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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074519
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】角部材及び土留構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/08 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
E02D17/08 A
E02D17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185734
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
(72)【発明者】
【氏名】大西 史記
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044AA03
2D044AA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】角部材を有する土留構造物において、十分な強度を確保できる角部材及び当該角部材を備える土留構造物を提供する。
【解決手段】複数の土留パネル10のうち2つの土留パネル10の第1方向同士を交差させた状態で、2つの土留パネル10を接続する角部材30であって、第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように接続された角接続部材と、2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、第1方向に沿って配置された2つのパネル本体と、2つの土留パネル10が接続される板状の2つの縦フランジ部と、平板部及び縦フランジ部に接合された補強部材25と、を備え、補強部材は、第1方向と第2方向との両方に垂直な第3方向を規定したときに、角接続部材の2つの平板部の一方及び2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向の少なくとも一方から接合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物に用いられ、前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、前記2つの土留パネルを接続する角部材であって、
接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように接続された角接続部材と、
前記第1断面において前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、
板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置された2つのパネル本体と、
前記2つの土留パネルが接続される板状の2つの縦フランジ部と、
前記角接続部材の前記2つの平板部のうち一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に接合された補強部材と、を備え、
前記2つのパネル本体のそれぞれは、
第1方向に垂直な一方の端面が前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれの板面に接合され、第1方向に垂直な他方の端面が前記2つの縦フランジ部のうち一方の板面に接合され、
前記補強部材は、
第1方向と第2方向との両方に垂直な第3方向を規定したときに、
前記角接続部材の前記2つの平板部の一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向の少なくとも一方から接合される、角部材。
【請求項2】
前記補強部材は、
第2方向に垂直な横部材と、
第3方向に垂直な縦部材と、を備え、
前記横部材と前記縦部材とが接続されて第1方向に垂直な断面形状がL字形に形成され、
前記角接続部材の前記2つの平板部の一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向から接合される、請求項1に記載の角部材。
【請求項3】
前記横部材は、
貫通孔が形成されている、請求項2に記載の角部材。
【請求項4】
前記2つのパネル本体のそれぞれは、
第2方向の両端に前記壁面に対し反対方向に突出する横フランジ部を備え、
前記横部材は、
前記横フランジ部に平行に配置され、
前記横部材に設けられた貫通孔は、
前記横フランジ部に設けられた貫通孔に対応した位置に設けられている、請求項3に記載の角部材。
【請求項5】
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Cとしたときに、
前記角補強部材と前記2つの平板部とを接合する溶接部は、
前記領域Cに少なくとも一部が重なるように配置されている、請求項1~4の何れか1項に記載の角部材。
【請求項6】
前記角補強部材は、
前記2つの平板部の先端部に沿って対向する2つの外周縁が配置され、板面を前記2つの平板部の接続部に対向させた鋼板である、請求項5に記載の角部材。
【請求項7】
前記角補強部材は、
複数の角補強部材を含み、
前記複数の角補強部材のそれぞれは、
前記溶接部を備える、請求項5に記載の角部材。
【請求項8】
前記複数の角補強部材のそれぞれは、
前記第1断面において互いに平行に配置され、端縁が前記2つの平板部のそれぞれに接合されている、請求項7に記載の角部材。
【請求項9】
前記角接続部材は、
前記第1断面における断面形状が矩形である鋼管であり、断面形状の矩形を構成する4つの辺のうち隣合う2つの辺を前記2つの平板部が構成する、請求項1~4の何れか1項に記載の角部材。
【請求項10】
前記角補強部材は、
板面を高さ方向に向けて配置した鋼板である、請求項5に記載の角部材。
【請求項11】
前記角補強部材は、
長手方向を第3方向に交差させ、前記平板部の先端に溶接された棒鋼である、請求項5に記載の角部材。
【請求項12】
請求項1~4の何れか1項に記載の角部材を備える、土留構造物。
【請求項13】
地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物であって、
前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、当該2つの土留パネルを接続する角部材を備え、
前記複数の土留パネルは、
板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置されたパネル本体と、
前記パネル本体の第1方向の両端に接合された縦フランジ部を備え、
前記角部材は、
接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように形成された角接続部材と、
前記第1断面における前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、を備え、
前記2つの土留パネルは、
前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれに連結され、
前記縦フランジ部の外周縁のうち第2方向を向いた部分と第3方向を向いた部分とに接合された補強部材を備える、土留構造物。
【請求項14】
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Cとしたときに、
前記角補強部材は、
前記領域Cに配置されている、請求項13に記載の土留構造物。
【請求項15】
前記角補強部材は、
板面を高さ方向に向けて配置した鋼板である、請求項13又は14に記載の土留構造物。
【請求項16】
前記角補強部材は、
長手方向を第2方向に交差させるように配置され、前記平板部の先端に溶接された棒鋼である、請求項13又は14に記載の土留構造物。
【請求項17】
前記2つの土留パネルの前記縦フランジ部及び前記角接続部材の前記平板部は、
互いに対応する位置に連結孔が形成されており、ボルト及びナットにより連結されている、請求項13又は14に記載の土留構造物。
【請求項18】
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Cとしたときに、
前記連結孔は、
前記領域Cに配置される、請求項17に記載の土留構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に構築される土留構造物であって、複数の土留パネルを角部材で接続した土留構造物の角部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の基礎を構築するための立坑、地中に構築される集水井、斜面の擁壁などの土木構造物は、土留パネルを接続して環状又は馬蹄形(U字形、コの字形)に壁を形成して構成された土留構造物により構成される。
【0003】
このような土留構造物は、土留パネルがそれぞれ軽量であり、山間部等の大型の重機が使用できない現場においても、人力での施工が容易であるという利点がある。例えば、立坑を構築するにあたっては、作業者が立坑の中に入り土留パネルを連結する作業を行うことができる。土留構造物は、複数の土留パネルを組み合わせて環状体を形成し、その環状体を当該環状体の中心軸方向に複数接続して構成されている。そして、複数の土留パネルがそれぞれ千鳥状に配置されることにより、土留構造物全体の強度を確保している。
【0004】
特許文献1に開示されている土留構造物は、平面視において直線状の複数の直線部ライナープレートを、L字状の複数の角部ライナープレートを用いて接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-48574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、角部ライナープレート(角部材)は、角部に配置された山形鋼(角接続部材)を備え、複数の直線部ライナープレートを接続する。ライナープレートは、周囲の地盤から荷重を受けて、山形鋼の先端部同士が開く方向に変形が生じてしまう。また、ライナープレートに内側から荷重が掛かった場合には、山形鋼の先端部同士が近づく方向に変形が生じてしまう。角部材に用いる山形鋼にライナープレートに掛かった荷重が集中して山形鋼が変形を生じることにより、土留構造物の形状が維持できないため、角部材は山形鋼の先端部が変形しないように板状の角補強部材を設け、かつ角補強部材と山形鋼とを溶接し、角補強部材と山形鋼を部分的に溶接することにより、溶接によるひずみが発生しにくく、角部材の加工時間の増加を抑えるように構成されている。しかし、山形鋼の部分の強度を高くした場合、山形鋼に接合されているライナープレート(パネル本体)の強度が相対的に低くなり、変形が生じてしまうという課題があった。
【0007】
また、直線部ライナープレートを強化のため、直線部ライナープレートの両端の縦フランジ部に例えば断面形状がL字形の補強部材を接合することが考えられる。このとき、角部ライナープレートの山形鋼(角接続部材)は、上記の様に強度が確保されているが、山形鋼に接合されているライナープレート(パネル本体)の強度が相対的に低く、角部材が変形してしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、角部材を有する土留構造物において、十分な強度を確保できる角部材及び当該角部材を備える土留構造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る角部材は、地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物に用いられ、前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、前記2つの土留パネルを接続する角部材であって、接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように接続された角接続部材と、前記第1断面において前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置された2つのパネル本体と、前記2つの土留パネルが接続される板状の2つの縦フランジ部と、前記角接続部材の前記2つの平板部のうち一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に接合された補強部材と、を備え、前記2つのパネル本体のそれぞれは、第1方向に垂直な一方の端面が前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれの板面に接合され、第1方向に垂直な他方の端面が前記2つの縦フランジ部のうち一方の板面に接合され、前記補強部材は、第1方向と第2方向との両方に垂直な第3方向を規定したときに、前記角接続部材の前記2つの平板部の一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向の少なくとも一方から接合される。
【0010】
また、本発明に係る土留構造物は、上記の角部材を備える。
【0011】
また、本発明に係る土留構造物は、地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物であって、前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、当該2つの土留パネルを接続する角部材を備え、前記複数の土留パネルは、板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置されたパネル本体と、前記パネル本体の第1方向の両端に接合された縦フランジ部を備え、前記角部材は、接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように形成された角接続部材と、前記第1断面における前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、を備え、前記2つの土留パネルは、前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれに連結され、前記縦フランジ部の外周縁のうち第2方向を向いた部分と第3方向を向いた部分とに接合された補強部材を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、角部材は、補強部材により補強されているため、地盤から受けた荷重が集中しても変形を抑制できるため、土留構造物の形状を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る土留構造物100の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る土留パネル1010の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る土留パネル1010のパネル本体14の断面図である。
図4】実施の形態1に係る土留パネル10の斜視図である。
図5】実施の形態1に係る土留パネル10の断面図である。
図6】実施の形態1に係る土留構造物100の角部材1030の斜視図である。
図7】実施の形態1に係る土留構造物100の角部材1030の斜視図である。
図8】実施の形態1に係る土留構造物100の角部材30の斜視図である。
図9】実施の形態1に係る角部材30の断面図である。
図10】実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32の溶接部36の配置図である。
図11】実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32及び角補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。
図12】実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32及び角補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。
図13】実施の形態1に係る土留パネル10、1010などに用いられるパネル本体14の断面形状の一例である。
図14】実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32の配置の変形例の説明図である。
図15】実施の形態2に係る土留構造物100の角部材230の断面図である。
図16】実施の形態3に係る角部材330の斜視図である。
図17】実施の形態3に係る角部材330の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る土留構造物及び角部材について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、前、後、表及び裏等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0015】
実施の形態1.
[土留構造物100]
図1は、実施の形態1に係る土留構造物100の斜視図である。土留構造物100は、例えば構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものであって、地盤92を掘削して形成された縦穴の内部に構築されるものである。図1に示されている土留構造物100は、一例として、比較的小規模の基礎を地盤92に形成するための構造物であって、平面視において、複数の土留パネル10を角部材30により矩形に接続して形成された一段の土留ユニット50から構成される。以下の説明において、土留構造物100の外側を地盤92、内側を空間部93と呼ぶ。なお、実施の形態1において、土留構造物100は、地盤92に対し垂直方向、即ちz方向の視点において、矩形であるが、矩形に限定するものではない。土留構造物100は、例えば、平面視において、円形、長円形、楕円形、矩形、小判形の環状に形成してもよい。また、土留構造物100は、平面視において馬蹄形又はコ字形などの半環状体に形成することもできる。土留ユニット50が半環状体である場合は、土留ユニット50の中心軸cは、平面視したときの土留ユニット50の重心を通り、土留ユニット50が設置された地盤92に垂直方向に延びる軸を中心軸cと見なすことができる。なお、図に示すx及びy方向は、土留構造物100が設置される地盤92の表面に沿った方向であり、z方向は立坑の深さ方向であり、z方向逆向きが土留構造物の高さ方向である。
【0016】
実施の形態1において、土留構造物100は、1段の土留ユニット50により形成されているが、土留ユニット50を高さ方向に積み上げて接続して形成されていても良い。また、土留構造物100は、1段の土留ユニット50を構築した後に地盤92に固定され、立坑の深さ方向に新たな土留ユニット50を連結して形成されても良い。土留構造物100は、立坑の深さに応じて地盤92から受ける荷重が変化するため、深さに応じて強度の異なる土留ユニット50を連結して、全体的な強度を確保している。つまり、土留構造物100は、以下に説明する土留パネル及び角部材を適宜組み合わせて必要な強度を確保している。
【0017】
図1に示される土留ユニット50は、例えば駅のプラットフォームを支える基礎などの比較的小規模の基礎を設置する場合に、地盤92を略矩形に掘削して形成された立坑の掘削壁面95(図3図5参照)に沿って設置される。この場合、小規模の基礎の場合、立坑の深さは、比較的浅く、土留パネル10がz方向に1段のみ配置できる程度である。そのため、土留ユニット50は、その周方向に複数の土留パネル10を、ボルト及びナットなどの連結部材40を用いて連結して形成されている。また、図1の土留構造物100は、矩形の各辺が短いため、各辺に土留パネル10が2つずつ配置され、それらの複数の土留パネル10を角部材30で連結している。なお、土留ユニット50は、各辺に土留パネル10が2つずつ配置されたものに限定されず、各辺に1つ又は2つよりも多い土留パネル10を有するもの、又は角部材30のみで構成されるものであってもよい。
【0018】
角部材30は、両端に土留パネル10が連結する様に構成されたものであり、2つの土留パネル10を交差する方向に向けて接続するものである。ここで、環状体である土留ユニット50において複数の土留パネル10が接続されている方向(環状体の周方向)を第1方向と称する。第1方向は、土留ユニット50の中心軸周りの周方向であり、図1の土留ユニット50であれば、矩形の各辺に沿った方向、つまりx(y)方向及びy(x)方向である。また、角部材30により接続されている2つの土留パネル10のそれぞれの第1方向(つまりx(y)方向及びy(x)方向)に垂直な方向を第2方向と称する。第2方向は、図1のz方向である。また、各土留パネルの10を構成するパネル本体14の面方向を第3方向と称する。ある1つのパネル本体14に着目したときに、第3方向は、第1方向及び第2方向の両方に垂直な方向である。
【0019】
土留ユニット50は、土留パネル10と角部材30とが連結される軸方向連結部11を有する。土留ユニット50を構成する土留パネル10及び角部材30は、それぞれ補強部材25を有している。補強部材25は、軸方向連結部11を構成する縦フランジ部19(図2及び図4などを参照)に接合されており、縦フランジ部19同士が連結部材40により互いに連結されることにより、土留ユニット50を補強している。このように構成されることにより、土留パネル10又は角部材30が地盤92から荷重を受けたときに縦フランジ部19により連結された補強部材25が荷重を受けることができる。
【0020】
[土留パネル10]
図2は、実施の形態1に係る土留パネル1010の斜視図である。図3は、実施の形態1に係る土留パネル1010のパネル本体14の断面図である。図2及び図3は、図1に示す土留パネル10の補強部材25を取り外した状態を示している。つまり、土留パネル10は、図2及び図3に示す土留パネル1010に補強部材25を追加したものである。図3は、土留ユニット50の周方向である第1方向に対し垂直な断面を示しており、図1に示されている土留構造物100の土留ユニット50の中心軸に沿った断面(xz断面又はyz断面)の一例を示している。図3に示されている土留パネル10のパネル本体14は、断面において角が丸められた矩形波状になっており、土留構造物100の外側及び内側に互いに平行な面が形成されている。土留パネル1010は、一例として図3に示されている断面形状を有するパネル本体14を備えるものであるが、パネル本体14の断面形状は変更することができる。例えば、パネル本体14は、波付鋼板に限定されるものではなく平板などであっても良い。なお、土留構造物100は、複数の土留ユニット50を軸方向に重ねて構成されている場合に、一部に補強されていない土留パネル1010を含んでも良い。
【0021】
土留パネル1010は、z方向の両端部に横フランジ部13が形成されており、z方向に接続可能な構造となっている。横フランジ部13は、連結部材40を適用する連結孔13aが形成されている。連結孔13aは、横フランジ部13に複数形成されており、第1方向に等間隔に並べられている。また、2つの横フランジ部13の間には波加工部が形成されている。なお、横フランジ部13に設けられたz方向に貫通する連結孔13aを第2連結孔13aと呼ぶ場合がある。
【0022】
図3に示されている土留パネル1010の台形波形状に形成されているパネル本体14は、図3の断面において、土留ユニット50の内側に突出して位置する凸部16と、土留ユニット50の外側に突出して位置する外側壁部17及び18と、を備える。凸部16と横フランジ部13とを接続する外側壁部18を第1外側壁部18と称し、隣合う2つの凸部16を接続する外側壁部17を第2外側壁部17と称する。実施の形態1に係る土留パネル1010のパネル本体14の断面形状において、凸部16は複数設けられているが、1つであっても良い。例えば図3において凸部16は、2箇所設けられているが、z方向の中央部に1つだけ配置されていても良い。
【0023】
凸部16は、断面において横フランジ部13の面に直交する面を備える内側壁部16aを備える。内側壁部16aと外側壁部17及び18とは、実質的に平行に形成されている。内側壁部16aと外側壁部17及び18との間は、ウェブ部15により接続されている。ウェブ部15は、図3の断面においてy(x)方向に延びる面を有し、y(x)方向に対し若干傾斜している。ウェブ部15の傾斜方向は、パネル本体14を土留ユニット50の中心軸cから見た時に、波形状の谷の部分の開放端が広く、谷底が狭くなる様になっている。このように構成されることにより、パネル本体14は波付けのための塑性加工を行う際に、離型しやすく製造が容易になる。
【0024】
また、ウェブ部15は、図3のy(x)軸に平行に近い角度で成形されることにより、内側壁部16a、外側壁部17及び18の幅が広くなる。これにより、土留パネル1010は、厚さ方向に曲げモーメントが負荷されたときの剛性が高くなる。図1の土留構造物100の土留パネル1010がパネル本体14の面方向、つまりy(x)方向に荷重を受けた場合に、土留パネル1010はy(x)方向に曲げモーメントが負荷される。このとき、土留パネル1010の曲げの中立軸Nについての断面係数は、中立軸Nから遠い内側壁部16a、外側壁部17及び18の幅が広い方が大きくなる。よって、ウェブ部15がy(x)軸に平行に近い角度で構成されることにより、内側壁部16a、外側壁部17及び18のz方向の幅寸法が広くなり、土留パネル1010は、y(x)方向の曲げ荷重に対する強度及び剛性が高くなる。具体的には、ウェブ部15は、内側壁部16a又は外側壁部17及び18に垂直な方向に対し、0°以上20°以下に設定され、さらに望ましくは0°以上3°以下に設定される。
【0025】
なお、図3に示されているパネル本体14は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。内側壁部16a、外側壁部17及び18は、ウェブ部15と同じ板厚で形成されているが、板厚をウェブ部15よりも厚くしても良い。このように構成されることにより、中立軸Nから遠い内側壁部16a、外側壁部17及び18の断面積が大きくなり、土留パネル1010は、断面係数をさらに高くすることができる。
【0026】
図2及び図3に示されている土留パネル1010のz方向の両端部は、横フランジ部13が形成されている。横フランジ部13は、z方向に対し垂直に形成され、平坦な部分に連結孔13aが設けられている。横フランジ部13は、xy方向に平行であり連結部材40が取り付けられる程度の面を有している。
【0027】
土留パネル1010は、土留ユニット50の周方向である第1方向の両端に縦フランジ部19を備える。縦フランジ部19は、板状部材でありパネル本体14の第1方向の端面に溶接により接合されている。縦フランジ部19のz方向の長さは、パネル本体14の幅方向、即ちz方向の長さと実質的に同じである。縦フランジ部19は、板面を貫通する連結孔19aを備える。なお、縦フランジ部19に第1方向に貫通して設けられた連結孔19aを第1連結孔19aと呼ぶ場合がある。図1に示されるように、連結孔19aは土留パネル1010と他の土留パネル1010又は角部材30とを土留ユニット50の周方向に連結する際にボルト及びナットなどの連結部材40を通すための孔である。
【0028】
連結孔19aは、パネル本体14の波形状に対応して設置されており、具体的には、パネル本体14の外側壁部17及び18のそれぞれのy(x)方向に並べて配置されている。また、連結孔19aは、外側壁部17及び18よりも土留ユニット50の内側に配置されている。このように構成されることにより、作業者は、土留構造物100が設置される立坑の内側から土留パネル1010の連結作業が可能となる。
【0029】
なお、縦フランジ部19の構造は、パネル本体14の断面形状がサインカーブ形状などの他の形状であっても基本的には同様である。つまり、サインカーブ形状の断面形状を有する土留パネル1010であれば、土留パネル1010を土留ユニット50の内側から見たときの谷部である外側壁部17b及び18(図13参照)に対応した位置に連結孔19aが配置される。図3に示す断面形状を有する土留パネル10の場合は、連結孔19aは、土留構造物100の内側から見たときに谷部となっている外側壁部17及び18の位置に対応して、縦フランジ部19に3つ配置される。
【0030】
図4は、実施の形態1に係る土留パネル10の斜視図である。図5は、実施の形態1に係る土留パネル10の断面図である。土留パネル10は、上記において説明した土留パネル1010のz方向の両端に補強部材25を追加したものである。補強部材25は、yz平面に平行な断面においてL字形の部材であり、パネル本体14の横フランジ部13の面に沿って横部材25bが配置され、縦部材25cがパネル本体14の外側に配置されている。補強部材25は、横部材25b及び縦部材25cをL字形に組み合わせた構造になっており、2つの板材を溶接して形成されたビルド方式によって形成されたものであっても、ロール成形により断面形状がL字形に成形されたものであっても良い。
【0031】
補強部材25は、縦フランジ部19の外周縁に対し外側から接合されている。横部材25bは、縦フランジ部19のz方向及びz方向逆向きの外周縁に外側から当接され、溶接などの接合手段により固定されている。縦部材25cは、縦フランジ部19のy(x)方向側を向いた外周縁に外側から当接され、接合されている。図5に示す点線pは、補強部材25が外側から縦フランジ部19に接合されるときの縦フランジ部19の外周縁を示している。
【0032】
また、補強部材25は、縦フランジ部19に対し、板面に垂直方向から当接した状態で接合されていても良い。この場合、縦フランジ部19は、図5に示す二点鎖線qに示した外形に設定される。なお、補強部材25は、縦フランジ部19以外にもパネル本体14の横フランジ部13に溶接されていても良い。
【0033】
[角部材1030]
図6及び図7は、実施の形態1に係る土留構造物100の角部材1030の斜視図である。角部材1030は、z方向から見たときにL字形の角接続部材31と、土留パネル10のパネル本体14と同じ構造のパネル本体14と、パネル本体14の第1方向(周方向)の端面に接合された縦フランジ部19と、を備える。角部材1030は、縦フランジ部19に土留パネル1010が連結され、土留構造物100の角部を形成するものである。実施の形態1において、角部材1030は、2つの土留パネル1010を直交するように接続するが、直角以外の角度で接続しても良い。図6及び図7は、図1に示す角部材1030の補強部材25を取り外した状態と同じ構造を示している。つまり、図1の角部材30は、図6及び図7に示す角部材1030に補強部材25を追加したものである。なお、土留構造物100は、複数の土留ユニット50を軸方向に重ねて構成されている場合に、一部に補強されていない角部材1030を含んでいても良い。また角部材1030が含まれる土留ユニット50は、角部材1030の間に土留パネル1010を連結して構成されていても良い。
【0034】
角部材1030のパネル本体14は、第1方向の長さ以外は土留パネル10及び1010のパネル本体14と同じ形状になっており、サインカーブ形状などの波形に形成されても良い。パネル本体14の長さは、適宜変更することができる。
【0035】
角接続部材31は、z方向から見たときにL字形に形成されており、平板部33を直交して接続した形状になっている。平板部33は、板状であり、長手方向がz方向に延びている。平板部33にはパネル本体14の一方の端面が溶接等により接合されている。角接続部材31の2つの平板部33の先端部35は、角補強部材32が接合されている。角補強部材32は、板状部材であり、図6に示すように、長手方向がz方向に延びている。角補強部材32は、角接続部材31の先端部35同士を接続するように配置されることにより、平板部33の先端部35同士が開く方向に変形するのを抑制する部材である。
【0036】
図8は、実施の形態1に係る土留構造物100の角部材30の斜視図である。図9は、実施の形態1に係る角部材30の断面図である。角部材30は、上記において説明した角部材1030のz方向の両端に補強部材25を追加したものである。補強部材25は、土留パネル10が備えるものと同様に、yz平面に平行な断面においてL字形の部材であり、パネル本体14の横フランジ部13の面に沿って横部材25bが配置され、縦部材25cがパネル本体14の外側に配置されている。
【0037】
補強部材25は、縦フランジ部19及び角接続部材31の平板部33の外周縁に接合されている。横部材25bは、角接続部材31の平板部33のz方向及びz方向逆向きの外周縁に外側から当接され、溶接などの接合手段により固定されている。縦部材25cは、角接続部材31の平板部33のy(x)方向側を向いた外周縁に外側から当接され、接合されている。補強部材25と縦フランジ部19とは、上記で説明した土留パネル10と同様に接合されている。補強部材25は、縦フランジ部19以外にもパネル本体14の横フランジ部13に溶接されていても良い。
【0038】
図8及び図9においては、補強部材25は、縦フランジ部19及び角接続部材31の平板部33の外周縁に対し外側から接合されているが、板面方向から接合されていても良い。この場合、角接続部材31の平板部33の外形は、図5に示す縦フランジ部19の外形(二点鎖線q)と同様な大きさに設定される。
【0039】
[パネル本体14の形状と溶接部36との位置関係について]
図10は、実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32の溶接部36の配置図である。角補強部材32は、2つの平板部33の先端部35に溶接されている。溶接部36は、複数の溶接部36a、36b及び36cを含む。角補強部材32の溶接部36は、複数に分割されて配置されていることにより、溶接による製造コストを低減するとともに、溶接による変形を抑えることができる。また、角接続部材31の平板部33は、平板部33に接合されているパネル本体14が受ける荷重が伝達され、2つの平板部33が開くように変形する。また、角部材30は、角接続部材31に補強部材25が接合されているため、補強部材25が受ける荷重が伝達され2つの平板部33が開くように変形する。
【0040】
角補強部材32の溶接部36は、2つの平板部33の先端部35が引っ張られて開くように変形する箇所に設けられていれば良い。パネル本体14が地盤92から荷重を受けたときに、パネル本体14の外側壁部17及び18は、角接続部材31の平板部33の先端部35に接合されているため、角接続部材31の先端部35を引っ張り、2つの先端部35が開くように変形させる。そのため、溶接部36は、図10に示すように、z方向における位置をパネル本体14の外側壁部17及び18に対応する位置に配置すると良い。具体的には、溶接部36a及び36cは、土留ユニット50の周方向、即ち第1方向において外側壁部18に少なくとも一部が並列するように配置されている。また、溶接部36bは、環状体である土留ユニット50の周方向、即ち第1方向において外側壁部17に少なくとも一部が並列するように配置されている。
【0041】
換言すると、溶接部36aは、z方向において、図3に示す領域a1に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36aは、図3の領域aa1に重なるように位置すると良い。また、溶接部36bは、z方向において、図3に示す領域a2に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36bは、図3の領域aa2に重なるように位置すると良い。溶接部36cは、z方向において、図3に示す領域a3に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36cは、図3の領域aa3に重なるように位置すると良い。
【0042】
溶接部36aは、図3に示す領域a1を全て含むように配置することもできるが、少なくとも領域a1に部分的に重なるよう配置されていれば、外側壁部18からの荷重を溶接部36aを介して角補強部材32に伝達することができる。溶接部36bと領域a2、溶接部36cと領域a3も、溶接部36aと領域a1の関係と同様に配置される。なお、溶接部36は、領域Bに重なっても良いが、領域Bに相当する部分の角補強部材32は溶接されていなくともよい。なお、領域a1~a4、aa1~aa4を総称して領域Aと称する場合がある。z方向における溶接部36は、z方向、即ち角接続部材31の高さ方向(z方向)において、領域Aに少なくとも一部が配置される。領域Aは、パネル本体14の波形のうち、土留パネルの波形の中立線よりも角接続部材の平板部の自由端が位置する側に突出した部分が、2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に対し垂直である高さ方向において位置する範囲である。
【0043】
[補強部材25と溶接部36との位置関係について]
角部材30は、補強部材25を有しており、補強部材25がパネル本体14を補強するように設置される。補強部材25の縦部材25cは、角接続部材31の平板部33の先端部35のz方向の両側の端部に接合されているため、補強部材25が地盤92から荷重を受けたときに、角接続部材31の先端部35を引っ張り、2つの先端部35を開くように変形させる。よって、溶接部36は、z方向における位置を補強部材25の縦部材25cの接合箇所(図5に示されている領域C)に対応させて配置されると良い。具体的には、溶接部36a及び36cは、角補強部材32のz方向の両端部に設置されることが望ましい。
【0044】
補強部材25がL字形に形成されており、角接続部材31のz方向の両側の外周縁に横部材25bが接合されているため、溶接部36は、角補強部材32のz方向の両端を含む領域に配置されていることが望ましい。または、溶接部36は、少なくとも、z方向において補強部材25の縦部材25cが接合されている領域C(図5参照)と部分的に重なる様に配置されると良い。
【0045】
溶接部36が補強部材25と対応する位置に配置されることにより、角接続部材31を介して接続される2つの補強部材25が、より直接的に角補強部材32を介して接続されるため、角部材30の全体的な強度が向上する。また、角補強部材32の溶接部36を補強部材25が配置されている周辺のみに限定すれば、溶接作業を低減しつつ強度の確保も可能になる。なお、図10に示されているz方向の中央部に配置されている溶接部36bは、パネル本体14のz方向の中央部にある外側壁部17に合わせて配置されていても良いが、必要に応じて廃止することもできる。
【0046】
さらに、溶接部36は、パネル本体14の形状に合わせ、かつ補強部材25の接合位置(領域C)に合わせて配置されることにより、角部材30の強度をさらに向上させることができる。
【0047】
図11は、実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32及び角補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。変形例に係る角部材30Aは、図10に示す角部材30の角補強部材32のz方向の両端を、角接続部材31のz方向の長さよりも短くなるようにしたものである。角補強部材32Aは、両端部が角接続部材31よりも短くなっているが、溶接部36がz方向において占める範囲としては、溶接部36a~36cが補強部材25の平板部33に接合されている範囲と対応するように配置されていることが望ましい。特に、溶接部36a及び36cは、それぞれ角補強部材32のz方向の両端37を含む様に設定されるのが望ましい。図11の角部材30Aによれば、角補強部材32Aを小さくできるため、重量を低減でき、使用する材料も削減できる。
【0048】
図12は、実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32及び角補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。図12に示される角部材30Bは、角補強部材32が複数の角補強部材32a~32cに分割されており、それぞれに溶接部36a~36cが配置されている。複数の角補強部材32a~32cは、板面を角接続部材31の平板部33の接続部に向けている。つまり、角補強部材32a~32cのそれぞれは、板面がz方向に沿うように配置されている。このように構成されることにより、角補強部材32a~32cは、さらに材料の使用量を削減でき、軽量化でき、効率よく角部材30の強度を向上できる。また、角補強部材32a及び32cは、z方向において補強部材25と対応する位置に配置されていることが望ましい。つまり、角補強部材32a及び32cは、z方向において角接続部材31の端に極力近い位置に配置されることが望ましい。また、図12において、角補強部材32a及び32cが、z方向において補強部材25が接合されている範囲に配置されていれば、z方向の中央に配置されている角補強部材32bは、廃止することもできる。
【0049】
図13は、実施の形態1に係る土留パネル10、1010などに用いられるパネル本体14の断面形状の一例である。図12に示す角部材30Bは、z方向において3箇所に角補強部材32a~32c及び溶接部36a~36cが配置されているが、配置される数量は限定されない。例えば、パネル本体14の断面形状が図13のようにサインカーブ状で、第1方向に垂直な断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分が4箇所あるような場合は、角補強部材32又は溶接部36は、領域a1~a4に合わせて4箇所配置されていても良い。また、例えば、パネル本体14の断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分が2箇所である場合には、その突出している部分に対応して2箇所に角補強部材32又は溶接部36を配置しても良い。なお、角補強部材32又は溶接部36は、パネル本体14の断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分の数に一致している必要はなく、補強部材25に対応する位置のみに設けられていても良い。
【0050】
図14は、実施の形態1に係る角部材30の角補強部材32の配置の変形例の説明図である。角部材30Cは、角部材30、30A及び30Bに対しさらに角補強部材32Aを追加したものである。角補強部材32Aは、角補強部材32よりも角接続部材31の2つの平板部33の接続部に近い位置に配置され、角補強部材32と平行に配置されている。角補強部材32Aと角接続部材31との溶接部36は、上記において説明した角補強部材32と同様に設定されると良い。ただし、角補強部材32及び32Aの溶接部36の設定は同一である必要はなく、溶接部36の配置を異なるものにしても良い。
【0051】
実施の形態1に係る角部材30の製造方法を図8に基づいて説明する。角部材30は、まず、角接続部材31と補強部材25と縦フランジ部19とを組み合わせて接合する。角接続部材31と補強部材25と縦フランジ部19とは、中央部が空いた枠体に形成される。
【0052】
角接続部材31と補強部材25と縦フランジ部19とから形成された中央部が空いた枠体の内側に、パネル本体14が嵌め込まれる。パネル本体14が所定の位置に配置されたら、パネル本体14と縦フランジ部19及び角接続部材31の平板部33とが接合される。補強部材25とパネル本体14とは、必要に応じ接合される。
【0053】
以上の工程において、接合は溶接にて行われるが、ろう付けなど他の接合手段を用いても良い。また、角部材30は、2つのパネル本体14を備えるため、製造工程において2つの枠体を形成する工程とそれぞれの枠体にパネル本体14を嵌める工程が生じるが、各枠体の形成、パネル本体14の枠体への嵌め込み、及びパネル本体14の溶接は並行して行っても良いし、一方のパネル本体14に関する工程が完了してから、他方のパネル本体14についての工程を行っても良い。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2に係る土留構造物100について説明する。土留構造物100は、実施の形態1に係る土留構造物100を構成する角部材30の構造を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図15は、実施の形態2に係る土留構造物100の角部材230の断面図である。図15は、z方向に垂直な断面を示している。実施の形態1においては、角部材30はL字形の角接続部材31の2つの平板部33にパネル本体14を接合して構成されているが、実施の形態2に係る角部材230は、角接続部材31を断面矩形の鋼管131に置換している。そして、角部材230は断面矩形の鋼管131の隣合う2つの面にパネル本体14をそれぞれ接合して構成されている。
【0056】
つまり、断面形状が矩形の鋼管131は、隣合う2つの平板部33に断面形状が波形のパネル本体14が接合されており、2つの平板部33の先端部35にさらに平板部134が接続され、管状に形成されている。z方向に垂直な断面において、パネル本体14が接合されている2つの平板部33とそれらに接続されている平板部134が矩形の4辺となるように形成されている。
【0057】
鋼管131の内部には、先端部35同士をつなぐ対角線上に補強部材132が配置されていても良い。補強部材132は、鋼管131の内部に固定されている。補強部材132は、先端部35同士をつなぐ対角線上に配置されることにより、特に先端部35が近づく方向の変形を抑えることができる。また、補強部材132は、鋼管131の内部に部分的に溶接されて固定されることにより、先端部35同士が離れる方向の変形を抑えることもできる。なお、補強部材132は、図15において90°回転させて配置することもできる。また、補強部材132は、図15において十字に構成されて断面矩形の鋼管131の各頂点の間を接続するように溶接されていても良い。補強部材132を上記のように変更しても、鋼管131の剛性及び強度が向上する。
【0058】
角部材230のように角接続部材が鋼管131である場合、補強部材25は、実施の形態1と同様に鋼管131の平板部33のz方向を向いた外周縁及びy(x)又はx(y)方向を向いた外周縁に対し外側から当接し、接合される。つまり、角部材230は、角接続部材が鋼管131になって、パネル本体14が接合される平板部33の先端部35に接続された平板部134が追加された構造に変更されたが、実施の形態1に係る角接続部材31と同様に平板部33に補強部材25が接合される。なお、角部材230においても、補強部材25は、平板部33に対し面方向から当接されて接合されても良い。
【0059】
実施の形態2に係る角部材230は、角接続部材自体の強度剛性が高いが、補強部材25が接合されていることにより、全体的な強度が向上している。従って、パネル本体14が波付鋼板ではない平板などでも角部材230は、比較的高い強度を確保できる。
【0060】
また、実施の形態2に係る角部材130の変形例として、補強部材132の代わりに鋼管131の内部38にコンクリートなどの充填材を充填しても良い。鋼管131の内部138にコンクリートを充填することにより、鋼管131の変形を抑えることができるため、補強部材132が無くても鋼管131を強化できる。なお、鋼管131は、断面形状が矩形であるため、補強部材132及び充填材がなくとも比較的強度が高いため、そのまま補強せずに角部材230に用いることもできる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態3に係る土留構造物100について説明する。実施の形態3に係る土留構造物100は、実施の形態1に係る土留構造物100を構成する角部材30の構造を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図16は、実施の形態3に係る角部材330の斜視図である。実施の形態3に係る角部材330は、z方向から見たときにL字形の角接続部材331を備える。角接続部材331は、2つの平板部333を接続した形状で構成され、2つの平板部333が直交する位置関係となっている。平板部333の長手方向は、z方向に延びている。平板部333には連結孔339が設けられており、土留パネル10の縦フランジ部19を連結できるように構成されている。角部材330は、角接続部材331と土留パネル10とをボルト及びナットを用いて連結されて構成されている。土留パネル10は、補強部材25を備えており縦フランジ部19と接合されている。角接続部材331は、縦フランジ部19とボルト及びナットを用いて連結される。ボルトが挿通される連結孔339は、z方向において土留パネル10の補強部材25が接合されている領域に配置されている。
【0063】
角部材330は、角接続部材331の2つの平板部333の間に配置され溶接により接合された角補強部材332を備える。角補強部材332は、角接続部材331の断面形状に合わせてL字の内側に形状を合わせており、面をz方向に垂直に向けた板状体である。角補強部材332は、平面視で、例えば三角形状若しくは略三角形状を有している。角補強部材332は、角接続部材331の2つの平板部333同士が広がる方向及び狭まる方向の荷重に対し対抗し、角接続部材331を補強する。図16においては、角補強部材332は、連結孔339の間に配置され、2箇所に設けられているが、必要とされる強度に応じ設置箇所を適宜変更できる。実施の形態3においては、角補強部材332a及び332cは、z方向において土留パネル10の補強部材25が接合されている領域に配置されている。
【0064】
図17は、実施の形態3に係る角部材330の正面図である。角補強部材332は、土留パネル10の補強部材25に対応する位置に設けることにより、補強部材25から伝達する力を支持することができ、角接続部材331の強度を効率よく向上できる。
【0065】
また、角補強部材332は、図3に示すパネル本体14の波形に応じて領域a1、a2及びa3の何れかの範囲内に対応して配置されていても良く、望ましくは、領域aa1、aa2及びaa3の範囲内に配置されていると良い。つまり、角補強部材332は、領域Aに配置されていても良い。このとき、角補強部材332と平板部333とは、共に領域Aのそれぞれに配置されていても良い。なお、角補強部材332と平板部333とは、複数の領域Aの全部に配置されている必要はなく、必要な強度に応じて配置される。なお、図17においてz方向の中央部に配置されている角補強部材332bは省略することもできる。
【0066】
図16に示されている角部材330は、これにさらに土留パネル10を繋げて土留ユニット50を構成しても良いし、土留パネル10の両端に角接続部材331を繋げて、土留ユニット50を構成しても良い。
【0067】
また、図16に示すように角補強部材332は、角接続部材331の平板部333の内側に溶接により接合されている。角補強部材332と平板部333との溶接部36の範囲は、平板部33の先端部335側の一部分に配置されているが、角補強部材332と平板部33とが接している全域にわたっても良い。また、角補強部材332は、上下面に溶接部36が設けられていても良いし、一方の面のみでもよい。
【0068】
(変形例)
角補強部材332は、例えば棒鋼であっても良い。この場合、角補強部材332は、平板部33の先端部335を接続するように溶接されている。この場合も、棒鋼をz方向において補強部材25の縦部材25cが接合されている範囲に配置することにより角部材330の角接続部材331を効率的に強化できる。また、角接続部材331に角補強部材332が設けられていることにより、平板部333の変形を抑えることができるため、平板部333と土留パネル10の縦フランジ部19とにより形成された軸方向連結部11の強度も実施の形態1で説明したのと同様に強度を確保できる。
【0069】
実施の形態3の角接続部材331に角補強部材332の面を高さ方向(z方向)に向けた状態で溶接した構造は、実施の形態1の角部材30、30A、30Bに適用しても良い。その場合、角補強部材332は、z方向において補強部材25が接合されている位置(図5の領域C)に対応して配置されると良い。また、角補強部材332は、それぞれパネル本体14の波形に合わせて配置され、例えば図3又は図5に示すa1~a4、aa1~aa4のそれぞれの領域に配置されていても良い。実施の形態1に係る角部材30に実施の形態3の角補強部材332を適用した場合、角部材30は、パネル本体14を備え、角部材330のように角接続部材331に連結孔339を有していないため、角補強部材332の配置の自由度が高いという利点がある。
【0070】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、実施の形態同士を組み合わせることもできる。例えば、角部材30、30A、30B、230及び330のうちから複数の角部材を用いて土留構造物を構築しても良い。また、パネル本体14は、波付鋼板だけに限定されるものではなく、単純な平板状のものであっても良いし、その他の形態をとることもできる。また、以上の実施の形態に別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0071】
上記に説明した角部材30、30A、30B、230、330、土留構造物100及び200は、以下の付記1~18に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
【0072】
[付記1]
地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物に用いられ、前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、前記2つの土留パネルを接続する角部材であって、
接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように接続された角接続部材と、
前記第1断面において前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、
板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置された2つのパネル本体と、
前記2つの土留パネルが接続される板状の2つの縦フランジ部と、
前記角接続部材の前記2つの平板部のうち一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に接合された補強部材と、を備え、
前記2つのパネル本体のそれぞれは、
第1方向に垂直な一方の端面が前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれの板面に接合され、第1方向に垂直な他方の端面が前記2つの縦フランジ部のうち一方の板面に接合され、
前記補強部材は、
第1方向と第2方向との両方に垂直な第3方向を規定したときに、
前記角接続部材の前記2つの平板部の一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向の少なくとも一方から接合される、角部材。
[付記2]
前記補強部材は、
第2方向に垂直な横部材と、
第3方向に垂直な縦部材と、を備え、
前記横部材と前記縦部材とが接続されて第1方向に垂直な断面形状がL字形に形成され、
前記角接続部材の前記2つの平板部の一方及び前記2つの縦フランジ部のうち一方に、第2方向及び第3方向から接合される、付記1に記載の角部材。
[付記3]
前記横部材は、
貫通孔が形成されている、付記2に記載の角部材。
[付記4]
前記2つのパネル本体のそれぞれは、
第2方向の両端に前記壁面に対し反対方向に突出する横フランジ部を備え、
前記横部材は、
前記横フランジ部に平行に配置され、
前記横部材に設けられた貫通孔は、
前記横フランジ部に設けられた貫通孔に対応した位置に設けられている、付記3に記載の角部材。
[付記5]
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Bとしたときに、
前記角補強部材と前記2つの平板部とを接合する溶接部は、
前記領域Bに少なくとも一部が重なるように配置されている、付記1~4の何れか1つに記載の角部材。
[付記6]
前記角補強部材は、
前記2つの平板部の先端部に沿って対向する2つの外周縁が配置され、板面を前記2つの平板部の接続部に対向させた鋼板である、付記5に記載の角部材。
[付記7]
前記角補強部材は、
複数の角補強部材を含み、
前記複数の角補強部材のそれぞれは、
前記溶接部を備える、付記5又は6に記載の角部材。
[付記8]
前記複数の角補強部材のそれぞれは、
前記第1断面において互いに平行に配置され、端縁が前記2つの平板部のそれぞれに接合されている、付記7に記載の角部材。
[付記9]
前記角接続部材は、
前記第1断面における断面形状が矩形である鋼管であり、断面形状の矩形を構成する4つの辺のうち隣合う2つの辺を前記2つの平板部が構成する、付記1~6の何れか1つに記載の角部材。
[付記10]
前記角補強部材は、
板面を高さ方向に向けて配置した鋼板である、付記5に記載の角部材。
[付記11]
前記角補強部材は、
長手方向を第3方向に交差させ、前記平板部の先端に溶接された棒鋼である、付記5に記載の角部材。
[付記12]
付記1~11の何れか1つに記載の角部材を備える、土留構造物。
[付記13]
地山を掘削して形成された壁面に沿って複数の土留パネルを配置して構築された土留構造物であって、
前記複数の土留パネルのうち2つの土留パネルのそれぞれの前記壁面に沿った第1方向同士を交差させた状態で、当該2つの土留パネルを接続する角部材を備え、
前記複数の土留パネルは、
板面を前記壁面に向けかつ前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に沿って配置されたパネル本体と、
前記パネル本体の第1方向の両端に接合された縦フランジ部を備え、
前記角部材は、
接続された前記2つの土留パネルのそれぞれの第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、第2方向に垂直な第1断面において2つの平板部がL字形を成すように形成された角接続部材と、
前記第1断面における前記2つの平板部の先端部同士を接続する角補強部材と、を備え、
前記2つの土留パネルは、
前記角接続部材の前記2つの平板部のそれぞれに連結され、
前記縦フランジ部の外周縁のうち第2方向を向いた部分と第3方向を向いた部分とに接合された補強部材を備える、土留構造物。
[付記14]
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Cとしたときに、
前記角補強部材は、
前記領域Cに配置されている、付記13に記載の土留構造物。
[付記15]
前記角補強部材は、
板面を高さ方向に向けて配置した鋼板である、付記13又は14に記載の土留構造物。
[付記16]
前記角補強部材は、
長手方向を第2方向に交差させるように配置され、前記平板部の先端に溶接された棒鋼である、付記13又は14に記載の土留構造物。
[付記17]
前記2つの土留パネルの前記縦フランジ部及び前記角接続部材の前記平板部は、
互いに対応する位置に連結孔が形成されており、ボルト及びナットにより連結されている、付記13~16の何れか1つに記載の土留構造物。
[付記18]
前記補強部材と前記角接続部材との接合部が第2方向において位置する範囲を領域Cとしたときに、
前記連結孔は、
前記領域Cに配置される、付記17に記載の土留構造物。
【符号の説明】
【0073】
10 土留パネル、11 軸方向連結部、13 横フランジ部、13a (第2)連結孔、14 パネル本体、15 ウェブ部、16 凸部、16a 内側壁部、17 (第2)外側壁部、17b 外側壁部、18 (第1)外側壁部、19 縦フランジ部、19a (第1)連結孔、25 補強部材、25b 横部材、25c 縦部材、30 角部材、30A 角部材、30B 角部材、30C 角部材、31 角接続部材、32 角補強部材、32A 角補強部材、32a 角補強部材、32b 角補強部材、32c 角補強部材、33 平板部、35 先端部、36 溶接部、36a 溶接部、36b 溶接部、36c 溶接部、37 両端、38 内部、40 連結部材、50 土留ユニット、92 地盤、93 空間部、95 掘削壁面、100 土留構造物、101B 土留パネル、101C 土留パネル、130 角部材、131 鋼管、132 補強部材、134 平板部、138 内部、200 土留構造物、230 角部材、330 角部材、331 角接続部材、332 角補強部材、332a 角補強部材、332b 角補強部材、332c 角補強部材、333 平板部、335 先端部、339 連結孔、1010 土留パネル、1030 角部材、A 領域、B 領域、C 領域、N 中立軸、a1 領域、a2 領域、a3 領域、a4 領域、aa1 領域、aa2 領域、aa3 領域、c 中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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