(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074455
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ブラックマトリクスの製造方法及びブラックマトリクス
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240524BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240524BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G02B5/20 101
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185593
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋本 大地
【テーマコード(参考)】
2H148
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H148BC02
2H148BC06
2H148BC12
2H148BD11
2H148BE36
2H148BG02
2H148BH28
2H197CA03
2H197CE01
2H197HA05
2H197HA08
2H197JA12
2H197JA14
2H225BA16P
2H225CA18
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】ブラックマトリクスを二層構造として、しかも、1回の露光・現像及び硬化により、その端部に透明着色膜が重ねた場合にも、この重ね合わせ部に生じる突起部の高さを抑制できるブラックマトリクスの製造方法を提供すること。
【解決手段】二層構造のブラックマトリクスの下側の層をA層、上側の層をB層として、A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を透明基板上に塗付乾燥してA層を形成し(第1工程)、B層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物をA層上に塗付し乾燥してB層を形成し(第2工程)、A層上に重なったB層をパターン状に露光・現像して、A層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングし(第3工程)、このパターンを加熱することにより、前記A層を完全硬化し、併せて、前記B層を溶融又は軟化してなだらかな形状に変形すると共に完全硬化する(第4工程)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のカラーフィルタ基板のブラックマトリクスを製造する方法であって、
このブラックマトリクスが二層構造を有しており、その下側の層をA層、上側の層をB層として、下記第1工程~第4工程を有することを特徴とするブラックマトリクスの製造方法。
第1工程:前記A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を透明基板上に塗付し、乾燥して、前記A層を形成する工程。
第2工程:前記B層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物を前記A層
上に塗付し、乾燥して、前記B層を形成する工程。
第3工程:前記A層上に重なったB層をパターン状に露光・現像して、A層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングする工程。
第4工程:前記パターンを加熱することにより、前記A層を完全硬化し、併せて、前記B層を溶融又は軟化してなだらかな形状に変形すると共に完全硬化する工程。
【請求項2】
前記B層の紫外線硬化性樹脂組成物として、前記A層の紫外線硬化性遮光性樹脂組成物よりも遮光性材料の配合量が少ないものを使用することを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリクスの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程において、B層と共にA層をパターン状に露光することを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリクスの製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、B層をパターン状に露光・現像して前記パターンを形成し、残存したパターン状B層をレジストパターンとしてA層を現像除去することを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリクスの製造方法。
【請求項5】
表示装置のカラーフィルタ基板のブラックマトリクスであって、
二層構造を有しており、その下側の層をA層、上側の層をB層としたとき、
前記ブラックマトリクスの縦断面において、A層とB層との境界を示す線を境界線として、この境界線とA層の外形線との交差角度の補角αより、前記境界線とB層の外形線との交差角度βが小さいことを特徴とするブラックマトリクス。
【請求項6】
前記交差角度βが60度以下であることを特徴とする請求項5に記載のブラックマトリクス。
【請求項7】
前記補角αが90度以下であることを特徴とする請求項5に記載のブラックマトリクス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に具備されるカラーフィルタ基板のブラックマトリクスを製造する方法及びブラックマトリクスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、透明電極を有する2枚の基板の間に液晶を挟み、この透明電極に対して画素ごとに電圧を印加することにより前記液晶を駆動し、この液晶の駆動によって表示光の透過と非透過(遮断)とを画素ごとに制御して、この透過部分と遮断部分とで画面表示を行う。そして、2枚の前記基板のうち一方の基板に画素ごとに透明着色膜を設けて、その透過光を着色することにより、カラー表示を可能としている。この透明着色膜を設けた基板は一般にカラーフィルタ基板と呼ばれるが、このカラーフィルタ基板は、例えば、透明基板と、この透明基板の表面を多数の画素領域に区画する線状の遮光膜(以下、ブラックマトリクスと記す)と、前記画素領域に設けられた透明着色膜とを備えて構成されている。透明着色膜は画素領域ごとに異なる色彩を有しており、代表的には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色の透明着色膜が利用される。
【0003】
これら3色は光の3原色であり、これら3原色及びその混合によって色彩のほぼ全てを表示することが可能となる。また、ブラックマトリクスは、特定の画素領域を透過する光と隣接する画素領域を透過する光との混合を防止するものである。例えば、赤色(R)画素に隣接して緑色(G)画素が存在する場合、この両者を透過する光同士の混合を防ぐことで鮮明なカラー画面の表示が可能となる。
【0004】
このカラーフィルタ基板は感光性着色樹脂組成物を用いたフォトリソ法により製造されている。例えば、透明基板にフォトリソ法を用いてブラックマトリクスを形成し、そのブラックマトリクスの空隙に、同じくフォトリソ法により透明赤色着色膜、透明緑色着色膜、透明青色着色膜を順次形成することで作製される。
【0005】
しかしながら、上記のような先にフォトリソ法によりブラックマトリクスを形成する方法では、白ヌケを防止するために、各透明着色膜をブラックマトリクスの端部に重なるように形成している(
図5参照)。
【0006】
そして、このようにブラックマトリクス上に透明着色膜が重ねられた端部に突起部を生じ、例えば、前記透明電極の配線に断線を生じたり、そうでなくても、電流や電圧の不安定化を招くことがあった。また、この突起部の高さが高い場合には、対向電極板との離間距離が不均一になる等の悪影響を生じていた。さらに、カラーフィルタ基板の液晶側表面に塗布形成する配向膜の塗布に影響を及ぼしたり、この配向膜の表面に形成して、対向基板との間の間隙を制御するフォト・スペーサの塗布形成にも悪影響を生じることがある。
【0007】
これに対し、特許文献1では、
図6のようにブラックマトリクスを二層構造とし、しかも、下側の第1ブラックマトリクス(第1BM)より上側の第2ブラックマトリクス(第2BM)を小面積として両層の間に段差を設けることにより、この段差により前記突起部の発生を防止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、まず感光性遮光性樹脂組成物を塗付し、露光・現像した後これを硬化させて第1BMを形成し、次に、再び感光性遮光性樹脂組成物を塗付し、露光・現像した後これを硬化させて第2BMを形成するというように、露光・現像とその硬化とを繰り返す必要があった。
【0010】
本発明は、ブラックマトリクスを二層構造として、しかも、1回の露光・現像及び硬化により、その端部に透明着色膜が重ねた場合にもこの重ね合わせ部に生じる前記突起部の高さを抑制できるブラックマトリクスの製造方法と、こうして製造されたブラックマトリクスとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、表示装置のカラーフィルタ基板のブラックマトリクスを製造する方法であって、
このブラックマトリクスが二層構造を有しており、その下側の層をA層、上側の層をB層として、下記第1工程~第4工程を有することを特徴とするブラックマトリクスの製造方法である。
第1工程:前記A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を透明基板上に塗付し、乾燥して、前記A層を形成する工程。
第2工程:前記B層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物を前記A層上に塗付し、乾燥して、前記B層を形成する工程。
第3工程:前記A層上に重なったB層をパターン状に露光・現像して、A層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングする工程。
第4工程:前記パターンを加熱することにより、前記A層を完全硬化し、併せて、前記B層を溶融又は軟化してなだらかな形状に変形すると共に完全硬化する工程。
【0012】
第4工程のように、単一の加熱工程で、前記A層を完全硬化し、併せて、前記B層を又は軟化させてなだらかな形状に変形すると共に完全硬化するためには、例えば、前記B層の紫外線硬化性樹脂組成物として、前記A層の紫外線硬化性遮光性樹脂組成物より遮光性材料の配合量が少ないものを使用すればよい。
【0013】
また、前記第3工程においては、B層と共にA層をパターン状に露光することにより、このパターン状のB層とA層とを共に現像液に不溶性として、次に現像液で現像することにより、不溶性となったパターン状の両層を残してこのパターン状の両層の外側にはみ出したA,B両層を現像液で溶解除去することにより、これらA層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングすることができる。
【0014】
また、前記第3工程において、B層をパターン状に露光することにより、このパターン状のB層を現像液に不溶性とし、次に現像液で現像することにより、不溶性となったパターン状のB層を残してこのパターン状B層の外側にはみ出したB層を現像液で溶解除去すると共に、同時にこのパターン状B層の下に重なった部分のA層を残して、パターン状B層の外側にはみ出したA層を現像液で溶解除去することにより、これらA層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングすることもできる。
【0015】
こうして製造されるブラックマトリクスは、表示装置のカラーフィルタ基板のブラックマトリクスであって、
二層構造を有しており、その下側の層をA層、上側の層をB層としたとき、
前記ブラックマトリクスの縦断面において、A層とB層との境界を示す線を境界線として、この境界線とA層の外形線との交差角度の補角αより、前記境界線とB層の外形線と
の交差角度βが小さいことを特徴とするブラックマトリクスである。
【0016】
前記交差角度βが60度以下であることが好ましい。また、前記補角αが90度以下であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1工程~第3工程でA層とB層とが重なった状態のパターンを形成し、続く第4工程において、単一の加熱によりB層とA層の両層を完全硬化することができる。しかも、この第4工程においてB層は溶融又は軟化してなだらかな形状に変形するから、その周縁端部は中央に比べて薄くなる。そして、この薄い周縁端部に透明着色膜を重ねても、その突起部の高さは抑制できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係り、ブラックマトリクスの各製造工程を示す断面説明図である。
【
図2】
図2は本発明の実施形態に係り、製造されたブラックマトリクスの縦断面の説明図である。
【
図3】
図3は本発明の実施形態に係り、製造されたブラックマトリクスに透明着色膜を重ねた状態を示す断面説明図である。
【
図4】
図4は本発明の他の実施形態に係り、製造されたブラックマトリクスの縦断面の説明図である。
【
図5】
図5は従来のブラックマトリクスの縦断面の説明図である。
【
図6】
図6も従来のブラックマトリクスの縦断面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
図1は本発明の実施形態に係り、ブラックマトリクスの各製造工程を示す断面説明図である。
【0020】
(第1工程)
すなわち、まず、
図1(a)に示すように、A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を透明基板上に塗付し、乾燥して、前記A層を形成する。
【0021】
透明基板としてはガラス基板を好適に使用できる。透明樹脂基板であってもよいが、後述する第4工程の加熱に耐える耐熱性が必要である。例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂基板を使用することができる。
【0022】
次に、A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂成分と遮光性材料を混合した組成物を使用できる。この紫外線硬化性樹脂成分としては、例えば、樹脂バインダ、光重合性モノマー及び光重合開始剤の混合物を例示できる。この紫外線硬化性遮光性樹脂組成物は、溶剤に溶解又は分散して、透明基板上に塗付することができる。
【0023】
遮光性材料としては、例えば、黒色有機顔料、混色有機顔料及び無機顔料が挙げられる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、樹脂被覆カーボンブラック、ペリレンブラック又はアニリンブラックが挙げられる。混色有機顔料としては、例えば、赤、青、緑、紫、黄色、マゼンダ又はシアン等の顔料を混合して疑似黒色化したものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、グラファイトが挙げられる。他の例としては、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム若しくは銀等の金属微粒子が挙げられる。また前に示した金属の酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物及び炭化物を例示できる。
【0024】
このA層だけで十分な遮光性を発揮するように、紫外線硬化性遮光性樹脂組成物中に十分な量の遮光性材料が含まれていることが望ましい。例えば、5.0質量%以上である。望ましくは10.0質量%以上である。紫外線硬化性遮光性樹脂組成物中の遮光性材料は80.0質量%以下であることが望ましい。遮光性材料が80.0質量%を越えると、現像液に対するA層の溶解性が低下して、第3工程において、A層を所定のパターンにパターニングできないことがある。望ましくは50質量%以下である。なお、前述のように、残部が樹脂成分である。
【0025】
次に、前記樹脂バインダとしては、各種重合性モノマーを重合して得られた樹脂バインダを使用できる。
【0026】
重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、N-ビニルピロリドン、スチレン類、アクリルアミド類、その他のビニル化合物、及びマクロモノマー類が使用できる。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、パラクミルEO変性(メタ)アクリレートが例示できる。
【0028】
また、スチレン類としては、スチレンおよびその誘導体、メチルスチレン等が使用できる。
【0029】
アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
光重合性モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、
ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等を用いることができる。
【0032】
アセトフェノン系光開始剤の具体例としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0033】
ベンゾイン系光開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。
【0034】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が使用できる。
【0035】
チオキサンソン系光開始剤としては、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が使用できる。
【0036】
また、トリアジン系光開始剤としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等が挙げられる。
【0037】
なお、これら樹脂成分を溶解又は分散させる溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が使用できる。
【0038】
この紫外線硬化性遮光性樹脂組成物は、A層の厚みが0.2~2.0μmとなるように塗布すればよい。塗布方法としては、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法を使用できる。
【0039】
そして、こうして紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を塗付した後、乾燥により溶剤を除去してA層を形成することができる。乾燥は、例えば、減圧乾燥と、この減圧乾燥に続くプリベークとを組合わせて行うことができる。減圧乾燥は、例えば、紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を塗付した透明基板を減圧室に収容し、その減圧室を、到達圧が20~100P
aとなるまで減圧することによって可能である。また、プリベークは100~160℃の温度で、1~2分加熱することによって可能である。
【0040】
(第2工程)
この第1工程に続き、
図1(b)に示すように、B層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物をA層上に塗付し、乾燥して、前記B層を形成する。
【0041】
この第2工程で使用する紫外線硬化性樹脂組成物は、前記第1工程でA層を形成するために使用した紫外線硬化性樹脂成分と同様でよい。すなわち、樹脂バインダ、光重合性モノマー及び光重合開始剤の混合物等である。この紫外線硬化性樹脂組成物には、さらに遮光性材料を配合してもよいし、配合しなくてもよい。遮光性材料を配合した場合でも、その配合量は、A層の紫外線硬化性遮光性樹脂組成物よりも遮光性材料の配合量が少ないことが望ましい。遮光性材料の配合量が多いと、後述する第4工程で、加熱しても、パターン状のB層が溶融又は軟化せず、充分になだらかな形状に変形することができないことがある。
【0042】
なお、この紫外線硬化性樹脂組成物も溶剤に溶解又は分散して、A層上に塗付することができる。塗布方法としては、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法を使用できる。そして、塗付後、乾燥により溶剤を除去してB層を形成することができる。乾燥は、例えば、減圧乾燥と、この減圧乾燥に続くプリベークとを組合わせて行うことができる。減圧乾燥は、A層形成の場合と同様に、例えば、紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を塗付した透明基板を減圧室に収容し、その減圧室を、到達圧が20~100Paとなるまで減圧することによって可能である。また、プリベークも、A層形成の場合と同様に、100~160℃の温度で、1~2分加熱することによって可能である。形成するB層の厚みも、A層と同様に、0.2~2.0μmであってよい。
【0043】
(第3工程)
この第2工程に引き続き、
図1(c)に示すように、これらA層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングする。
【0044】
このパターニングでは、まず、B層の上から所望のパターン状に紫外線で露光する。このパターン状露光によって、紫外線に曝された部分のB層は、現像液に対して不溶性に変化する。
【0045】
なお、このパターン状露光は、例えば、所望の前記パターン状の透過領域を有し、その他の領域を紫外線不透過性としてフォトマスクを介して紫外線を照射することにより行うことが可能である。紫外線は、例えば、50~200mJの強度で照射すればよい。
【0046】
なお、パターン状露光の際には、照射した紫外線がパターン状B層を透過して、このB層の下に重なったパターン状のA層に達し、B層と共にA層が現像液に不溶性に変化してもよいし、B層のみを現像液に不溶性に変化させて、A層を現像液溶解性のまま残してもよい。
【0047】
次に、現像液を適用して、A層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングする。
【0048】
前述のように、パターン状B層とパターン状A層の両層が共に現像液に不溶性に変化した場合には、現像液を適用することにより、不溶性となったパターン状の両層を残してこのパターン状の両層の外側にはみ出したA,B両層を現像液で溶解除去することにより、これらA層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングすることができる。
【0049】
また、パターン状B層のみを現像液に不溶性に変化させて、その下に重なったA層を現像液溶解性のまま残した場合には、このパターン状B層の外側にはみ出したB層を現像液で溶解除去すると共に、同時にこのパターン状B層の下に重なった部分のA層を残して、パターン状B層の外側にはみ出したA層を現像液で溶解除去することができる。そして、このようにパターン状B層とこの下に重なったA層を残してその外側にはみ出したA,B両層を現像液で溶解除去することにより、これらA層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングすることが可能である。
【0050】
現像液を適用する際には、A,B層を形成した透明基板を現像液中に浸漬してもよいが、B層の上方から現像液をスプレーして適用することが好便である。
【0051】
なお、現像液としては、溶剤またはアルカリ現像液を利用することができる。アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を使用することができる。また、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。
【0052】
(第4工程及びブラックマトリクス)
次に、
図1(c)に示すように、前記パターンを加熱することにより、前記A層を完全硬化し、併せて、前記B層を溶融又は軟化してなだらかな形状に変形すると共に完全硬化する。
【0053】
この第4工程における加熱は、前述のプリベークよりも高い温度で、しかも長い時間加熱することが望ましい。加熱に曝されたB層について説明すると、B層は遮光性材料の配合量が少なく、樹脂成分の配合量が多いため、このような高温の加熱により、まず溶融又は軟化してなだらかな山形の形状に変形する。この山形の形状は、
図2を後に説明するように、その中央の膜厚が厚く、周縁の膜厚が薄い形状である。そして、その後、加熱を継続することにより、この形状を維持したまま、光重合性モノマー同士あるいはこの光重合性モノマーと樹脂バインダとが化学反応して完全硬化する。
【0054】
一方、A層は、遮光性材料の配合量が多く、樹脂成分の配合量が少ないため、高温の加熱によっても変形しない。仮に変形した場合でも、B層の変形に比較すると、ごくわずかな変形である。このため、加熱により変形したB層がなだらかな山形の形状を示すのに対して、A層はそれより急峻な形状を有している。
【0055】
こうして製造されたA,B両層から成るブラックマトリクスを
図2に示す。
図2は製造されたブラックマトリクスの縦断面の説明図である。
【0056】
加熱により変形したB層がなだらかな山形の形状を示すのに対して、A層はそれより急峻な形状を有していることは、この
図2から明らかである。そして、この
図2において、A層とB層との境界を示す線を境界線として、境界線とB層の外形線との交差角度をβとするとき、この交差角度βは前記境界線の位置におけるB層の外形線の勾配を意味している。一方、前記境界線とA層の外形線との交差角度の補角をαとすると、この補角αは前記境界線の位置におけるA層の外形線の勾配を意味している。そして、前述のようにA層が急峻でB層はなだらかなので、補角αより交差角度βが小さく、したがって、前記境界線の位置におけるB層の外形線の勾配がA層の外形線の勾配より小さいから、この勾配が小さいB層の周縁端部に透明着色膜を重ねても、その突起部の高さは抑制できるのである(
図3参照)。
【0057】
なお、
図2及び
図3に示すブラックマトリクスでは、A層の外形線は直線状であるが、
これに限らず、
図4に示すように屈曲していてもよい。この場合でも、交差角度βは補角αより小さく、A層よりB層がなだらかな山形の形状を有している。
【0058】
なお、B層の周縁端部に透明着色膜を重ねて形成される突起部の高さを抑制するため、交差角度βは60度以下であることが望ましい。一方、補角αは90度以下であればよい。
【0059】
なお、前述のように、B層には遮光性材料が配合されていなかったり、配合されていてもわずかなので、ブラックマトリクスに求められる遮光性はA層によってもたらされる。そして、このため、高精細なブラックマトリクスを製造することができる。例えば、ブラックマトリクスを構成するラインの幅が3.5μm、ライン同士の間の隙間(スペース)の幅が3.5μmのブラックマトリクスである。
【0060】
以上、B層の紫外線硬化性樹脂組成物として、A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物より遮光性材料の配合量が少なく、紫外線硬化性樹脂成分配合量が多いものを使用することにより、前記第4工程の加熱によりB層を溶融又は軟化してなだらかな形状に変形する方法を説明したが、第3工程の露光条件(フォトマスクのパターン、露光時のフォトマスクとA,B層との間の距離、露光量、コリメーション角、等)の変更により、積算露光量を変化させることにより、B層をなだらかな形状に山形の形状としてもよい。
【実施例0061】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0062】
まず、A層を形成する紫外線硬化性遮光性樹脂組成物として、次の組成物を準備した。黒色顔料 54.0質量%
樹脂 18.0質量%
モノマー 6.0質量%
光酸発生剤、重合開始剤など 20.0質量%
(比率は固形分比)
そして、この紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を透明基板上にスピンコートした。スピンコートの回転速度は300rpm、塗布時間は10秒である。その膜厚は約0.5μmである。
【0063】
そして、次にその塗布膜を減圧乾燥し、さらにプリベークした。減圧乾燥は、紫外線硬化性遮光性樹脂組成物を塗付した透明基板を減圧室に収容し、その減圧室を、到達圧が30Paとなるまで減圧して行った。減圧乾燥の時間は10秒である。また、プリベークの温度は125℃、100秒である。
【0064】
次に、B層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物として、次の組成物を準備した。
黒色顔料 48.8質量%
樹脂 24.0質量%
モノマー 6.0質量%
光酸発生剤、重合開始剤など 21.2質量%
(比率は固形分比)
そして、この紫外線硬化性樹脂組成物をA層の上にスピンコートした。スピンコートの回転速度は900rpm、塗布時間は10秒である。その膜厚は約0.5μmである。
【0065】
そして、次にその塗布膜を減圧乾燥し、さらにプリベークした。減圧乾燥は、紫外線硬化性樹脂組成物を塗付した透明基板を減圧室に収容し、その減圧室を、到達圧が65Paとなるまで減圧して行った。減圧乾燥の時間は10秒である。また、プリベークの温度は
125℃、100秒である。
【0066】
そして、ラインの幅が3.5μm、ライン同士の間のスペースの幅も3.5μmのストライプ状ブラックマトリクスの形状の遮光膜を有するフォトマスクを介して紫外線を照射して、A層上に重なったB層をパターン状に露光した。露光量は90mJ/120μmである。
【0067】
そして、アルカリ現像液に浸漬して現像することにより、A層とB層とが重なった状態のパターンにパターニングした。アルカリ現像液の温度は25℃、現像時間は25秒である。
【0068】
こうしてA層とB層とが重なった状態のパターンを有する透明基板を加熱した。加熱温度は230℃、加熱時間は20分である。
【0069】
この加熱によって、B層が溶融又は軟化していわゆる液ダレを起こし、なだらかな山形の形状に変化した。そして、B層はこのような山形の形状のまま完全に硬化した。一方、A層は実質的に形状の変化を生じることなく完全に硬化した。
【0070】
得られたブラックマトリクスは、ラインの幅が3.3μm、ライン同士の間のスペースの幅が3.7μmのストライプ状であった。
【0071】
また、A層の厚みは0.5μm、その断面における境界線とA層の外形線との交差角度は113度で、その補角αは67度であった。
【0072】
一方、B層の厚みも0.5μmで、その断面における境界線とB層の外形線との交差角度βは51度であった。
【0073】
そして、得られたブラックマトリクスの周縁端部に重なるように各透明着色膜を形成したところ、透明着色膜が重ねられた周縁端部において、突起部の発生が著しく抑制された。