(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074428
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/00 20060101AFI20240524BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240524BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240524BHJP
B41J 29/17 20060101ALI20240524BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B65H5/00 B
G03G15/00 446
G03G21/00 318
B41J29/17
G03G21/16 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185556
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 利幸
【テーマコード(参考)】
2C061
2H072
2H134
2H171
3F101
【Fターム(参考)】
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061CM07
2C061CM11
2H072CA01
2H072EA16
2H072JA02
2H134GA08
2H134GB05
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2H171FA17
2H171FA22
2H171GA01
2H171GA06
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2H171JA10
2H171JA16
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2H171JA48
2H171QA02
2H171QA08
2H171QB03
2H171QB16
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2H171QC03
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2H171SA10
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2H171WA10
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2H171WA15
3F101AB01
3F101AB09
3F101AB19
3F101LA01
3F101LB01
(57)【要約】
【課題】媒体を搬送するローラの付着物に起因する画像品位の低下を抑制する。
【解決手段】画像形成装置1は、装置本体11と、装置本体11に取り付けられて媒体Mを搬送するピンチローラ(ローラ)57と、装置本体11に対して閉位置と開位置との間で回動可能なカバー(回動部材)20とを備える。フロントカバー20は、閉位置にあるときにピンチローラ57に当接して付着物を除去する清掃部材41と、清掃部材41とピンチローラ57との当接位置から離間し、清掃部材41によって除去された付着物を収容可能に配置された第1の収容部31と、開口部25を介して第1の収容部31と連通し、付着物を収容可能に設けられた第2の収容部32とを有する。フロントカバー20が閉位置から開位置に回動すると、付着物が第1の収容部31から第2の収容部32に移動する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部を含む装置本体と、
前記装置本体に取り付けられて媒体を搬送するローラと、
前記装置本体に対して閉位置と開位置との間で回動軸を中心として回動可能な回動部材と
を備え、
前記回動部材は、
前記回動部材が前記閉位置にあるときに前記ローラに当接し、前記ローラから付着物を除去する清掃部材と、
前記清掃部材と前記ローラとの当接位置から離間し、前記清掃部材によって除去された付着物を収容可能に配置された第1の収容部と、
開口部を介して前記第1の収容部と連通し、前記付着物を収容可能に設けられた第2の収容部とを有し、
前記回動部材が前記閉位置から前記開位置に回動すると、前記付着物が前記第1の収容部から前記第2の収容部に移動する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記開口部を介して、前記第2の収容部から前記第1の収容部に前記付着物が移動することを規制する規制部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の収容部は、前記回動部材が前記閉位置にある状態で前記第2の収容部の底面を規定する壁面を有し、
前記規制部は、前記回動部材が前記閉位置にある状態で前記壁面から上方に突出している
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回動部材が前記閉位置にあるときに、前記第1の収容部は、前記第2の収容部よりも下方に位置し、
前記回動部材が前記開位置にあるときに、前記第1の収容部は、前記第2の収容部よりも上方に位置する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃部材は、前記ローラに当接して前記付着物を掻き取るクリーニングブレードである
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の収容部から前記開口部に向けて前記付着物を案内する案内面をさらに備え、
前記案内面は、前記回動部材が前記閉位置にあるときに、前記開口部から前記ローラに向かって下方に傾斜している
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記清掃部材は、前記案内面に取り付けられた基部と、前記基部の前記ローラに近い側の端部で上方に折り曲げられて前記ローラに当接する折り曲げ部とを有するフィルムであり、
前記基部と前記折り曲げ部との間に、前記第1の収容部が形成される
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記回動部材が前記閉位置から前記開位置に移動すると、前記付着物が前記案内面に沿って前記開口部に向かって移動する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記回動部材が前記開位置にあるとき、前記案内面が水平面に対して30度以上の角度をなす
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記清掃部材は、前記基部と前記折り曲げ部とのなす角が小さくなるように弾性変形した状態で、前記ローラに当接している
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記回動部材が前記閉位置にあるとき、前記清掃部材と前記ローラとの当接部は、前記ローラの回転軸よりも上方に位置する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記回動部材は、前記開位置と前記閉位置との間で80度以上回動する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記回動部材は、前記装置本体の一つの側面に設けられた開閉可能なカバーである
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、搬送ローラで搬送した媒体上に、画像を形成する。例えば、特許文献1には、画像形成装置の開閉フレームに、搬送ローラの表面に当接して付着物を掻き取る清掃部材を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-24869号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、搬送ローラから掻き取られた付着物が清掃部材上に堆積するため、堆積量が多くなると、清掃部材から溢れた付着物が媒体に付着し、画像品位が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、媒体を搬送するローラ上の付着物に起因する画像品位の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像形成装置は、装置本体と、装置本体に取り付けられて媒体を搬送するローラと、装置本体に対して閉位置と開位置との間で回動軸を中心として回動可能な回動部材とを備える。回動部材は、回動部材が閉位置にあるときにローラに当接し、ローラから付着物を除去する清掃部材と、清掃部材とローラとの当接位置から離間し、清掃部材によって除去された付着物を収容可能に配置された第1の収容部と、開口部を介して第1の収容部と連通し、付着物を収容可能に設けられた第2の収容部とを有する。回動部材が閉位置から開位置に回動すると、付着物が第1の収容部から第2の収容部に移動する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、清掃部材によってローラから付着物が除去され、第1の収容部に収容される。また、回動部材が閉位置から開位置に回動すると、第1の収容部に収容された付着物が第2の収容部に移動する。そのため、付着物の堆積量が多くなっても、付着物の媒体への付着を防止することができ、画像品位の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の画像形成装置を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態の画像形成装置のフロントカバーが閉位置にある状態とフロントカバーが開位置にある状態を示す斜視図(A),(B)である。
【
図3】第1の実施の形態のフロントカバーを示す斜視図(A)およびフロントカバーの一部を拡大して示す斜視図(B)である。
【
図4】
図3のフロントカバーの媒体ガイドを示す斜視図である。
【
図5】
図3のフロントカバーが開位置にあるときのフロントカバーおよび装置本体を示す斜視図(A)、並びに、搬送ローラ、ピンチローラおよび媒体ガイドを示す斜視図(B)である。
【
図6】第1の実施の形態の画像形成装置において、フロントカバーが閉位置および開位置にあるときの、ピンチローラおよび清掃部材並びにその周囲を示す断面図(A),(B)である。
【
図7】第1の実施の形態の画像形成装置において、フロントカバーが開位置にあるときのフロントカバーと装置本体とを示す断面図(A)およびフロントカバーの一部を拡大して示す図(B)である。
【
図8】第1の実施の形態のピンチローラ、清掃部材、第1の収容部および第2の収容部を示す模式図である。
【
図9】第1の実施の形態の清掃部材によるピンチローラの清掃作用を説明するための模式図(A),(B)である。
【
図10】第1の実施の形態の画像形成装置からの画像形成部の取り出し動作を説明するための斜視図である。
【
図11】第1の実施の形態のフロントカバーの開閉に伴う清掃部材の移動軌跡を示す図である。
【
図12】変形例の画像形成装置において、回動部材が閉位置にある状態と開位置にある状態を示す模式図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の実施の形態.
<画像形成装置>
まず、第1の実施の形態の画像形成装置1について説明する。
図1は、画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真プロセスを利用して画像を形成するプリンタである。
【0010】
画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体Mを供給する媒体供給部5と、媒体Mに画像を形成する画像形成部6と、媒体Mに画像を定着する定着装置7と、媒体Mを排出する媒体排出部8と、これらを収容するハウジング10とを備える。ハウジング10の上部は、開閉可能なトップカバー12に覆われている。
【0011】
媒体供給部5は、媒体収容部としての媒体カセット50と、ピックアップローラ51と、フィードローラ52と、リタードローラ53とを有する。媒体カセット50は、印刷用紙等の媒体Mを収容する。ピックアップローラ51は、媒体カセット50から媒体Mを一枚ずつ引き出す。フィードローラ52およびリタードローラ53は、引き出された媒体Mを一枚ずつ分離して媒体搬送路P1に送り出す。
【0012】
媒体搬送路P1に沿って、第1の搬送ローラとしての搬送ローラ54と、第2の搬送ローラとしての搬送ローラ56と、第3の搬送ローラとしてのレジストローラ58とが配置されている。搬送ローラ54、搬送ローラ56およびレジストローラ58には、従動ローラであるピンチローラ55,57,59がそれぞれ対向配置されている。
【0013】
搬送ローラ54とピンチローラ55からなるローラ対、および搬送ローラ56とピンチローラ57からなるローラ対は、媒体搬送路P1に沿って媒体Mを搬送する。レジストローラ58とピンチローラ59からなるローラ対は、媒体搬送路P1に沿って搬送されてきた媒体Mのスキュー(斜行)を矯正し、媒体搬送路P2に沿って画像形成部6まで搬送する。
【0014】
これらのローラのうち、ピンチローラ57は、後述する清掃部材41によって清掃される清掃対象ローラ(あるいは単にローラとも称する)に相当する。
【0015】
画像形成部6は、像担持体としての感光体ドラム61と、帯電部材としての帯電ローラ62と、現像剤担持体としての現像ローラ65と、供給部材としての供給ローラ66と、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ67とを有する。また、感光体ドラム61に対向するように、露光装置としての露光ヘッド63が配置されている。
【0016】
感光体ドラム61は、導電性支持体の表面に感光層を形成した円筒状の部材である。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との積層体である。感光体ドラム61は、図中反時計回りに回転する。
【0017】
露光ヘッド63は、発光素子としてのLED(発光ダイオード)を配列したLEDアレイとレンズアレイとを有し、感光体ドラム61の表面に光を照射して静電潜像を形成する。露光ヘッド63は、トップカバー12に懸架されて支持されている。
【0018】
帯電ローラ62は、感光体ドラム61の表面に接触するように配置され、感光体ドラム61に追従して回転する。帯電ローラ62は帯電電圧を印加され、感光体ドラム61の表面を一様に帯電させる。
【0019】
現像ローラ65は、感光体ドラム61の表面に接触するように配置され、感光体ドラム61とは逆方向(接触部での表面の移動方向が順方向となる方向)に回転する。現像ローラ65は現像電圧を印加され、感光体ドラム61の表面の静電潜像をトナーにより現像する。
【0020】
供給ローラ66は、現像ローラ65の表面に接触するように配置され、現像ローラ65と同方向(接触部での表面の移動方向が逆方向となる方向)に回転する。供給ローラ66は供給電圧を印加され、現像ローラ65にトナーを供給する。現像ローラ65および供給ローラ66は、現像部64を構成している。
【0021】
トナーカートリッジ67は、現像剤としてのトナーを収容する着脱可能な容器である。トナーカートリッジ67は、現像部64にトナーを供給する。トナーは、例えばブラックトナーであるが、これに限定されるものではない。
【0022】
感光体ドラム61の表面に接触するように、転写部としての転写ローラ68が配置されている。転写ローラ68は転写電圧を印加され、感光体ドラム61の表面のトナー像を、感光体ドラム61と転写ローラ68との間を通過する媒体Mに転写する。感光体ドラム61と転写ローラ68との間を通過した媒体Mは、感光体ドラム61の回転により、媒体搬送路P3に沿って定着装置7に搬送される。
【0023】
画像形成部6は、画像形成装置1のハウジング10に対して着脱可能であり、プロセスユニットとも称する。ここでは単一の画像形成部6を用いて単色画像を形成する構成について説明するが、このような構成には限定されない。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の複数の画像形成部を用いてカラー画像を形成する構成を採用してもよい。
【0024】
定着装置7は、媒体Mの搬送方向において画像形成部6の下流側に配置されている。定着装置7は、定着ローラ71と、加圧ローラ72とを有する。定着ローラ71はハロゲンランプ等のヒータ73を内蔵し、加圧ローラ72は定着ローラ71に圧接される。定着ローラ71および加圧ローラ72は、媒体Mを加熱および加圧し、トナー像を媒体Mに定着させる。
【0025】
媒体排出部8は、定着装置7を通過した媒体Mを媒体搬送路P4に沿って搬送し、排出口83から排出する排出ローラ対81および排出ローラ対82を有する。トップカバー12には、排出された媒体Mを載置するスタッカ部84が形成されている。
【0026】
上記の媒体搬送路P1~P4には、媒体Mの通過を検知する媒体センサS1,S2,S3が配置されている。媒体センサS1,S2は、レジストローラ58の上流側および下流側にそれぞれ配置されている。媒体センサS3は、定着装置7の下流側に配置されている。
【0027】
媒体センサS1の検知信号は、レジストローラ58の回転開始タイミングの決定に用いられる。媒体センサS2の検知信号は、露光ヘッド63の露光開始タイミングの決定に用いられる。媒体センサS3の検知信号は、媒体Mのジャム検知に用いられる。
【0028】
図1において、感光体ドラム61の軸方向を、X方向とする。X方向は、画像形成装置1内の各ローラの軸方向であり、搬送される媒体Mの幅方向でもある。媒体Mが画像形成部6を通過するときの媒体Mの移動方向を、Y方向とする。X方向とY方向に直交する方向を、Z方向とする。ここでは、Z方向は上下方向である。
【0029】
Y方向については、媒体Mが画像形成部6を通過するときの搬送方向を-Y方向(後方)とし、その反対方向を前方(+Y方向)とする。X方向については、+Y方向を向いて右手方向を+X方向とし、左手方向を-X方向とする。Z方向については、
図1の上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。なお、これらの方向は、画像形成装置1の向きを限定するものではない。
【0030】
画像形成装置1のうち、ハウジング10とその内側の各構成要素(媒体供給部5、画像形成部6および定着装置7を含む)を、装置本体11と称する。すなわち、画像形成装置1は、装置本体11と、これに取り付けられたフロントカバー20とを有する。
【0031】
図2(A),(B)は、画像形成装置1を示す斜視図である。
図2(A)に示すように、画像形成装置1のハウジング10は、後方(-Y方向)のリアフレーム10aと、左右両側(X方向両側)のサイドフレーム10bとを有する。ハウジング10の前方(+Y方向)は、回動部材としてのフロントカバー20によって覆われている。
【0032】
フロントカバー20は、その下端部に設けられたX方向の回動軸C1を中心として、
図2(A)に示す閉位置と、
図2(B)に示す開位置との間で回動可能である。フロントカバー20の開位置と閉位置との間の回動角度は、80~90度が望ましく、ここでは80度である。
【0033】
フロントカバー20が閉位置にあるときには、
図2(A)に示すようにハウジング10の前面がフロントカバー20によって閉鎖される。フロントカバー20が開位置にあるときには、
図2(B)に示すようにハウジング10の前面が開放される。
【0034】
フロントカバー20は、ハウジング10の前面に位置する平板部20aと、平板部20aの左右両側に設けられた側板部20bと、平板部20aの上端に設けられて画像形成部6の上側を覆う天板部20cとを有する。
【0035】
フロントカバー20には、フロントカバー20を閉位置でロックするためのロック部材20eが設けられている。ロック部材20eは、ハウジング10のサイドフレーム10bに設けられた係合部14に係合することで、フロントカバー20を閉位置でロックする。また、フロントカバー20の側部には、ロック部材20eによるロックを解除する際に操作されるロック解除ボタン20fが設けられている。
【0036】
フロントカバー20が開位置にあるときには、画像形成部6の前方が開放され、画像形成部6がハウジング10から取り外し可能となる(後述する
図10参照)。また、媒体搬送路P1の一部が露出する。
【0037】
図3(A)は、フロントカバー20を示す斜視図である。
図3(B)は、フロントカバー20の一部を拡大して示す斜視図である。
図3(A)に示すように、フロントカバー20の下端部には、上述した回動軸C1を規定する支軸20dが設けられている。支軸20dは、一対の側板部20bのX方向内側にそれぞれ配置されている。
【0038】
また、フロントカバー20の略中央部には、媒体Mをガイドする媒体ガイド23が設けられている。媒体ガイド23のX方向の幅は、画像形成装置1で使用される最も大きなサイズの媒体Mの幅よりも広い。
【0039】
媒体ガイド23は、例えば、X方向に配列された複数のガイドリブ23aを有する。ガイドリブ23aは、X方向に直交する面内において湾曲した形状を有する。フロントカバー20の媒体ガイド23は、装置本体11の媒体ガイド13(
図2(B))に対向し、これらの間を媒体Mが搬送される。
【0040】
図3(B)に示すように、フロントカバー20の媒体ガイド23の回動軸C1(
図3(A))側には、X方向に延在する壁部24が形成されている。壁部24は、例えば、媒体ガイド23と一体に形成されている。壁部24には、X方向に複数の開口部25が形成されている。
【0041】
図4は、フロントカバー20の媒体ガイド23を取り出して示す図である。壁部24の回動軸C1(
図3(A))側には、清掃部材41が取り付けられている。清掃部材41は、例えば、樹脂で形成されたフィルムである。
【0042】
清掃部材41は、X方向に長く、YZ面内においてL字形状をなすように折り曲げられている。清掃部材41の厚さは、0.125mm以下が望ましく、一例としては0.1mmである。清掃部材41を形成する樹脂は、例えばポリエステルである。このような清掃部材41は、クリーニングブレードとも称する。
【0043】
図5(A)は、フロントカバー20を開位置まで回動させたときのフロントカバー20および装置本体11を示す斜視図である。
図5(B)は、装置本体11の搬送ローラ56、ピンチローラ57および媒体ガイド13を示す斜視図である。
【0044】
図5(A)に示すように、フロントカバー20が開位置にあるときには、媒体ガイド13の上流側に配置された搬送ローラ56およびピンチローラ57が露出する。ピンチローラ57は、搬送ローラ56よりも+Y側(前方)に配置されている。
【0045】
そのため、
図5(B)に示すように、画像形成部6の着脱動作(後述)に伴って、符号Tで示す付着物がピンチローラ57の表面に付着する可能性がある。
【0046】
そこで、フロントカバー20においてピンチローラ57に対向する位置には、
図4および
図5(A)に示した清掃部材41が配置されている。フロントカバー20を閉位置まで回動させると、清掃部材41がピンチローラ57の表面に当接する。
【0047】
図6(A)は、フロントカバー20が閉位置にあるときのピンチローラ57および清掃部材41並びにその周囲を示す断面図である。
図6(B)は、フロントカバー20が開位置にあるときのピンチローラ57および清掃部材41並びにその周囲を示す断面図である。
【0048】
図6(A)に示すように、フロントカバー20が閉位置にあるときには、フロントカバー20の媒体ガイド23が、装置本体11の媒体ガイド13に対向する。媒体ガイド23および媒体ガイド13はいずれも、搬送ローラ56およびピンチローラ57からなるローラ対と、レジストローラ58およびピンチローラ59からなるローラ対との間で延在している。
【0049】
フロントカバー20が閉位置にあるときには、フロントカバー20の清掃部材41はピンチローラ57の表面(外周面)に当接する。この状態で、壁部24は、清掃部材41の上側(+Z方向)に位置している。
【0050】
フロントカバー20は、また、平板部20aから壁部24に向けて延在する第1の仕切板27と第2の仕切板28とを有する。第1の仕切板27および第2の仕切板28は、平板部20aから後方(-Y方向)に延在し、壁部24に到達している。
【0051】
壁部24の下端部(すなわち回動軸C1側の端部)には、清掃部材41を保持する保持部26が一体に形成されている。保持部26の表面すなわちピンチローラ57側の面を、案内面26aと称する。保持部26の案内面26aには、清掃部材41が接着により固定される。接着には、例えば両面テープを用いる。
【0052】
フロントカバー20が閉位置にある状態で、保持部26は、壁部24からピンチローラ57に向けて延在している。保持部26の案内面26aは、Y方向においてピンチローラ57に近づくほど下方に変位するように傾斜している。
【0053】
清掃部材41は、保持部26の案内面26aに固定される基部41bと、基部41bのピンチローラ57に近い側の端部(下端部)で上方に折り曲げられた折り曲げ部41aとを有する。清掃部材41の折り曲げ部41aの先端41cは、ピンチローラ57の表面に当接する。
【0054】
そのため、ピンチローラ57が回転すると、清掃部材41はピンチローラ57の表面の付着物を掻き取る(すなわち除去する)ことができる。また、清掃部材41の基部41bと折り曲げ部41aとの間には、第1の収容部31が形成される。第1の収容部31は、ピンチローラ57から掻き取られた付着物を収容する収容エリアである。
【0055】
フロントカバー20において、第1の収容部31の前方(+Y方向)には、第2の収容部32が形成されている。具体的には、第2の収容部32は、第1の仕切板27と第2の仕切板28との間に形成されている。
【0056】
図6(B)に示すように、フロントカバー20が開位置にあるときには、フロントカバー20の媒体ガイド23が、装置本体11の媒体ガイド13から離間する。この状態で、フロントカバー20に設けられた清掃部材41は、ピンチローラ57から離間する。また、第2の収容部32は、第1の収容部31の下方(-Z方向)に位置する。
【0057】
また、保持部26の案内面26aは、水平面に対して角度αだけ傾斜する。すなわち、保持部26の案内面26aに固定された清掃部材41の基部41bも、水平面に対して角度αだけ傾斜する。角度αは、30度以上であることが望ましい。
【0058】
図7(A)は、開位置にあるフロントカバー20と、装置本体11のピンチローラ57を含む部分とを示す断面図である。上記の通り、フロントカバー20が開位置にあるときには、第2の収容部32は、第1の収容部31の下方に位置する。
【0059】
図7(B)は、清掃部材41、第1の収容部31および第2の収容部32を拡大して示す図である。第1の収容部31と第2の収容部32とは、壁部24で隔てられている。但し、壁部24には開口部25が形成されており、第1の収容部31と第2の収容部32とは開口部25によって連通している。そのため、第1の収容部31の付着物Tは、開口部25を介して第2の収容部32に落下する。
【0060】
図8は、フロントカバー20が閉位置にあるときの清掃部材41、第1の収容部31および第2の収容部32を、ピンチローラ57と共に示す模式図である。清掃部材41の基部41bは保持部26の案内面26aに固定され、折り曲げ部41aの先端41cがピンチローラ57に当接している。折り曲げ部41aの長さLは、例えば3.5~4.5mm(一例としては4.0mm)である。
【0061】
基部41bと折り曲げ部41aとのなす角は、折り曲げ部41aがピンチローラ57に当接した状態(実線)では、折り曲げ部41aがピンチローラ57に当接しない状態(破線)よりも小さい。すなわち、清掃部材41は、基部41bと折り曲げ部41aとの角度が小さくなるように弾性変形した状態で、ピンチローラ57の表面に当接している。
【0062】
清掃部材41の先端41cがピンチローラ57に当接することによる当該先端41cの変位量Wは、0.5mm以上であることが望ましく、一例としては2.0mmである。清掃部材41の先端41cの変位量Wは、清掃部材41の撓み量とも称する。
【0063】
清掃部材41の折り曲げ部41aがピンチローラ57に当接した状態で、折り曲げ部41aの先端41cはピンチローラ57の回転軸C2よりも上方(+Z方向)に位置する。折り曲げ部41aの先端41cと、ピンチローラ57の回転軸C2とのZ方向の距離Bは、0~2mmが望ましい。
【0064】
また、この状態で、折り曲げ部41aの先端41cは、後述する規制部29の上端面(すなわち開口部25の下端面)よりも下方(-Z方向)に位置する。折り曲げ部41aの先端41cと、規制部29の上端面とのZ方向の距離Cは、例えば1.0mmである。
【0065】
媒体ガイド23の壁部24は、第1の収容部31と第2の収容部32とを仕切っており、保持部26の上方に位置する。壁部24の開口部25のZ方向の開口寸法Dは、2.0mm以上(一例としては2.0mm)である。
【0066】
保持部26と一体に、第1の仕切板27と開口部25との間に位置する規制部29が形成されている。規制部29は、フロントカバー20が閉位置にある状態で第1の仕切板27の表面(壁面)から上方に突出している。
【0067】
規制部29は、第1の収容部31と第2の収容部32との間で、開口部25を介して付着物が移動することを規制する。規制部29の高さH、すなわち第1の仕切板27の表面から規制部29の上面(すなわち開口部25の下端)までの距離は、例えば2.0mmである。
【0068】
<画像形成装置の印刷動作>
次に、画像形成装置1の印刷動作について、
図1を参照して説明する。画像形成装置1の制御部は、上位装置から印刷コマンドと印刷データを受信すると、印刷動作(画像形成動作)を開始する。印刷動作は、フロントカバー20が閉位置にある状態で行われる。
【0069】
印刷動作が開始されると、媒体供給部5のピックアップローラ51およびフィードローラ52が回転し、媒体カセット50上の媒体Mを一枚ずつ媒体搬送路P1に送り出す。また、搬送ローラ54および搬送ローラ56が回転し、媒体Mを媒体搬送路P1に沿って搬送する。さらに、レジストローラ58が所定のタイミングで回転を開始し、媒体Mのスキューを矯正し、媒体搬送路P2に沿って画像形成部6まで搬送する。
【0070】
画像形成部6では、帯電ローラ62、現像ローラ65および供給ローラ66に、帯電電圧、現像電圧および供給電圧がそれぞれ印加される。また、感光体ドラム61が回転し、これに伴って、帯電ローラ62、現像ローラ65および供給ローラ66も回転する。帯電ローラ62は、感光体ドラム61の表面を一様に帯電させる。露光ヘッド63は、一様に帯電された感光体ドラム61の表面を露光し、静電潜像を形成する。
【0071】
感光体ドラム61の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ65に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム61の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム61の回転によりトナー像が転写ローラ68の表面に接近すると、転写ローラ68に転写電圧が印加される。
【0072】
これにより、感光体ドラム61に形成されたトナー像が、感光体ドラム61と転写ローラ68との間を通過する媒体Mに転写される。トナー像が転写された媒体Mは、感光体ドラム61の回転により、媒体搬送路P3に沿って定着装置7に搬送される。
【0073】
定着装置7では、定着ローラ71および加圧ローラ72が定着ニップを形成した状態で回転し、またヒータ73が所定の定着温度まで加熱されている。媒体Mが定着ローラ71と加圧ローラ72との間の定着ニップを通過する際、媒体M上の未定着トナーに熱および圧力が加えられ、トナー像が媒体Mに定着される。
【0074】
トナー像が定着した媒体Mは、媒体排出部8に搬送される。媒体排出部8では、排出ローラ対81,82により媒体Mが媒体搬送路P4に沿って搬送され、排出口83から排出される。排出された媒体Mは、スタッカ部84上に積載される。これにより、印刷動作が完了する。
【0075】
<清掃部材、第1の収容部および第2の収容部の作用>
図9(A)は、印刷動作中の清掃部材41、第1の収容部31および第2の収容部32の作用を説明するための断面図である。
図9(B)は、印刷動作中の清掃部材41、第1の収容部31および第2の収容部32を拡大して示す断面図である。
【0076】
印刷動作中は、フィードローラ52およびリタードローラ53によって、媒体Mが媒体搬送路P1に送り出される。そして、搬送ローラ54とピンチローラ55とからなるローラ対(
図1)、および搬送ローラ56とピンチローラ57とからなるローラ対によって、媒体Mが媒体搬送路P1を搬送される。
【0077】
これらのローラのうち、ピンチローラ55,57は、最も前方(+Y方向)すなわちフロントカバー20側に位置する。また、ピンチローラ57は、ピンチローラ55の上方に位置する。
【0078】
画像形成部6の交換時には、
図10に示すように、フロントカバー20を開放した状態で、画像形成部6がハウジング10から上前方に取り出される。このとき、画像形成部6からトナーが落下し、ピンチローラ57の表面に付着する可能性がある。また、印刷動作に伴って発生する媒体Mの紙粉がピンチローラ57の表面に付着する可能性がある。
【0079】
ピンチローラ57にこのようなトナー、紙粉等の付着物Tが付着すると(
図5(B)参照)、ピンチローラ57は媒体Mの表面(印字面)に接するため、画像品位が低下する原因となる。
【0080】
この実施の形態では、印刷動作時に、清掃部材41の先端41cがピンチローラ57の表面に当接している。特に、清掃部材41は、折り曲げ部41aと基部41bとのなす角が小さくなるように弾性変形した状態で、ピンチローラ57の表面に当接している。そのため、清掃部材41の弾性力を利用して、清掃部材41の先端41cをピンチローラ57の表面に押し当てることができる。
【0081】
また、上記の通り、清掃部材41の先端41cがピンチローラ57に当接することによる当該先端41cの変位量W(
図8)は、0.5mm以上(例えば2.0mm)である。そのため、清掃部材41の折り曲げ角度の誤差、あるいは取り付け位置の誤差を考慮しても、清掃部材41とピンチローラ57との間における付着物Tのすり抜けを防止することができる。なお、ピンチローラ57の外径は、例えば12mmである。
【0082】
清掃部材41の先端41cは、ピンチローラ57の表面の移動方向に対してカウンタ方向に当接していることが望ましい。清掃部材41の先端41cがこのように当接することにより、ピンチローラ57の表面に付着した付着物Tを効率よく掻き取ることができる。
【0083】
また、上記の通り、清掃部材41の先端41cはピンチローラ57の回転軸C2よりも上方(+Z方向)に位置する。そのため、清掃部材41の先端41cがピンチローラ57の下側に潜り込むことを防止し、付着物Tの掻き取りを確実に行うことができる。
【0084】
また、
図9(B)に示すように、清掃部材41の先端41cとピンチローラ57の回転軸C2とを通る直線と、水平面とのなす角(以下、当て角と称する)Aは、10~30度の範囲内であることが望ましい。当て角Aがこの範囲内にあれば、清掃部材41の先端41cをピンチローラ57に適切な押圧力で押し当てることができる。
【0085】
ピンチローラ57の表面の付着物Tは、清掃部材41の先端41cに当接して掻き取られ、清掃部材41の折り曲げ部41aと基部41bとの間のエリア、すなわち第1の収容部31に落下する。
【0086】
第1の収容部31は、清掃部材41とピンチローラ57との当接部(すなわち清掃部材41の先端41c)から離間しているため、第1の収容部31に収容された付着物はピンチローラ57に再付着しにくい。
【0087】
フロントカバー20が閉位置にある状態で、清掃部材41の基部41bの水平面に対する角度β(
図8)は、20~50度であることが望ましい。角度βがこの範囲にあれば、第1の収容部31の容積を十分に確保し、清掃部材41の折り曲げ部41aおよび基部41bの長さを確保することができる。すなわち、折り曲げ部41aの長さが短い場合に生じるピンチローラ57への押し当て力の不足、あるいは、基部41bの長さが短い場合に生じる保持部26からの剥がれを防止することができる。
【0088】
印刷動作が繰り返し行われると、第1の収容部31に収容される付着物Tの量が徐々に増加する。
【0089】
フロントカバー20を開位置まで回動させると、
図6(B)および
図7(B)に示したように第1の収容部31の下方(-Z方向)に第2の収容部32が位置する。そのため、第1の収容部31に収容された付着物Tは、壁部24に形成された開口部25を通って第2の収容部32に落下し、第2の収容部32に収容される。
【0090】
フロントカバー20が開位置にある状態では、清掃部材41の基部41bの水平面に対する角度α(
図6(B))は、30度以上であることが望ましい。角度αが30度以上であれば、付着物Tを清掃部材41の基部41bからスムースに滑り落とし、第2の収容部32に落下させることができる。
【0091】
フロントカバー20の開閉は、画像形成部6の交換およびジャム解除の際に行われる。画像形成装置1の寿命に亘って、500回程度の開閉が想定されている。そのため、第1の収容部31から第2の収容部32への付着物Tの移動は、500回程度行われる。第2の収容部32は、画像形成装置1の寿命に亘って発生する付着物Tを収容できる十分な容積を有している。
【0092】
第1の収容部31から第2の収容部32に付着物Tを落下させた後、フロントカバー20を閉位置まで回動させる。これにより、
図9(A),(B)に示したように第2の収容部32に付着物Tが収容された状態で、印刷動作の再開が可能になる。
【0093】
印刷動作を再開すると、第1の収容部31には、清掃部材41によってピンチローラ57の表面から掻き取られた(すなわち除去された)付着物Tが収容される。一方、第2の収容部32には、フロントカバー20の開放時に第1の収容部31から落下した付着物Tが収容されている。
【0094】
第1の収容部31と第2の収容部32との間には規制部29が配置されており、フロントカバー20が閉位置にある状態で、規制部29の高さH(
図8)は、第2の収容部32内の付着物が簡単に乗り越えられない高さ(例えば2.0mm)に設定される。そのため、印刷動作中に、第2の収容部32内の付着物が第1の収容部31に戻って、第1の収容部31から溢れることが防止される。
【0095】
図11は、フロントカバー20の開閉に伴う清掃部材41の先端41cの移動軌跡を示す図である。フロントカバー20を開位置から閉位置に回動させると、清掃部材41の先端41cは、
図11に円Qで示した移動軌跡を描いてピンチローラ57に当接する。
【0096】
フロントカバー20が閉位置まで回動する際に、清掃部材41の先端41cがピンチローラ57に接触を開始する位置を、接触開始位置Pとする。また、ピンチローラ57の回転軸C2を通る鉛直面(
図11では直線)を、基準面Sとする。基準面Sから接触開始位置Pまでの距離Eは、ピンチローラ57の半径Rの90%以下で、できるだけ大きいことが望ましい。このようにすれば、清掃部材41がピンチローラ57の下側に潜り込まないようにし、なお且つ、ピンチローラ57の広範囲に付着した付着物を掻き取ることができる。
【0097】
ここでは、ピンチローラ57の付着物の除去とその収容について説明した。しかしながら、本実施の形態の清掃部材41、第1の収容部31および第2の収容部32等の構成は、ピンチローラ57に限らず、媒体Mの搬送に関与するローラの付着物の除去とその収容に適用することができる。
【0098】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置1は、装置本体11と、装置本体11に取り付けられて媒体Mを搬送するピンチローラ57と、装置本体11に対して閉位置と開位置との間で回動可能な回動部材としてのフロントカバー20とを備える。フロントカバー20は、当該フロントカバー20が閉位置にあるときにピンチローラ57に当接し、ピンチローラ57から付着物Tを除去する清掃部材41と、清掃部材41とピンチローラ57との当接位置から離間し、清掃部材41によって除去された付着物Tを収容可能に配置された第1の収容部31と、開口部25を介して第1の収容部31と連通し、付着物Tを収容可能に設けられた第2の収容部32とを有する。フロントカバー20が閉位置から開位置に回動すると、付着物Tが第1の収容部31から第2の収容部32に移動する。
【0099】
このように、フロントカバー20が閉位置から開位置に回動すると、第1の収容部31に収容された付着物Tが第2の収容部32に移動するため、付着物Tの堆積量が多くなっても、付着物Tの媒体Mへの付着を防止することができる。その結果、画像品位の低下を抑制することができる。
【0100】
また、第2の収容部32から第1の収容部31への付着物Tの移動を規制する規制部29が設けられているため、第2の収容部32に収容した付着物が第1の収容部31に戻って第1の収容部31から溢れることを防止することができる。
【0101】
また、規制部29は、フロントカバー20が閉位置にある状態で、第2の収容部32の底面をなす第1の仕切板27の表面(壁面)から上方に突出している。そのため、フロントカバー20が閉位置にあるときには、第2の収容部32内の付着物Tが第1の収容部31に戻りにくい。
【0102】
また、フロントカバー20が閉位置にあるときには、第1の収容部31が第2の収容部32よりも下方に位置し、フロントカバー20が開位置にあるときには、第1の収容部31が第2の収容部32よりも上方に位置する。そのため、印刷動作時にはピンチローラ57から除去した付着物を第1の収容部31に収容し、フロントカバー20を開放したときには付着物を第1の収容部31から第2の収容部32に移動させることができる。
【0103】
また、保持部26が第1の収容部31から開口部25に向けて付着物を案内する案内面26aを有し、当該案内面26aは、フロントカバー20が閉位置にあるときに開口部25からピンチローラ57に向かって下方に傾斜している。また、清掃部材41は、案内面26aに取り付けられた基部41bと、基部41bのピンチローラ57に近い側の端部で上方に折り曲げられてピンチローラ57に当接する折り曲げ部41aとを有するフィルムであり、基部41bと折り曲げ部41aとの間に第1の収容部31が形成される。そのため、簡単な構成の清掃部材41により、ピンチローラ57から除去した付着物を第1の収容部31に収容し、また、第2の収容部32に移動させることができる。
【0104】
また、フロントカバー20を閉位置から開位置に回動させると、付着物が保持部26の案内面26aに沿って開口部25に向かって移動するため、付着物を飛散させずに、開口部25を介して第2の収容部32に移動させることができる。
【0105】
また、フロントカバー20が開位置にあるとき、保持部26の案内面26aが水平面に対して30度以上の角度をなすため、付着物が保持部26の案内面26a上の基部41bに沿って滑り落ち易く、付着物を第2の収容部32に効率よく移動させることができる。
【0106】
また、清掃部材41は、基部41bと折り曲げ部41aとのなす角が小さくなるように弾性変形した状態で、ピンチローラ57に当接している。そのため、清掃部材41の先端41cをピンチローラ57に押し当て、付着物のすり抜けを防止することができる。
【0107】
また、フロントカバー20が閉位置にあるときに、清掃部材41とピンチローラ57との当接部は、ピンチローラ57の回転軸C2よりも上方に位置するため、清掃部材41の先端41cがピンチローラ57の下側に潜り込むことがなく、付着物を効率よく除去することができる。
【0108】
また、フロントカバー20が開位置と閉位置との間で80度以上回動するため、フロントカバー20の回動によって清掃部材41の向きを大きく変えることができる。そのため、清掃部材41による付着物の除去、第1の収容部31への収容、第2の収容部32への移動を効率よく行うことができる。
【0109】
また、清掃部材41および収容部31,32が、装置本体11の一つの側面に設けられた開閉可能なカバー(具体的にはフロントカバー20)に設けられているため、清掃部材41および収容部31,32のためのスペースを確保しやすい。また、清掃部材41および収容部31,32がジャム解除等の邪魔にならず、ジャム解除等を容易に行うことができる。また、掃除機等で第1の収容部31内の付着物を吸引することもできる。
【0110】
なお、フロントカバー20に限らず、装置本体11に設けられた回動部材の回動に応じて、清掃部材41による付着物の除去、第1の収容部31への付着物の収容、および第2の収容部32への付着物の移動が行われればよい。
【0111】
<変形例>
図12(A),(B)は、変形例の画像形成装置100を示す模式図である。画像形成装置100は、装置本体110とフロントカバー120とを有する。
図12(A),(B)に示すように、装置本体110は、媒体Mを供給する媒体供給部105と、媒体Mに画像を形成する画像形成部106と、これらを収容するハウジング101とを有する。媒体供給部105と画像形成部106との間に、搬送ローラ156と清掃対象ローラであるピンチローラ157とからなるローラ対が設けられている。
【0112】
フロントカバー120は、ハウジング101に対し、X方向の回動軸C1を中心として、
図12(A)に示す閉位置と
図12(B)に示す開位置との間で回動可能である。ハウジング101内でフロントカバー120よりも内側には、媒体Mのジャム解除時に回動操作される回動部材102が設けられている。
【0113】
回動部材102は、X方向の回動軸C3を中心として、
図12(A)に示す閉位置と
図12(B)に示す開位置との間で回動可能である。回動部材102には、回動部材102を回動させる際にユーザが把持するレバー103が設けられている。
【0114】
図12(A)で示すように回動部材102が閉位置にある状態で、回動部材102のピンチローラ157に対向する端部には、清掃部材141が固定されている。清掃部材141は、例えばフィルムであり、回動部材102に固定される基部141bと、ピンチローラ157に当接する折り曲げ部141aとを有する。
【0115】
清掃部材141の折り曲げ部141aおよび基部141bは、第1の実施の形態で説明した折り曲げ部41aおよび基部41bと同様に構成されている。折り曲げ部141aと基部141bとの間には、付着物Tを収容する第1の収容部131が形成される。
【0116】
回動部材102は、また、清掃部材141に向けて開口する空洞部である第2の収容部132を有する。
【0117】
図12(B)に示すように回動部材102が開位置にある状態で、清掃部材141はピンチローラ157から離間し、第2の収容部132が第1の収容部131の下方に位置する。また、清掃部材141の基部141bは、第2の収容部132に向けて下方に傾斜した状態となる。
【0118】
印刷動作中は、
図12(A)に示すように、清掃部材141の折り曲げ部141aの先端がピンチローラ157の表面に当接する。ピンチローラ157の表面の付着物Tは、清掃部材141によって掻き取られ(すなわち除去され)、第1の収容部131に収容される。
【0119】
媒体Mのジャムの発生時には、
図12(B)に示すようにユーザがフロントカバー120を開位置まで回動させ、さらに回動部材102を開位置まで回動させる。これにより、第1の収容部131内の付着物Tが、清掃部材141の基部141bに沿って滑り落ち、第2の収容部132内に落下する。
【0120】
上述した点を除き、変形例の画像形成装置100の構成は、実施の形態1の画像形成装置1の構成と同様である。
【0121】
この変形例においても、回動部材102が閉位置から開位置に回動すると、第1の収容部31に収容された付着物Tが第2の収容部132に移動する。そのため、付着物Tの堆積量が多くなっても、付着物Tの媒体Mへの付着を防止することができる。その結果、画像品位の低下を抑制することができる。
【0122】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。上記の各実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。
【0123】
ここでは画像形成装置の一例としてプリンタについて説明したが、本実施の形態の画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、MFP(MultiFunction Peripherals)等にも適用することができる。
【0124】
以下に、本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)
画像形成部を含む装置本体と、
前記装置本体に取り付けられて媒体を搬送するローラと、
前記装置本体に対して閉位置と開位置との間で回動軸を中心として回動可能な回動部材と
を備え、
前記回動部材は、
前記回動部材が前記閉位置にあるときに前記ローラに当接し、前記ローラから付着物を除去する清掃部材と、
前記清掃部材と前記ローラとの当接位置から離間し、前記清掃部材によって除去された付着物を収容可能に配置された第1の収容部と、
開口部を介して前記第1の収容部と連通し、前記付着物を収容可能に設けられた第2の収容部とを有し、
前記回動部材が前記閉位置から前記開位置に回動すると、前記付着物が前記第1の収容部から前記第2の収容部に移動する
ことを特徴とする画像形成装置。
(付記2)
前記開口部を介して、前記第2の収容部から前記第1の収容部に前記付着物が移動することを規制する規制部
をさらに備えたことを特徴とする付記1に記載の画像形成装置。
(付記3)
前記第2の収容部は、前記回動部材が前記閉位置にある状態で前記第2の収容部の底面を規定する壁面を有し、
前記規制部は、前記回動部材が前記閉位置にある状態で前記壁面から上方に突出している
ことを特徴とする付記2に記載の画像形成装置。
(付記4)
前記回動部材が前記閉位置にあるときに、前記第1の収容部は、前記第2の収容部よりも下方に位置し、
前記回動部材が前記開位置にあるときに、前記第1の収容部は、前記第2の収容部よりも上方に位置する
ことを特徴とする付記1から3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記5)
前記清掃部材は、前記ローラに当接して前記付着物を掻き取るクリーニングブレードである
ことを特徴とする付記1から4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記6)
前記第1の収容部から前記開口部に向けて前記付着物を案内する案内面をさらに備え、
前記案内面は、前記回動部材が前記閉位置にあるときに、前記開口部から前記ローラに向かって下方に傾斜している
ことを特徴とする付記1から5までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記7)
前記清掃部材は、前記案内面に取り付けられた基部と、前記基部の前記ローラに近い側の端部で上方に折り曲げられて前記ローラに当接する折り曲げ部とを有するフィルムであり、
前記基部と前記折り曲げ部との間に、前記第1の収容部が形成される
ことを特徴とする付記6に記載の画像形成装置。
(付記8)
前記回動部材が前記閉位置から前記開位置に移動すると、前記付着物が前記案内面に沿って前記開口部に向かって移動する
ことを特徴とする付記7に記載の画像形成装置。
(付記9)
前記回動部材が前記開位置にあるとき、前記案内面が水平面に対して30度以上の角度をなす
ことを特徴とする付記7または8に記載の画像形成装置。
(付記10)
前記清掃部材は、前記基部と前記折り曲げ部とのなす角が小さくなるように弾性変形した状態で、前記ローラに当接している
ことを特徴とする付記7から9までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記11)
前記回動部材が前記閉位置にあるとき、前記清掃部材と前記ローラとの当接部は、前記ローラの回転軸よりも上方に位置する
ことを特徴とする付記1から10までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記12)
前記回動部材は、前記開位置と前記閉位置との間で80度以上回動する
ことを特徴とする付記1から11までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記13)
前記回動部材は、前記装置本体の一つの側面に設けられた開閉可能なカバーである
ことを特徴とする付記1から12までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0125】
1 画像形成装置、 5 媒体供給部、 6 画像形成部、 7 定着装置、 8 媒体排出部、 10 ハウジング、 11 装置本体、 12 トップカバー、 13 媒体ガイド、 20 カバー(回動部材)、 20d 支軸、 23 媒体ガイド、 24 壁部、 25 開口部、 26 保持部(案内面)、 26a 案内面、 27 第1の壁部、 28 第2の壁部、 29 規制部、 31 第1の収容部、 32 第2の収容部、 41 清掃部材、 41a 折り曲げ部、 41b 基部、 41c 先端(当接部)、 50 媒体カセット(媒体収容部)、 51 ピックアップローラ、 52 フィードローラ、 53 リタードローラ、 54 搬送ローラ、 55 ピンチローラ、 56 搬送ローラ、 57 ピンチローラ(ローラ)、 58 レジストローラ、 59 ピンチローラ、 61 感光体ドラム(像担持体)、 62 帯電ローラ(帯電部材)、 63 露光ヘッド(露光装置)、 64 現像部、 67 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 68 転写ローラ(転写部)。