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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074515
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】防火安全ガラス窓
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20240524BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
E06B5/16
C03C27/12 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185729
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁仁
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】川妻 幸宏
【テーマコード(参考)】
2E239
4G061
【Fターム(参考)】
2E239CA05
2E239CA30
2E239CA32
4G061AA04
4G061AA28
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】例えば火災等による加熱によって、液化した樹脂製中間膜が、防火安全ガラス板の下端から、窓枠の下枠部における溝部に漏れ出した場合であっても、当該防火安全ガラス板の下端を支持する支持体によって、液化した樹脂製中間膜の流動が阻害されることがなく、窓枠の外部に迅速に排出することができる防火安全ガラス窓を提供する。
【解決手段】上枠部21、上面において下枠側溝部22cを有する下枠部22、及び一対の側枠部23・23、を有する矩形枠状の窓枠2と、複数のガラス板31・31、及び複数のガラス板31・31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、下枠側溝部22cにおいて、防火安全ガラス板3の下端を支持するセッティングブロック4と、を備える防火安全ガラス窓1であって、セッティングブロック4は、下枠部22の長さ方向に沿って、貫通した溝部41を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠部、上面において溝部を有する下枠部、及び一対の側枠部、を有する矩形枠状の窓枠と、
複数のガラス板、及び前記複数のガラス板の間に形成された樹脂製中間膜からなり、前記窓枠の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板と、
前記溝部において、前記防火安全ガラス板の下端を支持する支持体と、
を備える防火安全ガラス窓であって、
前記支持体は、前記下枠部の長さ方向に沿って、貫通した空間部を有する、
ことを特徴とする防火安全ガラス窓。
【請求項2】
前記支持体は、
前記下枠部の長さ方向に沿って貫通するとともに、前記下枠部の上面に向かって開口した空間部を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の防火安全ガラス窓。
【請求項3】
前記支持体は、金属からなる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の防火安全ガラス窓。
【請求項4】
前記支持体における前記下枠部の長さ方向に直交する幅寸法が、
前記溝部の幅寸法と同等に設定される、
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の防火安全ガラス窓。
【請求項5】
前記下枠部は、上面に、外部に繋がる排出孔を有し、
前記排出孔は、円形状に形成され、
前記排出孔の直径は、
前記支持体における前記下枠部の長さ方向に直交する幅寸法、及び/または、当該長さ方向に沿った長さ寸法に比べて小さく設定される、
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の防火安全ガラス窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火安全ガラス窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、百貨店等の商業施設や、市役所等の公共施設、或いはオフィスビルなどの大型建築物において、当該大型建築物の開口部を塞ぐ防火安全ガラス窓が知られている。
この種の防火安全ガラス窓においては、火災時における火炎や煙を遮断して延焼を最大限に食い止める防火戸としての機能と、平常時に衝撃を受けて破損した場合であっても破片が飛散せず貫通孔を生じない安全ガラスとしての機能とを兼ね備えている必要があり、国土交通省から特定防火設備または防火設備として認定されたものを用いるのが一般的である。
なお、特定防火設備及び防火設備は、建築基準法及び建築基準法施行令に規定されており、通常の火災による火炎に一定時間晒された場合に、加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するものであり、国土交通省から指定された評価試験機関による試験に合格する必要がある。
【0003】
このような防火安全ガラス窓の一例として、例えば特許文献1においては、矩形枠状に形成された防火安全ガラス用窓枠(窓枠)と、樹脂フィルム(樹脂製中間膜)を介在して積層された複数のガラス板からなり、外縁に沿って当該窓枠に嵌め込まれた防火安全ガラス板とを備える防火安全ガラス窓が開示されている。
【0004】
当該防火安全ガラス窓においては、防火安全ガラス板の下端と、窓枠の下枠部に設けられる溝部との間に、複数(例えば2個)のセッティングブロック(支持体)が設けられており、防火安全ガラス板は、これら複数の支持体によって支持されている。
また、上記下枠部の溝部には、窓枠の外部へと繋がる複数の排出孔が設けられており、これら複数の排出孔は、支持体の直下を避けた所定の位置に各々配置されている。
【0005】
そして、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から、上記下枠部の溝部へと漏れ出した場合、液化した樹脂製中間膜(以下、適宜「液化中間膜」と記載する)は、上記排出孔を介して窓枠の外部へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-29104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、前述した従来の防火安全ガラス窓において、複数の支持体は、防火安全ガラス板の幅寸法(下枠部の長さ方向に沿った寸法)の1/4程度の間隔を有して、窓枠における両側の側枠部から各々離間した位置に配置されるのが一般的である。
また、支持体は、主に直方体形状の中実部材である。
このようなことから、例えば火災等による加熱によって、防火安全ガラス板の下端から下枠部の溝部へと液化中間膜が漏れ出した場合、支持体によって当該液化中間膜の流動が阻害され、下枠部の溝部に液化中間膜が溜まり易くなる。
その結果、下枠部を構成する押縁と枠本体部の隙間から非加熱側(防火安全ガラス窓を隔てて、火災が発生している側との反対側)へと、液化中間膜が流れ出したり、火炎が噴き出す要因となる虞があった。
【0008】
一方、液化中間膜の流動を良好にするためには、支持体の幅寸法(下枠部の長さ方向に対して平面視直交方向の寸法)を、可能な限り小さく設定することも考えられるが、この場合、防火安全ガラス板を安定的に支えることが困難になる。
【0009】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、例えば火災等による加熱によって、液化した樹脂製中間膜が、防火安全ガラス板の下端から、窓枠の下枠部における溝部に漏れ出した場合であっても、当該防火安全ガラス板の下端を支持する支持体によって、液化した樹脂製中間膜の流動が阻害されることがなく、窓枠の外部に迅速に排出することができる防火安全ガラス窓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明に係る防火安全ガラス窓は、上枠部、上面において溝部を有する下枠部、及び一対の側枠部、を有する矩形枠状の窓枠と、複数のガラス板、及び前記複数のガラス板の間に形成された樹脂製中間膜からなり、前記窓枠の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板と、前記溝部において、前記防火安全ガラス板の下端を支持する支持体と、を備える防火安全ガラス窓であって、前記支持体は、前記下枠部の長さ方向に沿って、貫通した空間部を有することを特徴とする。
このように、本発明に係る防火安全ガラス窓においては、当該支持体が、前記下枠部の長さ方向に沿って、貫通した空間部を有するため、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から窓枠の溝部へと漏れ出したとしても、溝部を伝って流動する液化した樹脂製中間膜(液化中間膜)が、途中で阻害されることがなく、迅速に窓枠の外部と繋がる排出孔へと流れ、窓枠の外部に排出することができる。
また、支持体の幅寸法を、下枠部の溝部における幅寸法と略同等に設定することも可能であり、溝部を伝って流動する液化中間膜を阻害することなく、支持体による防火安全ガラス板の支持力を十分に満足させることができる。
さらに、窓枠の外部と繋がる排出孔を上記溝部の何れの位置に設けたとしても、支持体に設けられた空間部を利用して、当該排出孔に向かって液化中間膜を確実に導き、窓枠の外部に排出することができる。
【0012】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓において、前記支持体は、前記下枠部の長さ方向に沿って貫通するとともに、前記下枠部の上面に向かって開口した空間部を有することが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から窓枠の溝部へと漏れ出したとしても、溝部を伝って流動する液化樹脂製中間膜の流れが、途中で阻害されることがない。
【0013】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓において、前記支持体は、金属製部材によって形成されることが好ましい。
このような比較的加工し易い金属製部材によって、支持体を形成することにより、所定形状の支持体をより安価に得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓においては、前記支持体における前記下枠部の長さ方向に直交する幅寸法が、前記溝部の幅寸法と同等に設定されることが好ましい。
このような構成を有することにより、防火安全ガラス板の厚み寸法に対して、支持体の上記幅寸法を、十分大きく設定することができる。
従って、支持体を介して、より安定した状態で防火安全ガラス板を支持することができる。
【0015】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓において、前記下枠部は、上面に、外部に繋がる排出孔を有し、前記排出孔は、円形状に形成され、前記排出孔の直径は、前記支持体における前記下枠部の長さ方向に直交する幅寸法、及び/または、当該長さ方向に沿った長さ寸法に比べて小さく設定されることが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば、上記支持体の位置が不意にずれて、排出孔の直上に位置することとなった場合であっても、当該排出孔内に支持体が落ち込むようなこともない。
つまり、窓枠の下枠部において、上記排出孔は、支持体に対して何れの位置に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る防火安全窓ガラスによれば、例えば火災等による加熱によって、液化した樹脂製中間膜が、防火安全ガラス板の下端から、窓枠の下枠部における溝部に漏れ出した場合であっても、当該防火安全ガラス板の下端を支持する支持体によって、液化した樹脂製中間膜の流動が阻害されることがなく、窓枠の外部に迅速に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る防火安全ガラス窓の全体的な構成を示した正面図である。
図2】防火安全ガラス窓の下枠部における構成を示した拡大断面図である。
図3】セッティングブロックの構成を示した図であって、(a)はその正面図であり、(b)は図3(a)中の矢視X2の方向に見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1及び図2に示した矢印の方向によって、防火安全ガラス窓1の前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。
また、図3に示した矢印の方向によって、セッティングブロック4の前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。
【0019】
[防火安全ガラス窓1の全体構成]
先ず、本実施形態における防火安全ガラス窓1の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0020】
防火安全ガラス窓1は、例えば、百貨店、スーパー等の商業施設や、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、或いはオフィスビルなどの大型建築物の開口部に用いられ、当該開口部を採光可能に塞ぐものである。
防火安全ガラス窓1は、図1に示すように、主に、矩形枠状の窓枠2と、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、防火安全ガラス板3の下端を支持するセッティングブロック4とを備える。
また、防火安全ガラス窓1は、施工の際に設けられ、窓枠2に嵌め込まれた防火安全ガラス板3の固定、及び水や泥水等の窓枠2内への侵入防止などを目的として、窓枠2と防火安全ガラス板3との隙間に封入される、充填材5及び防火性シリコーン6等を備える。
【0021】
窓枠2は、火災によって軟化、燃焼しない材質により構成することができる。
例えば、窓枠2の素材としては、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅等の金属製部材が挙げられるが、窓枠2は、亜鉛メッキ等の防錆加工が施された、鋼板製の中空材によって構成されるのが好ましい。
【0022】
窓枠2は、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23を有する。
上枠部21は、例えば、一方向に延出する断面視略凹形状であり、一側面の中央に設けられた断面視矩形状の上枠側溝部21aを下方に向け、且つ長さ方向(延出方向)を左右方向とした状態で配置される。
また、一対の側枠部23・23も上枠部21と同様に、それぞれ一方向に延出する断面視略凹形状であり、一側面の中央に設けられた断面視矩形状の側枠側溝部23a・23aを互いに対向させ、且つ長さ方向(延出方向)を上下方向とした状態で平行に配置される。
【0023】
一方、図2に示すように、下枠部22は、枠本体部22a、及び枠本体部22aに固定される押縁22bなどにより構成される。
【0024】
枠本体部22aは、一方向に延出する断面視略L形状であり、第1上面22a1、第1上面22a1に対して下方に位置する第2上面22a2、第2上面22a2に対して下方に位置する下面22a3、第1上面22a1と下面22a3とを連結する第1側面22a4、第2上面22a2と下面22a3とを連結する第2側面22a5、及び第1上面22a1と第2上面22a2とを連結する第3側面22a6とを有する。
また、押縁22bは、一方向に延出する断面視矩形状を有し、その高さ寸法hは、第1上面22a1と第2上面22a2との離間寸法d1と略同等であるとともに(h=d1)、その幅寸法Waは、第2側面22a5と第3側面22a6との離間寸法d2に比べて十分小さい(Wa<d2)。
【0025】
押縁22bは、第2上面22a2上において、第3側面22a6と所定の離間間隔(後述する幅寸法W1)を有した状態で、当該枠本体部22aの長さ方向(延出方向)に沿って配置され、ボルト等の締結部材によって着脱可能に固定される。
これにより、下枠部22の一側面の中央には、第2上面22a2と第3側面22a6と押縁22bとにより構成される、断面視矩形状の下枠側溝部22cが、当該下枠部22の長さ方向(延出方向)に沿って形成される。
なお、下枠側溝部22cは、本発明に係る、下枠部が有する溝部の一例である。
【0026】
そして、図1に示すように、下枠部22は、上枠部21の下方において、下枠側溝部22cを上枠側溝部21aと対向させた状態で(即ち、下枠側溝部22cを上方に向けた状態で)、長さ方向(延出方向)を左右方向とし、且つ当該上枠部21と平行に配置される。
【0027】
このような構成からなる、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23は、後述するように、溶接やネジ止め等によって互いに一体的に連結され、内側の側面に沿って、断面視矩形状の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)が設けられた、矩形枠状の窓枠2として構築される。
そして、窓枠2は、上記溝部を介して、防火安全ガラス板3の周縁部を嵌め込み、充填材5及び防火性シリコーン6等を介して、当該防火安全ガラス板3を固定する。
【0028】
なお、本実施形態において例示する窓枠2の寸法は、外寸が2495mm×1250mm×125mmであり、内寸が2400mm×1200mm×125mmである。
また、窓枠2の内側に設けられる、断面視矩形状の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)の幅寸法は、何れも略同等である。
【0029】
そして、上記溝部の幅寸法(例えば、図2に示す幅寸法W1)は、防火安全ガラス板3の厚み寸法tに応じて設定されており、例えば、(上記溝部の幅寸法W1)-(防火安全ガラス板3の厚み寸法t)=+5~15mmである。
【0030】
防火安全ガラス板3は、図2に示すように、複数(例えば、本実施形態においては2枚)のガラス板31・31、及び2枚のガラス板31・31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、2枚のガラス板31・31を樹脂製中間膜32によって貼り付けることで積層された、ガラス積層体である。
【0031】
防火安全ガラス板3は、2枚のガラス板31・31の間に、樹脂製中間膜32を挟んで積層状態とし、オートクレーブ等の加熱手段(図示せず)によって加熱することにより樹脂製中間膜32を融着させて、2枚のガラス板31・31と樹脂製中間膜32とを一体化させることで、製造することができる。
【0032】
樹脂製中間膜32としては、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂,UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂(THV)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂、その他紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂の中でも、THV樹脂、EVA樹脂、PVB樹脂は、コスト面や接着性の面に優れているため好ましい。
【0033】
このように、2枚のガラス板31・31を積層させることにより、防火安全ガラス板3の強度を高めることが可能となる。
また、樹脂製中間膜32が介在しているため、非常に強い衝撃が加わり、防火安全ガラス板3が破損したとしても、破片が飛散する虞がなくなり、安全性が向上する。
【0034】
なお、本実施形態においては、2枚のガラス板31・31を積層しているが、防火性に応じて3枚以上のガラス板31を積層してもよい。
また、複数枚のガラス板31・31・・・のうち、少なくとも一枚が耐熱ガラス板からなることにより、最低限の防火性能を付与できるが、優れた防火性能とするためには、全てのガラス板31が耐熱ガラス板からなることが好ましい。
【0035】
セッティングブロック4は、本発明に係る支持体の一例であって、下枠部22の下枠側溝部22c内に配置され、防火安全ガラス板3の下端を支持する。
セッティングブロック4・4は、例えば、1枚の防火安全ガラス板3に対して2個設けられており、図1に示すように、防火安全ガラス板3の左右中心となる中心線CLに対して、左側の領域である左ガラス部分S1の下端の左右中間部と、右側の領域である右ガラス部分S2の下端の左右中間部とを、各々支持するように配設される。
【0036】
具体的には、これら2個のセッティングブロック4・4は、防火安全ガラス板3の幅寸法Wの1/4程度の間隔d4を有して(d4=(1/4)×W)、窓枠2における両側の側枠部23・23(より具体的には、側枠側溝部23aの底面)から各々離間した位置に配置される。
これにより、左右一対のセッティングブロック4・4によって、防火安全ガラス板3を効率よく安定して支持することができる。
【0037】
なお、セッティングブロック4の詳細な構成については、後述する。
【0038】
図2に示すように、下枠部22における下枠側溝部22cの底面(より具体的には、第2上面22a2)には、枠本体部22aの内部に繋がる第1排出孔24が設けられている。なお、第1排出孔24は、本発明に係る排出孔の一例である。
また、下枠部22の両側面(より具体的には、第1側面22a4及び第2側面22a5)には、枠本体部22aの内部に繋がる第2排出孔25・25が各々設けられている。
つまり、下枠部22における下枠側溝部22cの底面には、第2排出孔25を介して窓枠2の外部に繋がる、第1排出孔24が設けられている。
【0039】
第1排出孔24・24・24は、1枚の防火安全ガラス板3に対して3個設けられており、図1に示すように、中心線CLに対して左右対称となるように配置されている。
具体的には、これら3個の第1排出孔24・24・24は、防火安全ガラス板3の下端を支持する左右一対のセッティングブロック4・4を避けるようにして、これら一対のセッティングブロック4・4の間と、左側のセッティングブロック4の左側と、右側のセッティングブロック4の右側とに、各々配置されている。
【0040】
下枠部22は、防火安全ガラス板の自重により、当該下枠部22の長さ寸法の中央に向かって凹状に経年変形することがある。
このとき、液化中間膜(例えば、火災等による加熱によって液化した樹脂製中間膜32)は、下枠部22の長さ寸法の中央方向に流動しやすくなる。
【0041】
第1排出孔24・24・・・がセッティングブロック4・4よりも、下枠部22の長さ寸法の中央側に設けられている場合、液化中間膜の流動がセッティングブロック4・4によって阻害され、下枠側溝部22c内に液化中間膜が溜まりやすくなる。
よって、上記のように、セッティングブロック4・4の近傍、且つ窓枠の側枠部23側に、排出孔24・24を設けることが好ましい。
【0042】
なお、本発明においては、セッティングブロック4は、前記下枠部22の長さ方向に沿って貫通した空間部(具体的には、後述する溝部41)を有するため、第1排出孔24・24・24が全て、下枠部22の長さ寸法の中央側に設けられている場合であっても、下枠側溝部22c内に液化中間膜が溜まりやすくなることはなく、第1排出孔24・24・24が何れの位置に設けられていてもよい。
【0043】
一方、第2排出孔25・25・25も第1排出孔24と同様に、下枠部22の各側面(第1側面22a4または第2側面22a5)において、各々3個設けられており、下枠部22の長さ方向(延出方向)における、当該第1排出孔24と略同等の位置に各々配置されている。
【0044】
なお、各第2排出孔25は、平常時の状態(例えば火災等の発生時以外の状態)において、水や泥水等の窓枠2内への侵入防止を目的として、図示せぬ封止部材等によって封止されていることが好ましい。
また、上記封止部材の融点が700℃以下であることが好ましい。
この場合、火災が発生したとき、加熱側(防火安全ガラス窓を隔てて、火災が発生している側)に位置する第2排出孔25が窓枠と外部を繋ぐことができ、液化中間膜を加熱側に排出することができる。
【0045】
そして、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3の下端から下枠部22の下枠側溝部22cに漏れ出した場合、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)は、当該樹脂製中間膜32から発生するガスとともに、第1排出孔24、枠本体部22aの内部、及び第2排出孔25と順に通過して、窓枠2の外部へと効率よく排出される。
【0046】
なお、図示はしないが、上枠部21、及び一対の側枠部23・23においても、窓枠2の外部に繋がる複数の排出孔が各々設けられている。
これらの上記排出孔は、例えば、それぞれの溝部(上枠側溝部21a及び側枠側溝部23a)の底面から窓枠2の外部に向かって貫通するように設けられており、防火安全ガラス板3(より具体的には、樹脂製中間膜32)の上端および両側端と対向するようにして、各部材の長さ方向(上枠部21における左右方向、及び側枠部23における上下方向)における所定位置に各々配置されている。
【0047】
そして、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3の上端、及び両側端から、上枠部21の上枠側溝部21a、及び側枠部23の側枠側溝部23aに各々漏れ出した場合であっても、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)は、上記複数の排出孔を介して、当該樹脂製中間膜32から発生するガスとともに、窓枠2の外部へと効率よく排出される。
【0048】
以上に示した構成からなる防火安全ガラス窓1は、例えば、以下の手順に従い施工され、構築される。
なお、防火安全ガラス窓1の施工手順については、この手順に限定されるものではない。
【0049】
まず始めに、アルミニウムや鋼等の金属板を加工して、上述した通り、所定の断面形状を有した上枠部21、下枠部22(より具体的には、枠本体部22a)、及び一対の側枠部23・23を各々作製する。
【0050】
次に、上枠部21の上枠側溝部21a、及び側枠部23の側枠側溝部23aに防火安全ガラス板3の周縁部を嵌め込み、且つ下枠部22(枠本体部22a)の第2上面22a2に防火安全ガラス板3の下端を載置させた状態で、これらの上枠部21、下枠部22(枠本体部22a)、及び一対の側枠部23・23を、溶接やネジ止め等によって互いに一体的に連結し、矩形枠状の窓枠2を作製する。
【0051】
窓枠2の作製後、当該窓枠2に対して、防火安全ガラス板3を上枠部21側に僅かにずらした状態で、2個のセッティングブロック4・4を各々所定位置に配置する。
その後、図2に示すように、下枠部22において、第2上面22a2の所定位置に押縁22bを配置し、ボルト等の締結部材によって当該押縁22bを固定する。
【0052】
押縁22bの固定後、防火安全ガラス板3の下端と、下枠部22の下枠側溝部22cとの間において、発泡ポリ塩化ビニルやセラミックファイバーブランケット等により構成された充填材5・5を介在させる。
また、図示しないが、防火安全ガラス板3の上端と、上枠部21の上枠側溝部21a(図1を参照)との間、及び防火安全ガラス板3の両側端と、一対の側枠部23の側枠側溝部23a・23aとの間においても、それぞれ充填材5・5を介在させる。
【0053】
そして、防火安全ガラス板3の周縁部と、上枠部21、下枠部22、及び側板部23における各々の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)との間に生じる隙間に対して、防火性シリコーン6・6を封入する。
防火性シリコーン6としては、例えば、SE5007(東レ・ダウコーニング社製)、シーラント40N(信越シリコーン社製)、シーラント74(信越シリコーン社製)等を用いることができ、コーキングガンにより充填される。
これにより、防火安全ガラス窓1の施工が完了し、当該防火安全ガラス窓1が構築される。
【0054】
[セッティングブロック4の構成]
次に、セッティングブロック4の構成について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
セッティングブロック4は、例えば、ケイ酸カルシウム等の耐火物や、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅等の金属からなり、例えば本実施形態においては、鋼からなる。
このような比較的加工し易い金属製部材によって、セッティングブロック4を形成することにより、以下に示すような所定形状のセッティングブロック4を、より安価に得ることができる。
【0055】
なお、金属製部材によってセッティングブロック4が形成される場合、当該セッティングブロック4と当接する防火安全ガラス板3の下端を保護するために、例えば、シリカ繊維やガラス繊維等からなる耐熱シートを、これら両部材の間(防火安全ガラス板3の下端と、セッティングブロック4の上面との間)に介在させることが好ましい。
【0056】
セッティングブロック4は、図3(a)(b)に示すように、略直方体形状に形成され、その一側面には、当該セッティングブロック4を長手方向(本実施形態においては、左右方向)に貫通する、断面視矩形状の溝部41が設けられている。
ここで、上記溝部41は、本発明に係る、支持体が有する空間部の一例である。
【0057】
そして、図2に示すように、セッティングブロック4は、下枠部22の下枠側溝部22cにおいて、溝部41を下方に向け、且つ長手方向を当該下枠側溝部22cの長さ方向(延出方向)とした状態で、下枠側溝部22cの底面(より具体的には、第2上面22a2)に載置される。
換言すると、セッティングブロック4は、下枠部22の長さ方向(延出方向)に沿って貫通するとともに、当該下枠部22の上面(より具体的には、第2上面22a2)に向かって開口した溝部41を有する。
【0058】
このような構成を有することにより、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3から下枠部22の下枠側溝部22cへと漏れ出した場合であっても、当該下枠側溝部22cを伝って流動する、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)の流れが、セッティングブロック4によって途中で阻害されることがなく、溝部41を介して確実に第1排出孔24へと導くことができ、第2排出孔25より窓枠2の外部へと安定して排出することができる。
【0059】
なお、上記溝部41の構成については、セッティングブロック4を長手方向(左右方向)に貫通する構成であれば、何れのような構成であってもよい。
例えば、溝部41は、断面視矩形状に限らず、他の形状(断面視半円形状や、四角形以外の断面視多角形状など)であってもよい。
また、セッティングブロック4の一側面に設けられる溝形状に限らず、当該セッティングブロック4の中央部を長手方向(左右方向)に貫通する貫通孔によって、本発明に係る上記空間部を構成することとしてもよい。
但し、このような構成を有する場合、前述した第1排出孔24が不意に塞がれることを防止する観点から、セッティングブロック4は、第1排出孔24の直上に設けられないことが好ましい。
【0060】
セッティングブロック4において、下枠部22の長さ方向(延出方向)と直交する方向の寸法(幅寸法Wb)は、前述した下枠側溝部22cの幅寸法W1と同等に設定されている(Wb=W1)。
【0061】
このような構成を有することにより、防火安全ガラス板3の厚み寸法tに対して、セッティングブロック4の上記幅寸法Wbを、十分大きく設定することができる(Wb>t)。
従って、セッティングブロック4を介して、より安定した状態で防火安全ガラス板3を支持することができる。
【0062】
ところで、下枠側溝部22cに設けられる第1排出孔24の形状については、例えば、円形状、長円形状、または矩形状等、何れのような形状であってもよいが、本実施形態においては、加工が容易であることから円形状に形成されている。
【0063】
ここで、図3において、セッティングブロック4における、上記幅寸法Wb、及び下枠部22の長さ方向(延出方向)に沿った寸法(長さ寸法Wc)は、少なくとも何れか一方(本実施形態においては、双方)が、第1排出孔24の直径d(図2を参照)に比べて大きく設定されている(Wb>d及び/またはWc>d)。
換言すると、第1排出孔24は、円形状に形成されており、当該第1排出孔24の直径dは、セッティングブロック4における、下枠部22の長さ方向に直交する幅寸法Wb、及び/または、当該長さ方向に沿った長さ寸法Wcに比べて小さく設定されている。
【0064】
このような構成を有することにより、例えば、セッティングブロック4の位置が不意にずれて、第1排出孔24の直上に位置することとなった場合であっても、当該第1排出孔24内にセッティングブロック4が落ち込むようなこともない。
つまり、窓枠2の下枠部22において、第1排出孔24は、セッティングブロック4に対して何れの位置に設けられていてもよい。
【0065】
下枠部22の長さ方向と直交する方向において、溝部(空間部)41の断面積は1mm以上70mm以下であることが好ましく、5mm以上30mm以下であることがより好ましい。
このような構成にすることにより、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3から窓枠2の下枠側溝部22cへと漏れ出したとしても、下枠側溝部22cを伝って流動する樹脂製中間膜32の流れが、途中で阻害されることがない。
【0066】
以上のように、本実施形態における防火安全ガラス窓1は、上枠部21、上側の面(上面)において下枠側溝部22cを有する下枠部22、及び一対の側枠部23・23を有する矩形枠状の窓枠2と、複数のガラス板31・31、及び複数のガラス板31・31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、下枠側溝部22cにおいて、防火安全ガラス板3の下端を支持するセッティングブロック(支持体)4とを備えている。
そして、セッティングブロック(支持体)4は、下枠部22の長さ方向に沿って、貫通した溝部(空間部)41を有する構成となっている。
【0067】
このように、本実施形態における防火安全ガラス窓1においては、セッティングブロック4が、下枠部22の長さ方向に沿って、貫通した溝部(空間部)41を有するため、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3から窓枠2の下枠側溝部22cへと漏れ出したとしても、下枠側溝部22cを伝って流動する液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)が、途中で阻害されることがなく、迅速に窓枠2の外部と繋がる第1排出孔24へと流れ、窓枠2の外部に排出することができる。
【0068】
また、下枠側溝部22cを伝って流動する樹脂製中間膜32(液化中間膜)を阻害することなく、セッティングブロック4の幅寸法Wbを、下枠部22の下枠側溝部22cにおける幅寸法W1と略同等に設定することも可能であり、セッティングブロック4による防火安全ガラス板3の支持力を十分に満足させることができる。
【0069】
さらに、窓枠2の外部と繋がる第1排出孔24を、上記下枠側溝部22cの何れの位置に設けたとしても、当該第1排出孔24に向かって樹脂製中間膜32(液化中間膜)を確実に導き、窓枠2の外部に排出することができる。
【0070】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0071】
1 防火安全ガラス窓
2 窓枠
3 防火安全ガラス板
4 セッティングブロック(支持体)
21 上枠部
22 下枠部
22c 下枠側溝部
23 側枠部
24 第1排出孔(排出孔)
31 ガラス板
32 樹脂製中間膜
41 溝部(空間部)
d 直径
Wa 幅寸法
Wb 幅寸法
Wc 長さ寸法
図1
図2
図3