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特開2024-74516板ガラス加工装置及び板ガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074516
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】板ガラス加工装置及び板ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/053 20060101AFI20240524BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240524BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20240524BHJP
   C03B 33/023 20060101ALI20240524BHJP
   B24B 7/24 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B24B41/053
B24B55/02 B
B24B49/16
C03B33/023
B24B7/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185730
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太和田 佑
(72)【発明者】
【氏名】北川 翔
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
4G015
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB32
3C034BB92
3C043BB07
3C043BB12
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD05
3C043DD06
3C043DD12
3C047FF03
3C047GG11
4G015FA03
4G015FB01
4G015FC02
4G015FC11
(57)【要約】
【課題】加工具の移動を案内するガイド機構において、当該ガイド機構の摩耗を防げる板ガラス加工装置、及び当該板ガラス加工装置を用いた板ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】板ガラスGの端面に加工具100を押し当てながら、当該板ガラスGの端面を加工する板ガラス加工装置1であって、加工具100の押し当て方向の移動を案内するガイド機構6と、ガイド機構6に対して潤滑剤Pを間断なく供給する潤滑剤供給装置7とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスの端面に加工具を押し当てながら、当該板ガラスの端面を加工する板ガラス加工装置であって、
前記加工具の押し当て方向の移動を案内するガイド機構と、
前記ガイド機構に対して潤滑剤を間断なく供給する潤滑剤供給装置とを備える、
ことを特徴とする板ガラス加工装置。
【請求項2】
板ガラスの端面に加工具を押し当てながら、当該板ガラスの端面を加工する板ガラス加工装置であって、
前記加工具の押し当て方向の移動を案内するガイド機構と、
前記ガイド機構を収容可能に構成されたオイルバスと、
前記オイルバス内に収容され、前記ガイド機構の少なくとも一部と触れる潤滑剤とを備える、
ことを特徴とする板ガラス加工装置。
【請求項3】
前記ガイド機構は、
固定レールと、前記加工具とともに前記固定レールと相対的に移動する移動レールと、前記固定レールと前記移動レールとの間に配置される複数の転動体とを有し、
前記加工具の移動方向が一方向となるように配置され、
前記潤滑剤は、
前記複数の転動体の少なくとも一部と触れる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の板ガラス加工装置。
【請求項4】
前記加工具に作用する圧力を測定する、圧力測定装置をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の板ガラス加工装置。
【請求項5】
板ガラスの端面に沿って、当該板ガラスと加工具とを相対的に移動させつつ、前記加工具を前記板ガラスに押し当てて、板ガラスの端面を加工する板ガラスの製造方法であって、
前記加工具は、押し当て方向の移動を案内するガイド機構により移動され、
前記ガイド機構は、オイルバスに収容された潤滑剤の一部と触れる、
ことを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記潤滑剤は、
40℃における動粘度が0mm/s以上110mm/s以下である潤滑油からなる、
ことを特徴とする、請求項5に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記潤滑剤は、
水素イオン濃度が3pH以上11pH以下である洗浄剤からなる、
ことを特徴とする、請求項5に記載の板ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス加工装置、及び当該板ガラス加工装置を用いた板ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等の製造分野においては、生産効率に対する改善要請に応じるべく、当該ディスプレイ等に使用される板ガラス(ガラス基板)の、製造効率に対する改善要求が高まっている。
ここで、板ガラスの製造工程においては、大型のガラス原板(成形原板)から1枚、または複数枚の板ガラスを切り出される。これにより、所望の外形寸法からなる板ガラスが取得できる。
【0003】
一方、ガラス原板から切り出された板ガラスの端面は、通常、切断面、または折割面となることから、当該端面には、微小な傷や欠陥等が存在する場合が多い。
このような微小な傷や欠陥等が板ガラスの端面に存在すると、当該端面に割れ等を発生させる要因となり得ることから、板ガラスの端面に対して、研削加工(粗加工)、及び研磨加工(仕上げ加工)が施されるのが一般的である。
【0004】
そこで、このような加工(研削加工及び研磨加工)を施す装置の一例として、例えば特許文献1においては、板ガラスと加工具とを相対的に移動させることで、前記板ガラスの端面を加工する板ガラス加工装置が開示されている。
前記板ガラス加工装置は、板ガラスの端面と当接可能な加工具と、加工具を支持するとともにコアレスリニアモータによって駆動される支持部材と、支持部材の移動を直線的に案内するガイド機構とを備えている。
また、ガイド機構は、例えばクロスローラガイド等のリニアガイド機構からなり、当該ガイド機構によって、支持部材は、板ガラスの端面に対して、近接・離反方向に向かって直線的に移動可能に構成されている。
そして、板ガラス加工装置は、上記近接方向に向かって支持部材を移動させ、所定の一定圧にて板ガラスの端面に加工具を押し当てながら、当該板ガラスの端面に対して、研削加工(粗加工)、または研磨加工(仕上げ加工)を施す構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/137894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、特許文献1における板ガラス加工装置においては、板ガラスの端面に加工具を押し当てながら加工する際に、加工具における板ガラスとの相対的な位置が、略一定になる傾向にある。
ここで、クロスローラガイド等からなるガイド機構は、固定レールと、固定レールに対して相対的に移動可能な移動レールと、固定レールと移動レールとの間に介在する複数のローラ(転動体)とを有する。
そのため、クロスローラガイド等からなるガイド機構においては、固定レール及び/または移動レール上の略同一の位置に複数のローラが留まり易く、当該固定レール及び/または移動レールに局所的な摩耗が発生し易い。
その結果、短期間でガイド機構を交換する必要があった。
【0007】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、加工具の移動を案内するガイド機構において、当該ガイド機構の摩耗を防げる板ガラス加工装置、及び当該板ガラス加工装置を用いた板ガラスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明の第一形態に係る板ガラス加工装置は、板ガラスの端面に加工具を押し当てながら、当該板ガラスの端面を加工する板ガラス加工装置であって、前記加工具の押し当て方向の移動を案内するガイド機構と、前記ガイド機構に対して潤滑剤を間断なく供給する潤滑剤供給装置とを備えることを特徴とする。
このような構成を有することにより、ガイド機構の摩耗を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の第二形態に係る板ガラス加工装置は、板ガラスの端面に加工具を押し当てながら、当該板ガラスの端面を加工する板ガラス加工装置であって、前記加工具の押し当て方向の移動を案内するガイド機構と、前記ガイド機構を収容可能に構成されたオイルバスと、前記オイルバス内に収容され、前記ガイド機構の少なくとも一部と触れる潤滑剤とを備えることを特徴とする。
このような構成を有することにより、ガイド機構の摩耗を抑制することができる。
【0011】
そして、本発明の第三形態に係る板ガラス加工装置は、第一形態または第二形態において、前記ガイド機構は、固定レールと、前記加工具とともに前記固定レールと相対的に移動する移動レールと、前記固定レールと前記移動レールとの間に配置される複数の転動体とを有し、前記加工具の移動方向が一方向となるように配置され、前記潤滑剤は、前記複数の転動体の少なくとも一部と触れることを特徴とする。
このような構成を有するガイド機構が用いられる場合であっても、本発明に係る板ガラス加工装置によれば、オイルバスによって、当該ガイド機構に潤滑剤を、間断なく安定して供給することができる。
【0012】
また、本発明の第四形態に係る板ガラス加工装置は、第一形態から第三形態の何れかにおいて、前記加工具に作用する圧力を測定する、圧力測定装置をさらに備えることを特徴とする。
このような構成を有することにより、板ガラスの端面を加工する場合において、圧力測定装置によって測定しながら、加工具に作用する圧力を、より加工に適した圧力に設定することができ、高品質な板ガラスを得ることができる。
【0013】
本発明の第一形態に係る板ガラスの製造方法は、板ガラスの端面に沿って、当該板ガラスと加工具とを相対的に移動させつつ、前記加工具を前記板ガラスに押し当てて、板ガラスの端面を加工する板ガラスの製造方法であって、前記加工具は、押し当て方向の移動を案内するガイド機構により移動され、前記ガイド機構は、オイルバスに収容された潤滑剤の一部と触れることを特徴とする。
このような構成を有することにより、ガイド機構に対して、潤滑剤を間断なく安定して供給することができ、上述したガイド機構の摩耗をより確実に抑制することができる。
【0014】
そして、本発明の第二形態に係る板ガラスの製造方法は、第一形態において、前記潤滑剤は、40℃における動粘度が0mm/s以上110mm/s以下である潤滑油からなることを特徴とする。
このような特性を有する潤滑油を用いることにより、飛散や漏出等の発生を抑制しつつ、上述したガイド機構の摩耗を、さらに確実に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の第三形態に係る板ガラスの製造方法は、第一形態または第二形態において、前記潤滑剤は、水素イオン濃度が3pH以上11pH以下である洗浄剤からなるを特徴とする。
このような特性を有する洗剤を用いることにより、金属侵食の発生を抑制しつつ、上述したガイド機構の摩耗を、さらに確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る板ガラス加工装置及び板ガラスの製造方法によれば、加工具の移動を案内するガイド機構において、当該ガイド機構の摩耗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る板ガラス加工装置の全体的な構成を示した正面図である。
図2】板ガラス加工装置の全体的な構成を示した側面図である。
図3】板ガラス加工装置の全体的な構成を示した平面図である。
図4】板ガラス加工装置の全体的な構成を示した図であって、図1中の矢視Xの方向に見た断面平面図である。
図5】板ガラス加工装置における制御系の構成を示したブロック図である。
図6】板ガラス加工装置の動作手順を説明するためのであって、(a)は所定の停止位置に加工具を移動させた直後の、板ガラス加工装置の状態を示した平面図であり、(b)は加工具によって板ガラスの端面加工が行われる際の、板ガラス加工装置の状態を示した平面図であり、(c)は所定の退避位置に加工具を移動させた直後の、板ガラス加工装置の状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について、図1乃至図6を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1乃至図4中に示した矢印の方向によって、板ガラス加工装置1の前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。
【0019】
[板ガラス加工装置1の構成]
先ず、本実施形態における板ガラス加工装置1の構成について、図1乃至図5を用いて説明する。
図3に示すように、板ガラス加工装置1は、所望の外形寸法に作製された板ガラスGの端面に加工具100を押し当てながら、当該板ガラスGの端面を加工する装置である。
ここで、本実施形態において、板ガラス加工装置1の加工対象となる板ガラスGは、例えば、0.05mm以上10mm以下(好ましくは、0.1mm以上1mm以下)の板厚に設定された、矩形状の板ガラスである。
【0020】
なお、板ガラスGの構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば多角形や円形等、矩形状以外の形状からなる板ガラスであってもよく、また、0.05mm未満や10mmを超える板厚に設定された板ガラスであってもよい。
【0021】
加工具100による板ガラスGの端面加工としては、例えば、板ガラスGの端面の面取り加工(研削加工)や、面取り加工後の端面の凹凸を均一にする研磨加工などが挙げられる。
【0022】
加工具100は、例えば円形短柱形状の砥石によって構成され、軸心を中心にして回転駆動しながら、板ガラスGの端面に対して外周面を押し当てることにより、当該端面を研削加工、または研磨加工するものである。砥石の外周面には、面取り加工後の端面(端部)形状に対応する形状を有する溝部が設けられてもよい。
ここで、研削加工用の加工具100としては、例えば、高剛性砥石であるダイヤモンド砥粒を電着ボンドで固めた所謂電着砥石、或いは、砥粒を金属質結合剤で固めた所謂メタル砥石などが、好適に使用される。
【0023】
板ガラスGと加工具100とは、互いに相対的に移動する。
以下の説明においては、板ガラスGと加工具100とが、板ガラスGの端面に沿って相対的に移動する方向を「送り方向A」という。
【0024】
本実施形態においては、送り方向A(本実施形態においては、左方向)に沿って移動する板ガラスGに対して、加工具100の位置を、板ガラスGの端面に所望の圧力で押し当てた状態で保持することにより、当該板ガラスGの端面加工が行われる。この際、板ガラスGは、テーブル等で保持される。
なお、これに限定されるものではなく、板ガラスGの位置を保持し、加工具100を当該板ガラスGの端面に所望の圧力で押し当てた状態で、送り方向Aに沿って移動させることにより、板ガラスGの端面加工を行うこととしてもよい。
【0025】
また、加工具100は、送り方向Aと交差する方向(例えば平面視直交方向であって、本実施形態においては前後方向)において、板ガラスGの端面に対して接近・離反可能に構成される。
【0026】
以下の説明においては、加工具100が板ガラスGの端面に対して接近・離反する方向を「切り込み方向B」という。
また、切り込み方向Bにおいて、加工具100が板ガラスGの端面に近づく方向(本実施形態においては、前方向)を「切り込み方向前方Bf」といい、加工具100が板ガラスGの端面から離れる方向(本実施形態においては、後方向)を「切り込み方向後方Bb」という。
【0027】
図1に示すように、板ガラス加工装置1は、主に、加工具100を駆動する回転駆動装置2と、板ガラスGの端面を押圧する方向(切り込み方向前方Bf)に加工具100を移動させるサーボ機構3と、回転駆動装置2及びサーボ機構3の制御を実行する制御装置4(図5を参照)とを備える。
【0028】
回転駆動装置2は、軸心を中心にして加工具100を回転駆動させる装置である。
回転駆動装置2は、例えば同期モータ、インダクションモータ、またはサーボモータ等からなる電動モータによって構成される。
【0029】
そして、回転駆動装置2は、制御装置4と電気的に接続されており、当該制御装置4によって、回転駆動装置2の始動、停止、及び回転速度等が制御される。
【0030】
サーボ機構3は、回転駆動装置2を介して加工具100を支持する支持部材5と、支持部材5を切り込み方向Bに沿って直線的に案内するガイド機構6と、ガイド機構6に対して潤滑剤Pを間断なく供給する潤滑剤供給装置7と、支持部材5を駆動するコアレスリニアモータ8と、加工具100の位置を検出する検出器9と、コアレスリニアモータ8の制御を実行する制御部10(図5を参照)と、ガイド機構6、潤滑剤供給装置7、及びコアレスリニアモータ8を各々支持する基台11とを備える。
また、サーボ機構3は、検出器9及び制御部10によって、コアレスリニアモータ8のフィードバック制御を実行する。
【0031】
支持部材5は、例えば矩形状の平板部材からなり、加工具100の下方において、略水平状に配置される。
なお、支持部材5の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えばブロック形状や、その他の各種形状に構成されていてもよい。
【0032】
支持部材5の上面には、加工具100と駆動連結された回転駆動装置2、及び後述する検出器9の磁気センサ91が配置されている。
また、支持部材5の下面には、コアレスリニアモータ8の一部(より具体的には、後述する可動子82)が固定されている。
【0033】
そして、支持部材5は、ガイド機構6によって下方から支持されるとともに、当該ガイド機構6(より具体的には、後述する移動レール62)に固定される。
これにより、支持部材5は、ガイド機構6によって、切り込み方向Bに沿って直線的に案内される。
【0034】
ガイド機構6・6は、例えば、1基の板ガラス加工装置1において2個設けられており、支持部材5の下方において、切り込み方向Bとの平面視直交方向(本実施形態においては、左右方向)に間隔を空けて配置されている。
【0035】
各ガイド機構6は、例えばクロスローラガイドからなるリニアガイド機構によって構成され、固定レール61と、固定レール61と相対的に移動する移動レール62と、これらの固定レール61と移動レール62との間に配置される複数のローラ(転動体)63・63・・・とを有している。なお、ガイド機構6には、転動体としてローラに代えてボールを有するボールガイドを採用してもよい。
【0036】
そして、図2に示すように、移動レール62は、固定レール61に対して切り込み方向Bに沿って移動可能に配置される。
また、固定レール61は、潤滑剤供給装置7を介して基台11の上面に固定され、且つ移動レール62は、支持部材5の下面に固定される。
これにより、ガイド機構6は、加工具100の移動方向が一方向(切り込み方向B)となるように配置されることとなり、支持部材5を介して、加工具100の押し当て方向(切り込み方向前方Bf)への移動を案内する。
【0037】
潤滑剤供給装置7は、例えば本実施形態においては、ガイド機構6を収容可能なオイルバス71によって構成される。
なお、潤滑剤供給装置7の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、噴出装置によって、ガイド機構6の少なくとも一部(より具体的には、複数のローラ63・63・・・の少なくとも一部)に向かって潤滑剤Pを噴出し、当該潤滑剤Pを間断なく供給する潤滑システムなどによって構成されていてもよい。
【0038】
オイルバス71・71は、図3に示すように、2個のガイド機構6・6に対して各々設けられている。
また、各オイルバス71は、例えば、上面が開口された矩形箱形状の部材からなり、基台11の上面において、各ガイド機構6を収容するよう配置されている。
【0039】
そして、オイルバス71内において、ガイド機構6は、固定レール61を介して、当該オイルバス71の底面に固定される。
また、オイルバス71内には、潤滑剤Pが収容されており、ガイド機構6の少なくとも一部(より具体的には、複数のローラ63・63・・・の少なくとも一部)が当該潤滑剤Pと触れる(浸される)ように構成されている。
例えば本実施形態においては、図1に示すように、複数のローラ63・63・・・の全てが、潤滑剤Pに浸された状態となっている。
【0040】
このように、本実施形態における板ガラス加工装置1においては、加工具100の押し当て方向(切り込み方向前方Bf)の移動を案内するガイド機構6と、ガイド機構6を収容可能に構成されたオイルバス71と、オイルバス71内に収容され、ガイド機構6の少なくとも一部と触れる潤滑剤Pとを備える構成となっている。
【0041】
従って、オイルバス71内に収容された潤滑剤Pに、ガイド機構6の少なくとも一部を浸して触れさせることで、当該ガイド機構6に対して、潤滑剤Pを間断なく安定して供給することができる。
その結果、従来のような、固定レール61及び/または移動レール62上の略同一の位置に複数のローラ63・63・・・が留まることにより発生するガイド機構6の摩耗を、より確実に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態における板ガラス加工装置1においては、クロスローラガイドからなるリニアガイド機構によってガイド機構6が構成されており、潤滑剤Pは、ガイド機構6における複数のローラ63・63・・・の少なくとも一部(本実施形態においては、複数のローラ63・63・・・の全て)と触れるように構成されている。
【0043】
このように、クロスローラガイドによってガイド機構6が構成される場合であっても、本実施形態における板ガラス加工装置1によれば、オイルバス71によって、当該ガイド機構6に潤滑剤Pを、間断なく安定して供給することができる。
【0044】
なお、潤滑剤Pについては、所望の摩擦低減効果を有するものであれば、潤滑油、洗剤、或いはグリース等、何れのものを採用することも可能であり、以下に示す各々の特性を考慮の上、板ガラスGの端面加工を行う際の加工条件等に基づき、適宜選択され得る。
【0045】
即ち、潤滑油は一般的に、摩擦低減効果と摺動性とのバランスに長けるというメリットを有するものの、飛散や漏出等が発生した場合に、板ガラスGの品質低下の要因となり得るというデメリットを有する。
また、洗剤は一般的に、飛散や漏出等が発生した場合であっても、板ガラスGの品質低下につながらないというメリットを有するものの、成分が比較的変質し易く、周囲環境によっては泡立ち、ガイド機構6等に金属侵食を発生させる要因となり得るというデメリットを有する。
さらに、グリースは一般的に、摩擦低減効果が高く、飛散や漏出等が発生し難いというメリットを有するものの、摺動性については比較的低く、所定の一定圧にて板ガラスGの端面に加工具100を押し当てる動作の妨げとなり得るというデメリットを有する。
【0046】
潤滑剤Pとして潤滑油を用いる場合、潤滑剤Pは、40℃における動粘度が0mm/s以上110/s以下である潤滑油を採用することが好ましい。
このような特性を有する潤滑油を、潤滑剤Pとして用いることにより、飛散や漏出等の発生を抑制しつつ、上述したガイド機構6の摩耗を、さらに確実に抑制することができる。
【0047】
また、潤滑剤Pとして洗剤を用いる場合、潤滑剤Pは、水素イオン濃度が3pH以上11pH以下である洗浄剤を採用することが好ましい。
このような特性を有する洗剤を、潤滑剤Pとして用いることにより、金属侵食の発生を抑制しつつ、上述したガイド機構6の摩耗を、さらに確実に抑制することができる。
【0048】
コアレスリニアモータ8は、支持部材5の下方において、一対(2個)のガイド機構6・6の間に配置されている。
また、コアレスリニアモータ8は、図4に示すように、これら一対のガイド機構6・6に対して、切り込み方向後方Bb側に配置されている。
これにより、冷却または洗浄のための液体が、加工具100に使用される場合であっても、この液体がコアレスリニアモータ8に付着することを防止できる。
【0049】
コアレスリニアモータ8は、固定子81と、可動子82とを備える。
【0050】
固定子81は、基台11に固定されている。
固定子81は、複数の磁石81a・81a・・・と、これら複数の磁石81a・81a・・・を支持する取付座81bとを有する。
【0051】
取付座81bは、図1に示すように、上下方向に間隔をおいて配置される一対の支持部(第1支持部81b1及び第2支持部81b2)と、これら一対の支持部を連結する連結部81b3とを有する。
【0052】
第1支持部81b1及び第2支持部81b2は、正面視において、連結部81b3から、それぞれ水平方向、且つ一方向(本実施形態においては、右方向)に突出するように設けられている。
また、第1支持部81b1及び第2支持部81b2は、それぞれ複数の磁石81a・81a・・・を支持している。
そして、連結部81b3は、これらの第1支持部81b1及び第2支持部81b2を、上下方向に離間させた状態で支持している。
【0053】
一対の支持部において、第1支持部81b1は上側に配置され、第2支持部81b2は下側に配置されている。
第1支持部81b1と第2支持部81b2との間には、可動子82が挿入される溝部が形成されている。
上記溝部は、水平方向に開口し、且つ切り込み方向Bに沿って延びている。
【0054】
第1支持部81b1は、支持部材5に接触することなく、当該支持部材5の下方に位置する。また、第2支持部81b2は、基台11に固定されている。
これらの第1支持部81b1及び第2支持部81b2は、切り込み方向Bにおいて、互いに隣り合う磁石81a・81aの極性が相互に異なるように、複数の磁石81a・81a・・・を支持している。
即ち、各支持部(第1支持部81b1または第2支持部81b2)に支持される複数の磁石81a・81a・・・は、切り込み方向Bにおいて、N極の磁石81aとS極の磁石81aとが、順に交互に並ぶように配列されている。
【0055】
第1支持部81b1に支持される複数の磁石81a・81a・・・と、第2支持部81b2に支持される複数の磁石81a・81a・・・とは、上下方向において対向している。
また、各支持部(第1支持部81b1または第2支持部81b2)は、上下方向において対向する磁石81a・81aの極性が異なるように、複数の磁石81a・81a・・・を支持している。
即ち、例えば第1支持部81b1に支持されるN極の磁石81aは、第2支持部81b2に支持されるS極の磁石81aと対向する。
【0056】
可動子82は、固定子81の上記溝部(第1支持部81b1と第2支持部82b2との隙間)に挿入される電機子巻線82aと、電機子巻線82aを保持する保持部82bとを有する。
【0057】
電機子巻線82aは、複数のコイルを有するとともに、モールド樹脂により被覆されている。
一方、保持部82bは、固定子81の上記溝部に電機子巻線82aを挿入した状態で、当該溝部の外側において、電機子巻線82aの一端部を保持する。
【0058】
そして、保持部82bの上端部は、支持部材5の下面に固定されている。
このように、電機子巻線82aは、鉄心(コア)にコイルを巻回することなく構成されるため、コアと磁石の吸引により動作抵抗が上がったり、コギングが発生したりすることも抑制できる。
【0059】
検出器9は、例えばリニアエンコーダにより構成される。
本実施形態においては、検出器9として、磁気式のリニアエンコーダを例示するが、光学式のリニアエンコーダ等を用いてもよい。
【0060】
検出器9は、支持部材5の上面に固定される磁気センサ91と、支持部材5に近接して設けられた構造物Mに固定される磁気スケール92とを有する。
そして、図3に示すように、検出器9は、支持部材5の移動に伴って、磁気センサ91が磁気スケール92に対する位置を読み取ることにより、切り込み方向Bにおける加工具100の位置を検出することができる。
【0061】
制御部10は、例えばサーボアンプやドライバ等によって構成されており、図5に示すように、コアレスリニアモータ8、検出器9、及び制御装置4と電気的に接続されている。
また、制御部10は、コアレスリニアモータ8の電流値(または電圧値)、及び検出器9による検出値に基づき、切り込み方向Bにおける加工具100の移動速度、及び/または押圧力を一定に維持するための、フィードバック制御を実行する。
なお、制御部10は、検出器9による検出値に基づき、基台11に対する加工具100の位置を一定に維持するための、フィードバック制御を行うことも可能である。
【0062】
そして、制御部10は、加工具100の移動速度、及び/または押圧力についての目標値を、指令信号として制御装置4から受信すると、上記フィードバック制御を実行しながら、コアレスリニアモータ8に適宜電気信号(駆動信号)を送信し、切り込み方向Bにおける加工具100の移動速度、及び/または押圧力が、当該目標値にて一定に維持されるように、コアレスリニアモータ8の駆動を制御する。
【0063】
なお、本実施形態において、加工具100の押圧力は、加工具100が切り込み方向Bに沿って移動する速度、加工具100の板ガラスGに対する加工代、及び加工具100の回転速度等から演算により求められる。
つまり、制御部10は、本発明に係る、加工具100に作用する圧力を測定する圧力測定装置としての機能を兼ね備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧力センサ等の検出器を、別途設けることとしてもよい。
【0064】
このような、加工具100に作用する圧力測定を可能とする機能を備えることにより、本実施形態における板ガラス加工装置1によれば、板ガラスGの端面を加工する場合において、制御部10によるフィードバック制御によって、加工具100に作用する圧力を、より加工に適した圧力に設定することができ、高品質な板ガラスGを得ることができる。
【0065】
基台11は、例えば矩形状の平板部材からなり、図1に示すように、支持部材5の下方において、略水平状に配置される。
なお、基台11の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えばブロック形状や、その他の各種形状に構成されていてもよい。
【0066】
そして、基台11は、上面11aにおいて、オイルバス71の底面を介して、ガイド機構6の固定レール61を固定するとともに、コアレスリニアモータ8の固定子81を固定する。
【0067】
制御装置4は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、モニタ、入出力インターフェース等の各種ハードウェアを実装するコンピュータ(例えばPC)等によって構成される。
制御装置4は、回転駆動装置2による加工具100の始動、停止、及び回転速度の制御を実行する。
また、後述するように、制御装置4は、制御部10からの信号に基づいてコアレスリニアモータ8を駆動し、加工具100の切り込み位置、切り込み方向Bにおける加工具100の移動速度、及び板ガラスGの端面に対する加工具100の押圧力等を制御する。
【0068】
[板ガラスの製造方法]
次に、前述した板ガラス加工装置1によって実施される板ガラスの製造方法について、図6を用いて説明する。
【0069】
本実施形態によって具現化される板ガラスの製造方法は、所望の外形寸法からなる板ガラスGを製造する方法であって、例えば、公知のフロート法やダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法)等によって成形された大型の板ガラス原板(成形原板)より、予め所定寸法に切断された板ガラスGの端面に対して、研削加工(面取り加工)や研磨加工等の端面加工を行うものである。
板ガラスの製造方法は、主に、以下に示す動作手順に従い、板ガラス加工装置1を可動させることにより実施される。
【0070】
まず始めに、板ガラスGの端面加工の開始前において、板ガラス加工装置1は初期状態となっており、加工具100は、移動する板ガラスGの端面に対して、切り込み方向後方Bb側に十分退避した退避位置X1にて、保持された状態となっている。
また、加工具100は、軸心を中心にして、所定の回転速度によって回転駆動された状態となっている。
【0071】
図6(a)において、加工対象となる板ガラスGが、板ガラス加工装置1の近傍(具体的には、板ガラス加工装置1に対して、送り方向Aの上流側の所定位置S1)に到達すると、制御装置4は、サーボ機構3に電気信号(指令信号)を送信し、当該サーボ機構3を可動させる。
その結果、加工具100は、制御部10によるフィードバック制御によって、退避位置X1から切り込み方向前方Bfに向かって変位され、所定の停止位置X2(板ガラスGの端面と当接可能な位置)にて一定に保持される。
【0072】
その後、板ガラスGの端部における、送り方向Aの下流側(左側)の先端が、加工具100と当接すると、制御部10によるフィードバック制御が切替わり、加工具100の移動速度、及び/または押圧力が、一定に保持される。
また、板ガラスGは、加工具100に当接された後、引き続き、送り方向Aに向かって移動される。
これにより、図6(b)に示すように、板ガラスGの端面加工が実行される。
【0073】
そして、図6(c)に示すように、板ガラスGの端部における、送り方向Aの上流側(右側)の先端が、加工具100を通過し、当該板ガラスGの端面加工の実行が終了すると、制御装置4は、再びサーボ機構3に電気信号(指令信号)を送信し、当該サーボ機構3を可動させて、加工具100を退避位置X1に変位させる。
これにより、板ガラス加工装置1は、再び初期状態に復帰され、板ガラスGの端面加工における一連の動作手順が終了する。
そして、新たな板ガラスGが、板ガラス加工装置1の上記近傍に到達すると、上述した一連の動作手順が再び繰り返され、板ガラスGの端面加工は、引き続き継続される。
【0074】
以上のように、本実施形態における板ガラス加工装置1は、板ガラスGの端面に加工具100を押し当てながら、当該板ガラスGの端面を加工する板ガラス加工装置であって、加工具100の押し当て方向(切り込み方向前方Bf)の移動を案内するガイド機構6と、ガイド機構6に対して潤滑剤Pを間断なく供給する潤滑剤供給装置7とを備える構成となっている。
【0075】
このような構成を有することにより、例えばクロスローラガイド等によってガイド機構6が構成されており、板ガラスGの端面に加工具100を押し当てながら加工するために、固定レール61及び/または移動レール62上の略同一の位置に複数のローラ63・63・・・が留まり易く、当該固定レール61及び/または移動レール62に局所的な摩耗が発生し易い場合であっても、潤滑剤供給装置7によって、ガイド機構6に潤滑剤を間断なく供給することにより、このような摩耗の発生を低減することができる。
【0076】
また、本実施形態における板ガラスの製造方法は、板ガラスGの端面に沿って、当該板ガラスGと加工具100とを相対的に移動させつつ、加工具100を板ガラスGに押し当てて、板ガラスGの端面を加工する板ガラスの製造方法であって、加工具100の押し当て方向の移動(切り込み方向前方Bf)を案内するガイド機構6と、ガイド機構6を収容可能に構成されたオイルバス71と、オイルバス71内に収容され、ガイド機構6の少なくとも一部と触れる潤滑剤Pとを備える構成となっている。
【0077】
このような構成を有することにより、オイルバス71内に収容された潤滑剤Pに、ガイド機構6の少なくとも一部を浸して触れさせることで、当該ガイド機構6に対して、潤滑剤Pを間断なく安定して供給することができ、上述したガイド機構6の摩耗を、より確実に抑制することができる。
【0078】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0079】
1 板ガラス加工装置
6 ガイド機構
61 固定レール
62 移動レール
63 ローラ(転動体)
7 潤滑剤供給装置
71 オイルバス
100 加工具
101 速度押圧力・位置制御装置(圧力測定装置)
G 板ガラス
P 潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6