(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074408
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アルミニウム製缶のリサイクル管理方法及びリサイクル管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240524BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240524BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20240524BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20240524BHJP
B22D 7/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
C22B7/00 F
C22B21/00
B21D51/26 X
B22D7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185521
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晃典
【テーマコード(参考)】
3C100
4K001
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA57
3C100AA68
3C100BB05
3C100BB15
3C100DD05
3C100DD22
3C100DD32
3C100DD35
3C100EE14
4K001AA02
4K001BA22
4K001DA05
(57)【要約】
【課題】リサイクル率を高めることができるアルミニウム製缶のリサイクル管理方法及びリサイクル管理システムを提供する。
【解決手段】鋳塊製造工程、圧延工程、製缶工程の各工程において、当該工程で製造される製品を識別するための製品識別情報を生成するとともに、当該工程の製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、当該工程の製品が再生製品であることを示すリサイクル情報を前記製品識別情報に関連付けて生成し、圧延工程及び製缶工程の各工程では、前工程の製品識別情報に関連付けられているリサイクル情報をもとに当該工程の再生製品を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されるアルミニウム製缶のリサイクル管理方法であって、
アルミニウム材料を溶解・鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する鋳塊製造工程と、アルミニウム製鋳塊を加熱して熱間圧延する処理を経てアルミニウム製圧延材のコイルを製造する圧延工程と、アルミニウム製圧延材からアルミニウム製缶を製造する製缶工程と、を備え、
これら各工程において、当該工程で製造される製品を識別するための製品識別情報を生成するとともに、当該工程の製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、当該工程の製品が再生製品であることを示すリサイクル情報を前記製品識別情報に関連付けて生成し、
前記圧延工程及び前記製缶工程の各工程では、前工程の製品識別情報に関連付けられているリサイクル情報をもとに当該工程の再生製品を製造することを特徴とするアルミニウム製缶のリサイクル管理方法。
【請求項2】
前記製缶工程で製造されたアルミニウム製缶に飲料を充填して飲料缶を製造する充填工程を備え、該充填工程において、前記飲料缶を識別するための製品識別情報を生成するとともに、前記製缶工程の製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、前記飲料缶が再生製品であることを示すリサイクル情報を前記製品識別情報に関連付けて生成することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム製缶のリサイクル管理方法。
【請求項3】
アルミニウム材料を溶解・鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する鋳塊製造装置と、アルミニウム製鋳塊を加熱して熱間圧延する処理を経てアルミニウム製圧延材のコイルを製造する圧延装置と、アルミニウム製圧延材からアルミニウム製缶を製造する製缶装置と、を備え、
これら各装置に、当該装置による生産管理のためのコンピュータが接続されており、該コンピュータに、前工程の製品の製品識別情報を入力可能な入力部と、当該装置で製造された製品を識別するための製品識別情報を生成するとともに、当該装置で製造された製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、当該装置により製造された製品の製品識別情報にリサイクル情報を関連付けて生成する情報処理部と、前記製品識別情報のうち少なくともリサイクル情報を出力可能な出力部と、を有するアルミニウム製缶のリサイクル管理システム。
【請求項4】
前記入力部に、前工程の製品識別情報を入力し、前記情報処理部は、前記入力部に入力された前工程の製品識別情報にリサイクル情報が関連付けられている場合に、当該装置により製造される製品の製品識別情報にリサイクル情報を関連付けさせるように促すことを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム製缶のリサイクル管理システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、記憶部と、通信装置と、を有し、前記情報処理部は、前記製品識別情報を前記記憶部に記憶し、前記通信装置は、前工程のコンピュータにおける製品識別情報を受信するとともに、前記記憶部に記憶されている当該工程の製品識別情報を後工程のコンピュータにおける通信装置に送信することを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム製缶のリサイクル管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製筒状缶やボトル状缶等のアルミニウム製缶を使用後にリサイクルする場合のリサイクル管理方法及びリサイクル管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の炭酸飲料やアルコール飲料等の容器として、軽量で加工性や耐腐食性に優れるため、アルミニウムにより形成された缶が大量に使用されている。このアルミニウム製缶には、円筒状の胴体(筒状胴体)とその開口部を閉鎖する蓋とからなる筒状缶、ボトル形状をした胴体(ボトル状胴体)とその口部に結合されるキャップとからなるボトル状缶、が普及している。
【0003】
これら筒状缶やボトル缶の材料であるアルミニウムは、使用後に再生することが可能であり、使用済みアルミニウム缶(Used aluminum beverage cans;略してUBCという)として回収され、溶解してアルミニウム製再生塊となり、圧延、製缶の工程を経て再生される。このようなアルミニウム再生塊を製造するために要するエネルギーは、ボーキサイトから電解精錬によって新たに鋳塊を製造する場合に要するエネルギーの約3%であるといわれている。このため、近年における省エネルギーによる地球環境保護や資源の有効活用の要請の高まりから、より多くの使用済みアルミニウム製缶を回収し、これを再び筒状缶やボトル缶とするために再生利用する要求が高まっている。
【0004】
このような筒状缶やボトル缶の回収再生方法として、従来、例えば特許文献1に示されるように、主として使用済みアルミニウム缶からなるプレスされた塊状の回収物を薫蒸処理する薫蒸工程と、回収物を解砕する解砕工程と、得られた回収物から非アルミニウム材を分離する選別工程と、選別されたアルミニウム缶を焙焼処理するとともに焙焼されたアルミニウム缶を200℃~550℃の温度範囲に保持したままで振動篩に供給して付着物を除去する焙焼工程と、この焙焼工程を経たアルミニウム缶を溶解する溶解工程と、この溶解工程において得られたアルミニウムの溶湯から再生塊(スラブ)を得る鋳造工程と、を一貫して連続的に行なう技術が知られている。
【0005】
また、近年では、特許文献2に示すように、プラスチックによる海洋汚染等の環境破壊の対策として、プラスチック製のカップに代わり、アルミニウム製カップも登場してきており、このアルミニウム製カップも、筒状缶やボトル缶と同様にリサイクルすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4465798号公報
【特許文献2】特表2020-508874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のように製造された再生塊(スラブ)は、その後、圧延メーカーにて圧延され、製缶メーカーに送られて製缶され、筒状缶やボトル缶として再生される。そして、飲料メーカーにて飲料が充填されて市場に提供される。また、使用済みのアルミニウム缶は回収され、再び溶解されて、上記の工程を循環させられる。
このようにして循環させられる筒状缶やボトル缶、及び前述したアルミニウム製カップ(これらを総称してアルミニウム製缶とする)のリサイクルにおいて、そのリサイクル率を高めることが要望されている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、リサイクル率を高めることができるアルミニウム製缶のリサイクル管理方法及びリサイクル管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されるアルミニウム製缶のリサイクル管理方法であって、
アルミニウム材料を溶解・鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する鋳塊製造工程と、アルミニウム製鋳塊を加熱して熱間圧延する処理を経てアルミニウム製圧延材のコイルを製造する圧延工程と、アルミニウム製圧延材からアルミニウム製缶を製造する製缶工程と、を備え、
これら各工程において、当該工程で製造される製品を識別するための製品識別情報を生成するとともに、当該工程の製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、当該工程の製品が再生製品であることを示すリサイクル情報を前記製品識別情報に関連付けて生成し、
前記圧延工程及び前記製缶工程の各工程では、前工程の製品識別情報に関連付けられているリサイクル情報をもとに当該工程の再生製品を製造する。
【0010】
このリサイクル管理方法においては、各工程で製品識別情報を生成し、その製品識別情報にリサイクル情報が関連付けられているので、そのリサイクル情報をもとに間違いなく、前工程の再生製品を用いて自工程の再生製品を製造することができる。
また、各工程において、製品識別情報に関連付けてリサイクル情報を生成しているので、そのリサイクル情報を確認することにより、その製品がリサイクル品(再生製品)であることを証明することができる。
【0011】
このため、このリサイクル情報により各工程におけるメーカー、あるいはユーザー、またあるいは顧客に対し、環境に配慮した高付加価値商品を提供できる。
【0012】
本発明のアルミニウム製缶のリサイクル管理方法は、さらに、前記製缶工程で製造されたアルミニウム製缶に飲料を充填して飲料缶を製造する充填工程を備え、該充填工程において、前記飲料缶を識別するための製品識別情報を生成するとともに、前記製缶工程の製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、前記飲料缶が再生製品であることを示すリサイクル情報を前記製品識別情報に関連付けて生成することとしてもよい。
【0013】
このリサイクル管理方法において、飲料缶の製品識別情報にリサイクル情報が関連付けられるので、飲料缶の販売業者にもリサイクル品(再生製品)であることが証明でき、さらに、飲料缶の消費者に対しても、リサイクル品の利用を促すことができ、社会全体として、リサイクル意識の向上に寄与し、リサイクルを促進してリサイクル率の向上を図ることができる。
【0014】
本発明のアルミニウム製缶のリサイクル管理システムは、アルミニウム材料を溶解・鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する鋳塊製造装置と、アルミニウム製鋳塊を加熱して熱間圧延する処理を経てアルミニウム製圧延材のコイルを製造する圧延装置と、アルミニウム製圧延材からアルミニウム製缶を製造する製缶装置と、を備え、
これら各装置に、当該装置による生産管理のためのコンピュータが接続されており、該コンピュータに、前工程の製品の製品識別情報を入力可能な入力部と、当該装置で製造された製品を識別するための製品識別情報を生成するとともに、当該装置で製造された製品が使用済みアルミニウム製缶を用いた再生製品である場合に、当該装置により製造された製品の製品識別情報にリサイクル情報を関連付けて生成する情報処理部と、前記製品識別情報のうち少なくともリサイクル情報を出力可能な出力部と、を有する。
【0015】
このリサイクル管理システムにおいて、出力部としてはプリンターやモニターを用いることができる。例えば、シート等にリサイクル情報をプリントして当該製品又はその梱包物に付した状態で後工程に送り出す、あるいは、前工程から受け入れた製品のリサイクル情報をシートに印刷して、製造ラインの上流位置に掲示することにより、工程の関係者に受け入れ製品が再生品であることを通知する、製造ラインの各工程でモニターに表示する、などの使用方法が可能である。これにより、工程の関係者に再生製品であることを認識させ、リサイクル製品の証明システムとしても機能することができる。
【0016】
本発明のアルミニウム製缶のリサイクル管理システムにおいて、前記入力部に、前工程の製品識別情報を入力し、前記情報処理部は、前記入力部に入力された前工程の製品識別情報にリサイクル情報が関連付けられている場合に、当該装置により製造される製品の製品識別情報にリサイクル情報を関連付けさせるように促す。
【0017】
前工程から再生製品を受け入れた場合に、これをもとに製造される次工程の製品を確実に再生製品とすることができ、再生製品でない新規の製品との混在を防止することができ、リサイクル率の向上に寄与できる。
【0018】
本発明のアルミニウム製缶のリサイクル管理システムにおいて、前記コンピュータは、記憶部と、通信装置と、を有し、前記情報処理部は、前記製品識別情報を前記記憶部に記憶し、前記通信装置は、前工程のコンピュータにおける製品識別情報を受信するとともに、前記記憶部に記憶されている当該工程の製品識別情報を後工程のコンピュータにおける通信装置に送信する。
【0019】
通信装置を介してリサイクル情報を後工程に送信することにより、印刷等の手間を省いて省力化することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鋳塊製造工程、圧延工程、製缶工程の各工程で製品識別情報を生成し、その製品識別情報にリサイクル情報を関連付けて生成するので、そのリサイクル情報をもとに間違いなく、前工程の再生製品を用いて自工程の再生製品を製造して、再生製品として後工程に送り出すことができ、このリサイクル情報により各工程においてリサイクル意識が高まり、リサイクル率を向上させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】筒状缶の例を示す正面図であり、中心軸Cを中心に半分を縦断面で示す。
【
図2】ボトル状缶の例を示す正面図であり、中心軸Cを中心に半分を縦断面で示す。
【
図3】カップの例を示す正面図であり、中心軸Cを中心に半分を縦断面で示す。
【
図4】使用済みアルミニウム製缶から飲料缶を製造するまでの製造装置を工程順に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態のリサイクル管理システムの例を示す図である。
【
図11】溶解・鋳造工程で得られる鋳塊(スラブ)の例を示す斜視図である。
【
図12】圧延工程で得られるコイル状の圧延材の例を示す斜視図である。
【
図13】製缶工程で得られるアルミニウム製缶をパレットに積載した形態を示す斜視図である。
【
図14】充填工程で得られる飲料缶をカートンケースに梱包した形態を示す斜視図である。
【
図15】各工程で生成される製品識別情報の工程ごとの変遷を示す図である。
【
図16】鋳塊製造工程で生成される製品識別情の例を示す図である。
【
図17】製缶工程で生成される製品識別情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
アルミニウム製缶は、
図1に示す筒状缶10、
図2に示すボトル状缶20、
図3に示すカップ40、の三種類が存在する。
【0023】
筒状缶10は、
図1に示すように、有底円筒状の筒状胴体11と、その筒状胴体11の開口部に巻き締められた蓋12とを有している。筒状胴体11は、有底円筒状の一体成形品であり、底部13と胴部14とが一体成形されている。蓋12は、筒状胴体11の開口を閉鎖する蓋本体17に、開口用タブ18が取り付けられる。
この筒状缶10の筒状胴体11は、一般に、JIS(JIS H4000:2022)に規定されている合金番号で3004又は3104のAl-Mn系アルミニウム合金により形成され、蓋12は、蓋本体17が5052、5082又は5182のAl-Mg系アルミニウム合金、タブ18が5182のAl-Mg系アルミニウム合金により形成されていて、筒状胴体11の口に巻締られている。
【0024】
ボトル状缶20は、
図2に示すように、筒状缶10の筒状胴体11と同様の底部13を有し、ボトル形状に形成されたボトル状胴体21と、そのボトル状胴体21の上部で縮径した口部22に取り付けられるキャップ23とを有している。このボトル状缶20のボトル状胴体21は、前述のJISの合金番号で3004又は3104のアルミニウム合金により形成され、キャップ23は、3004、3104、5052、5082、5182等のいずれかのアルミニウム合金により形成されたキャップ本体29にパッキン30が取り付けられている。
【0025】
カップ40は、
図3に示すように、筒状缶10の筒状胴体11と同様の底部13を有し、全体としては有底筒状であるが、胴部46の直径は、底部13より開口部42の方が大きく形成されている。開口部42にはカール部43が形成されている。このカップ40は、JIS合金番号で3004又は3104の材料が用いられる。
【0026】
これらアルミニウム製缶(筒状缶10、ボトル状缶20、カップ40)は、アルミニウム材料を溶解・鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する鋳塊製造工程と、アルミニウム製鋳塊を加熱して熱間圧延する処理を経てアルミニウム製圧延材のコイルを製造する圧延工程と、アルミニウム製圧延材からアルミニウム製缶を製造する製缶工程と、を経て製造される。製造されたアルミニウム製缶のうち、筒状缶10及びボトル状缶20は、飲料が充填され、蓋12又はキャップ23が取り付けられて(充填工程)、消費者に提供される。
また、カップ40は、スタジアムやイベント会場、映画館、特定の飲食店などの商業施設で飲料を入れて消費者に提供される。
そして、飲料が充填されて市場に供されたアルミニウム製缶は、消費者の使用後に、使用済みアルミニウム缶として回収され、再びアルミニウム製缶として利用される。
【0027】
以下、この使用済みアルミニウム製缶の回収から飲料缶を製造するまでの方法を説明する。
図4は、使用済みアルミニウム製缶を再生して飲料缶を製造するまでに必要な一連の製造装置として、回収装置、鋳塊製造装置、圧延装置、製缶装置、充填装置の一連の装置を工程順に並べたものである。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
【0028】
(回収工程)
図6に示すように、使用済みアルミニウム製缶は、回収業者により、回収集積され、回収装置により圧縮して直方体の塊状の回収物とされ、この回収物が鋳塊製造工程に送られる。
【0029】
(鋳塊製造工程)
鋳塊製造工程では、アルミニウム材料の溶解、鋳造を行う鋳塊製造装置により、
図7に示すように、新規に鋳塊(スラブ)を製造する場合と、回収工程から送られてきた回収物を用いて鋳塊(スラブ)を製造する場合とがある。
【0030】
新規に鋳塊を製造する場合は、ボーキサイトから電解精錬によって製造されたアルミニウム材料(地金)を溶解して、アルミニウム合金の成分調整や不純物の除去が行われ、均一な成分の溶湯にし(溶解工程)、その溶湯を鋳造して鋳塊(スラブ)を製造する(鋳造工程)。
【0031】
回収工程から送られてきた塊状の回収物(使用済みアルミニウム製缶)を材料として鋳塊製品を製造する場合、まず、集積した回収物を水蒸気によって燻蒸することにより、異臭の原因となる微生物を死滅させるとともに、内部に含まれるおそれのある虫やその卵を死滅させる(燻蒸工程)。
【0032】
次いで、燻蒸処理がなされた回収物を、順次、小片に解砕(解砕工程)した後に、ベルトコンベアー等によって搬送しながらアルミニウム製缶の小片を選別する(選別工程)。選別手段としては、磁気によって鉄類を吸着除去する磁選機、回収物に空気を噴射することにより、アルミニウム材より軽量のプラスチック類や屑類、アルミニウム材より重量が大きい銅、ステンレス等の非着磁性の金属やコンクリート片等の夾雑物を分離除去する風力選別機が用いられる。
【0033】
このようにして、解砕され、分離された回収物には、塗料や樹脂層などの有機物が付着しており、そのまま溶解しても不純物が多く混入するので、一定量ごとにロータリーキルン(図示略)に投入して、アルミニウムの融点よりも低い温度で焙焼処理することにより表面に付着していた上記有機物を直接気化させて燃焼させ、残部を炭化物や酸化物とした後に、さらに焙焼された回収物を200℃~550℃の温度範囲に保持したままで、振動篩(図示略)に供給し、上記炭化物および酸化物並びに選別工程において除去されなかった砂等の付着物を分離する(焙焼工程)。
【0034】
次いで、焙焼処理がなされた使用済みアルミニウム製缶の小片を溶解し(溶解工程)、鋳造してアルミニウム製鋳塊を製造する(鋳造工程)。このようにして製造されたアルミニウム製鋳塊(スラブ)は、使用済みアルミニウム製缶からなるものとして再生塊と称す。
【0035】
この再生塊の製造の際に、使用済みアルミニウム製缶の小片を溶解した溶湯に成分調整のために新地金を投入することもある。また、この溶解工程において、製缶工程で発生した塗装前の加工屑(スケルトン)が投入される場合もある。塗装済みの加工屑を用いることもあるが、その場合は、使用済みアルミニウム製缶の小片の場合と同様に、焙焼処理を経て塗料等が取り除かれた後に溶湯に投入される。これら加工屑を用いた場合、この加工屑もリサイクルされているので、使用済みアルミニウム缶に加えてリサイクル率が計算される。すなわち、鋳塊を製造する際に、使用済みアルミニウム缶、加工屑、成分調整用の新地金を用いたとすると、リサイクル率は、(使用済みアルミニウム缶+加工屑+新地金)の総量に対する(使用済みアルミニウム缶+加工屑)の量の比率を百分率で表される。
【0036】
このようにして、溶解工程では、鋳塊(スラブ)として、通常のアルミニウム地金から製造された新塊と、使用済みアルミニウム製缶を用いた再生塊と、が製造される。
【0037】
なお、この溶解工程において製造される鋳塊(スラブ)は、筒状缶10の筒状胴体11、ボトル状缶20のボトル状胴体21、カップ40として利用するためには、JIS3000系合金に調整される。この場合、回収物のうち、使用済みアルミニウム製筒状缶10、アルミニウム製ボトル状缶20、アルミニウム製キャップ本体29、アルミニウム製カップ40の混合比率等を適切に制御することにより、新地金(純アルミニウム、例えば、純度99.0~99.9質量%のアルミニウム地金)の投入をしないで、JIS合金番号の3000系合金に相当する成分とすることができる。
【0038】
すなわち、前述したように、ボトル状缶20のキャップ23のうち、キャップ本体29の材料にJIS合金番号で3000系アルミニウム合金を用いたキャップ23を装着したボトル状缶20は、ボトル状胴体21及びキャップ本体29ともJIS合金番号で3000系アルミニウム合金であるので、このJIS合金番号で3000系アルミニウム製キャップ本体29、もしくはこのJIS合金番号で3000系アルミニウム製キャップ本体29を有するアルミニウム製ボトル状缶20の回収物のみを溶解する、あるいは、JIS5000系アルミニウム合金からなる蓋12を有する筒状缶10や、JIS5000系アルミニウム合金からなるキャップ本体29を有するボトル状缶20の混合回収物の溶湯に、ボトル状胴体21及びキャップ本体29ともJIS3000系アルミニウム合金からなる回収物を適切な配合で投入することにより、JISの3000系アルミニウム合金に相当する再生塊を得ることができる。
【0039】
アルミニウム製カップ40は、他のアルミニウム製筒状缶10やアルミニウム製ボトル状缶20とは異なり、蓋12やキャップ23のような、胴体11,21とは異なる材質のアルミニウムを含んでいない。したがって、JIS3000系のアルミニウム合金からなる回収物となり、この回収物を用いることにより、JISの3000系アルミニウム合金に相当する再生塊を効率よく製造することができる。
【0040】
このようにして製造された鋳塊には、組成、寸法、個別の製造番号、溶解炉単位のロット番号、製造年月日等の鋳塊を識別するための製品識別情報が鋳塊ごとに生成される。
この製品識別情報は、
図11に示すように、鋳塊(スラブ)50の外表面に貼付される製品シート51に印刷により付され、あるいは、製品シート51への印刷に代えて、もしくは製品シート51への印刷に加えて、コンピュータによる生産管理システムに入力され、記憶部に記憶される。
【0041】
また、再生塊については、この製品識別情報に、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示すリサイクル情報が関連付けられて生成され、製品シート51に印刷によって付され、また、生産管理システムの記憶部に記憶される。リサイクル情報には、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示す情報の他、使用済みアルミニウム製缶の使用率であるリサイクル率等の情報も含まれる。この場合、リサイクル情報は、例えば、文字、記号、図形、電子コードなどのいずれかで構成される。文字、記号、図形で表すことで、消費者が識別でき、さらに人の手による分別に利用できる。バーコードやカルラコードなどの電子コードであれば、機械で識別でき、選別に利用できる。
【0042】
生産管理システムは、
図5に示すように、コンピュータシステムからなるものであり、入力部、情報処理部、出力部、(外部)記憶部等を有し、製造条件、検査結果など、鋳塊製造に関する各種情報が入力され、記憶部に記憶され、必要に応じて出力部から出力することができる。情報処理部はCPUであり、主記憶部に格納したプログラムに従ってデータの演算を行う。入力部には、キーボード、マウス等の他、光学読み取り器も備えられ、出力部には、紙に印字するプリンター、画面に表示するモニター等が備えられる。情報処理部で処理されたデータは、外部記憶部(単に記憶部とも称す)に記憶され、通信装置により他のシステムに通信できるようになっている。これら入力部、出力部、記憶部、通信装置の周辺機器は、入出力インターフェースを介して情報処理部に接続される。
この生産管理システムは、
図4に示す回収装置、鋳塊製造装置、圧延装置、製缶装置、充填装置のそれぞれに設けられており、通信装置により、相互にデータの通信がなされる。
【0043】
(圧延工程)
次いで、圧延工程では、
図8に示すように、鋳塊製造工程で製造されたアルミニウム製鋳塊(スラブ)を切断、面削、加熱等行って熱間圧延することにより薄く板状に延ばし(熱間圧延工程)、その後、冷間圧延工程、熱処理工程等を経て所定の品質、板厚に仕上げ、スリットしながら(切断工程)所定の幅の圧延材を製造する。この圧延材は、コイル状に巻かれた状態で出荷される。
【0044】
この圧延工程においても、
図5に示したものと同様の生産管理システムが備えられている。この生産管理システムは、入力部、情報処理部、出力部、記憶部等を有し、製造条件、検査結果など、圧延に関する各種情報が入力され、記憶部に記憶され、必要に応じて出力部から出力することができる。入力部には、キーボード、マウス等の他、光学読み取り器も備えられ、出力部には、紙に印字するプリンター、画面に表示するモニター等が備えられる。
【0045】
そして、鋳塊製造工程から受け入れた鋳塊に関する情報を入力部の光学読み取り器等によって読み取り、その鋳塊に応じた製造条件で圧延がなされた後、製造されたコイル状の圧延材55に対して、そのコイルごとに、組成、寸法、個別の製造番号、ロット番号、製造年月日等の圧延材を識別するための製品識別情報が生成される。
【0046】
この製品識別情報は、
図12に示すように、圧延材55のコイルの外表面に貼付される製品シート56に印刷により付される、あるいは、製品シート56への印刷に代えて、もしくは製品シート56への印刷に加えて、コンピュータによる生産管理システムに入力され、記憶部に記憶される。
また、再生塊を用いて製造した圧延材については、この製品識別情報に、使用済みアルミニウム製缶の再生塊を用いて製造されたことを示すリサイクル情報が関連付けられ、製品シートに印刷に付され、また、管理システムの記憶部に記憶される。リサイクル情報には、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示す情報の他、使用済みアルミニウム製缶の使用率であるリサイクル率等の情報も含まれる。
【0047】
(製缶工程)
製缶工程においてアルミニウム製缶を製造するには、
図9に示すように、それぞれアルミニウム製圧延材55を絞り成形して比較的浅いカップを形成して(カップ成形工程)、そのカップにさらに絞りしごき加工を施して有底円筒体を成形する(円筒体成形工程)。さらに、各形状に応じた端部成形工程が行われる。
この端部成形工程は、筒状缶10であれば筒状胴体11の開口にフランジ等が形成される。ボトル状缶20であれば有底円筒体をボトル状の形に成形したボトル状胴体21の口部22にネジ部等が形成される。カップ40であれば有底円筒体を底部側から開口部にかけて徐々に拡径してテーパー状胴体46に形成した後、開口部42にカール部43が成形される。この製造の過程で外面に印刷と塗装とが行われる。
【0048】
この製缶工程において製造されたアルミニウム製缶のうち、筒状缶10の筒状胴体11及びボトル状缶20のボトル状胴体21は、
図13に示すように、複数ずつパレット60の上に、仕切り板61を介して複数段に積載され、シュリンクフィルム62で梱包された状態で出荷される。筒状缶10の蓋12やボトル状缶20のキャップ23は、それぞれ蓋成形工程、キャップ成形工程により製造され、それぞれ複数枚あるいは複数個単位で梱包される。また、テーパー状のカップ40は、複数ずつスタックされた状態で梱包される。
【0049】
この製缶工程においても、
図5と同様の生産管理システムが備えられ、製造されるアルミニウム製缶に対して、その梱包単位(筒状缶10の筒状胴体11及びボトル状缶20のボトル状胴体21においてはパレット60、カップ40や蓋12、キャップ23についてはその梱包体)ごとに、寸法、容量、個別の製造番号、ロット番号、製造年月日等のアルミニウム製缶を識別するための製品識別情報が生成される。
【0050】
この製品識別情報は、パレット60や梱包体の外表面に貼付される製品シート63に印刷により付され、あるいは、製品シート63への印刷に代えて、もしくは製品シート63への印刷に加えて、コンピュータによる生産管理システムに入力され、記憶部に記憶される。
また、再生塊から得られた圧延材を用いて製造されたアルミニウム製缶については、この製品識別情報に、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示すリサイクル情報が関連付けられ、製品シート63に印刷に付され、また、管理システムの記憶部に記憶される。リサイクル情報には、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示す情報の他、使用済みアルミニウム製缶の使用率であるリサイクル率等の情報も含まれる。
【0051】
この製缶工程において、アルミニウム製缶の外面の一部の領域に、印刷等により製品識別情報とともにリサイクル情報の一部又は全部を直接付してもよい。リサイクル情報は、文字,記号,図形及び電子コードの少なくとも何れかであってもよい。
図1から
図3に示す各アルミニウム製缶は、外面にリサイクル情報表示部70が形成された例を示している。
【0052】
(充填工程)
アルミニウム製缶のうち、筒状缶10及びボトル状缶20は、
図10に示すように、充填工程において、梱包が解かれた後、充填装置により飲料が充填され、蓋12やキャップ23により密封され、必要に応じて殺菌等の処理がなされる。そして、製造された飲料缶75は、複数本ずつカートンケース76に収容された状態で市場に出荷され、消費者に提供される。
【0053】
この充填工程においても、
図5と同様の生産管理システムが備えられ、製造される飲料缶に対して、寸法、容量、飲料種、個別の製造番号、ロット番号、製造年月日等の飲料缶を識別するための製品識別情報が生成される。この場合、充填後に、筒状胴体11に蓋12が巻き締められ、あるいはボトル状胴体21にキャップ23が取り付けられる。このため、製品識別情報としては、どのアルミニウム製缶を用いたかを示す情報も含まれ、飲料に関する情報と筒状胴体11及び蓋12に関する情報、あるいは飲料に関する情報とボトル状胴体21及びキャップ23に関する情報とが、それぞれセットにして生成される。
【0054】
この製品識別情報は、その一部又は全部が、その飲料缶75に個別に印字され、又は
図14に示すようにカートンケース76の外表面に貼付される製品シート77に印刷により付され、あるいは、製品シート77への印刷に代えて、もしくは製品シート77への印刷に加えて、コンピュータによる生産管理システムに入力され、記憶部に記憶される。
【0055】
また、再生塊から得られたアルミニウム製缶を用いて製造された飲料缶については、この製品識別情報に、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示すリサイクル情報が関連付けられ、飲料缶に印字され、又は製品シート77に印刷に付され、また、管理システムの記憶部に記憶される。リサイクル情報には、使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたことを示す情報の他、筒状胴体と蓋、又は筒状ボトル状缶とキャップのそれぞれについての使用済みアルミニウム製缶の使用率であるリサイクル率等の情報も含まれる。
なお、リサイクル情報としては、リサイクル品(再生製品)を用いて製造された製品であることがわかればよく、必ずしもリサイクル率を含まなくてもよい。
【0056】
なお、アルミニウム製缶のうち、カップ40は、スタジアムやイベント会場、映画館、特定の飲食店などの商業施設で梱包が解かれ、飲料を入れて消費者に提供される。
そして、市場に供された飲料缶は、消費者の使用後に、使用済みアルミニウム缶として回収され、鋳塊製造工程のアルミニウム材料として再び利用される。
【0057】
以上のように、各工程において、リサイクル情報を製品識別情報と関連付けて生成しているので、後続の工程では、前工程で生成された製品識別情報を受け入れ検査等の際に入力部で読み取り、その際に、情報処理部において、この製品識別情報に関連付けられているリサイクル情報を確認し、その製品がリサイクル品であることがリサイクル情報から判別された場合には、当該工程でもリサイクル品であることを表示部に注意喚起表示するなどにより、工程管理者にリサイクル品として製造することを促し、その出荷時に、製品識別情報にリサイクル情報を関連付けて生成する。
【0058】
このような製品識別情報とリサイクル情報とを工程ごとに生成することにより、そのリサイクル情報をもとに間違いなく、前工程の再生製品を用いて自工程の再生製品を製造することができる。このリサイクル情報により各工程においてリサイクル意識が高まり、例えば、鋳塊製造工程において、使用済みアルミニウム製缶の種類を適切に制御して、溶湯への新地金の投入を抑制するなど、リサイクル率を向上させることも可能になる。
【0059】
また、各工程において、製品識別情報に関連付けてリサイクル情報を生成しているので、そのリサイクル情報を確認することにより、その製品がリサイクル品(再生製品)であることを証明することができ、各製造工程において、また、飲料缶の消費者に対しても、リサイクル品の利用を促すことができ、社会全体としてリサイクルを促進し、リサイクル率の向上を図ることができる。
【0060】
図15は、鋳塊製造工程から充填工程における製品識別情報の例を示している。これら製品識別情報は、各工程の生産管理システムの記憶部に記憶される他、製品シートとして出力される。
図15の各枠の中の一例の識別情報が、それぞれの製品シートに印刷等により付される。なお、図示例では、鋳塊製造工程と圧延工程とを同じ事業者が行う場合を想定している。
まず、鋳塊製造工程では、製造される鋳塊ごとに、鋳塊No.の製品識別情報が生成される。
図15では2つの鋳塊(A00001及びA00002)の製品識別情報が記載されている。また、これら鋳塊(スラブ)の製品識別情報にはリサイクル率からなるリサイクル情報が関連付けて生成されている。リサイクル率は、前述したように、(使用済みアルミニウム缶+加工屑)の量/(使用済みアルミニウム缶+加工屑+新地金)の総量の百分率で表される。
このようにして製造された鋳塊は、この製品識別情報を付して次の圧延工程に送られる。
【0061】
圧延工程では、受け入れた鋳塊の製品識別情報(鋳塊No.)を読み取り、鋳塊を圧延する。製造された圧延材のコイルには、圧延工程としての製品識別情報としてコイルNo.を生成するが、使用した鋳塊を特定するために、自身の製品識別情報(コイルNo.)を、受け入れた鋳塊の製品識別情報(鋳塊No.)と関連付けて生成する。
図15に示す例では、A00001とA00002の各鋳塊からそれぞれ4つのコイルが製造され、各コイルNo.は、圧延工程としての独自の符号として、例えば符号Bを最初に付して、鋳塊番号の6桁、その次にコイルの番号を付して生成されている。こうすることで、コイルの製品識別情報に鋳塊の製品識別情報が関連付けられ、鋳塊の製品識別情報(鋳塊No.)に関連付けられていたリサイクル情報をコイルの製品識別情報にも関連付けることができる。
【0062】
なお、
図15に示す例では、鋳塊製造工程と圧延工程とを一つの事業者によって行われる例としているが、両工程を異なる事業者によって行う場合は、
図16に示すように、鋳塊製造工程で製造される各鋳塊に、製品識別情報とリサイクル情報が関連付けて生成する。そして、これを圧延工程で受け入れた際に、鋳塊の製品識別情報に圧延事業者独自の符号を追加して、受け入れ検査等が終了した鋳塊であることを区別する。例えば、鋳塊No.がA00001である場合、圧延工程で受け入れた後に符号Bを追加して、鋳塊No.をBA00001として、受け入れ前の鋳塊と区別する。
【0063】
次いで製缶工程においては、圧延工程から受け入れたコイルを受け入れる際に、コイルの製品識別情報(コイルNo.)を読み取って製缶工程の事業者としての符号(図示例の場合は符号C)を付加した後に、アルミニウム製缶を製造し、パレットに積載してシュリンクフィルムにより梱包する。その際に、パレットごとに、製缶工程の製品識別情報としてパレットNo.を生成する。例えば、1つのコイルから60パレット分のアルミニウム製缶が製造され、各パレットNo.には、パレットとしての符号として、例えば符号Eを追加し、パレットごとに番号を付す。このパレットの製品識別情報には、どのコイルを使用したかの情報として、コイルの製品識別情報(コイルNo.)が関連付けられる。
【0064】
このようにして、製缶工程で製造されたアルミニウム製缶には、パレットごとに、当該製缶工程における製品識別情報(パレットNo.)と、その前工程の圧延工程における製品識別情報(コイルNo.)とが関連付けて生成されるが、前工程の製品識別情報にはさらにその前の鋳塊工程における製品識別情報(スラブNo.)が関連付けられているため、その鋳塊工程における製品識別情報に関連付けられているリサイクル情報(この場合はリサイクル率)も関連付けられていることになる。
【0065】
したがって、製造されたアルミニウム製缶は、そのパレットの製品識別情報(パレットNo.)を読み取ることにより、どの程度のリサイクル率で製造されているかを知ることができる。
次いで、充填工程では、飲料を充填されたアルミニウム製缶がカートンケースに収容され、各カートンケースにその製品識別情報であるカートンケースNo.が付される。パレットNo.と同様、カートンケースNo.は、充填工程で製造された飲料缶のカートンケースごとの製品識別情報であるが、鋳塊No.から一連の製品識別情報が関連付けられている。
【0066】
図15の充填工程で生成されている製品識別情報として、例えば「FGECBA00001000101001」は、先頭の「F」が充填工程を識別する符号(識別情報)、次の「G」が充填工程で受け入れたパレットであることを識別する符号(識別情報)、「E」は製缶工程を識別する符号(識別情報)、「C」は製缶工程で受け入れたコイルであることを識別する符号(識別情報)、「B」は圧延工程を識別する符号(識別情報)、「A」は鋳塊製造工程を識別する符号(識別情報)であり、続く「0001」は鋳塊製造工程において鋳塊ごとに生成された符号(識別情報)、「0001」は圧延工程でコイルごとに生成された符号(識別情報)、「01」が製缶工程においてパレットごとに生成された符号(識別情報)、最後の「001」が充填工程においてカートンケースごとに生成された符号(識別情報)を示している。
【0067】
なお、製缶工程で製造された各アルミニウム製缶に、個々に製品識別情報として缶No.を生成することも可能である。
図17は、各アルミニウム製缶に製品識別情報(缶No.)を生成した例である。この製品識別情報をアルミニウム製缶に付す場合は、印刷等により付すことができる。ただし、個々のアルミニウム製缶に製品識別情報を付す場合、その後の充填工場で異なる製品識別情報の缶が混在し易く、各パレット単位で製品識別情報を生成する方が、管理が容易である。
アルミニウム製缶ごとに製品識別情報を生成した上で、さらにパレットごとに製品識別情報を生成することも可能である。その場合、各アルミニウム製缶には、一般消費者向けにリサイクル品であることがわかる識別情報とするとよい。環境意識の高い一般消費者に向けた商品として、付加価値を高めることができ、さらなる環境意識の向上が期待できる。
【0068】
このように、鋳塊製造工程で製造された鋳塊に製品識別情報と関連付けてリサイクル情報を生成していることで、後続の工程では、その製品識別情報及びリサイクル情報を確認しながら製造することができ、その製品が再生製品であることがリサイクル情報から判別された場合には、当該工程でも再生製品として製造することが促され、その出荷時に、リサイクル情報を関連付けて製品識別情報を生成し、後続の工程に受け渡すことができる。
したがって、そのリサイクル情報をもとに間違いなく、前工程の再生製品を用いて自工程の再生製品を製造することができ、リサイクル率の向上をも図ることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 筒状缶
11 筒状胴体
12 蓋
13 底部
14 胴部
18 タブ
20 ボトル状缶
21 ボトル状胴体
22 口部
23 キャップ
29 キャップ本体
40 カップ
42 開口部
43 カール部
46 テーパー状胴部
50 アルミニウム製鋳塊(スラブ)
51 製品シート
55 圧延材
56 製品シート
60 パレット
63 製品シート
70 リサイクル情報表示部
75 飲料缶
76 カートンケース
77 製品シート