前記マーカが認識されなかった場合に、前記マーカが直前に認識された際に算出した前記基準座標系における着陸地点位置座標を用いて、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の実施形態における無人飛行体の着陸システムは、無人飛行体に設置されたマーカを着陸地点に設置されたカメラが撮影し、前記マーカの認識により前記無人飛行体を前記着陸地点に着陸させる無人飛行体の着陸システムであって、前記カメラが撮影した前記マーカを認識して、着陸地点座標系における無人飛行体位置情報を算出するマーカ認識部と、基準座標における無人飛行体位置情報を算出する自己位置推定部と、前記基準座標系における無人飛行体位置情報と前記着陸地点座標系における無人飛行体位置情報とを用いて、基準座標系における着陸地点位置座標を算出して、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成する指令速度生成部と、を有し、前記指令速度生成部は、前記マーカ認識部により前記マーカが認識されなかった場合に、前記マーカが直前に認識された際に算出した前記基準座標系における着陸地点位置座標を用いて、前記無人飛行体を前記着陸地点へ降下させるための指令速度を生成するよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、着陸のために用いられるマーカを一時的に認識できなくなった場合でも、無人飛行体の着陸動作を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る無人飛行体の着陸システムが適用されたドローン着陸システムの構成を概略して示す斜視図。
図2図1のドローン着陸システムにおける各座標系とドローンの着陸動作を説明する斜視図。
図3図1のドローン着陸システムにおける制御系を示すブロック図。
図4図1のドローン着陸システムの着陸動作を説明するフローチャート。
図5】第2実施形態に係る無人飛行体の着陸システムが適用されたドローン着陸システムの構成を概略して示す斜視図。
図6図5のドローン着陸システムにおける各座標系とドローンの着陸動作を説明する斜視図。
図7図5のドローン着陸システムにおける制御系を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図4
図1は、第1実施形態に係る無人飛行体の着陸システムが適用されたドローン着陸システムの構成を概略して示す斜視図である。また、図2は、図1のドローン着陸システムにおける各座標系とドローンの着陸動作を説明する斜視図である。図1に示す無人飛行体の着陸システムとしてのドローン着陸システム10は、着陸地点としての充電ポート11に設置されたマーカ12を、無人飛行体としてのドローン13に搭載されたカメラ14が撮影し、マーカ12の認識によりドローン13と充電ポート11との相対位置を把握して、ドローン13を充電ポート11に着陸させるシステムである。
【0013】
充電ポート11は地上に設置されて、着陸したドローン13の電源部(不図示)に接触または非接触で充電を行なう。この充電ポート11におけるドローン13の着陸面は平坦面でもよいが、着陸時にドローン13のガイドとなるような錐台形状に形成されてもよい。また、マーカ12は、充電ポート11自体または充電ポート11の周囲に1または複数設置される。このマーカ12は、例えばARマーカのように位置及び姿勢を認識可能なマーカであってもよい。
【0014】
ドローン13は、搭載された複数の駆動モータ15のそれぞれに取り付けられたプロペラ16の回転により推力を得て、空中を鉛直(上下)方向、水平(前後及び左右)方向に移動し、旋回し、空中で停止(ホバリング)する。各駆動モータ15は、後述の制御装置20における駆動制御部25によりその回転動作が制御される。
【0015】
ドローン13には、図1及び図3に示すように、前記カメラ14、衛星測位部17、慣性センサ18及び制御装置20が搭載される。制御装置20は、マーカ認識部21、自己位置推定部22、指令速度生成部23、記憶部24及び駆動制御部25を有して構成される。このうち、制御装置20は、その全ての構成要素が1つのハードウェア内でドローン13に設けられる必要はなく、一部(例えば指令速度生成部23)が地上に設置され、ネットワークを介して他の構成要素と接続されてもよい。
【0016】
カメラ14は、充電ポート11のマーカ12を撮影するものであり、ドローン13のフレームに鉛直下方を向けて直接取り付けられる。あるいは、カメラ14は、ドローン13のフレームに設置されて姿勢を調整するジンバル機構(不図示)に取り付けられて、ドローン13の着陸時に鉛直下方を向くように調整されてもよい。
【0017】
衛星測位部17は、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)からの測位情報(測位用電波)を受信する。また、慣性センサ18は、加速度センサと角速度センサが統合されたIMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)であり、ドローン13の慣性情報を検出する。
【0018】
マーカ認識部21は、図2及び図3に示すように、カメラ14が撮影したマーカ12を認識して、ドローン13に固定された座標系(Σdrone)から充電ポート11に固定された座標系(Σport)への座標変換を行い、無人飛行体座標系としてのドローン座標系における充電ポート11の位置情報Tdrone_portを算出する。
【0019】
自己位置推定部22は、ドローン13の現在位置を推定するものであり、本第1実施形態では、衛星測位部17によるGNSSからのドローン13の測位情報と、慣性センサ18であるIMUからのドローン13の慣性情報とを組み合わせて、地球上の基準座標系(Σworld)におけるドローン13の位置情報(緯度、経度、高度、方位)を推定する。具体的には、自己位置推定部22は、基準座標系(Σworld)からドローン13に固定された座標系(Σdrone)への座標変換を行って、基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneを算出する。
【0020】
なお、ドローン13が屋内を飛行する場合には、自己位置推定部22は、図示しない単眼カメラやステレオカメラなどを用いたVSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping)技術や、3D Lidar(3次元レーダ)によるSLAM技術によって、事前に定義にした基準座標系におけるドローン13の位置情報と周辺環境の位置情報を推定してもよい。
【0021】
指令速度生成部23は、目標位置(充電ポート11の位置)と自己位置推定部22により推定されたドローン13の位置とを比較して、ドローン13が目標位置に近づくような指令速度Vを生成し、この指令速度Vを駆動制御部25へ出力するものである。
【0022】
具体的には、指令速度生成部23は、まず、以下の第1の機能を有する。つまり、指令速度生成部23は、マーカ認識部21が算出したドローン座標系における充電ポート11の位置座標Tdrone_portと、自己位置推定部22が算出した基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneとを用いて、基準座標系における充電ポート11の位置情報(充電ポート11の位置及び姿勢)Tworld_portを、次式(1)により算出する。
Tworld_port=Tworld_droneTdrone_port………(1)
【0023】
そして、指令速度生成部23は、この基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portから得られる充電ポート11の3次元位置x、y、z及び方位を表すヨー角と、自己位置推定部22にて得られたドローン13の位置及び姿勢(基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_drone)とを用いて、ドローン13の水平方向位置を充電ポート11の直上位置とし且つドローン13が所定のヨー角を保持しつつ充電ポート11へ向かって降下するように指令速度Vを生成し、この指令速度Vを駆動制御部25へ出力する。
【0024】
また、指令速度生成部23は、マーカ認識部21にてマーカ12が認識されて算出されたドローン座標系における充電ポート11の位置情報Tdrone_port等に基づき、式(1)によって、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを算出した場合には、この算出した充電ポート11の位置情報を記憶部24に更新して記憶させる。
【0025】
また、指令速度生成部23は、以下の第2の機能を有する。つまり、指令速度生成部23は、マーカ認識部21にてマーカ12が認識されなかった場合には、マーカ12がマーカ認識部21により直前(最後)に認識された際に算出した基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portから得られる充電ポート11の3次元位置x、y、z及び方位を表すヨー角と、自己位置推定部22により継続して推定されている基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneとを用いて、ドローン13の水平方向位置を充電ポート11の直上位置とし且つドローン13が所定のヨー角を保持しつつ充電ポート11へ向かって降下するように指令速度Vを生成し、この指令速度Vを駆動制御部25へ出力する。
【0026】
更に、指令速度生成部23は、以下の第3の機能を有する。つまり、指令速度生成部23は、図3に示す位置決め完了判断部26を有する。この位置決め完了判断部26は、図2に示すように、充電ポート11の上方に仮想的な円柱形状の位置決め完了ゾーン27を設定し、充電ポート11の上方から降下したドローン13が位置決め完了ゾーン27内に一定時間滞在すれば、ドローン13の充電ポート11に対する位置決めが完了したと判断する。指令速度生成部23は、ドローン13の位置決めが完了した際に、プロペラ16を駆動する駆動モータ15(図1)の回転数を低下させる指令速度Vを駆動制御部25へ出力して、ドローン13を充電ポート11に着陸させる。
【0027】
位置決め完了判断部26は、ドローン13が位置決め完了ゾーン27の一定高度(例えば底面28と同一の高度)まで降下しても、ドローン13が位置決め完了ゾーン27内に一定時間滞在していない場合には、ドローン13の充電ポート11に対する位置決めが完了していないと判断する。この場合、指令速度生成部23は、ドローン13を上記一定高度以上の所定高度まで上昇させた後に再度降下させるような指令速度Vを生成する。上述のようにドローン13を上昇させる際の指令速度Vは、ドローン13の水平方向位置を充電ポート11の直上とし且つドローン13が設定のヨー角を保持した状態で、ドローン13を上昇させるものである。
【0028】
次に、上述のように構成されたドローン着陸システム10の着陸動作を、主に図4のフローチャートを用いて説明する。
指令速度生成部23は、充電ポート11の大凡の位置を事前に把握していることから、自己位置推定部22にて推定された基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneを用いて指令速度Vを生成し、ドローン13を充電ポート11の上空まで移動させる(S1)。
【0029】
次に、マーカ認識部21が、カメラ14にて撮影されたマーカ12を認識して、ドローン座標系における充電ポート11の位置情報Tdrone_portを算出し、自己位置推定部22が、基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneを算出する。指令速度生成部23は、これらの位置情報(Tdrone_port、Tworld_drone)を用いて、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを算出する(S2)。
【0030】
指令速度生成部23は、マーカ認識部21によるマーカ12の認識があったか否かを判断し(S3)、認識があった場合には、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを、ステップS2で算出した位置情報に更新して記憶部24に記憶させる(S4)。と同時に、指令速度生成部23は、ステップS2で算出した充電ポート11の位置情報Tworld_portと、自己位置推定部22にて算出された基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneとを用いて指令速度Vを生成し、ドローン13の水平方向位置が充電ポート11の直上で充電ポート11に近づくように、ドローン13を降下させる(S5)。
【0031】
ステップS3において、マーカ認識部21がマーカ12を認識していないと指令速度生成部23が判断したときには、指令速度生成部23は、マーカ認識部21がマーカ12を直前(最後)に認識した際に算出した基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを用いる(S6)。指令速度生成部23は、ステップS6による基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portと、自己位置推定部22にて推定された基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneとを用いて指令速度Vを生成し、ドローン13の水平方向位置が充電ポート11の直上で充電ポート11に近づくように、ドローン13を降下させる(S5)。
【0032】
ドローン13が充電ポート11付近まで降下した状態で、位置決め完了判断部26は、ドローン13が位置決め完了ゾーン27内に一定時間滞在して、ドローン13の充電ポート11に対する位置決めが完了したか否かを判断する(S7)。ドローン13の位置決めが完了したと判断されたとき(S7のyes)には、指令速度生成部23は、ドローン13のプロペラ16(図1)の回転数を低下させる指令速度Vを生成して、ドローン13を充電ポート11に着陸させる(S8)。
【0033】
ステップS7においてドローン13が位置決め完了ゾーン27内に一定時間滞在せず、且つドローン13の降下位置が位置決め完了ゾーン27の一定高度(例えば底面28)に至っていない場合(S7のNo、S9のNo)には、マーカ認識部21によるマーカ12の認識等を再度実施するために、ステップS2~S8を実行する。
【0034】
ステップS7においてドローン13が位置決め完了ゾーン27内に一定時間滞在せず、且つドローン13が位置決め完了ゾーン27の一定高度(例えば底面28)以下の高度まで降下した場合(S7のNo、S9のYes)には、位置決め完了判断部26は、ドローン13の充電ポート11に対する位置決めが完了していないと判断する。このとき、指令速度生成部23は、ドローン13を位置決め完了ゾーン27の一定高度(例えば底面28)以上の所定高度まで上昇させる指令速度Vを生成して、ドローン13を上昇させる(S10)。指令速度生成部23は、その後、ドローン13を再度降下させる指令速度Vを生成してドローン13を降下させ、マーカ認識部21によるマーカ12の認識等を実施させる(S2~S10)。なお、ドローン13の上昇中においても、マーカ認識部21によりマーカ12の認識動作を行ってもよい。
【0035】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)マーカ認識部21によりマーカ12が認識されなかった場合に、指令速度生成部23は、マーカ認識部21がマーカ12を直前に認識した際に算出した基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを用いて、ドローン13を充電ポート11へ降下させるための指令速度Vを生成するよう構成されている。このため、突風などでドローン13が水平方向に流されてマーカ12がカメラ14の画角から外れてしまったり、マーカ12がカメラ14の画角内に収まっていてもドローン13の振動などによりマーカ12の映像がブレてしまったり、太陽光や照明などの明るさに変化が生じ、あるいは反射したりした際などのように、マーカ認識部21がマーカ12を一時的に認識できなくなった場合でも、ドローン13の着陸動作を継続させることができる。本手法は、カメラ14の解像度が高い場合や、マーカ認識部21の処理能力が低い等のためにマーカ認識処理周期が遅い場合にも有効である。
【0036】
(2)指令速度生成部23は、ドローン13が充電ポート11付近まで降下した状態で、位置決め完了判断部26によりドローン13の充電ポート11に対する位置決めが完了していないと判断されたときに、ドローン13を位置決め完了ゾーン27の一定高度(例えば底面28)以上の所定高度まで上昇させる指令速度Vを生成して、ドローン13を上昇させるよう構成されている。このようにドローン13を上昇させることで、カメラ14とマーカ12との距離が遠くなってマーカ12の認識が容易になり、カメラ14の画角内にマーカ12を収めることが可能になる。この結果、マーカ認識部21によりマーカ12を確実に認識させることができ、ドローン13の充電ポート11への着陸を確実に実現することができる。
【0037】
[B]第2実施形態(図5図7
図5は、第2実施形態に係る無人飛行体の着陸システムが適用されたドローン着陸システムの構成を概略して示す斜視図である。また、図6は、図5のドローン着陸システムにおける各座標系とドローンの着陸動作を説明する斜視図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0038】
図5に示す無人飛行体の着陸システムとしてのドローン着陸システム30は、ドローン13に設置されたマーカ12を、充電ポート11に設置されたカメラ14が撮影し、マーカ12の認識によりドローン13と充電ポート11との相対位置を把握して、ドローン13を充電ポート11に着陸させるシステムである。
【0039】
マーカ12は、ドローン13のフレームに水平方向に直接取り付けられる。または、ドローン13のフレームに、姿勢を調整するためのシンバル機構(不図示)が設置されている場合には、マーカ12は、上記シンバル機構の底部に貼付されてもよい。このようにマーカ12がジンバル機構に貼付されることで、ドローン13が風等で傾いてもマーカ12が水平状態に保持されて、マーカ12がカメラ14で撮影されたときの映像のブレが防止可能になり、更に、ジンバル機構によって光の反射を防ぐような角度にマーカ12を傾けることが可能になる。
【0040】
カメラ14は、充電ポート11自体に1個設置されるが、死角をなくすために複数個が充電ポート11自体、または充電ポート11自体及び充電ポート11の周囲に設置されてもよい。ここで、カメラ14が充電ポート11の周囲に設置される場合には、カメラ14と充電ポート11との相対位置関係が事前に把握されている必要がある。
【0041】
本第2実施形態のドローン着陸システム30では、図7に示すように、充電ポート11を含む地上(充電ポート11側)には、上述のようにカメラ14が設置されると共に、マーカ認識部31及び無線通信部32が設置される。また、ドローン13には衛星測位部17、慣性センサ18、自己位置推定部22、指令速度生成部33、記憶部24、駆動制御部25及び無線通信部34が搭載される。
【0042】
充電ポート11側のマーカ認識部31及び無線通信部32と、ドローン13に搭載された自己位置推定部22、指令速度生成部33、記憶部24、駆動制御部25及び無線通信部34とを有して、ドローン着陸システム30の制御装置35が構成される。ここで、充電ポート11側の無線通信部32とドローン13に搭載された無線通信部34は通信可能に構成され、マーカ認識部31にて算出された後述の情報(Tport_drone)を、ドローン13に搭載の指令速度生成部33へ伝送する。また、ドローン13に搭載された制御装置35の構成要素は、一部(例えば指令速度生成部33)が地上に設置されて、ネットワークを介し他の構成要素と接続されてもよい。
【0043】
ところで、ドローン13が充電ポート11の上部まで移動して、充電ポート11側に設置されたカメラ14がドローン13のマーカ12を撮影したとき、マーカ認識部31がこのマーカ12を認識する。更に、マーカ認識部31は、充電ポート11に固定された座標系(Σport)からドローン13に固定された座標系(Σdrone)への座標変換を行って、着陸地点座標系としての充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報Tport_droneを算出する。
【0044】
指令速度生成部33は、第1実施形態の指令速度生成部23と同様な、マーカ認識部31がマーカ12を認識した場合の第1の機能と、マーカ認識部31がマーカ12を認識しない場合の第2の機能と、位置決め完了判断を行なう第3の機能とを有する。このうち、指令速度生成部33は、第2及び第3の機能については第1実施形態の指令速度生成部23と同様であるが、第1の機能が指令速度生成部23と異なる。以下、指令速度生成部33の第1の機能について述べる。
【0045】
指令速度生成部33は、自己位置推定部22が算出した基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneと、マーカ認識部31が算出した充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報Tport_droneとを用いて、基準座標系における充電ポート11の位置情報(充電ポート11の位置及び姿勢)Tworld_portを、次式(2)により算出する。
Tworld_port=Tworld_droneT-1port_drone………(2)
【0046】
ここで、上付き文字の「-1」が添加された情報は、逆方向の座標変換操作による情報を意味する。具体的には、Tport_droneが充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報であるのに対し、T-1port_droneは、ドローン座標系における充電ポート11の位置情報である。
【0047】
ところが、一般に、鉛直上向きの垂直軸zと一致する光軸O(図6)に対して直交する軸(x軸、y軸)周りのマーカ12の姿勢(ロール、ピッチ)は推定精度が低い。従って、ドローン座標系における充電ポート11の位置情報T-1port_droneをそのまま算出すると、式(2)により算出される基準座標系における充電ポート11の位置座標Tworld_portに過大な誤差が生じてしまう。
【0048】
そこで、指令速度生成部33は、基準座標系(Σworld)の垂直軸zと充電ポート座標系(Σport)の垂直軸zとのそれぞれの方向が一致していると仮定する。この仮定条件に基づいて、指令速度生成部33は、基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneと充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報Tport_droneとから、カメラ14の光軸Oに対して直交する軸(x軸、y軸)周りのドローン13の姿勢情報を破棄した情報(つまり、修正した基準座標系におけるドローン13の位置情報T´world_drone、修正した充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報T´port_drone)を算出する。
【0049】
指令速度生成部33は、これらの修正した情報T´world_drone及びT´port_droneを用いて、次式(3)により、基準座標系における充電ポート11の位置座標Tworld_portを算出する。
Tworld_port=T´world_droneT´-1port_drone………(3)
【0050】
そして、指令速度生成部33は、この基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portから得られる充電ポート11の3次元位置x、y、z及び方位を表すヨー角と、自己位置推定部22にて得られたドローン13の位置及び姿勢(基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_drone)とを用いて、ドローン13の水平方向位置を充電ポート11の直上位置とし且つドローン13が所定のヨー角を保持しつつ充電ポート11へ向かって降下するように指令速度Vを生成し、この指令速度Vを駆動制御部25へ出力する。
【0051】
また、指令速度生成部33は、マーカ認識部31にてマーカ12が認識されて算出された充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報Tport_drone等に基づき、式(3)によって、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを算出した場合には、この算出した充電ポート11の位置情報を記憶部24に更新して記憶させる。
【0052】
上述のように構成されたドローン着陸システム30の着陸動作については、図4のステップS2において、マーカ認識部31がマーカ12を認識し、指令速度生成部33が式(3)を用いて基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを算出する点が第1実施形態と異なる。他のステップS1及びS3~S10については、第2実施形態は第1実施形態と同様である。
【0053】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0054】
(3)指令速度生成部33は、基準座標系におけるドローン13の位置情報Tworld_droneと、充電ポート座標系におけるドローン13の位置情報Tport_droneとから、鉛直上向きの垂直軸zと一致するカメラ14の光軸Oに対し直交する軸(x軸、y軸)周りのドローン13の姿勢情報を破棄して修正した情報(即ち、T´world_drone及びT´port_drone)を用いて、式(3)により、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを算出している。このため、ドローン13に取り付けられたマーカ12におけるx軸及びy軸回りの姿勢の推定精度が低い場合でも、基準座標系における充電ポート11の位置情報Tworld_portを精度よく算出することができる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10…ドローン着陸システム(無人飛行体の着陸システム)、11…充電ポート、12…マーカ、13…ドローン(無人飛行体)、14…カメラ、21…マーカ認識部、22…自己位置推定部、23…指令速度生成部、26…位置決め完了判断部、27…位置決め完了ゾーン、30…ドローン着陸システム(無人飛行体の着陸システム)、31…マーカ認識部、33…指令速度生成部、V…指令速度、Tdrone_port…ドローン座標系における充電ポートの位置情報、Tworld_drone…基準座標系におけるドローンの位置情報、Tworld_port…基準座標系における充電ポートの位置情報、Tport_drone…充電ポート座標系におけるドローンの位置情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7