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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007452
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ソフトカプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20240110BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106386
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022104409
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 紀真
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝将
(72)【発明者】
【氏名】野津 昌史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 憲一
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA56
4C076BB01
4C076DD43H
4C076DD51H
4C076DD63H
4C076EE42H
4C076EE43H
4C076FF06
4C076FF21
(57)【要約】
【課題】製剤性を低減することなく、長期にわたり優れた崩壊性を示す、新規且つ有用なソフトカプセル剤を提供すること。
【解決手段】カプセル内容物とカプセル皮膜を有するソフトカプセル剤であって、カプセル皮膜がゼラチン、アミノ酸及びクエン酸を含有する、ソフトカプセル剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル内容物とカプセル皮膜を有するソフトカプセル剤であって、カプセル皮膜がゼラチン、アミノ酸及びクエン酸を含有する、ソフトカプセル剤。
【請求項2】
前記カプセル皮膜が、更に、コラーゲンペプチドを含有する、請求項1に記載のソフトカプセル剤。
【請求項3】
前記アミノ酸を、ゼラチン100質量部に対し、1~5質量部含有する、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【請求項4】
前記クエン酸を、ゼラチン100質量部に対し、0.5~3質量部含有する、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【請求項5】
前記アミノ酸が、グルタミン酸又はアスパラギン酸の少なくとも何れかである、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【請求項6】
前記カプセル内容物に、コラーゲンペプチドを含有する、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【請求項7】
前記カプセル内容物に、リゾレシチンを含有する、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【請求項8】
前記カプセル内容物に、コラーゲンペプチド及びリゾレシチンを含有する、請求項1又は2に記載のソフトカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、温度変化により可逆的にゾル・ゲル変化すること、ゲル化温度が常温であること、造膜能に優れると共に形成された皮膜の機械的強度が高いこと、体内で速やかに溶解して崩壊すること、人体に無害で体内に吸収され易いこと等の多くの利点を有していることから、カプセル皮膜の基剤として一般に広く用いられている。
【0003】
一方で、ゼラチンが皮膜基剤になっている場合には、ゼラチンが有するアミノ基がメイラード反応に関与すると、カプセル皮膜が不溶化して、崩壊遅延をもたらすことは従来から知られている。
そのため、ゼラチン側のアミノ基と反応するカルボニル基を有するもの、例えば、生薬、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)等の不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基を有する油脂で構成される油分をカプセルの内容物に含ませる場合には、ゼラチンとのメイラード反応に因る崩壊遅延が起こるおそれがあった。
また、最近では、薬剤のバイオアベイラビリティーに着目されており、崩壊遅延が製剤としての評価に影響を与えることが知られている。
【0004】
従来、ゼラチンを皮膜基剤として用いる場合、崩壊遅延を防止する対策はいくつか提案されている。
例えば、皮膜基材に、特許文献1ではアミノ酸、特許文献2ではクエン酸、特許文献3ではポリグルタミン酸、特許文献4ではイノシトール6リン酸、特許文献5にはグリセリンと還元水飴のような添加剤をそれぞれ配合して崩壊遅延を防止することが記載されている。
【0005】
また、例えば、カプセルの内容物に、特許文献6では中鎖脂肪酸トリグリセライド及び、ジペプチド甘味料及び/又はメントール、特許文献7では大豆イソフラボン及び/又はその代謝産物、特許文献8では界面活性剤及び抗酸化剤、特許文献9ではアミノ化合物のような添加剤を配合して崩壊遅延を防止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭57-30088号公報
【特許文献2】特開昭59-39834号公報
【特許文献3】特開2005-139152号公報
【特許文献4】特許第3790258号公報
【特許文献5】特開2017-100966号公報
【特許文献6】特開2015-193579号公報
【特許文献7】特開2016-69335号公報
【特許文献8】特開2011-79786号公報
【特許文献9】特開2003-55263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、依然として保管等によってカプセルの崩壊性を低下するおそれがあり、長期にわたり優れた崩壊性を示すソフトカプセル剤が求められていた。
【0008】
本発明は、製剤性を低減することなく、長期にわたり優れた崩壊性を示す、新規且つ有用なソフトカプセル剤を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、試行錯誤の末、カプセル皮膜にアミノ酸及びクエン酸を配合することにより、長期にわたり優れた崩壊性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、カプセル皮膜及び/又はカプセル内容物にコラーゲンペプチドを配合すること、及びカプセル内容物にリゾレシチンを配合することにより、さらに崩壊性を向上できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の主な構成は以下の通りである。
(1)カプセル内容物とカプセル皮膜を有するソフトカプセル剤であって、カプセル皮膜がゼラチン、アミノ酸及びクエン酸を含有する、ソフトカプセル剤。
(2)前記カプセル皮膜が、更に、コラーゲンペプチドを含有する、(1)のソフトカプセル剤。
(3)前記アミノ酸を、ゼラチン100質量部に対し、1~5質量部含有する、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
(4)前記クエン酸を、ゼラチン100質量部に対し、0.5~3質量部含有する、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
(5)前記アミノ酸が、グルタミン酸又はアスパラギン酸の少なくとも何れかである、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
(6)前記カプセル内容物に、コラーゲンペプチドを含有する、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
(7)前記カプセル内容物に、リゾレシチンを含有する、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
(8)前記カプセル内容物に、コラーゲンペプチド及びリゾレシチンを含有する、(1)又は(2)のソフトカプセル剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のソフトカプセル剤は、製剤性を低減することなく、長期にわたり優れた崩壊性を示す。例えば、ゼラチンの残留アミノ基と、内容物の成分に含まれるアルデヒド基との間でメイラード反応が起こり、その結果としてゼラチンの架橋が強固になり、水に溶けなくなる(カプセルが崩壊しなくなる)ことが知られている。本発明のソフトカプセル剤は、詳細な原理は不明ではあるが、崩壊遅延を防ぐことができる。
本発明のソフトカプセル剤は、従来のゼラチン系ソフトカプセル剤と同様に、医薬品から食品まで幅広く応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、カプセル内容物とカプセル皮膜を有するソフトカプセル剤である。
「ソフトカプセル剤」には、ロータリーダイを利用して二枚の皮膜シートの間に内容物をそのまま充填しながら成形し打ち抜く方式で製造されるロータリーダイ式ソフトカプセルや、二重ノズルを用いた滴下方式等で製造されるシームレスカプセルが含まれる。
【0013】
(カプセル皮膜)
本発明の皮膜基剤はゼラチンであり、膜組成に占める含有量が通常は最も多い。すなわち、カプセル皮膜における、ゼラチンが提供してきた利点を、本発明ではそのまま享受している。
ゼラチンは、牛、羊、豚、鶏、あるいは魚等の皮、骨、腱などの主タンパク成分であるコラーゲンを由来の原料としたものであり、牛骨、牛皮又は豚皮を原料としたゼラチンが工業原料として入手し易くなっているが、由来は特に限定されない。
また、ゼラチンは、上記した原料を、酸やアルカリで処理したのち温水で抽出することにより得られるコラーゲンの変性体であり、処理の仕方には酸処理とアルカリ処理があるが、本発明では処理方法も特には限定されない。
【0014】
カプセル皮膜に、柔軟性や弾力性を与えるために、一般的にグリセリン等の可塑剤が配合される。
一般的なカプセル皮膜に含ませる可塑剤としては、グリセリンの他に、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールが挙げられる。
【0015】
ゼラチンに対する可塑剤の配合量の範囲は、通常のソフトカプセル剤と変わらず、ゼラチン100質量部に対して、グリセリン10~50質量部が好ましいが、特に制限されない。
【0016】
さらに、本発明のソフトカプセル剤は、カプセル皮膜にアミノ酸及びクエン酸を配合する。
【0017】
本発明に用いられるアミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、バリンが挙げられ、L体であることが好ましく、L-グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、Lーリジン、L-アルギニンがより好ましく、L-グルタミン酸、アスパラギン酸がさらに好ましく、L-グルタミン酸が特に好ましい。アミノ酸は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明において、アミノ酸の配合量は特に制限されないが、本発明の効果を奏しやすく、且つカプセル皮膜の強度を保つため、ゼラチン100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、1.5~4.5質量部であることがより好ましく、2~4質量部であることが更に好ましい。
【0019】
本発明に用いられるクエン酸は、一般に市販されているものを使用でき、無水クエン酸であっても、クエン酸水和物であっても良い。
【0020】
本発明において、クエン酸の配合量は特に制限されないが、本発明の効果を奏しやすく、且つカプセル皮膜の強度を保つため、ゼラチン100質量部に対して、0.5~3質量部であることが好ましく、0.7~2.5質量部であることがより好ましく、1~2質量部であることが更に好ましい。
【0021】
また、本発明のソフトカプセル剤は、カプセル皮膜にコラーゲンペプチドを配合することができる。
カプセル皮膜にコラーゲンペプチドを配合することで、崩壊性が向上する効果がさらに大きくなる。
【0022】
コラーゲンペプチドはゼラチンの加水分解物であり、一般的に分子量が500から10,000の物質である。コラーゲンペプチドは、他の一般的な名称としてポリペプチド、ペプタイドゼラチン、水溶性ゼラチン、加水分解コラーゲン、加水分解ゼラチンと呼ばれているが、本発明においてはそれらを区別しない。
【0023】
カプセル皮膜にコラーゲンペプチドを配合するとき、その配合量は特に制限されないが、崩壊遅延を防止する効果を奏しやすく、且つカプセル皮膜の強度を保つため、ゼラチン100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましい。
【0024】
カプセル皮膜には、上記したものの他に、必要に応じて着色剤、保存剤等を適宜添加することができる。
【0025】
(カプセル内容物)
本発明のソフトカプセル剤におけるカプセル内容物は、従来からソフトカプセル剤の内容物として利用されてきたもの、更にはこれから案出されるもので、ソフトカプセル剤の内容物に適用できるものは、全て、本発明のカプセル内容物として適用される。
しかしながら、特に、本発明のソフトカプセル剤はその崩壊性が向上されていることから、カプセル内容物としては、皮膜と反応して崩壊遅延を起こす可能性が有るものを採用することができる。
【0026】
崩壊遅延を引き起こすカプセル内容物の具体的な例としては、生薬、不飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸残基を有する油脂等が挙げられる。
生薬は、植物・動物などを、そのままで、あるいは性質を変えない程度に切断・破砕・乾燥するなどの加工・調製をして、医薬品原料、香粧料、漢方薬、民間薬、香辛料、食品などに用いられるものを指す。具体的には、ブルーベリー、ハーブ類(例えば、カモミール、ローズマリー等)、ニンニク等の原末ないし抽出物が挙げられる。
【0027】
不飽和脂肪酸としては、炭素数14以上、一般的には炭素数14~22の長鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数14以上の長鎖不飽和脂肪酸としては、例えばDHA、EPA等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸としては、DHA、EPA等とリン脂質とが結合した不飽和脂肪酸、具体的にはDHAがホスファチジルコリン(PC)と結合したPC-DHA、ホスファチジルセリン(PS)と結合したPS-DHA等も挙げられる。
【0028】
また、不飽和脂肪酸残基を有する油脂で構成される油分とは、その油脂を構成する脂肪酸残基の少なくとも1つが不飽和脂肪酸残基である油脂、あるいはそのような油脂の混合物を意味する。なお、本発明において、不飽和脂肪酸残基を有さない油脂が含まれていてもよい。
例えば、植物油脂(大豆油、オリーブ油、サフラワー油、トウモロコシ油等)、動物油脂(魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂等)が挙げられる。
【0029】
カプセル内容物には、ソフトカプセルやシームレスカプセルの場合には、油脂を基剤とし、そこに粉末状ないし液状の有効成分が含まれたものが典型的なものとなっており、従来は中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が広く使用されていたが、本発明では、崩壊性が向上されているため、上記した植物油脂等を基剤として使用することができる。
【0030】
本発明のソフトカプセル剤は、カプセル内容物にコラーゲンペプチドを配合することができる。
カプセル内容物にコラーゲンペプチドを配合することで、崩壊性が向上する効果がさらに大きくなる。
【0031】
カプセル内容物に配合するコラーゲンペプチドとしては、上記カプセル皮膜に配合できるコラーゲンペプチドとして挙げたものを使用することができる。カプセル皮膜及びカプセル内容物の両方にコラーゲンペプチドを配合することもでき、その際は同一のコラーゲンペプチドであっても良く、異なる種類のコラーゲンペプチドを用いても良い。
【0032】
カプセル内容物にコラーゲンペプチドを配合するとき、その配合量は特に制限されないが、崩壊を促進する効果を奏しやすく、且つカプセル内容物に有効成分をより多く配合するため、カプセル内容物の1~10質量%であることが好ましく、2~9質量%であることがより好ましく、3~8質量%であることが更に好ましい。
【0033】
さらに、本発明のソフトカプセル剤は、カプセル内容物にリゾレシチンを配合することができる。
カプセル内容物にリゾレシチンを配合することで、崩壊性が向上する効果がさらに大きくなる。
【0034】
本発明に用いられるリゾレシチンとは、レシチンを低分子化したものである。リゾレシチンのレシチン原料としては、特に制限されず、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチンなどが挙げられる。また、低分子化の処理方法としては、特に制限されないが、例えば、酵素処理などが挙げられる。リゾレシチンは、例えば、酵素処理により、レシチン内のエステル結合を加水分解したものであっても良い。この場合、酵素処理に用いる酵素は、特に制限されないが、例えば、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDなどがあげられ、好ましくは、ホスホリパーゼA1およびホスホリパーゼA2である。本発明に用いられるリゾレシチンとしては、レシチン分子内の2個のカルボン酸エステル部位のうち1個を加水分解により水酸基にした化合物が好ましい。
【0035】
リゾレシチンの形状は、例えば、粉末、ペーストなどがあげられ、特に制限されない。リゾレシチンに含まれるリン脂質としては、特に制限されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリンなどがあげられる。
本発明において、リゾレシチンの製造方法は、例えば、酵素分解、減圧乾燥、加圧ろ過、精製、分別などの従来公知の方法を採用でき、特に制限されない。また、本発明において、リゾレシチンは、例えば、市販品であっても良い。
【0036】
カプセル内容物にリゾレシチンを配合するとき、その配合量は特に制限されないが、崩壊遅延を防止する効果を奏しやすく、且つカプセル内容物に有効成分をより多く配合するため、カプセル内容物の1~10質量%であることが好ましく、2~9質量%であることがより好ましく、3~8質量%であることが更に好ましい。
【0037】
カプセル内容物には、上記したものの他に、必要に応じて着色剤、保存剤、乳化剤等を適宜添加することができる。
【0038】
(カプセル製剤化)
上記したカプセル皮膜を構成する成分を適量の水に攪拌溶解することで均質な皮膜溶液を作製し、上記したカプセル内容物を充填・封入すると共に成形して、定法によってソフトカプセル剤を製造する。
また、本発明のソフトカプセル剤の製造に際して、特殊な製造工程を必要としないことから、製造コストを上げることもない。
【0039】
(ソフトカプセル剤)
本発明のソフトカプセル剤は、カプセル内容物にゼラチンと反応して崩壊遅延を起こす成分が含まれていても、良好な崩壊性を維持することができる。
【実施例0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
1)カプセル皮膜溶液の作製
表1~表4に示す皮膜原料を適量の水に混合し、攪拌しながら加温溶解した。溶解後の溶液を減圧脱泡することで、皮膜溶液を得た。
【0042】
2)カプセル内容物の作製
カプセル内容物としては、崩壊遅延を起こすことが知られているブルーベリー配合内容物を基準とした。ブルーベリー配合内容物は、ソフトカプセル内容物として従来公知の方法で得ることができる。
表2、3に示すように、実施例11~27では、さらに皮膜及び/又は内容物にコラーゲンペプチド及び/又はリゾレシチンを添加し、混合後、減圧脱泡することでカプセル内容物を得た。リゾレシチンとしては、レシチン分子内の2個のカルボン酸エステル部位のうち1個を加水分解により水酸基にした化合物を主成分とする市販品を使用した。
【0043】
3)カプセル製剤化
上記カプセル皮膜溶液とカプセル内容物をそれぞれカプセル充填機に供給し、定法によりロータリーダイ式ソフトカプセル製剤化を行った。
このとき、製剤性の評価を合わせて行った。
【0044】
製剤性は、以下の評価基準に従った。
A:常法に従い、問題なく製剤化が可能
B:ゼラチンと可塑剤のみから成る一般的な皮膜と比して5~10N程度皮膜強度が弱いが、充填機の条件変更により製剤化が可能
C:ゼラチンと可塑剤のみから成る一般的な皮膜と比して10N以上皮膜強度が弱く、ソフトカプセル充填機では製剤化できない
【0045】
その後、常法通りカプセルの乾燥を行った。
本実施例や比較例で製造したソフトカプセル剤は、オーバル型No.5(皮膜質量:150mg、内容物質量:300mg)と設定した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表1~4に示すとおり、実施例1~6、8、11~27では、一般的なソフトカプセル皮膜である比較例1と同様に、通常通り製剤化できることが分かった。実施例7、9、10も充填機の条件変更により製剤化が可能であった。
【0051】
4)崩壊性の評価
実施例1~27および比較例1~6として製造したソフトカプセル剤の崩壊試験を行った。崩壊試験は、第十八改正日本薬局方の一般試験法に準じて行い、試験液は精製水を使用した。
また、それぞれのソフトカプセル剤をアルミパウチ袋に入れ、50℃に設定した恒温槽で計40日間保管し、10日ごとに崩壊試験を実施した。また、40℃に設定した恒温槽で計4か月間保管した上記ソフトカプセル剤についても、1か月ごとに崩壊試験を実施した。
【0052】
崩壊試験結果は、以下の評価基準に従った。
A:崩壊時間が20分未満である。
B:崩壊時間が20分以上60分未満である。
C:崩壊時間が60分以上90分未満である。
D:崩壊時間が90分以上である。
【0053】
試験結果を表5~8に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
表5~8に示すとおり、実験例1~27は、比較例1~6に比べて、崩壊性が向上し、保管後においても崩壊時間が顕著に長くなることはなかった。
崩壊遅延を防止する目的で、アミノ酸、クエン酸、コラーゲンペプチド、リゾレシチンを皮膜や内容物に配合するような技術はこれまでにも報告されている。しかし、比較例1~6の崩壊試験結果が示すように、それら単体の効果は内容物にビルベリーを配合した際に起こる崩壊遅延を抑制するには不十分である。
実施例1~27の崩壊試験結果から、皮膜にクエン酸および各種アミノ酸を配合することで、比較例よりも崩壊遅延の影響を抑制できることが確認された。
実施例11~15の崩壊試験結果から、各種アミノ酸のうち、グルタミン酸およびアスパラギン酸で特に崩壊遅延防止の効果が高いことが確認された。
実施例16~27の崩壊試験結果から、カプセル内容物にコラーゲンペプチド及び/又はリゾレシチンを配合することにより、崩壊性が向上する効果がより大きくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、経時的な崩壊遅延を防止したソフトカプセル剤を提供することができる。
本発明のソフトカプセル剤は、医薬品から食品まで幅広く応用することができる。