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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074373
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/86 20060101AFI20240524BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A01D34/86
A01D34/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185483
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】511259289
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・メンテナンス関東
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】長畑 友之
(72)【発明者】
【氏名】中村 太秋
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川俣 和久
(72)【発明者】
【氏名】松本 大地
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一紀
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA19
2B083CA09
2B083HA06
(57)【要約】
【課題】
車両の荷台上に搭載する作業機において、作業部の移動量を十分に確保可能な作業機を提供する。
【解決手段】
マストフレームEに連結して台枠Dに対して上下方向に回動動作が可能な第1ブーム16と、第1ブーム16に連結して第1ブーム16に対して前後方向に回動可能な第2ブーム17と、第2ブーム17に連結して第2ブーム12に対して上下方向に回動が可能な作業部Cと、を備え、第1ブーム16を回動動作させた場合に、マストフレームEを摺動部Lで移動させることによって、第2ブーム17の進行方向幅方向への移動を防ぐ、ことを特徴とする作業機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠に対して直線的に移動可能なマストフレームと、
前記マストフレームに連結して前記台枠に対して上下方向に回動動作が可能な第1ブームと、
前記第1ブームに連結して前記第1ブームに対して前後方向に回動可能な第2ブームと、
前記第2ブームに連結して前記第2ブームに対して上下方向に回動が可能な作業部と、を備え、
前記第1ブームを回動動作させた場合に、前記マストフレームを移動させることによって、前記第2ブームの進行方向幅方向への移動を防ぐ、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記台枠は車両の荷台上に積載可能に設け、前記車両の進行方向幅方向に長手方向を向けて前記マストフレームを移動させるガイドフレームと、
前記ガイドフレームと平行なガイドレールと、を備え、
前記マストフレームは、前記ガイドフレームの長手方向に沿って摺動する摺動部と、
前記摺動部を移動させるための駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、間隔をあけて配置した第1スプロケットおよび第2スプロケットと、
前記第1スプロケットおよび前記第2スプロケットに巻き付けるチェーンと、
前記第1スプロケットおよび前記第2スプロケットを回転自在に支持するとともに、前記ガイドレールの長手方向に沿って移動可能なスライドフレームと、
前記チェーンと前記台枠を固定する第1固定部と、
前記チェーンと前記マストフレームを固定する第2固定部と、
前記台枠と前記スライドフレームとを架け渡すように連結するとともに伸縮駆動することで前記マストフレームを移動させるシリンダと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記マストフレームは前記シリンダの伸縮ストロークと異なる移動ストロークでガイドフレームに沿って移動する、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記マストフレームは前記シリンダの伸縮速度と異なる移動速度でガイドフレームに沿って移動する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記第1ブームは、中間部を屈曲させた屈曲部を有した上部ブームおよび下部ブームと、を備え、
前記第2ブームは、前記第1ブームと前記第2ブームの間に介在し、前記下部ブームと前記上部ブームおよび前記下部ブームに連結して前記マストフレームおよび前記上部ブームおよび前記下部ブームによって四節リンクを形成する連結体と、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業機。
【請求項6】
前記作業部は、作業状態において水平方向に回動可能する垂直軸と、
前記作業部の先端側を前記車両の進行方向に対する幅方向内側に回動させることが可能なシリンダと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機、更に詳細には草刈作業機に係る。
【背景技術】
【0002】
車両の荷台上に設置され、切断機本体を荷台上の収納位置と車両の運転席の側方にほぼ対応する作業位置との間で移動させる移動機構を設けた切断装置が特許文献1で開示されている。この移動機構は、切断機本体を車両の左右方向へ移動させる左右移動機構と、車両の側方の外方位置において切断機本体を車両の前後方向へ移動させる前後移動機構と、切断機本体を車両の上下方向へ移動させる上下移動機構を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-236330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1「切断装置」の記載の移動機構は、シリンダの伸縮ストロークに依存する構成である。すなわち、切断機本体を大きく移動させようとすると、シリンダのストローク量を長大なものにする必要がある。すると、前後移動用のシリンダや右移動用にシリンダが荷台上に収まらなくなったり、上下移動用のシリンダが上下方向に大きくなるため格納時に荷台の上方に大きく突出したりする問題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、車両の荷台上に搭載する作業機において、作業部の移動を適正におこなうことが可能な作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
台枠に対して直線的に移動可能なマストフレームと、
前記マストフレームに連結して前記台枠に対して上下方向に回動動作が可能な第1ブームと、
前記第1ブームに連結して前記第1ブームに対して前後方向に回動可能な第2ブームと、
前記第2ブームに連結して前記第2ブームに対して上下方向に回動が可能な作業部と、を備え、
前記第1ブームを回動動作させた場合に、前記マストフレームを移動させることによって、前記第2ブームの進行方向幅方向への移動を防ぐ、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記台枠は車両の荷台上に積載可能に設け、前記車両の進行方向幅方向に長手方向を向けて前記マストフレームを移動させるガイドフレームと、
前記ガイドフレームと平行なガイドレールと、を備え、
前記マストフレームは、前記ガイドフレームの長手方向に沿って摺動する摺動部と、
前記摺動部を移動させるための駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、間隔をあけて配置した第1スプロケットおよび第2スプロケットと、
前記第1スプロケットおよび前記第2スプロケットに巻き付けるチェーンと、
前記第1スプロケットおよび前記第2スプロケットを回転自在に支持するとともに、前記ガイドレールの長手方向に沿って移動可能なスライドフレームと、
前記チェーンと前記台枠を固定する第1固定部と、
前記チェーンと前記マストフレームを固定する第2固定部と、
前記台枠と前記スライドフレームとを架け渡すように連結するとともに伸縮駆動することで前記マストフレームを移動させるシリンダと、
を備えたことを特徴とする作業機、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記マストフレームは前記シリンダの伸縮ストロークと異なる移動ストロークでガイドフレームに沿って移動する、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【0009】
この発明は、更に、
前記マストフレームは前記シリンダの伸縮速度と異なる移動速度でガイドフレームに沿って移動する、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【0010】
この発明は、更に、
前記第1ブームは、中間部を屈曲させた屈曲部を有した上部ブームおよび下部ブームと、を備え、
前記第2ブームは、前記第1ブームと前記第2ブームの間に介在し、前記下部ブームと前記上部ブームおよび前記下部ブームに連結して前記マストフレームおよび前記上部ブームおよび前記下部ブームによって四節リンクを形成する連結体と、
を備えたことを特徴とする作業機、
に係る。
【0011】
この発明は、更に、
前記作業部は、作業状態において水平方向に回動可能する垂直軸と、
前記作業部の先端側を前記車両の進行方向に対する幅方向内側に回動させることが可能なシリンダと、
を備えたことを特徴とする作業機、
に係る。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、車両の荷台上に搭載する作業機において、作業部の移動を適正におこなうことが可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。作業部は格納状態である。車両進行方向左側のアオリは図示省略する。緊縛部材は図示省略する。
図2】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。作業部は格納状態である。
図3】この発明の実施例に係る作業機の背面図である。作業部は格納状態である。車両後部のアオリは図示省略する。
図4】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。作業部は展開状態である。車両進行方向左側のアオリは図示省略する。緊縛部材は図示省略する。
図5】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。作業部は展開状態である。
図6】この発明の実施例に係る作業機の背面図である。作業部は展開状態である。刈刃部は前後軸に対して進行方向に対する幅方向外側(左側)の作業位置に配置している。
図7】この発明の実施例に係る作業機の支持部およびマストフレームの側部断面図である。第1ブームおよび第2シリンダは図示省略する。
図8】この発明の実施例に係る作業機の支持部およびマストフレームの側部断面図である。特にチェーンとの固定部を示す。第1ブームおよび第2シリンダは図示省略する。
図9】この発明の実施例に係る作業機のガイドレール背面の詳細断面図である。マストフレームがガイドフレームの右端側に位置した状態をあらわす。マストフレームは一部切欠した断面図である。
図10】この発明の実施例に係る作業機のガイド部、シリンダ、チェーンの配置を説明する平面断面図である。マストフレームは進行方向右側に位置した状態をあらわす。第1ブーム、第2シリンダは図示する。
図11】この発明の実施例に係る作業機のガイドレール背面の詳細断面図である。マストフレームは一部切欠断面をあらわす。マストフレームが進行方向左側に移動した状態をあらわす。
図12】この発明の実施例に係る作業機の背面図である。作業部は展開状態である。車両後部のアオリは図示省略する。刈刃部は前後軸に対して進行方向に対する幅方向内側(右側)の作業位置に配置している。
図13】この発明の実施例に係る作業部の平面図である。作業部は展開状態である。刈刃部が作業位置である進行方向左側に突出状態をあらわす。
図14】この発明の実施例に係る作業機の垂直軸回りの規制部の側面を拡大した側面説明図である。
図15】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が作業位置である進行方向左側に突出状態をあらわす。シリンダの伸縮ストロークはほぼ中間位置にある。付勢体は図示省略する。
図16】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が作業位置である進行方向左側に突出状態をあらわす。刈刃部が障害物との接触によって、進行方向右側に移動した一例である。シリンダの伸縮ストロークはほぼ中間位置にある。付勢体は図示省略する。
図17】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が作業位置である進行方向左側に突出状態から、収納位置に移動させた状態をあらわす。シリンダの伸縮ストロークは最伸長である。付勢体は図示省略する。
図18】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が作業位置である進行方向左側に突出状態から、進行方向右側に突出状態にある別作業位置に移動している途中の状態をあらわす。受部材が垂直軸を支点に右方向に回動開始する瞬間を示す。シリンダの伸縮ストロークはほぼ中間位置にある。付勢体は図示省略する。
図19】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が別作業位置である進行方向右側に突出状態をあらわす。シリンダの伸縮ストロークはほぼ中間位置にある。付勢体は図示省略する。
図20】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が別作業位置である進行方向右側に突出状態をあらわす。刈刃部が障害物との接触によって、進行方向左側に移動した一例である。シリンダの伸縮ストロークはほぼ中間位置にある。付勢体は図示省略する。
図21】この発明の実施例に係る作業機の作業部の動作を示す平面図である。刈刃部が別作業位置である進行方向右側に突出状態から、収納位置に移動させた状態をあらわす。シリンダの伸縮ストロークは最短縮。付勢体は図示省略する。
図22】この発明の実施例に係る作業機の作業状態をあらわす平面図である。
図23】この発明の実施例に係る作業機の作業状態をあらわす背面図である。
図24】この発明の実施例に係る作業機の他の作業状態をあらわす平面図である。
図25】この発明の実施例に係る作業機の他の作業状態をあらわす背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施例に係る作業機Aについて図面にしたがって説明する。
発明の概要
本発明に係る装置は、荷台Gを有するトラック等の車両Bの荷台Gに着脱可能に搭載し、走行する車両Bの側方に位置する草木等を刈るための作業機Aである。この作業機Aは、荷台G上に配置する台枠Dに複数のブーム(第1ブーム16、第2ブーム17)からなる伸縮手段Fを有し、伸縮手段Fの先端に草木等を刈る作業部Cを有している。
作業部Cは、伸縮手段Fを回動させることによって、荷台G上に伸縮手段Fおよび作業部Cを位置させた格納状態と、車両Bの側方に作業部Cを位置させた展開状態とに移動が可能である。伸縮手段Fを支持するマストフレームEは、進行方向に対する幅方向の水平方向に移動可能にされている。
【0015】
展開状態の作業部Cは、マストフレームEの移動と、伸縮手段Fを回動させることによって、車両Bの側方に位置して草刈作業を行う。この構成によって、車両Bの側方であって、特に車両Bの近傍に作業部Cを位置させた場合でも、作業部Cを進行方向の左右方向に移動させることなく、上下方向に移動させることができる。
このため、伸縮手段Fの回動動作による作業部Cの進行方向左右に対する位置変化を、マストフレームEの移動によって調整あるいは抑制することができる。すなわち、作業部Cは、左右方向に対して位置変化をさせることなく、上下高さを調整することができる。そして、作業機Aは台枠Dごと車両Bの荷台G上から取り除くことで、車両Bを通常の貨物車量として活用が可能である。つまり、車両Bは、作業機A付き車両Bと貨物車両とに、態様の変更が自在であるため、車両本体の稼働率の向上が期待できる。
作業部Cで、高速道路の路肩で作業をする場合は、図22乃至図25に図示するように、作業部Cを高速道路の路肩Y1、道路外Y2にまで伸ばして、草刈を行う。
【0016】
車両Bについて説明する。
この発明の実施例での車両Bは、荷台Gを有した平ボディ式の貨物車両であり、実施例で用いる貨物車両Bの車両サイズは所謂2トントラックからなる。例示した貨物車量の車両サイズ以外を用いることも可能である。荷台Gの側方および後方の3方にアオリ21と呼ばれる積載物の落下防止板を有している。実施例でのアオリ21の高さは、3方とも同じものである。
B1は、車両Bにおける、キャビンである。車両Bの前方に位置するキャビンB1には、作業者B2、運転者である作業者B3が搭乗する。作業者B2は、キャビンB1内に配置した操作部Vを操作する。なお、実施例での車両BはキャビンB1側である前方に移動しながら草刈作業をおこなう。
【0017】
図5に図示する車両Bおよび荷台G関係の寸法は以下となる。なお、以下に示す寸法は例であって、本発明はこの寸法関係に限定されない。
K1 車両全長 4.60m
K2 車両全幅 1.70m
K3 荷台全長 3.11m
K4 荷台全幅 1.61m
【0018】
台枠Dについて説明する。
台枠Dは、長尺材を格子状に組み合わせた部材である。台枠Dは、荷台G上に接地する接地部D1と、荷台Gに台枠Dを固定する固定部D3と、マストフレームEおよび伸縮手段Fを支持する支持部D5と、ガイドフレームD2と、を有する。支持部D5には支持フレームD8を設ける。接地部D1は荷台Gの前方側に配置する。固定部D3は接地部D1の進行方向側方の上方に位置させ、上部をアオリ21上端部より高く設ける。固定部D3とアオリ21または荷台Gとの間にロープ、鎖、ターンバックル、荷締機等の緊縛部材D4を複数用いてアオリ21および荷台Gに強固に縛り付け、台枠Dは荷台Gに一体的に固定される。支持部D5は接地部D1の前方側端部に設け、上方に向けて格子状に組み合わせた長尺材を配置する。長尺材のうち、進行方向幅方向に向けた部材の一部は、ガイドフレームD2として機能する。ガイドフレームD2は接地部D1の前方側端部に設ける。
【0019】
台枠Dは、車両Bの荷台G上に積載可能に設け、車両Bの進行方向幅方向に長手方向を向けたガイドフレームD2を有する。図7および図8に示すように、ガイドフレームD2は、断面矩形の部材を用いていて、上下に間隔をあけて平行に2本設けている。ガイドフレームD2の断面における対角線は、それぞれ前後および左右方向に向くように配置する。つまり、ガイドフレームD2の断面における4辺は傾斜している。
台枠Dは、緊縛部材D4の固定を解除することによって、車両Bの荷台G上且つ荷台Gの前方側に着脱自在に積載可能である。
【0020】
マストフレームEについて説明する。
マストフレームEはガイドフレームD2に沿って、進行方向に対する左右方向に直線的に移動可能に設ける。マストフレームEは、車両Bのアオリ21や台枠Dの固定部D3より高い位置に設ける。そのため、移動によってアオリ21や固定部D3と接触することがない。
マストフレームEには伸縮手段Fの一端側を連結させて、伸縮手段Fを旋回可能に設ける。伸縮手段Fの他端側には作業部Cを取り付けていて、作業部CはマストフレームEの移動および伸縮手段Fの旋回によって、水平方向への移動と上下移動が可能である。また、マストフレームEの下方と接地部D1との間に空間を設けることが可能となり、後述の作業部Cを格納する場合に、マストフレームEが作業部Cと近接することを防止できる。マストフレームEは、ガイドフレームD2とマストフレームEの間にかけ渡した第1シリンダ11の伸縮によって、ガイドフレームD2の長手方向に沿った移動のための駆動が可能である。
【0021】
図9に図示するように、マストフレームEには、ガイドフレームD2の長手方向に沿って摺動する摺動部Lを有し、車両Bの進行方向と直交する幅方向に移動可能である。
マストフレームEは第1シリンダ11の伸縮ストロークと異なる移動ストロークでガイドフレームD2に沿って摺動部Lを介して移動する。
ガイドフレームD2にはマストフレームEが取り付けられる。マストフレームEはガイドフレームD2の長手方向に沿って進行方向幅方向に水平移動可能であるとともに、マストフレームEに取り付けられる伸縮手段Fを支持する。
【0022】
摺動部L、摺動部材L1について説明する。
第1ブーム16を回動動作させた場合に、マストフレームEを摺動部Lで移動させることによって、前記第2ブーム17の進行方向幅方向への移動を防ぐ。
図9に図示するように、マストフレームEの前方側には、ガイドフレームD2の長手方向に沿って摺動する摺動部Lを備えている。摺動部Lは、図7および図8に示すように、進行方向側面から見た断面におけるガイドフレームD2の3辺を囲うとともに、ガイドフレームD2に接する摺動部材L1が固定されている。実施例における摺動部材L1は、低摩擦性の部材であって樹脂系の素材を用いるのが望ましく、実施例ではポリエチレン系樹脂を採用している。摺動部材L1がガイドフレームD2に接することで、摩擦を過度に増大させることなく、摺動部L及びマストフレームEがガイドフレームD2の長手方向に沿って摺動自在である。
【0023】
上方のガイドフレームD2に位置する摺動部L及び摺動部材L1は、進行方向側面から見た断面におけるガイドフレームD2の上方2辺と下方の後方側1辺を囲うように設けている。また、下方のガイドフレームD2に位置する摺動部L及び摺動部材L1は、進行方向側面から見た断面におけるガイドフレームD2の下方2辺と上方の後方側1辺を囲うように設けている。このように摺動部Lおよび摺動部材L1を形成することで、マストフレームEにガイドフレームD2に対して上下及び前後方向に対して負荷がかかっても、ガイドフレームD2の傾斜した辺で支えることができる。したがって、摺動部LがガイドフレームD2から脱落することなく、しっかりとマストフレームEを支えることができる。また、それぞれの摺動部L及び摺動部材L1は、マストフレームEの進行方向に対する幅方向とほぼ同じ幅または、これに近い長さになるように長く設ける。これにより、マストフレームEが進行方向を軸にして回転させるような力が加えられても、長く設けた摺動部L及び摺動部材L1によって、しっかりとマストフレームEを支えることができる。
【0024】
ガイドフレームD2について説明する。
ガイドフレームD2は、台枠Dの支持部D5を構成する一部である。ガイドフレームD2はマストフレームEが長手方向に移動可能に取り付けられる。ガイドフレームD2は、断面矩形のパイプあるいは棒材で構成し、長手方向を進行方向幅方向に向けて配置する。実施例において、ガイドフレームD2断面の対角線は、鉛直方向及び前後方向に向けて配置し、マストフレームEから受ける鉛直方向の荷重及び前後方向の荷重に耐えるように設けている。実施例でのガイドフレームD2は上下方向に間隔をあけて、平行に2本配置している。
【0025】
ガイドローラL2について説明する。
さらに、上方のガイドフレームD2に位置する摺動部Lの上部には、ガイドフレームD2上部を転動するガイドローラL2を設ける。ガイドローラL2がマストフレームE及びこれに連結する伸縮手段Fおよび作業部Cから受ける荷重を、摺動部材L1と分担して受け持つ。これにより、摺動部材L1による摩擦の増大を抑制して、ガイドフレームD2に対するマストフレームEの滑らかな移動を実現する。
【0026】
マストフレームEは摺動部Lを介してガイドフレームD2の長手方向に沿って移動させるための駆動装置を有する。駆動装置について説明する。
駆動装置は、第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4と、チェーン(上側)W5とチェーン(下側)W6からなるチェーンと、スライドフレームRと、第1固定部D7と、第2固定部E7と、シリンダである第1シリンダ11と、からなる。スライドフレームRは、ガイドフレームD2の長手方向と平行に移動可能な部材である。第1シリンダ11の伸縮を、スライドフレームRの左右両端部に配置した第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4に、チェーンW5、W6を介することによって、スライドフレームRを移動させる。
【0027】
第1シリンダ11について説明する。
台枠Dの支持部D5の側端部とスライドフレームRが有する後述するガイド部Sに架け渡すように第1シリンダ11を配置する。第1シリンダ11は、台枠DとスライドフレームRとを架け渡すように連結するとともに伸縮駆動することでマストフレームEを移動させる。
実施例での第1シリンダ11は、油圧によって伸縮駆動可能なロッド111を有した複動シリンダを用いる。また、第1シリンダ11の一端側であるロッド111端部は支持部D5の側端部である進行方向右側端部に連結し、第1シリンダ11の他端側は進行方向左右に間隔をあけてスライドフレームRに配置したガイド部Sのうち、進行方向左側のガイド部Sに連結させている。第1シリンダ11の伸縮によって、スライドフレームRは後述のガイドレールS1に沿っての移動が自在である。例示においては、ロッド111を短縮させた場合にはスライドフレームRが台枠Dの支持部D5の右側端部に位置し、ロッド111を伸長させるにともなってスライドフレームRが台枠Dの左側に移動する。
【0028】
図7乃至図11に図示するガイド部S及びガイドレールS1について説明する。
台枠Dの支持部D5には、ガイドフレームD2と平行なガイドレールS1を備える。実施例でのガイドレールS1は2本のガイドフレームD2の間に配置している。実施例でのガイドレールS1は、側方から見た断面の外形形状が矩形状のパイプまたは角棒で構成する。
【0029】
ガイドレールS1にはスライドフレームRを取り付ける。スライドフレームRの左右両端部にはガイド部Sを設け、このガイド部SによってスライドフレームRがガイドレールS1の長手方向に滑らかに移動可能にする。つまり、スライドフレームRはマストフレームEと平行に移動可能にされている。ガイド部Sは、ガイドレールS1を上下方向から挟むように配置してガイドレールS1に対して摺動可能な摺動部材S3と、ガイドレールS1を前後方向から挟むように配置してガイドレールS1に対して転動可能なローラS2で構成する。ガイド部Sは、ガイドレールS1の長手方向に間隔を置いてスライドフレームRの2か所に設ける。
ガイド部Sを摺動部材S3とローラS2で構成することにより、摺動部材S3の面接触による駆動装置の確実な支持と、ローラS2の転動によるガイドレールS1に対する滑らかな案内を両立させている。例示した以外に、ローラS2の代わりに摺動部材S3を配置して摺動部材S3のみで構成してもよいし、摺動部材S3の代わりにローラS2を配置してローラS2のみで構成してもよい。これらの場合、上記した効果がそれぞれ強化される。
【0030】
W1は、第1スプロケット(上側)、W2は、第1スプロケット(下側)である。W3は、第2スプロケット(上側)、W4は、第2スプロケット(下側)である。
第1スプロケット(上側)W1、第2スプロケット(上側)W3は、第1スプロケット(下側)W2、第2スプロケット(下側)W4の上側に設ける。
Rは、スライドフレームである。スライドフレームRは、第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4を回転自在に支持するとともに、ガイドレールS1の長手方向に沿って移動可能である。
左右2か所に配置したガイド部Sを連結するようにスライドフレームRを配置し、ガイド部Sを固定する。スライドフレームRは、上下2か所に間隔をあけて配置した長尺材であって、実施例での長尺材は角パイプを採用している。スライドフレームRはガイド部SによってガイドレールS1に対してガイドレールS1の長手方向に移動可能にされている。
【0031】
スライドフレームRの両端部には、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4を回転自在に配置する。
第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4のそれぞれの回転軸は、進行方向前後方向に向けられている。スライドフレームRの進行方向左側に第1スプロケットW1、第1スプロケットW2を回転自在に支持し、スライドフレームRの進行方向右側に第2スプロケットW3、第2スプロケットW4を回転自在に支持する。
第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4は、スライドフレームRを介して左右方向に間隔をあけて配置した状態である。
【0032】
チェーンW5、W6について説明する。
第1スプロケット(上側)W1と第2スプロケット(下側)W3との間には、チェーン(上側)W5を巻き付ける。第1スプロケット(下側)W2と第2スプロケット(下側)W4との間には、チェーン(下側)W6を巻き付ける。
第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4は、双方同じ歯数のスプロケットを用いる。
ここで、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4およびチェーンW5、チェーンW6およびチェーンW5、チェーンW6に連結する部品群は、図9および図11の図示において、スライドフレームRの上下方向にそれぞれ間隔をあけて上下方向に水平線を軸にして対称配置している。
【0033】
上側の第1スプロケットW1および第2スプロケットW3に巻き着けたチェーンW5は、進行方向後方から前方を向けてみた場合に、左右方向に長い長円状に第1スプロケットW1および第2スプロケットW3を介して周回する。
【0034】
第1固定部D7、第2固定部E7の固定部について説明する。
図8図11に図示するように、上側の第1スプロケットW1の近傍で、周回するチェーンW5の上方側のチェーンリンクには、第1固定部D7が取り付けられている。上側の第2スプロケットW3の近傍で、周回するチェーンW5の下方側のチェーンリンクには、第2固定部E7が取り付けられている。第1固定部D7および第2固定部E7は、進行方向から見た場合に、周回するチェーンW5に対して点対称、あるいは、左右対称且つ上下対称となる位置にそれぞれを配置している。
第1固定部D7は、チェーンW5、W6と台枠Dを固定する。
第2固定部E7は、チェーンW5、W6とマストフレームEを固定する。
第1固定部D7は、一方側のガイドフレームD2の中間部に設けたガイドフレーム取付部D6に固定されている。第2固定部E7はマストフレームEの前方側に突出させたマストフレーム取付部E6に固定されている。
【0035】
実施例におけるチェーンW5、チェーンW6は、第1固定部D7および第2固定部E7を境に有端の第1チェーンW51、W61と、有端の第2チェーンW52、W62に分割させた構成としている。
第1チェーンW51、W61は、一端側を第1固定部D7に連結させて第1スプロケットW1、第1スプロケットW2に巻き付け、他端側を第2スプロケットW3、第2スプロケットW4に向けて配置し、第2固定部E7に連結させる。
第2チェーンは、一端側を第2固定部E7に連結させて第2スプロケットW3、W4に巻き付け、他端側を第1スプロケットW1、W2に向けて配置し、第1固定部D7に連結させる。第1チェーンW51、W61及び第2チェーンW52、W62は、第1固定部D7及び第2固定部E7を介して、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4に巻き着付けることによって、あたかも1つの無端状のチェーンW5、チェーンW6のように機能することができる。
【0036】
チェーンW5、チェーンW6及び固定部の動作について説明する。
第1固定部D7によって、チェーンW5、W6のリンクの一部をガイドフレームD2側に固定しているので、シリンダである第1シリンダ11の伸縮によってスライドフレームRをガイドレールS1の長手方向に沿って移動させた場合に、第1固定部D7近傍のチェーンW5、W6は、ガイドフレームD2に対して相対的に移動しない。スライドフレームRから見た場合の第1固定部D7は、スライドフレームRの移動方向とは相対的な逆の方向に相対移動する。
これに対して、第2固定部E7は、ガイドフレームD2側には固定していない。したがって、第1シリンダ11の伸縮によって、スライドフレームRをガイドレールS1の長手方向に沿って移動させた場合に、第2固定部E7の近傍のチェーンW5、W6は、ガイドフレームD2に対して相対的に移動する。つまり、スライドフレームRから見た場合の第2固定部E7は、スライドフレームRの移動方向とは相対的な同じ方向に相対移動する。この場合の第2固定部E7の移動速度は、第1シリンダ11の伸縮速度より2倍の速度で、ガイドフレームD2に対して相対的に移動をする。
【0037】
第1固定部D7および第2固定部E7は、スライドフレームRのガイドフレームD2に対する移動にともなって、スライドフレームRおよび第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4に対して相対的に移動する。
第1固定部D7を除く第2固定部E7は、スライドフレームRのガイドフレームD2に対する移動にともなって、ガイドフレームD2に対して相対的に移動するものの、第1固定部D7に関しては、ガイドフレームD2に対して相対的に移動はできない。なお、第1固定部D7および第2固定部E7は、第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4間のチェーンW5、W6の直線部分でのみ、相対的な移動が可能である。
【0038】
下側のチェーンW6に係る部品群について説明する。
スライドフレームRに配置した上側の第1スプロケットW1および第2スプロケットW3およびチェーンW5およびチェーンに連結する部品群については、上記の説明の通りである。下側の第1スプロケットW2および第2スプロケットW4およびチェーンW6およびチェーンに連結する部品群について説明する。
下側の第1スプロケットW2および第2スプロケットW4およびチェーンW6およびチェーンは、上側の第1スプロケットW1および第2スプロケットW3およびチェーンW5と、進行方向左右の水平軸で上側の当該部品群より下側に上下対称に配置する。すなわち、第1スプロケットW2は左側、第2スプロケットW4は右側に配置するとともに、このそれぞれに下側チェーンW6を巻きかける。さらに、第1固定部D7は周回する下側のチェーンW6の下方で第1スプロケットW2の下方近傍に配置し、ガイドフレームD2の左右中間部に固定する。
【0039】
第2固定部E7は、下側のチェーンW6の上方で第2スプロケットW3、W4の上方近傍に配置する。この第2固定部E7は、上側のチェーンW5に連結する第2固定部E7と部品を共通して用いている。下側のチェーンW6も上側のチェーンW5と同様に、スライドフレームRの移動に伴って第1固定部D7で固定されながらも、第2固定部E7が進行方向左右に移動が可能となる。
しかも、第2固定部E7を上側のチェーンW5と下側のチェーンW6を共通して使用するので、第1シリンダ11からスライドフレームRに受けた推力を、上側のチェーンW5と下側のチェーンW6と協同して第2固定部E7に確実に伝えることができ、伝動効率を向上させる。また、伝動部材であるチェーンW5、チェーンW6を上下2箇所に配置したチェーンW5、チェーンW6に分散させて、第2固定部E7に第1シリンダ11の推力を伝動するので、より伝達の確実性が向上する。
【0040】
実際の動きにそって、チェーンW5、チェーンW6及び固定部の動作を説明する。
図9および図10に示すように、格納位置側であるガイドフレームD2の進行方向右側に位置した場合のスライドフレームRは、ガイドフレームD2の中央部に固定した第1固定部D7の近傍の進行方向左側に第1スプロケットW1、第1スプロケットW2が位置する。
第1スプロケットW1、W2および第2スプロケットW3、W4を周回するチェーンW5、チェーンW6の一部は、ガイドフレームD2に固定されている。そして、周回するチェーンW5、チェーンW6の一部で、第2スプロケットW3、W4の近傍に第2固定部E7が位置している。この状態から、第1シリンダ11を伸長させ、スライドフレームRをガイドフレームD2に対して進行方向左側である展開位置側に移動させるにしたがって、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2および第2スプロケットW3、第2スプロケットW4もガイドフレームD2に対して進行方向左側に移動する。
【0041】
第1固定部D7はガイドフレームD2に固定されているので、第1固定部D7近傍のチェーンW5、W6はガイドフレームD2に対して位置が固定されている。他方、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2は第1固定部D7から離れるように、且つ、第2スプロケットW3、第2スプロケットW4は第1固定部D7に近づくように、ガイドフレームD2に対して進行方向左側に相対移動する。
【0042】
第2固定部E7は、ガイドフレームD2に対して進行方向左側に相対移動するスライドフレームRを、さらにスライドフレームRに対して進行方向左側に相対移動する。このため、第2固定部E7は、ガイドフレームD2に対してスライドフレームRより速い速度である2倍の速度で移動する。すなわち、第1シリンダ11の伸縮速度の2倍の速さで移動をするように設定している。
【0043】
第1シリンダ11の伸長によって、図11に示すスライドフレームRがガイドフレームD2の進行方向左側である展開位置側に達すると、ガイドフレームD2の中央部に固定した第1固定部D7の近傍の進行方向右側に、第2スプロケットW3、第2スプロケットW4が位置する。
周回するチェーンW5、チェーンW6のチェーンリンクに固定された第2固定部E7は、第1スプロケットW1、第1スプロケットW2の進行方向右側の下方に位置している。
すなわち、第2固定部E7はスライドフレームRのガイドフレームD2に対する進行方向右側から左側への移動によって、第2スプロケットW3、第2スプロケットW4側から第1スプロケットW1、第1スプロケットW2側、すなわち、スライドフレームRに対して相対的な左側から右側に移動する。同時に、第2固定部E7はガイドフレームD2に対しても、右側から左側へ移動をする。
【0044】
第1シリンダ11の伸縮によって、スライドフレームRがガイドフレームD2の右端側から左端側に移動する間に、第2固定部E7はスライドフレームRの右端側から左端側に移動する。つまり、第2固定部E7の移動ストロークは第1シリンダ11の伸縮ストローク以上となる。実施例での第2固定部E7の移動ストロークは、第1シリンダ11の伸縮ストロークの2倍となるように設けている。このように設けることで、第1シリンダ11をガイドレールS1の長手方向の両端、あるいは台枠Dの左右両端からはみ出すことなく、十分に第2固定部E7の移動ストロークを確保することができる。上記説明した第2固定部E7には、マストフレーム取付部E6が固定される。すなわち、マストフレームEは台枠DおよびガイドフレームD2の右端から左端まで、第1シリンダ11のストローク以上に移動させることが可能である。また、マストフレームEの移動速度も第1シリンダ11の伸縮速度より大きいので、ガイドレールS1の長手方向に沿ってマストフレームEを素早く移動させることができる。
【0045】
伸縮手段Fについて説明する。
マストフレームEには伸縮手段Fを連結する。伸縮手段Fは、第1ブーム16、第1連結体18、第2ブーム17、第2連結体19を有し、第2連結体19に連結した作業部Cで草刈作業を行う。
【0046】
第1ブーム16および第1連結体18について説明する。
第1ブーム16は長尺部材である上部ブーム31と下部ブーム32で構成し、それぞれの一端側をマストフレームEに設けた前後方向の水平軸E1によってマストフレームEに連結する。上部ブーム31および下部ブーム32の長手方向に対する中間部は、上方側に向けて、く字状に屈曲させた屈曲部を有している。
上部ブーム31の上方側と、マストフレームEの他端側上部には、第2シリンダ12を配置する。そして、上部ブーム31と下部ブーム32のそれぞれの他端側には連結体である第1連結体18の一方側を前後方向の水平軸E2で連結する。第1ブーム16である上部ブーム31および下部ブーム32と、マストフレームEと、第1連結体18によって四節リンクを形成する。この四節リンクは平行リンクとも呼ばれ、第2シリンダ12の伸縮によって、第1ブーム16は上下方向に回動駆動をするとともに、第2連結体19を進行方向から見た場合に左右あるいは上下に回動させることなく移動が可能である。
【0047】
第2ブーム17について説明する。
第1連結体18の他方側には長尺部材である第2ブーム17を連結する。第2ブーム17は、進行方向左右向きに配置した水平軸E3に連結することによって、前後方向に回動自在である。そして、第1連結体18の他端側と第2ブーム17中間部にかけ渡した第3シリンダ13によって、第2ブーム17は前後方向に回動駆動する。なお、第3シリンダ13の一端側は、第1連結体18に連結した第1リンク41、および、第2ブーム17に連結した第2リンク42と、を連結する左右方向の連結軸によって連結している。これにより、第2ブーム17を前後方向に大きく回動角度を確保することができる。
【0048】
第2連結体19について説明する。
第2連結体19は第2ブーム17先端部に配置する。第2連結体19は第2ブーム17内部に配置したリンクロッド171によって、第2ブーム17および第1連結体18とともに平行リンクを形成する。このため、第2連結体19は、第2ブーム17が回動しても、側面視において、向きを変えることがない。
【0049】
作業部Cについて説明する。
作業部Cは、第2連結体19の他端側に配置する。図12に図示するように、作業部Cは、第2連結体19の他端側に配置した前後方向に向けた水平軸である前後軸E5に基部C6を連結することで、水平軸である前後軸E5まわりに上下回動が自在である。第2連結体19と、基部C6にかけ渡した第4シリンダ14の伸縮によって、作業部Cが上下方向に回動駆動が可能である。
【0050】
作業部Cは、作業状態において、上下方向の第2連結体19の前方に位置した垂直軸C3である回動軸によって、後方側を左右方向に水平回動が可能な刈刃部C1を設ける。回動する刈刃部C1の後方側には、上下方向の鉛直軸まわりに回転する刈刃C2を有し、刈刃C2は図13図14に図示する油圧モータC8で回転駆動することで、草木等を切断する。
【0051】
作業部Cにおける、付勢部C4について説明する。
図13図14に図示するように、刈刃部C1は付勢体C5を有する付勢部C4によって、常時、強制的に付勢されている。付勢体C5は圧縮ばねを用いる。付勢する方向は、作業状態において、刈刃部C1の後方側の先端部を車両Bの進行方向に対する幅方向外側に向けられている。すなわち、作業状態における刈刃部C1は、進行方向に対する幅方向外側に常時付勢されている。
【0052】
作業部Cにおける、第1規制部Hについて説明する。図13図14に図示するように、付勢部C4の一端側は、垂直軸C3と同軸上に設けて垂直軸C3まわりに回動自在な受部材H1の一端部に取り付ける。実施例での受部材H1は、平面視、羽子板状あるいはラケット状に形成されている。付勢部C4の他端側は、刈刃部C1上に設けた摺動孔C9に挿入されている。刈刃部C1の回動にともなって受部材H1の一端部と摺動孔C9との距離が変化することで、受部材H1の一端部と摺動孔C9の間に位置する付勢体C5は反発力を蓄えたり、反発力を開放したりすることができる。
受部材H1の他端部側には、第1規制部Hを設ける。第1規制部Hは、受部材H1に設ける円弧状長孔である第1規制孔H2と、第1規制孔H2内に配置される第1規制ピンH3によって構成する。受部材H1は、第1規制孔H2の円周方向の両端側に第1規制ピンH3が接触するまでの範囲で、自由に回動が可能である。
【0053】
図13図14に図示するように、平面視において、刈刃部C1を進行方向に対する幅方向外側である垂直軸C3に対する進行方向左側に位置させた作業状態で、刈刃部C1は付勢部C4の他端部で押されることによって、誌面上、右方向に回転するように付勢される。つまり、刈刃部C1は、受部材H1との間に配置した付勢体C5の反発力を解放して、側方に突出させるように付勢を受けることができる。
他方、受部材H1は、垂直軸C3まわりに左回転するように付勢部C4の一端側によって押される。すると、第1規制孔H2も右方向に回転し、やがて第1規制孔H2の円周方向の一端側に第1規制ピンH3が接触し、回動が規制される。すなわち、刈刃部C1は、第1規制部Hの第1規制孔H2の一端が第1規制ピンH3に接触することで、付勢体C5による垂直軸C3まわりの回転を規制するとともに、付勢部C4の反発力を刈刃部C1に伝えて、進行方向に対する幅方向外側に常時付勢することができる。
【0054】
刈刃部C1は、図13に実線で図示する状態から、図13に二点鎖線で図示する状態に回動することができる。また、図15の状態から、図16に図示するように、垂直軸C3に対する進行方向左側に位置させた作業状態で、進行方向から障害物Y6等に接触した場合、車幅方向内側である進行方向右側に強制的に障害物Y6等で押されることで、刈刃部C1が回動することもできる。
この場合、図15から図16の状態に変化するように、第1規制孔H2の一端と第1規制ピンH3の接触状態は変化せずに、付勢体C5のみが圧縮し、反発力を蓄えながら、刈刃部C1が車幅方向内側に移動する。障害物Y6等の接触が解除されると、図16から図15の状態に戻るように、反発力を蓄えた付勢体C5によって、刈刃部C1が車幅方向外側に戻され、元の位置に復帰する。障害物Y6は図22乃至図25における支柱Y3である場合がある。
【0055】
作業部Cにおける、第1規制ピンH3、第2規制ピンJ2の配置について説明する。
第1規制ピンH3は、図13図14に図示するように、垂直軸C3まわりに回動可能に設けている。第1規制ピンH3は、垂直軸C3まわりに回動可能なプレートC7の一方側に設け、プレートC7から下方に向けて突出させている。さらにプレートC7の他方側には、第2規制ピンJ2をプレートC7から下方に向けて設けている。
プレートC7の他方側上部には後述する第5シリンダ15が連結されている。第5シリンダ15の伸縮によって、プレートC7は垂直軸C3まわりに回動駆動をする。すなわち、第1規制ピンH3及び第2規制ピンJ2は垂直軸C3まわりに移動可能にされている。第1規制ピンH3及び第2規制ピンJ2の移動による効果詳細は後述する。
【0056】
作業部Cにおける、第2規制部Jについて説明する。
図13図14に図示するように、第2規制ピンJ2は、刈刃部C1の前端側の垂直軸C3近傍に設けた第2規制孔J1とともに第2規制部Jを構成する。
第2規制部Jは、刈刃部C1の垂直軸C3まわりの回動範囲を規制する。刈刃部C1の前端側の垂直軸C3近傍に固定され、垂直軸C3を中心にした円弧状長孔内の第2規制孔J1は、刈刃部C1の回動にともなって一体的に回動する。そして、この第2規制孔J1内に第2規制ピンJ2を配置することで、刈刃部C1は第2規制孔J1の内の円周方向両端部に接触するまでの範囲で回動ができる。
151は、第5シリンダ15の端部である。
【0057】
図13図14に図示するように、第2規制ピンJ2はプレートC7の他方側に配置した第5シリンダ15によって、垂直軸C3まわりに移動可能にされている。付勢を受けた刈刃部C1は、平面視において、垂直軸C3を中心にして右方向に回動する。そして、第2規制孔J1の一端部に第2規制ピンJ2が接触すると、刈刃部C1の回動が止まる。つまり、図15に示す位置が刈刃部C1を垂直軸C3に対する進行方向左側に位置させた作業状態での刈刃部C1の復帰位置となる。
【0058】
図16に図示するように、作業部Cにおける、刈刃部C1が障害物Y6等に押圧されることによって、車幅方向内側に強制的に押される。この場合、第2規制孔J1の他端側に第2規制ピンJ2が接触するまで回動が可能である。そして、障害物Y6の接触が解除されると、付勢体C5に付勢を受けながら、刈刃部C1が車幅方向外側に向かって、第2規制孔J1の一端部に第2規制ピンJ2が接触する復帰位置まで回動する。
【0059】
作業部Cにおける、第5シリンダ15の作用について説明する。
第5シリンダ15の伸縮にともなって、第1規制ピンH3および第2規制ピンJ2は垂直軸C3まわりに移動が可能である。つまり、第5シリンダ15の伸縮で刈刃部C1の回動範囲を変更して、刈刃部C1の復帰位置を変更可能である。
第5シリンダ15は基部C6とプレートC7他端側を連結する。第5シリンダ15の伸縮にともなって、プレートC7を垂直軸C3まわりに回動させることで、第1規制ピンH3及び第2規制ピンJ2を垂直軸C3まわりに移動させる。
【0060】
刈刃部C1の収納と展開について図13乃至図21に基づき説明する。特に、図15乃至図21は、動作にともなって形成される各姿勢での、第1規制部H、第2規制部J、刈刃部C1の位置関係を端的に示している。
図13は、この発明の実施例に係る作業部Cの平面図で、作業部Cは展開状態をあらわす。刈刃部C1が、作業位置である進行方向左側に突出状態である。
図14は、同じく作業機Aの垂直軸C3回りの第1規制部Hの側面を拡大した側面説明図をあらわす。
図15は、同じく刈刃部C1が作業位置である進行方向左側に突出状態をあらわす。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、ほぼ中間位置にある。
図16は、同じく、刈刃部C1が作業位置である進行方向左側に突出状態をあらわす。刈刃部C1が障害物Y6との接触によって、進行方向右側に移動した一例である。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、ほぼ中間位置にある。
【0061】
図17は、同じく、刈刃部C1が作業位置である進行方向左側に突出状態から、収納位置に移動させた状態をあらわす。第5シリンダ15の伸縮ストロークは最伸長である。
図18は、同じく、刈刃部C1が作業位置である進行方向左側に突出状態から、進行方向右側に突出状態にある別作業位置に移動している途中の状態をあらわす。受部材H1が垂直軸C3を支点に回動方向を切り替えて右方向に回動開始する瞬間を示す。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、ほぼ中間位置にある。付勢体C5は図示省略する。
【0062】
図19は、同じく、刈刃部C1が別作業位置である進行方向右側に突出状態をあらわす。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、ほぼ中間位置にある。
図20は、同じく、刈刃部C1が別作業位置である進行方向右側に突出状態をあらわす。刈刃部C1が障害物Y6との接触によって、進行方向左側に移動した一例である。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、ほぼ中間位置にある。
図21は、同じく、刈刃部C1が別作業位置である進行方向左側に突出状態から、収納位置に移動させた状態をあらわす。第5シリンダ15の伸縮ストロークは、最短縮である。
【0063】
展開から収納までについて説明する。
図13に実線であらわす刈刃部C1を車幅方向外側に位置した作業状態、および、図13に破線であらわす刈刃部C1を車幅方向内側に位置した収納位置を説明する。
刈刃部C1が進行方向幅方向外側に位置した作業状態において、図15に図示する伸縮ストロークのほぼ中間位置にある第5シリンダ15を伸長させると、伸長した第5シリンダの端部151に押されたプレートC7の回動に伴って、第1規制ピンH3および第2規制ピンJ2が垂直軸C3まわりを回動する。この場合、第1規制ピンH3および第2規制ピンJ2は、図13に図示するように平面視において左回転方向に移動する。
【0064】
すると、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の一端側を押すので、刈刃部C1が車幅方向内側に向かって垂直軸C3まわりに、平面視左方向に回動する。第1規制ピンH3も同時に平面視左方向に回動するので、受部材H1も付勢体C5の反発力を受けながら平面視左方向に回動する。第1規制部Hは刈刃部C1の回動とともに一緒に回動するので、付勢体C5は縮まらずに、第1規制ピンH3が第1規制孔H2の一端側に接触したまま回動する。
【0065】
第5シリンダ15を伸縮ストロークの最伸長まで伸長させると、図17に図示するように刈刃部C1は作業部Cを左右に回動させる垂直軸C3に対して進行方向に対する後方に位置する。すなわち、刈刃部C1は図13に二点鎖線で図示するように第2連結体19の直下に配置される。これによって、作業部Cは刈刃部C1が収納状態になる。
収納位置では、第1規制ピンH3が第1規制孔H2の一端側に接触しているので、刈刃部C1が付勢体C5によって付勢されて、進行方向外側である進行方向左側に向かおうとする。他方、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の一端側に接触しているので、収納位置から進行方向に対する幅方向外側に移動することができない。すなわち、第2規制部Jおよび付勢体C5の反発力によって、移動しようとする刈刃部C1の回動を阻止し、作業部Cは刈刃部C1の収納状態を維持する。このため、刈刃部C1が側方に突出せず、作業部Cとして全幅を拡大させることがない。そして、図22および図23に例示するように、障害物である防護柵Y4および標識類Y5と車両の間隔が狭い場合において、障害物と車両Bとの間隔が狭い場所であっても、作業部Cを上下に移動させることができる。つまり、作業部Cを作業面に接地させる際に、車両Bをわざわざ上記障害物と間隔をあけるように運転する必要がない。
【0066】
収納から展開について説明する。
刈刃部C1を収納位置から展開させた作業位置にする場合は、第5シリンダ15を最伸長からほぼ中間位置まで短縮させることで、刈刃部C1の展開方向、すなわち、平面視において垂直軸C3まわりに右方向に刈刃部C1が回動する。
図13および図17に図示する平面視において、第5シリンダ15を短縮させると、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の他方側である右方向に回動するように移動する。このとき、第2規制ピンJ2とともに一体的に回動する第1規制ピンH3も右方向に回動し、受部材H1も付勢体C5の反発力を受けながら、右方向に回動する。すなわち、付勢体C5は反発力を変化させることなく刈刃部C1を移動させる。第2規制孔J1の一方側の端部は、第2規制ピンJ2の移動に追いつくこととなる。結果、あたかも、第2規制ピンJ2は第2規制孔J1と接触しながら回動し、図15に示すように、刈刃部C1は進行方向外側側方である左側の作業位置に配置させることができる。
【0067】
刈刃C2の突出位置調整について説明する。
第5シリンダ15の短縮距離を調整することで、刈刃部C1が車幅方向外側に突出する左右方向に対する距離を調整できる。作業者B2が第5シリンダ15を操作することで、刈刃部C1を任意の突出位置になるように調整が可能である。
【0068】
作業位置から別作業位置への位置変更について、図15および図16および図18および図19を用いて説明する。
刈刃部C1は平面視における垂直軸C3に対して、進行方向右側である内側に向けて配置することもできる。図15に示す作業位置から図19に示す別作業位置に刈刃部C1を位置させるには、進行方向外側である左側の作業位置に位置した状態で、刈刃部C1に対して強制的に内側に向けた力をかけて移動させる。第5シリンダ15は動作していないので、第1規制ピンH3と第2規制ピンJ2の位置は変化しない。
すなわち、第2規制孔J1の一方側端部から離れ、他方側端部が第2規制ピンJ2に対して近づくように移動をする。図16に図示するように、刈刃部C1を強制的に進行方向右側に移動させているので、付勢体C5は反発力を高めながら刈刃部C1とともに垂直軸C3まわりに回動する。刈刃部C1の回動が進むと、付勢体C5の反発方向と付勢体C5の受部材H1への取付部と垂直軸C3が、垂直軸C3方向から見た平面視で一直線上に位置する。別作業位置への位置変更をおこなうと、図12に示すように、刈刃部C1は車両Bに対する内側である、垂直軸C3あるいは前後軸E5より進行方向右側に位置した状態で、作業をおこなうことができる。
【0069】
さらに、刈刃部C1の進行方向右側への回動を進めると、図18に示すように、付勢体C5の反発方向と垂直軸C3を結ぶ直線より、付勢体C5の受部材H1への取付部が進行方向左側に位置する。このとき、付勢体C5の反発力により、受部材H1が垂直軸C3まわりに付勢体C5の反発力を受けて回動する方向を切り替えて、右方向に回動する。
そして、移動していない第1規制ピンH3は、第1規制部Hの他方側端部に接触する。刈刃部C1は、付勢体C5による付勢方向が切り替わり、垂直軸C3方向から見た図19に図示する平面視で左方向、すなわち、進行方向右側に刈刃部C1が突出する方向に向かって付勢を受けて回動する。反発力を得た刈刃部C1は、第2規制孔J1の他方側端部が第2規制ピンJ2に接触するまで回動することで、別作業位置への変更が完了する。別作業位置での刈刃部C1は、第1規制ピンH3が第1規制部Hの他方側端部に接触した状態で、進行方向左側から右側に突出するように付勢される。
刈刃部C1の突出位置の限界は第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の他方側端部に接触する位置であり、刈刃部C1は、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1内に位置する範囲内で回動する。
【0070】
別作業位置から収納位置について図19および図21に基づき説明する。
【0071】
展開位置のうち別作業位置にある刈刃部C1を収納位置にする場合、図19に図示する伸縮ストロークのほぼ中間位置にある第5シリンダ15を短縮させると、プレートC7の回動に伴って、第1規制ピンH3および第2規制ピンJ2が垂直軸C3まわりを、平面視において右回転方向に移動する。
すると、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の他端側を押すので、刈刃部C1が車幅方向外側である進行方向左側に向かって垂直軸C3まわりに回動する。第1規制ピンH3も同時に平面視右方向に回動するので、受部材H1も付勢体C5の反発力を受けながら平面視右方向に回動する。第1規制部Hは、第1規制ピンH3が第1規制孔H2の他端側に接触したまま回動する。
【0072】
第5シリンダ15の伸縮ストロークを図21に図示するように最短縮させると、刈刃部C1は垂直軸C3に対して進行方向に対する後方に位置し、作業部Cは収納位置になる。収納位置では、第1規制ピンH3が第1規制孔H2の他端側に接触しているので、刈刃部C1が付勢体C5によって付勢されて、進行方向内側である進行方向右側に向かおうとする。他方、第2規制ピンJ2が第2規制孔J1の一端側に接触しているので、収納位置から進行方向に対する幅方向外側に移動することができない。つまり、第2規制部Jおよび付勢体C5の反発力によって、移動しようとする刈刃部C1の回動を阻止し、作業部Cは刈刃部C1の収納状態を維持する。このため、刈刃部C1が側方に突出せず、作業部Cとして全幅を拡大させることがない。そして、図24および図25に例示するように、障害物である防護柵Y4および標識類Y5が車両に近接している場合において、障害物と車両Bとの間隔が狭い場所であっても、第2ブーム17を上記障害物に近接させながら作業部Cを上下に移動させることができる。つまり、伸縮手段Fが高さが高い障害物を跨ぐように配置させた状態でも、第2ブーム17を目安にすることによって、作業部Cを作業面に容易に到達させることができる。
【0073】
動力ユニットMについて説明する。
実施例では、台枠Dの左右方向に対する他端側に動力ユニットMを配置する。動力ユニットMは、内燃機関からなる原動機M1と、原動機M1の回転動力を受領することによって流体圧を発生させる油圧ポンプである流体圧発生源M3と、流体圧発生源M3で発生させた圧を各シリンダやロータ軸を回転させる油圧モータC8に分配する方向制御弁M4と、オイルからなる流体を貯留するタンクM2と、を備える。これにより、本発明の作業機Aは、作業機A単独で動力を発生させて動作させることが可能である。
動力ユニットMは、この発明の実施例では、台枠Dの左右方向に対する他端側である進行方向右側に配置する。すなわち、作業部Cの展開する方向とは反対側の台枠D上に設けている。
動力ユニットMで発生させた流体圧を受領した第1シリンダ11、第2シリンダ12、第3シリンダ13、第4シリンダ14、第5シリンダ15によって、マストフレームEおよび伸縮手段Fを動作させる。また、発生させた流体圧で刈刃C2を回転させる。
【0074】
作業機全体を通しての動作について説明する。
格納状態について説明する。中でも、格納状態から展開状態にする一例を説明する。
図1乃至図3に図示するように、格納状態でのマストフレームEは、台枠Dの進行方向右側に位置する。そして、第1ブーム16を上方に上昇させ、第1連結体18を上方に位置させる。第2ブーム17は、下端側を後方且つ上方に回動させている。第1ブーム16、第1連結体18、第2ブーム17、第2連結体19、作業部Cは、台枠D上に位置する。
【0075】
格納状態での作業部Cは、第4シリンダ14によって、展開時の作業状態における左端側が上方に向かうように、前後軸E5まわりに回動させる。
さらに、刈刃部C1を第5シリンダ15によって垂直軸C3まわりに回動させて収納位置にさせる。つまり、格納状態での作業部Cは、作業時に地面に対向して配置する刈刃C2が、車両Bの進行方向に対する左側に向く。そして、格納状態での作業部Cの刈刃部C1の下端側は、垂直軸C3より下方に位置し、台枠D上に置かれる。
【0076】
格納状態の第1ブーム16、第1連結体18、第2ブーム17、第2連結体19、作業部Cは、台枠D上に収められる。このため、格納状態の作業機は、平面視で台枠Dの範囲に収められた状態で、車両Bの荷台G上に配置が可能である。作業機Aは、車両Bでの運搬を自由におこなうことができる。また、格納状態での作業機A単体での重心は、平面視における台枠Dの中央部に位置する。また、作業部Cが台枠D上に置かれることで、重心位置は上下方向に対しても下げることができる。したがって、作業機Aは、荷台Gに安定した状態で安全に運搬をすることが可能となる。
【0077】
展開状態への移行について説明する。
格納状態から展開状態に移行する場合を説明する。
まず、作業部Cの下端をアオリ21より上方に位置するまで第2ブーム17を上昇させる。その後、第1シリンダ11を伸長させて、マストフレームEを車両Bの進行方向左側方に向かわせる。作業部Cがアオリ21の外側、すなわち、荷台Gの外側に位置したら、図4乃至図6に図示するように、第3シリンダ13を伸縮させて第2ブーム17を下降させるとともに、作業部Cを前方に移動させる。
このとき、第2ブーム17先端部に配置した作業部Cは、第2ブーム17とともに平行リンクで接続された第2連結体19によって、前後方向に傾斜することなく移動する。第2ブーム17下端部を前方に向かって回動させるので、第2ブーム17下端部に位置した作業部Cは、車両Bの前方に位置するキャビン側方に配置できる。すなわち、キャビン内に搭乗する作業者B2から見易い位置に作業部Cを配置できる。
【0078】
その後、図6図13に図示するように、刈刃C2が地面に対して対向するように、第4シリンダ14を伸縮させて、作業部Cを前後軸E5まわりに回動させる。そして、刈刃C2が地面に近づくように第2シリンダ12を伸縮させて第1ブーム16を下降させる。このとき、第1連結体18は、第1ブーム16の上部ブーム31および下部ブーム32、マストフレームEによって、平行リンクである四節リンクを形成するので、第1ブーム16の昇降にともなって、進行方向から見て左右方向に傾斜することなく昇降する。つまり、第2ブーム17は、第1ブーム16を昇降させたとしても、進行方向から見て左右方向に傾斜することなく昇降できる。さらに、マストフレームEを左右移動させることによって、作業部Cは、第1ブーム16を昇降に伴う左右方向のずれを吸収しながら上下昇降ができる。作業部Cは進行方向に対する左右に移動することなく昇降が可能になるので、車両Bの側方に作業部Cを左右方向に移動させるスペースがない場合でも、作業部Cを展開させることができる。
【0079】
地面に対して作業部Cを近接させる、あるいは、作業部Cを接地させたら、第5シリンダ15を操作して、図13実線に図示するように、刈刃部C1を収納位置から展開位置に向かって展開させ、作業機Aを図6に例示する姿勢にする。また、刈刃部C1の展開する方向によっては、図12に例示する姿勢である、刈刃部C1を別作業位置に配置した状態にしてもよい。そして、草刈り作業のための作業部Cの左右位置を調整するために、第1シリンダ11を伸縮させてマストフレームEを左右方向に移動させる。そして、刈刃C2を回転させるとともに車両Bを前進させることで、車両B側方の草刈り作業を行う。
【0080】
草刈り作業について説明する。
草刈り作業中も作業部Cの左右位置の調整が必要な場合は、マストフレームEを左右方向に移動させる。この場合、第1シリンダ11の伸縮速度より速い速度でマストフレームEが動作するので、作業部Cをより俊敏に位置調整することが可能である。
【0081】
草刈り作業中に作業部Cの上下位置の調整が必要な場合は、図23図25に図示するように、第1ブーム16または第2ブーム17を昇降させる。第1ブーム16を昇降させた場合に、第1ブーム16の四節リンク構造によって第2ブーム17が進行方向左右に傾斜しないので、進行方向から見て左右方向に傾斜することなく、水平状態を保ったまま上下調整ができる。また、第2ブーム17を昇降させて作業部Cを昇降させた場合でも、第2連結体19、第2ブーム17、第2ブーム17内のリンクロッド171、第1連結体18で構成する平行リンク機構によって、作業部Cは側面視において上下方向に傾斜することなく、作業面と平行を保ったまま昇降できる。
草刈り作業中に作業部Cの左右位置の調整が必要な場合は、マストフレームEを左右に移動させることで、伸縮手段Fを含めた作業部Cを左右方向に移動させる。マストフレームEを移動させても、第1ブーム16や第2ブーム17は、上下左右に傾斜することがないので、作業部Cと作業面との距離を保ったまま、平行に移動できる。
【0082】
第1ブーム16の昇降にともなって、進行方向から見た場合の第1連結体18は左右方向に移動する。つまり、作業部Cが第2ブーム17とともに進行方向左右方向に移動することがある。この場合、マストフレームEを左右方向に移動させることで、作業部Cの左右位置のズレを調整し、作業部Cの左右位置の変化を調整する。作業部Cの左右位置の調整をおこなうために、マストフレームEを移動させることで、作業部C左右方向に対する位置ずれを吸収可能である。つまり、第1ブーム16を回動動作させた場合に、台枠D上を左右に移動可能なマストフレームEを移動させることによって、作業部Cを連結する第2ブーム17の進行方向幅方向への移動を防ぐことができる。また、第2ブーム17は、第1ブーム16の構成によって背面視で左右に傾斜することも防いでいる。このため、マストフレームEおよび第1ブーム16の動作によって第2ブーム17が、左右方向に位置を大きく変化させることなく上下移動をおこなうことができる。
図22乃至図23に示すように、第2ブーム17が車両Bと障害物である標識類Y5の間に狭い間隔を置いて位置した場合や、図24乃至図25に示すように、障害物である標識類Y5が車両Bと第2ブーム17の間に狭い間隔を置いて位置した場合に、作業部Cの位置調整をおこなうことで、不意に第2ブーム17を障害物である標識類Y5や、車両Bとに接触させるおそれがない。また、第1シリンダ11の伸縮速度より速い速度でマストフレームEが動作するので、作業部Cの進行方向に対する左右のズレを、素早く元の位置に修正することが可能である。
【0083】
展開状態から格納状態に移行する場合の一例を説明する。
まず、第1ブーム16を上昇させ、作業部Cを持ち上げる。そして、第5シリンダ15を用いて、作業部Cの刈刃部C1を展開位置から収納位置に移動させる。次いで、第4シリンダ14を用いて作業部Cを前後軸E5まわりに回動させ、刈刃C2を進行方向左側に向ける。第2ブーム17を後方に回動させ、作業部Cを進行方向後方に移動させる。さらに第1ブーム16および第2ブーム17を回動させて作業部Cがアオリ21より高い位置になるまで作業部Cを上昇させる。
【0084】
進行方向前後方向から見た場合に、第1ブーム16および第2ブーム17および作業部Cが台枠D上に収めるように、マストフレームEを進行方向右端に移動させる。そして、第2ブーム17を、作業部Cが台枠Dに接触するまで降下させたら、格納状態となる。
【0085】
図22乃至図25は、この発明の実施例に係る作業機の作業の様子の一例をあらわす平面図および背面図である。
Yは高速道路の車道側、Y1は路肩、Y2は道路外、Y7は車道側、Y8は路肩側である。Y3は支柱、Y4は防護柵である。
Y5は、標識類である。標識類Y5は、表示板Y51と、反射板Y52からなる。標識類Y5は、支柱Y3にとりつける。
【0086】
作業部CはマストフレームEおよび伸縮手段Fを移動および旋回させることによって、車両Bの進行方向一方側の側方に作業部Cを位置させる展開状態、および、マストフレームEおよび伸縮手段Fを移動および旋回させることによって、作業部Cを荷台G上に位置させた格納状態に姿勢変更が可能である。
図22で平面図をあらわし、図23で背面図をあらわすように、作業部Cで、例えば高速道路等の道路の路肩で作業をする場合を説明する。この発明の実施例に係る作業機Aの作業状態では、マストフレームEをガイドフレームD2の中間部に位置させ、伸縮手段Fは、第2ブーム17をキャビンB1の近傍に沿って前方側および下方側の路肩Y1側に折り曲げる。作業部Cは防護柵Y4の下をくぐらせて、後端部を高速道路外の道路外Y2にまで伸ばした作業位置にして、防護柵Y4の下の草刈を行う。
【0087】
図24で平面図をあらわし、図25で背面図をあらわすように、作業部Cで、例えば高速道路等の道路の路肩で作業をする場合を説明する。この発明の実施例に係る作業機Aの作業状態では、マストフレームEをガイドフレームD2の左端部に位置させ、伸縮手段Fの第1ブーム16が、支柱Y3、防護柵Y4、表示板Y51、反射板Y52を跨いで、第2ブーム17をキャビンB1から離した道路外Y2の側方位置で前方側および下方側に折り曲げる。作業部Cは、防護柵Y4の下をくぐらせて、後端部を路肩側Y1に伸ばすように配置した別作業位置で、道路外Y2の地面の草刈作業を行う。
【0088】
従来は、トラクタ等の専用の車両で作業部を牽引または装備して、トラクタ等の専用の車両動力を受領しながら作業していたが、この発明の実施例では、作業機Aは、汎用の貨物車量である車両Bに載置し、動力を作業機A自らが発生させるように設けてあるので、動力は車両Bと関係なく独立して作業できる。また、作業機Aを取り外した車両Bは、通常の貨物車量として使用することができる。作業機Aは車両Bの荷台G上に搭載可能としながらも、マストフレームEを台枠D上に対して左右に大きく移動可能にしている。これによって、作業機Aが有する作業部Cを車両Bの側方側の近傍位置から、やや離れたい位置まで作業することができる。また、作業部CをマストフレームEおよび伸縮手段を用いて適正に移動させることで、作業部Cの移動量を十分に確保しながらも、作業部Cの上下左右の移動時に、作業部Cおよび作業部Cに連結する伸縮手段Fを、他の場所や他の部材に接触させる可能性を減少させることができる。
【符号の説明】
【0089】
A 作業機
B 車両
C 作業部
C1 刈刃部
C2 刈刃
C3 垂直軸
C4 付勢部
C5 付勢体
C6 基部
C7 プレート
C8 油圧モータ
D 台枠
D1 接地部
D2 ガイドフレーム
D3 固定部
D4 緊縛部材
D5 支持部
D6 ガイドフレーム取付部
D7 第1固定部(駆動装置)
D8 支持フレーム
E マストフレーム
E5 前後軸
E6 マストフレーム取付部
E7 第2固定部(駆動装置)
F 伸縮手段
G 荷台
H 第1規制部
H1 受部材
H2 第1規制孔
H3 第1規制ピン
J 第2規制部
J1 第2規制孔
J2 第2規制ピン
11 第1シリンダ(駆動装置)
111 ロッド
12 第2シリンダ
13 第3シリンダ
14 第4シリンダ
15 第5シリンダ
151 第5シリンダの端部
16 第1ブーム
17 第2ブーム
18 第1連結体
19 第2連結体
21 アオリ
31 上部ブーム
32 下部ブーム
41 第1リンク
42 第2リンク
L 摺動部
L1 摺動部材
L2 ガイドローラ
M 動力ユニット
M1 原動機
M2 タンク(燃料タンク)
M3 流体圧発生源(油圧ポンプ)
M4 方向制御弁
S ガイド部
S1 ガイドレール
S2 ローラ
R スライドフレーム(駆動装置)
W1 第1スプロケット(上側)(駆動装置)
W2 第1スプロケット(下側)(駆動装置)
W3 第2スプロケット(上側)(駆動装置)
W4 第2スプロケット(下側)(駆動装置)
W5 チェーン(上側)(駆動装置)
W6 チェーン(下側)(駆動装置)
Y 高速道路
Y1 路肩
Y2 道路外
Y3 支柱
Y4 防護柵
Y5 標識類
Y51 表示板
Y52 反射板
Y6 障害物
Y7 車道側
Y8 路肩側

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25