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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074448
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】漏水箇所推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240524BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20240524BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G06Q50/06
G01M3/00 C
E03B7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185585
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山森 直毅
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】中道 大介
(72)【発明者】
【氏名】金子 紀美
(72)【発明者】
【氏名】大塚 美穂
(72)【発明者】
【氏名】柳田 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤弥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】陳 巨壹
【テーマコード(参考)】
2G067
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2G067AA13
2G067CC02
2G067DD02
2G067DD05
2G067DD10
2G067DD13
2G067DD27
2G067EE08
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】漏水の検査負担を低減することが可能な漏水箇所推定システムを提供する。
【解決手段】需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システム1であって、漏水に関する症状の自主的な報告である第一の報告を対象者から取得可能な第一の取得部と、第一の報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部23と、抽出部23で抽出された症状発生場所に基づいて選定した報告依頼対象者に、漏水に関する症状の報告を依頼可能な依頼部と、依頼部からの依頼に応じた報告である第二の報告を報告依頼対象者から取得可能な第二の取得部と、少なくとも第二の報告に基づいて、漏水被疑箇所を推定可能な推定部24と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システムであって、
漏水に関する症状の自主的な報告である第一の報告を対象者から取得可能な第一の取得部と、
前記第一の報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部と、
前記抽出部で抽出された前記症状発生場所に基づいて選定した報告依頼対象者に、漏水に関する症状の報告を依頼可能な依頼部と、
前記依頼部からの依頼に応じた報告である第二の報告を前記報告依頼対象者から取得可能な第二の取得部と、
少なくとも前記第二の報告に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部と、
を具備する、
漏水箇所推定システム。
【請求項2】
前記抽出部は、
前記第二の報告に基づいて、前記症状発生場所を抽出可能であり、
前記漏水箇所推定システムは、
前記抽出部による前記症状発生場所の抽出と、前記依頼部による前記報告の依頼と、を複数回繰り返す、
請求項1に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項3】
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所からの距離が所定の閾値以下の場所にいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項4】
前記管路は、
分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所の直近の前記配水管に前記給水管を介して接続される場所にいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項5】
前記管路は、
分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所から浄水場及び配水場までを最短で繋ぐ前記配水管の系統に、前記給水管を介して接続される場所にいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項6】
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所の近隣エリアにいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項7】
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所からの前記管路の長さが所定の閾値以下の場所にいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項8】
前記報告依頼対象者には、
前記症状発生場所からの前記管路の分岐回数が所定の閾値以下の場所にいる人が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項9】
前記推定部は、
前記症状発生場所及び前記管路に関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能である、
請求項1に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項10】
需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システムであって、
漏水に関する症状の報告を複数の対象者から取得可能な取得部と、
前記報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部と、
前記症状発生場所及び前記管路に関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部と、
を具備する、
漏水箇所推定システム。
【請求項11】
前記管路は、
分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、
前記推定部は、
複数の前記配水管から、所定の閾値以上の数の前記症状発生場所に前記給水管を介して上水を分配する第一の配水管を抽出し、
前記第一の配水管、及び、前記第一の配水管に対して所定回数以下の分岐回数で接続される第二の配水管を、前記漏水被疑箇所として推定可能である、
請求項9又は請求項10に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項12】
学習済みの学習モデルを用いて、前記漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出可能な算出部をさらに具備する、
請求項1又は請求項10に記載の漏水箇所推定システム。
【請求項13】
前記報告には、
水道水の脈動、水道水の水圧の変化、水道水への異物の混入、水道水の変色、断水及び水道料金の上昇の少なくとも1つの項目が含まれる、
請求項1又は請求項10に記載の漏水箇所推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、需要家へと上水を供給する管路において、漏水に関する処理を行う技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のシステムは、地図・水道関連データベース及び表示制御部等を具備する。地図・水道関連データベースは、苦情内容及び漏水事故の原因を、地図上の位置座標データと関連付けて記憶する。表示制御部は、ディスプレイに表示された地図上に前記苦情内容等を表示可能に構成される。
【0004】
特許文献1に記載のシステムを用いることによって、水道事業者は、例えば苦情内容に基づいて漏水の可能性があることを把握することができる。しかし、特許文献1のように苦情内容が把握できたとしても、実際に漏水が発生している場所を特定することはできないため、水道事業者が漏水の検査範囲を絞り込むことができない。このため、水道事業者は広範囲に亘って漏水の検査を行う必要があり、漏水の検査に負担がかかるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3163085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、漏水の検査負担を低減することが可能な漏水箇所推定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システムであって、漏水に関する症状の自主的な報告である第一の報告を対象者から取得可能な第一の取得部と、前記第一の報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部と、前記抽出部で抽出された前記症状発生場所に基づいて選定した報告依頼対象者に、漏水に関する症状の報告を依頼可能な依頼部と、前記依頼部からの依頼に応じた報告である第二の報告を前記報告依頼対象者から取得可能な第二の取得部と、少なくとも前記第二の報告に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、漏水の検査負担を低減することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記抽出部は、前記第二の報告に基づいて、前記症状発生場所を抽出可能であり、前記漏水箇所推定システムは、前記抽出部による前記症状発生場所の抽出と、前記依頼部による前記報告の依頼と、を複数回繰り返すものである。
本開示の一態様によれば、漏水被疑箇所の推定の精度の向上を図ることができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所からの距離が所定の閾値以下の場所にいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記管路は、分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所の直近の前記配水管に前記給水管を介して接続される場所にいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、症状発生場所を効率的に抽出することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記管路は、分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所から浄水場及び配水場までを最短で繋ぐ前記配水管の系統に、前記給水管を介して接続される場所にいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所の近隣エリアにいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所からの前記管路の長さが所定の閾値以下の場所にいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記報告依頼対象者には、前記症状発生場所からの前記管路の分岐回数が所定の閾値以下の場所にいる人が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記推定部は、前記症状発生場所及び前記管路に関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能である。
本開示の一態様によれば、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【0017】
本開示の一態様においては、需要家へと上水を供給する管路において、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システムであって、漏水に関する症状の報告を複数の対象者から取得可能な取得部と、前記報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部と、前記症状発生場所及び前記管路に関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、漏水の検査負担を低減することができる。
【0018】
本開示の一態様においては、分岐部によって接続された複数の配水管、及び、前記配水管から上水を分配する複数の給水管を含み、前記推定部は、複数の前記配水管から、所定の閾値以上の数の前記症状発生場所に前記給水管を介して上水を分配する第一の配水管を抽出し、前記第一の配水管、及び、前記第一の配水管に対して所定回数以下の分岐回数で接続される第二の配水管を、前記漏水被疑箇所として推定可能である。
本開示の一態様によれば、漏水の可能性が比較的高い第一の配水管及びその周辺の第二の配水管を漏水被疑箇所として推定することができ、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【0019】
本開示の一態様においては、学習済みの学習モデルを用いて、前記漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出可能な算出部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【0020】
本開示の一態様においては、前記報告には、水道水の脈動、水道水の水圧の変化、水道水への異物の混入、水道水の変色、断水及び水道料金の上昇の少なくとも1つの項目が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、水道水の脈動等に基づいて、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、漏水の検査負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】管路を示す説明図。
図2】第一実施形態に係る漏水箇所推定システムを示すブロック図。
図3】分岐回数に関する説明図。
図4】漏水に関する症状を報告する際のメッセージのやり取りの一例を示す図。
図5】漏水被疑箇所を推定する被疑箇所推定処理を示すフローチャート。
図6】アンケートを送信するアンケート送信処理を示すフローチャート。
図7】アンケートの一例を示す図。
図8】アンケートを送信する範囲を示す説明図。
図9】アンケートを繰り返し送信する様子を示す説明図。
図10】症状発生場所が集中するエリアを示す説明図。
図11】通知部から対象者に通知されるメッセージの一例を示す図。
図12】第二実施形態における管路の長さに関する説明図。
図13】第三実施形態における被疑箇所推定処理を示すフローチャート。
図14】第四実施形態における被疑箇所推定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の第一実施形態に係る漏水箇所推定システム1について説明する。
【0024】
漏水箇所推定システム1は、需要家(各家庭等)へと上水を供給する管路Kにおいて、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定するためのものである。まず図1を参照し、管路Kについて説明する。
【0025】
管路Kは、給水管K1及び配水管K2を具備する。給水管K1は、配水管K2から上水を分配するためのものである。給水管K1の中途部には、水道メータ等が設けられる。本実施形態の給水管K1は、当該水道メータによって上水の使用量が管理される管路である。
【0026】
配水管K2は、配水場Hから給水管K1へと上水を導くためのものである。図1においては、複数の配水管K2が格子状に接続されている。ここで、本実施形態では、1本の配水管K2が2本以上に分岐する部分を分岐部Bとする。本実施形態では、分岐部Bを介して接続されたそれぞれの配水管K2を「1本の配水管K2」とする。言い換えると、例え複数の配管を接続して構成された配水管K2であったとしても、中途部において分岐していないものであれば、当該配水管K2は「1本の配水管K2」であるものとする。なお配水管K2は、給水管K1へ上水を導くことができるものであればよく、配水管K2の配置は図1に示すような格子状に限定されるものではない。配水管K2は、需要家の位置、地形、道路形状等に応じて任意に配置されてよい。
【0027】
管路Kでは、給水管K1及び配水管K2の経年劣化等により、漏水が発生する場合がある。漏水が発生した箇所(図1では漏水箇所P)を発見するための方法としては、例えば音聴棒を使用して漏水音を検知する方法が用いられる。しかし給水管K1及び配水管K2は広範囲に敷設されているため、ある程度検査範囲を絞り込まなければ検査負担が増大してしまう。
【0028】
本実施形態の漏水箇所推定システム1は、漏水に関する症状の報告に基づいて、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定するためのものである。上水を管理する管理者(水道局等)は、漏水被疑箇所に基づいて漏水検査を行う場所を容易に決めることができる。
【0029】
なお漏水に関する症状とは、漏水の発生に伴って発生し得る症状である。より詳細には、漏水が発生した場合、漏水箇所Pの周辺(特に下流側)では、水道水(上水)の脈動、水道水の水圧の変化、水道水への異物の混入、水道水の変色、断水及び水道料金の上昇といった症状が起こる可能性があると考えられる。本実施形態では、こうした水道水の脈動等の症状(漏水に関する症状)の報告に基づいて漏水被疑箇所を推定する。
【0030】
以下、図2を参照して漏水箇所推定システム1の構成について説明する。漏水箇所推定システム1は、端末10及びサーバ20を具備する。
【0031】
端末10は、サーバ20と通信可能な機器である。端末10は、スマートフォン、タブレット及びPC等によって構成される。端末10には、サーバ20と通信するためのアプリケーションがインストールされる。本実施形態の端末10には既存のメッセージアプリ11がインストールされており、当該メッセージアプリ11を介して端末10がサーバ20と通信するように構成される。
【0032】
メッセージアプリ11には、画像及び動画をアップロードするアップロード機能と、アップロードした画像等を表示するプレビュー機能とが実装されている。なお端末10には、必ずしも既存のメッセージアプリ11がインストールされる必要はなく、例えば独自のメッセージアプリがインストールされてもよい。また端末10は、サーバ20と通信可能なアプリがインストールされていればよく、必ずしもそのアプリがメッセージアプリである必要はない。
【0033】
サーバ20は、外部の機器からの要求に応じて種々の演算処理を行うためのものである。サーバ20は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、メモリ等の記憶装置を具備し、漏水箇所推定システム1の動作に関する演算処理を実行可能に構成される。またサーバ20は、外部の機器と通信可能に構成される。サーバ20は、取得部21、送信部22、抽出部23、推定部24、算出部25、通知部26及び記憶部27を具備する。
【0034】
取得部21は、漏水に関する症状の報告(以下、「症状報告」と称する)を対象者T(図4参照)から取得するためのものである。対象者Tは、端末10を操作することによって症状報告を行うことができる者を指す。対象者Tには、例えば、住宅に居住する居住者、オフィスを使用する法人の関係者等が含まれる。
【0035】
送信部22は、所定の人に対して症状報告の依頼を行うためのものである。本実施形態では、送信部22は、水道水(上水)についてのアンケートを送信することで、症状報告の依頼を行うように構成される。
【0036】
抽出部23は、取得部21で取得された症状報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している場所(以下、「症状発生場所」と称する)を抽出するためのものである。
【0037】
推定部24は、取得部21で取得された症状報告に基づいて、漏水被疑箇所を推定するためのものである。本実施形態では、推定部24は、複数の配水管K2及び複数の給水管K1の中から、少なくとも1つの管を漏水被疑箇所として推定することができる。
【0038】
算出部25は、漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出するためのものである。本実施形態では、算出部25は、後述する学習モデル27cを用いて漏水の発生確率を算出することができる。
【0039】
通知部26は、外部の機器と通信することで、当該機器に情報を通知するためのものである。通知部26は、管理者が所有する機器(例えば管理者側のサーバ等)と通信することで、管理者に情報を通知することができる。また通知部26は、端末10と通信することで、対象者Tに情報を通知することができる。例えば通知部26は、メッセージアプリ11に所定のメッセージを表示させることで、対象者Tに情報を通知することができる。なお通知部26による通知の手段は特に限定されるものではない。通知部26は、例えばメール等によって対象者Tに情報を通知可能に構成されてもよい。
【0040】
記憶部27は、各種情報を記憶するための部分である。記憶部27には、位置情報27a、管路情報27b及び学習モデル27cが記憶される。
【0041】
位置情報27aは、対象者Tの場所を特定可能な情報である。位置情報27aには、例えば対象者Tの識別情報(例えば氏名等)と、その対象者Tの住宅又はオフィスの住所等とが互いに関連付けて記憶される。
【0042】
管路情報27bは、管路Kに関する情報である。管路情報27bには、給水管K1及び配水管K2の配置を判断可能な情報(例えば管路図等)と、給水管K1及び配水管K2の個別の情報(例えば管の径、流量及び敷設年数等)とが含まれる。
【0043】
学習モデル27cは、所定のパラメータに基づいて、漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出するためのものである。所定のパラメータとは、漏水の発生確率に応じて変化するものである。所定のパラメータには、例えば、症状発生場所から漏水被疑箇所までの距離、症状発生場所から漏水被疑箇所までの管路Kにおける管の分岐回数、漏水に関する症状(脈動等)、前記症状の程度、症状の発生頻度、管の径、管の流量、又は管の敷設年数の少なくともいずれかが含まれる。
【0044】
なお、症状発生場所から漏水被疑箇所までの距離は、症状発生場所から漏水被疑箇所までの直線距離であってもよいし、症状発生場所から漏水被疑箇所までの管路Kの長さであってもよい。
【0045】
前記分岐回数は、症状発生場所から漏水被疑箇所までの管路Kにおいて、配水管K2が分岐する部分(分岐部B)の数を示す。例えば、図3に示す建物T1から配水管K23までの間に分岐部B1・B2は2つ配置されているため、建物T1から配水管K23までの間の分岐回数は「2」となる。なお、分岐回数の定義は一例であり、例えば給水管K1と配水管K2との接続部(P1)も分岐回数として計上してもよい。この場合、建物T1から配水管K23までの間の分岐回数は「3」となる。
【0046】
前記症状の発生頻度は、症状被疑箇所に対して過去に行われた症状報告の頻度を示す。また前記管の径、前記管の流量及び前記管の敷設年数は、漏水被疑箇所として推定された給水管K1及び配水管K2の径、流量及び敷設年数を示す。
【0047】
なお、漏水の発生確率を算出するためのパラメータは、漏水の発生確率に応じて変化するものであればよく、上述した漏水被疑箇所までの距離等に限定されるものではない。
【0048】
図2に示す学習モデル27cは、予め行われる機械学習により、前記パラメータ(分岐回数等)の特徴量に応じた漏水の発生確率を算出可能に構成される。例えば、漏水が発生している場合のパラメータと漏水が発生していない場合のパラメータとが準備され、漏水の有無とパラメータとの関係が教師あり学習により学習されることで、学習モデル27cが構築される。当該学習モデル27cにパラメータが入力されると、当該パラメータの特徴量に応じた漏水の発生確率が出力される。
【0049】
なお学習モデル27cは、漏水の発生確率ではなく、漏水の可能性を管理者が把握可能なその他の情報を算出することも可能である。例えば学習モデル27cは、漏水の可能性の有無を算出してもよい。また学習モデル27cは、漏水の可能性大、中、小のように、漏水の可能性の度合いを算出してもよい。
【0050】
対象者Tは、例えば自宅の水道を使用した際に脈動等の症状に気づいた場合、端末10のメッセージアプリ11を介して、その症状をサーバ20に自主的に報告することができる。以下では、こうした対象者Tの自主的な症状報告(漏水に関する症状の報告)を行う処理の一例について説明する。本実施形態では対象者Tは、メッセージアプリ11を用いたサーバ20とのメッセージのやり取りにより、症状報告を行うことができる。以下図4を参照し、その内容を説明する。
【0051】
対象者Tは端末10を操作して、症状報告を開始するためのメッセージを送信する。サーバ20は、当該メッセージ送信を受けて、漏水に関する症状(水道水の脈動等)の内容を問い合わせるメッセージを送信する。例えばサーバ20は、脈動の発生、水圧の低下、水道水への異物の混入、水道水の変色、断水及び水道料金の上昇が生じているかを選択可能な症状選択項目11aを含むメッセージを送信する。
【0052】
症状選択項目11aから該当する症状(図4では脈動の発生)が対象者Tにより選択された場合、サーバ20は、その症状の程度を問い合わせるメッセージを送信する。例えばサーバ20は、症状の程度を選択可能な程度選択項目11bを含むメッセージを送信する。
【0053】
程度選択項目11bから該当する程度(図4では中)が対象者Tにより選択された場合、サーバ20は、その症状を撮影した画像及び動画を対象者Tに要求するメッセージを送信する。対象者Tは、メッセージアプリ11のアップロード機能(図4では、紙面下部に示すアップロードボタン11c)を用いることにより、画像及び動画をアップロードすることができる。
【0054】
取得部21は、上述したようなメッセージのやり取りにおける対象者Tからの情報を記憶することで、対象者Tからの自主的な報告(漏水に関する症状の内容、程度、画像及び動画)を取得することができる。また対象者Tは、メッセージアプリ11のプレビュー機能により、アップロードした画像及び動画を確認することができる。
【0055】
なお図4に示す症状報告のメッセージのやり取りの内容は一例であり、漏水に関する症状を対象者Tが自主的に報告可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、漏水に関する症状の有無の報告、症状の程度の報告、及び画像等のアップロードの少なくともいずれか1つを行うことで、症状報告が完了するものであってもよい。また症状報告では、前記症状の有無や程度等に限らず、その他種々の情報を対象者Tが報告してもよい。
【0056】
本実施形態のサーバ20は、上述のようにして取得部21で取得された症状報告(対象者Tの自主的な症状報告)を契機に被疑箇所推定処理を実行する。被疑箇所推定処理は、漏水被疑箇所を推定するための処理である。以下では図4から図7を参照し、被疑箇所推定処理について説明する。
【0057】
ここで、症状報告には、対象者Tの思い違いや操作ミス等に起因して、特に問題のない(漏水に関する症状が発生していない)場所からの報告が含まれることが想定される。そこでサーバ20は、図5に示すように、被疑箇所推定処理を実行するとステップS10へ移行して対象者Tからの症状報告を精査し、後述するステップS20の処理により、漏水に関する症状が発生していない場所からの報告であれば、漏水被疑箇所の推定を行わないようにしている。以下、処理内容の一例を説明する。
【0058】
ステップS10においてサーバ20の抽出部23は、症状報告を精査することによって、実際に漏水に関する症状が発生しているか否かを判断する。例えば抽出部23は、対象者Tによりアップロードされる画像及び動画に基づいて、症状の発生有無を判断する。抽出部23は、例えば水道水の脈動についての報告において、蛇口から水道水が出てくる動画がアップロードされた場合にその動画を解析し、漏水の可能性がある程度に水道水が脈動しているか否かを判断する。
【0059】
抽出部23は、漏水の可能性がある程度に水道水が脈動していると判断した場合、記憶部27に記憶される位置情報27aに基づいて、症状報告を行った対象者Tの場所を抽出する。こうしてステップS10において症状発生場所(漏水に関する症状が発生している場所)が抽出される。
【0060】
一方、抽出部23は、漏水の可能性がある程度に水道水が脈動していないと判断した場合、症状報告を行った対象者Tの場所を抽出しない。このように、漏水に関する症状が発生していない場所からの報告があった場合、ステップS10において症状発生場所が抽出されない。サーバ20は、ステップS10の処理が終了すると、ステップS20へ移行する。
【0061】
なお、ステップS10における症状報告の精査の処理は、画像及び動画に基づいたものに限定されない。抽出部23は、画像及び動画が症状報告に含まれていない場合でも、症状報告を適宜精査可能である。以下、画像及び動画が症状報告に含まれていない場合に、症状報告を精査する処理の一例を説明する。
【0062】
一件目の症状報告に画像及び動画が含まれていない場合、その症状報告は比較的信頼性が低いと考えられるため、抽出部23は、当該症状報告について、一旦漏水に関する症状が発生していないと判断する。以下では、当該症状報告を「初期報告」と称する。抽出部23は、その後初期報告と同じ時間帯に同じエリアや配水管K2上で、初期報告と同一症状の報告が複数あった場合、初期報告について、漏水に関する症状が発生していると判断して症状発生場所を抽出する。
【0063】
このように、抽出部23は、初期報告の場所と比較的近い場所で類似の症状が複数報告された場合に、漏水に関する症状が発生していると判断可能である。なお、前記症状が発生していると判断する基準は、上述したような同じ時間帯であること、同じエリアや配水管K2であること、同一の症状であることのすべてを満たした場合に限らず、それらのうちの一部を満たした場合など、任意に設定することも可能である。
【0064】
なお抽出部23は、画像及び動画が含まれる症状報告についても、上記症状報告の数に基づいた精査を実施可能である。また抽出部23は、上記症状報告の数に基づいた精査の結果を、画像及び動画に基づいた精査の結果よりも優先してもよい。
【0065】
ステップS20においてサーバ20は、ステップS10において漏水に関する症状が発生していると判断した場合(症状発生場所が抽出された場合、ステップS20:Yes)、ステップS30へ移行する。一方サーバ20は、漏水に関する症状が発生していないと判断した場合(ステップS20:No)、被疑箇所推定処理を終了する。こうしてサーバ20は、症状報告が対象者Tの思い違いや操作ミス等によるものであれば、漏水被疑箇所の推定を行うことなく被疑箇所推定処理を終了する。
【0066】
ステップS30においてサーバ20は、アンケートを送信するアンケート送信処理のサブルーチンを実行し、図6に示すステップS110へ移行する。ステップS110においてサーバ20の送信部22は、サブルーチンの実行元のルーチンで抽出された症状発生場所に基づいてアンケートを送信する。
【0067】
後述するように、本実施形態ではアンケート送信処理が再帰的に実行される。よって1回目のアンケート送信処理では、図5のステップS10で抽出された症状発生場所に基づいてアンケートが送信される。また2回目以降のアンケート送信処理では、後述するステップS140で抽出された症状発生場所に基づいてアンケートが送信される。以下、図6のステップS110の処理内容を説明する。
【0068】
ステップS110において送信部22は、まずアンケートの送信対象(アンケート対象者)を選定する。より詳細には送信部22は、症状発生場所から所定距離内にいる人を、アンケート対象者に選定する。この際送信部22は、記憶部27の位置情報27aに基づいて、症状発生場所から半径Rkm内の場所に住所が登録されている複数の対象者Tを抽出する。すなわち送信部22は、予め登録されている対象者Tの住所を、その対象者Tの居場所とみなす。送信部22は、こうして選定したアンケート対象者に一斉にアンケートを送信する。なお、送信部22は、症状発生場所から半径Rkm内の場所に該当する対象者Tが1名である場合、当該1名の対象者Tにアンケートを送信してもよいし、範囲を広げて複数名にアンケートを送信してもよい。また送信部22は、範囲を広げる場合に、アンケートの送信数に上限(閾値)を設け、当該上限に達するまで範囲を広げてもよい。
【0069】
こうして本実施形態では、症状発生場所から所定距離内に住む対象者Tの端末10(メッセージアプリ11)、所定距離内に位置するオフィスの関係者等の端末10に、図7に示すような水道水についてのアンケートが送信される。なお、アンケート対象者が使用する水道水では、漏水に関する症状が出ていないことも想定される。このためアンケートでは、前記症状が出ていないことも報告可能となっている。アンケート対象者は、図4にあるような自主的な症状報告の場合と同様に、サーバ20とメッセージのやり取りを行うことで、アンケートに回答することができる。また取得部21は、このメッセージのやり取りに基づいて、症状発生場所の近くにいる対象者Tからアンケートの回答(送信部22からの依頼に応じた報告)を取得することできる。
【0070】
図6に示すように、送信部22がアンケートを送信すると、サーバ20はステップS120へ移行する。ステップS120においてサーバ20は、アンケート送信処理の終了条件を満たすか否かを判定する。例えばサーバ20は、アンケートの回答を取得部21が最後に取得してから所定時間が経過した場合に終了条件を満たすと判定する(ステップS120:Yes)。この場合サーバ20は、アンケート送信処理を終了する。一方サーバ20は、終了条件を満たすと判定しない場合(ステップS120:No)、ステップS130へ移行する。なおステップS120における終了条件は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、所定の回数だけアンケートの送信が実行された場合や、所定の数以上の回答が得られた場合に、終了条件を満たしたと判定してもよい。
【0071】
ステップS130においてサーバ20は、アンケートの回答(症状報告)を取得部21が取得しない場合(ステップS130:No)、ステップS120へ移行する。こうしてサーバ20は、終了条件を満たすまでアンケートに対する回答を受け付ける。一方サーバ20は、アンケートの回答を取得部21が取得した場合(ステップS130:Yes)、に、ステップS140へ移行する。
【0072】
ステップS140・S150においてサーバ20は、図5に示すステップS10・S20と概ね同様の処理を行う。すなわちステップS140において抽出部23は、前記回答(アップロードされた画像及び動画等)に基づいて症状報告を精査する。ステップS150においてサーバ20は、ステップS140における精査で漏水に関する症状が発生していないと判断された場合(ステップS150:No)、ステップS120へ移行する。一方サーバ20は、ステップS140における精査で漏水に関する症状が発生していると判断された場合にアンケート送信処理を実行する(ステップS150:Yes、ステップS30)。これによって、ステップS140で抽出された症状発生場所に応じたアンケート対象者にアンケートが送信される(ステップS110)。
【0073】
本実施形態ではこのようにしてアンケートの送信処理が再帰的に実行される。これによってサーバ20は、症状発生場所の抽出(ステップS140)とアンケートの送信(ステップS110)とを複数回繰り返すことが可能となる。こうして本実施形態では、図5のステップS10で抽出された症状発生場所(自主的な症状報告に応じた症状発生場所)を起点としてアンケートの送信範囲が段階的に拡大される。
【0074】
図6に示すステップS30のアンケート送信処理が終了するとサーバ20は、図5のステップS40へ移行する。ステップS40においてサーバ20の推定部24は、症状報告(図4に示す対象者Tからの自主的な報告及び図7に示すアンケートの回答)に基づいて漏水被疑箇所を推定する。この際推定部24は、症状発生場所と、記憶部27に記憶される管路情報27bとに基づいて、漏水被疑箇所を推定する。なお漏水被疑箇所を推定する処理については、後述する具体例の中で説明する。サーバ20は、ステップS40の処理が終了すると、ステップS50へ移行する。
【0075】
ステップS50においてサーバ20の算出部25は、記憶部27に記憶される学習モデル27cを用いて、ステップS40で推定した漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出する。サーバ20は、ステップS50の処理が終了すると、ステップS60へ移行する。
【0076】
ステップS60においてサーバ20の通知部26は、ステップS40で推定された漏水被疑箇所、及びステップS50で算出された漏水の発生確率を管理者(水道局等)に通知する。サーバ20は、ステップS60の処理が終了すると、ステップS70へ移行する。
【0077】
ステップS70においてサーバ20の通知部26は、敷地内(需要家が給水管K1を修理する責任を負う範囲内)で漏水の可能性があるか否かを判定する。例えば通知部26は、漏水被疑箇所に給水管K1が含まれるか否かを判定する。通知部26は、漏水被疑箇所に給水管K1が含まれる場合(ステップS70:Yes)、ステップS80へ移行する。一方通知部26は、漏水被疑箇所に給水管K1が含まれない場合(ステップS70:No)、被疑箇所推定処理を終了する。
【0078】
ステップS80においてサーバ20の通知部26は、対象者Tに漏水の可能性があることを通知する。サーバ20は、ステップS80の処理が終了すると、被疑箇所推定処理を終了する。
【0079】
なお、図6に示すステップS110で選定されるアンケート対象者は、症状発生場所から所定距離内にいる人に限定されない。以下、アンケート対象者を選定する処理の変形例について説明する。
【0080】
例えば送信部22は、症状発生場所の直近の配水管K2上にいる対象者Tを、アンケート対象者として選定可能である。ここで、直近の配水管K2とは、1本の給水管K1を介して症状発生場所と接続される配水管K2である。当該配水管K2に給水管K1を介して接続される場所にいる対象者Tが、症状発生場所の直近の配水管K2上にいる対象者Tとなる。
【0081】
図3に示す建物T1が症状発生場所である場合を例に挙げると、直近の配水管K2は、給水管K1を介して建物T1と接続される配水管K21となる。送信部22は、当該配水管K21に給水管K1を介して接続される場所にいる対象者Tにアンケートを送信することも可能である。これによって脈動等の症状が出ている可能性が高い対象者Tにアンケートを送信することができ、症状発生場所を効率的に抽出することができる。
【0082】
また送信部22は、例えば、症状発生場所から浄水場及び配水場Hまでを最短で繋ぐ配水管K2の系統から上水が供給される場所の対象者Tを、アンケート対象者として選定可能である。ここで、前記系統は、症状発生場所から浄水場及び配水場Hまでを最小の分岐回数で接続する配水管K2の組み合わせである。当該配水管に1本の給水管K1を介して接続される場所にいる対象者Tが、前記系統から上水が供給される場所の対象者Tとなる。
【0083】
なお本実施形態のように、配水管K2が格子状に配置される場合、症状発生場所から配水場Hまでを最短で繋ぐ配水管K2の系統が複数存在することも想定される。この場合、送信部22は、各系統から上水が供給される場所の対象者Tを、アンケート対象者として選定可能である。こうして症状発生場所の上流側にいる対象者Tにアンケートを送信することで、効率的にアンケートの回答を取得して、症状発生場所を効率的に抽出することができる。
【0084】
また送信部22は、例えば、症状発生場所の近隣エリアにいる対象者Tを、アンケート対象者として選定可能である。近隣エリアは、症状発生場所に近いと判断可能なエリアを指す。近隣エリアには、例えば、市、町、丁目等、自治体で定められたエリアや、サーバ20による推定処理のために任意に定められたエリア等が含まれる。こうして症状発生場所の近隣エリアにいる対象者Tにアンケートを送信することで、効率的にアンケートの回答を取得して、症状発生場所を効率的に抽出することができる。
【0085】
以下では、図8から図11を参照し、上述した被疑箇所推定処理の具体例について説明する。本具体例では、図8に示す建物T1の対象者Tから自主的な症状報告があったものとする。また当該症状報告に基づいて、建物T1が症状発生場所として抽出されたものとする。
【0086】
本具体例では、送信部22は、建物T1から半径Rkm内(図8に示す範囲R1内)のアンケート対象者にアンケートを送信する(ステップS20:Yes、ステップS30・S110)。このアンケートに対して図9に示す建物T2の対象者Tが回答し、抽出部23により当該建物T2がさらに症状発生場所として抽出される(図6のステップS120:No、ステップS130:Yes、ステップS140、ステップS150:Yes)。送信部22は、こうして抽出された建物T2から半径Rkm内(図9に示す範囲R2内)のアンケート対象者にも、アンケートを送信する(ステップS30)。
【0087】
ここで、範囲R2内のアンケート対象者には、既にアンケートを送信済み(範囲R1内)の対象者Tが含まれる。送信部22は、こうしたアンケートを送信済みの対象者Tについて、追加でアンケートを送信してもよいし、アンケートの送信対象から除外してもよい。なお、追加でアンケートを送信する場合、送信回数を重ねるごとにアンケートの内容を詳細にしていくことが望ましい。例えば送信部22は、1回目のアンケートでは漏水に関する症状の発生有無を問い合わせ、2回目のアンケートでは前記症状を撮影した画像及び動画の有無と、発症時期とを問い合わせることができる。これによって複数の症状発生場所(建物T1・T2)に近く、漏水に関する症状が発生している可能性が比較的高い対象者Tから詳細な情報を得ることが可能となり、漏水被疑箇所を推定し易くなる。
【0088】
本具体例では、こうして複数回送信されたアンケートの回答等に基づいて、推定部24が漏水被疑箇所を推定する(ステップS40)。例えば推定部24は、症状発生場所を管路図に重ね合わせ、図10に示すように、症状発生場所が集中しているエリアAを抽出する。そして推定部24は、当該エリアAにおける配水管K2及び給水管K1の配置に基づいて、漏水被疑箇所を推定する。例えば推定部24は、少なくとも一部がエリアA内に配置される配水管K2(図10では配水管K21・K22・K31・K32)を、漏水被疑箇所として推定する。これによって漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【0089】
なお、漏水被疑箇所を推定する処理内容は本具体例に限定されるものではない。例えば推定部24は、上述した症状発生場所が集中するエリアA内の配水管K2に加えて、前記エリアA内の給水管K1を漏水被疑箇所として推定してもよい。
【0090】
また推定部24は、漏水被疑箇所の推定において、エリアA内の配水管K2のうち、症状発生場所と所定回数以下の分岐回数で接続されている配水管K2を、漏水被疑箇所として推定してもよい。
【0091】
また推定部24は、漏水被疑箇所の推定において、1本の配水管K2で所定数以上の漏水に関する症状が発生した場合、その1本の配水管K2を漏水被疑箇所として推定してもよい。
【0092】
また推定部24は、給水管K1で漏水が発生した場合における特有の状況を検出することで、給水管K1を漏水被疑箇所として推定可能である。
【0093】
より詳細には、給水管K1で漏水が発生した場合、需要家の水道料金が過剰に上昇する可能性がある。そこで推定部24は、症状発生場所の水道料金が過剰に上昇している場合に、当該症状発生場所の給水管K1を漏水被疑箇所として推定することができる。
【0094】
また給水管K1で漏水が発生した場合、症状発生場所の近隣では漏水に関する症状が報告されないと考えられる。そこで推定部24は、症状発生場所から所定距離内で漏水に関する症状が報告されない場合、症状発生場所の給水管K1を漏水被疑箇所として推定することもできる。
【0095】
算出部25は、こうして推定した漏水被疑箇所の漏水の発生確率を算出する(図5のステップS50)。本具体例では算出部25は、配水管K21・K22・K31・K32の漏水の発生確率をそれぞれ算出する。この際算出部25は、学習モデル27cに入力可能なパラメータ(配水管K21の径等)を記憶部27の管路情報27bから取得し、当該パラメータを学習モデル27cに入力する。これにより学習モデル27cで特徴量が算出され、当該特徴量に応じた漏水の発生確率が出力される。
【0096】
通知部26は、学習モデル27cから出力された漏水の発生確率を、漏水被疑箇所と関連付けて管理者に通知する(ステップS50・S60)。また通知部26は、敷地内(給水管K1)で漏水の可能性がある場合、該当する対象者Tに漏水の可能性を通知する(ステップS70:Yes、S80)。本具体例では通知部26は、図11に示すように、メッセージアプリ11を利用して漏水についてのメッセージを送信する。なお通知部26は、水道修理業者と連携可能なボタン11dを端末10に表示させてもよい。これによって対象者Tが簡単に水道修理業者に漏水検査を依頼することができるため、利便性を向上させることができる。通知部26による通知が完了すると、本具体例における被疑箇所推定処理が終了する。
【0097】
本実施形態に係る被疑箇所推定処理によると、管理者は、通知部26からの通知に基づいて漏水検査する場所を容易に決めることができる。例えば管理者は、通知部26からの通知に基づいて、漏水被疑箇所(配水管K21・K22・K31・K32)及びその周辺を漏水検査することができる。これによって、広範囲に管が敷設された管路Kの中から検査対象となる範囲を絞り込んで、漏水の検査負担を低減することができる。また複数の漏水被疑箇所が通知された場合、各漏水被疑箇所の漏水の発生確率を考慮して漏水検査する順番を決定することができる。これによって利便性を向上することができる。
【0098】
また推定部24は、対象者Tからの症状報告(自主的な症状報告及びアンケートの回答)に基づいて漏水被疑箇所を推定するものである。当該症状報告は、既存のメッセージアプリ11を用いて行われるものである。当該構成によると、特殊な機器(例えば水道管の振動を検出する振動センサ等)を用いることなく、漏水被疑箇所を推定することができるため、導入コストの削減を図ることができる。
【0099】
なおサーバ20は、管理者による漏水の検査結果を用いて学習モデル27cをさらに学習させてもよい。これにより、漏水の発生確率を精度よく求めることができる。
【0100】
以上の如く、本実施形態に係る漏水箇所推定システム1は、需要家へと上水を供給する管路Kにおいて、漏水の可能性がある漏水被疑箇所(本実施形態では配水管K21等)を推定する漏水箇所推定システム1であって、漏水に関する症状の自主的な報告である第一の報告(図4参照)を対象者Tから取得可能な第一の取得部(取得部21)と、前記第一の報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部23と、前記抽出部23で抽出された前記症状発生場所に基づいて選定した報告依頼対象者(アンケート対象者)に、漏水に関する症状の報告を依頼可能な依頼部(送信部22)と、前記依頼部からの依頼に応じた報告である第二の報告(図7に示すアンケートの回答)を前記報告依頼対象者から取得可能な第二の取得部(取得部21)と、少なくとも前記第二の報告に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部24と、を具備するものである。
【0101】
このように構成することにより、漏水被疑箇所の推定結果に基づいて、漏水検査を行う場所を容易に決めることができる。これによって、漏水の検査負担を低減することができる。
また、漏水の可能性がある場合(症状発生場所が抽出された場合)に、漏水に関する症状の報告を依頼することができるため、当該依頼に対する報告(アンケートの回答)に基づいて漏水被疑箇所を推定し易くなる。
【0102】
また、前記抽出部23は、前記第二の報告(アンケートの回答)に基づいて、前記症状発生場所を抽出可能であり、前記漏水箇所推定システム1は、前記抽出部23による前記症状発生場所の抽出と、前記依頼部による前記報告の依頼(送信部22によるアンケートの送信)と、を複数回繰り返すものである(図6参照)。
【0103】
このように構成することにより、漏水に関する症状の報告(アンケートの回答)をより多く取得することができる。これによって、漏水被疑箇所の推定の精度の向上を図ることができる。
【0104】
また、前記報告依頼対象者(アンケート対象者)には、前記症状発生場所からの距離が所定の閾値以下の場所にいる人(例えば図9に示す範囲R1・R2参照)が含まれるものである。
【0105】
このように構成することにより、症状発生場所の近くの人に、漏水に関する症状の報告(アンケートの回答)を依頼することができる。これによって、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0106】
また、前記管路Kは、分岐部Bによって接続された複数の配水管K2、及び、前記配水管K2から上水を分配する複数の給水管K1を含み、前記報告依頼対象者(アンケート対象者)には、症状発生場所の直近の前記配水管K2に前記給水管K1を介して接続される場所にいる人が含まれるものである。
【0107】
このように構成することにより、症状発生場所を効率的に抽出することができる。
【0108】
また、前記管路Kは、分岐部Bによって接続された複数の配水管K2、及び、前記配水管K2から上水を分配する複数の給水管K1を含み、前記報告依頼対象者(アンケート対象者)には、前記症状発生場所から浄水場及び配水場Hまでを最短で繋ぐ前記配水管K2の系統に、前記給水管K1を介して接続される場所にいる人が含まれるものである。
【0109】
このように構成することにより、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0110】
また、前記報告依頼対象者(アンケート対象者)には、前記症状発生場所の近隣エリアにいる人が含まれるものである。
【0111】
このように構成することにより、効率的に漏水に関する症状の報告を取得することができる。
【0112】
また、前記推定部24は、前記症状発生場所及び前記管路Kに関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能である(ステップS40)。
【0113】
このように構成することにより、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。例えば、症状発生場所が所定のエリアAに集中している場合、そのエリアAの管を漏水の可能性がある漏水被疑箇所として推定することができる(図10参照)。
【0114】
また、前記漏水箇所推定システム1は、学習済みの学習モデル27cを用いて、前記漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出可能な算出部25をさらに具備するものである(ステップS50)。
【0115】
このように構成することにより、利便性を向上させることができる。
【0116】
また、前記報告には、水道水の脈動、水道水の水圧の変化、水道水への異物の混入、水道水の変色、断水及び水道料金の上昇の少なくとも1つの項目が含まれるものである(図4及び図7参照)。
【0117】
このように構成することにより、水道水の脈動等の報告に基づいて、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【0118】
なお、本実施形態に係る取得部21は、本発明に係る第一の取得部及び第二の取得部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る送信部22は、本発明に係る依頼部の実施の一形態である。
【0119】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0120】
例えば送信部22は、対象者Tの住宅やオフィスの住所をその対象者Tの居場所とみなしてアンケートの送信対象を選定するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば送信部22は、対象者Tの現在地を取得して、実際に症状発生場所から所定の閾値以下の距離内にいる人にアンケートを送信することも可能である。この場合送信部22は、例えば端末10のGPS(Global Positioning System)機能等を利用して対象者Tの現在地を取得することが可能である。
【0121】
こうして対象者Tの現在位置に基づいてアンケートを送信することで、対象者T自身が日常的に使用する場所(住宅等)だけではなく、その他の場所(例えば他人の住宅、公共施設等)での症状報告を取得することができる。これによって、予め登録された住所(住居及びオフィス等)以外の場所で漏水に関する症状が発生していることを判断可能となるため、漏水被疑箇所を推定し易くなる。
【0122】
また算出部25は、図5のステップS50において漏水被疑箇所における漏水の発生確率を算出するものとしたが、漏水被疑箇所に関するその他の情報を算出することも可能である。例えば推定部24は、漏水に関する症状及び配水管K2の径等に基づいて、漏水被疑箇所における漏水量を算出することも可能である。管理者は、漏水量を考慮して漏水検査の順番を決めることができる。これによって利便性を向上させることができる。
【0123】
また算出部25は、学習モデル27cを用いて漏水の発生確率を算出するものとしたが、必ずしも学習モデル27cを用いて発生確率を算出する必要はない。例えば算出部25は、漏水の発生確率を算出可能な所定の計算式に漏水被疑箇所の情報(管の径等)を代入することで、発生確率を算出することも可能である。
【0124】
また推定部24は、漏水発生場所及び管路情報27bに基づいて漏水被疑箇所を推定するものとしたが、その他の情報を考慮して漏水被疑箇所を推定することも可能である。
【0125】
例えば推定部24は、水流の方向(上水の流れる方向)を特徴量として、漏水被疑箇所を推定することも可能である。この際推定部24は、症状発生場所よりも上流側を、漏水被疑箇所として推定することができる。これによって、漏水被疑箇所を絞り込むことができるため、漏水の検査負担を効果的に低減することができる。なお管路Kでは、各需要家の使用状況により水流の方向が変わることも考えらえる。推定部24は、こうした使用状況、立地等に基づいて水流の方向を特定することが望ましい。
【0126】
また推定部24は、漏水に関する症状及び症状の程度に応じてスコアリングした結果を用いて、漏水被疑箇所を推定することも可能である。例えば推定部24は、漏水に関する症状が比較的大きい症状発生場所に比較的高いスコアを付けると共に、漏水に関する症状が比較的小さい症状発生場所に比較的低いスコアを付け、当該スコアと症状発生場所とを関連付けて記憶する。推定部24は、こうして記憶したスコアの合計が高いエリアを抽出し、当該エリアを漏水被疑箇所として推定可能である。これによって推定部24は、前記症状の程度を考慮して、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。なお推定部24は、前記スコアを所定の学習モデルに入力することでも、漏水被疑箇所を推定可能である。
【0127】
また本実施形態では、アンケートの送信範囲を変更しながら複数回アンケートを送信するものとしたが、アンケートの送信範囲は特に限定されるものではない。例えば送信部22は、同じ範囲に複数回アンケートを送信することも可能である。この場合送信部22は、アンケートの送信を重ねるごとに、アンケートの内容を詳細なものにすることも可能である。
【0128】
また通知部26は、対象者Tに対して漏水の可能性を通知するものとしたが(図11参照)、その他の情報を通知することも可能である。例えば通知部26は、定期的に水道料金を通知してもよいし、災害発生時に断水地域の情報を通知してもよい。これによって本漏水箇所推定システム1の利便性をより向上させることができる。
【0129】
また送信部22は、アンケートの回答を取得してから経過した時間やアンケートの回答数等に応じて、アンケート送信処理(ステップS30)を終了するものとしたが、アンケート送信処理の終了条件は、アンケートに関する条件に限定されるものではない。例えば送信部22は、漏水被疑箇所の推定に関する条件に応じて、アンケート送信処理を終了することも可能である。以下、その一例(変形例)について説明する。
【0130】
変形例において、推定部24は、アンケートの回答から症状発生場所が抽出されるたびに、ステップS40にあるような漏水被疑箇所の推定を行う。そして推定部24は、当該推定結果の良し悪しを判定する。送信部22は、推定部24による推定結果が良好である場合に、アンケート送信処理を終了する。これにより送信部22は、良好な推定結果が得られるまでアンケート送信処理を繰り返すことができる。
【0131】
以下では、第二実施形態に係る漏水箇所推定システム1について説明する。
【0132】
第二実施形態では、図6に示すアンケート送信処理におけるアンケート対象者が、第一実施形態とは異なる。より詳細には、第二実施形態の送信部22は、症状発生場所からの管路Kの長さが比較的短い場所にいる対象者Tにアンケートを送信する。
【0133】
例えば図12に示す建物T1が症状発生場所である場合、送信部22は、当該建物T1から建物T11までの管路K(給水管K11、配水管K21~K21、給水管K12)の長さが所定の閾値以下の場合に、建物T11の対象者Tにアンケートを送信する。
【0134】
送信部22は、位置情報27aに記憶される各対象者Tについて、症状発生場所からの管路Kの長さをそれぞれ算出し、管路Kの長さの条件を満たす対象者Tにアンケートを送信する。これによって取得部21は、管路Kの長さが比較的短い住宅に住む対象者T等からアンケートの回答を取得することができる。
【0135】
ここで、症状発生場所からの管路Kの長さが比較的短い場合、漏水に関する症状(水道水の脈動等)が発生している可能性が比較的高いと考えられる。したがって、第二実施形態の送信部22によると、効率的に(高い確率で)アンケートの回答を取得して、症状発生場所を効率的に抽出することができると考えられる。これにより、推定部24で漏水被疑箇所を推定し易くすることができる。
【0136】
以上の如く、本実施形態において前記報告依頼対象者(アンケートの送信対象者)には、前記症状発生場所からの前記管路Kの長さが所定の閾値以下の場所にいる人が含まれるものである。
【0137】
このように構成することにより、効率的に漏水に関する症状の報告(アンケートの回答)を取得することができる。
【0138】
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0139】
例えば送信部22は、対象者Tの住宅やオフィスの住所をその対象者Tの居場所とみなしてアンケートの送信対象を選定するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば送信部22は、対象者Tの現在地を取得して、実際に症状発生場所からの管路Kの長さが所定の閾値以下の場所にいる人にアンケートを送信することも可能である。
【0140】
また送信部22は、管路Kの長さではなく、管路Kの分岐回数に基づいて、アンケートを送信することも可能である。例えば送信部22は、図12に示す建物T1(給水管K11)までの管路Kにおける分岐回数がN回以下の対象者Tにアンケートを送信することも可能である。これによって分岐回数が比較的少ない対象者Tにアンケートを送信することができる。分岐回数が比較的少ない場合も、本実施形態と同様に、漏水に関する症状(水道水の脈動等)が発生している可能性が比較的高いと考えられる。したがって、分岐回数に基づいてアンケートを送信することで、効率的にアンケートの回答を取得することができる。
【0141】
以上の如く、前記報告依頼対象者(アンケートの送信対象者)には、前記症状発生場所からの前記管路Kの分岐回数が所定の閾値以下の場所にいる人が含まれるものである。
【0142】
以下では、第三実施形態に係る漏水箇所推定システム1について説明する。
【0143】
第三実施形態の漏水箇所推定システム1は、定期的にアンケートを送信する点で、第一実施形態と相違する。以下では、第三実施形態における被疑箇所推定処理を示す図13を参照し、上記相違点を具体的に説明する。
【0144】
本実施形態では、サーバ20は被疑箇所推定処理を定期的に(例えば2カ月に1度)行う。被疑箇所推定処理を開始するとサーバ20はステップS310へ移行する。ステップS310において送信部22は、アンケートを一斉に送信する。
【0145】
なおステップS310におけるアンケート対象者(報告依頼対象者)は、特に限定されない。例えば送信部22は、外部(自治体等)から依頼された範囲内の対象者Tにアンケートを送信してもよいし、位置情報22bに記憶される全ての対象者Tにアンケートを送信してもよい。またアンケートの内容は、症状発生場所を抽出可能な内容であれば特に限定されない。例えば図7に示すような漏水に関する症状をメッセージアプリ11で問い合わせるものであってもよいし、図7とは異なるものでもよい。サーバ20は、ステップS310の処理が終了すると、ステップS320へ移行する。
【0146】
ステップS320においてサーバ20は、アンケートに対する回答の受付を終了するか否かを判定する。例えばサーバ20は、ステップS310でアンケートを送付してから所定以上の時間が経過した場合にアンケートに対する回答の受付を終了し(ステップS320:Yes)、ステップS350へ移行する。一方サーバ20は、アンケートに対する回答の受付を終了しない場合(ステップS320:No)、ステップS330へ移行する。なおステップS320における受付の終了条件は、本実施形態に限定されるものではない。
【0147】
ステップS330においてサーバ20は、アンケートの回答がある場合にステップS340へ移行し、図6に示すステップS140と同様にアンケートの回答を精査する。サーバ20は、ステップS340の処理が終了すると、ステップS320へ移行する。こうしてサーバ20は、ステップS320でアンケートの回答の受付を終了するまで、アンケートの回答に基づいて症状発生場所を繰り返し抽出する。
【0148】
ステップS350において推定部24は、1つの配水管K2に関して、漏水に関する症状がN件以上報告されているか判断する。
【0149】
より詳細には、上述したステップ320~S340により、複数の症状発生場所が抽出されることが想定される。推定部24は、こうして抽出された複数の症状発生場所の給水管K1が、どの配水管K2に接続されているのかを、管路情報27b(管路図等)に基づいて特定する。そして推定部24は、所定の閾値以上の数の症状発生場所と接続される(給水管K1を介して上水を分配する)配水管K2を、複数の配水管K2の中から抽出する。本実施形態ではこうして抽出された配水管K2を、第一の配水管K2とする。推定部24は、第一の配水管K2を抽出した場合にステップS360へ移行する。一方推定部24は、第一の配水管K2を抽出しない場合に被疑箇所推定処理を終了する。
【0150】
ステップS360において推定部24は、第一の配水管K2の抽出結果に基づいて、漏水の可能性がある配水管K2を抽出する。本実施形態では推定部24は、第一の配水管K2と、当該第一の配水管K2の周辺にある第二の配水管K2とを抽出する。例えば、推定部24は、第一の配水管K2に対して所定回数以下の分岐回数で接続される配水管K2を、第二の配水管K2として抽出する。推定部24は、こうして抽出した第一の配水管K2及び第二の配水管K2を、漏水被疑箇所として推定する。
【0151】
ここで、症状発生場所と比較的多く接続される第一の配水管K2は、漏水している可能性が比較的高いと考えられる。推定部24は、当該第一の配水管K2及びその周辺の第二の配水管K2を漏水被疑箇所に推定することで、漏水箇所Pを精度よく推定することができる。サーバ20は、ステップS360の処理が終了すると、ステップS370へ移行する。
【0152】
ステップS370において算出部25は、図5に示すステップS50と同様に、ステップS360で推定した漏水被疑箇所の漏水の発生確率を算出する。その後ステップS380において、通知部26は、図5に示すステップS60と同様に、漏水被疑箇所、及び漏水の発生確率を管理者に通知する。こうして被疑箇所推定処理が終了する。
【0153】
本実施形態の被疑箇所推定処理によると、対象者Tからの自主的な症状報告を受けることなく、漏水被疑箇所を推定することができる。これによって対象者Tの自主的な報告の有無に依存せず、定期的に漏水被疑箇所を推定することができる。
【0154】
以上の如く、本実施形態の漏水箇所推定システム1において、前記管路Kは、分岐部Bによって接続された複数の配水管K2、及び、前記配水管K2から上水を分配する複数の給水管K1を含み、前記推定部24は、複数の前記配水管K2から、所定の閾値以上の数の前記症状発生場所に前記給水管K1を介して上水を分配する第一の配水管K2を抽出し、前記第一の配水管K2、及び、前記第一の配水管K2に対して所定回数以下の分岐回数で接続される第二の配水管K2を、前記漏水被疑箇所として推定可能である。
【0155】
このように構成することにより、漏水の可能性が比較的高い第一の配水管K2及びその周辺の第二の配水管K2を漏水被疑箇所として推定することができ、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。
【0156】
以上、本発明の第三実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0157】
例えば推定部24は、ステップS360において、分岐回数に基づいて第二の配水管K2を抽出するものとしたが、第一の配水管K2に近いか否かを判断可能なその他の指標に基づいて、第二の配水管K2を抽出してもよい。例えば推定部24は、第一の配水管K2からの管路Kの長さに基づいて、第二の配水管K2を抽出してもよい。
【0158】
以下では、第四実施形態に係る漏水箇所推定システム1について説明する。
【0159】
第四実施形態の漏水箇所推定システム1は、アンケートを送信することなく漏水被疑箇所を推定する点で、第一実施形態と相違する。以下では、第四実施形態における被疑箇所推定処理を示す図14を参照し、上記相違点を具体的に説明する。
【0160】
本実施形態のサーバ20は、取得部21が対象者Tからの自主的な症状報告(図4参照)を取得したことを契機として、被疑箇所推定処理を実行し、ステップS410へ移行する。ステップS410においてサーバ20は、図5に示すステップS10と同様に症状報告を精査し、漏水に関する症状が発生していると判断される場合(ステップS420:Yes)、ステップS430へ移行する。一方サーバ20は、漏水に関する症状が発生していないと判断される場合(ステップS420:No)、被疑箇所推定処理を終了する。
【0161】
ステップS430において推定部24は、管路情報27b(管路図等)に基づいて症状発生場所の給水管K1と接続される配水管K2を特定する。算出部25は、推定部24によって特定された配水管K2について、漏水の発生確率を算出する。例えば算出部25は、漏水に関する症状の内容、特定した配水管K2の流量(実測値)及び敷設年数を学習モデル27cに入力することで、発生確率を算出する。なお、学習モデル27cに入力されるパラメータは、本実施形態に限定されるものではない。サーバ20は、ステップS430の処理が終了すると、ステップS440へ移行する。
【0162】
ステップS440においてサーバ20は、ステップS430で算出した漏水の発生確率がX%以上である場合、ステップS450へ移行する。一方サーバ20は、前記発生確率がX%未満である場合、被疑箇所推定処理を終了する。
【0163】
ステップS450においてサーバ20は、漏水が発生していると判断し、漏水被疑箇所を推定する。例えばサーバ20は、ステップS10で抽出された症状発生場所の給水管K1と接続される配水管K2と、その周辺の配水管K2とを、漏水被疑箇所として推定する。こうしてステップS440・S450において漏水の発生確率を考慮することで、推定部24は、漏水被疑箇所を精度よく推定することができる。サーバ20は、ステップS450の処理が終了すると、被疑箇所推定処理を終了する。
【0164】
本実施形態の被疑箇所推定処理によると、サーバ20は、アンケートを送信することなく漏水被疑箇所を推定することができる。これにより、被疑箇所推定処理の処理内容を簡素化することができる。
【0165】
以上の如く、本実施形態の漏水箇所推定システム1は、需要家へと上水を供給する管路Kにおいて、漏水の可能性がある漏水被疑箇所を推定する漏水箇所推定システム1であって、漏水に関する症状の報告を複数の対象者Tから取得可能な取得部21と、前記報告に基づいて、漏水に関する症状が発生している症状発生場所を抽出可能な抽出部23と、前記症状発生場所及び前記管路Kに関する情報に基づいて、前記漏水被疑箇所を推定可能な推定部24と、を具備するものである。
【0166】
このように構成することにより、漏水被疑箇所の推定結果に基づいて、漏水検査を行う場所を容易に決めることができる。これによって、漏水の検査負担を低減することができる。
【0167】
以上、本発明の第四実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0168】
例えば、推定部24は、ステップS440・S450において漏水の発生確率を考慮して漏水被疑箇所を推定するものとしたが、漏水被疑箇所を推定する方法は特に限定されない。よって推定部24は、必ずしも漏水の発生確率を考慮する必要はなく、その他の情報(漏水に関する症状の程度等)を考慮して漏水被疑箇所を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0169】
1 漏水箇所推定システム
21 取得部
22 送信部
23 抽出部
24 推定部
K 管路
T 対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14