(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007443
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】改善されたインバータ制御を用いる電気手術用ジェネレータ及び動作方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240110BHJP
H02M 7/49 20070101ALI20240110BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/49
A61B18/12
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023105899
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】63/356,631
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ヤニヒ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ,イェレ
(72)【発明者】
【氏名】ベーレント,ラファエル
【テーマコード(参考)】
4C160
5H770
【Fターム(参考)】
4C160KK05
4C160KK24
4C160KK25
5H770BA20
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA24
5H770DA31
5H770EA01
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】電気手術用機器に高周波交流電圧を出力する。
【解決手段】電気手術用ジェネレータは、インバータを備え、インバータは、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、高周波交流電圧は、電気手術用機器のための出力ソケットに供給される。インバータは、生成されたHF交流電圧の波形を定義する基準信号によって制御されるマルチレベルインバータである。基準信号は、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラムによって定義される。所望のHF正弦波曲線の記述データを含むそのようなデータグラムによって、必要とされるデータ量及び帯域幅を低減できる。それによって、わずか数ダースバイトの長さと同じくらい短くなりうる最低限のデータを用いて、様々なモードを記述できる。このことは、複雑なモードさえも効率的に制御することを可能にする。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータであって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、
上記インバータが、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する基準信号によって制御されるマルチレベルインバータ(3)であることと、
上記基準信号が、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラム(100,200)によって定義されることとを特徴とする、
電気手術用ジェネレータ。
【請求項2】
上記基準信号は、基準信号形成装置(30)によって供給される、
請求項1記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項3】
上記基準信号形成装置(30)は、
- 上記データグラム(100,200)を含むデータレコードを受信するように構成された受信機(4)と、
- 上記受信機(4)によって受信されたデータレコードを復号し、上記期間の各々に関する上記データベクトルを抽出するように構成されたデコーダ(5)と、
- データフィールドによって定義されるシーケンスにおいて、各期間に関する上記抽出されたデータベクトルからの振幅及び周波数に関する信号を出力するように、かつ、このシーケンスを繰り返すように構成されたシーケンサ(6)と、
- データベクトルの各々に関して、上記各データベクトルに従って振幅及び周波数を有する振動波を形成するように構成されたシンセサイザ(7)とを備え、
一連の振動波が上記基準信号を形成し、上記基準信号は上記インバータ(3)に供給される、
請求項2記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項4】
上記データグラム(100,200)は、複数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
各期間に対して1つのデータフィールドが存在し、
各データフィールドは、上記定義された個数の期間のうちの各1つの期間の振幅及び周波数を示す値を有する複数のデータベクトルのうちの1つを含む、
請求項1~3のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項5】
上記データグラム(100,200)は、極性、特に第1の期間の第1の半波の極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)をさらに含む、
請求項1~4のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項6】
上記データグラム(100,200)は、上記期間の個数を示す第2の追加のデータフィールド(112,113)をさらに含む、
請求項1~5のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項7】
上記データグラム(100,200)は、開始及び終了情報、特に開始及び終了バイトを示す追加のデータフィールド(113,114;213,214)を含む、
請求項1~6のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項8】
上記シンセサイザ(7)は、半波振動を形成するように構成され。
上記データグラム(100,200)における期間は、上記半波振動の継続時間に関連する、
請求項3~7のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項9】
上記シンセサイザ(7)は、単極の半波、特に正の半波のみを形成するように構成される、
請求項8記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項10】
上記シンセサイザ(7)に反転回路(8)が接続され、上記反転回路(8)は、上記シンセサイザ(7)によって生成された半波を1つおきに反転するように構成される、
請求項9記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項11】
上記反転回路(8)は、偶数の半波及び奇数の半波のいずれが反転されるべきであるかを示す選択信号に従って切り換え可能である、切り換え可能な反転回路である、
請求項10記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項12】
上記選択信号は、極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)に従って自動的に設定される、
請求項11記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項13】
上記受信機(4)は、データグラムフラグメントを受信するようにさらに構成され、
上記データグラムフラグメントは、補正された振幅及び周波数データベクトルと、関連する期間に関する識別子と有する、制限された個数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
上記制限された個数は、1つ以上であるが、上記定義された個数の期間より少ない、
請求項3~12のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項14】
上記デコーダは、上記データベクトル及び識別子を抽出するように構成され、
上記シーケンサは、上記関連する期間にわたって、上記振幅及び周波数に関する出力信号を、復号されたデータグラムフラグメントにおいて受信されたものによって、選択的に置換するように構成される、
請求項13記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項15】
上記データグラム(100,200)は、上記データベクトルにおける振幅及び/又は周波数値のビット長が、上記マルチレベルインバータのレベルの個数及び周波数範囲に限定されるように圧縮される、
請求項1~14のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項16】
上記受信機(4)は、上記データグラム(100,200)を受信するための制御装置(10)に接続され、及び/又は、上記データグラム(100,200)を遠隔の制御装置(92)から受信するように構成される、
請求項3~15のうちの1つに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項17】
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータを動作させる方法であって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、上記インバータは、マルチレベルインバータ(3)であることを特徴とし、
上記方法は、データグラム(100,200)に従って基準信号を形成(83)することを含み、
上記データグラム(100,200)は上記基準信号を定義し、上記基準信号は、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含み、
上記方法は、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する上記基準信号によって、上記マルチレベルインバータ(3)を制御することを含む、
方法。
【請求項18】
上記基準信号は、請求項2~16のうちのいずれかに従ってさらに形成される、
請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気手術用機器に高頻度の交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータと、それを動作させる方法とに関する。電気手術用ジェネレータは、制御装置と、高電圧用のインバータとを備え、後者は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、それは、電気手術用機器に接続するための出力ソケットに供給される。
【背景技術】
【0002】
電気手術用ジェネレータは、典型的には、機能の大きな集合を有する、やや複雑な機能を特色とする。それによって、手術用ジェネレータは、様々なアプリケーションに対処することが可能になる。これらの機能は、それらが電気手術用機器に電力を供給する方法において異なる。電気手術用機器に電力を供給する異なる方法は、典型的には、「モード」と呼ばれる。単なる組織の切断が達成されるべき場合、切断モードが選択され、中程度の電圧を電気手術用機器に継続的に提供する。凝固がより重要である場合、異なるモード、例えば、低いデューティ比を有するやや高い電圧を使用するスプレー又は凝固モードが選択される。他の種類のアプリケーションのための多数のさらに異なるモードが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3248560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電気手術用ジェネレータは高電圧ジェネレータを有し、その大部分は共振コンバータによって形成される。これは、高い信頼性を有しかつ証明された技術である。しかしながら、それは、周波数が確かに制御可能ではないという欠点を有し、振幅は共振コンバータのDC電源の電圧を変更することによってのみ調整可能である。周波数及び/又は振幅のいかなる変化も、むしろ扱いにくさをもたらす。
【0005】
調整可能性を向上するために、H-ブリッジとして構成されたインバータを備えた電気手術用ジェネレータを提供することが知られている(特許文献1)。しかしながら、過度の高調波の形成を回避するために、特別な制御方式を使用しなければならない。
【0006】
さらに、本願出願人によって、カスケード型トポロジーを有するマルチレベルインバータを備える電気手術用ジェネレータが開発されている。それによって、出力信号の調整可能性を大幅に向上することができた。振幅及び周波数を高速に変化させることが可能である。さらに、原則として、出力電圧の曲線をランダム形状に変化させることが可能である。しかしながら、そうすることは、発生された高電圧の出力周波数よりもずっと高い周波数においてインバータの電流値を駆動することを可能にされた、FPGAのような専用の高性能コントローラを必要とする。典型的な駆動周波数は、400kHzの周波数において交替する出力電圧の場合において、200MHzである。これは実施可能であるが、そのような高い駆動周波数を基準信号に提供することは、高速に連続する多数のデータ点を必要とし、それによって、高コストの高速コントローラが必要になる。
【0007】
本発明の目的は、上述した欠点を低減する電気手術用ジェネレータ及び改善されたインバータ制御を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る解決方法は独立請求項の特徴にある。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0009】
電気手術用機器に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータにおいて、電気手術用ジェネレータは、制御装置と、高電圧用のインバータとを備え、後者は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、それは、電気手術用機器に接続するための出力ソケットに供給される。本発明によれば、インバータは、生成された高周波交流電圧の波形を定義する基準信号によって制御されるマルチレベルインバータであり、基準信号は、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラムによって定義される。
【0010】
まず、いくつかの用語について説明する。
【0011】
マルチレベルインバータは、正及び/又は負の極性を有するオン/オフ出力のみを供給することとは対照的に、様々なレベルで出力電圧を生成可能にされたインバータである。典型的なトポロジーは、カスケード接続されたH-ブリッジ、中性点クランプ、及びフライングキャパシタであるが、これらに限定されない。
【0012】
データグラムは、有限長のデータパケットであると理解される。それは、典型的には、最大で256バイト、特に50バイト以下の小さなサイズを有する。それは、オプションで、発信元及び宛先識別情報を備えてもよいが、これは必須ではない。
【0013】
用語「期間」は、本願では、波形の1周期全体を完了するためにかかる時間を示すように使用される。典型的には、これは、インバータによって生成されるような高周波AC電圧の波形を示す。
【0014】
本発明に従ってインバータを制御しまたその基準信号を供給することは、FPGAのような、高価な高速コントローラの必要性を回避する。本発明は、基準信号を形成するための異なるアプローチ、具体的には、生成すべき基準信号の柔軟かつ簡潔な記述を提供するデータグラムに基づいてそれを形成することを提供する。この目的で、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含む特別なデータフォーマットが開発された。データグラムは、最小限の情報を用いて生成される基準信号を記述する。
【0015】
電気手術用ジェネレータは、それらの高周波交流出力電圧を様々なモードで提供する。例えば「PureCut」モードの場合、連続的な振動電圧として、単純なモードが提供される。さらに、周波数、振幅、デューティ比、及び/又は波高率に関して出力電圧が時間にわたって変化するように構成された、いくつかのより複雑なモードがある。一例は、非常に短い時間、例えば1つ又は2つの振動にわたるスパイクのような方法で非常に高い電圧を有し、非常に低い電圧又は無電圧のずっと長い休止部が後続する、「SprayCoag」モードである。休止部の継続時間は、スパイクよりも少なくとも一次元(10倍)長く、例えば、20倍長い。
【0016】
やや複雑なモードに従って出力電圧を生成できるようにするために、マルチレベルインバータのための基準信号を供給することは、非常にデータ集中的になりうる。最大で500kHzまでの高周波交流出力電圧を生成するマルチレベルインバータは、通常、典型的には約200MHzの範囲におけるずっと高い周波数によって駆動される。レベルの個数に依存して、各データ点のために、1/2バイト、1バイト、又は2バイトまでもが必要とされうる。このことはやや高い帯域幅要件をもたらし、それは、要求が厳しく、コストがかかる。
【0017】
本発明は、データ点の大容量ストリームではなく、出力電圧の所望の高周波正弦波曲線のための記述データを含むデータグラムを提供することにより、データの量と、従って、必要とされる帯域幅とを大幅に低減できることを実現した。このことは、所望の出力電圧が連続的な電圧であり、データグラムが単に2桁のビットを必要としうる場合、明らかである。しかしながら、驚くべきことに、本発明に係るデータグラム、具体的には、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラムが使用される場合、より複雑なモードもまた、単に少量のデータを必要とする。それによって、わずか数ダースバイトの長さと同じくらい短くなりうる最低限のデータを用いて、さまざまなモードを記述できる。明らかに、このことは、帯域幅要件の大幅な低減である。
【0018】
好ましくは、基準信号は、基準信号形成装置によって形成される。それは、データグラムによって定義される基準信号を形成するように構成される。さらに好ましくは、基準信号形成装置は、基準信号を記述するデータレコードを受信するように構成された受信機を備える。それによって、本発明に係るデータグラムの低減された帯域幅要件は、基準信号形成装置を、データグラムの発信元の近傍に制限されることなく、電気手術用ジェネレータの内部に配置することに関する向上した自由度を可能にする。
【0019】
本発明は、好ましくは、シンセサイザを用いることで基準信号の効率的な生成を可能にする。この目的で、基準信号形成装置は、好ましくは、受信機によって受信されたデータレコードを復号し、期間の各々に関するデータベクトルを抽出するように構成されたデコーダと、データフィールドによって定義されるシーケンスにおいて、各期間に関する抽出されたデータベクトルからの振幅及び周波数に関する信号を出力するように、かつ、このシーケンスを繰り返すように構成されたシーケンサと、データベクトルの各々に関して、各データベクトルに従って振幅及び周波数を有する振動波を形成するように構成されたシンセサイザとを備え、一連の振動波が基準信号を形成し、基準信号はインバータに供給される。本発明に係るデータグラムによって制御されることに関連して、出力電圧のための連続的及び非連続的な基準信号を容易に形成することができる。
【0020】
好ましくは、データグラムは複数のデータフィールドを含み、各期間に対して1つのデータフィールドが存在し、各データフィールドは、上記定義された個数の期間のうちの各1つの期間の振幅及び周波数を示す値を有する複数のデータベクトルのうちの1つを含む。期間の各々に関するデータベクトルを含むそれ自体のデータフィールドを提供することは、複雑なシーケンスを定義する際に高度な柔軟性を可能にし、それによって、休止によって分離された電圧のパルスを有するモードのような、電気手術用ジェネレータの複雑なモードの場合にさえ、基準信号形成装置が基準信号を形成することを可能にする。
【0021】
優位点として、データグラムは、極性、特に第1の期間の第1の半波の極性を示す第1の追加のデータフィールドをさらに含む。それによって、基準信号が正の半波及び負の半波のいずれで開始するかを選択することができ、それによって、電気手術用ジェネレータを用いる外科医は、高電圧出力電圧の極性(正又は負の第1の半波)を選択することができる。
【0022】
さらなる優位点として、データグラムは、期間の個数を示す第2の追加のデータフィールドをさらに含む。これによって、受信機と、特にデコーダ及びシーケンサとは、データグラムの完全性についてチェックできるようになる。それによって、いくつかの期間にわたってデータベクトルの欠落がある1つ又は複数の不完全なデータグラムを容易に識別及び拒否することができ、それによって、動作の安全性を向上することができる。
【0023】
追加的又は代替的に、データグラムは、好ましくは、開始及び終了情報を示す追加のデータフィールド、特に開始及び終了バイトを含んでもよい。それによって、データグラムの開始部及び終了部が明確に識別される。このことは、データグラムのデータ品質をさらに向上する。開始及び終了情報を用いて、指定されていない個数の期間にわたるデータグラムを有することも可能であり、それにより、より複雑なコードのための追加のデータベクトルとともに追加の期間を含むことが容易になる。このことは、将来の更新の可能性を向上する。さらに、オプションで、開始及び/又は終了情報は、データフローの向きを決定し、それによってデータグラムデータを読み出してもよく、及び/又は、データ完全性データフィールド、例えば、CRC(cyclic redundancy checksum)のようなチェックサムを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、データグラムは、最少で、2つの期間に関するデータフィールドを含む。
それによって、デューティ比のやや自由な選択が可能になり、このことは、電気手術用ジェネレータの複雑なモードを定義するための大きな利点である。
【0025】
好ましい一実施形態では、シンセサイザは半波振動を形成するように構成され、データグラムにおける期間は、半波振動の継続時間に関連する。それによって、各半波に関して、個々の周波数及び振幅を割り当てることができる。このことは、モードの電圧曲線を定義する際に、より高い粒度さえも可能にする。さらに、このことは、基準信号の非対称な形成を可能にし、それによって、より複雑なモードを構成する際にさらに自由度を向上する。データベクトルの概念によって、第2の半波に関する周波数及び/又は振幅が、第1の半波の周波数及び/又は振幅とは異なってもよいことに注意する価値がある。このことは本発明の重要な特徴であり、特に、第1及び第2の半波に関する異なる周波数を有する能力は、大きな利点である。従って、半波能力は、異なるモードに関して多種多様な異なる基準信号を構成する際に大きな柔軟性を提供する。
【0026】
さらに、シンセサイザは、単極の半波、特に正の半波のみを形成するように構成されてもよい。半波のみを生成可能にされたシンセサイザは、バイポーラシンセサイザに対して簡単化可能である。さらに、同じ個数のビットに関して、より高い量子化と、従って、電圧振幅に関するより高い分解能とを達成することができ、それによって、正弦波電圧曲線のより細かい再生を可能にする。さらなる利点として、より良好な量子化に起因して、不要な高調波の量を低減することができる。
【0027】
好ましくは、シンセサイザは、シンセサイザによって生成された半波を1つおきに反転するように構成された反転回路に接続される。すべての第2の半波を反転することによって、簡単化された半波シンセサイザを用いて、完全なバイポーラの振動を形成することができる。
【0028】
好ましくは、反転回路は、偶数の半波及び奇数の半波のいずれが反転されるべきであるかを示す選択信号に従って切り換え可能である、切り換え可能な反転回路である。
それによって、基準信号と、従って、形成される振動とが正の半波及び又は負の半波のいずれで開始するかを、選択信号によって容易に決定することができる。
好ましくは、反転回路の選択信号は、極性を示す第1の追加のデータフィールドに従って自動的に設定される。
【0029】
特に、電気手術用機器に出力電圧を供給する電気手術用ジェネレータが、より長い間にわたって動作する場合、又は、モードの交替(例えば、CUT及びCOAGモードの間での交替)を含むもののような複雑な動作モード動作する場合、時々、基準信号のいくつかの(ただしすべてではない)期間のデータベクトルを更新することが必要となりうる。明らかに、基準信号形成装置によって受信及び処理される新たな完全なデータグラムを生成及び送信することができる。しかしながら、データグラム全体を送信するのではなく、削減された集合(フラグメント)のみを送信するほうが、さらに効率的である。優位点として、受信機は、データグラムフラグメントを受信するようにさらに構成され、データグラムフラグメントは、補正された振幅及び周波数データベクトルと、関連する期間に関する識別子と有する、制限された個数のデータフィールドを含み、上記制限された個数は、1つ以上であるが、定義された個数の期間より少ない。それによって、基準信号形成装置は、データグラム全体の完全な送信を必要とすることなく、1つ(又はいくつか)の所定の期間に関する振幅及び周波数データベクトルを選択的に置換できるようになる。このことは、送信されるデータの量をさらに低減する。さらに、このことは、より高速な更新を可能にし、このような更新は、動作モードの間で、例えばCUT及びCOAGモードの間で高速に交替する能力にとって非常に重要である。
【0030】
この目的で、デコーダは、好ましくは、データベクトル及び識別子を抽出するように構成され、シーケンサは、関連する期間にわたって、振幅及び周波数に関する出力信号を、復号されたデータグラムフラグメントにおいて受信されたものによって、選択的に置換するように構成される。それによって、実際に変更されたデータベクトルのみを置換する必要があり、それによって、処理を簡単化及び高速化する。
【0031】
優位点として、データグラムは、データベクトルにおける振幅及び/又は周波数値のビット長が、マルチレベルインバータのレベルの個数及び周波数範囲に限定されるように圧縮される。それによって、不必要なより長いデータの送信を回避することができ、このことは、よりコンパクトなデータグラムをもたらし、より高速な送信及び処理を可能にする。
【0032】
好ましくは、データグラムは256バイト未満であり、好ましくは50バイト未満である。
【0033】
ほとんどの場合、受信機は、データグラムを受信するための制御装置に動作可能に接続され、上記制御装置は、電気手術用ジェネレータに対してローカルに設けられる。しかしながら、有利な実施形態では、受信機が遠隔の制御装置からデータグラムを受信するように構成されることも可能である。コンパクトなデータグラムと、結果的な低減された帯域幅要件とは、したがって、リモートコントロール接続、特に無線接続を介する動作を促進する。
【0034】
本発明はさらに、電気手術用ジェネレータを動作させる対応する方法に関する。さらなる説明のために、また、不必要な反復を避けるために、必要な変更を加えて適用可能である、上述した電気手術用ジェネレータの説明が参照される。
【0035】
本発明は、有利な例示的な実施形態を参照して、以下で、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】取り付けられた電気手術用機器とともに、例示的な実施形態に係る手術用ジェネレータのブロック図を示す。
【
図2】カスケード接続されたマルチレベルインバータのブロック図を示す。
【
図4】例示的な実施形態に係る基準信号形成装置のブロック図を示す。
【
図5b】対応するデータグラムのデータに関する第1の実施例を示す。
【
図6b】対応するデータグラムのデータに関する第2の実施例を示す。
【
図7】基準信号を形成する方法の例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1のブロック図において、例示的な実施形態に係る電気手術用ジェネレータを示す。参照符号1によって全体として識別される電気手術用ジェネレータは筐体11を備え、筐体11は、電気手術用機器16のための出力ソケット14を備える。それは、電気手術用ジェネレータ1の出力ソケット14に高電圧接続ケーブルを介して接続される。主接続ケーブル12は、公共配電網又は他の適切な電力供給手段に接続可能であり、電気手術用ジェネレータ1に電力を供給するために提供される。
【0038】
電気手術用ジェネレータ1は、筐体11において、主接続ケーブル12によって電力供給を受ける電源装置2を備える(
図1を参照)。電源装置2は、整流器を備え、DCリンク20に直流電圧を供給し、DCリンク20はインバータに供給する。インバータ3は、数キロボルトの高電圧範囲において高周波交流を生成する。高周波高電圧出力は、出力ライン23、低域通過フィルタ25を介して、また、高電圧を昇圧する絶縁型変圧器26を介して、出力ソケット14に供給され、出力ソケット14へのいかなるDC電流も阻止するための直列キャパシタ27を備える。電気手術用機器16は、出力ソケット14の差し込み口に接続可能である。出力ソケット14における出力電圧及び電流は、電圧及び電流センサの28によって測定され、対応する測定信号は、フィードバック回路19によって制御装置10に供給される。このことは、概して当該技術では既知であり、簡潔さのためにさらなる説明はしない。
【0039】
電気手術用ジェネレータ1の動作は制御装置10によって制御され、制御装置10は、信号ラインによって電源装置2及びインバータに接続される。制御装置10は、制御装置10のメモリに格納された機能に基づいて電気手術用ジェネレータ1を動作させる。機能は、電気手術用ジェネレータ1の動作特性及びモードを定義する。機能は、ユーザによって入力装置を用いて選択可能であり、入力装置は、従来のキー及びボタンインターフェースであってもよく、及び/又は、タッチスクリーンインターフェースであってもよい(図示せず)。例えば、出力される電力は、電力選択つまみ13によって選択可能であり、使用されるモードは、モード選択つまみ14によって選択可能である。
【0040】
インバータは、200kHz及び4MHzの間の範囲において高周波交流電圧を生成する。インバータは、マルチレベルインバータ3として具体化される。マルチレベルインバータによって生成される電圧の波形、周波数、デューティ比、及び振幅は、基準信号形成装置30によって生成される基準信号に基づいて、インバータ制御装置31によって決定される。基準信号形成装置30は、選択された電力及びモードに従って制御装置10によって決定される。
【0041】
マルチレベルインバータ3は複数のセルを備え、これらのセルは、
図2に示すようなカスケード接続として構成される。2つの異なるタイプのセルが存在し、それらは2つのグループとして構成され、グループごとに異なるDC電圧の供給を受ける。第1のグループは、低電圧セル3-1、3-2、及び3-3を備える。それらは、より低いDC電圧、表示した実施形態では12Vの供給を受ける。第2のグループは、高電圧セル3-4、3-5を備え、それらは、より高いDC電圧、表示した実施形態では48Vの供給を受ける。両方のグループは直列に接続され、それにより、セル3-1~3-5の各々によって出力される電圧が加算されて共通の出力電圧Voutになる。図示した構成は、-132V及び+132Vの間の範囲にわたる出力電圧を供給することができ、このことは、12Vのステップを有する23個のレベルに等価である。
【0042】
図3a及び
図3bにおいて、データグラムの例を示す。
図3aに示すデータグラムの第1の例において、データグラム100は、2つの期間に関するデータフィールド101及び102を含む。各データフィールド101及び102はデータベクトル121、122を含み、そのそれぞれは、2つの値、すなわち、振幅を示す1つの値「A」と、各期間の周波数を示すもう1つの値「f」とを有する。したがって、これらの値は、振幅及び周波数に関する各期間の特性を記述する。さらに、データグラム100は、第1の期間の極性、すなわち、振動が正の波及び負の波のいずれで開始するかを示す第1の追加のデータフィールド111を含む。またさらに、データグラム100は、データフィールド101、102においてデータベクトルを含む期間の個数「n」を示す、第2の追加のデータフィールド112を含む。本例では、「n」は2である。オプションで、データグラム100は、開始バイト及び終了バイトのための追加のデータフィールド113,114を含んでもよい。
【0043】
最大で15個までの期間に関するデータフィールドを含むデータグラムの場合について、利用可能なデータフィールドを下記の表1に示す。
【0044】
【0045】
斜体で書かれた表の行は、追加のデータフィールドを示す。他の行は、最大で15個までの期間の各々に関する振幅値及び周波数値を含むデータベクトルを含む。振幅値は、絶対的なものではなく、相対的な振幅値である。
【0046】
図3bにおいて、より複雑なデータグラム200を示す。それは、2つの期間に関する、かつ、いずれかの期間の各半波に関する、別個の、4つのデータフィールド201、202、203、及び204を含む。いずれか一方は、データベクトル221、222、223、224のうちの1つを含む。それによって、同じ期間に関して、その正の半波は、その負の半波とは異なる振幅及び/又は周波数を有してもよい。さらに、データグラム100と同様に、データグラム200もまた、極性に関する追加のデータフィールド211と、期間の個数に関する追加のデータフィールド212とを含む。追加のデータフィールド211における値は、各期間の第1の半波の極性を示す。
さらに、データグラム200は、オプションで、開始バイト及び終了バイトのための追加のデータフィールド213,214を含んでもよい。
【0047】
各半波に関する別個のデータフィールドを有するデータグラム200のデータフィールドを、下記の表2に示す。
【0048】
【0049】
表1と同様に、斜体で書かれた表2の行は、追加のデータフィールドを示す。他の行は、最大で15個までの期間の各々のいずれかの半波に関する振幅値及び周波数値を含むデータベクトルを含む。振幅値は、絶対的なものではなく、相対的な振幅値である。これらのデータグラム200によって、第2の半波に関する周波数が、第1の半波の周波数とは異なってもよいことに注意する価値がある。このことは、本発明の重要な特徴であり、異なるモードに関して多種多様な異なる基準信号を構成する際に大きな柔軟性を提供する。
【0050】
図4において、これらのデータグラム100および200を受信してインバータ3の基準信号を形成する、例示的な実施形態に係る基準信号形成装置30のブロック図を示す。それは、制御装置10に接続された受信機4を備える。それは、電気手術用ジェネレータ1のローカルな制御装置10から形成される基準信号を記述するデータグラム100、200を受信するように構成される。
【0051】
オプションで、そのようなデータグラム100、200が、遠隔の装置92から、好ましくは安全な無線接続99によって送信され、それによって、基準信号形成装置30を遠隔制御できるようにすることが可能であってもよい。データグラム100、200の低い帯域幅要件は、典型的には限られた帯域幅を有する遠隔制御にとって好都合である。
【0052】
受信機4は、受信されたデータグラム100、200をデコーダ5に伝送する。デコーダ5は、データグラムを復号し、様々なデータフィールドからのデータベクトル121、122、221、222、223、224を抽出し、さらに、追加のデータフィールド111、112、113、114、211、212、213、214からデータを抽出するように構成される。デコーダ5は、抽出されたデータをシーケンサ6に供給する。シーケンサ6は、各期間に関するデータベクトルから抽出されたデータを、データフィールドによって定義されるような適切なシーケンスに整列し、いったんシーケンスの末尾に到達すると、先頭に戻ってこのシーケンスを何度も繰り返すように構成される。このことは、新たなデータを含む新たなデータグラムが受信されているまで、又は、データベクトルのうちの一部の更新を含むデータフラグメントが受信されるまで実行され、次いで、これらの更新されたデータベクトルは、シーケンスを中断することなく、各前のものを置換する。データベクトルから抽出された振幅に関するデータ「A」及び周波数に関する「f」は、ディジタル制御シンセサイザ7に供給される。ディジタル制御シンセサイザ7は、データグラムのデータベクトルから抽出されたデータによって決定される、上記シーケンスの波の各々に係る波、振幅、及び周波数のシーケンスを含む連続振動を形成する。
図4に示す実施形態において、ディジタル制御シンセサイザ7は、オプションで、単極のストリーム、この場合は正の半波のみを提供するように構成されることに注意すべきである。このことは、同じ個数のビットを用いて2倍の分解能を可能にする。
【0053】
負の半波の省略を達成するために、切り換え可能な反転回路8が提供される。それは、半波を1つおきに反転するように構成され、それによって、省略された負の半波を形成する。反転回路8を制御するために、追加のデータフィールド111、211から抽出された極性に関する信号が印加される。抽出された極性データが正の極性を要求する場合、第1の半波及び後続するすべての奇数の半波は反転されず、反転は、第2の半波及び後続するすべての偶数の半波に対して実行され、それによって、正の第1の半波を有する全波を生成する。逆に、抽出された極性データが負の極性を要求する場合、反転は、第1の半波及び後続するすべての奇数の半波に対して実行され、それによって、負の第1の半波を有する全波を生成する。これによって、全波基準信号38の形成が完了し、それは、マルチレベルインバータ3によって処理するために、基準信号形成装置30から出力されてインバータ制御装置31に供給される。
【0054】
図5aにおいて、基準信号形成装置30によってこの方法で形成された基準信号の例を示す。基準信号は、複雑でない信号である。この例では、それは、電気手術用ジェネレータ1の「純粋な切断(pure cut)」モードに適した正弦波である。
図5bにおいて、データグラムの様々なデータフィールドのために使用されるデータ値及びパラメータを示す。さらに、データフィールドの各々のためのビット長を示す。基準信号をデータグラムにより定義することでマルチレベルインバータ3を制御するために必要とされるデータの総量は、ちょうど37ビットである。このデータグラムを一度だけ送信する必要があり、基準信号形成装置30は、上記データグラムによって定義される波形、振幅、及び周波数を有する連続的な基準信号を生成する。このことは、マルチレベルインバータ3を従来技術により制御する場合に必要とされる大量のデータに対して、非常に対照的である。
【0055】
図6aにおいて、より複雑な基準信号の例を示す。この基準信号は、より複雑であり、半波が定義される2つの期間を含む。したがって、それは、
図3bに示すデータグラム200のようなデータグラムを使用する。第1の期間の周波数はやや高周波であり(350Hz)、第2の期間の周波数はずっと低い(19Hz)。第1の期間の大きな振幅と、第2の期間の低い、正確にはゼロの振幅とともに、約5.5%のデューティ比を有する針のような基準信号が生成され、それは、電気手術用ジェネレータ1の「スプレー及び凝個(spray and coagulation)モード」によく適した基準信号である。この例が示すように、最小限のデータ、この例ではちょうど69ビットを用いることで、大きなデューティ比を有する複雑な基準信号さえも形成することができる。再び、このことは、マルチレベルインバータ3を従来技術により制御する場合に必要とされる大量のデータに対して、非常に対照的である。
【0056】
図7において、マルチレベルインバータ3を制御するために基準信号を形成する方法に関する例示的なフロー図を示す。ステップ81においてデータグラム100を受信すると、ステップ83において、上に詳述したように、基準信号が形成される。多くの場合において、データグラム100によって定義される基準信号は、ステップ89においてインバータ3を制御し、マルチレベルインバータ3によって生成される高周波交流電圧の波形、周波数、及び振幅を定義するために、(分岐「n」を介して)直接的に使用される。しかしながら、ステップ85においてデータフラグメントの受信に関するチェックを行うことで、そのようなデータフラグメントが受信されたことが明らかになった場合、動作のフローは(分岐「p」を介して)分岐し、ステップ86において、上記データフラグメントに含まれるデータフィールドに含まれるデータベクトルの抽出を実行する。続いて、それによって検索されたデータベクトルは、対応する元のデータベクトルを置換し、ステップ88において、更新された基準信号が形成される。最終的に、ステップ89において、マルチレベルインバータ3は、該当する場合にはデータフラグメントによる任意の更新も含む、基準信号に基づいて制御され、それによって、基準信号を形成するために使用されたデータグラム100によって定義される波形、周波数、及び振幅を有する高周波交流電圧を生成する。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータであって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、
上記インバータが、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する基準信号によって制御されるマルチレベルインバータ(3)であることと、
上記基準信号が、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラム(100,200)によって定義されることとを特徴とする、
電気手術用ジェネレータ。
【請求項2】
上記基準信号は、基準信号形成装置(30)によって供給される、
請求項1記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項3】
上記基準信号形成装置(30)は、
- 上記データグラム(100,200)を含むデータレコードを受信するように構成された受信機(4)と、
- 上記受信機(4)によって受信されたデータレコードを復号し、上記期間の各々に関する上記データベクトルを抽出するように構成されたデコーダ(5)と、
- データフィールドによって定義されるシーケンスにおいて、各期間に関する上記抽出されたデータベクトルからの振幅及び周波数に関する信号を出力するように、かつ、このシーケンスを繰り返すように構成されたシーケンサ(6)と、
- データベクトルの各々に関して、上記各データベクトルに従って振幅及び周波数を有する振動波を形成するように構成されたシンセサイザ(7)とを備え、
一連の振動波が上記基準信号を形成し、上記基準信号は上記インバータ(3)に供給される、
請求項2記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項4】
上記データグラム(100,200)は、複数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
各期間に対して1つのデータフィールドが存在し、
各データフィールドは、上記定義された個数の期間のうちの各1つの期間の振幅及び周波数を示す値を有する複数のデータベクトルのうちの1つを含む、
請求項1記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項5】
上記データグラム(100,200)は、極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)をさらに含む、
請求項4記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項6】
上記データグラム(100,200)は、上記期間の個数を示す第2の追加のデータフィールド(112,113)をさらに含む、
請求項4記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項7】
上記データグラム(100,200)は、開始及び終了情報を示す追加のデータフィールド(113,114;213,214)を含む、
請求項4記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項8】
上記シンセサイザ(7)は、半波振動を形成するように構成され。
上記データグラム(100,200)における期間は、上記半波振動の継続時間に関連する、
請求項3記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項9】
上記シンセサイザ(7)は、単極の半波のみを形成するように構成される、
請求項8記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項10】
上記シンセサイザ(7)に反転回路(8)が接続され、上記反転回路(8)は、上記シンセサイザ(7)によって生成された半波を1つおきに反転するように構成される、
請求項9記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項11】
上記反転回路(8)は、偶数の半波及び奇数の半波のいずれが反転されるべきであるかを示す選択信号に従って切り換え可能である、切り換え可能な反転回路である、
請求項10記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項12】
上記選択信号は、極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)に従って自動的に設定される、
請求項11記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項13】
上記受信機(4)は、データグラムフラグメントを受信するようにさらに構成され、
上記データグラムフラグメントは、補正された振幅及び周波数データベクトルと、関連する期間に関する識別子と有する、制限された個数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
上記制限された個数は、1つ以上であるが、上記定義された個数の期間より少ない、
請求項3記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項14】
上記デコーダは、上記データベクトル及び識別子を抽出するように構成され、
上記シーケンサは、上記関連する期間にわたって、上記振幅及び周波数に関する出力信号を、復号されたデータグラムフラグメントにおいて受信されたものによって、選択的に置換するように構成される、
請求項13記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項15】
上記データグラム(100,200)は、上記データベクトルにおける振幅及び/又は周波数値のビット長が、上記マルチレベルインバータのレベルの個数及び周波数範囲に限定されるように圧縮される、
請求項1記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項16】
上記受信機(4)は、上記データグラム(100,200)を受信するための制御装置(10)に接続され、及び/又は、上記データグラム(100,200)を遠隔の制御装置(92)から受信するように構成される、
請求項3記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項17】
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータを動作させる方法であって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、上記インバータは、マルチレベルインバータ(3)であることを特徴とし、
上記方法は、データグラム(100,200)に従って基準信号を形成(83)することを含み、
上記データグラム(100,200)は上記基準信号を定義し、上記基準信号は、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含み、
上記方法は、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する上記基準信号によって、上記マルチレベルインバータ(3)を制御することを含む、
方法。
【請求項18】
上記基準信号は、請求項2~16のうちのいずれかに従ってさらに形成される、
請求項17記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図7において、マルチレベルインバータ3を制御するために基準信号を形成する方法に関する例示的なフロー図を示す。ステップ81においてデータグラム100を受信すると、ステップ83において、上に詳述したように、基準信号が形成される。多くの場合において、データグラム100によって定義される基準信号は、ステップ89においてインバータ3を制御し、マルチレベルインバータ3によって生成される高周波交流電圧の波形、周波数、及び振幅を定義するために、(分岐「n」を介して)直接的に使用される。しかしながら、ステップ85においてデータフラグメントの受信に関するチェックを行うことで、そのようなデータフラグメントが受信されたことが明らかになった場合、動作のフローは(分岐「p」を介して)分岐し、ステップ86において、上記データフラグメントに含まれるデータフィールドに含まれるデータベクトルの抽出を実行する。続いて、それによって検索されたデータベクトルは、対応する元のデータベクトルを置換し、ステップ88において、更新された基準信号が形成される。最終的に、ステップ89において、マルチレベルインバータ3は、該当する場合にはデータフラグメントによる任意の更新も含む、基準信号に基づいて制御され、それによって、基準信号を形成するために使用されたデータグラム100によって定義される波形、周波数、及び振幅を有する高周波交流電圧を生成する。
[1]本発明の第1の態様によれば、
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータであって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、
上記インバータが、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する基準信号によって制御されるマルチレベルインバータ(3)であることと、
上記基準信号が、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含むデータグラム(100,200)によって定義されることとを特徴とする。
[2]本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、
上記基準信号は、基準信号形成装置(30)によって供給される。
[3]本発明の第3の態様によれば、第2の態様において、
上記基準信号形成装置(30)は、
- 上記データグラム(100,200)を含むデータレコードを受信するように構成された受信機(4)と、
- 上記受信機(4)によって受信されたデータレコードを復号し、上記期間の各々に関する上記データベクトルを抽出するように構成されたデコーダ(5)と、
- データフィールドによって定義されるシーケンスにおいて、各期間に関する上記抽出されたデータベクトルからの振幅及び周波数に関する信号を出力するように、かつ、このシーケンスを繰り返すように構成されたシーケンサ(6)と、
- データベクトルの各々に関して、上記各データベクトルに従って振幅及び周波数を有する振動波を形成するように構成されたシンセサイザ(7)とを備え、
一連の振動波が上記基準信号を形成し、上記基準信号は上記インバータ(3)に供給される。
[4]本発明の第4の態様によれば、第1~第3のうちの1つの態様において、
上記データグラム(100,200)は、複数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
各期間に対して1つのデータフィールドが存在し、
各データフィールドは、上記定義された個数の期間のうちの各1つの期間の振幅及び周波数を示す値を有する複数のデータベクトルのうちの1つを含む。
[5]本発明の第5の態様によれば、第1~第4のうちの1つの態様において、
上記データグラム(100,200)は、極性、特に第1の期間の第1の半波の極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)をさらに含む。
[6]本発明の第6の態様によれば、第1~第5のうちの1つの態様において、
上記データグラム(100,200)は、上記期間の個数を示す第2の追加のデータフィールド(112,113)をさらに含む。
[7]本発明の第7の態様によれば、第1~第6のうちの1つの態様において、
上記データグラム(100,200)は、開始及び終了情報、特に開始及び終了バイトを示す追加のデータフィールド(113,114;213,214)を含む。
[8]本発明の第8の態様によれば、第3~第7のうちの1つの態様において、
上記シンセサイザ(7)は、半波振動を形成するように構成され。
上記データグラム(100,200)における期間は、上記半波振動の継続時間に関連する。
[9]本発明の第9の態様によれば、第8の態様において、
上記シンセサイザ(7)は、単極の半波、特に正の半波のみを形成するように構成される。
[10]本発明の第10の態様によれば、第9の態様において、
上記シンセサイザ(7)に反転回路(8)が接続され、上記反転回路(8)は、上記シンセサイザ(7)によって生成された半波を1つおきに反転するように構成される。
[11]本発明の第11の態様によれば、第10の態様において、
上記反転回路(8)は、偶数の半波及び奇数の半波のいずれが反転されるべきであるかを示す選択信号に従って切り換え可能である、切り換え可能な反転回路である。
[12]本発明の第12の態様によれば、第11の態様において、
上記選択信号は、極性を示す第1の追加のデータフィールド(111,211)に従って自動的に設定される。
[13]本発明の第13の態様によれば、第3~第12のうちの1つの態様において、
上記受信機(4)は、データグラムフラグメントを受信するようにさらに構成され、
上記データグラムフラグメントは、補正された振幅及び周波数データベクトルと、関連する期間に関する識別子と有する、制限された個数のデータフィールド(101,102;201,202,203,204)を含み、
上記制限された個数は、1つ以上であるが、上記定義された個数の期間より少ない。
[14]本発明の第14の態様によれば、第13の態様において、
上記デコーダは、上記データベクトル及び識別子を抽出するように構成され、
上記シーケンサは、上記関連する期間にわたって、上記振幅及び周波数に関する出力信号を、復号されたデータグラムフラグメントにおいて受信されたものによって、選択的に置換するように構成される。
[15]本発明の第15の態様によれば、第1~第14のうちの1つの態様において、
上記データグラム(100,200)は、上記データベクトルにおける振幅及び/又は周波数値のビット長が、上記マルチレベルインバータのレベルの個数及び周波数範囲に限定されるように圧縮される。
[16]本発明の第16の態様によれば、第3~第15のうちの1つの態様において、
上記受信機(4)は、上記データグラム(100,200)を受信するための制御装置(10)に接続され、及び/又は、上記データグラム(100,200)を遠隔の制御装置(92)から受信するように構成される。
[17]本発明の第17の態様によれば、
電気手術用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気手術用ジェネレータを動作させる方法であって、
上記電気手術用ジェネレータは、制御装置(10)と、高電圧用のインバータ(3)とを備え、上記インバータ(3)は、可変な周波数及び振幅を有する高周波交流電圧を生成し、上記高周波交流電圧は、電気手術用機器(16)に接続するための出力ソケット(14)に供給され、上記インバータは、マルチレベルインバータ(3)であることを特徴とし、
上記方法は、データグラム(100,200)に従って基準信号を形成(83)することを含み、
上記データグラム(100,200)は上記基準信号を定義し、上記基準信号は、定義された個数の期間に関する所定の順番で並べられた振幅及び周波数データベクトルの有限列を含み、
上記方法は、生成された上記高周波交流電圧の波形を定義する上記基準信号によって、上記マルチレベルインバータ(3)を制御することを含む。
[18]本発明の第18の態様によれば、第17の態様において、
上記基準信号は、第2~第16のうちの1つに従ってさらに形成される。
【外国語明細書】