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特開2024-7441コンクリート用エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂成形体および該成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007441
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】コンクリート用エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂成形体および該成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/14 20060101AFI20240110BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240110BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20240110BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C04B26/14
C08G59/50
C04B14/04 Z
C04B14/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105868
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022106226
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB07
4J036AB10
4J036AD08
4J036AF06
4J036DC03
4J036DC05
4J036DC06
4J036FA01
4J036JA13
(57)【要約】
【課題】低硬化収縮率であり、充填性(流動性)および硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物であって、耐荷重性(圧縮強度)に優れ、厚くてもクラックが生じ難い成形体を形成することができるコンクリート用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、グリシジル基を2つ以上有する反応性希釈剤(B)、体質顔料(C)、および、エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)を含有し、顔料容積濃度(PVC)が40%以上であり、B型粘度計を用いて測定した23℃における粘度が5~50Pa・sである、コンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、グリシジル基を2つ以上有する反応性希釈剤(B)、体質顔料(C)、および、エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)を含有し、
顔料容積濃度(PVC)が40%以上であり、
B型粘度計を用いて測定した23℃における粘度が5~50Pa・sである、コンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)が、トリエチレンテトラミンを含む、請求項1に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記体質顔料(C)がウォラストナイトを含む、請求項1に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記体質顔料(C)がけい砂を含む、請求項1に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
流し込み用である、請求項1に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物から形成されたエポキシ樹脂成形体。
【請求項7】
厚さが30mm以上である、請求項6に記載のエポキシ樹脂成形体。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物を施工箇所に流し込んで成形体を形成する工程を含む、エポキシ樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂成形体および該成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、数多くの構造物や施設など様々な用途で使用されているが、環境温度の変化等に伴う膨張や収縮の影響による劣化やコンクリートが使用された周辺部位の状況変化(例:地盤沈下)により、コンクリート自体やコンクリートが使用された周辺部位の補修等が必要となることがある。
【0003】
このようなコンクリート自体を補修する組成物として、特許文献1には、強化繊維フィラーを含むエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-104542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート自体やコンクリートが使用された周辺部位の補修等の際には、補修に用いられる補修用材料を、施工箇所に流し込んで成形体(硬化物)を形成することが多い。しかしながら、従来の補修用材料は、この流し込みの際の充填性(流動性)が十分でない場合があった。
また、コンクリート自体やコンクリートが使用された周辺部位の補修等の際には、厚い成形体(硬化物)を形成することが必要になる場合も多いが、従来の補修用材料を用いてこのように厚い成形体(硬化物)を形成すると、得られる成形体(硬化物)にはクラックが生じることが分かった。コンクリートには凹凸があり、該凹凸部分がアンカーとなり、その場に留まろうとする部分と、補修用材料の硬化の際の収縮応力により引っ張られる部分との間に内部応力が発生し、特にクラックが発生しやすいと考えられる。
さらに、前記補修用材料には、低硬化収縮率であり、硬化性等に優れることが求められ、前記成形体(硬化物)には、その用途によって、耐荷重性(圧縮強度)等が求められるが、従来の補修用材料および該材料から形成された成形体(硬化物)は、これらの要求特性をバランスよく満たさなかった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、低硬化収縮率であり、充填性(流動性)および硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物であって、耐荷重性(圧縮強度)に優れ、厚くてもクラックが生じ難い成形体を形成することができるコンクリート用エポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成例は、以下のとおりである。
【0008】
[1] エポキシ樹脂(A)、グリシジル基を2つ以上有する反応性希釈剤(B)、体質顔料(C)、および、エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)を含有し、
顔料容積濃度(PVC)が40%以上であり、
B型粘度計を用いて測定した23℃における粘度が5~50Pa・sである、コンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)が、トリエチレンテトラミンを含む、[1]に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【0010】
[3] 前記体質顔料(C)がウォラストナイトを含む、[1]または[2]に記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
[4] 前記体質顔料(C)がけい砂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【0011】
[5] 流し込み用である、[1]~[4]のいずれかに記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物。
【0012】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物から形成されたエポキシ樹脂成形体。
[7] 厚さが30mm以上である、[6]に記載のエポキシ樹脂成形体。
【0013】
[8] [1]~[5]のいずれかに記載のコンクリート用エポキシ樹脂組成物を施工箇所に流し込んで成形体を形成する工程を含む、エポキシ樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低硬化収縮率であり、充填性(流動性)および硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供することができる。このため、本発明によれば、流し込み等の方法で、所望の場所に(機器などを固定等するためのわずかな隙間であっても)、成形体を形成できる。
また、本発明によれば、耐荷重性(圧縮強度)に優れ、厚く(例:厚さ60mm)ても、さらには大容積(例:幅300mm×長さ600mm×厚さ60mm)であってもクラックが生じ難い成形体を形成することができる。特に、夏季等の高温下で厚い成形体を形成する場合には、クラックが発生しやすいことが分かったが、本発明によれば、このような高温下で厚い成形体を形成する場合であっても、クラックが生じ難い成形体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪コンクリート用エポキシ樹脂組成物≫
本発明に係るコンクリート用エポキシ樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)、グリシジル基を2つ以上有する反応性希釈剤(B)、体質顔料(C)、および、エーテル基を有さないアルキレンポリアミン(D)を含有し、顔料容積濃度(PVC)が40%以上であり、B型粘度計を用いて測定した23℃における粘度が5~50Pa・sである。
【0016】
前記「コンクリート用」とは、本組成物(本組成物から形成される成形体)の少なくとも一部がコンクリートに接するように用いられることをいう。
また、本発明における「コンクリート」とは、特に制限されず、従来より一般的にコンクリートと呼ばれる広義のコンクリート(骨材を結合剤で固めた材料)のことをいう。
【0017】
本組成物は、コンクリート自体やコンクリートが使用された周辺部位の補修に用いられるコンクリート補修用エポキシ樹脂組成物として好適に用いられる。
また、本組成物は、施工箇所に流し込んで成形体(硬化物)を形成する流し込み用のエポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
【0018】
本組成物は、前記効果を奏するため、コンクリート劣化部の補修、レール(例:ジブクレーンの走行レール)を水平にするためのレベル調整やかさ上げ等に好適に用いられる。
また、本組成物によれば、耐荷重性(圧縮強度)に優れる成形体を形成することができるため、本組成物は、機器などを固定(据え付け)等するために用いることもできる。具体的には、船舶機器(例:発電用エンジン、甲板機器(例:ウインチ、ウインドラス)などの船舶航行の補助機器である補機、船上のクレーンのラック)や、陸上ウインチ、ポンプユニットなどを固定(据え付け)するために用いることができる。
【0019】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、通常、エポキシ樹脂(A)を含有する主剤成分と、アルキレンポリアミン(D)を含有する硬化剤成分とを含む2成分型以上の組成物である。また、必要により、本組成物は、3成分型以上の組成物であってもよく、特に、本組成物が、けい砂等の骨材(体質顔料)を含む場合、前記主剤成分と、前記硬化剤成分と、骨材(体質顔料)を含む第3剤とを含む3成分型(以上)の組成物であることが好ましい。
これら主剤成分、硬化剤成分および第3剤等は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に一緒に混合して用いられる。
【0020】
本組成物のB型粘度計を用いて測定した23℃における粘度は、5~50Pa・sであり、好ましくは6.5~40Pa・s、より好ましくは8~30Pa・sである。
このような粘度を有する本組成物は、高い流動性を示し、流し込み等の方法で成形体を形成することが容易であるため好ましい。
なお、前記粘度は、本組成物を調製した際(例:主剤成分と硬化剤成分とを混合した際)の粘度のことをいう。
【0021】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)としては特に制限されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、特開平11-343454号公報や特開平10-259351号公報に記載の非タール系エポキシ樹脂が挙げられる。
本組成物に用いるエポキシ樹脂(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0022】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマー、オリゴマー、およびこれらのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中でも、機械的強度(例:圧縮強度や曲げ強度)に優れ、さらに汎用性が高い等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂(A)としては、より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられ、これらの水素添加反応(以下「水添」ともいう。)物、脂肪酸変性物、樹脂中の水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化物等であってもよい。
【0024】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、分子内にビスフェノール構造を有し、かつ、2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、および、そのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類の縮重合物が挙げられる。
【0025】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、硬化性等の点から、好ましくは150~1,000、より好ましくは180~500である。
なお、本明細書中のエポキシ当量は、エポキシ樹脂(A)の固形分のエポキシ当量のことをいい、JIS K 7236:2001に基づいて算出される。
【0026】
エポキシ樹脂(A)の固形分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)で測定した重量平均分子量は、好ましくは350~20,000である。
【0027】
エポキシ樹脂(A)のE型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した粘度(25℃)は、好ましくは1,500~120,000mPa・s、より好ましくは3,000~30,000mPa・sである。
【0028】
本組成物中のエポキシ樹脂(A)の固形分の含有量は、低硬化収縮率であり、充填性(流動性)および硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができ、圧縮強度に優れ、厚くてもクラックが生じ難い成形体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~20質量%である。
【0029】
<反応性希釈剤(B)>
前記反応性希釈剤(B)としては、グリシジル基を2つ以上有する反応性希釈剤であれば特に制限されない。
低粘度の反応性希釈剤(B)となりやすい等の点から、反応性希釈剤(B)中のグリシジル基の数は、好ましくは2つまたは3つであり、より好ましくは2つである。
本組成物に用いる反応性希釈剤(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0030】
反応性希釈剤(B)としては、E型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した粘度(25℃)が500mPa・s以下のエポキシ化合物であることが好ましい。
【0031】
反応性希釈剤(B)としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、モノまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基の炭素数1~5、例:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0032】
本組成物中の反応性希釈剤(B)の固形分の含有量は、硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0033】
<体質顔料(C)>
前記体質顔料(C)としては特に制限されず、従来公知の体質顔料を用いることができる。
本組成物に用いる体質顔料(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0034】
体質顔料(C)としては、例えば、シリカ、タルク、マイカ、カリ長石、ウォラストナイト、カオリン、クレー、ベントナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、けい砂(二酸化ケイ素を主成分とした石英砂(例:JIS G 5901:2016やJIS Z 8901:2006等に記載のけい砂))が挙げられる。
これらの中でも、圧縮強度および曲げ強度に優れる成形体を容易に形成することができるため、体質顔料(C)としては、ウォラストナイトを含むことが好ましい。
また、厚くてもクラックが生じ難い成形体を容易に形成することができる等の点から、体質顔料(C)としては、けい砂を含むことが好ましい。
なお、体質顔料(C)として、ウォラストナイトのような無機系繊維フィラーや炭素繊維のような有機系繊維フィラーを用いてもよいが、一般的に繊維フィラーは比表面積が大きいため、吸油量が大きい。特に、吸油量が大きい有機系繊維フィラーを含有すると、得られる組成物が増粘し、流動性が損なわれる傾向にある。このため、本組成物は、有機系繊維フィラーを含まないことが好ましい。
【0035】
体質顔料(C)の吸油量は、好ましくは40mL/100g以下であり、より好ましくは30mL/100g以下である。
吸油量が前記範囲にある体質顔料(C)を用いると、該体質顔料(C)を多く用いても、増粘し難く、低粘度で充填性(流動性)に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができる。
なお、体質顔料(C)の吸油量は、JIS K 5101-13-2:2004に準拠して測定することができる。
【0036】
体質顔料(C)のJIS K 5101-14-1:2004に準拠して測定した平均粒子径は特に限定されないが、圧縮強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、好ましくは30~1,000μm、より好ましくは50~800μmである。
【0037】
体質顔料(C)は、本組成物中の顔料容積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)が、下記範囲となるような量で用いることが好ましい。
本組成物中のPVCは、厚くても、さらには大容積であってもクラックが生じ難い成形体を容易に形成することができる等の点から、40%以上であり、好ましくは42.5%以上、より好ましくは45%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。
【0038】
前記PVCとは、本組成物中の固形分(不揮発分)の容積に対する、前記体質顔料(C)等を含む、すべての顔料の合計の体積濃度のことをいい、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の容積合計×100/本組成物中の固形分の容積
【0039】
なお、本明細書において、本組成物の固形分は、JIS K 5601-1-2:2008(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従って得られる加熱残分を意味する。また、本組成物の固形分は、用いる原料における溶媒および分散媒を除いた量として算出することもできる。
【0040】
前記本組成物中の固形分の容積は、本組成物の固形分の質量および真密度から算出することができる。前記固形分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
前記顔料の容積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、本組成物の固形分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することもできる。
【0041】
本組成物がウォラストナイトを含む場合、その含有量は、圧縮強度および曲げ強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%である。
【0042】
また、本組成物がけい砂を含む場合、その含有量は、厚くてもクラックが生じ難い成形体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。
【0043】
<アルキレンポリアミン(D)>
前記アルキレンポリアミン(D)としては、エーテル基(-O-)を有さないアルキレンポリアミンであれば特に制限されない。
本組成物に用いるアルキレンポリアミン(D)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0044】
アルキレンポリアミン(D)としては、例えば、下記式(1)~(3)で表される化合物が挙げられる。
N-R-NH ・・・(1)
[式(1)において、Rは、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。]
N-(C2mNH)H ・・・(2)
[式(2)において、mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。]
N-(CH-NH ・・・(3)
[式(3)において、Rは独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのRは炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。]
【0045】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0046】
前記式(2)で表される化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミンが挙げられる。
【0047】
前記式(3)で表される化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミンが挙げられる。
【0048】
アルキレンポリアミン(D)としては、前記式(1)~(3)で表される化合物以外の他の化合物を用いてもよく、該他の化合物としては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミンが挙げられる。
【0049】
アルキレンポリアミン(D)としては、硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができ、圧縮強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、前記式(2)で表される化合物を含むことが好ましく、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンを含むことがより好ましい。
【0050】
アルキレンポリアミン(D)の活性水素当量は、硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができ、圧縮強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10~1,000、より好ましくは20~400である。
なお、該活性水素当量の値は、アルキレンポリアミン(D)の固形分当たりの活性水素当量のことをいう。
【0051】
本組成物中のアルキレンポリアミン(D)の固形分の含有量は、硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができ、圧縮強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~30質量%である。
【0052】
硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を容易に得ることができ、圧縮強度に優れる成形体を容易に形成することができる等の点から、アルキレンポリアミン(D)は、下記式(4)で算出される反応比が、好ましくは0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1となるような量で用いることが望ましい。
【0053】
反応比={(アルキレンポリアミン(D)の配合量(固形分)/アルキレンポリアミン(D)の活性水素当量)+(エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の官能基当量)}/{(エポキシ樹脂(A)の配合量(固形分)/エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量)+(アルキレンポリアミン(D)に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/アルキレンポリアミン(D)に対して反応性を有する成分の官能基当量)} ・・・(4)
【0054】
ここで、前記式(4)における「アルキレンポリアミン(D)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、反応性希釈剤(B)およびシランカップリング剤が挙げられ、また、「エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。該シランカップリング剤としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、該反応性基の種類によって、該シランカップリング剤がエポキシ樹脂(A)に対して反応性を有するのか、アルキレンポリアミン(D)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分の固形分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0055】
<添加剤>
本組成物は、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)~(D)以外の添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、前記(C)以外のその他の顔料、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、表面調整剤(レベリング剤)、前記(D)以外の硬化剤、シランカップリング剤、可塑剤、水・溶剤が挙げられる。
前記添加剤はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0056】
[その他の顔料]
前記その他の顔料としては、例えば、着色顔料が挙げられる。
該着色顔料としては、例えば、従来公知の、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0057】
着色顔料を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。
【0058】
[顔料分散剤]
前記顔料分散剤としては特に制限されないが、本組成物中の顔料を均一に分散させ、安定な分散体を調製することができる分散剤であることが好ましい。
前記顔料分散剤としては、公知の有機系(例:脂肪族アミンまたは有機酸類)または無機系の各種顔料分散剤が挙げられる。
【0059】
顔料分散剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%である。
【0060】
[レオロジーコントロール剤]
前記レオロジーコントロール剤(沈降防止剤または揺変剤ともいう。)は特に制限されないが、本組成物中の顔料等の沈降を抑制し、その貯蔵安定性を向上させることができる材料であることが好ましい。
前記レオロジーコントロール剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、水添ヒマシ油ワックスおよびアマイドワックスの混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、鉱物粘土系粘性調整剤、ウレタン会合系粘性調整剤、アクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤等、従来公知のレオロジーコントロール剤を使用できる。
【0061】
レオロジーコントロール剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。
【0062】
[消泡剤]
圧縮強度に優れる成形体を得る等の点から、本組成物および該組成物から得られる成形体には、気泡が存在していないことが好ましい。このため、本組成物には、消泡剤を配合することが好ましい。
該消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤などが挙げられ、それぞれ水系、溶剤系、無溶剤系が存在する。
これらの中でも、成形体を形成する際の収縮を抑えるために無溶剤のシリコーン系消泡剤が好ましい。
【0063】
消泡剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物100質量%に対して、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0064】
[表面調整剤]
前記表面調整剤としては特に制限されないが、例えば、フッ素系、アクリル系、シリコーン系等の各種表面調整剤が挙げられる。
表面調整剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.005~1.5質量%、より好ましくは0.01~1.0質量%である。
【0065】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、これらに配合する各成分を混合(混練)することで、調製することができ、この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。
3成分型以上の本組成物は、主剤成分、硬化剤成分および必要に応じて用いられる第3剤等を混合(混練)することで、調製することができる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0066】
前記主剤成分の調製時や主剤成分と硬化剤成分等との混合時に、空気が取り込まれると、得られる成形体内に気泡が残り、クラック等の原因となり得る。このため、主剤成分の調製時に脱泡工程を行ったり、主剤成分と硬化剤成分等との混合時に低回転で撹拌を行うこと等により、組成物中への空気の取り込み量を減らすことが好ましい。
【0067】
≪エポキシ樹脂成形体≫
本発明に係るエポキシ樹脂成形体(以下「本成形体」ともいう。)は、前記本組成物から形成される。
【0068】
本成形体は、具体的には、本組成物を、例えば、流し込み工法、押出成形、射出成形、RIM成形することで形成でき、また、本組成物を、例えば、スプレー、ローラーおよび刷毛等で、本成形体を形成したい箇所(以下「施工箇所」ともいう。)に塗布し、硬化させることで形成することもできる。
これらの中でも、本組成物は充填性(流動性)に優れるため、該本組成物を施工箇所に直接流し込み、硬化させることで本成形体を形成することが好ましい。この方法によれば、所望の箇所に直接成形体を形成することができ、また狭い隙間にも十分に成形体を充填させることができるため好ましい。
流し込みにより本成形体を形成する際には、本組成物が所望の場所から流れ出ることを抑制するために、必要により型枠等を用いてもよい。
【0069】
本組成物は硬化性に優れるため、環境温度(施工箇所温度)下で、例えば16時間~3日間養生することで成形体(硬化物)を形成することができる。
また、本組成物によれば、夏季等の高温下、具体的には、30~50℃、さらには40~50℃となるような環境温度(施工箇所温度)下においても、クラックが生じ難い成形体を形成することができる。
【0070】
本成形体の厚さ、形状等は特に制限されず、本成形体を形成したい箇所の厚さ、形状等に応じて適宜選択すればよいが、本組成物によれば、厚さが30mm以上、さらには45mm以上、特に60mm程度の成形体を形成する場合であっても、クラックが生じ難い成形体を形成することができる。
【0071】
本成形体は、船舶、鉄道、建築物、産業機器などコンクリート部材を有するものに好適に使用することができ、特に、これらのコンクリート劣化部の補修、レール(例:ジブクレーンの走行レール)を水平にするためのレベル調整やかさ上げ等に好適に用いられる。また、本成形体は、機器などを固定(据え付け)等するため、具体的には、船舶機器(例:発電用エンジン、甲板機器(例:ウインチ、ウインドラス)などの船舶航行の補助機器である補機、船上のクレーンのラック)や、陸上ウインチ、ポンプユニットなどを固定(据え付け)するために用いることもできる。
本成形体をこれらに用いる場合、例えば、レール(例:ジブクレーンの走行レール)を水平にするためのレベル調整やかさ上げ等に用いる場合、レールを所望の位置に調整し、型枠等を形成した後、型枠等の中に本組成物を流し込んで硬化させることで本成形体を形成する方法が挙げられる。
【実施例0072】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0073】
[実施例1および比較例8]
表1の主剤成分の欄に記載の各成分を、表1に記載の量(数値)に従って、容器に加え、ハイスピードディスパーを用いて撹拌し、主剤成分を調製した。
得られた主剤成分に骨材として、表1に記載の量(数値)のけい砂を加えハイスピードディスパーを用いて分散させた後、同じく表1に記載の硬化剤成分を表1に記載の量(数値)で加えて撹拌することでエポキシ樹脂組成物を調製した。
なお、表1に記載の各成分の説明を表2に示す。表1中の主剤成分、硬化剤成分および骨材を構成する各成分の数値は、それぞれ質量部を示す。
【0074】
[実施例2および比較例1~7,9~10]
表1の主剤成分の欄に記載の各成分を、表1に記載の量(数値)に従って、容器に加え、ハイスピードディスパーを用いて混合し、主剤成分を調製した。得られた主剤成分に表1に記載の硬化剤成分を表1に記載の量(数値)で加えて撹拌することでエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0075】
<粘度>
調製したエポキシ樹脂組成物の23℃における粘度を、B型粘度計(型式:BII型粘度計、東機産業(株)製)を用い、4号ローターを使用して測定した。結果を表1に示す。
【0076】
<硬化収縮率>
JIS K 5600-2-4:2014「塗料一般試験法-塗料の性状・安定性-密度」において規定される手順に基づいて、金属製ピクノメータ(容量:100ml)を用いて、調製したエポキシ樹脂組成物の密度d1を算出した。
次いで、23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したエポキシ樹脂組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ25mmのアルミニウム製の型枠に流し込んで3日間放置し硬化養生させることで硬化物を作製した。硬化後、JIS K 7112:1999「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」において規定される水中置換法により、作製した硬化物の密度d2を算出した。
そして、密度d1およびd2を用いて、下式により、エポキシ樹脂組成物の硬化収縮率を算出した。結果を表1に示す。
硬化収縮率(%)={(d2-d1)/d2}×100
【0077】
<硬化性>
調製したエポキシ樹脂組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ40mmのアルミニウム製の型枠の中に厚さ(高さ方向の長さ)が30mmになるように流し込み、流し込んだエポキシ樹脂組成物を23℃で24時間養生した。養生後の、エポキシ樹脂組成物を指触にて確認し、下記評価基準に基づき硬化性を評価した。結果を表1に示す。
○:エポキシ樹脂組成物表面を指で押した際に指に該組成物が付着しない
×:エポキシ樹脂組成物表面を指で押した際に指に該組成物が付着する
【0078】
<反応温度>
23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したエポキシ樹脂組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ40mmのアルミニウム製の型枠に流し込んで、データロガーとK型熱電対を使用して、流し込んだエポキシ樹脂組成物中心の温度を経時で測定し、最高到達温度を反応温度として評価した。結果を表1に示す。
【0079】
<バーコル硬度>
23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したエポキシ樹脂組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ25mmのアルミニウム製の型枠に流し込んで24時間放置し硬化養生することで硬化物を作製した。硬化後、型枠から脱型し、バーコル硬度計を硬化物表面に強く押し当て、硬度計の数値を読み取りバーコル硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
<圧縮強度>
調製したエポキシ樹脂組成物を用い、JIS K 7181:2011「プラスチック-圧縮特性の求め方」において規定される手順に基づいて、圧縮強度を測定した。
具体的には、23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したエポキシ樹脂組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ4mmのアルミニウム製の型枠に流し込み、流し込んだ組成物の上からアルミニウム製の板を被せた。その後、60℃の環境下で1週間硬化養生することで硬化物を作製した。硬化後、型枠から脱型し、寸法が幅4mm×長さ10mm×厚さ10mmの角柱となるように切り出すことで試験体を作製した。作製した試験体の厚さ方向に荷重をかけながら、1mm/minの圧縮速度で圧縮し、試験体が破壊した時の試験荷重を試験体の面積で除して圧縮強度を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
<クラック発生>
23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したエポキシ樹脂組成物を16時間養生した。養生後のエポキシ樹脂組成物を、50℃に設定した幅300mm×長さ600mm×高さ300mmのコンクリート製の型枠に、得られる硬化物の厚さ(高さ方向の長さ)が30mmになるように流し込んで3日間放置し硬化養生することで硬化物を作製した。作製した硬化物にクラックが生じているか否かを目視で確認した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1、2および比較例1~10で調製したエポキシ樹脂組成物を、施工箇所温度を40℃、45℃または50℃に設定した環境下で、幅300mm×長さ600mm×高さ300mmのコンクリート製の型枠に、厚さ(高さ方向の長さ)が30mm、45mmまたは60mmになるように流し込んで3日間放置し硬化養生させることで硬化物を作製した。
作製した硬化物の外観を目視で確認し、クラック等の発生がなく、外観が良好な場合を○とし、クラックが発生した場合を×として、評価した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】