(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074480
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】自己形成光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/138 20060101AFI20240524BHJP
G02B 6/02 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G02B6/138
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185654
(22)【出願日】2022-11-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/マルチチャネル自動接続を実現する赤外自己形成光接続の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(71)【出願人】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】杉原 興浩
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 英孝
(72)【発明者】
【氏名】行川 毅
【テーマコード(参考)】
2H147
2H250
【Fターム(参考)】
2H147AB40
2H147CA05
2H147CB01
2H147EA19A
2H147EA20B
2H147FD08
2H147FD10
2H147FE02
2H147FE03
2H250AC64
2H250AC83
2H250AC94
2H250AC95
2H250AE25
2H250AE63
2H250AE64
(57)【要約】
【課題】結合不良が防止可能な、自己形成光導波路の製造方法の実現。
【解決手段】光硬化性樹脂と、n本(n:2以上の自然数)のコアを備えるマルチコアファイバを2つ用意する。光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbがnb<naであるクラッド部形成用樹脂とを含む。2つのマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、マルチコアファイバの間に光硬化性樹脂を配置する。2つのマルチコアファイバのコアから光硬化性樹脂に、マルチコアファイバのコアから順に光を入射し、コア部を形成する。次にクラッド部を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂とn本(n:2以上の自然数)のコアを備えるマルチコアファイバを2つ用意し、
前記光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、前記コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbが前記nb<前記naであるクラッド部形成用樹脂とを含み、
2つの前記マルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、前記マルチコアファイバの間に前記光硬化性樹脂を配置し、
前記コア部形成用樹脂のみの前記重合が可能な強度の光を2つの前記マルチコアファイバの前記コアから順に前記光硬化性樹脂に入射し、前記コア部形成用樹脂の前記重合及び前記硬化を発生させて前記光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成し、
次にクラッド部を形成して、前記光硬化性樹脂内に前記n本の光導波路を自己形成する自己形成光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己形成光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光技術を利用した光通信、光情報処理、電子機器、或いは光学機器等の分野が進展しており、各種光デバイス間に於ける光導波路の開発が課題となっている。各種光デバイスは光ファイバ等の光導波路によって光学的に接続されるが、その接続には極めて高い位置精度が要求される。従来このような接続作業は、手作業若しくは高精度な調芯設備により行われている為、接続コストが上がってしまうという問題があった。
【0003】
そこでこのような問題を解決する為、自己形成光導波路が開発されている。この光導波路は、光硬化性樹脂から光導波路のコアを自己形成した光導波路である。光ファイバ等の端部を光硬化性樹脂に浸漬し、その光ファイバ等から光硬化性樹脂に光を入射して光硬化性樹脂を徐々に硬化させることで、光ファイバ等の端部に自己形成光導波路を形成する。
【0004】
このような自己形成光導波路として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1に依れば光コネクタが、少なくともフェルールと、n本(n:0を含まない自然数)の自己形成光導波路を備える。フェルールは、n本の光ファイバ挿入孔を備え、各光ファイバ挿入孔に光ファイバが挿入されている。
【0005】
更に、光導波路の形成後2分間放置し、コアとクラッドとの境界面でのモノマーの相互拡散を促し、その後UV照射でクラッドを形成している。光硬化性樹脂のうち、コア領域中では一方のモノマーのみが消費されて重合するので、コアとクラッドとの境界面ではモノマーの濃度勾配が生じて相互拡散が進行し、クラッドの機能を果たす。また、光硬化性樹脂全体をUV照射することで、コア及びクラッド全体が硬化形成されて、光導波路が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の様な複数の自己形成光導波路を形成しようとすると、各光ファイバのコアから、同時に光を光硬化性樹脂内部に照射した場合、隣り合うコア同士の光照射で形成される、それぞれの自己形成光導波路が互いに結合して形成され、結合不良を招くおそれが有った。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、結合不良が防止可能な、自己形成光導波路の製造方法の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の自己形成光導波路の製造方法では、光硬化性樹脂とn本(n:2以上の自然数)のコアを備えるマルチコアファイバを2つ用意し、光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbがnb<naであるクラッド部形成用樹脂とを含み、2つのマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、マルチコアファイバの間に光硬化性樹脂を配置し、コア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度の光を2つのマルチコアファイバのコアから順に光硬化性樹脂に入射し、コア部形成用樹脂の重合及び硬化を発生させて光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成し、次にクラッド部を形成して、光硬化性樹脂内にn本の光導波路を自己形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る自己形成光導波路の製造方法に依れば、各マルチコアファイバに於いて、隣り合うコア同士の光照射で形成されるそれぞれのコア部が、互いに結合して形成されることを防止することができるので、コア部の結合不良が防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る自己形成光導波路の製造方法で用いる、マルチコアファイバの構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る自己形成光導波路の製造方法に於ける、2つのマルチコアファイバ間に光硬化性樹脂を配置した状態の一部を示す説明図である。
【
図3】
図2の状態から、2つのマルチコアファイバの各コアから光硬化性樹脂内に光を入射し、自己形成光導波路のコア部を形態した状態を示す説明図である。
【
図4】
図3の状態から、光硬化性樹脂と透明容器を除外して示した斜視図である。
【
図5】
図3の状態から、コア部に光を入射及び伝搬させ、各コア部から漏光を発生させる状態を示す説明図である。
【
図6】
図5の状態から、各クラッド部と、複数本の自己形成光導波路を形態した状態を示す説明図である。
【
図7】
図6の状態を示す、実体顕微鏡観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の自己形成光導波路の製造方法では、光硬化性樹脂とn本(n:2以上の自然数)のコアを備えるマルチコアファイバを2つ用意し、光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbがnb<naであるクラッド部形成用樹脂とを含み、2つのマルチコアファイバを互いに対向配置すると共に、マルチコアファイバの間に光硬化性樹脂を配置し、コア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度の光(以下において、単に「光」とも記載する)を2つのマルチコアファイバのコアから順に光硬化性樹脂に入射し、コア部形成用樹脂の重合及び硬化を発生させて光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成し、次にクラッド部を形成して、光硬化性樹脂内にn本の光導波路を自己形成する。
【0013】
上記製造方法では、コア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度の光を、マルチコアファイバのコアから順に光硬化性樹脂に入射させることができる。
【0014】
上記製造方法に依れば、各マルチコアファイバに於いて、隣り合うコア同士の光照射で形成されるそれぞれのコア部が、互いに結合して形成されることを防止することができるので、コア部の結合不良が防止可能となる。
【実施例0015】
以下に本発明の一態様として、
図1乃至
図7を参照して、実施例に係る製造方法を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0016】
本実施例の製造方法では、最初に光硬化性樹脂1とn本(n:2以上の自然数)のコアを備えるマルチコアファイバ(3a、3b)を用意する。マルチコアファイバ(3a、3b)としては、同一構造の物を2つ用意する。nは2以上の自然数であり、例えば2以上4以下である。ただし、nはここに例示した範囲に限定されない。
【0017】
透明容器4に光硬化性樹脂1を充たし、各マルチコアファイバ(3a、3b)の片側の端部を、それぞれ光硬化性樹脂1内に浸漬させる。従って、マルチコアファイバ(3a、3b)の間に光硬化性樹脂1を配置すると共に、光硬化性樹脂1を挟んで2つのマルチコアファイバ(3a、3b)を互いに対向配置する。
【0018】
2つのマルチコアファイバ(3a、3b)はどちらも、外形形状が
図1に示す円形で、コア径が8.0μm、クラッド径が125μm、更にn=4本のコア(3a1、3a2、3a3、3a4、又は3b1、3b2、3b3、3b4)を備える。また、4本のコア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)は
図1に示すように、マルチコアファイバ(3a、3b)の中央を中心とする円の円周上で等角度(
図1では90°)且つ等間隔に2列×2芯に配置されている。また、本実施例では、2つのマルチコアファイバ(3a、3b)において、各コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)の間隔dは、50μmである。間隔dは、2つのコアの中心間の距離である。
【0019】
例えば、カットオフ波長は1300nm~1500nmであり、モードフィールド径は7.4μm~8.5μm(伝搬光波長1550nm)である。
【0020】
光硬化性樹脂1に浸漬されるマルチコアファイバ(3a、3b)の端面(3a5、3b5)は、
図2に示すように各コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)の光軸方向に対して垂直に、平面形状となるように形成されている。端面(3a5、3b5)には、平面研磨加工が施される。
【0021】
光硬化性樹脂1は、コア部形成用樹脂とクラッド部形成用樹脂とを含む。コア部形成用樹脂は、所定の波長帯の光が入射されて重合及び硬化することで、屈折率naを有する。またクラッド部形成用樹脂は、コア部形成用樹脂に入射される光の波長帯域と同一又は異なる波長帯域であり、且つコア部形成用樹脂に入射される光の強度以上の光が入射されて、重合及び硬化する。更に、硬化後のクラッド部形成用樹脂の屈折率nbは、nb<naである。
【0022】
コア部形成用樹脂及びクラッド部形成用樹脂としては、互いに異なる重合反応を経て光重合が起こる樹脂を選択する。本実施例では、コア部形成用樹脂はアクリル系樹脂であり、クラッド部形成用樹脂はエポキシ系樹脂である。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂との組み合わせでは、アクリル系樹脂の方が、エポキシ系樹脂よりも重合反応速度が速い為、弱い強度の光によってアクリル系樹脂だけが選択的に重合する。
【0023】
またアクリル系樹脂とエポキシ系樹脂は、2種類以上のモノマーから成る混合液に光重合開始剤を添加した溶液である。
【0024】
次に、2つのマルチコアファイバ(3a、3b)のコア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)から、所定の波長帯域の光を光硬化性樹脂1の内部に入射させる。光硬化性樹脂1に入射する光は、コア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度のレーザ光である。光の波長λwは光重合開始剤に応じて任意に設定可能であるが、一例として365nm~1675nmが挙げられ、本実施例ではλw=405nmに設定する。併せて、光重合開始剤が感度を有する波長帯域も、405nm近辺とする。
【0025】
コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)からの光の入射により、コア部形成用樹脂の重合及び硬化を発生させ、コア部形成用樹脂のモノマーがポリマーとなり、光硬化性樹脂1内に、
図3及び
図4に示す光導波路の複数本のコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)が自己形成する。
【0026】
コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)から光硬化性樹脂1への光の入射の際に、各マルチコアファイバ(3a、3b)において、n本のコアに順に光を入射させる。ここで、「順に」とは、各マルチコアファイバ(3a、3b)においてn本のコアへの光の入射を順次行う際、ある1本のコアに光を入射させている時間中、同じマルチコアファイバの他のいずれのコアにも光を入射させないことを意味する。例えば、マルチコアファイバ3aにおいて、コア3a1に光を入射させている時間中にはコア3a2、3a3及び3a4には光を入射させず、マルチコアファイバ3bにおいて、コア3b1に光を入射させている時間中にはコア3b2、3b3及び3b4には光を入射させない。なお、2つのマルチコアファイバ(3a、3b)の一方のマルチコアファイバのコアへの光の入射を行っている時間中、他方のマルチコアファイバのコアへの光の入射を行ってもよく、行わなくてもよい。
図1~
図3に示した例では、コア3a1(又は3b1)→3a2(又は3b4)→3a3(又は3b3)→3a4(又は3b2)の順に1本ずつのコア間でコア部を順次形成し、各コア間でコア部の自己形成が完了した後に次のコア間のコア部の自己形成を行う。このような光の入射工程とする理由は、各マルチコアファイバ(3a、3b)に於いて、隣り合うコア同士の光照射で形成されるそれぞれのコア部が、互いに結合して形成されることを防止することが可能となり、コア部の結合不良が防止可能な為である。
【0027】
コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の径は、マルチコアファイバ(3a、3b)の各コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)径と同一とすることが望ましく、且つ、各コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の光軸方向で一様な直径が望ましい。更に各コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)のモードフィールド径は、マルチコアファイバ(3a、3b)の各コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)のモードフィールド径と同一(7.4μm~8.5μm)とする。
【0028】
次に、クラッド部の自己形成について説明する。コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の形成後、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の周囲(コア部2a1、2b1、2c1、2d1と、その他の光硬化性樹脂1との境界面)に於ける、光硬化性樹脂1内のクラッド部形成用樹脂に於いて、モノマーの相互拡散を発生させる。コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)領域中ではモノマーが消費されて重合しているのに対し、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)以外の光硬化性樹脂1のモノマーは重合反応しておらず、未硬化且つ未消費なので、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の周囲でモノマーの濃度勾配が生じ、相互拡散が進行する。本実施例ではコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の形成後2分間放置して、モノマーの相互拡散を促した。
【0029】
次に、本実施例ではコア部形成樹脂を重合させた波長帯域と同一波長帯域(λw=405nm)のレーザ光を、マルチコアファイバ(3a、3b)の各コア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)からコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)に入射させて、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)内部に伝搬させる。コア部形成樹脂を重合させた光の強度以上の光を、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)に入射させる。無論その強度は、クラッド部形成用樹脂を重合させることが可能な強度とする。
【0030】
更に光の伝搬を継続して、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)からコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)周囲の未硬化のクラッド部形成用樹脂へと、漏光を発生させる。するとコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)周囲のクラッド部形成用樹脂が、
図5の矢印に示す漏光によって重合及び硬化して、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)表面を包囲する形態でクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)が自己形成される。なお、
図5の矢印は、1つのコア部2a1のみに図示しているが、漏光はその他のコア部(2b1、2c1、2d1)でも発生する。また、クラッド部2d2は図示していないが、コア部2d1表面を包囲して自己形成されるクラッド部である。
【0031】
硬化後に自己形成されたクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)の屈折率nbは、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の屈折率naに対してnb<naを示す。よってコア部(2a1、2b1、2c1、2d1)とクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)によって、複数本の自己形成光導波路(2a、2b、2c、2d)が自己形成される。自己形成光導波路2aがコア部2a1とクラッド部2a2から成る。また、自己形成光導波路2bがコア部2b1とクラッド部2b2から成り、自己形成光導波路2cがコア部2c1とクラッド部2c2から成り、自己形成光導波路2dがコア部2d1とクラッド部2d2から成る。
【0032】
最後に、透明容器4の周囲から紫外線(UV)を一様に照射して、全ての未反応の光硬化性樹脂1を硬化させる(
図6、
図7参照)。
【0033】
なお、クラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)形成用の光を、各マルチコアファイバ(3a、3b)の全てのコア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)から同時に全コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)に入射させても、各コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)に順に1本ずつ入射させてもよい。全てのコア(3a1~3a4、又は3b1~3b4)から同時に全コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)に入射させるにより、複雑な入射時間制御が必要無くなると共に、クラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)形成時間の短縮も図ることができるので好ましい。
【0034】
以上、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)からの漏光によりクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)を形成することで、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)を除いた光硬化性樹脂1全体の硬化収縮の発生が防止され、クラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)形成時に硬化する樹脂をクラッド部形成用樹脂のみとすることが可能となる。従って、光硬化性樹脂1全体での応力の発生が防止され、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)の変形を抑制可能となり、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)への光挿入損失の増加を抑制することができる。
【0035】
更に、先に記載したように漏光によりクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)を形成することで、各クラッド部の径や厚みを制御可能となり、自己形成光導波路(2a、2b、2c、2d)の光学特性や機械的特性の安定化も図ることができる。
【0036】
更に本実施例では、複数本の自己形成光導波路(2a、2b、2c、2d)を形成する際、クラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)形成時に光硬化性樹脂1の周囲からのUV照射を行わずに全てのクラッド部(2a2、2b2、2c2、2d2)の硬化を完了させることができるので、コア部(2a1、2b1、2c1、2d1)毎の光挿入損失の増加が防止可能となる。
【0037】
自己形成光導波路(2a、2b、2c、2d)の形成後、マルチコアファイバ3aの各コア(3a1~3a4)から各光導波路(2a、2b、2c、2d)に1550nm波長の光を入射及び伝搬させ、入射光の光出力に対して出射される光出力をパワーメータで計測し、マルチコアファイバ(3a、3b)間での光挿入損失を計測した。
【0038】
その損失値を表1に示す。表1に示すように、4本全ての光導波路(2a、2b、2c、2d)に於いて、光挿入損失が0.2dB~1.2dBの範囲内まで改善されていることが確認された。表1では、光導波路2aをチャンネル1、光導波路2bをチャンネル2、光導波路2cをチャンネル3、光導波路2dをチャンネル4と示している。なお、2つのマルチコアファイバ(3a、3b)の端面(3a5、3b5)間での各光導波路(2a、2b、2c、2d)の長さは、500μmである。
【0039】
【0040】
本発明はマルチコアファイバ間の自己形成光導波路の製造方法のみだけで無く、マルチコアファイバとシリコン光導波路間や、マルチコア光ファイバとポリマー光導波路間の自己形成光導波路の製造方法等の、高密度光実装分野にも適用可能である。