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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074375
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/564 20210101AFI20240524BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M50/564
H01M50/188
H01M50/176
H01M50/193
H01M50/588
H01M50/591
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185485
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011FF04
5H011GG07
5H011HH02
5H011JJ02
5H011JJ12
5H011JJ27
5H011JJ29
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA09
5H043DA20
5H043HA05D
5H043HA06D
5H043HA07D
5H043HA31D
5H043HA36D
5H043KA22D
(57)【要約】
【課題】個々の端子部材の寸法バラツキに拘わらず、端子部材の端子天面上に樹脂バリが生じるのを抑制できる蓄電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】蓄電デバイス1の製造方法は、インサート成形工程S1を備える。この工程S1は、第1金型DE1及び第2金型DE2を相対移動させて、第1金型DE1の天面密着部DE1aで端子部材40,50の端子天面41m,51mを第2金型側GH2に押圧する共に、第2金型DE2の当接部DE2aで端子部材40,50の被当接部42t,52tを第1金型側GH1側に押圧し、端子部材40,50の変形部42s,52sを塑性変形させ、端子天面41m,51mを天面密着部DE1aに押し付け密着させた状態で、樹脂部材60,70をインサート成形する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有するケース部材と、
上記ケース部材の上記挿通孔内に挿通された端子部材と、
上記ケース部材と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記ケース部材及び上記端子部材にそれぞれ接合し、上記ケース部材に上記端子部材を固定する樹脂部材と、を備え、
上記端子部材は、
上記ケース部材の外側に位置し、露出した平面状の端子天面を含む端子外側部と、
上記ケース部材の内側に位置し、上記挿通孔内を経由して上記端子外側部に繋がる端子内側部と、を有し、
上記樹脂部材は、
上記ケース部材の上記外側に位置し、上記端子部材の上記端子外側部の周囲を取り囲む枠状で、上記端子外側部の上記端子天面と面一の樹脂外側枠状部を有する
蓄電デバイスの製造方法であって、
上記ケース部材の上記挿通孔内に上記端子部材を挿通した状態で、上記樹脂部材をインサート成形するインサート成形工程を備え、
上記インサート成形工程は、
上記端子外側部の上記端子天面に対向して密着する平坦な天面密着部を有する第1金型、及び、上記端子内側部の被当接部に当接する当接部を有する第2金型を、上記天面密着部に直交する直交方向に相対的に移動させて、
上記第1金型の上記天面密着部で上記端子天面を上記直交方向の第2金型側に押圧する共に、上記第2金型の上記当接部で上記被当接部を上記直交方向の第1金型側に押圧し、
上記端子部材のうち、上記端子天面と上記被当接部との間に位置する変形部を上記直交方向に圧縮し塑性変形させ、上記端子天面を上記天面密着部に押し付け密着させた状態で、
上記樹脂部材をインサート成形する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記端子部材の前記変形部は、前記被当接部である
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、ケースの一部をなすケース部材に、樹脂部材を介して端子部材が固定された、電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、直方体箱状のケースに、インサート成形された樹脂部材を介して、正負の端子部材がそれぞれ固設された角形の電池が知られている。具体的には、ケースは、矩形環状の開口部を有する有底角筒状の本体部材と、開口部を閉塞する形態で本体部材に全周にわたり接合された矩形板状の蓋部材とからなる。また正負の端子部材は、蓋部材に設けた一対の挿通孔内にそれぞれ挿通されて、ケースの内部から外部に延びている。そして一対の樹脂部材が、それぞれ、蓋部材と端子部材との間を絶縁しつつ、蓋部材及び端子部材に接合し、蓋部材に端子部材を固定している。
【0003】
このような電池は、以下の手法により組み立てる。即ち、蓋部材の一対の挿通孔内に正負の端子部材を挿通した状態で、一対の樹脂部材をインサート成形して、蓋部材に樹脂部材を介して端子部材を一体化させる。次にこの蓋アセンブリの正負の端子部材を、電極体の正負の集電部にそれぞれ接続する。その後、この電極体を本体部材内に挿入し、蓋部材で本体部材の開口部を塞ぎ、全周にわたりレーザ溶接してケースを形成する。関連する従来技術として、例えば特許文献1,2が挙げられる(特許文献1の図1図2、段落(0018)等、及び、特許文献2の図1図3、段落(0080)等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-272324号公報
【特許文献2】特開2018-097978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に上述の電池として、正負の端子部材が平面状の端子天面を有する形態の電池がある。具体的には、この電池では、端子部材は、蓋部材(ケース部材)の外側に位置し、平面状の端子天面を含む端子外側部を有する共に、樹脂部材は、蓋部材(ケース部材)の外側に位置し、端子部材の端子外側部の周囲を取り囲む枠状で、端子外側部の端子天面と面一の樹脂外側枠状部を有する。
【0006】
この形態の電池では、前述のインサート成形の際、樹脂外側枠状部の形成のために、端子外側部の周囲に供給された溶融樹脂の一部が、更に端子外側部の端子天面と成形金型との間にまで流れ込んで、インサート成形後の端子天面上に樹脂バリが生じることがある。個々の端子部材に寸法バラツキがあるため、端子天面と成形金型との間に生じる隙間の大きさにもバラツキを生じ、樹脂バリの生成状態にもバラツキを生じる。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、個々の端子部材の寸法バラツキに拘わらず、端子部材の端子天面上に樹脂バリが生じるのを抑制できる蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、挿通孔を有するケース部材と、上記ケース部材の上記挿通孔内に挿通された端子部材と、上記ケース部材と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記ケース部材及び上記端子部材にそれぞれ接合し、上記ケース部材に上記端子部材を固定する樹脂部材と、を備え、上記端子部材は、上記ケース部材の外側に位置し、露出した平面状の端子天面を含む端子外側部と、上記ケース部材の内側に位置し、上記挿通孔内を経由して上記端子外側部に繋がる端子内側部と、を有し、上記樹脂部材は、上記ケース部材の上記外側に位置し、上記端子部材の上記端子外側部の周囲を取り囲む枠状で、上記端子外側部の上記端子天面と面一の樹脂外側枠状部を有する蓄電デバイスの製造方法であって、上記ケース部材の上記挿通孔内に上記端子部材を挿通した状態で、上記樹脂部材をインサート成形するインサート成形工程を備え、上記インサート成形工程は、上記端子外側部の上記端子天面に対向して密着する平坦な天面密着部を有する第1金型、及び、上記端子内側部の被当接部に当接する当接部を有する第2金型を、上記天面密着部に直交する直交方向に相対的に移動させて、上記第1金型の上記天面密着部で上記端子天面を上記直交方向の第2金型側に押圧する共に、上記第2金型の上記当接部で上記被当接部を上記直交方向の第1金型側に押圧し、上記端子部材のうち、上記端子天面と上記被当接部との間に位置する変形部を上記直交方向に圧縮し塑性変形させ、上記端子天面を上記天面密着部に押し付け密着させた状態で、上記樹脂部材をインサート成形する蓄電デバイスの製造方法である。
【0009】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、インサート成形工程において、第1金型及び第2金型を直交方向に相対移動させて、端子部材の変形部を直交方向に圧縮し塑性変形させるので、各端子部材の直交方向の寸法バラツキの影響を受けることなく、概ね同じ大きさの力で、端子部材の端子天面を第1金型の天面密着部に押し付け密着させることができる。そしてこの状態で、樹脂部材をインサート成形する。これにより、樹脂部材を成形する際には、端子部材の変形部に生じている反力によって、端子部材の端子天面が第1金型の天面密着部に密着しているので、端子天面と天面密着部との間に溶融樹脂が流れ込み難い。かくして、個々の端子部材の寸法バラツキに拘わらず、端子天面上に樹脂バリが生じるのを抑制できる。
【0010】
(2)更に(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記端子部材の前記変形部は、前記被当接部である蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0011】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、端子部材のうち、第2金型の当接部が当接する被当接部を、塑性変形させる変形部としている。端子部材の被当接部は樹脂部材から露出しているので、被当接部を変形部とすることにより、被当接部(変形部)に生じた塑性変形の状態を、インサート成形後に目視等で確認し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電池の斜視図である。
図2】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池幅方向に沿う断面図である。
図3】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の部分拡大上面図である。
図4】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の、図3及び図5におけるA-A矢視断面図である。
図5】実施形態に係る電池のうち、端子部材及び樹脂部材の近傍の、図3及び図4におけるB-B矢視断面図である。
図6】実施形態に係る電池の製造方法のフローチャートである。
図7】実施形態に係る電池の製造方法に関し、インサート成形工程において、ゲートから溶融樹脂をキャビティ内に射出する様子を示す説明図である。
図8】実施形態に係る電池の製造方法に関し、インサート成形工程において、キャビティ内に樹脂部材を成形した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、図2に電池1の断面図を示す。また図3に端子部材50及び樹脂部材60の近傍の部分拡大上面図を、図4及び図5に端子部材50及び樹脂部材60の近傍の部分拡大断面図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、図1図5に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0014】
電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された扁平捲回型の電極体30と、ケース10のケース上部11(蓋部材22)にそれぞれ支持された正極の端子部材40及び負極の端子部材50等から構成されている。電極体30は、ケース10内で、絶縁フィルムからなり、電池高さ方向AHの上側AH1に開口する袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体30内に含浸され、残りはケース10のケース底部12上に溜まっている。
【0015】
このうちケース10は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる直方体箱状であり、電池高さ方向AHの上側AH1に位置する矩形状のケース上部11と、これに対向し、電池高さ方向AHの下側AH2に位置する矩形状のケース底部12と、これらの間を結ぶ4つの矩形状のケース側部13,14,15,16とを有する。このケース10は、上側AH1に矩形環状の開口部21cを有する有底角筒状の本体部材21と、開口部21cを閉塞する形態で本体部材21に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材(ケース部材)22とから構成されている。
【0016】
ケース上部11(蓋部材22)には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁28が設けられている。また蓋部材22には、ケース10の内外を連通する注液孔22kが設けられており、アルミニウムからなる円板状の封止部材29で気密に封止されている。
更に蓋部材22のうち、電池幅方向BHの一方側BH1及び他方側BH2の端部近傍には、それぞれ矩形状の挿通孔22a,22bが設けられている。一方の挿通孔22a内には、アルミニウムからなる正極の端子部材40が挿通されており、樹脂部材60を介してケース10と絶縁された状態で蓋部材22に固設されている。また他方の挿通孔22b内には、銅からなる負極の端子部材50が挿通されており、樹脂部材70を介してケース10と絶縁された状態で蓋部材22に固設されている。
【0017】
これらの端子部材40,50は、それぞれ、金属板(正極の端子部材40はアルミニウム板、負極の端子部材50は銅板)をプレス加工したものであり、蓋部材22の外側EHに位置する端子外側部41,51と、蓋部材22の内側FH(ケース10内)に位置し、挿通孔22a,22b内を経由して端子外側部41,51に繋がる端子内側部42,52とを有する。
このうち端子外側部41,51は、矩形平板状であり、矩形平面状の端子天面41m,51mを有する。この端子天面41m,51m上には樹脂バリがなく、端子天面41m,51mの全体が露出している。
【0018】
一方、端子内側部42,52は、複数箇所で板厚方向に屈曲されている。具体的には、端子内側部42,52は、端子外側部41,51の電池厚み方向CHの一方側CH1の端部から下側AH2に延びる第1内側部42a,52aと、第1内側部42aの下端で屈曲し電池厚み方向CHの一方側CH1に延びる第2内側部42b,52bと、第2内側部42bの電池厚み方向CHの一方側CH1の端部で屈曲し下側AH2に延びる第3内側部42c,52cとを有する。
【0019】
このうち第1内側部42a,52aは、挿通孔22a,22bに挿通されており、この第1内側部42a,52aには、樹脂部材60,70が接合している。
第3内側部42c,52cは、その下側AH2の端部において、電極体30に接続している。具体的には、正極の第3内側部42cは、電極体30の後述する正極集電部33に接合し導通している。一方、負極の第3内側部52cは、電極体30の後述する負極集電部36に接合し導通している。また第3内側部42c,52cのうち、第2内側部42bに連なり上側AH1に位置する部位に、後述するインサート成形工程S1において、下金型DE2の当接部DE2aが下側AH2から当接する被当接部42t,52tを有する。本実施形態では、この被当接部42t,52tは、インサート成形工程S1で電池高さ方向AH(直交方向GH)に圧縮されて塑性変形した変形部42s,52sでもある。
【0020】
次に樹脂部材60,70について説明する。正極の樹脂部材60は、蓋部材22と端子部材40との間を絶縁しつつ、蓋部材22及び端子部材40にそれぞれ接合し、蓋部材22に端子部材40を固定している。また負極の樹脂部材70は、蓋部材22と端子部材50との間を絶縁しつつ、蓋部材22及び端子部材50にそれぞれ接合し、蓋部材22に端子部材50を固定している。
【0021】
これらの樹脂部材60,70は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、蓋部材22の外側EHに位置する樹脂外側枠状部61,71と、ケース10の内部及び蓋部材22の挿通孔22a,22b内に位置し、樹脂外側枠状部61,71に繋がる樹脂内側部62,72とを有する。樹脂外側枠状部61,71は、端子部材40,50の端子外側部41,51の周囲を取り囲む枠状で、端子外側部41,51の端子天面41m,51mと面一の形態を有しており、端子部材40,50の端子外側部41,51と蓋部材22との間を絶縁している。一方、樹脂内側部62,72は、端子部材40,50の端子内側部42,52と蓋部材22との間を絶縁している。
【0022】
次に電極体30について説明する。この電極体30は、帯状の正極板31と帯状の負極板34とを、帯状で樹脂製の多孔質膜からなる一対のセパレータ37を介して互いに重ね、円筒状に捲回した後に、扁平状にプレスしたものである。電極体30は、横倒しの状態でケース10内に収容されている。電極体30のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部は、正極板31の正極集電箔32が渦巻き状をなして突出した正極集電部33である。この正極集電部33は、正極の端子部材40の端子内側部42の第3内側部42cに接合している。また電極体30のうち、電池幅方向BHの他方側BH2の端部は、負極板34の負極集電箔35が渦巻き状をなして突出した負極集電部36である。この負極集電部36は、負極の端子部材50の端子内側部52の第3内側部52cに接合している。
【0023】
次いで、上記電池1の製造方法について説明する(図6図8参照)。予め蓋部材22及び端子部材40,50を用意しておく。蓋部材22は、アルミニウム板を所定形状に打ち抜き、これに注液孔22k、挿通孔22a,22b及び安全弁28を形成して得る。また正極の端子部材40はアルミニウム板を、負極の端子部材50は銅板を、それぞれ所定形状に打ち抜き、屈曲加工をして得る。
【0024】
そして「インサート成形工程S1」(図6参照)において、蓋部材22の挿通孔22a,22b内に端子部材40,50をそれぞれ挿通した状態で、樹脂部材60,70をそれぞれインサート成形して、蓋アセンブリ7を形成する(図7及び図8参照)。このインサート成形工程S1は、上金型(第1金型)DE1及び下金型(第2金型)DE2を有する成形金型DEを用いて行う(図7参照)。
上金型DE1には、一対の射出ノズルNZが配置されており、各射出ノズルNZの先端に形成されたゲートGTから、溶融樹脂MRを、蓋部材22、端子部材40,50及び成形金型DEで構成される一対のキャビティCV内にそれぞれ射出可能に構成されている。
【0025】
上金型DE1は、端子部材40,50のうち端子外側部41,51の端子天面41m,51mに対向して密着する平坦な一対の天面密着部DE1aと、天面密着部DE1aを取り囲み、樹脂部材60,70のうち樹脂外側枠状部61,71の外表面61m,71mを形成する一対の外表面形成部DE1bと、各外表面形成部DE1bを取り囲んで径方向外側に延び、蓋部材22の蓋外表面22mに対向して密着する平坦な蓋密着部DE1cとを有する。
一方、下金型DE2は、樹脂部材60,70のうち樹脂内側部62,72の内表面62n,72nを形成する一対の内表面形成部DE2bと、各内表面形成部DE2bを取り囲んで径方向外側に延び、蓋部材22の蓋内表面22nに対向して密着する平坦な蓋密着部DE2cとを有する。更に下金型DE2は、端子部材40,50のうち端子内側部42,52の被当接部42t,52tに当接する一対の当接部DE2aを有する。
【0026】
インサート成形工程S1では、下金型DE2の所定位置に、まず蓋部材22を配置する。続いて下金型DE2に配置した蓋部材22の挿通孔22a,22b内に、端子部材40,50をそれぞれ挿通する。その後、上金型DE1及び下金型DE2を、天面密着部DE1aに直交する直交方向GHに相対的に移動させて、本実施形態では、下金型DE2の位置を固定し、上金型DE1を直交方向GHの下金型側(第2金型側)GH2(下方)に移動させる。
【0027】
そして、上金型DE1の天面密着部DE1aで、端子部材40,50のうち端子外側部41,51の端子天面41m,51mを、直交方向GHの下金型側GH2側に押圧する共に、下金型DE2の当接部DE2aで、端子部材40,50のうち端子内側部42,52の被当接部42t,52tを、直交方向GHの上金型側GH1に押圧する。更に端子部材40,50のうち、端子天面41m,51mと被当接部42t,52tとの間に位置する変形部41s,51s(本実施形態では、変形部42s,52sは被当接部42t,52tでもある)を直交方向GHに圧縮し塑性変形させて、端子天面41m,51mを天面密着部DE1aに押し付け密着させた状態とする。また、上金型DE1の蓋密着部DE1cを蓋部材22の蓋外表面22mに対向して密着させると共に、下金型DE2の蓋密着部DE2cを蓋部材22の蓋内表面22nに対向して密着させる。
本実施形態では、端子部材40,50の変形部41s,51sを直交方向GHに圧縮し塑性変形させているので、各端子部材40,50の直交方向GHの寸法バラツキの影響を受けず、概ね同じ大きさの力で、端子天面41m,51mを天面密着部DE1aに密着させることができる。
【0028】
次に上述の状態において、各ゲートGTから溶融樹脂MRを、キャビティCV内に射出し、キャビティCV全体に行き渡らせる。その際、端子部材40,50の変形部41s,51sに生じている反力によって、端子部材40,50の端子天面41m,51mが上金型DE1の天面密着部DE1aに密着しているので、端子天面41m,51mと天面密着部DE1aとの間に溶融樹脂MRが流れ込み難い。
【0029】
その後、各キャビティCV全体に充填された溶融樹脂MRを冷却して、キャビティCV内に樹脂部材60,70を成形する。次に上金型DE1を上方に移動させ、蓋部材22に樹脂部材60,70を介して端子部材40,50が固定された蓋アセンブリ7を下金型DE2から取り出す。本実施形態では、前述のように、端子部材40,50のうち下金型DE2の当接部DE2aが当接する被当接部42t,52tを、塑性変形させる変形部42s,52sとしている。端子部材40,50の被当接部42t,52t(変形部42s,52s)は樹脂部材60,70から突出し露出しているので、下金型DE2から取り出した蓋アセンブリ7を見ることで、被当接部42t,52t(変形部42s,52s)に生じた塑性変形の状態を容易に確認することができる。
【0030】
次に「電極体接続工程S2」(図6参照)において、各々帯状をなす正極板31、負極板34及び一対のセパレータ37を捲回し、扁平状にプレスして得た電極体30を用意し、電極体30の正極集電部33及び負極集電部36に、上述した蓋アセンブリ7の端子部材40,50の端子内側部42,52をそれぞれ超音波溶接する(図1及び図2参照)。その後、この電極体30を袋状の絶縁ホルダ5で包む。
【0031】
次に「電極体収容・ケース形成工程S3」において、本体部材21を用意し、上述の絶縁ホルダ5で覆われた電極体30を本体部材21内に挿入し、蓋部材22で本体部材21の開口部21cを塞ぐ。そして本体部材21の開口部21c及び蓋部材22の周縁部を全周にわたりレーザ溶接して、電極体30を内部に収容したケース10を形成する。
【0032】
次に「注液・封止工程S4」において、電解液3を注液孔22kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体30内に含浸させる。その後、注液孔22kを外部から封止部材29で覆い、封止部材29を蓋部材22にレーザ溶接して、封止部材29と蓋部材22との間を気密に封止する。
次に「初充電・エージング工程S5」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。かくして、電池1が完成する。
【0033】
以上で説明したように、電池1の製造方法では、インサート成形工程S1において、上金型DE1及び下金型DE2を直交方向GHに相対移動させて、端子部材40,50の変形部42s,52sを直交方向GHに圧縮し塑性変形させているので、各端子部材40,50の寸法バラツキの影響を受けることなく、概ね同じ大きさの力で、端子部材40,50の端子天面41m,51mを上金型DE1の天面密着部DE1aに押し付け密着させることができる。そしてこの状態で、樹脂部材60,70をインサート成形する。これにより、樹脂部材60,70を成形する際には、端子部材40,50の変形部42s,52sに生じている反力によって、端子部材40,50の端子天面41m,51mが上金型DE1の天面密着部DE1aに密着しているので、端子天面41m,51mと天面密着部DE1aとの間に溶融樹脂MRが流れ込み難い。かくして、個々の端子部材40,50の寸法バラツキに拘わらず、端子天面41m,51m上に樹脂バリが生じるのを抑制できる。
【0034】
また本実施形態では、端子部材40,50のうち下金型DE2の当接部DE2aが当接する被当接部42t,52tを、塑性変形させる変形部42s,52sとしている。被当接部42t,52tは樹脂部材60,70から露出しているため、被当接部42t,52tを変形部42s,52sとすることにより、被当接部42t,52t(変形部42s,52s)に生じた塑性変形の状態を、インサート成形工程S1後に目視で確認することができる。
【0035】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
21 本体部材
22 蓋部材(ケース部材)
22a,22b 挿通孔
30 電極体
40,50 端子部材
41,51 端子外側部
41m,51m 端子天面
42,52 端子内側部
42a,52a 第1内側部
42b,52b 第2内側部
42c,52c 第3内側部
42t,52t (端子内側部の)被当接部
42s,52s (端子内側部の)変形部
60,70 樹脂部材
61,71 樹脂外側枠状部
EH (蓋部材の)外側
FH (蓋部材の)内側
GH 直交方向
GH1 (直交方向の)上金型側(第1金型側)
GH2 (直交方向の)下金型側(第2金型側)
DE 成形金型
DE1 上金型(第1金型)
DE1a 天面密着部
DE1b 外表面形成部
DE1c 蓋密着部
DE2 下金型(第2金型)
DE2a 当接部
DE2b 内表面形成部
DE2c 蓋密着部
MR 溶融樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8