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特開2024-74364LDPC復号化システム及びLDPC復号化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074364
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】LDPC復号化システム及びLDPC復号化方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/19 20060101AFI20240524BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H03M13/19
H04L27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185467
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】若杉 勝
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AB01
5J065AC02
5J065AD07
5J065AE06
5J065AG05
(57)【要約】
【課題】所望する伝送性能の劣化を抑えながら小数ビット数を削減可能なLDPC復号化システムを提供する。
【解決手段】復調器は、信号点を表すディジタル座標上で信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し丸め処理を施し、丸め処理後の受信点と信号点との残留誤差が小さくなるように丸め処理の補償を行う補償演算を受信点に対して施し復調点とする。丸め処理後の受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合、残留誤差をゼロとする。LDPC復号化器は、復調点に対し、信号点が示すシンボル値のシンボル尤度を割り当て、割り当てがなされたシンボル尤度に基づき符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行する。ここで、割り当て後、シンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値変換し、符号語を構成する全シンボルの変換後の尤度の値を比較することで、シンボル尤度の最小値を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDPC(Low Density Parity Check Codes)で符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施し、前記丸め処理を施した後の受信点である処理後受信点と前記信号点との残留誤差を算出し、前記受信点に対し、前記残留誤差が小さくなるように前記丸め処理の補償を行う補償演算を施して、復調点として出力する復調器と、
前記復調器から出力された前記復調点に対し、前記信号点が示すシンボル値についての尤もらしさであるシンボル尤度を割り当てる割当処理を実行し、前記割当処理がなされた前記シンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行するLDPC復号化器と、
を備え、
前記復調器は、前記処理後受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合には、前記残留誤差をゼロとし、
前記MIN-SUMアルゴリズム復号化では、前記割当処理を実行した後、前記シンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、符号語を構成する全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較することで、前記シンボル尤度の最小値を算出する、
LDPC復号化システム。
【請求項2】
前記LDPC復号化器は、前記割当処理を実行した後、前記全てのシンボルについての前記シンボル尤度をその数値そのものの形態で一時的に格納し、前記符号語分の格納が終了した時点で前記MIN-SUMアルゴリズム復号化を開始する、
請求項1に記載のLDPC復号化システム。
【請求項3】
前記割当処理は、前記復調器から出力された前記復調点に対し、前記ディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った復調点について、前記信号点が示すシンボル値についての前記シンボル尤度を割り当てる、
請求項1又は2に記載のLDPC復号化システム。
【請求項4】
LDPC(Low Density Parity Check Codes)で符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施し、
前記丸め処理を施した後の受信点である処理後受信点と前記信号点との残留誤差を算出し、
前記受信点に対し、前記残留誤差が小さくなるように前記丸め処理の補償を行う補償演算を施して、復調点を求め、
前記復調点に対し、前記信号点が示すシンボル値についての尤もらしさであるシンボル尤度を割り当てる割当処理を実行し、
前記割当処理がなされた前記シンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行し、
前記残留誤差の算出では、前記処理後受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合には、前記残留誤差をゼロとし、
前記MIN-SUMアルゴリズム復号化では、前記割当処理を実行した後、前記シンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、符号語を構成する全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較することで、前記シンボル尤度の最小値を算出する、
LDPC復号化方法。
【請求項5】
前記割当処理を実行した後、前記全てのシンボルについての前記シンボル尤度をその数値そのものの形態で一時的に格納し、前記符号語分の格納が終了した時点で前記MIN-SUMアルゴリズム復号化を開始する、
請求項4に記載のLDPC復号化方法。
【請求項6】
前記割当処理は、求めた前記復調点に対し、前記ディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った復調点について、前記信号点が示すシンボル値についての前記シンボル尤度を割り当てる、
請求項4又は5に記載のLDPC復号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LDPC(Low Density Parity Check Codes:低密度パリティ検査符号)復号化システム及びLDPC復号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LDPC符号の検査行列の列と行とにそれぞれ対応して設けられた列演算器及び行演算器とを備え、LDPCで符号化された受信系列を復号化するための誤り訂正復号装置が記載されている。ここで、列演算器は、受信系列の受信LLR(Log-Likelihood Ratio:対数尤度比)が入力されるとともに行演算器から行LLRが入力され、受信系列の受信LLRと行演算器からの行LLRとの合計値を算出する。行演算器は、前回演算時に得られた行LLRまたは列LLRに関する演算結果を保持し、列演算器から入力された合計値と保持された演算結果とを用いて列LLRを算出し、算出された列LLRから行LLRを算出して列演算器へ出力する。また、特許文献1には、MIN-SUMアルゴリズムによる復号化方法についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/087643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ディジタル変調では信号点をIQ平面に割り当てる。IQ平面のI軸の座標を表すビット数を5とした場合、I軸方向は32階調に分割される。Q軸方向も同様なので、IQ平面に定義されるQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式の信号点座標は、図1に示すようになる。ここで、図1では片軸当たり整数2ビット、小数3ビットとなっている。また、同じ片軸5ビットのIQ平面を16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式で使用すると、図2に示すようになる。ここで、図2では片軸当たり整数3ビット、小数2ビットとなっている。
【0005】
ここで例示したように、整数ビット数は伝送に使う変調多値数の最大数で決まるため、小数ビット数は総ビット数の残りに決まってしまう。そして、小数ビット数が信号点間隔の大きさを決めるため、小数ビット数で概ね伝送性能が決まることになる。
【0006】
そのため、所望する伝送性能を得るためには小数ビット数を増やすという手法が一般的に採用される。しかし、変調多値数も多く要求されるため信号のビット数は増加傾向にあり、ディジタル復調とLDPC復号化は数値演算器が多いため、信号のビット数増加は回路規模増加に大きく影響する。
【0007】
そこで、伝送性能の劣化を抑えながら、小数ビット数を削減して回路規模を低減させる方法の開発が求められている。なお、特許文献1に記載の技術は、LDPC列演算器での演算を減らす方法であり、このような課題を解決できるものではない。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題を解決するLDPC復号化システム及びLDPC復号化方法を提供することにある。上述した課題は、所望する伝送性能の劣化を抑えながら小数ビット数を削減することを可能にする、というものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係るLDPC復号化システムは、LDPC(Low Density Parity Check Codes)で符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施し、前記丸め処理を施した後の受信点である処理後受信点と前記信号点との残留誤差を算出し、前記受信点に対し、前記残留誤差が小さくなるように前記丸め処理の補償を行う補償演算を施して、復調点として出力する復調器と、前記復調器から出力された前記復調点に対し、前記信号点が示すシンボル値についての尤もらしさであるシンボル尤度を割り当てる割当処理を実行し、前記割当処理がなされた前記シンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行するLDPC復号化器と、を備え、前記復調器は、前記処理後受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合には、前記残留誤差をゼロとし、前記MIN-SUMアルゴリズム復号化では、前記割当処理を実行した後、前記シンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、符号語を構成する全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較することで、前記シンボル尤度の最小値を算出するものである。
【0010】
本開示の第2の態様に係るLDPC復号化方法は、LDPC(Low Density Parity Check Codes)で符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で前記信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施し、前記丸め処理を施した後の受信点である処理後受信点と前記信号点との残留誤差を算出し、前記受信点に対し、前記残留誤差が小さくなるように前記丸め処理の補償を行う補償演算を施して、復調点を求め、前記復調点に対し、前記信号点が示すシンボル値についての尤もらしさであるシンボル尤度を割り当てる割当処理を実行し、前記割当処理がなされた前記シンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行し、前記残留誤差の算出では、前記処理後受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合には、前記残留誤差をゼロとし、前記MIN-SUMアルゴリズム復号化では、前記割当処理を実行した後、前記シンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、符号語を構成する全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較することで、前記シンボル尤度の最小値を算出するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、所望する伝送性能の劣化を抑えながら小数ビット数を削減することが可能なLDPC復号化システム及びLDPC復号化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】QPSK方式の信号点のディジタル座標の一例を示す図である。
図2】16QAM方式の信号点のディジタル座標の一例を示す図である。
図3】実施形態1に係るLDPC復号化システムの一構成例を示すブロック図である。
図4図3のLDPC復号化システムで採用可能なQPSK方式の信号点のディジタル座標の一例を示す図である。
図5】実施形態1に係るLDPC復号化方法の一例を説明するためのフロー図である。
図6】実施形態2に係るLDPC復号化システムにおける復調器の一構成例を示すブロック図である。
図7図6の復調器において設定可能なQPSK方式の復調点の判定不能領域の一例を示す図である。
図8】実施形態2に係るLDPC復号化システムにおけるLDPC復号化器で採用可能な復号化時の信号点の拡大処理の一例を示す図である。
図9図8における拡大処理を採用した場合のシンボル尤度の一割当例をI軸について説明するための図である。
図10図8における拡大処理を採用した場合のシンボル尤度の他の割当例をI軸について説明するための図である。
図11】実施形態2に係るLDPC復号化システムにおける復調器の他の構成例を示すブロック図である。
図12図11の復調器における誤差算出部の一例を示す図である。
図13】実施形態2に係るLDPC復号化システムにおけるLDPC復号化器の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、以下に説明する図面には一方向性の矢印を描いている図面があるが、この矢印はある信号(データ)の流れの方向を端的に示したもので、双方向性を排除するものではない。
【0014】
<実施形態1>
主に図3図5を参照しながら、実施形態1に係るLDPC復号化システムについて説明する。図3は、実施形態1に係るLDPC復号化システムの一構成例を示すブロック図である。図4は、図3のLDPC復号化システムで採用可能なQPSK方式の信号点のディジタル座標の一例を示す図である。
【0015】
図3に示すように、本実施形態に係るLDPC復号化システム(以下、本システム)1は、復調器1a及びLDPC復号化器1bを備える。本システム1は、単独の装置として構成することができるが、例えば復調器1a及びLDPC復号化器1bとで機能を分散するなど、複数の装置として構成することもできる。また、本システム1は、LDPCの送受を行う、送信機及び受信機で構成されるシステムにおいて、受信機側に搭載されることができる。
【0016】
LDPCの送受を行うシステムでは、送信側と受信側で小数ビット数を同じにしなければならない理由はないことを鑑み、受信側の演算方法だけに着目し、受信側である本システム1において演算時の小数ビット数を削減するようにする。具体的には、本システム1では、受信信号に対して、送信側で送信された小数ビット数より小さい小数ビット数であって予め定めた小数ビット数でディジタル復調及び復号化を実行する。このようなディジタル復調及び復号化を実行する復調器1a及びLDPC復号化器1bの具体的な構成について、以下に説明する。
【0017】
復調器1aは、LDPCで符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施す。後述の補償演算により小数ビット数が増えるため、上記予め定めた小数ビット数である元の小数ビット数にするための丸め処理であるが、丸め方式は小数ビット数に余裕を持たないため、単なる四捨五入より偶数丸めが好ましい。
【0018】
上記の周囲4つの正方形座標領域とは、図4の例で言うと、例えば信号点(1,1)に対しては座標(0,0)~(0.75,0.75)、座標(1,0)~(1.75,0.75)、座標(0,1)~(0.75,1.75)、座標(1,1)~(1.75,1.75)でそれぞれ囲まれる4つの正方形座標領域を指す。他の3つの座標についても同様の位置関係にある4つの正方形座標領域を指すことができる。各座標について互いの4つの正方形座標領域は重複しないように、正方形座標領域が定義される。なお、QPSK方式以外の信号点についても、同様に他の座標と重複しないように各座標に対して4つの正方形座標領域が定義されることになる。
【0019】
復調器1aは、丸め処理を施した後の受信点(以下、処理後受信点)と信号点との残留誤差を算出し、受信点に対し、残留誤差が小さくなるように補償演算を施して、復調点として出力する。この補償演算は、丸め処理の補償を行う演算であればよく、具体例については実施形態2で説明する。この補償演算により、例えば、図4の例で説明すると、上図の座標に示す受信点が下図の座標に示す復調点として変換されることになる。なお、QPSK方式以外の方式を用いた場合にも同様の考え方で補償演算を実行することができる。
【0020】
但し、本実施形態では、第1の特徴として、残留誤差の算出に関して次のような特徴を備える。即ち、復調器1aは、処理後受信点のディジタル座標が偶数ちょうどであった場合、残留誤差を算出せず強制的にゼロとする。本実施形態では、小数ビット数が少ないと復調点が信号点と信号点のちょうど真ん中に入る確率が増加するため、あえて、復調器1aではこのようにディジタル座標上において、算出不能領域(判定不能領域)を設けている。
【0021】
LDPC復号化器1bは、復調器1aから出力された復調点に対し、信号点が示すシンボル値についての尤もらしさであるシンボル尤度を割り当てる割当処理を実行する。
【0022】
次いで、LDPC復号化器1bは、割当処理がなされたシンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行する。つまり、LDPC復号化器1bでは、符号語を構成する全てのシンボルのシンボル尤度が揃った段階で、MIN-SUMアルゴリズム復号化を開始する。MIN-SUMアルゴリズムについては、既知であるため、その説明を省略する。
【0023】
但し、本実施形態では、第2の特徴として、MIN-SUMアルゴリズム復号化において次のような特徴を備える。即ち、LDPC復号化器1bでは、MIN-SUMアルゴリズム復号化において、格納されたシンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較する。LDPC復号化器1bでは、このような変換、比較を行うことで、シンボル尤度の最小値を算出する。このように、本実施形態では、シンボル尤度についても上述のような取り扱いとして、あえて感度を悪くしている。
【0024】
そして、本システム1は、受信側のシステムであって、受信側で小数ビット数の削減を行うものであるが、上記の第1、第2の特徴を備えることで、同じ小数ビット数の場合で比較すると、これらの特徴を備えない場合に比べて伝送性能を改善することができる。よって、本システム1では、LDPCの送受を行うシステムにおいて、小数ビット数を削減しつつも、送信側が所望する伝送性能について劣化を抑制することが可能である。
【0025】
このように、本実施形態によれば、LDPCの送受を行うシステムにおいて、所望伝送性能の劣化を抑えながらディジタル信号の小数ビット数を削減することが可能になる。換言すると、本実施形態によれば、所望する伝送性能を得るためのLDPC復号化器1b(LDPC復号化回路)の回路規模や処理負荷を減らすことができる。
【0026】
次に、図5を参照しながら、本システム1におけるLDPC復号化方法の一例について説明する。図5は、本実施形態に係るLDPC復号化方法の一例を説明するためのフロー図である。
【0027】
まず、復調器1aが、LDPCで符号化されディジタル変調された受信信号の受信点のうち、信号点を表すディジタル座標上で信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、丸め処理を施す(ステップS1)。次いで、復調器1aが、丸め処理を施した後の受信点である処理後受信点と信号点との残留誤差を算出する(ステップS2)。但し、上述のように残留誤差の算出に際してはディジタル座標上に判定不能領域を設けておく。次いで、復調器1aが、受信点に対し、残留誤差が小さくなるように丸め処理の補償を行う補償演算を施して、復調点を求め、LDPC復号化器1bに出力する(ステップS3)。
【0028】
次いで、ステップS3で求めた復調点に対し、LDPC復号化器1bが、シンボル尤度を割り当てる割当処理を実行し(ステップS4)、割当処理がなされたシンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行し(ステップS5)、処理を終了する。但し、シンボル尤度についての負数の扱いは上述した通りとする。このような処理により、符号語毎に復号化がなされた結果を得ることができる。
【0029】
<実施形態2>
実施形態1のより具体的な構成例である実施形態2について、図6図13及び図4を参照しながら、実施形態1との相違点を中心に説明するが、本実施形態でも、実施形態1で説明した様々な応用例が適用できる。
【0030】
まず、図6図10及び図4を参照しながら、本実施形態に係るLDPC復号化システム(以下、本システム)における復調器の構成例について説明する。図6は、本システムにおける復調器の一構成例を示すブロック図である。
【0031】
本システムにおいても、実施形態1のLDPC復号化システム1と同様に、送信側と受信側で小数ビット数を同じにしなければならない理由がなく受信側の演算方法に着目して、小数ビット数を削減する。本システムについての、小数ビット数を削減した場合におけるディジタル復調時及びLDPC復号化時に行う演算の特徴について説明する。
【0032】
まず、ディジタル復調時の特徴を説明する。図6で例示するように、本システムの復調器10は、乗算器11、偶数丸め処理部12、誤差算出部13、増減調整部14、及び平滑化部15を備えることができる。
【0033】
復調器10は、LDPCで符号化されディジタル変調された受信信号を入力し、その受信信号の受信点のうち、信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対し、信号点との残留誤差を算出し、この残留誤差が小さくなるよう受信点に補償演算を実行し、復調点として出力する。残留誤差の算出の前に、送信側で送信された小数ビット数より小さい小数ビット数であって予め定めた小数ビット数で受信点に対して丸め処理を実行する。丸め方式は小数ビット数に余裕を持たないため、単なる四捨五入より偶数丸めが好ましい。
【0034】
そのため、復調器10の各部位は以下のような処理を行う。乗算器11は、上記受信信号の受信点の値を入力し、平滑化部15から出力された係数(制御値)と掛け合わせ、偶数丸め処理部12へ出力する。偶数丸め処理部12は、乗算器11からの出力に対し、偶数丸め処理を実行し、偶数丸め処理後の値を誤差算出部13へ出力するとともに、復調点としてLDPC復号化器側へ出力する。
【0035】
誤差算出部13は、ディジタル座標上で信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った受信点に対して、偶数丸め処理後の受信点と信号点との残留誤差を算出し、対象の信号点とともに増減調整部14に出力する。増減調整部14は、誤差算出部13から出力された信号点と残留誤差とに基づき、その信号点についての増幅ゲインの調整を行い、平滑化部15へ出力する。平滑化部15は、受信点に対し、残留誤差が小さくなるように偶数丸め処理の補償を行う補償演算で使用する係数(制御値)を算出して、乗算器11へ出力する。平滑化部15では、平滑化として、四捨五入や偶数丸めなどのやや高度な処理は不要で単純な切り捨て処理を採用することができる。
【0036】
このように、復調器10は、ディジタル復調に際し、信号点の周囲4つの正方形領域に入った受信点に対し、信号点との残留誤差を算出し、この残留誤差が小さくなるよう受信点に補償演算を実行する。片軸4ビットのIQ平面に定義したQPSK信号の受信を例に挙げて説明する。図4の上図で示すように、誤差算出部13は、受信点の座標から信号点までのズレを残留誤差として算出する。図4の上図の例では、その算出結果が振幅ゲイン不足であり調整が必要であると判定し、振幅ゲインを増加させる。受信を多数行えば復調点は信号点近傍に収束する。振幅ゲインの増加量又は減少量の絶対値は一般に小さく採り、平滑化と合わせてフィードバック制御の変動を抑えるようにしている。
【0037】
さらに、本実施形態でも、制御後の受信点座標が偶数ちょうどであった場合、残留誤差を算出せず強制的にゼロとする。図7を用いて説明すると、これは、図7のグレー領域で図示する判定不能領域を設けることを意味する。図7は、図6の復調器10において設定可能なQPSK方式の復調点の判定不能領域の一例を示す図である。
【0038】
次にLDPC復号化時の特徴について、図8図10を参照しながら説明する。図8は、本システムにおけるLDPC復号化器で採用可能な復号化時の信号点の拡大処理の一例を示す図である。図9は、図8における拡大処理を採用した場合のシンボル尤度の一割当例をI軸について説明するための図で、図10は、図8における拡大処理を採用した場合のシンボル尤度の他の割当例をI軸について説明するための図である。
【0039】
復号化では復調点を入力とし最終的にシンボル値を確定するため、復調のような判定不能領域を設けることは得策ではない。そのため、本実施形態では、図8に示すように、LDPC復号化の段階から信号点を4倍とみなす近似を行う。信号点の周囲4つの正方形領域に入った復調点に対し、シンボル値の尤度を割り当てる。つまり、割当処理は、復調器10から出力された復調点に対し、ディジタル座標上で信号点の周囲4つの正方形座標領域に入った復調点について、その信号点が示すシンボル値についてのシンボル尤度を割り当てる処理とすることができる。なお、復号化時における正方形座標領域のサイズは、復調時における正方形座標領域のサイズと同じであり、変調方式によって決まるサイズである。但し、復号化時の小数ビット数は復調時における小数ビット数以下とすることができる。
【0040】
I軸もQ軸も考え方は同じため、I軸方向に絞って割当処理について説明する。図8のIQ平面はI軸において、図9に示すようなI軸直線となる。図9において、左側の信号点のシンボル値を‘0’、右側の信号点のシンボル値を‘1’とした場合、図9に示す通り復調点の座標からシンボル尤度を割り当てることができる。また、図10に示すように、シンボル値の境界パタンが逆もあり得る。図9及び図10のいずれの例においても、シンボル尤度の正負でシンボル値‘0’/‘1’を表し、絶対値が大きいほど尤もらしいとする。
【0041】
そして、LDPC復号化器が、割当処理がなされたシンボル尤度に基づき、符号語毎にMIN-SUMアルゴリズム復号化を実行し、復号結果を得る。但し、本実施形態では後述するような処理を行う。比較例として、ビット数が十分に多い場合は、このシンボル尤度そのものの数値で演算を実行すれば済むが、ビット数が十分でない場合正負バランスを補正するため0.5を加算する手法が採用できる。例えばシンボル尤度が-4、-3、-2、-1、0、1、2、3はそれぞれ-3.5、-2.5、-1.5、-0.5、0.5、1.5、2.5、3.5と変換することができる。しかしながら、この手法では1ビット増えてしまう。
【0042】
よって、本実施形態では、このような一律の変換は行わず、MIN-SUMアルゴリズムにおける最小値算出時(比較時)の負数の扱いを変えるようにする。すなわち、本実施形態では、シンボル尤度が負数の-4、-3、-2、-1はそれぞれ-3、-2、-1、-0とみなす。但し、本実施形態では、比較後は元に戻した値を用いる。つまり、本実施形態では、値の格納時と加算時にはシンボル尤度そのものの数値を使用する。
【0043】
本システムでは、以上の一連の非線形な処理及び近似を全て具備し、ディジタル復調及びLDPC復号化においてビット数の削減を図ることができる。
【0044】
次に、本システムの復調器の他の構成例及びLDPC復号化器の構成例について、図11図13を参照しながら説明する。図11は、本システムにおける復調器の他の構成例を示すブロック図で、図12は、図11の復調器における誤差算出部の一例を示す図である。図13は、本システムにおけるLDPC復号化器の一構成例を示すブロック図である。
【0045】
図11に示す復調器10aは、図6の復調器10において、乗算器11、増減調整部14の代わりにそれぞれ補償演算部11a、増減調整部14aを備えたものである。補償演算部11aは、乗算器11と同様に受信点に補償演算を行うものであるが、ここで実行される補償演算は、図6で説明した振幅ゲインの補償以外にも例えばキャリア位相補償や波形等化補償などを適用することができる。増減調整部14aは、この補償演算の対象についての増減を行うことになる。
【0046】
また、誤差算出部13は、図12に示すように、信号点座標から復調点座標を差し引いた値と、ゼロとを入力し、残留誤差を出力する構成とすることができる。ここで、誤差算出部13は、復調点座標の整数部が偶数で且つ復調点座標の小数部が全てゼロであった場合には、残留誤差を出力しないものとする。
【0047】
復調器10aの後段に設けられるLDPC復号化器は、図13に示すLDPC復号化器20とすることができる。LDPC復号化器20は、シンボル尤度算出部21、変数ノード格納RAM22、絶対値変換部23、正負符号判定部24、最小値探索部25、補数値変換部26、チェックノード格納RAM27、加算器28~31、及び復号格納RAM32を備えることができる。
【0048】
LDPC復号化器20の構成は、一般的なMIN-SUMアルゴリズムを実行する構成を採用することができ、その詳細な説明を省略する。シンボル尤度算出部21は、図9又は図10で例示したように予め定義されたテーブルを備え、そのテーブルを参照して復調点に対してシンボル尤度を得ることができる。変数ノード格納RAM(Random Access Memory)22は、符号語を構成するシンボル分のシンボル尤度を順次格納していくRAMである。絶対値変換部23は、変数ノード格納RAM22に格納されたシンボル尤度を絶対値に変換し、最小値探索部25に出力する。但し、絶対値変換に際しては、上述した通り、シンボル尤度が負数の-4、-3、-2、-1はそれぞれ-3、-2、-1、-0とみなしてから絶対値に変換する。
【0049】
正負符号判定部24は、絶対値変換部23を介して受け取った変数ノード格納RAM22に格納されたシンボル尤度の正負の符号を予め決められたチェックノードグループに基づいて変換し、補数値変換部26に出力する。最小値探索部25は、絶対値変換部23から出力された絶対値から最小値を探索し、補数値変換部26に出力する。補数値変換部26は、変換された正負の符号及び最小な絶対値に基づき、2の補数値に変換する。この変換に際し、負の符号をもつシンボル尤度についてはビット反転のみを行う。
【0050】
チェックノード格納RAM27は、複数の変数ノードから算出した値を一時的に保管するRAMである。加算器28は、チェックノード格納RAM27に一時的に保管された値を予め決められた変数ノードグループに基づいて合計し、加算器30に渡す。加算器30は、変数ノード格納RAM22に格納されたシンボル尤度の値に対し、加算器28から出力された値をフィードバック加算する。このフィードバックにより、変数ノード格納RAM22に格納されたシンボル尤度の値が更新される。前記更新値は復号格納RAM32にも書き込み、ここから復号化結果を出力する。加算器29は、チェックノード格納RAM27に一時的に保管された値を加算器28と異なる予め決められた変数ノードグループに基づいて合計し、加算器31に渡す。加算器31の機能は、加算器30と同等である。なお、本実施形態で使用するLDPC復号化器は図13のLDPC復号化器20の構成例に限ったものではない。
【0051】
次に、復調器10a及びLDPC復号化器20の動作例について、具体的な数値を挙げながら説明する。ここでは、説明の簡略化のため、補償演算部11aでの補償演算は図6の乗算器11と同じく乗算による振幅補償を例にして説明する。また、補償演算への制御値は初期値1.25から始まる例を挙げる。また、図4のようにQPSK信号の受信を例にして説明する。
【0052】
入力された受信点が0.50であった場合、補償演算部11aでその値が1.25倍され、0.6250となる。この小数4ビットを偶数丸め処理部12が小数2ビットまで丸めた場合、0.50となる。対象となる信号点は1.00であるため、図12の誤差算出部13で算出される残留誤差は+0.50となる。
【0053】
増減調整部14aは、ビット数の大きな積算を行うことが可能に構成され、入力された正負符号をもつ残留誤差の値を積算する。平滑化部15は、増減調整部14aから出力された積算値の上位4ビットを抜き出すことで平滑化を行い、補償演算部11aへの制御値とする。補償演算後の受信点が0.00だった場合、図12を参照しながら説明した通り、誤差算出部13は残留誤差値を強制的にゼロにする。
【0054】
LDPC復号化器20のシンボル尤度算出部21では、復調器10aから入力された復調点がシンボル尤度に変換される。例えばQPSK方式の受信であった場合、一つの受信点で2つのシンボルが割り当てられている。符号語を構成する全てのシンボルのシンボル尤度をその数値そのものの形態で変数ノード格納RAM22に格納していく。MIN-SUMアルゴリズム自体は、一般的な方法を採用することができるため、その動作説明を省略し、異なる動作だけを説明する。
【0055】
LDPC復号化器20では、符号語分が揃ったところでMIN-SUMアルゴリズム復号化を開始するが、上述したように、比較時の絶対値の求め方は通常と異なる。シンボル尤度が負数の場合はビット反転のみを行う。すなわち、シンボル尤度-1、-2、-3、-4に対して絶対値を算出した結果は、それぞれ0、1、2、3となる。正数の場合には増減はなく、シンボル尤度0、1、2、3に対して絶対値を算出した結果は、それぞれ0、1、2、3となる。このように、LDPC復号化器20では、シンボル尤度について-1と0の扱いを同じにすることで、あえて感度を悪くしている。LDPC復号化器20では、予め決められたチェックノードグループのうちで、最小値及び正負符号のXOR演算を求め、その結果を2の補数に戻す。2の補数に戻す際、負数の場合はビット反転のみを行う。
【0056】
そして、該当するチェックノード格納RAM27に、2の補数に戻した値を書き込みチェックノード処理が完了する。予め決められた変数ノードグループのうちで、値を合計し、該当する変数ノード格納RAM22にフィードバック加算し、新たなシンボル尤度とすることで、変数ノード処理が完了する。復号格納RAM32へは、フィードバック加算後の値の正負符号のみを書き込めばよい。LDPC復号化器20では、シンボル尤度の更新を何度か行い、最終値の正負符号でシンボル値を確定する。
【0057】
このように、本実施形態においても、MIN-SUMアルゴリズム復号化において、格納されたシンボル尤度について負数の扱いを負数と正数の双方の絶対値群が同じになるように絶対値に変換し、全てのシンボルについての変換後の尤度の値を比較する。本実施形態においても、このような変換、比較を行うことで、シンボル尤度の最小値を算出する。
【0058】
以上の説明から分かるように、本実施形態によっても、実施形態1で説明した効果と同様に、LDPCの送受を行うシステムにおいて、所望伝送性能の劣化を抑えながらディジタル信号の小数ビット数を削減することが可能になる。
【0059】
<他の実施形態>
実施形態1,2で説明したLDPC復号化システム又は各機器は、ハードウェア構成として、いずれも1又は複数のプロセッサ、メモリ、及びインターフェースを備える構成とすることもできる。この構成を採用する場合、実施形態1,2で説明したLDPC復号化システムにおける機能又は各機器における機能は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み込んでインターフェースと協働しながら実行することにより実現されることができる。
【0060】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0061】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 LDPC復号化システム
1a、10、10a 復調器
1b、20 LDPC復号化器
11 乗算器
11a 補償演算部
12 偶数丸め処理部
13 誤差算出部
14、14a 増減調整部
15 平滑化部
21 シンボル尤度算出部
22 変数ノード格納RAM
23 絶対値変換部
24 正負符号判定部
25 最小値探索部
26 補数値変換部
27 チェックノード格納RAM
28、29、30、31 加算器
32 復号格納RAM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図13