IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-74477ブロック共重合体及び当該ブロック共重合体を含有する樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074477
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ブロック共重合体及び当該ブロック共重合体を含有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/04 20060101AFI20240524BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08F297/04
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185651
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】児島 伶奈
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰政
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BP011
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD170
4J002GT00
4J026HA06
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HB14
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J026HC06
4J026HC32
4J026HC39
4J026HC45
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性及びシートやフィルム成形時における成形加工性に優れる、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を含むブロック共重合体を提供する。
【解決手段】第一のブロックと、前記第一のブロックとは異なる第二のブロックとを含有するブロック共重合体であって、前記第一のブロックは、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含み、前記第二のブロックは、共役ジエン系単量体単位を含み、前記第二のブロックは、前記第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中にミルセン単量体単位を85モル%以上含み、前記ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量が20~80質量%であり、前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が20~70質量%であり、前記ブロック共重合体の、示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られる重量平均分子量(Mw)が、100,000以上である、ブロック共重合体が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のブロックと、前記第一のブロックとは異なる第二のブロックとを含有するブロック共重合体であって、
前記第一のブロックは、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含み、
前記第二のブロックは、共役ジエン系単量体単位を含み、
前記第二のブロックは、前記第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中にミルセン単量体単位を85モル%以上含み、
前記ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量が20~80質量%であり、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が20~70質量%であり、
前記ブロック共重合体の、示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られる重量平均分子量(Mw)が、100,000以上である、
ブロック共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載のブロック共重合体であって、
前記重量平均分子量(Mw)が、150,000以上である、
ブロック共重合体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が35~70質量%である、
ブロック共重合体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が45質量%を超え、70質量%以下である、
ブロック共重合体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体であって、GPCで得られるブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、多分散度(Mw/Mn)が1.0~2.5である、
ブロック共重合体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体のポリマー鎖中にカップリング剤の残基を含まない、
ブロック共重合体。
【請求項7】
熱収縮性フィルム用である、請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体を含有する樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物から成形される、熱収縮性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体及び当該ブロック共重合体を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を含む共重合体、特にスチレンとブタジエンとのブロック共重合体は衝撃強度及び透明性の優れた樹脂として広く知られており、射出成形用途やシート、フィルム等の押出成形用途等に幅広く使用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
シートやフィルム成形時には、ブロック共重合体が歪み硬化性を有すると、伸長変形時に偏肉が生じ難いため、厚みが均一のシートやフィルムが得やすいことが知られている。また、歪み硬化性を得る手段の1つとして分子量を上げることが知られている。しかしながら、分子量を上げると粘性が上がり、成形加工性が低下する場合があった(例えば、特許文献4~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2986178号
【特許文献2】特開平7-144365号
【特許文献3】特許第5328069号
【特許文献4】特開2008-063582号
【特許文献5】特許第4423386号
【特許文献6】特許第3729559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐衝撃性及びシートやフィルム成形時における成形加工性に優れる、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を含むブロック共重合体を提供することを課題とする。
【0005】
本発明者らの検討の結果、ブロック共重合体において、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含む第一のブロックと、共役ジエン系単量体単位を含む第一のブロックとは異なる第二のブロックとを含有させ、ブロック共重合体中の共役ジエン系単量体単位の含有量やミルセン単量体単位の含有量を所定の範囲内に制御するとともに、第二のブロックを構成する単量体単位に占めるミルセン単量体単位の割合を所定の範囲内とすることで、耐衝撃性と成形加工性に優れたブロック共重合体が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、
[1] 第一のブロックと、前記第一のブロックとは異なる第二のブロックとを含有するブロック共重合体であって、
前記第一のブロックは、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含み、
前記第二のブロックは、共役ジエン系単量体単位を含み、
前記第二のブロックは、前記第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中にミルセン単量体単位を85モル%以上含み、
前記ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量が20~80質量%であり、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が20~70質量%であり、
前記ブロック共重合体の、示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られる重量平均分子量(Mw)が、100,000以上である、
ブロック共重合体。
[2] [1]に記載のブロック共重合体であって、
前記重量平均分子量(Mw)が、150,000以上である、
ブロック共重合体。
[3] [1]又は[2]に記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が35~70質量%である、
ブロック共重合体。
[4] [1]又は[2]に記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が45質量%を超え、70質量%以下である、
ブロック共重合体。
[5] [1]~[4]のいずれか一つに記載のブロック共重合体であって、GPCで得られるブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、多分散度(Mw/Mn)が1.0~2.5である、
ブロック共重合体。
[6] [1]~[5]のいずれか一つに記載のブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体のポリマー鎖中にカップリング剤の残基を含まない、
ブロック共重合体。
[7] 熱収縮性フィルム用である、[1]~[6]のいずれか一つに記載のブロック共重合体。
[8] [1]~[7]のいずれか一つに記載のブロック共重合体を含有する樹脂組成物。
[9] [8]に記載の樹脂組成物から成形される、熱収縮性フィルム。
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐衝撃性と成形加工性に優れるブロック共重合体、及び当該ブロック共重合体を含有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A~B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
本願明細書において、ミルセンは、αミルセン(2-メチル-6-メチレンオクタ-1,7-ジエン)及びβミルセン(7-メチル-3-メチレンオクタ-1,6-ジエン)を意味する。
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
<ブロック共重合体>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、第一のブロックと、第一のブロックとは異なる第二のブロックを含有する。ブロック共重合体は、任意でさらに第一のブロックとも第二のブロックとも異なる第三のブロックを含有してもよい。
【0011】
<第一のブロック>
本実施形態にかかる第一のブロックは、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含む。第一のブロックとしては、例えば、芳香族ビニル炭化水素系単量体の重合体ブロック等が挙げられる。本実施形態にかかるブロック共重合体が第一のブロックを二つ以上含む場合、当該二つ以上の第一のブロックは、同一であってもよく、二種以上の第一のブロックが含まれていてもよい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内において、芳香族ビニル炭化水素系単量体と共重合することができる単量体に由来する単量体単位(I)を含んでもよい。このような単量体単位(I)としては、例えば、共役ジエン系単量体単位が挙げられる。
【0012】
<芳香族ビニル炭化水素系単量体単位>
芳香族ビニル炭化水素系単量体単位は、共重合に用いられる芳香族ビニル炭化水素系単量体に由来するブロック共重合体の構成単位である。芳香族ビニル炭化水素系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。重合安定性の観点から、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル炭化水素系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
第一のブロック100質量%中に含まれる芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、90~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましく、99~100質量%であることがさらに好ましい。一実施形態においては、第一のブロックは実質的に芳香族ビニル炭化水素系単量体単位のみからなるものであってもよい。第一のブロック中の芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有比率が多くなると、剛性や耐衝撃性が向上する。
【0014】
第一のブロック100質量%中に含まれる芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、例えば、第一のブロックの重合において使用した全モノマーの質量に対する芳香族ビニル炭化水素系単量体の質量から算出することができる。なお、2種類以上の芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を併用する場合は、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、併用する芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の合計量を意味する。
【0015】
<共役ジエン系単量体単位>
本実施形態にかかる共役ジエン系単量体単位は、共重合に用いられる共役ジエン系単量体に由来するブロック共重合体の構成単位である。共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2、3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセン、ミルセン等が挙げられる。重合安定性の観点から1,3-ブタジエンが好ましく、また、適度な流動性を有しつつ成形加工性に優れる観点からミルセンが好ましい。これらの共役ジエン系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
第一のブロック100質量%中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量は、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましい。一実施形態においては、第一のブロックは実質的に共役ジエン系単量体単位を含まないものであってもよい。第一のブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有比率が少なくなると、剛性や耐衝撃性が向上する。
【0017】
第一のブロック100質量%中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量は、例えば、第一のブロックの重合において使用した全モノマーの質量に対する共役ジエン系単量体の質量から算出することができる。なお、2種類以上の共役ジエン系単量体単位を併用する場合は、共役ジエン系単量体単位の含有量は、併用する共役ジエン系単量体単位の合計量を意味する。
【0018】
<第二のブロック>
本実施形態にかかる第二のブロックは、共役ジエン系単量体単位を含む。第二のブロックとしては、例えば、共役ジエン系単量体の重合体ブロックや芳香族ビニル炭化水素系単量体と共役ジエン系単量体のランダムブロック体、テーパードブロック体等が挙げられる。なお、テーパードブロック体とは、当該ブロック中において共重合体を構成する特定の単量体単位の分布密度に勾配がついた状態でテーパー状に配列するテーパー構造を有するブロックを意味する。
本実施形態にかかるブロック共重合体が第二のブロックを二つ以上含む場合、当該二つ以上の第二のブロックは、同一であってもよく、二種以上の第二のブロックが含まれていてもよい。
【0019】
第二のブロックに含まれる共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位としては、例えば、第一のブロックに含まれる単量体単位と同様の単量体単位が挙げられる。第二のブロックに含まれる共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位、のそれぞれは、第一のブロックに含まれるものと同一であっても、異なるものであってもよい。また、共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位のそれぞれは、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
第二のブロック100質量%中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量は、88~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましく、99~100質量%であることがさらに好ましい。一実施形態においては、第二のブロックは実質的に共役ジエン系単量体単位のみからなるものであってもよい。第二のブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有比率が多くなると、ブロック共重合体の耐衝撃性を効率的に向上させることができる。
【0021】
第二のブロック100質量%中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量は、例えば、第二のブロックの重合において使用した全モノマーの質量に対する共役ジエン系単量体の質量から算出することができる。なお、2種類以上の共役ジエン系単量体単位を併用する場合は、共役ジエン系単量体単位の含有量は、併用する共役ジエン系単量体単位の合計量を意味する。
【0022】
第二のブロック100質量%中に含まれる芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、0~12質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましい。一実施形態においては、第二のブロックは実質的に芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含まないものであってもよい。第二のブロック中の芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有比率が少なくなると、ブロック共重合体の耐衝撃性を効率的に向上させることができる。
【0023】
第二のブロック100質量%中に含まれる芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、例えば、第二のブロックの重合において使用した全モノマーの質量に対する芳香族ビニル炭化水素系単量体の質量から算出することができる。なお、2種類以上の芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を併用する場合は、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の含有量は、併用する芳香族ビニル炭化水素系単量体単位の合計量を意味する。
【0024】
<第二のブロック中のミルセン単量体単位の含有量>
第二のブロックは、第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中にミルセン単量体単位を85モル%以上含む。ミルセン単量体単位を85モル%以上含ませることによって、ブロック共重合体の流動性が向上し、成形加工性に優れるという利点がある。第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中のミルセン単量体単位の含有量は、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。一実施形態においては、第二のブロックを構成する単量体単位は実質的にミルセン単量体単位のみであってもよい。
第二のブロックを構成する単量体単位100モル%中のミルセン単量体単位の含有量は、具体的には、例えば、85、86、87、88、89、90、92、94、96、98、99、又は100モル%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
<第三のブロック>
本実施形態にかかる第三のブロックは、共役ジエン系単量体単位を含む。第三のブロックとしては、例えば、共役ジエン系単量体の重合体ブロックや芳香族ビニル炭化水素系単量体と共役ジエン系単量体のランダムブロック体、テーパードブロック体等が挙げられる。
本実施形態にかかるブロック共重合体が第三のブロックを二つ以上含む場合、当該二つ以上の第三のブロックは、同一であってもよく、二種以上の第三のブロックが含まれていてもよい。
【0026】
第三のブロックに含まれる共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位としては、例えば、第一のブロックに含まれる単量体単位と同様の単量体単位が挙げられる。第三のブロックに含まれる共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位、のそれぞれは、第一のブロックや第二のブロックに含まれるものと同一であっても、異なるものであってもよい。また、共役ジエン系単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素系単量体単位のそれぞれは、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
<ブロック共重合体の共役ジエン系単量体単位の含有量>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量が20~80質量%であり、より好ましくは21~80質量%であり、さらに好ましくは35~70質量%である。共役ジエン系単量体単位の含有量を20質量%以上とすることで、ブロック共重合体の耐衝撃性を向上させることができる。また、後述するように、ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量を80質量%以下とすることで、共重合体のメルトマスフローレート(MFR)が高くなりすぎることを抑制し、良好な成形加工性を達成することができる。このため、共役ジエン系単量体単位の含有量は80質量%以下とする。
ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量は、具体的には、例えば、20、21、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
ブロック共重合体100質量%中の共役ジエン系単量体単位の含有量は、例えば、1H-NMRにより測定することができる。なお、2種類以上の共役ジエン系単量体を併用する場合は、共役ジエン系単量体の含有量は、併用する共役ジエン系単量体の合計量を意味する。
【0029】
<ブロック共重合体のミルセン単量体単位の含有量>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量が20~70質量%であり、より好ましくは35~70質量%であり、さらに好ましくは45質量%を超え、70質量%以下である。ミルセン単量体単位の含有量を20質量%以上とすることで、共重合体のメルトマスフローレート(MFR)が高くなり、成形加工性を向上させることができる。また、ミルセン単量体単位の含有量を70質量%以下とすることで、共重合体のメルトマスフローレート(MFR)が高くなりすぎることを抑制し、良好な成形加工性を達成することができる。
ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量は、具体的には、例えば、20、25、30、35、40、45、46、50、55、60、65、又は70質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
ブロック共重合体100質量%中のミルセン単量体単位の含有量は、重合において使用した全モノマーの質量に対するミルセン単量体の質量から算出する。また、例えば、1H-NMR測定と13C-NMRにより算出することができる。
【0031】
<ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)>
本実施形態にかかるブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、100,000以上であり、より好ましくは150,000以上であり、さらに好ましくは200,000以上である。ブロック共重合体の重量平均分子量を100,000以上とすることで、ブロック共重合体に歪み硬化性を付与することができ、フィルムの延伸等における成形加工性を向上させることができる。ブロック共重合体の重量平均分子量の上限に特に制限はないが、生産性及び重合安定性の観点から、1,000,000以下が現実的である。
ブロック共重合体の重量平均分子量は、具体的には、例えば、100,000、150,000、200,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、又は1,000,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
ブロック共重合体の重量平均分子量の調整は、例えば、重合温度、重合時間、及び重合開始剤添加量の調整に加えて、溶媒濃度を調整する等の方法がある。
【0033】
<ブロック共重合体の多分散度(Mw/Mn)>
本実施形態にかかるブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、多分散度(Mw/Mn)は、1.0~2.5であることが好ましく、1.0~2.0であることがより好ましく、1.0~1.5であることがさらに好ましい。多分散度がこの範囲内であれば、ミクロ相分離構造が形成しやすく、透明性、耐衝撃性の観点から好ましい。
ブロック共重合体の多分散度は、具体的には、例えば、1.0、1.5、2.0、又は2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
ブロック共重合体の多分散度の調整は、例えば、重合温度、重合時間を調整する等の方法がある。
【0035】
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を実施し、ポリスチレン換算の値として得ることができる。
GPC装置名:HLC-8220GPC(東ソー社製)
使用カラム:ShodexGPCKF-404(昭和電工社製)を直列に4本接続
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率法
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(VARIAN社製、重量平均分子量Mw=2,560,000、841,700、280,500、143,400、63,350、31,420、9,920、2,930)を用いて作成する。
【0036】
<ブロック共重合体のブロック構造>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、第一のブロックと、第一のブロックとは異なる第二のブロックとを含有する。ブロック共重合体は、任意でさらに第一のブロックとも第二のブロックとも異なる第三のブロックを含有してもよい。
【0037】
本実施形態にかかるブロック共重合体は、芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含む第一のブロックを含有している。好ましくは、第一のブロックはブロック共重合体の末端に配置されている。芳香族ビニル炭化水素系単量体単位を含むハードブロックをブロック共重合体の末端に配置することで、ブロック共重合体の耐衝撃性が向上される。より好ましくは、第一のブロックはブロック共重合体の両末端に配置されており、ブロック共重合体の耐衝撃性をさらに向上させることができる。この場合、両末端に配置されている第一のブロックは、同一であっても異なるものであってもよい。
【0038】
本実施形態にかかるブロック共重合体は、ポリマー鎖中にカップリング剤の残基を含まないことが好ましい。すなわち、カップリング剤を用いたカップリング重合によらず、逐次重合により得られたブロック共重合体であることが好ましい。
逐次重合により得られたブロック共重合体であれば、ブロック共重合体を単一の非対称なブロック共重合体としても得ることができ、物性の調整が容易になる。
【0039】
<ブロック共重合体の製造方法>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、単量体を公知の重合方法で重合させることにより得られ、例えば、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合などが挙げられる。ブロック共重合体の構造制御の観点からアニオン重合が好ましい。
【0040】
<アニオン重合>
本実施形態にかかるブロック共重合体を製造するためのアニオン重合は、例えば反応溶媒中に重合開始剤を添加した後に、重合する単量体を順次添加することで実施できる。
【0041】
<反応溶媒>
本実施形態のアニオン重合に用いられる反応溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0042】
<重合開始剤>
本実施形態のアニオン重合に用いられる重合開始剤としては、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。これらの中では、ビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩或いはナトリウム塩、有機リチウム化合物から選ばれる1種以上が好ましく、反応性の観点から有機リチウム化合物が好ましい。
【0043】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物である。有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。
有機リチウム化合物を重合開始剤とする所謂リビングアニオン重合では、重合反応に供したモノマーは、ほぼ全量が重合体中の単量体単位に転化し得る。このため、モノマーが重合反応において完全に消費された後に次のモノマーを反応系に添加することで、所望の順序でブロックが連結したブロック共重合体を得ることができる。
【0044】
<反応温度>
本実施形態のアニオン重合を実施する際の反応温度は、30~90℃であることが好ましい。30℃未満の場合、反応速度が著しく低下することがあり、90℃を超えると、重合開始剤が失活することがある。
【0045】
<重合活性末端の不活性化とブロック共重合体の回収>
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素等の重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。得られた共重合体溶液よりブロック共重合体を回収する方法としては、(A)メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、(B)加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、(C)濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、(D)溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0046】
<添加剤>
本実施形態のブロック共重合体は、効果を妨げない範囲で、添加剤を併用しても良い。例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料、鉱油、フィラー、難燃剤などの添加剤を添加できる。
【0047】
安定剤としては、例えば、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0048】
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤などとしては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステル、さらに、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの脂肪酸アミドや、エチレンビスステアリン酸アミド、また、グリセリン-モノ-脂肪酸エステル、グリセリン-ジ-脂肪酸エステル、その他に、ソルビタン-モノ-パルミチン酸エステル、ソルビタン-モノ-ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコール、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などが挙げられる。
【0049】
耐候性向上剤としては、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤等が例として挙げられる。さらに、ホワイトオイルやミネラルオイルなどの流動パラフィン、シリコーンオイル、マイクロクリスタリンワックスなども加えることができる。
これらの添加剤は、本実施形態のブロック共重合体100質量部に対して、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは、0~3質量部の範囲で使用することが望ましい。
【0050】
<ブロック共重合体の製造工程>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、例えば以下のような工程により製造することができるが、これに限定されない。また、重合すべきモノマーが消費された後に次のモノマーを添加することで所望の順序に配列されたブロック共重合体を得ることができる。モノマーの添加順序等は目的とするブロック構造に合わせて適宜変更でき、下記に限定されない。なお、ミルセンの純度が低い場合には、あらかじめ精製により純度を80%以上にしておいてもよい。精製の手段としては、例えば蒸留が挙げられる。
(1)反応容器中に溶媒及びランダム化剤を入れる。
(2)反応容器中に、重合開始剤を加える。
(3)以下の(A)~(C)の工程を任意の順序で、任意の回数実施する。なお、(C)の工程の実施は任意である。
(A)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る工程
(B)反応系に共役ジエン系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第二のブロックを得る工程
(C)反応系に共役ジエン系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第三のブロックを得る工程
(4)重合活性末端を水により失活させて、第一のブロック、第二のブロック、及び任意で第三のブロックをさらに含有するブロック共重合体を含む重合液を得る。
【0051】
上述の(A)~(C)の各工程において重合に供される単量体組成物は、各ブロックにおいて所望の単量体単位含有比率及び単量体組成分布を達成できるように単量体の種類、配合量、添加のタイミングが調整される。
(A)~(C)の各工程から次の工程に移行する際には、例えば、前の工程において、反応系の溶液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)測定を実施することにより当該前の工程において反応系に添加した全単量体の95質量%以上が重合反応に消費されていることを確認してから次の工程に移行することが好ましい。また、予め反応系に添加した全単量体の95質量%以上が重合反応に消費されるのに要する時間(所定時間とも称する)を予想できる場合には、当該時間が経過した後に次の工程に移行してもよい。
【0052】
本実施形態にかかるブロック共重合体の製造工程の一実施形態として、第一のブロックがブロック共重合体の両末端に配置されている、ブロック共重合体の製造工程を示す。
(1)反応容器中に溶媒及びランダム化剤を入れる。
(2)反応容器中に、重合開始剤を加える。
(3)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る。
(4)反応系に共役ジエン系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第二のブロックを得る。
(5)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る。
(6)重合活性末端を水により失活させて、第一のブロック及び第二のブロックを含有するブロック共重合体を含む重合液を得る。
【0053】
本実施形態にかかるブロック共重合体の製造工程の一実施形態として、第一のブロックがブロック共重合体の片末端に配置されている、ブロック共重合体の製造工程を示す。
(1)反応容器中に溶媒及びランダム化剤を入れる。
(2)反応容器中に、重合開始剤を加える。
(3)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る。
(4)反応系に共役ジエン系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第二のブロックを得る。
(5)重合活性末端を水により失活させて、第一のブロック及び第二のブロックを含有するブロック共重合体を含む重合液を得る。
【0054】
本実施形態にかかるブロック共重合体の製造工程の別の一実施形態として、第一のブロックがブロック共重合体の両末端に配置され、さらに第三のブロックを含有するブロック共重合体の製造工程を示す。
(1)反応容器中に溶媒及びランダム化剤を入れる。
(2)反応容器中に、重合開始剤を加える。
(3)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る。
(4)反応系に共役ジエン系単量体と芳香族ビニル炭化水素系単量体とを含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第三のブロックを得る。
(5)反応系に共役ジエン系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第二のブロックを得る。
(6)反応系に芳香族ビニル炭化水素系単量体を含む単量体組成物を添加して、所定時間重合し、第一のブロックを得る。
(7)重合活性末端を水により失活させて、第一のブロック、第二のブロック、及び第三のブロックを含有するブロック共重合体を含む重合液を得る。
【0055】
<ブロック共重合体を含む樹脂組成物>
本実施形態にかかるブロック共重合体は、他の樹脂と混合して樹脂組成物とすることができる。ブロック共重合体と混合する樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレンとブタジエンのブロック共重合体等が挙げられる。
これらは公知の方法で混練、成形し、シート、フィルム、成形品を得ることができる。
【0056】
<熱収縮性フィルム>
本実施形態にかかるブロック共重合体及び当該ブロック共重合体を含む樹脂組成物は、シート、フィルム、または射出成形品として好適に用いることができる。
本実施形態にかかるブロック共重合体は、歪み硬化性が優れているため、熱収縮性フィルムの用途に好適に用いることができる。
【実施例0057】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の具体的な実施態様をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0058】
<使用原料>
・ミルセン:ミルセン(純度79.0%、ヤスハラケミカル株式会社製)を、純度81.0%に精製したものを以下の重合に用いた。
・シクロヘキサン:シクロヘキサン(商品名)、出光興産株式会社製
・THF:テトラヒドロフラン(商品名)、純正化学株式会社製
・n-ブチルリチウム:n-ブチルリチウム10%シクロヘキサン溶液(商品名)、アルベマール社製
・スチレン:スチレン(商品名)、デンカ株式会社製
・1,3-ブタジエン:1,3-ブタジエン(商品名)、千葉ブタジエン工業株式会社製
【0059】
<実施例1>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)800mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン60kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン40kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン100kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は25.6万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
なお、表中、Stはスチレン単量体単位、Myはミルセン単量体単位、Bdはブタジエン単量体単位を意味する。また、ポリマー構造のAは芳香族ビニル炭化水素系単量体の重合体ブロック、Bは芳香族ビニル炭化水素系単量体と共役ジエン系単量体のランダムブロック体またはテーパードブロック体、Cは共役ジエン系単量体の重合体ブロックを意味する。
【0060】
<実施例2>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1880mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン60kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン58kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン80kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は11.0万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0061】
<実施例3>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1130mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン37kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン80kgとスチレン3kgの単量体組成物を加え、ミルセンとスチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加した単量体が95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン80kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は18.3万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン96質量%(95モル%)、スチレン4質量%であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0062】
<実施例4>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1290mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン50kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン100kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン50kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は16.0万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0063】
<実施例5>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)385mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン30kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン120kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン50kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は53.6万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0064】
<実施例6>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1090mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン25kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、1,3-ブタジエン40kgとスチレン40kgを、それぞれ15kg/hの一定速度で同時に加え、1,3-ブタジエンとスチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加した単量体が95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン60kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン35kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は19.0万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であり、第三のブロック100質量%中に含まれる単量体単位には、1,3-ブタジエン50質量%、スチレン50質量%であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0065】
<実施例7>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)780mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン70kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン46kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン84kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は26.4万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0066】
<比較例1>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)2950mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン70kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン50kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン80kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は7.0万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0067】
<比較例2>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)990mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン60kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、1,3-ブタジエン40kgとスチレン50kgの単量体組成物を加え、1,3-ブタジエンとスチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加した単量体が95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン50gを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は20.9万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第三のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、1,3-ブタジエン44質量%、スチレン56質量%であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0068】
<比較例3>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1150mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン30kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン18kgとスチレン1.6kgの単量体組成物を加え、ミルセンとスチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加した単量体が95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン150kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は18.0万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン92質量%(90モル%)、スチレン8質量%であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0069】
<比較例4>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)970mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン5kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン180kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン15kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は21.3万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0070】
<比較例5>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)1330mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン10kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、ミルセン160kgを加え、ミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン30kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は15.5万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第二のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン100質量%(100モル%)であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0071】
<比較例6>
撹拌機を備えた反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、及びテトラヒドロフラン(THF)75.0gを加えた。この中に、重合開始剤溶液として、n-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)720mLを加え、30℃に保った。ここへスチレン70kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃まで下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したスチレンが95質量%以上消費されていることを確認した後、1,3-ブタジエン40kgとミルセン42kgを、それぞれ15kg/h、16kg/hの一定速度で同時に加え、1,3-ブタジエンとミルセンをアニオン重合させた。反応系の内温を50℃に下げ、反応液を少量サンプリングしてGC測定により添加したミルセンが95質量%以上消費されていることを確認した後、さらにスチレン48kgを加え、重合を完結させた。最後に重合活性末端を水により失活させて、ブロック共重合体を含む重合液を得た。この重合液を脱揮して、ブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は28.9万であった。また、ブロック共重合体中の第一のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、スチレン100質量%であり、第三のブロック100質量%中に含まれる単量体単位は、ミルセン51質量%(29モル%)、1,3-ブタジエン49質量%であった。得られたブロック共重合体の分析結果を表2に示す。
【0072】
<各種測定・評価>
以下に示す方法で、各種特性・物性の測定及び評価を行った。試験片は、射出成形機により作成した。
【0073】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を実施し、ポリスチレン換算の値として得た。
GPC装置名:HLC-8220GPC(東ソー社製)
使用カラム:ShodexGPCKF-404(昭和電工社製)を直列に4本接続
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率法
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(VARIAN社製、重量平均分子量Mw=2,560,000、841,700、280,500、143,400、63,350、31,420、9,920、2,930)を用いて作成した。
【0074】
<シャルピー衝撃強度>
シャルピー衝撃強度は、JIS K-7111に準拠して、ノッチあり試験片を用い、打撃方向はエッジワイズを採用して相対湿度50%、雰囲気温度23℃の条件で測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製デジタル衝撃試験機を使用した。
【0075】
<メルトマスフローレート(MFR)>
メルトマスフローレートは、JIS K7210に準拠して、温度200℃、荷重98Nの条件で測定した。
【0076】
<歪み硬化度>
歪み硬化度(λmax)は、下記の方法で測定した。
(1)TA Instruments社製伸長粘度測定装置DHR-2を使用し、歪速度0.1sec-1、温度110℃にて伸長粘度(η)を測定した。
(2)Hencky歪み(ε)の常用対数Log(ε)を横軸に、ηの常用対数Log(η)を縦軸とするグラフを作成し、ε=0.1以上0.3以下の線形領域における線形近似式を求めた。
(3)ηがピークを示す点でのHencky歪みをεpとし、ε=εpにおける伸長粘度の実測値をηp、上記線形近式のε=εpにおける計算値をηp*とし、次式により歪み硬化度(λmax)を算出した。
λmax=ηp/ηp*
歪み硬化度(λmax)の値が大きいほど、フィルム成形時における成形加工性に優れる。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1~表2の結果より、実施例にかかるブロック共重合体は、良好な耐衝撃性を有していることが理解される。また、良好な流動性を有していることから、例えばフィルムの成形加工性に優れていることが理解される。さらに、歪み硬化性を発現することから、例えばフィルムを成形した場合、得られるフィルムの厚み精度が向上され、よって成形加工性に優れていることが理解される。
他方、比較例にかかるブロック共重合体は、耐衝撃性、流動性、及び歪み硬化度の観点の少なくとも一つにおいて劣っていることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明にかかる芳香族ビニル炭化水素系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を含むブロック共重合体は、耐衝撃性及びシートやフィルム成形時における成形加工性に優れ、産業上の利用可能性を有する。