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特開2024-74454シート用振動伝達装置、及び振動伝達シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074454
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】シート用振動伝達装置、及び振動伝達シート
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
H04R1/00 310G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185592
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花田 裕史
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AA13
5D017AA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】着座者に与える振動が弱まってしまうことを抑制するシート用振動伝達装置及び振動伝達シートを提供する。
【解決手段】シート本体101は、凹状の溝である収容部102を有し、シート用振動伝達装置200は、シート本体101の収容部102に収納され、着座者に振動を伝える。振動子500は、振動板10に固定され、振動板10を振動させる。振動板10は、シート本体に振動力を与える。支持部20は、振動子500の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、振動子500が振動方向において吊り下がるように、振動子500が固定された振動板10を支持する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体に取り付けられ、着座者に振動を伝えるシート用振動伝達装置であって、前記シート本体に振動力を与える振動板(10)と、前記振動板(10)に固定され、前記振動板(10)を振動させる振動子(500)と、前記振動子(500)の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、前記振動子(500)が前記振動方向において吊り下がるように、前記振動子(500)が固定された前記振動板(10)を支持する支持部(20)と、を備える、シート用振動伝達装置(200)。
【請求項2】
前記支持部(20)を間に挟み、前記振動板(10)と向かい合うように設けられるベース板(20)をさらに備える、請求項1に記載のシート用振動伝達装置(200)。
【請求項3】
前記ベース板(20)は、前記振動板(10)が配置される面と反対の面に滑り止め部を有する、請求項2に記載のシート用振動伝達装置(200)。
【請求項4】
前記滑り止め部は、複数の突起で形成される、請求項3に記載のシート用振動伝達装置(200)。
【請求項5】
前記支持部(20)は、振動板(10)又はベース板(30)の一方に凸部を有し、振動板(10)又はベース板(30)の他方に凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって形成される、請求項2に記載のシート用振動伝達装置(200)。
【請求項6】
凹状の溝である収容部を有するシート本体と、前記シート本体の前記収容部に収納され、着座者に振動を伝えるシート用振動伝達装置と、を備え、前記シート用振動伝達装置は、前記シート本体に振動力を与える振動板(10)と、前記振動板(10)に固定され、前記振動板(10)を振動させる振動子(500)と、前記振動子(500)の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、前記振動子(500)が前記振動方向において吊り下がるように、前記振動子(500)が固定された前記振動板(10)を支持する支持部(20)と、を備える、振動伝達シート(100)。
【請求項7】
前記収容部の深さは、前記シート用振動伝達装置の厚さより長い、請求項6に記載の振動伝達シート(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着座者に対して、触覚的な感覚、及び聴覚的な感覚を提供するシート用振動伝達装置、及び振動伝達シート等に関する。
【0002】
着座者に触覚的な振動を与えることで、着座者に注意を促す注意喚起効果、着座者をマッサージするリラックス効果を提供するシート用振動デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。電気信号に基づき振動する振動子は、発泡ウレタンなどの緩衝部材に囲まれて座席内に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-144545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、座席に着座者がもたれ掛かることによって、振動子を囲む発泡ウレタンが圧迫されたり、振動子が強く緩衝部材に押し当てられたり、振動子自体が圧迫されることで、振動子が十分に振動しなくなったり、振動が所望の方向とは異なる方向に逃げてしまうことで着座者に向けた振動が弱まってしまうという課題を発見した。
【0005】
本開示の概要は、着座者に効果的な感覚を与えることに関する。より具体的には、着座者に与える振動が弱まってしまうことを抑制する、ことにも関する。
【0006】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載された実施態様と、以下に記載されない種々の態様との組み合わせを包含し得る。
【0007】
したがって、本明細書に記載されるシート用振動伝達装置、及び振動伝達シート等は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態は、振動板は、シート本体に振動力を与え、振動子は、振動板に固定され、振動板を振動させ、支持部は、振動子の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、振動子が振動方向において吊り下がるように、振動子が固定された振動板を支持する、ことをその要旨とする。
【0008】
本明細書に記載される第1実施態様におけるシート用振動伝達装置は、シート本体に取り付けられ、着座者に振動を伝えるシート用振動伝達装置であって、シート本体に振動力を与える振動板と、振動板に固定され、振動板を振動させる振動子と、振動子の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、振動子が振動方向において吊り下がるように、振動子が固定された振動板を支持する支持部と、を備えるものである。本実施形態によれば、シート本体にユーザが着座することにより、シート用伝達装置に荷重がかかっても、振動子にシート本体の基材(ウレタンなど)に当たったり、押し付けられたりすることを防止することができるという利点が想定される。
【0009】
第1実施形態に従属し得る第2実施形態におけるシート用振動伝達装置は、支持部を間に挟み、振動板と向かい合うように設けられるベース板をさらに備える、ものである。本実施形態によれば、シート用伝達装置に荷重がかかっても、振動子にシート本体の基材(ウレタンなど)が当たってしまうことをベース板で防ぐことができという利点が想定される。
【0010】
第2実施形態に従属する第3実施形態におけるシート用振動伝達装置において、ベース板は、振動板が配置される面と反対の面に滑り止め部を有する。本実施形態によれば、第2実施形態のベース板によって、シート用振動伝達装置がシート本体に対し、ズレてしまうことを抑制することができるという利点も想定される。
【0011】
第3実施形態に従属する第4実施形態におけるシート用振動伝達装置において、滑り止め部は、複数の突起で形成される。
【0012】
第1乃至4の1つ又は複数の実施形態に従属し得る第5実施形態におけるシート用振動伝達装置において、支持部20は、振動板10又はベース板30の一方に凸部を有し、振動板10又はベース板30の他方に凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって形成される。
【0013】
第6実施形態における振動伝達シートは、第2実施形態に従属する第3実施形態における凹状の溝である収容部を有するシート本体と、シート本体の収容部に収納され、着座者に振動を伝えるシート用振動伝達装置と、を備え、シート用振動伝達装置は、シート本体に振動力を与える振動板と、振動板に固定され、振動板を振動させる振動子と、振動子の振動方向と略直行する方向の周囲に設けられ、振動子が振動方向において吊り下がるように、振動子が固定された振動板を支持する支持部と、を備える。
【0014】
第6の実施形態に従属し得る第7実施形態におけるシート用振動伝達装置において、収容部の深さは、シート用振動伝達装置の厚さより長い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態による、振動発生部を含むシート用振動伝達装置を示す。
図2図2は、振動子の構成例を示す図である。
図3図3は、いくつかの実施形態における振動発生部を示す斜視図である。
図4図4は、振動発生部をシート本体に配置した際の断面図である。
図5図5は、第2実施形態の振動発生部200の構造を示す斜視図である。
図6図6は、いくつかの実施形態による、シート用振動制御装置と、振動発生部とを含むシート用振動伝達装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1ないし図6では、例示的なシート用振動伝達装置及び振動伝達シートの構成、及び動作の説明を提供する。本明細書における実施形態の教示は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を検討することによって容易に理解され得る。ここで、本開示のいくつかの実施形態が詳細に言及され、それらの例が添付の図面に図示されている。実施可能な限り、類似または同様の参考番号が図中で使用され得、類似または同様の機能を示し得ることに留意されたい。図は、例示のみの目的で本開示の実施形態を描いている。当業者は、以下の説明から、本明細書で説明している構造および方法の代替的な実施形態が本明細書に記載の開示の原理または利点から逸脱することなく使用され得ることを容易に認識するであろう。
【0017】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、人間のユーザが、自動車、劇場もしくは他の会場、家庭または他の場所で着席しているときに、それらのユーザに高品質の触覚体験(これに加えて音響)を送達することにおける多くの欠点に対処することを意図している。
【0018】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、例えば、車、トラック、バスなどの自動車、又は電車、飛行機、船などの他の移動体に適用可能である。
【0019】
本開示の1つの実施形態のシート用振動伝達装置では、ユーザに注意喚起する場合であり、例えば、障害物(例えば、進路を妨げる別の車両など)または他の注意すべき領域(停止が必要な交差点など)が存在する場合、障害物または他の注意すべき領域のそばの座席側の振動発生部を起動させ得る。また、本開示の1つの実施形態のシート用振動伝達装置は、例えば、よく知られた(またはユーザが興味を示し得る)ランドマークを通過するときに、ユーザに知らせたり、目的地から所定の距離または所定の時間以内になったことを知らせたりしてもよい。
【0020】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、例えば音楽リスニングおよびフィーリング体験の強化、より直観的なユーザインタフェース注意喚起、マッサージおよびリラクゼーション感覚、ゲーム体験、ARおよびVR体験と同様に、例えば運転シミュレーションなどのシミュレーションならびに他の音波および触覚効果など、様々な触覚および/または音響体験を1人または複数の人間のユーザに提供する1つまたは複数の振動発生部、センサ、及び制御システムからなる装置を提示する。
【0021】
図1は、一実施形態による、振動発生部を含むシート用振動伝達装置を図示する。シート用振動伝達装置400は、車両(例えば、自動車、列車、飛行機、ボート)のための座席100に取り付けられる。他の実施形態では、座席100は、ゲームのための座席または劇場の座席であり得る。
【0022】
座席100は、ユーザの背中を支持するためのシートバック110と、ユーザの臀部を支持するためのシートボトム120と、ユーザの後頭部を支持するためのヘッドレスト130と、を含む。
【0023】
シートバック(背もたれ部)110は、左右に1つずつ並んだ2つを1組として、上下方向に3段に並べた6つの振動発生部(振動発生部)200を含む。シートバック110において最も上に配置される振動発生部200を、第1振動発生部210とし、最も下に配置される振動発生部200を、第2振動発生部220とし、第1振動発生部210と第2振動発生部220との間に配置される振動発生部200を、第3振動発生部230とする。
【0024】
第1ないし第3振動発生部210,220,および230は、シートバック110の垂直中心線150に沿って位置している。垂直中心線150は、座席内に物理的に存在するのではなく、シートバック110の左半分および右半分を互いに分離するシートバック110の仮想中心軸である。
【0025】
シートボトム120は、左右に1つずつ並んだ2つを1組として、前後方向に2段に並べた4つの振動発生部200を含む。シートボトム120において最も後ろに配置される振動発生部200を、第4振動発生部240とし、最も前に配置される振動発生部200を、第5振動発生部250とする。
【0026】
シートバック110では、振動発生部200の6つ、210(RLの2つ)、220(RLの2つ)、及び230(RLの2つ)は、振動を生成して、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザに提供する。右側振動発生部200R(210R、220R、230R)は、シートバック110の右側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの右側に提供する。左側振動発生部200L(210L、220L、230L)は、シートバック110の左側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの左側に提供する。シートバック110の両側の振動発生部200Rおよび200Lの場所により、振動発生部200Rおよび200Lによって発生した振動は、ユーザに触覚的な方向指示的注意喚起を提供する(例えば、運転しながら左または右を見るように注意を喚起する)か、またはユーザに触覚的な方向指示的フィードバックを提供する(例えば、娯楽用途に関して、スクリーンの左側または右側に大きな生物の存在を示す)ために用いられる。
【0027】
シートボトム120では、振動発生部200の4つ、240(RLの2つ)、及び250(RLの2つ)は、振動を生成して、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザに提供する。右側振動発生部200R(240R、250R)は、シートボトム120の右側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの右側に提供する。左側振動発生部200L(240L、250L)は、シートボトム120の左側に位置し、触覚的な方向指示的注意喚起または触覚的な方向指示的フィードバックをユーザの左側に提供する。
【0028】
振動発生部(振動発生部)200は、例えば、ボイスコイルモータ等であり、後述する触覚振動信号に応じた振動を生成することで、人間の人体(皮膚、筋肉、骨)に振動を伝達し、人間の人体内の受容体が、振動発生部200から振動による力および/または圧力の微妙な変化を検出する。例えば、1つまたは複数の振動発生部200がユーザの臀部に接して配置された場合、圧力および力が変化する感覚を伝えることができる。振動発生部200は、触覚振動信号による触覚コンテンツ(所定の振動パターン)で着座者に注意を促す注意喚起効果やマッサージするリラックス効果を提供する。
【0029】
また、振動発生部200は、後述する音響振動信号に応じた音響を生成することで、人間の人体(皮膚、筋肉、骨)や聴覚に音響を伝達(骨伝導や空気伝導)し、人間の人体内の受容体が、振動発生部200から音響による力および/または圧力の微妙な変化を検出したり、人間の聴覚が、振動発生部200から音響による音を検出したりする。例えば、1つまたは複数の振動発生部200がユーザの背中に接して配置された場合、音声を伝えることができる。振動発生部200は、音響振動信号よる音声コンテンツ(メッセージや音楽)で着座者に注意を促す注意喚起効果やマッサージするリラックス効果を提供する。
【0030】
振動発生部の配置は、それらの意図された目的に最適化することができ、以下の非限定的な例が挙げられる。「I字形配置」の振動発生部は、少なくとも2つの振動発生部を含む一本の線を形成し、一例では、一本の線を形成する3つ以上の振動発生部が互いに等しい距離に配置されている。これを「一定I字形配置」と記載する。「I字形配置」のさらなる変形形態は、一本の線を形成する3つ以上の振動発生部が互いに異なる距離に配置されている場合である。これを「変形I字形配置」と記載する。図1では、振動発生部は、シートバック110の右側に上下方向に3つの振動発生部210R、220R、230Rが一本の線上に等しい距離に配置される(図1の振動発生部は一定I字形配置である)。なお、シートバック110の左側の上下方向に3つの振動発生部210L、220L、230Lも同様に一定I字形配置であると言える。
【0031】
いくつかの実施形態において、振動発生部の物理的配置は、T字型配置、これを上下(又は前後)方向に反転させた逆T字型配置、H字型配置、X字型配置、菱形状配置、放射状配置、同心円配置、楕円配置、マトリクス配置、ハニカム配置であってもよい。
【0032】
図2は、振動子の構成例を示す図である。振動発生部200は、例えば、交流駆動されるボイスコイルモータなどで構成される振動子500を有する。
【0033】
振動子500は、可動子が直線的に移動する一種のリニアモータであるが、交流駆動することで、可動子を、駆動波形の振幅や周波数に応じて振動させることが可能である。
【0034】
振動子500は、アウターワーク510と、インナーワーク570と、磁石530と、コイル551と、コイル551が巻き回されるボビン552と、を有する。コイル551とボビン552は可動子(可動部)550を構成する。コイル551は、ムービングコイルと称される場合がある。
【0035】
アウターワーク510上に設けられる磁石530と、上下のアウターワーク510、510で挟まれた空間の中央に位置するインナーワーク570との間に、磁界(磁束線)B1が生じている。
【0036】
コイル551には、交流駆動部(交流駆動回路)270から交流駆動信号が印加される。コイル551が交流駆動されると、コイル551に交流電流が流れ、フレミングの左手の法則に従って、可動子(可動部)に、双方向の矢印で示されるような力が働き、可動子(可動部)が振動する。
【0037】
この振動の振幅や周波数は、コイル551に印加される交流駆動信号の振幅や周波数に対応するため、交流駆動信号により、振動態様を制御することが可能である。
【0038】
なお、振動の種類としては、着座者に触覚を与える触覚振動と、着座者に、骨伝導、あるいは空気伝導によって音(音響)を伝える音響振動(音響の好適例が、人の発声による音声であるため、音響振動という場合もある)と、がある。
【0039】
また、ボビン552の、コイル551が巻き回されている部分同士を接続する壁部560の平坦面に対応して、振動板10が配置されている。可動子550(壁部560)と振動板10は、例えば、両面テープ(不図示)や接着剤(不図示)などで接着される。可動子550と振動板10は、一体的に形成されてもよい。
【0040】
図3は、いくつかの実施形態における振動発生部を示す斜視図である。図4は、振動発生部をシート本体に配置した際の断面図である。いくつかの実施形態の振動伝達シート100は、図4に示すように、凹状の溝である収容部102を有するシート本体101と、シート本体101の収容部に収納され、着座者に振動を伝えるシート用振動伝達装置200と、によって構成される。シート用振動伝達装置200は、シート本体101に振動力を与える振動板10と、振動板10に固定され、振動板10を振動させる振動子500と、振動子500の振動方向(Y軸方向)と略直行する方向(Z-X方向)の周囲に設けられ、振動子500が振動方向において吊り下がるように、振動子500が固定された振動板10を支持する支持部20(21、22)と、を備える。いくつかの実施形態において、収容部102の深さは、シート用振動伝達装置200の厚さより長くなるように形成される(これに限定されない)。
【0041】
振動板10は、可動子550からの振動を座席100の着座面側へ伝達する。振動板10は、例えば、合成樹脂製であるが、これに限定されない(金属製などであってもよい)。振動板10は、振動発生部200の振動方向から見た平面視において、振動発生部200より大きく形成され、支持部20によって支持される。
【0042】
いくつかの実施形態の支持部20は、振動発生部200の厚さ(振動発生部200の振動方向の長さ)よりも長い4つの柱で形成され、振動発生部200の周囲(4隅)を囲むように配置される。支持部20は、振動板10を支持し、振動板10に固定された振動発生部200を宙吊りにする。すなわち、振動発生部200の振動方向において、支持部20の振動板10と反対側の端部20aと振動発生部200との間には、隙間600が存在する。着座者が、振動発生部200にもたれかかった際、振動発生部200が押し下げられるが、支持部20が座席100の基材(例えば、ウレタン)などを押し下げるため、隙間600の中に座席100の基材が侵入し、振動発生部200に触れたり、振動発生部200が圧迫されたりすることを防止することができる。本実施形態では、振動板10と支持部20とは一体的に形成されるが、いくつかの実施形態では、振動板10と支持部20とは別体で形成され、ネジ、フック、嵌合などにより固定されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態における振動発生部200は、支持部20を間に挟むように振動板10と向かい合って配置されるベース板30をさらに有する(省略してもよい)。本実施形態において、振動板10とベース板30とは平行であるが、非平行であってもよい。ベース板30は、支持部20の端部20aに螺子40などで固定される。ベース板30を設けることで、着座者が、振動発生部200にもたれかかった際、隙間600の中に座席100の基材が侵入し、振動発生部200に触れたり、振動発生部200が圧迫されたりすることを防止することができる。いくつかの実施形態において、ベース板30は、支持部20と一体的に形成されてもよい。この場合、振動板10は、支持部20と一体的に形成されない。
【0044】
いくつかの実施形態における振動発生部200において、ベース板30は、振動子500と反対側の面に滑り止め部50を設ける。これにより、座席100の基材に対して振動発生部200が振動方向と垂直な方向にズレてしまうことを防止することができる。
【0045】
いくつかの実施形態における滑り止め部50は、ベース板30から振動子500が配置される面と反対側に向かって延びる複数の突出部51である。振動発生部200は、複数の突出部51を、座席100の基材(ウレタン)に食い込ませることで振動発生部200が振動方向と垂直な方向にズレてしまうことを防止する。いくつかの実施形態における滑り止め部50は、ベース板30における振動子500が配置される面と反対側の面に貼り付けられた滑り止めシート(不図示)などであってもよい。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態における振動発生部200において、支持部20は、振動板10又はベース板30の一方に凸部を有し、振動板10又はベース板30の他方に凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって形成されるものであってもよい。
【0047】
図5は、第2実施形態の振動発生部200の構造を示す斜視図である。図5に示す第2実施形態の一例における振動発生部200において、支持部20は、振動板10に4つの第1支持部21(凸状)を有し、ベース板30に第1支持部21と嵌合する第2支持部22(凹状)を有する。ベース板30の凹状の第2支持部22に、振動板10の凸状の第1支持部21を嵌合することで、振動板10に固定された振動発生部200を宙吊りにする(振動発生部200はベース板30と振動子500との間に隙間600を有する)。また、図示しないが、逆に、第2実施形態の一例における振動発生部200において、支持部20は、振動板10に4つの第1支持部(凹状)を有し、ベース板30に第1支持部と嵌合する第2支持部(凸状)を有していてもよい。なお、凸状の部分は、先端部がテーパー状であることが好ましい。
【0048】
次に、図6を参照する。図6は、振動伝達装置の構成の一例を示す図である。図6において、前掲の図面と共通する部分には同じ符号を付している。
【0049】
シート用振動伝達装置(以下、単に、振動伝達装置という場合がある)400は、振動発生部200と、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置(制御部)300と、を有する。
【0050】
シート用振動制御装置300は、振動制御部310と、交流駆動部370と、を有する。
【0051】
振動制御部310は、座席100に設けられているセンサ800の検出信号を受信し、その検出信号に基づいて、着座者の身体との接触/非接触を検出する接触/非接触検出部312と、振動発生部200の振動態様を決定する振動態様設定部314と、を有する。
【0052】
交流駆動部370は、波形データ生成部330と、D/A変換器380と、振動発生部200の各駆動波形を出力する増幅器390を有する。振動発生部200の駆動波形は、個別に制御することができる。
【0053】
波形データ生成部330は、触覚振動源340と、音声振動源(広義には音響振動源)350と、を有する。
【0054】
触覚振動源340は、触覚コンテンツ(例えば、触覚振動の振動条件を示すパラメータ等が記憶されている)を記憶している触覚コンテンツ記憶部341と、触覚振動データ生成部342と、を有する。
【0055】
触覚振動データ生成部342は、振動態様設定部314により設定された条件に従い、触覚コンテンツの中から該当するコンテンツを選択し、選択した触覚コンテンツに基づいて、触覚振動データを生成する。
【0056】
また、音声振動源350は、音声コンテンツ(例えば、音声振動の振動条件を示すパラメータ等が記憶されている)を記憶している音響コンテンツ記憶部352と、音声データ取得部351と、を有する。
【0057】
音声データ取得部351は、振動態様設定部314により設定された条件に従い、音声コンテンツの中から該当するコンテンツを選択し、選択した音声コンテンツを取得する。
【0058】
合成部360は、生成された触覚振動データと、取得された音声コンテンツとを合成して合成波形データを生成し、出力する。合成波形データは、振動発生部200毎に、個別に生成することができる。
【0059】
各合成波形データは、D/A変換器380の各々に供給され、これによりアナログの駆動波形(合成振動波形)が生成される。このアナログ駆動波形(合成振動波形)は、増幅器390により増幅されて各振動発生部200(図2の例では、ボイスコイルモータの振動子500)に供給される。
【0060】
これにより、各振動発生部200が駆動されて、駆動波形(駆動信号)の振幅、及び周波数に対応した振動が発生する。
【0061】
振動制御部310は、音(音響)を発することが可能な振動発生部200について、着座者の身体との非接触がセンサ800により検出されたときは、音漏れが生じにくい振動状態へ移行させたり、振動を一時的に停止させたりして、音漏れを効果的に抑制する。
【0062】
音漏れが生じにくい振動状態への移行は、例えば、振動発生部200の駆動波形の振幅、あるいは周波数を低下させる(具体的には半分以下とする)処理の実施により実現され得る。以下の説明では、この処理を、「音漏れ低減処理」と称する場合がある。この処理については後述する。
【0063】
シート用振動制御装置300は、入力情報に基づいて、振動発生部200によって動きに変換される駆動波形(駆動信号)を生成する。駆動波形(駆動信号)は、後述する触覚振動信号、音響振動信号、又は触覚振動信号及び音響振動信号の合成信号により生成される。1つの実施形態では、入力情報は、生成される触覚振動信号(触覚振動信号、及び音響振動信号)に影響を及ぼす。
【0064】
具体的には、波形データ生成部330は、触覚振動信号を交流駆動部370へ出力する触覚振動源340と、音響振動信号を交流駆動部370へ出力する音声振動源350と、を有する。制御部310(触覚振動源340)は、座席100の外部におけるイベントの存在を示すイベント情報(入力情報の一例)を受信し、イベント情報を用いて触覚コンテンツ記憶部341から特定の触覚振動信号(触覚振動信号)を選択する。一方、制御部310(音声振動源350)は、座席100の外部におけるイベントの存在を示すイベント情報(入力情報の一例)を受信し、イベント情報を用いて音響コンテンツ記憶部352から特定の音響振動信号(音響振動信号)を選択する。1つの実施形態では、イベント情報(入力情報の一例)は、走行中の車両の動作または安全性に関係する車両イベントの発生を示す車両イベント情報である。例えば、車両イベントには、以下であり得る。
【0065】
(死角警告イベント)
死角警告は、車両の左または右の死角における自動車の存在である可能性がある。死角警告の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が座席100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに左または右を見るように触覚的な注意喚起を提供する。死角警告のための情報は、死角センサから受信され得る。
【0066】
(車線逸脱警告イベント)
車線逸脱警告は、運転者の車両の左または右への寄り過ぎの検出である可能性がある。死角警告の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が座席100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに車線内に戻るように触覚的な注意喚起を提供する。車線逸脱警告のための情報は、車線逸脱センサから受信され得る。
【0067】
(ナビゲーションイベント)
ナビゲーションイベントは、予定経路の左折または右折であり得る。左折または右折の波形モード(触覚振動信号、及び/又は音響振動信号)が座席100の左側または右側の振動発生部200を振動させることにより、ユーザに左または右に曲がるように触覚的な注意喚起を提供する。ナビゲーションイベントのための情報は、カーナビゲーションシステムから受信され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、入力情報は、ユーザへ提供する音及び触覚効果の種別を示す振動モード情報である。例えば、振動モードは、以下であり得る。
【0069】
(音楽リスニングモード)
ユーザが操作部(不図示)により、聴きたい音楽コンテンツを選択すると、制御部310(音声振動源350)は、例えば、車両に搭載されたオーディオ機器、携帯情報端末、外部サーバーなどから音声データ取得部351を介して音声コンテンツを取得し、この音声コンテンツの波形モード(音響振動信号)を座席100の振動発生部200の一部又は全部に出力し、振動発生部200を音声コンテンツの波形モードで振動させることにより、ユーザに聴覚的な情報(音声コンテンツ)を提供する。いくつかの実施形態では、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音響振動信号を解析し、音響振動信号の周波数スペクトルやビート周期等の音響的又は音楽的な特徴量及び/又は特徴点を求め、音声コンテンツの音響振動信号の特徴量としての、例えば、ビート周期(特徴量の一例)に対応した触覚振動をさせる波形モード(触覚振動信号)を生成したり、触覚コンテンツ記憶部341から読み出したりすることができる。また、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音声コンテンツの音響振動信号のビート(特徴点の一例)に同期して波形が立ち上がる触覚振動信号を生成する処理を実行してもよい。また、制御部310(触覚振動データ生成部342)は、音声コンテンツに付加されたメタデータ(例えば、音楽のジャンル)などに応じて、触覚振動信号を生成(又は選択)する処理を実行してもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、制御部310(触覚振動源340)は、音声振動源350が生成(又は選択)した音響振動信号に応じた、触覚振動信号を生成(又は選択)する。いくつかの実施形態において、音楽コンテンツは、ユーザに選択されるのではなく、車両ECU(不図示)により選択されてもよい、前記車両ECUは、ユーザの状態、ユーザの環境、ユーザの特徴(好み)、又はこれらの組み合わせなどを検出・分析することで、その時に適した音楽コンテンツを選択し得る。
【0070】
(リラクゼーションモード)
ユーザが操作部(不図示)により、リラクゼーションコンテンツを選択すると、制御部310(触覚振動源340)は、ユーザにより選択されたリラクゼーションコンテンツの波形モード(触覚振動信号)を触覚コンテンツ記憶部341から読み出し、このリラクゼーションコンテンツの波形モード(触覚振動信号)を座席100の振動発生部200の一部又は全部に出力し、振動発生部200をリラクゼーションコンテンツの波形モードで振動させることにより、ユーザに触覚的な振動(リラクゼーションコンテンツ)を提供する。いくつかの実施形態では、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動信号に対応付けて音響コンテンツ記憶部352に記憶された音響振動信号を読み出すことができる。また、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動信号を解析し、触覚振動信号の周波数スペクトルやビート周期等の特徴量を求め、触覚振動信号の特徴量を、音声データ取得部351を介して、外部域(例えば、車両に搭載されたオーディオ機器、携帯情報端末、外部サーバーなど)に出力し、前記外部機器が触覚振動信号の特徴量に応じて選択した音声コンテンツを、音声データ取得部351を介して取得することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、制御部310(音声振動源350)は、触覚振動源340が生成(又は選択)した触覚振動信号に応じた、音響振動信号を生成(又は選択)する。いくつかの実施形態において、リラクゼーションコンテンツは、ユーザに選択されるのではなく、車両ECU(不図示)により選択されてもよい、前記車両ECUは、ユーザの状態、ユーザの環境、ユーザの特徴(好み)、又はこれらの組み合わせなどを検出・分析することで、その時に適したリラクゼーションコンテンツを選択し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、センサ800は、人間のユーザによって座席に加えられた圧力を感知する圧力センサを含む。圧力センサは、シートバック110またはシートボトム120に配置することができる。圧力センサは、検出された圧力の量を示す圧力感知信号を出力する。制御部310は、センサ800が検出した圧力に応答して1つまたは複数のアクションをとることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、制御部310は、圧力を圧力閾値と比較することができる。圧力閾値を超えている場合、これは、人が座席に座っていて振動を伝達しやすい状態であることを意味する。したがって、振動を伝達しやすい状態である一部(又は全部)の振動発生部200を通常の方法で作動させて、ユーザに音声コンテンツおよび触覚コンテンツを提供することができる。一方で圧力閾値を超えていない場合、これは、人が正常に座席に座っておらず、振動を伝達しにくい状態であることを意味する。その結果、振動を伝達しにくい状態である一部(又は全部)の振動発生部200を作動させないように駆動波形(駆動信号)を制御し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、シート用振動制御装置300は、例えば、回路、プロセッサ、揮発性および不揮発性メモリ、センサ、通信システム、並びにプロセッサに実行されるコマンド、及びプログラム、を含む1つまたは複数のコンピュータ装置を含み得る。1つの実施形態では、シート用振動制御装置300は、実行可能なコマンドを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、メモリ等)を含む。コマンドは、本明細書に記載の動作の1つまたは複数を実施するための少なくとも1つのプロセッサによって実行される。
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコンピュータおよび/または論理演算処理装置を含む1つまたは複数の制御システムは、そのような一組の情報を用いて、振動発生部を作動させる1つまたは複数の組の制御信号を生成することができる。
【0075】
本開示を一読すれば、当業者は、触感を提供する振動発生部を有するシステムのためのさらに追加の代替的な設計を認識することができる。したがって、本開示の特定の実施形態および応用を図示し、説明してきたが、本開示は、本明細書に開示された正確な構造および構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者に明らかであり得る様々な修正形態、変更形態および変形形態は、添付の特許請求の範囲で定義されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書における開示の方法および装置の配置、動作および詳細においてなされ得る。
【符号の説明】
【0076】
10 :振動板
20 :支持部
20a :端部
21 :第1支持部
22 :第2支持部
30 :ベース板
40 :螺子
50 :滑り止め部
51 :突出部
100 :座席(振動伝達シート)
101 :シート本体
102 :収容部
110 :シートバック
120 :シートボトム
130 :ヘッドレスト
200 :振動発生部(シート用振動伝達装置)
210 :第1振動発生部
210L :振動発生部
210R :振動発生部
220 :第2振動発生部
220L :振動発生部
220R :振動発生部
230 :第3振動発生部
230L :振動発生部
230R :振動発生部
240 :第4振動発生部
250 :第5振動発生部
300 :シート用振動制御装置
310 :振動制御部(制御部)
312 :非接触検出部
314 :振動態様設定部
330 :波形データ生成部
340 :触覚振動源
341 :触覚コンテンツ記憶部
342 :触覚振動データ生成部
350 :音声振動源
351 :音声データ取得部
352 :音響コンテンツ記憶部
360 :合成部
370 :交流駆動部
380 :D/A変換器
390 :増幅器
400 :シート用振動伝達装置
500 :振動子
510 :アウターワーク
530 :磁石
550 :可動子
551 :コイル
552 :ボビン
560 :壁部
570 :インナーワーク
600 :隙間
800 :センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6