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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074490
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】電界紡糸装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
D01D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185673
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 祐輝
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045BA03
4L045BA34
4L045CA19
4L045CA29
4L045CB10
4L045CB16
4L045DA45
(57)【要約】
【課題】高分子溶液の吐出量を均一にする電界紡糸装置を提供する。
【解決手段】原料液11を貯留するタンク13と、先端に吐出口15を有し、基端の吸込口17を前記原料液11に接触させるように設けられ、毛細管現象によって、前記原料液11を前記吐出口15へ移動させるノズル20と、を備え、前記ノズル20とシート状基材21との間に電圧を印加することによって、前記吐出口15から吐出した前記原料液11を、微細化して極細繊維とした状態で前記シート状基材21に堆積させる電界紡糸装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液を貯留するタンクと、
先端に吐出口を有し、基端の吸込口を前記原料液に接触させるように設けられ、毛細管現象によって、前記原料液を前記吐出口へ移動させるノズルと、を備え、
前記ノズルとシート状基材との間に電圧を印加することによって、前記吐出口から吐出した前記原料液を微細化して極細繊維とした状態で前記シート状基材に堆積させる電界紡糸装置。
【請求項2】
複数の前記ノズルを保持する保持板を備え、
前記保持板は、前記原料液に対して面接触し、且つ前記吸込口を前記原料液に接触させた状態に保たれる請求項1に記載の電界紡糸装置。
【請求項3】
前記保持板は、前記原料液の浮力のみによって、前記原料液の液面に接した状態に保持される請求項2に記載の電界紡糸装置。
【請求項4】
前記タンク内における前記原料液の液面の高さに応じて、前記タンクを昇降させる昇降装置を備える請求項3に記載の電界紡糸装置。
【請求項5】
前記保持板が導電性材料からなり、前記保持板に、前記シート状基材と前記保持板との間に電圧を印加するための電源が接続されている請求項2~4のいずれか1項に記載の電界紡糸装置。
【請求項6】
前記吐出口からの前記原料液の吐出し量に応じて、前記タンクに前記原料液を補給する補給装置を備えている請求項2~4のいずれか1項に記載の電界紡糸装置。
【請求項7】
複数の前記吐出口が二次元方向に並ぶように配置された請求項1に記載の電界紡糸装置。
【請求項8】
前記複数の吐出口が、千鳥配置されている請求項7に記載の電界紡糸装置。
【請求項9】
前記原料液に接するように設けたノズルブロックを備え、
前記ノズルブロックには貫通形態の複数の前記ノズルが一体形成されていて、
前記ノズルの基端が前記原料液に接している請求項1に記載の電界紡糸装置。
【請求項10】
前記ノズルブロックが導電性材料からなり、
前記ノズルブロックに、前記ノズルブロックと前記シート状基材との間に電圧を印加するための電源が接続されている請求項9に記載の電界紡糸装置。
【請求項11】
前記ノズルの基端が、前記タンク内側の底面部において開口している請求項1に記載の電界紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界紡糸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のエレクトロスピニング装置は、紡糸液を貯留する円管状の貯留槽に円形の紡糸孔が形成されている。エレクトロスピニング装置は、貯留される紡糸液を電圧印加によって、紡糸孔から捕集部材に吐出して、繊維集合体を積層する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-084387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記エレクトロスピニング装置においては、紡糸液を紡糸孔に供給する手段として、ポンプによって加圧した紡糸液を、貯留槽の長さ方向における一方の端部から貯留槽内に送り込むようになっている。このような供給構造の場合、貯留槽の長さ方向における一方の端部の内圧よりも長さ方向中央部の内圧の方が低くなる。この内圧の不均一のために、吐出される紡糸液の量が、全ての紡糸孔において均一でなかった。
本開示は、上記の事情に基づいて完成されたものであって、電界紡糸用の原料液の吐出量を均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電界紡糸装置は、
原料液を貯留するタンクと、
先端に吐出口を有し、基端の吸込口を前記原料液に接触させるように設けられ、毛細管現象によって、前記原料液を前記吐出口へ移動させるノズルと、を備え、
前記ノズルとシート状基材との間に電圧を印加することによって、前記吐出口から吐出した前記原料液を、微細化して極細繊維とした状態で前記シート状基材に堆積させる。
【発明の効果】
【0006】
本開示の電界紡糸装置は、原料液を毛細管現象によって吐出口へ供給しているので、原料液の吐出量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る電界紡糸装置の概略図である。
図2】実施形態1に係る保持板の平面図である。
図3】実施形態2に係る電界紡糸装置の概略図である。
図4】本開示の昇降装置の動作フローを表す図である。
図5】実施形態3に係る電界紡糸装置の概略図である。
図6】本開示の補給装置の動作フローを表す図である。
図7】実施形態4に係る電界紡糸装置の概略図である。
図8】実施形態5に係る電界紡糸装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0009】
本開示において、複数のノズルを保持する保持板を備え、保持板は、原料液に対して面接触し、且つ吸込口を原料液に接触させた状態に保たれることが好ましい。保持板が原料液の液面に接した状態に保たれることにより、ノズルの吸込口が液面から離れないため、各吐出口から、均一に原料液を吐出できる。また、保持板が原料液の広い面積に亘って覆うので、原料液の乾燥を防止できる。
【0010】
本開示において、保持板は、原料液の浮力のみによって、原料液の液面に接した状態に保持されることが好ましい。保持板を浮力によって液面に接した状態に保つことができるため、保持板とノズルを保持する装置が不要となる。
【0011】
本開示において、電界紡糸装置は、保持板が導電性材料からなり、保持板に、シート状基材と保持板との間に電圧を印加するための電源が接続されていることが好ましい。複数のノズルの配置領域全体に亘って電圧が印加されるため、原料液の帯電量が全てのノズルにおいて均一になる。
【0012】
本開示において、電界紡糸装置は、タンク内における原料液の液面の高さに応じて、タンクを昇降させる昇降装置を備えることが好ましい。タンクを昇降させることによって、ノズルの吐出口を一定高さに保つことができるため、吐出口とシート状基材との間隔を一定に保ち、シート状基材における極細繊維の厚さ(目付)を安定させることができる。
【0013】
本開示において、電界紡糸装置は、吐出口からの原料液の吐出し量に応じて、タンクに原料液を補給する補給装置を備えていることが好ましい。原料液の吐出量に応じて原料液を補給することによって、タンク内の原料液の液面を一定の高さに保ち、吐出口の高さを一定高さに保つことができる。ノズルやタンクを昇降させなくても、吐出口とシート状基材との間隔を一定に保つことができるため、昇降装置を設けることなく、シート状基材における極細繊維の厚さ(目付)を安定させることができる。
【0014】
本開示において、複数の吐出口が二次元方向に並ぶように配置されることが好ましい。複数の吐出口が、ニ次元方向に並ぶように配置されているため、広範囲に亘って極細繊維をシート状基材に堆積させることができる。
【0015】
本開示において、複数の吐出口が、千鳥配置されていることが好ましい。複数のノズルが千鳥配置されているため、隣り合うノズル間における電場の干渉を回避、抑制できる。
【0016】
本開示において、原料液に接するように設けたノズルブロックを備え、ノズルブロックには貫通形態の複数のノズルが一体形成されていて、ノズルの基端が前記原料液に接していることが好ましい。ノズルブロック中のノズルが変形し難いため、原料液の吐出が安定する。
【0017】
本開示において、ノズルブロックが導電性材料からなり、ノズルブロックに、ノズルブロックとシート状基材との間に電圧を印加するための電源が接続されていることが好ましい。全てのノズルの内周面がノズルブロックによって構成されているので、原料液の帯電量が全てのノズルにおいて均一になる。
【0018】
本開示において、ノズルの基端が、タンク内側の底面部において開口していることが好ましい。原料液面の下降に伴って、ノズルやタンクを昇降させる必要がないため、昇降装置がなくても、シート状基材における極細繊維の厚さ(目付)が安定する。
【0019】
図1図8は、本開示の電界紡糸装置に関する図である。各図において、「前側」を「F」、「上側」を「U」、「右側」を「R」で表している。
【0020】
<実施形態1>
[電界紡糸装置10の構成]
図1に示すように、本実施形態1に係る電界紡糸装置10は、原料液11と、タンク13と、ノズル20と、保持板30と、シート状基材21と、収集電極24と、電極荷電部25を有している。
【0021】
[原料液11]
原料液11は、極細繊維を形成する樹脂材料を溶質とし、この溶質を揮発性の溶媒に溶解又は分散させたものである。溶質としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の合成樹脂が用いられる。溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等の化合物が用いられる。
【0022】
[タンク13]
図1で示すように、タンク13は、原料液11を貯留する。タンク13は、底面部31、及び内壁面33で形成される上側が解放された直方体形状である。
【0023】
[ノズル20]
図1で示すように、ノズル20は、タンク13に貯留された原料液11を毛細管現象により、基端に開口する吸込口17から吸上げ、吐出口15へ移動させる。ノズル20は、円柱細管形状である。図2に示すように、ノズル20の内部には、原料液11を吐出させるための細管孔23が設けられている。原料液11を吐出させるため細管孔23は、ノズル20のシート状基材21側の端部である吐出口15と、ノズル20のタンク13側の端部(基端)である吸込口17との間を貫通している。原料液11を吐出させるための細管孔23の、シート状基材21側の開口が吐出口15となる。
【0024】
ノズル20の外径寸法(ノズル20が円筒状の場合には直径寸法)は例えば0.2mmである。外径寸法を小さくすれば、ノズル20の吐出口15の近傍において電界集中が生じ易くなる。ノズル20の吐出口15の近傍において電界集中が生じれば、ノズル20とシート状基材21の間に形成される電界の強度を高めることができる。そのため、電極荷電部25によって印加される電圧を低くすることができる。すなわち、駆動電圧を低減することができる。
【0025】
吐出口15の内径寸法は、例えば0.1mmである。吐出口15の内径寸法は、生成したい極細繊維の断面寸法に応じて適宜変更することができる。ノズル20の吸込口17の内径寸法は例えば0.1mmである。細管孔23は、吸込口17から吐出口15にかけて内径を一定に形成されている。細管孔23の内径は、生成したい極細繊維の断面寸法、原料液11の表面張力、原料液11の比重、ノズル20の内周面の濡れ性等に応じて適宜変更することができる。吸込口17は、タンク13に貯留された原料液11と接触している。原料液11は、吸込口17から毛細管現象によって、細管孔23を経由して、吐出口15まで移動する。詳細には、細管状をなすノズル20の吸込口17を原料液11に接触させると、毛細管現象によって、原料液11は、細管孔23の内面を上昇し、吐出口15まで到達する。
【0026】
[保持板30]
本実施形態1の電界紡糸装置10は、保持板30を備えている。保持板30は、導電性材料からなり、タンク13内の原料液11の液面Aの全体を覆う部材である。保持板30は、略直方体の板状であり、タンク13内側を形成する各辺より、例えば0.1mm程度小さい。保持板30は、ノズル20を保持するためのノズル収容孔32を有している。ノズル収容孔32の外径は、ノズル20の外径と略同一形状である。ノズル収容孔32は、保持板30の上下面を貫通している。ノズル20の吸込口17の高さは、ノズル収容孔32の下端(保持板30の下面)と一致している。
【0027】
図2に示すように、保持板30を上から視た平面視において、ノズル20の吐出口15は千鳥配列されている。千鳥配列とは、平行に隣り合う2列の吐出口15群において、一方の列の吐出口15と他方の列の吐出口15とが、列の長さ方向に位置ずれした配列を意味する。位置ずれの量は、各列における吐出口15間のピッチの1/2である。
【0028】
保持板30の外周面は、タンク13に固定された状態において、タンク13の内壁面33との間に隙間を有している。保持板30がタンク13内に収容された状態において、保持板30は、原料液11の浮力のみによって、原料液11の液面Aに接して浮いた状態に保持されている。保持板30は、浮力によって液面Aに接した状態に保つことができるため、保持板30とノズル20を原料液11中に沈まないように保持するための装置が不要となる。保持板30がタンク13に収容された状態において、保持板30の下端は、原料液11に対して面接触し、且つ吸込み口である吸込口17の開口を原料液11に接触させた状態に保たれる。保持板30は、原料液11上面の例えば90%以上を覆っている。これにより、全てのノズル20の吸込口17の開口が液面Aから離れないため、全ての吐出口15から原料液11を吐出できる。また、保持板30が原料液11の広い面積に亘って覆うので、原料液11の乾燥を防止できる。
【0029】
[シート状基材21]
シート状基材21は、ノズル20から吐出される原料液11中の溶質(以下、繊維成分ともいう)を堆積させる部材である。シート状基材21は、水平に張り出された状態で、送り出しローラ34から送り出されるとともに、巻き取りローラ35に巻き取られる。シート状基材21のうち両ローラ34,35の間で水平に張り出された領域を捕集領域とする。ノズル20から吐出された繊維成分からなる繊維集合体は、シート状基材21の捕集領域の下面に対してシート状に積層される。
【0030】
[収集電極24]
収集電極24は、金属製の導電性材料からなり、直方体の板状をなしている。図1に示すように、収集電極24は、送り出しローラ34と巻き取りローラ35との間に配置されている。収集電極24は、シート状基材21の捕集領域の上面と対向するように配置されている。
【0031】
[電極荷電部25]
電極荷電部25は、導電性の保持板30、及び収集電極24にそれぞれ電気的に接続し、電圧を印加するための電源である。導電性の保持板30は、電極荷電部25のプラス電極と接続している。収集電極24は、電極荷電部25のマイナス電極に接続している。
【0032】
[実施形態1の電界紡糸装置10の作用効果]
電界紡糸装置10の作用効果について説明する。電界紡糸装置10は、原料液11を貯留するタンク13と、ノズル20と、ノズル20の基端部を保持する保持板30と、シート状基材21と、電極荷電部25を有している。ノズル20は先端に吐出口15を有し、基端に吸込口17を原料液11に接触させるように設けている。
【0033】
原料液11は、電界紡糸装置10のノズル20の吸込口17から、毛細管現象によって、吐出口15まで移動する。原料液11が吐出口15まで移動した状態で、電極荷電部25により、保持板30と、収集電極24に電圧を印加すると、保持板30に接している原料液11は、プラスに帯電する。プラスに帯電した原料液11は、吐出口15から収集電極24に向けて静電気力により吸引される。この間に、原料液11の液滴に含まれる溶媒が揮発するとともに延伸される。これにより、極細成分が微細化されて、極細繊維状となって紡糸される。こうして紡糸された極細状の繊維がシート状基材21の下面に集積されることで不織布が形成される。
【0034】
タンク13に貯留されている原料液11は、毛細管現象によって、細管孔23の内面を上昇し、吐出口15まで到達する。細管孔23内において原料液11を上昇させる力は、タンク13内の原料液11に対して外圧を付与することによって得られるのではなく、各ノズル20において他のノズル20からの影響を受けることなく個別に生じる毛細管現象によるものである。全てのノズル20は同一の部品であるから、原料液11を上昇させる力は、全てのノズル20において同一である。このように、各ノズル20からの吐出量が一定となるので、不織布の厚みを一定とすることができる。また、図2に示すように本開示の電界紡糸装置10は、複数のノズル20の吐出口15を千鳥配置しているため、隣り合うノズル20間における電場の干渉を回避、抑制できる。
【0035】
<実施形態2>
本開示を具体化した実施形態2の電界紡糸装置40を、図3を参照して説明する。本実施形態2の電界紡糸装置40は、原料液41の液面Aの高さを一定の範囲内に保つための昇降装置51を設けたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、説明を省略し、実施形態1と同じ作用効果についても説明は省略する。
【0036】
実施形態2の電界紡糸装置40は、タンク42内における原料液41の液面Aの高さに応じて、タンク42を昇降させる昇降装置51を備えている。実施形態2における、原料液41と、タンク42と、ノズル44と、保持板55と、シート状基材(図示省略)と、収集電極(図示省略)と、電極荷電部(図示省略)は、実施形態1と同様である。昇降装置51は、液面レベルセンサー43、昇降制御装置49、モーター46、ねじ軸47、ナット48、昇降部材45、昇降枠体59を備えている。タンク42に貯留されている原料液41は、毛細管現象によってノズル44内を上昇して全ての吐出口57から均一に吐出される。
【0037】
[液面レベルセンサー43]
液面レベルセンサー43は、タンク42に貯留されている原料液41の液面Aの位置を検知するものであり、例えば、電極式レベルセンサーである。
【0038】
[昇降制御装置49]
昇降制御装置49は、原料液41の吐出量に応じて変化する原料液41の液面Aの位置に応じ、昇降部材45を昇降させる装置である。液面レベルセンサー43と、昇降制御装置49は、有線で電気的に接続されている。液面レベルセンサー43からの液面Aの高さの情報は、電気信号でコードを介して、昇降制御装置49に伝わるようになっている。
【0039】
[モーター46]
モーター46は、昇降装置51の駆動源となる部品である。モーター46は、昇降制御装置49と電気的に接続している。モーター46は、昇降制御装置49からの指示により、作動、又は停止する。
【0040】
[ねじ軸47、ナット48]
ねじ軸47は、モーター46と連動して回転し、昇降部材45を昇降させる部品である。ねじ軸47は円柱棒状で外周部に雄ネジ52が形成されている。ナット48は、内側に雌ネジ(図示省略)が形成されたものであり、ねじ軸47に取り付けられる。
【0041】
[昇降枠体59]
昇降枠体59は、床面に設置する略長方形板状の基礎台56と、基礎台56の後縁部から上方へ延びる支柱54と、支柱54の前面に配置された上下一対のブラケット53a、53bとによって構成される。ブラケット53a、54b間に、ナット48を取り付けたねじ軸47が配置される。
【0042】
[昇降部材45]
昇降部材45は、略四角板状で、タンク42を載置する部材である。昇降部材45は、ナット48と連結している。モーター46の回転に伴い、ナット48を支持する昇降部材45が上昇し、タンク42を所定高さ位置まで引き上げる。ナット48は、ねじ軸47の回転に伴って、ブラケット53aの下端と、ブラケット53bの上端の間を上下動する。
【0043】
[昇降装置51の動作フロー]
図4は、本開示の昇降装置51の動作フローを表す図である。まず、液面レベルセンサー43が、タンク42内の原料液41の液面レベルを検知する(ステップS301)。続いて、昇降制御装置49は、検知した液面レベルが所定レベル以下であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0044】
昇降制御装置49が、検知した液面レベルが所定レベル以下でないと判定した場合(ステップS302,No)、再び液面レベルセンサー43が液面レベルを検知する(ステップS301)。一方で、検知した液面レベルが所定レベル以下まで下がったと判定した場合には(ステップS302,Yes)、昇降制御装置49は、モーター46に作動するよう指示をする。(ステップS303)。モーター46の作動によって、タンク42が上昇する(ステップS304)。
【0045】
モーター46作動中において、液面レベルセンサー43が、液面レベルを所定値以下と判定した場合(ステップS305,Yes)、昇降制御装置49は、モーター46に作動を継続するよう指示する(S303)。一方で、検知した液面レベルが所定レベルまで上がったと判定した場合に(ステップS305,No)、昇降制御装置49は、モーター46停止の指示をして、タンク42の上昇を止める(ステップS306)。これらの原料液41の液面Aの高さの調整は、常時行われる。原料液41の液面Aの高さに応じてタンク42を昇降させることによって、タンク42内の原料液41の液面Aを一定の高さに保ち、ノズル44の吐出口57の高さを一定高さに保つことができる。これにより、実施形態2の電界紡糸装置40は、シート状基材における極細繊維の厚さ(目付)を安定させることができる。
【0046】
<実施形態3>
本開示を具体化した実施形態3の電界紡糸装置60を、図4を参照して説明する。本実施形態3の電界紡糸装置60は、原料液63の液面Aの高さを一定の範囲内に保つための補給装置75を設けたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、説明を省略し、実施形態1と同じ作用効果についても説明は省略する。
【0047】
図5に示すように、実施形態3の電界紡糸装置60は、吐出口61からの原料液63の吐出量に応じて、タンク64に原料液63を補給する補給装置75を備えている。実施形態3における原料液63と、タンク64と、ノズル70と、保持板66と、シート状基材(図示省略)と、収集電極(図示省略)と、電極荷電部(図示省略)は、実施形態1と同様である。補給装置75は、液面レベルセンサー67、流入制御装置68、ポンプ69、貯留容器73、パイプ71を備えている。実施形態3の液面レベルセンサー67は実施形態2と同様である。タンク64に貯留されている原料液63は、毛細管現象によってノズル70内を上昇して全ての吐出口61から均一に吐出される。
【0048】
[流入制御装置68]
流入制御装置68は、原料液63の吐出量に応じて変化する原料液63の液面Aの位置に応じ、貯留容器73から原料液63を流入させる装置である。液面レベルセンサー67と、流入制御装置68は、有線で電気的に接続されている。液面レベルセンサー67からの液面Aの高さの情報は、電気信号でコードを介して、流入制御装置68に伝わるようになっている。
【0049】
[ポンプ69]
ポンプ69は、流入制御装置68からの指示により、貯留容器73から、原料液63を吸上げてタンク64に流入させる。ポンプ69は、流入制御装置68と電気的に接続している。ポンプ69、貯留容器73、及びタンク64は、パイプ71を介して接続している。
【0050】
[パイプ71]
パイプ71は、原料液63をタンク64に流入させるための流路である。パイプ71は、貯留容器73から、ポンプ69を経由し、タンク64に連結している。パイプ71のタンク側端部72は、開口している。
【0051】
[補給装置75の動作フロー]
図6は、本開示の補給装置75の動作フローを表す図である。まず、液面レベルセンサー67が、タンク64内の原料液63の液面レベルを検知する(ステップS401)。続いて、流入制御装置68は、検知した液面レベルが所定レベル以下であるか否かを判定する(ステップS402)。
【0052】
流入制御装置68が、検知した液面レベルが所定レベル以下でないと判定した場合(ステップS402,No)、再び液面レベルセンサー67が液面レベルを検知する(ステップS401)。一方で、検知した液面レベルが所定レベル以下まで下がったと判定した場合には(ステップS402,Yes)、流入制御装置68は、ポンプ69に作動するよう指示をする(ステップS403)。ポンプ69の作動によって、貯留容器73から原料液63が、タンク64へと流入する(ステップS404)。
【0053】
ポンプ69作動中において、液面レベルセンサー67が、液面レベルを所定値以下と判定した場合(ステップS405,Yes)昇降制御装置49は、ポンプ69に作動を継続するよう指示する(S403)。一方で、検知した液面レベルが所定レベルまで上がったと判定した場合に、(ステップS405,No)、流入制御装置68は、ポンプ69停止の指示をして、原料液63の流入を止める(ステップS406)。これらの原料の液面Aの高さの調整は、常時行われる。原料液63の吐出量に応じて原料液63を補給することによって、タンク64内の原料液63の液面Aを一定の高さに保ち、吐出口61の高さを一定高さに保つことができる。ノズル70やタンク64を昇降させなくても、吐出口61とシート状基材との間隔を一定に保つことができるため、昇降装置を設けることなく、シート状基材における極細繊維の厚さ(目付)を安定させることができる。
【0054】
<実施形態4>
本開示を具体化した実施形態4の電界紡糸装置80を、図7を参照して説明する。本実施形態4の電界紡糸装置80は、実施形態1のノズル20と保持板30に替えて、ノズルブロック90を設けたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、説明を省略し、実施形態1と同じ作用効果についても説明は省略する。
【0055】
図7に示すように、実施形態4の電界紡糸装置80は、原料液81に接するように設けたノズルブロック90を有する。ノズルブロック90には、ノズルブロック90を上下方向に貫通した形態の複数のノズル孔82が一体形成されている。ノズル孔82は、原料液81を吐出させるためのノズル91として機能する。ノズル孔82の下端の吸込口92は、ノズルブロック90の下面に開口し、原料液81に接している。原料液81と、タンク83と、シート状基材84と、収集電極85、送り出しローラ86、巻き取りローラ87は実施形態1と同様である。タンク83に貯留されている原料液81は、毛細管現象によってノズル孔82内を上昇して全ての吐出口89から均一に吐出される。
【0056】
[ノズルブロック90]
ノズルブロック90は、導電性材料からなり、タンク83の上面の開口を覆う部材である。ノズルブロック90は、厚みのある略直方体の板状をなす。ノズルブロック90の外周の一辺は、タンク83の内周面を形成する各辺より、例えば0.1mm程度小さい。ノズルブロック90は、複数のノズル孔82を有している。ノズル孔82の断面形状は円形であり、直径は例えば約0.1mmである。ノズル孔82は、ノズルブロック90の上下両面に開口している。ノズルブロック90のうちノズル孔82以外の部位を、ブロック基材88と定義する。ノズル孔82の吐出口89は、ノズルブロック90の上面に開口し、平面視において千鳥状に配置されている。ノズルブロック90が、タンク83に固定された状態において、ノズルブロック90の外周とタンク83内面との間に、わずかな隙間を有している。ノズルブロック90は、導電性樹脂等のように原料液81よりも比重の小さい材料からなる。ノズルブロック90がタンク83に収容された状態において、ノズルブロック90は、原料液81の浮力のみによって、原料液81に沈むことなく、原料液81の液面Aに接した状態に保持される。ノズル91のタンク83底面側の端部(基端)が、原料液83に接している。ノズルブロック90を浮力によって浮かせて保つことができるため、ノズルブロック90を保持する装置が不要となる。ノズルブロック90の下面は、原料液81に対して面接触し、吸込口92は原料液81に接触した状態に保たれる。ノズルブロック90は、原料液81上面の例えば90%以上を覆っている。
【0057】
[電極荷電部95]
電極荷電部95は、導電性のノズルブロック90、及び収集電極85にそれぞれ電気的に接続し、電圧を印加するための電源である。導電性のノズルブロック90は、電極荷電部95のプラス電極と接続している。収集電極85は、電極荷電部95のマイナス電極に接続している。
【0058】
[実施形態4の電界紡糸装置80の作用効果]
本実施形態4の電界紡糸装置80の作用効果について説明する。原料液81は、ノズルブロック90のノズル孔82の下端から、毛細管現象によって、上端の吐出口89まで移動する。原料液81がノズル孔82の上端まで移動した状態で、電極荷電部95により、ノズルブロック90と収集電極85に電圧を印加すると、原料液81は、ノズル孔82内でプラスに帯電する。プラスに帯電した原料液81は、収集電極85に向けて静電気力により吸引される。このとき、液滴に含まれる溶媒が揮発するとともに延伸される。これにより、繊維成分が微細化されて、極細繊維状となって紡糸される。こうして紡糸された極細状の繊維がシート状基材84の下面に集積されることで不織布が形成される。ノズル孔82が形成されているブロック基材88は、厚さ寸法の大きい金属製の塊なので、ノズル孔82の内壁面は変形し難い。よって、各ノズル91からの吐出量は一定となり、不織布の厚みを一定とすることができる。
【0059】
<実施形態5>
本開示を具体化した実施形態5の電界紡糸装置100を、図8を参照して説明する。本実施形態5の電界紡糸装置100は、ノズル101を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、説明を省略し、実施形態1と同じ作用効果についても説明は省略する。
【0060】
図8に示すように、実施形態5の、電界紡糸装置100は、ノズル101の基端の吸込口102が、タンク105内側の底面部103において開口している。原料液104と、タンク105と、保持板106と、シート状基材107と、収集電極108と、電極荷電部109、送り出しローラ111、巻き取りローラは112、実施形態1と同様である。保持板106は、タンク105内に収容され、タンク105の内壁面114に固定されている。
【0061】
[ノズル101]
図8で示すように、複数のノズル101は、保持板106に対して保持板106を上下に貫通した形態で固定されている。ノズル101は、タンク105に貯留された原料液104を毛細管現象により、吸込口102から吸上げ、吐出口110へ移動させる。ノズル101は、円形断面の細管形状である。ノズル101の内部には、原料液104を吐出させるための細管孔113が設けられている。細管孔113は、ノズル101の上端から下端まで貫通している。ノズル101(細管孔113)における収集電極108側の端部(上端)の開口が吐出口110として機能する。ノズル101(細管孔113)の基端(下端)は、吸込口102として機能する。吸込口102は、タンク105内の水平な底面部103に対して近接して上下方向に対向する位置関係となるように配置されている。ノズル101の吸込口102と、底面部103との間隔は、例えば約1.0cmである。
【0062】
ノズル101の直径寸法は例えば0.2mmである。直径寸法を小さくすれば、ノズル101の吐出口110の近傍において電界集中が生じ易くなる。ノズル101の吐出口110の近傍において電界集中が生じれば、ノズル101とシート状基材107の間に形成される電界の強度を高めることができる。そのため、電極荷電部109により印加される電圧を低くすることができる。すなわち、駆動電圧を低減することができる。
【0063】
吐出口110の内径寸法は、例えば0.1mmである。吐出口110の内径寸法は、形成したい極細繊維の断面寸法に応じて適宜変更することができる。ノズル101の吸込口102の内径寸法は例えば0.1mmである。細管孔113は、吸込口102から吐出口110にかけて一直線状に形成されている。ノズル101の吸込口102は、タンク105に貯留された原料液104と接触している。原料液104は、ノズル101の吸込口102から毛細管現象によって、細管孔113を経由して、吐出口110まで移動する。詳細には、円柱細管形状をなすノズル101の吸込口102を原料液104に接触させると、毛細管現象により、原料液104は、細管孔113内面を上昇し、吐出口110まで到達する。
【0064】
[実施形態5の電界紡糸装置100の作用効果]
本実施形態5の電界紡糸装置100の作用効果について説明する。原料液104は、電界紡糸装置100のタンク105内側の底面部103に配置された吸込口102の開口部から、毛細管現象によって、ノズル101の上端まで移動する。原料液104が細管孔113の上端まで移動した状態で、電極荷電部109により、保持板106と収集電極108に電圧を印加すると、原料液104は、細管孔113内でプラスに帯電する。プラスの帯電した原料液104は、収集電極108に向けて静電気力により吸引される。このとき、原料液104の液滴に含まれる溶媒が揮発するとともに延伸される。これにより、繊維成分が微細化されて、極細繊維状となって紡糸される。こうして紡糸された極細状の繊維がシート状基材107の下面に集積されることで不織布が形成される。実施形態5の電界紡糸装置100は、原料液104の液面Aの下降に伴って、ノズル101やタンク105を昇降させる必要がないため、昇降装置がなくても、シート状基材107における極細繊維の厚さ(目付)が安定する。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1の電界紡糸装置10は、複数のノズル20を保持する保持板30を備え、保持板30は、原料液11に対して面接触し、且つ吸込口17を原料液11に接触させた状態に保たれる。電界紡糸装置は保持板を有さずに、ノズルの吸込口を原料液に接触させてもよい。
(2)実施形態1の保持板30は、原料液11の浮力のみによって、原料液11の液面Aに接した状態に保持される。電界紡糸装置は、固定治具を用いて、保持板30をタンク13に固定し、原料液11の浮力のみによって保持されない構成としてもよい。
(3)実施形態1の保持板30は、導電材料で、電極荷電部25のプラス電極と接続している。紡糸電界装置は、タンクを導電部材とし、タンクを電極荷電部のプラス電極に接続してもよい。
(4)実施形態1の電界紡糸装置10は、複数の前記吐出口15が二次元方向に並ぶように配置されている。複数の吐出口は、二次元方向に並ぶように配置されていなくても良い。二次元方向に並ぶように配列されるとは、例えば、吐出口が並行する列を複数設け、全ての列における吐出口のピッチが互いに略一致している配列である。
(5)本実施形態1のノズル20の吐出口15は千鳥配列されている。吐出口は、千鳥配列されていなくてもよい。
(6)実施形態1のノズル20は、内径約0.1mmの円柱細管形状である。ノズルの内径は、0.01mm以上1.0mm以下でもよい。
(7)本実施形態1の細管孔23は、吸込口17から吐出口15にかけて内径を一定になるよう形成されている。細管孔は、基端から吐出口にかけて、内径を小さくするようにしてもよい。
(8)実施形態1の保持板30は、原料液11上面の90%以上を覆っている。保持板は、原料液上面の70%以上を覆っていればよい。
(9)実施形態1のノズル20は、毛細管現象により、原料液11を下側から上側へ移動させている。毛細管現象により移動させるのであれば、ノズルは、原料液を上側から下側へ移動させる形態でもよい。
(10)実施形態2の補給装置75は、液面レベルセンサー43を用いている。補給装置は、原料液がタンクから流出した重量に応じて、別の貯留容器から、タンクに補給されるものでよい。
(11)実施形態2の補給装置75は、液面レベルセンサー43として電極式センサーを用いている。液面レベルセンサーは、静電容量式レベルセンサー、マイクロ波式レベルセンサーを用いたものでもよい。
(12)実施形態3の昇降装置51は、液面レベルセンサー67と、昇降制御装置49を備えている。昇降装置は、モーターを手動で作動させることによって、タンクを上昇させてもよい。
(13)実施形態5のノズル101は、ノズル101の基端が、タンク105内側の底面部103において開口している。ノズルの基端は、底面部から大きく離間していてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,40,60,80,100…電界紡糸装置
11,41,63,81,104…原料液
13,42,64,83,105…タンク
15,57,61,110…吐出口
17,92,102…吸込口
20,44,70,91、101…ノズル
21,84,107…シート状基材
30,55,66,106…保持板
75…補給装置
90…ノズルブロック
31,103…底面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8