(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074371
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/564 20210101AFI20240524BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240524BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240524BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240524BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240524BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240524BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M50/564
H01M50/557
H01M50/188
H01M50/176
H01G11/84
H01G11/78
H01G11/74
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185481
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB01
5E078HA23
5E078KA06
5H011AA09
5H011FF04
5H011GG07
5H011HH02
5H011JJ02
5H011JJ12
5H011JJ29
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA09
5H043DA20
5H043HA31D
5H043HA36D
5H043JA02D
5H043JA04D
5H043KA22D
5H043LA21D
(57)【要約】
【課題】ケース部材に端子部材を固定する樹脂部材の内部に気泡がなく、かつ、ケース部材に変形のない蓄電デバイスを製造できる蓄電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】蓄電デバイス1の製造方法は、ケース部材22の挿通孔22a,22b内に端子部材40,50を挿通した状態で樹脂部材60,70をインサート成形するインサート成形工程S1を備える。このインサート成形工程S1は、ゲートGTの正面Fにケース部材22の挿通孔22a,22bを位置させ、ゲートGTから射出されて進む溶融樹脂MRを、挿通孔22a,22bを通じて、キャビティCVのうち反ゲート側空間CV2内に流し込み、キャビティCV全体に行き渡らせて、樹脂部材60,70を成形する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有するケース部材と、
上記ケース部材の上記挿通孔内に挿通された端子部材と、
上記ケース部材と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記ケース部材及び上記端子部材にそれぞれ接合し、上記ケース部材に上記端子部材を固定する樹脂部材と、を備える
蓄電デバイスの製造方法であって、
上記ケース部材の上記挿通孔内に上記端子部材を挿通した状態で、上記樹脂部材をインサート成形するインサート成形工程を備え、
上記インサート成形工程は、
上記ケース部材、上記端子部材及び成形金型で構成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの正面に、上記ケース部材の上記挿通孔を位置させ、
上記ゲートから射出されて進む上記溶融樹脂を、上記挿通孔を通じて、上記キャビティのうち上記ケース部材よりも上記ゲートとは反対側の反ゲート側空間内に流し込み、上記キャビティ全体に行き渡らせて、上記樹脂部材を成形する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記挿通孔は、
前記端子部材が挿通される挿通部と、
上記挿通部から延びる切り欠き部と、を有しており、
前記インサート成形工程は、
前記ゲートの前記正面に、上記挿通孔のうち上記切り欠き部を位置させて行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記端子部材は、
前記ケース部材の外側に位置し、露出した平面状の端子天面を含む平板状の端子外側平板部を有し、
前記樹脂部材は、
上記ケース部材の上記外側に位置し、上記端子部材の上記端子外側平板部の周囲を取り囲む枠状で、上記端子外側平板部の上記端子天面と面一の樹脂外側枠状部を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの一部をなすケース部材に、樹脂部材を介して端子部材が固定された、電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、直方体箱状のケースに、インサート成形された樹脂部材を介して、正負の端子部材がそれぞれ固設された角形の電池が知られている。具体的には、ケースは、矩形環状の開口部を有する有底角筒状の本体部材と、開口部を閉塞する形態で本体部材に全周にわたり接合された矩形板状の蓋部材とからなる。また正負の端子部材は、蓋部材に設けた一対の挿通孔内にそれぞれ挿通されて、ケースの内部から外部に延びている。そして一対の樹脂部材が、それぞれ、蓋部材と端子部材との間を絶縁しつつ、蓋部材及び端子部材に接合し、蓋部材に端子部材を固定している。
【0003】
このような電池は、以下の手法により組み立てる。即ち、蓋部材の一対の挿通孔内に正負の端子部材を挿通した状態で、一対の樹脂部材をインサート成形して、蓋部材に樹脂部材を介して端子部材を一体化させる。次にこの蓋アセンブリの正負の端子部材を、電極体の正負の集電部にそれぞれ接続する。その後、この電極体を本体部材内に挿入し、蓋部材で本体部材の開口部を塞ぎ、全周にわたりレーザ溶接してケースを形成する。関連する従来技術として、例えば特許文献1,2が挙げられる(特許文献1の
図1、
図2、段落(0018)等、及び、特許文献2の
図1~
図3、段落(0080)等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-272324号公報
【特許文献2】特開2018-097978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のインサート成形の際、ゲートの正面に蓋部材(ケース部材)が存在している場合、ゲートから射出された溶融樹脂は、蓋部材(ケース部材)に当たるため、溶融樹脂をスムーズにキャビティ全体に行き渡らせることができない。このため、溶融樹脂の樹脂圧が低いと、出来上がった樹脂部材の内部に気泡が形成される場合がある。一方、この気泡発生を抑制するべく樹脂圧を高くすると、蓋部材(ケース部材)のうち溶融樹脂が接する部位に、変形が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ケース部材に端子部材を絶縁しつつ固定する樹脂部材の内部に気泡がなく、かつ、ケース部材に変形のない蓄電デバイスを製造することができる蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、挿通孔を有するケース部材と、上記ケース部材の上記挿通孔内に挿通された端子部材と、上記ケース部材と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記ケース部材及び上記端子部材にそれぞれ接合し、上記ケース部材に上記端子部材を固定する樹脂部材と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記ケース部材の上記挿通孔内に上記端子部材を挿通した状態で、上記樹脂部材をインサート成形するインサート成形工程を備え、上記インサート成形工程は、上記ケース部材、上記端子部材及び成形金型で構成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの正面に、上記ケース部材の上記挿通孔を位置させ、上記ゲートから射出されて進む上記溶融樹脂を、上記挿通孔を通じて、上記キャビティのうち上記ケース部材よりも上記ゲートとは反対側の反ゲート側空間内に流し込み、上記キャビティ全体に行き渡らせて、上記樹脂部材を成形する蓄電デバイスの製造方法である。
【0008】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、インサート成形工程において、ゲートの正面にケース部材の挿通孔を位置させ、ゲートから射出された溶融樹脂を、挿通孔を通じてキャビティの反ゲート側空間内に流し込み、キャビティ全体に行き渡らせるので、溶融樹脂をスムーズにキャビティ全体に行き渡らせることができる。このため、溶融樹脂の樹脂圧を低くしても、内部に気泡のない樹脂部材を成形することができる。一方、樹脂圧を低くすることができるので、ケース部材に変形が生じるのを防止できる。かくして、樹脂部材の内部に気泡がなく、かつ、ケース部材に変形のない蓄電デバイスを製造することができる。
【0009】
(2)更に(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記挿通孔は、前記端子部材が挿通される挿通部と、上記挿通部から延びる切り欠き部と、を有しており、前記インサート成形工程は、前記ゲートの前記正面に、上記挿通孔のうち上記切り欠き部を位置させて行う蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0010】
蓄電デバイスの設計上、樹脂部材を出来る限り小さくしたい場合があり、そのために挿通孔も出来る限り小さくしたい場合がある。上述の挿通孔は、端子部材が挿通される挿通部と、挿通部から延びる切り欠き部とを有するため、挿通孔の全体形状を矩形状や長円形状等とする場合に比して、挿通孔を小さくし、樹脂部材を小さくすることができる。そして挿通孔及び樹脂部材が小さいにも拘わらず、樹脂部材の内部に気泡がなく、かつ、ケース部材に変形のない蓄電デバイスを製造することができる。
【0011】
(3)更に(1)または(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記端子部材は、前記ケース部材の外側に位置し、露出した平面状の端子天面を含む平板状の端子外側平板部を有し、前記樹脂部材は、上記ケース部材の上記外側に位置し、上記端子部材の上記端子外側平板部の周囲を取り囲む枠状で、上記端子外側平板部の上記端子天面と面一の樹脂外側枠状部を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0012】
蓄電デバイスが上述の端子天面を有する端子部材及び樹脂外側枠状部を有する樹脂部材を備える場合、インサート成形の際、樹脂外側枠状部の形成のために、端子外側平板部の周囲に供給された溶融樹脂の一部が、更に端子外側平板部の端子天面と成形金型との間にまで流れ込んで、インサート成形後の端子天面上に樹脂バリが生じ易い。
しかし、上述の製造方法では、前述のように樹脂圧を低くすることができるので、端子外側平板部の周囲に供給された溶融樹脂の一部が、更に端子外側平板部の端子天面と成形金型との間にまで流れ込むのを抑制できる。更にキャビティの反ゲート側空間内に流れ込んだ溶融樹脂は、端子外側平板部の端子裏面に回り込んで端子裏面側から端子外側平板部を成形金型に押さえ付けるので、端子天面が成形金型に密着する。このため、溶融樹脂が成形金型と端子天面との間に流れ込むのを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池幅方向に沿う断面図である。
【
図3】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の部分拡大上面図である。
【
図4】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の、
図3及び
図5におけるA-A矢視断面図である。
【
図5】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の、
図3及び
図4におけるB-B矢視断面図である。
【
図6】実施形態に係る電池の製造方法のフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る電池の製造方法に関し、インサート成形工程において、ゲートから溶融樹脂をキャビティ内に射出する様子を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係る電池の製造方法に関し、インサート成形工程において、キャビティ内に樹脂部材を成形した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、
図2に電池1の断面図を示す。また
図3に端子部材50及び樹脂部材60の近傍の部分拡大上面図を、
図4及び
図5に端子部材50及び樹脂部材60の近傍の部分拡大断面図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、
図1~
図5に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0015】
電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された扁平捲回型の電極体30と、ケース10のケース上部11(蓋部材22)にそれぞれ支持された正極の端子部材40及び負極の端子部材50等から構成されている。電極体30は、ケース10内で、絶縁フィルムからなり、電池高さ方向AHの上側AH1に開口する袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体30内に含浸され、残りはケース10のケース底部12上に溜まっている。
【0016】
このうちケース10は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる直方体箱状であり、電池高さ方向AHの上側AH1に位置する矩形状のケース上部11と、これに対向し、電池高さ方向AHの下側AH2に位置する矩形状のケース底部12と、これらの間を結ぶ4つの矩形状のケース側部13,14,15,16とを有する。このケース10は、上側AH1に矩形環状の開口部21cを有する有底角筒状の本体部材21と、開口部21cを閉塞する形態で本体部材21に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材(ケース部材)22とから構成されている。
【0017】
ケース上部11(蓋部材22)には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁28が設けられている。また蓋部材22には、ケース10の内外を連通する注液孔22kが設けられており、アルミニウムからなる円板状の封止部材29で気密に封止されている。
更に蓋部材22のうち、電池幅方向BHの一方側BH1及び他方側BH2の端部近傍には、それぞれ挿通孔22a,22bが設けられている。各挿通孔22a,22bは、それぞれ、矩形状の挿通部22a1,22b1と、この挿通部22a1,22b1から延びる切り欠き部22a2,22b2とからなる。具体的には、一方の切り欠き部22a2は、挿通部22a1の電池厚み方向CHの中央から電池幅方向BHの他方側BH2に向けて延びており、他方の負極の切り欠き部22b2は、挿通部22b1の電池厚み方向CHの中央から電池幅方向BHの一方側BH1に向けて延びている。
一方の挿通孔22aのうち挿通部22a1内には、アルミニウムからなる正極の端子部材40が挿通されており、樹脂部材60を介してケース10と絶縁された状態で蓋部材22に固設されている。また他方の挿通孔22bのうち挿通部22b1内には、銅からなる負極の端子部材50が挿通されており、樹脂部材70を介してケース10と絶縁された状態で蓋部材22に固設されている。
【0018】
これらの端子部材40,50は、それぞれ、金属板(正極の端子部材40はアルミニウム板、負極の端子部材50は銅板)を所定形状に打ち抜いて屈曲加工をしたものであり、蓋部材22の外側EHに位置する端子外側平板部41,51と、主にケース10内に位置し、挿通孔22a,22b内を経由して端子外側平板部41,51に繋がる端子内側部42,52とを有する。端子外側平板部41,51は、矩形平板状であり、矩形平面状の端子天面41m,51mを有する。この端子天面41m,51m上には樹脂バリがなく、端子天面41m,51mの全体が露出している。また正極の端子内側部42は、ケース10内で電極体30の後述する正極集電部33に接合し導通している。一方、負極の端子内側部52は、ケース10内で電極体30の後述する負極集電部36に接合し導通している。
【0019】
次に樹脂部材60,70について説明する。正極の樹脂部材60は、蓋部材22のうち挿通孔22aを囲む環状の挿通孔周囲部23と、端子部材40との間を絶縁しつつ、蓋部材22の挿通孔周囲部23及び端子部材40にそれぞれ接合し、蓋部材22に端子部材40を固定している。また負極の樹脂部材70は、蓋部材22のうち挿通孔22bを囲む環状の挿通孔周囲部24と、端子部材50との間を絶縁しつつ、蓋部材22の挿通孔周囲部24及び端子部材50にそれぞれ接合し、蓋部材22に端子部材50を固定している。
【0020】
これらの樹脂部材60,70は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、蓋部材22の外側EHに位置する樹脂外側枠状部61,71と、ケース10の内部及び蓋部材22の挿通孔22a,22b内に位置し、樹脂外側枠状部61,71に繋がる樹脂内側部62,72とを有する。樹脂外側枠状部61,71は、端子部材40,50の端子外側平板部41,51の周囲を取り囲む枠状で、端子外側平板部41,51の端子天面41m,51mと面一の形態を有しており、端子部材40,50の端子外側平板部41,51と蓋部材22の挿通孔周囲部23,24との間を絶縁している。一方、樹脂内側部62,72は、端子部材40,50の端子内側部42,52と蓋部材22の挿通孔周囲部23,24との間を絶縁している。
【0021】
次に電極体30について説明する。この電極体30は、帯状の正極板31と帯状の負極板34とを、帯状で樹脂製の多孔質膜からなる一対のセパレータ37を介して互いに重ね、円筒状に捲回した後に、扁平状にプレスしたものである。電極体30は、横倒しの状態でケース10内に収容されている。電極体30のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部は、正極板31の正極集電箔32が渦巻き状をなして突出した正極集電部33である。この正極集電部33は、正極の端子部材40の端子内側部42に接合している。また電極体30のうち、電池幅方向BHの他方側BH2の端部は、負極板34の負極集電箔35が渦巻き状をなして突出した負極集電部36である。この負極集電部36は、負極の端子部材50の端子内側部52に接合している。
【0022】
次いで、上記電池1の製造方法について説明する(
図6~
図8参照)。予め蓋部材22及び端子部材40,50を用意しておく。蓋部材22は、アルミニウム板を所定形状に打ち抜き、これに注液孔22k、挿通孔22a,22b及び安全弁28を形成して得る。また正極の端子部材40はアルミニウム板を、負極の端子部材50は銅板を、それぞれ所定形状に打ち抜き、屈曲加工をして得る。
【0023】
そして「インサート成形工程S1」(
図6参照)において、蓋部材22の挿通孔22a,22b内に端子部材40,50をそれぞれ挿通した状態で、樹脂部材60,70をそれぞれインサート成形して、蓋アセンブリ7を形成する(
図7及び
図8参照)。具体的には、上金型DE1及び下金型DE2を有する成形金型DE(
図7参照)のうち、下金型DE2の所定位置に、まず蓋部材22を配置する。続いて、下金型DE2に配置した蓋部材22の挿通孔22a,22b内に、端子部材50,60をそれぞれ挿通する。その後、上金型DE1を下方に移動させて、下金型DE2の上に重ね、成形金型DEを閉じる。
【0024】
なお、上金型DE1には、一対の射出ノズルNZが配置されており、各射出ノズルNZの先端に形成されたゲートGTから、溶融樹脂MRを、蓋部材22、端子部材40,50及び成形金型DEで構成される一対のキャビティCV内にそれぞれ射出可能に構成されている。成形金型DEを閉じた状態で、各ゲートGTの正面F(本実施形態では直下)に、蓋部材22の挿通孔22a,22b、詳細には、挿通孔22a,22bのうち切り欠き部22a2,22b2が位置している。
【0025】
次に各ゲートGTから溶融樹脂MRを、キャビティCVのうち蓋部材22よりもゲートGT側(
図7中、上方)のゲート側空間CV1内に射出する。このゲートGTから射出されて下方に進む溶融樹脂MRは、挿通孔22a,22bに切り欠き部22a2,22b2を設けているため、蓋部材22に遮られることなく、切り欠き部22a2,22b2を通じて、キャビティCVのうち蓋部材22よりもゲートGTとは反対側の反ゲート側空間CV2内に流し込まれる。
【0026】
このため、樹脂圧を低くしても、溶融樹脂MRをスムーズにキャビティCV全体に行き渡らせることができる。また樹脂圧を低くすることができるので、端子部材40,50の端子外側平板部41,51の周囲に供給された溶融樹脂MRの一部が、更に端子外側平板部41,51の端子天面41m,51mと上金型DE1との間に流れ込むのを抑制できる。なお、溶融樹脂MRの適切な樹脂圧は、電池の設計によって異なるため、予備実験を行って適宜設定する。
更にキャビティCVの反ゲート側空間CV2内に流れ込んだ溶融樹脂MRは、端子部材40,50の端子外側平板部41,51の端子裏面41n,51nに回り込んで、端子裏面41n,51n側から端子外側平板部41,51を上金型DE1に押さえ付けるので、端子天面41m,51mが上金型DE1に密着する。このため、溶融樹脂MRが上金型DE1と端子天面41m,51mとの間に流れ込むのを効果的に抑制できる。
【0027】
その後、各キャビティCV全体に充填された溶融樹脂MRを冷却して、キャビティCV内に樹脂部材60,70を成形する。本実施形態では、上述のようにゲートGTから射出された溶融樹脂MRはスムーズにキャビティCV全体に行き渡るため、溶融樹脂MRの樹脂圧を低くしても、内部に気泡のない樹脂部材60,70を成形することができる。一方、樹脂圧を低くすることができるので、蓋部材22の挿通孔周囲部23,24に変形が生じるのを防止できる。
次に上金型DE1を上方に移動させ、蓋部材22に樹脂部材60,70を介して端子部材40,50が固定された蓋アセンブリ7を下金型DE2から取り出す。
【0028】
次に「電極体接続工程S2」(
図6参照)において、各々帯状をなす正極板31、負極板34及び一対のセパレータ37を捲回し、扁平状にプレスして得た電極体30を用意し、電極体30の正極集電部33及び負極集電部36に、上述した蓋アセンブリ7の端子部材40,50の端子内側部42,52をそれぞれ超音波溶接する(
図1及び
図2参照)。その後、この電極体30を袋状の絶縁ホルダ5で包む。
【0029】
次に「電極体収容・ケース形成工程S3」において、本体部材21を用意し、上述の絶縁ホルダ5で覆われた電極体30を本体部材21内に挿入し、蓋部材22で本体部材21の開口部21cを塞ぐ。そして本体部材21の開口部21c及び蓋部材22の周縁部を全周にわたりレーザ溶接して、電極体30を内部に収容したケース10を形成する。
【0030】
次に「注液・封止工程S4」において、電解液3を注液孔22kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体30内に含浸させる。その後、注液孔22kを外部から封止部材29で覆い、封止部材29を蓋部材22にレーザ溶接して、封止部材29と蓋部材22との間を気密に封止する。
次に「初充電・エージング工程S5」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。かくして、電池1が完成する。
【0031】
以上で説明したように、電池1の製造方法では、インサート成形工程S1において、ゲートGTの正面Fに蓋部材22の挿通孔22a,22bを位置させ、ゲートGTから射出された溶融樹脂MRを、挿通孔22a,22bを通じてキャビティCVのうち反ゲート側空間CV2内に流し込み、キャビティCV全体に行き渡らせているので、溶融樹脂MRをスムーズにキャビティCV全体に行き渡らせることができる。このため、溶融樹脂MRの樹脂圧を低くしても、内部に気泡のない樹脂部材60,70を成形することができる。一方、樹脂圧を低くすることができるので、蓋部材22の挿通孔周囲部23,24に変形が生じるのを防止できる。かくして、樹脂部材60,70の内部に気泡がなく、かつ、蓋部材22に変形のない電池1を製造することができる。
【0032】
また本実施形態では、蓋部材22に設けた挿通孔22a,22bは、端子部材40,50が挿通される挿通部22a1,22b1と、挿通部22a1,22b1から延びる切り欠き部22a2,22b2とを有する。このため、挿通孔の全体形状を矩形状や長円形状等とする場合に比して、挿通孔22a,22bを小さくし、樹脂部材60,70を小さくすることができる。そして挿通孔22a,22b及び樹脂部材60,70が小さいにも拘わらず、樹脂部材60,70の内部に気泡がなく、かつ、蓋部材22に変形のない電池1を製造することができる。
【0033】
また本実施形態では、溶融樹脂MRの樹脂圧を低くすることができるため、端子外側平板部41,51の周囲に供給された溶融樹脂MRの一部が、更に端子外側平板部41,51の端子天面41m,51mと上金型DE1との間にまで流れ込むのを抑制できる。更にキャビティCVの反ゲート側空間CV2内に流れ込んだ溶融樹脂MRは、端子外側平板部41,51の端子裏面41n,51nに回り込んで、端子裏面41n,51n側から端子外側平板部41,51を上金型DE1に押さえ付けるので、端子天面41m,51mが上金型DE1に密着する。このため、溶融樹脂MRが上金型DE1と端子天面41m,51mとの間にまで流れ込むのを効果的に抑制できる。
【0034】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態では、蓋部材22の挿通孔22a,22bに切り欠き部22a2,22b2を設けておき、インサート成形工程S1において、ゲートGTの正面Fに挿通孔22a,22bのうち切り欠き部22a2,22b2を位置させているが、これに限られない。例えば、端子部材40,50が挿通される挿通部を電池幅方向BHに延ばし、挿通孔全体を大きくすることにより、ゲートGTの正面Fに挿通孔を位置させてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
21 本体部材
22 蓋部材(ケース部材)
22a,22b 挿通孔
22a1,22b1 挿通部
22a2,22b2 切り欠き部
30 電極体
40,50 端子部材
41,51 端子外側平板部
41m,51m 端子天面
41n,51n 端子裏面
60,70 樹脂部材
61,71 樹脂外側枠状部
EH (蓋部材の)外側
DE 成形金型
GT ゲート
CV キャビティ
CV1 ゲート側空間
CV2 反ゲート側空間
F (ゲートの)正面
MR 溶融樹脂