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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074496
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20240524BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F04D29/28 P
B60H1/00 102F
B60H1/00 102P
F04D29/44 X
F04D29/44 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185682
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹信 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
(72)【発明者】
【氏名】末廣 栄二
(72)【発明者】
【氏名】木下 由架
【テーマコード(参考)】
3H130
3L211
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC11
3H130AC13
3H130BA14A
3H130BA14D
3H130DA02X
3H130EA01A
3H130EA02A
3H130EA06A
3H130EA07A
3H130EA07D
3H130EB01A
3H130EC17A
3L211BA14
3L211CA01
3L211DA22
3L211DA42
(57)【要約】
【課題】ファンに吸い込まれる空気の流れと、スクロールケーシング内からの逆流との干渉を抑制し、騒音を低減する。
【解決手段】送風ケーシング20におけるファン21の回転軸方向一端側に位置する端壁部には、空調用空気を吸い込む円形の吸込口20aが形成されている。ファン21の回転軸300に沿って見たとき、吸込口20aの中心は、ファン21の回転軸300に対してノーズ部24から離れる方向に偏心している。送風ケーシング20の端壁部の内面には、ファン21に接近する方向に突出して円環状に延びる円環部27が形成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、
前記送風機から送風された空調用空気が導入され、導入された空調用空気を冷却する冷却用熱交換器と、該冷却用熱交換器によって冷却された空調用空気を加熱する加熱用熱交換器とが収容された空調ケーシングとを備え、
前記空調ケーシング内で生成された調和空気を車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置において、
前記送風機は、遠心式ファンと、該遠心式ファンを収容するとともに、ノーズ部及び吐出口が形成されたスクロールケーシングとを有し、
前記スクロールケーシングにおける前記遠心式ファンの回転軸方向一端側に位置する端壁部には、空調用空気を吸い込む円形の吸込口が形成され、
前記遠心式ファンの回転軸に沿って見たとき、前記吸込口の中心は、前記遠心式ファンの回転軸に対して前記ノーズ部から離れる方向に偏心しており、
前記スクロールケーシングの前記端壁部の内面には、前記遠心式ファンに接近する方向に突出して円環状に延びる円環部が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記遠心式ファンの回転軸に沿って見たとき、前記円環部は、前記遠心式ファンの回転軸と同心上に位置付けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記円環部は、前記吸込口よりも大径とされ、
前記スクロールケーシングの前記端壁部は、前記円環部の基部から該円環部の径方向内方へ向けて延出する延出板部を有し、
前記延出板部の周縁部によって前記吸込口が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記延出板部に沿った仮想面と、前記遠心式ファンの回転軸の延長線とは直交していることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記吸込口の直径は、前記遠心式ファンの直径よりも小径とされていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記円環部の直径は、前記遠心式ファンの直径よりも小径とされていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記円環部の先端部は、前記遠心式ファンの前記回転軸方向一端面よりも他端側に位置付けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記スクロールケーシングは樹脂材で構成されており、
前記円環部は、前記スクロールケーシングの前記端壁部に一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、例えば、エバポレータ及びヒータコアと、これらを収容する空調ケーシングと、空調用空気を送風する送風用ファンとを備えたものが知られている。送風用ファンから送風された空調用空気はエバポレータによって冷却され、その後、エアミックスダンパの作用により、ヒータコアで加熱またはヒータコアをバイパスして流れ、空調用ケーシング内で所望温度の調和空気となった後、車室の各部に供給される。
【0003】
一方、送風用ファンとしては、例えば特許文献1~3に開示されているような遠心式ファンが知られている。特許文献1の遠心式ファンでは、ファンケースの蓋板に空気の吸込口となる開口部が形成されており、この開口部がファンの回転中心に対して舌部(ノーズ部)に接近する方向にオフセットしている。
【0004】
また、特許文献2の遠心式ファンでは、吸込口がファンの回転中心に対して排気口から離れる方向にオフセットしている。
【0005】
また、特許文献3の遠心式ファンでは、ファンの回転軸を吸込口の中心軸に対して傾斜させることで、吸込口とファンとの隙間を吹出口近傍に向かうに連れて拡大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-96716号公報
【特許文献2】特開2009-36049号公報
【特許文献3】国際公開第2010/137140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両用空調装置の冷房時には空調用空気がエバポレータを通過してから車室に供給されるが、暖房時には、空調用空気がエバポレータを通過した後、更にヒータコアも通過して車室に供給されることになるので、空調ケーシング内における通気抵抗は冷房時に比べて暖房時の方が高くなる傾向にある。さらに、暖房時には、乗員の足下近傍へ向けて延びるダクト等を介して温風を供給する必要があることから、このことによっても空調ケーシング内の通気抵抗が高くなることがある。つまり、車両用空調装置の場合、暖房時には冷房時に比べて空調ケーシング内の通気抵抗が高まり易い状況にある。
【0008】
一方、車両用空調装置の送風機は、遠心式ファンを有しており、遠心式ファンの回転軸方向の一方に位置する吸込口から吸い込まれた空調用空気は遠心式ファンの径方向に流出してスクロールケーシング内を流れた後、吹出口から空調ケーシング内に流入する。このとき、上述した暖房時のように空調ケーシング内の通気抵抗が高い状態にあると、スクロールケーシング内を流れている空気が吸込口側へ逆流し、ファンに吸い込まれる空気の流れと、スクロールケーシング内からの逆流とが干渉し、その結果、騒音が増加するという問題が発生する。空調装置は車室内に搭載されているので、騒音が大きいと乗員が不快に感じやすいという問題がある。
【0009】
そこで、特許文献1のように吸込口をファンの回転中心に対して舌部に接近する方向にオフセットさせる構造や、特許文献2のように吸込口をファンの回転中心に対して排気口から離れる方向にオフセットさせる構造があるが、本願発明者が検討した結果、車両用空調装置の場合、特許文献1、2の構造では、上述した逆流の抑制が十分ではなかった。
【0010】
また、特許文献3のようにファンの回転軸を吸込口の中心軸に対して傾斜させる構造があるが、スクロールケーシングと吸込口との位置関係の設定が難しく、周方向の一部では吸込口とファンとの間隔が拡大して逆流の抑制が十分ではないと考えられる。さらに車室内のスペースは限られており、ファンの回転軸を吸込口の中心軸に対して傾斜させるようなレイアウトが成立しない場合もある。
【0011】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、ファンに吸い込まれる空気の流れと、スクロールケーシング内からの逆流との干渉を抑制し、騒音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係る一態様では、送風機と、前記送風機から送風された空調用空気が導入され、導入された空調用空気を冷却する冷却用熱交換器と、該冷却用熱交換器によって冷却された空調用空気を加熱する加熱用熱交換器とが収容された空調ケーシングとを備え、前記空調ケーシング内で生成された調和空気を車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置を前提とすることができる。前記送風機は、遠心式ファンと、該遠心式ファンを収容するとともに、ノーズ部及び吐出口が形成されたスクロールケーシングとを有している。また、前記スクロールケーシングにおける前記遠心式ファンの回転軸方向一端側に位置する端壁部には、空調用空気を吸い込む円形の吸込口が形成されており、前記遠心式ファンの回転軸に沿って見たとき、前記吸込口の中心は、前記遠心式ファンの回転軸に対して前記ノーズ部から離れる方向に偏心している。さらに、前記スクロールケーシングの前記端壁部の内面には、前記遠心式ファンに接近する方向に突出して円環状に延びる円環部が形成されている。
【0013】
この構成によれば、遠心式ファンが回転すると、空調用空気が吸込口から吸い込まれた後、スクロールケーシング内に流入し、吐出口から空調ケーシングに導入されて冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって温度調整されてから車室の各部に供給される。このとき、スクロールケーシングの吸込口が遠心式ファンの回転軸に対してノーズ部から離れる方向に偏心しており、しかも、スクロールケーシングの端壁部の内面には、円環部が遠心式ファンに接近する方向に突出しているので、例えば、暖房時のように空調ケーシング内の通気抵抗が高い状態であっても、スクロールケーシング内を流れている空気が吸込口側へ逆流し難くなる。つまり、スクロールケーシング内を流れている空気の逆流が抑制されるので、ファンに吸い込まれる空気の流れとの干渉が起こりにくくなり、騒音が低減する。
【0014】
また、前記遠心式ファンの回転軸に沿って見たとき、前記円環部は、前記遠心式ファンの回転軸と同心上に位置付けられていてもよい。この構成によれば、円環部の先端と遠心式ファンとの隙間を全周に亘って小さくすることができるので、スクロールケーシング内を流れている空気が吸込口側へ逆流するのをより一層低減できる。
【0015】
また、前記円環部は、前記吸込口よりも大径とされていてもよい。この場合、前記スクロールケーシングの前記端壁部は、前記円環部の基部から該円環部の径方向内方へ向けて延出する延出板部を有し、前記延出板部の周縁部によって前記吸込口を形成することができる。この構成によれば、吸込口側への逆流がさらに抑制される。
【0016】
また、前記吸込口の直径は、前記遠心式ファンの直径よりも小径であってよく、また、前記円環部の直径は、前記遠心式ファンの直径よりも小径であってもよい。
【0017】
また、前記円環部の先端部は、前記遠心式ファンの前記回転軸方向一端面よりも他端側に位置付けられていてもよい。これにより、円環部の先端部が遠心式ファンの内方に配置されることになるので、スクロールケーシング内を流れている空気が円環部を超えて吹出口側へ流れ難くなる。
【0018】
また、前記スクロールケーシングを樹脂材で構成することができ、この場合、前記円環部は、前記スクロールケーシングの前記端壁部に一体成形することができる。これにより、部品点数を少なくすることができるだけでなく、円環部と吸込口とが同一の部材に形成されることになるので、両者の位置関係を適正に維持できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、吸込口の中心を遠心式ファンの回転軸に対してノーズ部から離れる方向に偏心させ、スクロールケーシングの内面に、遠心式ファンに接近する方向に突出する円環部を形成したので、ファンに吸い込まれる空気の流れと、スクロールケーシング内からの逆流との干渉を抑制することができ、騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の斜視図である。
図2】車両用空調装置が搭載された自動車の内部を示す図である。
図3】車両用空調装置の左側面図である。
図4】車両用空調装置の車両前後方向に沿った縦断面図である。
図5】送風機の斜視図である。
図6】送風機の背面図である。
図7】送風機の左側面図である。
図8図7のA-A線断面図である。
図9】送風機の正面図である。
図10】本発明と比較例の騒音測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を示すものである。この車両用空調装置1は、図2に一部を示す自動車100の車室R内に配設され、車室R内を空調する装置である。この実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後といい、車両左側を単に左といい、車両右側を単に右というものとするが、これは説明に便宜を図るための定義であり、本発明を限定するものではない。また、車両用空調装置1の左右方向は幅方向に相当する。
【0023】
図2に示すように、自動車100の車室R内の車両前部には、車幅方向(左右方向)に離間した運転席及び助手席からなる前席シート101が配設されている。自動車100の車室R内における前席シート(1列目シート)101の後方には、2列目シート102が配設され、さらに2列目シート102の後方には3列目シート103が配設されている。つまり、この自動車100は、前席シート101、2列目シート102及び3列目シート103を備えた車両である。車室Rには、荷室の一部または全部が含まれていてもよい。
【0024】
自動車100の車室R内には、前席シート101の前方にインストルメントパネルPが配設されている。このインストルメントパネルPの内部には、上記車両用空調装置1とは別の前席用空調装置200が配設されている。前席用空調装置200は、主に前席シート101の乗員へ供給する空調風及びフロントウインドガラスGの内面に供給する空調風を生成する。図示しないが、前席用空調装置200は、冷却器や加熱器、エアミックスダンパ、吹出方向切替ダンパ等を有している。尚、図2ではダクト類を省略している。
【0025】
車両用空調装置1は、2列目及び3列目シート102、103の乗員へ空調風を供給する後席用空調装置であり、前席用空調装置200から後方に離れた場所に配設される。車両用空調装置1を配設する場所の一例としては、例えば運転席と助手席との間を挙げることができる。運転席と助手席との間には、図示しないが、前後方向に長いセンターコンソールが配設されており、このセンターコンソールの内部に車両用空調装置1を収容することが可能になっている。また、車両用空調装置1を覆うカバー(図示せず)等が車室Rに設けられている。車両用空調装置1は、送風ユニット2と空調ユニット3とを備えている。送風ユニット(送風機)2と空調ユニット3とは、別体であってもよいし、一体であってもよい。また、送風ユニット2と空調ユニット3とは、前後方向に並ぶように配置されていてもよいし、上下方向に並ぶように配置されていてもよい。
【0026】
(空調ユニットの構成)
図3及び図4にも示すように、空調ユニット3は送風ユニット2の後方に配置されておち、送風ユニット2から送風された空調用空気が導入される空調ケーシング30を備えている。空調ケーシング30は、後述するエバポレータ(冷却用熱交換器)40及びヒータコア(加熱用熱交換器)41を収容する部材である。空調ケーシング30と、送風ケーシング20とは別部材で構成されていてもよいし、空調ケーシング30に送風ケーシング20が一体成形されていてもよい。
【0027】
図1図3図4等に示すように、空調ケーシング30は、複数の空調ケーシング構成部材31~33を組み合わせて構成されている。空調ケーシング30の前部に送風ケーシング20の後部が接続されて一体化されている。本実施形態の空調ケーシング30は、空調ケーシング30の左側部分を構成する左側空調空調ケーシング構成部材31と、空調ケーシング30の右側部分を構成する右側空調ケーシング構成部材32と、空調ケーシング30の底壁を構成する底部空調ケーシング構成部材33とで構成されている。左側空調ケーシング構成部材31、右側空調ケーシング構成部材32及び底部空調ケーシング構成部材33は、例えば樹脂材を射出成形してなるものである。空調ケーシング30を構成する空調ケーシング構成部材の数は、3つに限られるものではなく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0028】
空調ケーシング30は前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも長く設定されており、全体として送風ケーシング20よりも前後方向に長い形状を有している。これにより、空調ケーシング30を運転席及び助手席の間に配設することが可能になっている。
【0029】
図4に示すように、空調ケーシング30の前壁部の上下方向中間部には、空調用空気を当該空調ケーシング30の内部に導入するための空気導入口30cが形成されている。空気導入口30cには、送風ケーシング20の空気吐出部20b(後述する)が接続されており、送風ユニット2から送風された空調用空気は、空調ケーシング30の前側から導入されて後側へ向かう流れを形成する。したがって、空調ケーシング30内を流れる空調用空気の主流は、前側から後側へ流れることになる。尚、空調ケーシング30の内部は複雑な形状であることから、部位によっては空気が上方や下方に流れることもある。
【0030】
空調ユニット3は、送風ユニット2により導入された空調用空気を冷却して冷風を生成するエバポレータ40と、エバポレータ40によって冷却された空調用空気を加熱して温風を生成するヒータコア41とを備えている。エバポレータ40及びヒータコア41は、空調ケーシング30に収容されており、ヒータコア41はエバポレータ40の空気流れ方向下流側に配置されている。エバポレータ40は、当該エバポレータ40の上側部分が下側部分よりも空気流れ方向上流側に位置するように傾斜配置されている。また、ヒータコア41も、当該ヒータコア41の上側部分が下側部分よりも空気流れ方向上流側に位置するように傾斜配置されている。
【0031】
エバポレータ40は、上側ヘッダタンク40a及び下側ヘッダタンク40bと、コア40cとを有している。上側ヘッダタンク40aは、エバポレータ40の上部を構成する部材であり、空調ケーシング30の左側壁から右側壁に亘って延びていて、左右方向に長い形状を持っている。下側ヘッダタンク40bは、エバポレータ40の下部を構成する部材であり、空調ケーシング30の左側壁から右側壁に亘って延びていて、左右方向に長い形状を持っている。コア40cは、上側ヘッダタンク40aと下側ヘッダタンク40bとの間に設けられており、上下方向に長い複数のチューブとフィン(共に図示せず)を左右方向に交互に積層して一体化したものである。チューブ間を空調用空気が通過するようになっている。チューブの上部は上側ヘッダタンク40aに接続され、チューブの下部は下側ヘッダタンク40bに接続されている。
【0032】
自動車100には、冷媒を圧縮するコンプレッサ(図示せず)、凝縮器(図示せず)、膨張弁42等が搭載されている。これら機器により冷凍サイクルが構成されている。膨張弁42は、底部空調ケーシング構成部材33に固定されている。
【0033】
エバポレータ40には、膨張弁42によって減圧された冷媒が流入するようになっている。冷媒が上側ヘッダタンク40aや下側ヘッダタンク40bに流入した後、コア40cのチューブ内を流通することで空調用空気と熱交換し、これにより空調用空気が冷却される。空調用空気が冷却されると、チューブの表面やフィンの表面には凝縮水が生成される。生成された凝縮水は、重力の作用により、チューブやフィンを伝いながらエバポレータ40の下側部分へ流れて空調ケーシング30の底壁に滴下する。また、凝縮水の生成量が多い場合には、凝縮水がエバポレータ40の上下方向中間部からも空調ケーシング30の底壁に滴下することがある。
【0034】
ヒータコア41は、上側ヘッダタンク41a及び下側ヘッダタンク41bと、コア41cとを有している。上側ヘッダタンク41aは、ヒータコア41の上部を構成する部材であり、空調ケーシング30の左側壁から右側壁に亘って延びていて、左右方向に長い形状を持っている。下側ヘッダタンク41bは、ヒータコア41の下部を構成する部材であり、空調ケーシング30の左側壁から右側壁に亘って延びていて、左右方向に長い形状を持っている。コア41cは、上側ヘッダタンク41aと下側ヘッダタンク41bとの間に設けられており、上下方向に長い複数のチューブとフィン(共に図示せず)を左右方向に交互に積層して一体化したものである。チューブ間を空調用空気が通過するようになっている。チューブの上部は上側ヘッダタンク41aに接続され、チューブの下部は下側ヘッダタンク41bに接続されている。
【0035】
自動車100における発熱源であるエンジンやモータ、インバータ等を冷却するための冷却水がヒータコア41に流入するようになっている。また、ヒータコア41の代わりに、例えば上記凝縮器等が搭載されていてもよいし、通電によって発熱する電気式ヒータ等が搭載されていてもよい。
【0036】
ヒータコア41の上下方向の寸法は、エバポレータ40の上下方向の寸法よりも短く設定されている。また、ヒータコア41の空気通過方向の寸法は、エバポレータ40の空気通過方向の寸法よりも短く設定されている。さらに、ヒータコア41の上部は、エバポレータ40の上部よりも下に位置付けられている。
【0037】
また、例えば左側空調ケーシング構成部材31を右側空調ケーシング構成部材32に対して左側方から組み付けることで、左側空調ケーシング構成部材31と右側空調ケーシング構成部材32とを一体化することができ、また、右側空調ケーシング構成部材32を左側空調ケーシング構成部材31に対して右側方から組み付けることによっても、左側空調ケーシング構成部材31と右側空調ケーシング構成部材32とを一体化することができる。左側空調ケーシング構成部材31と右側空調ケーシング構成部材32の外周部の嵌合部Cは、図1図3等に示すように、空調ケーシング30の周囲に設けられている。
【0038】
エバポレータ40の下部は、支持部43によって支持されている。すなわち、空調ケーシング30の底壁には、当該底壁から上方へ突出し、エバポレータ40の下部を下方から支持する2つの支持部43が空気流れ方向と交差する方向である左右方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0039】
空調ケーシング30の底壁におけるエバポレータ40よりも空気流れ方向下流側には、凝縮水を排水するためのドレン部44が設けられている。ドレン部44は、底部空調ケーシング構成部材33の後部において左右方向中間部に位置している。空調ケーシング30の底壁は、ドレン部44が設けられている部位が最も下に位置するように傾斜している。ドレン部44は、空調ケーシング30の底壁の上面に開口して下方へ延びる筒状部または管状部等で構成されており、車体のフロアパネル(図示せず)に形成された開口部を介して車室外と連通している。従って、ドレン部44に流入した凝縮水は当該ドレン部44によって車室外へ排水される。本実施形態では、ドレン部44がヒータコア41の真下に位置付けられている。
【0040】
空調ユニット3の内部には、冷風生成通路R1と、温風生成通路R2と、バイパス通路R3と、エアミックス空間R4とが形成されている。冷風生成通路R1は、空調ユニット3の内部において前側部分に形成されている。冷風生成通路R1の上流端は、空気導入口30cに接続されている。冷風生成通路R1は、空気導入口30cへの接続部分から後方へ向けて延びている。冷風生成通路R1の上下方向の寸法は、後側へ行くほど長くなっており、冷風生成通路R1の断面積が後側に向かって次第に拡大している。
【0041】
冷風生成通路R1における空気導入口30cへの接続部分から後方に離れた部分には、エバポレータ40が配置されている。エバポレータ40は、空調用空気が通過する空気通過面が上側へ行くほど前側に位置するように傾斜配置されている。冷風生成通路R1を流通する空調用空気は、エバポレータ40の前方から当該エバポレータ40を通過して後方へ流れる。
【0042】
温風生成通路R2は、空調ユニット3の内部において冷風生成通路R1の後方に形成されている。温風生成通路R2の上流端は、冷風生成通路R1の下流端の下側部分に連通している。したがって、温風生成通路R2には、冷風生成通路R1を流通した空調用空気が流入する。温風生成通路R2は後側へ向けて延びており、温風生成通路R2の前後方向の長さは、冷風生成通路R1の前後方向の長さよりも短く設定されている。温風生成通路R2の上下方向の寸法は、冷風生成通路R1の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0043】
温風生成通路R2には、ヒータコア41が配置されている。ヒータコア41は、空気通過面が上側へ行くほど前側に位置するように傾斜配置されている。温風生成通路R2を流通する空調用空気は、ヒータコア41の前方から当該ヒータコア41を通過して後方へ流れ、ヒータコア41を通過する間に冷却水等と熱交換することによって加熱される。
【0044】
ヒータコア41は、後述する2列目シート用ベント吹出口30dよりも後下方、且つ3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fよりも上方を指向する方向に傾斜して設けられる。これにより、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fへの流通抵抗を低減することができるとともに、2列目シート用ベント吹出口30dを前方に配置することによって空調ケーシング30を小型化できる。
【0045】
バイパス通路R3は、空調ユニット3の内部において冷風生成通路R1の後方に形成され、温風生成通路R2の上方に位置している。バイパス通路R3の上流端は、冷風生成通路R1の下流端の上側部分に連通している。したがって、バイパス通路R3には、冷風生成通路R1を流通した空調用空気が流入する。バイパス通路R3はヒータコア41の上方を後側へ向けて延びている。バイパス通路R3の前後方向の長さは、冷風生成通路R1の前後方向の長さよりも短く設定されている。また、バイパス通路R3の上下方向の寸法は、温風生成通路R2の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0046】
エアミックス空間R4は、エバポレータ40によって生成された冷風と、ヒータコア41によって生成された温風とを混合するための空間であり、空調ユニット3の内部において後側かつ上部に形成されている。バイパス通路R3の下流端は、エアミックス空間R4に対して前側から接続されており、バイパス通路R3を流通した空調用空気は温風生成通路R2をバイパスし、エアミックス空間R4の前方から当該エアミックス空間R4に後方へ向けて流入する。したがって、空調ケーシング30の内部には、冷風がヒータコア41の上方を後側へ流れてエアミックス空間R4に流入するようにバイパス通路(空気通路)R3が形成されている。
【0047】
このエアミックス空間R4は、温風生成通路R2の上方に位置しているので、温風生成通路R2の下流端は、エアミックス空間R4に対して下側から接続されている。したがって、温風生成通路R2を流通した空調用空気はエアミックス空間R4の下方から当該エアミックス空間R4に上方へ向けて流入する。
【0048】
エアミックス空間R4に流入した冷風の流れと温風の流れとを衝突させて混合することで所望温度の空調風が生成される。空調風の温度は、エアミックス空間R4における冷風と温風との混合割合によって調整できる。エアミックス空間R4に流入した冷風の割合が増えれば、空調風の温度が低下し、一方、エアミックス空間R4に流入した温風の割合が増えれば、空調風の温度が上昇する。
【0049】
空調ユニット3は、冷風と温風とのエアミックス空間R4における混合割合を変更するためのエアミックスダンパ29を備えている。エアミックスダンパ29は、空調ケーシング30に収容されている。エアミックスダンパ29として使用可能なダンパは、どのような形式であってもよく、例えばバタフライタイプ、ロータリタイプ、ルーバタイプ等を挙げることができるが、本実施形態では、スライドダンパを使用している。
【0050】
すなわち、エアミックスダンパ29は、冷風生成通路R1の下流端の上側部分(バイパス通路R3に連通する部分)と、冷風生成通路R1の下流端の下側部分(温風生成通路R2に連通する部分)との開度を変更可能に構成されている。より具体的には、エアミックスダンパ29は、上下方向にスライド可能に、空調ケーシング30の内面に支持されている。駆動装置34によってエアミックスダンパ29が上下方向に駆動される。
【0051】
エアミックスダンパ29は、例えば板状をなしており、その一部に開口が形成されている。エアミックスダンパ29の動作は特に限定されるものではないが、エアミックスダンパ29を上方へスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分の開口面積が小さくなる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分の開口面積が大きくなるように動作させることができる。反対に、エアミックスダンパ29を下方へスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分の開口面積が大きくなる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分の開口面積が小さくなる。この場合、エアミックスダンパ29を上端位置までスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分が全閉になる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分が全開になり、また、エアミックスダンパ29を下端位置までスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分が全開になる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分が全閉になる。つまり、エアミックスダンパ29の動作により、エアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。
【0052】
図示しないが、エアミックスダンパがバタフライタイプやルーバタイプのものであれば、エアミックスダンパの回動角度によってエアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。エアミックスダンパがロータリタイプのものであれば、エアミックスダンパの回動角度によってエアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。
【0053】
空調ケーシング30の後側の上部には、2列目シート102の乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す2列目シート用ベント吹出口30dが形成されている。2列目シート用ベント吹出口30dは上方に向けて開口している。2列目シート用ベント吹出口30dの形状は、左右方向に長い形状となっている。エアミックス空間R4の上部に2列目シート用ベント吹出口30dが連通しており、エアミックス空間R4の空気が2列目シート用ベント吹出口30dへ向けて流通可能になっている。2列目シート用ベント吹出口30dには、図示しないダクトが接続されており、このダクトにより空調風を所望の方向へ導くようにしている。
【0054】
2列目シート用ベント吹出口30dの下方には、ヒータコア41が位置している。このヒータコア41と2列目シート用ベント吹出口30dとは、上下方向に離れている。
【0055】
空調ケーシング30の後側の下部には、3列目シート103の乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す3列目シート用ベント吹出口30eが形成されている。また、空調ケーシング30の後側の下部には、2列目シート102の乗員及び3列目シート103の乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口30fが形成されている。また、空調ケーシング30の後側には、後方へ向けて膨出する膨出部30Aが形成されている。膨出部30Aの内部における上側には、エアミックス空間R4の下側部分が形成されている。したがって、膨出部30Aの内部における上側において冷風と温風との混合が可能になっている。
【0056】
膨出部30Aの内部における下側には、3列目シート用ベント通路R5と、後席用ヒート通路R6とが形成されるとともに、3列目シート用ベント通路R5及び後席用ヒート通路R6を仕切るための仕切部38が形成されている。3列目シート用ベント通路R5は、膨出部30Aの内部の後側を上下方向に延びており、3列目シート用ベント通路R5の上端部(上流端)は、エアミックス空間R4の下部に連通している。後席用ヒート通路R6は、膨出部30Aの内部の前側を上下方向に延びており、後席用ヒート通路R6の上端部(上流端)は、エアミックス空間R4の下部において3列目シート用ベント通路R5よりも前側部分に連通している。
【0057】
3列目シート用ベント通路R5の下端部(下流端)に3列目シート用ベント吹出口30eが連通している。また、後席用ヒート通路R6の下端部(下流端)にヒート吹出口30fが連通している。ヒート吹出口30fと3列目シート用ベント吹出口30eとは前後方向に並んでおり、具体的には、ヒート吹出口30fが3列目シート用ベント吹出口30eよりも前側に位置している。
【0058】
3列目シート用ベント吹出口30eの位置は、ヒータコア41の下部よりも後方とされている。ヒート吹出口30f及び3列目シート用ベント吹出口30eは下方に向けて開口している。ヒート吹出口30f及び3列目シート用ベント吹出口30eの形状は、左右方向に長い形状となっている。3列目シート用ベント吹出口30eは、ヒート吹出口30fよりも高い位置に開口しており、この3列目シート用ベント吹出口30eには3列目シート103の近傍まで延びるダクト(図示せず)が接続されている。また、ヒート吹出口30fには、2列目シート102の乗員の足下近傍及び3列目シート103の乗員の足下近傍まで延びる足下ダクト(図示せず)が接続されている。
【0059】
空調ケーシング30の内部には、ヒータコア41から後方に離れた箇所に縦板部35が設けられている。縦板部35は、空調ケーシング30の底壁から上方へ延びており、ヒータコア41の後側の面と対向するように配置される。ヒータコア41を通過した空調用空気は、縦板部35によって上方、即ちエアミックス空間R4へ向けて案内される。
【0060】
縦板部35がヒータコア41の後側の面と対向するように配置されているので、ベントモード時に冷風を縦板部35によって上方へ案内してヒータコア41からの受熱を極力避けることができる。これにより、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度上昇を抑制できる。ベントモードでは、空調風が2列目シート用ベント吹出口30d及び3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す。
【0061】
空調ユニット3は、上側ダンパ36と下側ダンパ37とを備えている。上側ダンパ36と下側ダンパ37とは、空調風の吹出方向を切り替えるための吹出方向切替用ダンパである。上側ダンパ36は、空調ケーシング30の内部において後側かつ上部に収容され、また、下側ダンパ37は、空調ケーシング30の内部において後側かつ下部に収容されている。上側ダンパ36及び下側ダンパ37は、図示しない駆動機構によって駆動される。上側ダンパ36と下側ダンパ37を連動させてもよいし、別々に駆動してもよい。上側ダンパ36及び下側ダンパ37の駆動制御は、従来から周知の手法を用いることができ、乗員の操作によって乗員が所望する吹出モードとなるように上側ダンパ36及び下側ダンパ37を駆動してもよいし、オートエアコン制御のロジックに従って上側ダンパ36及び下側ダンパ37を駆動してもよい。
【0062】
上側ダンパ36は、2列目シート用ベント吹出口30dを開閉するためのダンパであり、2列目シート用ベントダンパである。すなわち、上側ダンパ36は、左右方向に延びる回動軸36aと、当該回動軸36aから径方向へ延びる2枚の閉塞板部36bとを備えたバタフライタイプのダンパである。回動軸36aは空調ケーシング30の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。図4に示す状態では、上側ダンパ36が2列目シート用ベント吹出口30dを開放している。バイレベルモードでは、ベントモードに比べて上側ダンパ36による2列目シート用ベント吹出口30dの開度が小さくなる。図示しないが、上側ダンパ36後へ向けて回動させることで、2列目シート用ベント吹出口30dを全閉状態にすることもできる。バイレベルモードでは、空調風が2列目シート用ベント吹出口30d、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fから吹き出す。
【0063】
下側ダンパ37は、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fを開閉するためのダンパであり、3列目シート用ダンパである。下側ダンパ37の配設位置は、膨出部30Aの内部であり、3列目シート用ベント通路R5の上流端を開閉することにより、間接的に、3列目シート用ベント吹出口30eを開閉することができ、また、後席用ヒート通路R6の上流端を開閉することにより、間接的に、ヒート吹出口30fを開閉することができる。
【0064】
バイレベルモードでは、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fの両方を開く回動位置となるまで、下側ダンパ37が回動する。一方、ベントモードでは、ヒート吹出口30fを全閉にし、3列目シート用ベント吹出口30eを全開にする回動位置となるまで、下側ダンパ37が回動する。図示しないが、ヒート吹出口30fを全開にし、3列目シート用ベント吹出口30eを全閉にする回動位置となるまで、下側ダンパ37を回動させることもできる。このようにして、空調風を車室の各部に供給することができる。
【0065】
(送風ユニットの構成)
図1に示すように、送風ユニット2は、空調用空気を空調ユニット3へ送風するためのユニットである。図5図6に示すように、送風ユニット2は、送風ケーシング20と、送風用ファン21と、送風用ファン21を回転駆動するためのモータ22とを備えている。送風ケーシング20は、送風ケーシング20の左側部分を構成する左側送風ケーシング構成部材20Aと、送風ケーシング20の右側部分を構成する右側送風ケーシング構成部材20Bとで構成されている。左側送風ケーシング構成部材20A及び右側送風ケーシング構成部材20Bは、例えば樹脂材を射出成形してなるものである。左側送風ケーシング構成部材20Aと右側送風ケーシング構成部材20Bとの嵌合構造は、空調ケーシング30と同様に構成されている。送風ケーシング20を構成する送風ケーシング構成部材の数は、2つに限られるものではなく、3以上であってもよい。
【0066】
図3に示すように、送風ケーシング20は、空調ケーシング30の底壁部よりも上に配置された状態で車体に固定されており、本発明のスクロールケーシングを構成する部材である。送風用ファン21は、送風ケーシング20の内部に収容された遠心式ファン(シロッコファン)で構成されている。送風用ファン21の回転軸300は左右方向に延びており、空気の吸入側が左側となっている。本実施形態の説明では、回転軸300方向一端側を左側とし、回転軸300方向他端側を右側とするが、これに限られるものではなく、左右反転した構造であってもよい。
【0067】
図6図8図9に示すように、右側送風ケーシング構成部材20Bの右側壁部には、送風用ファン21を駆動するためのモータ22が設けられている。モータ22は本体部22aと、出力軸22bとを備えている。モータ22の本体部22aは、右側送風ケーシング構成部材20Bの右側壁部に固定されている。モータ22の出力軸22bは、左右方向に延びる姿勢となっており、送風用ファン21の回転軸300と同芯である。モータ22に対して外部のバッテリ及び制御装置等から電圧が印加されると、モータ22の出力軸22bが所定の回転数で回転するようになっている。モータ22の単位時間あたりの回転数は制御装置によって任意に変更可能になっている。
【0068】
モータ22の出力軸22bは、送風ケーシング20内へ突出しており、出力軸22bの先端部に送風用ファン21が固定されている。すなわち、送風用ファン21は、筒状部21aと、コーン形状部21bと、羽根部21cとを備えており、筒状部21a、コーン形状部21b及び複数の羽根部21cは、樹脂材により一体成形されている。筒状部21aは、送風用ファン21の回転中心部かつ左右方向中間部に位置しており、左右方向に延びている。この筒状部21aの内部には、固定用部材23が設けられている。モータ22の出力軸22bは、固定用部材23に嵌入した状態で固定用部材23を介して送風用ファン21に固定される。
【0069】
コーン形状部21bは、筒状部21aの外周部から径方向へ延出するとともに、径方向外側へ行くほど右側に位置するように湾曲ないし傾斜した板状をなしている。複数の羽根部21cは、左右方向に延びており、回転軸300の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。複数の羽根部21cの右端部は、コーン形状部21bの径方向外端部と一体化されている。複数の羽根部21cで囲まれた空間は、左側方に開放されており、空調用空気が左側から流入する部分である。
【0070】
送風用ファン21の左端部には、複数の羽根部21cを連結する連結部21dが一体成形されている。連結部21dは、複数の羽根部21cを囲む円環状をなしており、連結部21dの内周部に複数の羽根部21cの径方向外端部が一体化されている。連結部21dは、羽根部21cの径方向外端部から径方向外方へ突出している。
【0071】
図8に一部を示すように、送風ケーシング20内部には、送風用ファン21の外周面を囲むように延びるスクロール通路Sが形成されている。具体的には、図7に破線で示すように、送風ケーシング20内部には、ノーズ部24が設けられている。ノーズ部24は、送風ケーシング20の内面において回転軸300との径方向の距離が最も短くなるように形成された部分であり、スクロール通路Sの巻き始め部分(始点)に位置する。この実施形態では、ノーズ部24が送風ケーシング20内部において後側に位置するとともに、上下方向中央部よりも下寄りに位置しているので、スクロール通路Sの巻き始め部分は、送風ケーシング20内部においてその後側下部に位置付けられる。
【0072】
一方、スクロール径が最大となる部分がスクロール通路Sの巻き終わり部分(終点)であり、この実施形態では、スクロール通路Sの巻き終わり部分が送風ケーシング20内部において下側に位置している。したがって、送風ケーシング20内部に形成されているスクロール通路Sは、送風ケーシング20内部の後側から上側、前側、下側を通り、後側下部へ向けて延びることになる。スクロール通路Sの断面積は、巻き始め部分が最も小さく、下流側へ行くに従って拡大している。このことに対応するように、スクロール通路Sの右側壁部20fは下へ行くほど右側に位置するように形成されている(図9参照)。
【0073】
図5図7に示すように、左側送風ケーシング構成部材20Aの左端壁部には、空調用空気を吸い込む吸込口20aが形成されている。吸込口20aは車室内に開口しており、車室内の空気(内気)を吸い込むものである。吸込口20aは円形である。左側送風ケーシング構成部材20Aの左端壁部には、吸込口20aから異物が吸い込まれるのを抑制するためのガード部26が設けられている。ガード部26は、放射状に延びる部分と、円環状に延びる部分とを有しており、左側送風ケーシング構成部材20Aに一体成形されている。
【0074】
送風用ファン21の回転軸300に沿って見たとき、即ち左右方向から見たとき、吸込口20aの中心は、送風用ファン21の回転軸300に対してノーズ部24から離れる方向に偏心している。図8に示すように、送風用ファン21の回転軸300を基準としたとき、吸込口20aの周縁部におけるノーズ部24側の部分との距離X1は、吸込口20aの周縁部における反ノーズ部24側の部分との距離X2よりも短くなっている。言い換えると、距離X2が距離X1よりも長くなるように、吸込口20aの中心位置が設定されている。これにより、吸込口20aの中心を通って左右方向に延びる直線を想定した時、その直線が回転軸300よりもノーズ部24から離れることになり、その結果、側方視で吸込口20aをノーズ部24から離すことができる。
【0075】
一方、図7に示すように、送風ケーシング20の後部には、空気吐出部20bが設けられている。空気吐出部20bは、送風ケーシング20の上下方向中央部よりも下側部分に形成されており、後方へ向けて突出した筒状をなしている。図5及び図6に示すように、空気吐出部20bの後端面には、送風ケーシング20内の空気を吐出する吐出口20cが形成されている。吐出口20cは左右方向に長い形状とされており、空調ケーシング30の空気導入口30cと連通可能になっている。
【0076】
図8に示すように、送風ケーシング20の左端壁部の内面には、送風用ファン21に接近する方向(右方向)に突出して円環状に延びる円環部27が形成されている。円環部27は、吸込口20aよりも大径とされており、送風ケーシング20の左端壁部に一体成形されている。これにより、部品点数を削減できるだけでなく、円環部27と吸込口20aとが同一の部材に形成されることになるので、両者の位置関係を適正に維持できる。円環部27の左右方向の寸法、即ち、送風ケーシング20の左端壁部の内面からの突出寸法は、例えば5mm以上に設定することができるが、これに限らず、8mm以上、または10mm以上に設定することができる。
【0077】
送風用ファン21の回転軸300に沿って見たとき、円環部27は、送風用ファン21の回転軸300と同心上に位置付けられている。よって、送風用ファン21の回転軸300の延長線上に円環部27の中心が位置することになる。また、円環部27の直径は、送風用ファン21の直径よりも小径とされている。尚、円環部27の直径は、送風用ファン21の直径と同じであってもよい。
【0078】
円環部27が吸込口20aよりも大径とされているので、送風ケーシング20の左端壁部は、円環部27の基部(左端部)から該円環部27の径方向内方へ向けて延出する延出板部20eを有することになる。この延出板部20eの周縁部によって吸込口20aが形成されている。吸込口20aの直径は、送風用ファン21の直径よりも小径とされている。よって、回転軸300方向に沿ってみたとき、延出板部20eの周縁部は、送風用ファン21の外周部よりも径方向内方に位置している。また、延出板部20eに沿った仮想面と、回転軸300の延長線とは直交している。この延出板部20eと送風用ファン21との間には所定の隙間が形成されている。
【0079】
円環部27の先端部は、送風用ファン21の左端面(回転軸300方向一端面)よりも右側(他端側)に位置付けられている。これにより、円環部27の先端部が送風用ファン21の羽根部21cよりも径方向内方に挿入された状態になる。
【0080】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、送風用ファン21が回転すると、空調用空気が送風ケーシング20の左端壁部の吸込口20aから送風ケーシング20の内部に吸い込まれる。このとき吸い込まれた空調用空気は、送風用ファン21の左側から当該送風用ファン21の内部に流入し、コーン形状部21bに沿って径方向外方へ流れていく。径方向外方へ流れた空調用空気は、周方向に隣合う羽根部21cの間からスクロール通路S内に流出して当該スクロール通路S内で集合する。その後、空調用空気が後方へ向けて送風される。
【0081】
ここで、暖房時には、空調用空気がエバポレータ40及びヒータコア41を通過するととともに、後席用ヒート通路R6を介して3列目シート103の乗員の足下近傍まで延びる足下ダクトを流通することになるので、空調ケーシング20内の通気抵抗が大きくなる。本実施形態では、送風ケーシング20の吸込口20aが送風用ファン21の回転軸300に対してノーズ部24から離れる方向に偏心しており、しかも、送風ケーシング20の左端壁部の内面には、円環部27が送風用ファン21に接近する方向に突出しているので、空調ケーシング20内の通気抵抗が高い状態であっても、送風ケーシング20内を流れている空気が吸込口20a側へ逆流し難くなる。
【0082】
さらに、送風用ファン21の回転軸300に沿って見たとき、円環部27は、送風用ファン21の回転軸300と同心上に位置付けられているので、円環部27の先端と送風用ファン21との隙間を全周に亘って小さくすることができる。したがって、送風ケーシング20内を流れている空気の逆流が抑制されるので、送風用ファン21に吸い込まれる空気の流れとの干渉が起こりにくくなり、騒音が低減する。
【0083】
図10は、本発明と比較例の騒音測定結果を示すグラフである。比較例は、吸込口20aを送風用ファン20の回転軸300と同軸上に配置したベルマウス状の場合である。本発明は、上記実施形態である。このグラフに示すように、本発明では、1kHzよりも低い周波数帯域の音圧が比較例に比べて低くなることが分かる。尚、騒音測定試験では、通気抵抗が最も高いモードとしてヒート吹出口30fを全開にしたモードとし、風量を最大風量とした。騒音の測定位置は、車室内の乗員が着座する位置近傍である。
【0084】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、円環部27は、送風ケーシング20とは別部材で構成されていてもよく、この場合、円環部27を樹脂材で成形した後、送風ケーシング20の所定部位に取り付けるようにすればよい。また、円環部27の突出方向の寸法は一定であってもよいし、周方向について異なっていてもよい。また、送風用ファン21の回転軸300は上下方向に向いていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば2列目シートや3列目シートを有する自動車で利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両用空調装置
2 送風ユニット(送風機)
20 送風ケーシング(スクロールケーシング)
20a 吸込口
20e 延出板部
21 送風用ファン(遠心式ファン)
24 ノーズ部
27 円環部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10