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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007438
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】粒状肥料および粒状肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/12 20200101AFI20240110BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20240110BHJP
   C05G 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20240110BHJP
   B01F 27/1121 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/072 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20240110BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240110BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20240110BHJP
   F26B 3/28 20060101ALI20240110BHJP
   B01F 101/32 20220101ALN20240110BHJP
【FI】
C05G5/12
C05F3/00
C05G1/00 F
B01J2/10 Z
B01F27/1121
B01F27/072
B01F27/70
B01F35/222
B01J2/00 C
F26B3/28
B01F101:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105619
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022105677
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592053387
【氏名又は名称】富士見工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 吉徳
(72)【発明者】
【氏名】古閑 龍太郎
【テーマコード(参考)】
3L113
4G004
4G037
4G078
4H061
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB06
3L113AC69
3L113BA38
3L113DA26
4G004FA02
4G037EA03
4G078AA30
4G078AB05
4G078AB20
4G078BA01
4G078DA03
4G078DA08
4G078EA10
4H061AA01
4H061AA02
4H061BB01
4H061BB21
4H061BB51
4H061CC36
4H061CC38
4H061EE65
4H061FF25
4H061GG16
4H061GG19
4H061GG26
4H061GG52
4H061GG67
4H061HH07
4H061HH42
4H061LL15
4H061LL25
(57)【要約】
【課題】動物由来の有機質を原料とした無臭で、窒素、リン酸、カリウム塩等肥料有効成分量の高い有機肥料に加工する技術の開発が望まれている提供が望まれている。
【解決手段】動物由来の有機質原料を用い粒径2~8mmを有する粒状有機肥料であって、窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン酸含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料およびその製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物由来の有機質原料を用い粒径2~8mmを有する粒状有機肥料であって、窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン酸含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料。
【請求項2】
動物由来の有機質原料が家畜糞堆肥または家畜糞であることを特徴とする請求項1記載の肥料。
【請求項3】
窒素含有率が有機質原料の1.5~4倍、リン酸含有率が有機質原料の1.5~3.5倍およびカリウム含有率が有機質原料の1.3~4倍であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機肥料。
【請求項4】
家畜糞堆肥または家畜糞が牛糞堆肥または牛糞であり、窒素が成分含量として1.5~4.5%、リン酸が成分含量として1.5~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~6%であることを特徴とする請求項2記載の有機肥料。
【請求項5】
窒素が成分含量として1.5~2.5%、リン酸が成分含量として1.5~3%、およびカリウムが成分含量として3~5%であることを特徴とする請求項4記載の有機肥料。
【請求項6】
家畜糞堆肥または家畜糞が豚糞堆肥または豚糞であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~12%、およびカリウムが成分含量として2~7%であることを特徴とする請求項2記載の有機肥料。
【請求項7】
窒素が成分含量として3~4.5%、リン酸が成分含量として3~5%、およびカリウムが成分含量として2~5%であることを特徴とする請求項6記載の有機肥料。
【請求項8】
家畜糞堆肥または家畜糞が鶏糞堆肥または鶏糞であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~15%、およびカリウムが成分含量として2~10%であることを特徴とする請求項2記載の有機肥料。
【請求項9】
窒素が成分含量として4~6%、リン酸が成分含量として3~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~4%であることを特徴とする請求項8記載の有機肥料。
【請求項10】
動物由来の有機質原料を、ピン形状に特徴を持つ撹拌混合造粒機に注入して造粒する工程、
前記造粒工程で得られた造粒物を乾燥する工程および、
前記乾燥工程で得られた乾燥造粒物を、ふるい分け機により粒径2~8mmを持つ粒状有機肥料に分離する工程
から製造することを特徴とする粒状有機肥料の製造方法。
【請求項11】
動物由来の有機質原料の含水率が50~64%であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
動物由来の有機質原料の投入量が1トン/時間以下であることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
撹拌混合造粒機の回転数が100~300rpmであることを特徴とする請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
乾燥工程が日干しまたは乾燥機を用いた乾燥であることを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
ふるい分けにより排除される乾燥造粒物が35%以下であることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
動物由来の有機質原料が家畜糞堆肥または家畜糞であることを特徴とする請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
撹拌混合造粒機のピン形状が、回転軸にらせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されていることを特徴とする請求項10から16いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
動物由来の有機質原料を、回転軸にらせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されていることを特徴とする撹拌混合造粒機を用いて造粒する工程、
前記造粒工程で得られた造粒物を乾燥する工程および、
前記乾燥工程で得られた乾燥造粒物を、ふるい分け機により粒径2~8mmを持つ粒状有機肥料に分離する工程
から製造することを特徴とする、
窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン酸含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料の製造方法。
【請求項19】
動物由来の有機質原料が牛糞または牛糞堆肥であり、窒素が成分含量として1.5~4.5%、リン酸が成分含量として1.5~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~6%であることを特徴とする請求項10または請求項18記載の有機肥料の製造方法。
【請求項20】
動物由来の有機質原料が豚糞または豚糞堆肥であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~12%、およびカリウムが成分含量として2~7%であることを特徴とする請求項10または請求項18記載の有機肥料の製造方法。
【請求項21】
動物由来の有機質原料が鶏糞または鶏糞堆肥であり窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~15%、およびカリウムが成分含量として2~10%であることを特徴とする請求項10または請求項18記載の有機肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥料およびその製造技術分野の発明に関する。
【背景技術】
【0002】
動物由来の有機物である家畜糞堆肥には、作物の生育に大きく影響する三大要素、窒素、リン酸、カリウムが含まれるため有機肥料として活用されている。堆肥中に含まれる窒素、リン酸、カリウム量は、鶏、豚、牛の順に多いが、土づくりに必要な有機物量は逆に牛、豚、鶏の順に多い。また牛糞堆肥中の窒素は、施用当年に作物が利用可能な窒素は少ないが、難溶性窒素が多いため土壌に蓄積され、土壌中に蓄積された窒素は次作以降に次々と供給される。つまり、連用するとその年に施用された堆肥から供給される窒素に加えて、前年までに施用された堆肥からも窒素が供給されるため、牛糞堆肥は連用を続けると地力が高まり、窒素供給量が増加する連用効果が生じると言われている(非特許文献1)。
【0003】
畜産廃棄物等肥料原料を水分40~60重量%に調整し、これを加圧下で剪断・混練して加圧・混練の摩擦熱で40℃~90℃に昇温した混合物に処理し、この処理物をスクリュー型造粒機で顆粒状に粉砕しながらオゾン(O3)を供給して処理物顆粒体表層をオゾンで酸化させることにより、高温・嫌気性菌の活動を抑制し且つ高温・好気性菌の活性化を促す条件を作り、しかる後処理物を発酵させることを特徴とする有機肥料の製造方法が知られているが(特許文献1)、効果としてオゾンによる臭気の抑制が可能になるが、当該製法による製造物の肥料の形状はペレット状であり、且つ肥料としての効果も記載されていない。
【0004】
発酵鶏糞などの有機質原料の粉末を、内部で回転翼が高速回転している筒状の筺体内に上方から供給し、この筺体内で浮遊状態にして上下方向及び円周方向に回転させると共に、自転させ、筺体内に多数の水滴を散水して前記粉末を凝集させ、所要時間経過後に粉状のコーティング剤を筺体内に供給し、前記粉末が凝集した顆粒の表面をコーティング剤で覆うようにした有機肥料の造粒方法において、前記粉末を、高圧空気の供給なしに、かつ、高圧空気の供給と共に被処理粉末を流動させるための孔付円盤なしに、前記回転翼の回転力によってのみ浮遊させ、旋回させ、かつ、攪拌させるようにしたことを特徴とする醗酵鶏糞などからの有機肥料造粒方法(特許文献2)が知られている。しかし、この方法では鶏糞等一部の粉体原料に限られ含水率が50%を超える堆肥原料として用いることができないとともに、コーティングを必須とするため、手間とコストがかかる。また、リン酸、窒素、カリウム等有効成分の変化、粒形等は調べられていない。
【0005】
乾燥した発酵鶏糞を篩分けし、スクリュー形状を持つ押出し造粒機により造粒する工程において、少量の水を発酵鶏糞に添加して顆粒に造粒し、個々の顆粒の表面に肥効を増強する粉末をコーティングし、個々の顆粒同士を分離状態で生成させたことを特徴とする粒状有機肥料組成物(特許文献3)が知られているが、粉体の鶏糞に限定されること、コーティング加工を必要とすることの制約があり、また、リン酸、窒素、カリウム等有効成分の変化も記載されていない。
【0006】
上記スクリュー型押出造粒装置または高速回転型の造粒装置を用いる有機肥料の製造方法と異なり、植物系粉末を、リグニン、澱粉もしくはこれらの混合物からなるバインダー成分の水溶液でピン型造粒機により造粒化したのち、50~300℃の回転ドラムで造粒物を転動させながら乾燥処理し、ついで焼成炭化することを特徴とする低密度多孔質炭素粒の製造方法が知られているが、粉体を原料とする点、バインダーを添加する点、造粒後の顆粒に高熱をかけて処理する点で複雑な方法でありピン型造粒機も量産に適しているとしか記載されていない(特許文献4)。
【0007】
ピン型造粒機を用いた顆粒の製造方法としては、造粒機内で粉末カーボンブラックと造粒水とを混合撹拌しつつ造粒機の軸方向に移送し、造粒機末端の排出口から粒状カーボンブラックを取り出すカーボンブラックの造粒方法において、造粒機内でカーボンブラックが移送される方向と逆方向に向けて造粒水を噴霧し、該噴霧の際の液滴径を50~1000μmとしたことを特徴とするカーボンブラックの造粒方法が知られており、その結果として粒径1mm以下の顆粒が92%製造できることが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-183684号
【特許文献2】特公平6-79998号
【特許文献3】特公平3-75513号
【特許文献4】特公平6-45445号
【特許文献5】特開2004-182803号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「第3章 家畜糞堆肥の現状と肥効」、家畜糞堆肥適正施用の手引き、19~27頁、平成26年3月、岡山県農林水産部刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
家畜農家の規模拡大に伴い家畜糞やその堆肥の量が増加しているが、そのまま有機肥料として用いるには、消費地が遠く需要も春に偏るなど問題が多く、保管している間の臭気等環境衛生上の問題もあるため、これらを原料とした臭気が少なく、窒素、リン酸、カリウム塩等肥料有効成分量の高い有機肥料に加工する技術の開発が望まれている。特に牛糞を用いた有機肥料は、リン酸、窒素、カリウム等の配合率が低いことが問題であった。
【0011】
また、従来の家畜糞等を原料として用いた有機肥料は、スクリュー式押出し式造粒方法が中心のため、ペレット状の大きな形状の有機肥料しか製造できず、より小さな粒径2~8mmの形状を持つ化学肥料とブレンドすると、肥料散布機の種類により畑に播くことができない等の問題があった。また、通常化学肥料は球形だがペレットの形状は円柱のため、均一に混じりにくいという欠点もあった。他の造粒方法を用いようとしても、例えばピン型撹拌造粒機を用いる造粒方法は、粒径1mm以下の小さな顆粒を作るには適しているが、化学肥料の顆粒サイズまで成長させるのは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、有機肥料においてもリン酸、窒素、カリウム等の配合率が原料よりも高く、かつ化学肥料と同等の形状を有する粒状有機肥料の製造に関する検討を鋭意行った結果、バインダー、コーティング剤等を用いなくても無臭で有効成分に富んだ粒状有機肥料が得られることを確認した。
【0013】
本発明は、
〔1〕動物由来の有機質原料を用い粒径2~8mmを有する粒状有機肥料であって、窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン酸含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料、
〔2〕動物由来の有機質原料が家畜糞堆肥または家畜糞であることを特徴とする〔1〕記載の肥料、
〔3〕窒素含有率が有機質原料の1.5~4倍、リン酸含有率が有機質原料の1.5~3.5倍およびカリウム含有率が有機質原料の1.3~4倍であることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の有機肥料、
〔4〕家畜糞堆肥または家畜糞が牛糞堆肥または牛糞であり、窒素が成分含量として1.5~4.5%、リン酸が成分含量として1.5~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~6%であることを特徴とする〔2〕の有機肥料、
〔5〕窒素が成分含量として1.5~2.5%、リン酸が成分含量として1.5~3%、およびカリウムが成分含量として3~5%であることを特徴とする〔4〕記載の有機肥料、
〔6〕家畜糞堆肥または家畜糞が豚糞堆肥または豚糞であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~12%、およびカリウムが成分含量として2~7%であることを特徴とする〔2〕記載の有機肥料、
〔7〕窒素が成分含量として3~4.5%、リン酸が成分含量として3~5%、およびカリウムが成分含量として2~5%であることを特徴とする〔6〕記載の有機肥料、
〔8〕家畜糞堆肥または家畜糞が鶏糞堆肥または鶏糞であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~15%、およびカリウムが成分含量として2~10%であることを特徴とする〔2〕記載の有機肥料、
〔9〕窒素が成分含量として4~6%、リン酸が成分含量として3~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~4%であることを特徴とする〔8〕記載の有機肥料、
〔10〕動物由来の有機質原料を、ピン形状に特徴を持つ撹拌混合造粒機に注入して造粒する工程、
前記造粒工程で得られた造粒物を乾燥する工程および、
前記乾燥工程で得られた乾燥造粒物を、ふるい分け機により粒径2~8mmを持つ粒状有機肥料に分離する工程
から製造することを特徴とする粒状有機肥料の製造方法、
〔11〕動物由来の有機質原料の含水率が50~64%であることを特徴とする〔10〕記載の製造方法、
〔12〕動物由来の有機質原料の投入量が1トン/時間以下であることを特徴とする〔11〕記載の製造方法、
〔13〕撹拌混合造粒機の回転数が100~300rpmであることを特徴とする〔12〕記載の製造方法、
〔14〕乾燥工程が日干しまたは乾燥機を用いた乾燥であることを特徴とする〔13〕記載の製造方法、
〔15〕ふるい分けにより排除される乾燥造粒物が35%以下であることを特徴とする〔14〕記載の製造方法、
〔16〕動物由来の有機質原料が家畜糞堆肥または家畜糞であることを特徴とする〔15〕記載の製造方法、
〔17〕撹拌混合造粒機のピン形状が、回転軸にらせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されていることを特徴とする〔10〕から〔16〕いずれか一つに記載の製造方法、
〔18〕動物由来の有機質原料を、回転軸にらせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されていることを特徴とする撹拌混合造粒機を用いて造粒する工程、
前記造粒工程で得られた造粒物を乾燥する工程および、
前記乾燥工程で得られた乾燥造粒物を、ふるい分け機により粒径2~8mmを持つ粒状有機肥料に分離する工程
から製造することを特徴とする、
窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン酸含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料の製造方法、
〔19〕動物由来の有機質原料が牛糞または牛糞堆肥であり、窒素が成分含量として1.5~4.5%、リン酸が成分含量として1.5~5%、およびカリウムが成分含量として2.5~6%であることを特徴とする〔10〕または〔18〕記載の有機肥料の製造方法、
〔20〕動物由来の有機質原料が豚糞または豚糞堆肥であり、窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~12%、およびカリウムが成分含量として2~7%であることを特徴とする〔10〕または〔18〕記載の有機肥料の製造方法、および
〔21〕動物由来の有機質原料が鶏糞または鶏糞堆肥であり窒素が成分含量として3~9%、リン酸が成分含量として3~15%、およびカリウムが成分含量として2~10%であることを特徴とする〔10〕または〔18〕記載の有機肥料の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、無臭で有効成分に富み、化学肥料と混合して散布可能な粒状有機肥料および当該粒状有機肥料の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ピン型撹拌混合造粒機の外部構造および内部構造の透視図
図2】ピン型撹拌混合造粒機の内部構造の縦面図(A)および横面図(B)
図3】牛糞堆肥原料の含水率と造粒物の粒度分布の関係を示した図
図4】従来の粒状品(ペレット)と本件発明実施品の比較写真
図5】各種乾燥条件における本件発明の製造に用いた原料堆肥と本件発明の実施品である粒状堆肥(粒状有機肥料)中の窒素、リン酸、カリ(カリウム)の含有率(%)
図6】各種乾燥条件における本件発明の製造に用いた原料堆肥に対する本件発明の実施品である粒状堆肥(粒状有機肥料)中の窒素、リン酸、カリ(カリウム)の濃縮倍率。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、動物由来の有機質原料とは動物が生産、排せつする有機物質で通常肥料に用いられる物質を示し、好ましくは家畜糞または家畜糞堆肥を用いることができる。
【0017】
家畜糞としては、牛糞、豚糞、鶏糞等が挙げられる。本発明は、これらの家畜糞の処理に対応できる技術であるため、いずれの家畜糞原料を用いても粒状有機肥料が製造可能であるが、家畜の種類によりリン酸、窒素、カリウム等の配合率が異なるため、例えばリン酸や窒素に富んだ肥料を製造するには鶏糞や豚糞を原料として用いることが好ましく、カリウムに富んだ肥料を製造するには牛糞を原料として用いる方が好ましい。
堆肥とは、例えば、有機質原料を堆積して発酵させ、土壌施用後農作物に障害を与えなくなるまで腐熟させたもの等である。
【0018】
本発明における有機肥料とは、肥料の品質の確保等に関する法律の公定規格に定められた有機質肥料、及び、汚泥肥料、及び肥料の品質の確保等に関する法律に定められた特殊肥料のことである。特殊肥料は、動物の排泄物、動物の排泄物の燃焼灰、堆肥等があげられる。特に特殊肥料に関しては、特殊肥料等を指定する件として農林水産省の告示があり、そこに具体的に使用できる肥料が指定されている。例えば、米ぬか、発酵米ぬか、くず植物油かす及びその粉末(植物種子のくずを原料として使用した植物油かす及びその粉末をいう。)、草本性植物種子皮殻油かす及びその粉末、木の実油かす及びその粉末(カポツク油かす及びその粉末を除く。以下同じ。)、コーヒーかす、くず大豆及びその粉末(くず大豆又は水ぬれ等により変質した大豆を加熱した後、圧変したもの及びその粉末をいう。)、たばこくず肥料及びその粉末(変性しないたばこ屑肥料粉末を除く。)、乾燥藻及びその粉末、落棉分離かす肥料、ヨモギかす、草木灰(じんかい灰を除く。)、くん炭肥料、セラツクかす、にかわかす(オセインからゼラチンを抽出したかすを乾燥したものを除き、牛等由来の原料を使用する場合にあっては管理措置が行われたものに限り、かつ、牛等の部位を原料とするものについては脊柱等が混合しないものとして農林水産大臣の確認を受けた工程において製造されたものに限る。)、魚鱗(蒸製魚鱗及びその粉末を除く。)、家禽加工屑肥料(蒸製毛粉(羽を蒸製したものを含む。)を除く。)、発酵乾ぷん肥料(し尿を嫌気性発酵で処理して得られるものをいう。)、動物の排せつ物の燃焼灰、堆肥(わら、もみがら、樹皮、動物の排せつ物その他の動植物質の有機質物(汚泥及び魚介類の臓器を除く。)を堆積又は攪拌し、腐熟させたもの(尿素、硫酸アンモニアその他の腐熟を促進する材料を使用したものを含む。)をいい、牛等由来の原料を使用する場合にあっては管理措置が行われたものに限り、かつ、牛等の部位を使用するものについては脊柱等が混合しないものとして農林水産大臣の確認を受けた工程において製造されたものに限る。)等である。また、公定規格に定められた有機質肥料、及び、汚泥肥料と特殊肥料を混合しても良い。
【0019】
有機肥料は、一般的には、植物が利用できる形態及び土壌中で植物が利用できる形態に変換されるものであり、特に後者の形態においては、土壌中で微生物等の働きによって無機化されることにより農作物に利用される形態に変化するものと考えられている。
【0020】
本発明の有機肥料の形状は、粒径2~8mmを有する粒状有機肥料であって、ペレット型では無く円形状の形状をもつ。本発明の有機肥料はかかる形状および大きさを有することにより、化学肥料と混合したものを機械散布することができる。なお粒状肥料における粒径の測定方法は、どのような方法を用いても良いが、ふるい分け法を用いるのが簡便で好ましい。本発明の有機肥料と組み合わせて散布する化学肥料とは、肥料取締法に定められた普通肥料のうち、有機質肥料(汚泥堆肥等を含む)を除いた肥料をいう。化学肥料のうち窒素成分質肥料には、空中窒素から合成されるアンモニアを原料として生産される硫安、塩安、リン安等のアンモニア系肥料、硝安、硝酸石灰、硝酸カリ等の硝酸系肥料、尿素、尿素アルデヒド縮合物等のアミド系肥料、空中窒素から合成される石灰窒素等がある。また、これらを反応又は配合した化成肥料、配合肥料も本発明の化学肥料に含まれる。
【0021】
本発明の有機肥料の特徴は、動物由来の有機質原料に比べて肥料の3要素が向上していることであり、コンパクトな粒状肥料から動物由来の有機質原料より多い肥料の3要素が土壌に供給できることである。肥料の3要素とは、窒素、リン酸、カリウムを示す。
【0022】
窒素を含む植物化合物としては、タンパク質を構成するアミノ酸、ヌクレオチドを構成する核酸塩基、膜脂質であるホスファチジルエタノールアミン、グルコサミンなどのアミノ糖、アルカロイドやリグニンなどの二次代謝産物など様々であり、窒素は植物に必要不可欠な元素である。葉においてタンパク質の多くは葉緑体に含まれ、窒素の摂取量は光合成の活発さを規定する。適正な範囲内であるならば、窒素を多く与えるほどに葉緑体は増加し、収量が向上する。
【0023】
本発明の有機肥料においては、有機質原料に比べて窒素が1.5倍以上、好ましくは1.5~4倍、より好ましくは1.5~3倍増加する。
【0024】
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として1.5~4.5%、好ましくは1.5~3%、より好ましくは1.5~2.5%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として3~9%、好ましくは3~6%、より好ましくは3~4.5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として3~9%、好ましくは3~7%、より好ましくは4~6%含まれる。
【0025】
リン酸を含む植物化合物としては、核酸、細胞膜を形成するリン脂質、生体のエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸、光合成に関与するリブロース-1,5-ビスリン酸等が挙げられるとともにタンパク質の多くはリン酸化酵素/脱リン酸化酵素によりリン酸化/脱リン酸化がなされ、生体内の反応を制御している。これらの生体内での重要な働きを担うため、リンは植物の生長、種の発芽、開花に重要である。
【0026】
本発明の有機肥料においては、有機質原料に比べてリン酸が、1.5倍以上、好ましくは1.5~3.5倍、より好ましくは1.5~3倍増加する。
【0027】
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として1.5~5%、好ましくは1.5~3.5%、より好ましくは1.5~3%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として3~12%、好ましくは3~8%、より好ましくは3~5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として3~15%、好ましくは3~8%、より好ましくは3~5%含まれる。
【0028】
カリウムは、他の多量要素と異なり、植物体内において、代謝に関わる生体分子の構成元素にならず、植物体液に溶解した無機塩として機能する。カリウムイオンがイオンチャネルを通って別の細胞に移動すると、その細胞の水ポテンシャルは低下し、水の移動が起こる。植物は根圏に対して葉身の水ポテンシャルを低くしており、この差に依存して吸水を行っている。小松菜とホウレン草で葉の乾燥重量当たりの水分量とカリウム量には正の相関がある。カリウムはまた植物酵素を活性化させ、炭水化物とタンパク質の合成、植物体内の水分量の調節、光合成に必要なクロロフィル前駆体の合成を促進させるとともに、果実の色や形状の決定、Brix糖度の増加を促進する。したがって、カリウム豊富な土壌で高品質な果物が生産される。
【0029】
本発明の有機肥料においては、有機質原料に比べてカリウムが1.3倍以上、好ましくは1.3~4倍、より好ましくは1.3~3倍増加する。
【0030】
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2.5~6%、好ましくは2.5~5%、より好ましくは3~5%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2~7%、好ましくは2~5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2~10%、好ましくは2~7%、より好ましくは2.5~4%含まれる。
【0031】
本発明の粒状有機肥料の製造方法において、動物由来の有機質原料を、ピン形状に特徴を持つ撹拌混合造粒機に注入して造粒する工程とは、前記動物由来の有機質原料を調整し、ピン形状に特徴を持つ撹拌混合造粒機に注入する工程および造粒機に注入した動物由来の有機質原料を造粒する工程から構成される。
【0032】
本発明の製造方法に用いられる動物由来の有機質原料とは前記と同義であり、動物が生産、排せつする有機物質で通常肥料に用いられる物質を示し、好ましくは家畜糞または家畜糞堆肥を示す。
【0033】
家畜糞としては、牛糞、豚糞、鶏糞等が挙げられる。本発明は、これらの家畜糞の処理に対応できる技術であるため、いずれの家畜糞原料を用いても粒状有機肥料が製造可能であるが、家畜の種類によりリン酸、窒素、カリウム等の配合率が異なるため、例えばリン酸や窒素に富んだ肥料を製造するには鶏糞や豚糞を原料として用いることが好ましく、カリウムに富んだ肥料を製造するには牛糞を原料として用いる方が好ましい。
堆肥とは、例えば、有機質原料を堆積して発酵させ、土壌施用後農作物に障害を与えなくなるまで腐熟させたもの等である。
【0034】
動物由来の有機質原料は、含水率が50~64%、牛糞または牛糞堆肥等を用いる場合は58~64%が好ましく、鶏糞堆肥および豚糞堆肥の場合は52~64%の含水量を用いることが好ましい。含水量の少ない動物由来の有機質原料は水を加えて含水率を50~64%に調整すれば良く、含水量が64%以上の原料の場合は加熱等により含水量を調整すれば良い。このようにして調整した原料を造粒機に投入する。
【0035】
投入速度としては2トン/時間以下、好ましくは1トン/時間以下、より好ましくは0.5トン/時間以下にすることが好ましい。
【0036】
本発明におけるピン形状に特徴を持つ撹拌混合造粒機とは、撹拌混合造粒機の回転軸に、らせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されている構造を持つ造粒機が好ましい。その具体例として内部構造および外観構造を透視図的に示した図1および内部構造の縦面(A)および横面(B)を図2に示された撹拌混合造粒機であって回転軸にらせん状にピン状の突起が配置された造粒機を示す。ピンの形状は全て同一であり、等間隔で配置されている。
【0037】
造粒温度は20℃~60℃、造粒湿度は80%以上の条件下で行い、回転速度は造粒機のモーター出力等によって調整する必要があるが、例えば100~300rpm、好ましくは150~300rpm、より好ましくは180~260回転で造粒を行えば良い。
得られた造粒物は、必要により整粒器により整粒を行う。
【0038】
本発明の粒状有機肥料の製造方法において、前記造粒工程で得られた造粒物を乾燥する工程とは、前記造粒工程で得られた造粒物を、天然日干しまたは乾燥機により水分を蒸発させる工程を示す。
【0039】
天然日干しによる乾燥は、太陽エネルギー、風等の自然エネルギーを利用して堆肥中の水分を乾燥する装置である。堆肥量が少量の場合は、プラスチックハウスに粒状有機堆肥を2~4cm程度の厚さにトレイに堆積させ4~10日乾燥させれば良い。また、堆肥設備のように規模が大きい場合は、乾燥を促進するため、ビニールハウスに扇風機のような送風機を付け乾燥を促進させること、自走式の撹拌機を設置し乾燥の均一化を図ることが好ましい。そのような条件下では乾燥を7~30日、好ましくは10~17日行えば良い。
【0040】
乾燥機による乾燥は、回転ドラム式乾燥機、ロータリー三条スクリュー乾燥機、ロータリーキルン等工業用途に用いられ、大量の顆粒の乾燥に用いられるものであればどのようなものでも良いが、ロータリーキルンを用いることが好ましい。乾燥温度および時間は、処理する造粒物の量により異なるが、約15Kgの造粒物に対して150℃~250℃の温度で15分~80分、好ましくは180℃~220℃の温度で、20~50分加熱すれば良い。
【0041】
乾燥工程が終了した時点で、2~8mmの粒状有機肥料の粒径規格に適合しない顆粒が全顆粒中35%以下、好ましくは25%以下である。これらの規格外顆粒はふるい分けにより排除することができる。具体的には、このようにして乾燥させた造粒物を、日本工業規格のふるい分け試験方法の適用が可能なふるい分け機により、粒径2~8mmの円形の粒状有機肥料を製造することができる。
【0042】
工業的にはふるい分け機は、主に振動式と回転式に分かれる。振動式は、ふるい網を上下に振動することで、投入物のふるい分けを行う。また、ふるい網は複数になっている場合があり、段階的にふるい分けをすることも可能である。回転式はトロンメルと呼ばれることもあり筒状の篩が回転することで投入物のふるい分けを行う。また、投入物が機械の内側でふるい分けられるため、振動式スクリーンなどに比べて騒音が少ないという利点もある。
【0043】
本発明の前記粒状有機肥料の製造方法により、動物由来の有機質原料を用い粒径2~8mmを有する粒状有機肥料であって、窒素含有率が有機質原料の1.5倍以上、リン含有率が有機質原料の1.5倍以上およびカリウム含有率が有機質原料の1.3倍以上であることを特徴とする有機肥料が提供される。
【0044】
本発明の製造方法により得られた粒状肥料において、肥料の3大要素は以下のように変化する。
【0045】
(1)窒素は、有機質原料に比べて1.5倍以上、好ましくは1.5~4倍、より好ましくは1.5~3倍増加する。
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として1.5~4.5%、好ましくは1.5~3%、より好ましくは1.5~2.5%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として3~9%、好ましくは3~6%、より好ましくは3~4.5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、窒素が成分含量として3~9%、好ましくは3~7%、より好ましくは4~6%含まれる。
【0046】
(2)リン酸は、有機質原料に比べて1.5倍以上、好ましくは1.5~3.5倍、より好ましくは1.5~3倍増加する。
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として1.5~5%、好ましくは1.5~3.5%、より好ましくは1.5~3%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として3~12%、好ましくは3~8%、より好ましくは3~5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、リン酸が成分含量として3~15%、好ましくは3~8%、より好ましくは3~5%含まれる。
【0047】
(3)カリウムは、有機質原料に比べて1.3倍以上、好ましくは1.3~4倍、より好ましくは1.3~3倍増加する。
具体的には、牛糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2.5~6%、好ましくは2.5~5%、より好ましくは3~5%含まれる。豚糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2~7%、好ましくは2~5%含まれる。鶏糞原料を用いた場合は、カリウムが成分含量として2~10%、好ましくは2~7%、より好ましくは2.5~4%含まれる。
【実施例0048】
実施例1
農家にて製造された牛糞堆肥を有機質原料として用い、図1に内部構造および外観構造を透視図的に示し、図2に内部構造の縦面(A)および横面(B)が示された撹拌混合造粒機であって回転軸にらせん状にピン状の突起が配置された造粒機〔張家港MGマシナリー株式会社製〕を用いて以下の製造検討を行った。
【0049】
(1)有機質原料投入量と造粒物の粒度の関係の予備試験
牛糞堆肥を用いた有機質原料を用いて、造粒機に投入する有機質原料の量と造粒物の粒度の関係を確認した。回転数213rpm、造粒温度37℃~41℃、造粒湿度96~99%RHの条件下で投入量と粒度の関係を検討したところ、投入量1.5トン/時間では粒径2mm以下の細粒が50%以上生じるのに対して、投入量1トン/時間では粒径2mm以下の細粒の発生率は約35%、投入量0.5トン/時間では粒径2mm以下の細粒の発生率は30%以下に減少した。
【0050】
(2)造粒機の回転数と造粒物の粒度の関係の予備試験
牛糞堆肥を用いた有機質原料を用いた場合の造粒機の回転速度と、造粒物の粒度の関係を検討した。造粒温度38~42℃、造粒湿度96~99%RH、投与量1トン/時間の条件下で回転数を検討した結果、回転数235rpmの場合は粒径2mm以下の細粒は約35%程度、粒径8mm以上の造粒物は約10%を占めていたのに対して、回転数を213rpmに低下させると、粒径2mm以下の細粒は約35%程度と変わりないが、粒径8mm以上の造粒物は1%程度まで減少した。
【0051】
(3)有機質原料の含水率と造粒物の粒度の関係
鶏糞堆肥、豚糞堆肥とは粘性がやや異なる牛糞堆肥を用いた有機質原料の含水率56%~65%までの各種濃度において造粒(造粒機の回転数213rpm、投入量1.0トン/時間、造粒温度23℃~42℃、造粒湿度94~99%RHの条件下で造粒を行った場合の、水分含量と得られる粒状肥料の粒度分布の関係を検討した。結果を図3に示した。
【0052】
図3の結果から、牛糞堆肥を用いた場合は、有機質原料の含水率が58%以上、64%以下の状態において粒径2~8mmの粒状有機肥料が70%近く生産できることが確認された。
【0053】
従来の押出し造粒法による有機肥料の製造では、有機質原料の含水量を30~40%近くまで落とす必要があるため、加熱により有機質原料の水分を蒸発させる必要があった(特許文献1、特許文献3)が、本発明の製造方法では、加熱操作が必要でなく生産コスト削減や悪臭防止に役立つことが確認された。
【0054】
前記造粒工程により得られた造粒物を天然日干しにより水分が無くなるまで乾燥させ、JIS_Z8801に規定された標準篩用金網を用いて粒径2~8mmの粒状有機肥料を採取した。
【0055】
得られた粒状有機肥料と従来技術の押出し造粒法により得られた有機肥料ペレットの形状比較写真を図4に示した。
【0056】
図4の対比写真から、本発明の粒状有機肥料は化学肥料と混合可能な形状および大きさで、畑に機械により散布するのに好適な形状であることが理解される。
【0057】
また、本件発明の粒状肥料は従来の牛糞堆肥から製造した肥料に比べ、臭気が著しく改善されていた。
【0058】
実施例2(牛糞堆肥を原料として用いた粒状有機肥料の製造)
含水率62%の牛糞堆肥を原料として用い、実施例1で用いた造粒機と同じ造粒機を用いて、造粒機の回転数213rpm、原料投入量1.0トン/時間、造粒温度14.6℃、造粒湿度92.2%RH(温湿度ロガー:SK-L754、SKL-754センサー:SK-L754-2、株式会社佐藤計量器製作所製)の条件で有機肥料の造粒を行った。
【0059】
前記造粒工程により得られた顆粒を、乾燥方法の影響を調べるためA~Dの4群に分け、天然日干しを行うサンプルAおよびB、乾燥機を用いて乾燥を行うサンプルC、D4種に分類した。サンプルA,Bに関しては温室で8日間保存し粒状肥料サンプルA及び粒状肥料サンプルBを製造した。サンプルCに関しては、乾燥機としてロータリーキルン(張家港MGマシナリー株式会社製)を用いて造粒物16Kgに対して200℃の温度で40分間乾燥させ粒状肥料のサンプルCを製造した。サンプルDは、ロータリーキルン(張家港MGマシナリー株式会社製)を用いて造粒物16Kgに対して200℃で20分乾燥を行い粒状肥料サンプルDを製造した。
【0060】
得られた粒状肥料および原料として用いた牛糞堆肥に対して、肥料中の有効成分である窒素、リン酸、カリウムに関して成分含量の測定を行った。測定方法は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の肥料等試験法(2021)に従い以下のように行った。
【0061】
窒素の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール法で前処理して窒素全量をアンモニウムイオンにし、水酸化ナトリウム溶液を加えて水蒸気蒸留する。分離したアンモニアを硫酸で捕集し、余剰の硫酸を水酸化ナトリウム溶液で(中和)滴定し、分析試料中の窒素全量を求めるケルダール法(4.1.1.a)で行った。
【0062】
リン酸の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール分解、全リンをリン酸イオンにし、バナジン(V)酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウム及び硝酸と反応して生ずるリンバナドモリブデン酸塩の吸光度を測定し、分析試料中のリン酸全量を求めるバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法(4.2.1.a)で行った。
【0063】
カリウム成分含量の測定は、分析試料を灰化-塩酸煮沸で前処理し、加里全量をカリウムイオンにし、フレームにおいて生じる波長766.5nmmの輝線の強度を測定し、分析試料中のカリウム全量を求めるフレーム光度法(4.3.1.a)で行った。結果を表1および図5に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1および図5の結果から、窒素成分含量に関しては、原料堆肥で0.91%であった窒素含量が、天日乾燥のサンプルA,サンプルBにおいて各々2.31%、2.24%と増加し、機械乾燥によって得られたサンプルCは2.03%、サンプルDは1.79%といずれも約2倍または2倍以上増加した。これは非特許文献1に記載された公知の牛糞堆肥が1.1%であるのに対して顕著に高い窒素含有量であることが確認された。
【0066】
リン酸成分含量に関しては、原料堆肥で0.98%であった窒素含量が、天日乾燥のサンプルA,サンプルBにおいて各々2.65%、2.37%と増加し、機械乾燥によって得られたサンプルCは2.28%、サンプルDは1.94%といずれも約2倍~2倍以上増加した。これは非特許文献1に記載された公知の牛糞堆肥のリン酸含量が1.1%であるのに対して顕著に高いリン酸含有量であることが確認された。
【0067】
更に、カリウム含量に関しては、原料堆肥で1.97%であったカリウム含量が、天日乾燥のサンプルA,サンプルBにおいて各々4.6%、4.23%と増加し、機械乾燥によって得られたサンプルCは3.7%、サンプルDは3.17%といずれも約1.5倍以上増加した。これは非特許文献1に記載された公知の牛糞堆肥が2.1%であるのに対して顕著に高いカリウム含有量であることが確認された。
【0068】
相対的な成分含量の濃縮効果を確認するため、原料堆肥の窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量を1とした場合の、各サンプルA、B、C、Dの窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量の原料堆肥に対する相対値を算出し、その結果を表2および図6に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2および図6によれば、本発明の製造方法により得られた粒状有機肥料は、200℃で40分乾燥させたサンプルDにおいては、窒素が原料堆肥の1.97倍、リン酸が1.98倍、カリウムが1.61倍、200℃で20分乾燥させたサンプルCは、窒素が原料堆肥の2.23倍、リン酸が2.33倍、カリウムが1.88倍であった。これに比べ日干し乾燥した粒状有機肥料は、サンプルBの窒素が原料堆肥の2.46倍、リン酸が2.42倍、カリウムが2.15倍、サンプルAの窒素が原料堆肥の2.54倍、リン酸が2.71倍、カリウムが2.34倍と肥料の主要有効性成分が全て2倍を超えていた。
【0071】
実施例3(鶏糞堆肥を用いた粒状有機肥料の製造)
含水率52.7%の鶏糞堆肥を原料として用い、実施例1で用いた造粒機と同じ造粒機を用いて、造粒機の回転数213rpm、原料投入量1.0トン/時間、造粒温度37.0℃、造粒湿度98.0%RH(温湿度ロガー:SK-L754、SKL-754センサー:SK-L754-2、株式会社佐藤計量器製作所製)の条件で造粒を行った。
【0072】
造粒工程により得られた顆粒は、天然日干し(温室で8日間保存)により粒状肥料を得た。2~8mmの粒状化肥料が約60~70%製造できたことが目視で観測された。
得られた粒状肥料および原料として用いた鶏糞堆肥に対して、肥料中の有効成分である窒素、リン酸、カリウムに関して成分含量の測定を行った。測定方法は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の肥料等試験法(2021)に従い以下のように行った。
【0073】
窒素の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール法で前処理して窒素全量をアンモニウムイオンにし、水酸化ナトリウム溶液を加えて水蒸気蒸留する。分離したアンモニアを硫酸で捕集し、余剰の硫酸を水酸化ナトリウム溶液で(中和)滴定し、分析試料中の窒素全量を求めるケルダール法(4.1.1.a)で行った。
【0074】
リン酸の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール分解、全リンをリン酸イオンにし、バナジン(V)酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウム及び硝酸と反応して生ずるリンバナドモリブデン酸塩の吸光度を測定し、分析試料中のリン酸全量を求めるバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法(4.2.1.a)で行った。
結果を表3に示した。
【0075】
【表3】
【0076】
鶏糞は牛糞に比べ原料堆肥の段階で窒素やリン酸に富んでいるが、粒状肥料になると更にその成分が濃縮され、窒素5.04%、リン酸3.84%と非常に高い含有量を示した。カリウムは鶏糞原料堆肥中1.58%と牛糞堆肥の1.97%に比べ低い値であったが、粒状肥料化で3.33%まで増加した。
【0077】
相対的な成分含量の濃縮効果を確認するため、原料堆肥の窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量を1とした場合の、粒状鶏糞肥料の窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量の原料堆肥に対する相対値を算出し、その結果を表4に示した。
【0078】
【表4】
【0079】
粒状肥料化により各成分が1.95~2.11倍濃縮されており鶏糞堆肥原料の特性を生かした窒素およびリン酸に富んだ粒状肥料が製造できたことが確認された。
【0080】
実施例4(豚糞堆肥を原料として用いた粒状有機肥料の製造)
含水率53.2%の豚糞堆肥を原料として用い、実施例1で用いた造粒機と同じ造粒機により、造粒機の回転数213rpm、投入量1.0トン/時間、造粒温度37.5℃、造粒湿度98.9%RH(温湿度ロガー:SK-L754、SKL-754センサー:SK-L754-2、株式会社佐藤計量器製作所製)の条件で造粒を行った。2~8mmの粒状化肥料が約70%製造できたことが目視で観測された。造粒工程(牛糞堆肥の場合と同じ)により得られた顆粒を、天然日干しを行った。
【0081】
得られた粒状肥料および原料として用いた豚ぷん堆肥に対して、肥料中の有効成分である窒素、リン酸、カリウムに関して成分含量の測定を行った。測定方法は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の肥料等試験法(2021)に従い以下のように行った。
【0082】
窒素の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール法で前処理して窒素全量をアンモニウムイオンにし、水酸化ナトリウム溶液を加えて水蒸気蒸留する。分離したアンモニアを硫酸で捕集し、余剰の硫酸を水酸化ナトリウム溶液で(中和)滴定し、分析試料中の窒素全量を求めるケルダール法(4.1.1.a)で行った。
【0083】
リン酸の成分含量の測定は、分析試料に硫酸、硫酸カリウム及び硫酸銅(II)五水和物を加え、ケルダール分解、全リンをリン酸イオンにし、バナジン(V)酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウム及び硝酸と反応して生ずるリンバナドモリブデン酸塩の吸光度を測定し、分析試料中のリン酸全量を求めるバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法(4.2.1.a)で行った。
【0084】
カリウム成分含量の測定は、分析試料を灰化-塩酸煮沸で前処理し、カリウム全量をカリウムイオンにし、フレームにおいて生じる波長766.5nmmの輝線の強度を測定し、分析試料中のカリウム全量を求めるフレーム光度法(4.3.1.a)で行った。
結果を表5に示した。
【0085】
【表5】
【0086】
豚糞も牛糞に比べ原料堆肥の段階で窒素やリン酸に富んでいるが、粒状肥料になると更にその成分が濃縮され、窒素3.99%、リン酸3.81%と非常に高い含有量を示した。カリウムは豚糞原料堆肥中1.34%と牛糞堆肥の1.97%に比べ低い値であったが、粒状肥料化で2.69%まで増加した。
【0087】
相対的な成分含量の濃縮効果を確認するため、原料堆肥の窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量を1とした場合の、粒状豚糞肥料の窒素成分量、リン酸成分量、カリウム成分量の原料堆肥に対する相対値を算出し、その結果を表6に示した。
【0088】
【表6】
【0089】
粒状肥料化により各成分が1.84~2.05倍濃縮されており豚糞堆肥原料の特性を生かした窒素およびリン酸に富んだ粒状肥料が製造できたことが確認された。
【0090】
以上、動物由来の有機質原料を用いて有機肥料を製造する方法において、らせん状に等間隔で、同じ大きさのピンが多数配置されていることを特徴とする撹拌混合造粒機を用いて造粒を行なうことにより、従来の有機肥料と異なり。化学肥料と配合しやすい粒状肥料を製造できることが確認された。更に動物由来の有機質原料の水分含量を検討することにより化学肥料と配合しやすい2~8mmの粒径を持つ粒状有機肥料を65%以上含む顆粒が製造できることが確認され、商品の生産効率が高い製造方法であること理解された。
【0091】
また、当該生産方法で得られた2~8mmの粒径を持つ粒状有機肥料は、肥料の3大成分である窒素、リン酸、カリウムを概ね2倍以上含むものであり、格段に優れた肥効が望まれるものであった。また、有機肥料似独特の臭気も従来の有機肥料よりも少なかった。特に、従来土壌への蓄積効果が認められるが他の家畜に比べると3大要素の配合量が少ないと言われていた牛糞肥料においては、その欠点のない有益な肥料であることが確認された。
【符号の説明】
【0092】
1.造粒機
2.回転軸
3.投入口
4.排出口
5.ピン
6.スクリュー羽
7.フランジ
8.モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6