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  • 特開-船舶のガス消火装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074542
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】船舶のガス消火装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/10 20060101AFI20240524BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A62C3/10
A62C35/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185773
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 繁郎
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BD06
2E189GA05
2E189MB05
(57)【要約】
【課題】安全な、船舶のガス消火装置を提供する。
【解決手段】防護区画1への消火剤ガスの放出を止めるための手段としてのスイッチ8を防護区画1内に設けた、船舶のガス消火装置90。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区画への消火剤ガスの放出を止めるための手段を前記防護区画内に設けた、船舶のガス消火装置。
【請求項2】
前記防護区画へ消火剤ガスを導入するための配管と、前記配管に設けられて消火剤ガスの放出を止めるための前記手段が動作したときに前記配管内の消火剤ガスを大気開放するバルブとを備えた、請求項1に記載の船舶のガス消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶のガス消火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の機関区域などの防護区画において、固定式のガス消火装置が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の船舶のガス消火装置においては、防護区画内からガスの放出を止めることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
船舶のガス消火装置において、防護区画への消火剤ガスの放出を止めるための手段を防護区画内に設けた、船舶のガス消火装置。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施の形態1に従った船舶のガス消火装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従った船舶のガス消火装置の模式図である。この船舶は、たとえば、商船、漁船、軍艦、特殊船、潜水艦のいずれであってもよい。さらに、動力をゆうする船舶のみならず、曳航される船舶であってもよい。
【0007】
船舶のガス消火装置90は、防護区画1内へ消火剤ガスを送る配管3と、防護区画1内に設けられた噴射ノズル4とを有する。すべての装置は、船舶内に設けられて船舶の火災時に起動する。
【0008】
防護区画1は、船舶内に設けられる部屋である。防護区画1は、たとえば、船舶の主機関室、ポンプ室、発電機室、電池室などの部屋である。船舶の部屋では、消火のために水を用いると沈没のおそれがあるため用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行う。噴射ノズル4から消火ガス剤を防護区画1に放出して、不活性の消火剤ガスを防護区画1に充満させて酸素濃度を減少させることで消火することが可能である。消火剤ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスおよびハロゲン系のガスが用いられる。
【0009】
配管3は、防護区画1外に配置されているガス貯蔵容器5から防護区画1へ消火剤ガスを送るための経路である。ガス貯蔵容器5には、容器弁(圧力調整器)50が設けられており、容器弁50を通過した消火剤ガスが集合管、配管3および噴射ノズル4を経由して防護区画1へ放出される。容器弁50は、減圧弁を含む容器弁であってもよい。
【0010】
噴射ノズル4から防護区画1内に消火剤ガスが放出されると防護区画1内の消火剤ガスの濃度が高くなる。これにより、防護区画1内の酸素濃度が減少して火炎の化学反応が継続できない状態として火災を鎮火できる。
【0011】
複数のガス貯蔵容器5に集合管17が接続されている。集合管17には、各々のガス貯蔵容器5から消火剤ガスが供給される。集合管17、容器弁50またはガス貯蔵容器5のいずれかには、ガス貯蔵容器5から集合管17への消火剤ガスの供給を制御する制御部15が接続されている。
【0012】
制御部15には、起動装置16からの信号が伝達される。起動装置16は、たとえば手動のスイッチを含む。たとえば押しボタンにより構成されるスイッチが操作されることで起動装置16が制御部15を起動する。
【0013】
制御部15は2系統により起動することが好ましい。これは、いずれか一方の系統が故障しても他の系統を用いて容器弁50を開放することができるからである。容器弁50から防護区画1までの配管3の系統は、この実施の形態では1系統のみが示されているが、2系統の配管3が設けられてもよい。
【0014】
起動装置16は、たとえば船舶の操舵室7に設けられる。ただし、起動装置16は必ずしも操舵室7に設けられる必要はない。起動装置16は、たとえば、機関監視室に設けられてもよい。
【0015】
制御部15は、複数の本のガス貯蔵容器5の容器弁を同時に開弁してもよく、別々に開弁してもよい。起動装置16を人が操作して消火剤ガスの放出が行われるのは手動方式である。これに対して火災感知器21の作動により消火剤ガスの放出が行われるのは自動方式である。
【0016】
火災感知器21は、防護区画1内に設けられる。火災感知器21は防護区画1内の温度が高くなるか、さらには、煙を感知するか、少なくともいずれかによって起動する。その場合には火災感知器21は火災であることの信号を制御部15に伝達する。信号が伝達された制御部15は、容器弁50を開放することで噴射ノズル4から消火剤ガスを放出する。
【0017】
防護区画1にはドア23が設けられている。ドア23から人が防護区画1内に入ることが可能である。ドア23には認証装置が設けられており、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1内に入ることができる。さらに、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1から出ることができる。なお、ドア23の認証装置は無くてもよい。
【0018】
船舶は、海賊に乗っ取られることがある。その場合、乗組員(人)は安全な場所に避難する。防護区画1に乗組員が逃げ込みドア23を防護区画1に溶接することでドア23が開かなくなる。これにより乗組員は海賊から避難することができる。そして乗組員は軍隊に連絡し軍隊よる救出を待つ。
【0019】
ドア23を溶接することで海賊は防護区画1には入ることができない。しかしながら、海賊は起動装置16によって制御部15を起動させることができる。この場合、防護区画1内に乗組員が存在する状態で噴射ノズル4から防護区画1内に消火剤ガスが噴射される。これにより乗組員が酸欠より死亡する。ドア23を溶接しているのでドア23を開けることができない。仮に乗組員がドア23を開けることができても乗組員は海賊と対面して死亡することがある。
【0020】
このような問題を解決するために防護区画1内に制御部15の起動を停止または無効化するためのスイッチ8を設ける。これにより、防護区画1内の乗組員がスイッチ8を押すことで制御部15の動作を停止して、これにより配管3から噴射ノズル4を経由して、防護区画1内に消火剤ガスが放出されることを防止できる。
【0021】
さらに、配管3の途中にバルブ2を設け、バルブ2に放出経路9を接続することが好ましい。バルブ2にはスイッチ8からの信号が伝達される。スイッチ8が押されるとバルブ2は配管3と放出経路9を接続する。そして配管3から噴射ノズル4への消火剤ガスの流れを遮断する。これにより防護区画1に消火剤ガスが放出されることを防止できる。
【0022】
なお、この実施の形態では、高圧のガス貯蔵容器5に消火剤ガス(たとえば二酸化炭素)を封入することを想定しているが、消火剤ガスは、たとえば低圧の二酸化炭素のストレージシステムにより溜められていてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
実施の形態1においては防護区画1内にスイッチ8を設けてこのスイッチ8を押すことで防護区画1内に消火剤ガスが放出されることを防止した。
【0024】
これに対して実施の形態2においては、何らかの方法で乗組員が防護区画1内に存在することを検知して、乗組員が防護区画1内に存在する場合には制御部15の起動を防止する。
【0025】
乗組員が防護区画1内に存在することを検出する装置として、たとえば、防護区画1内に設けられる、カメラ(4Kカメラ、8Kカメラなど)、人感センサなどがある。ドア23には認証装置が設けられており、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1内に入ることができる。さらに、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1から出ることができる。ドア23の認証装置を用いて防護区画1内の乗組員の存在を認識してもよい。
【0026】
警備システム、監視システムなどのセキュリティーと制御部15とを連動される。たとえば、ドア23による入退出管理をして、乗組員が防護区画1内に存在するときには起動装置16は制御部15に起動信号を伝達しない。これにより、乗組員が防護区画1内に存在する場合には防護区画1内に消火剤ガスが放出されない。
【0027】
ドア23による入退出管理の方法として、カードキーを用いた方法、入室者の指紋を用いた方法、入室者の顔認証を用いた方法、ドア23に設けられたキーボードにパスワードを入力する方法がある。
【0028】
このように、乗組員が防護区画1内に存在する場合に防護区画1への消火剤ガスの放出を止めることにより防護区画1内の乗組員が酸欠になることを防止できる。
【0029】
さらに、安全なガス(消火剤)への置き換えを行うことで、防護区画1内に消火剤ガスが放出されても人体への悪影響を防止できる。たとえば、消火剤ガスとしてのCOをN,FM200等の人体に対して安全なガスへ置き換える。
【0030】
(請求項1)
防護区画1への消火剤ガスの放出を止めるための手段としてのスイッチを防護区画1内に設けた、船舶のガス消火装置。
【0031】
(請求項2)
前記防護区画へ消火剤ガスを導入するための配管と、前記配管に設けられて消火剤ガスの放出を止めるための手段が動作したときに配管内の消火剤ガスを大気開放するバルブとを備えた、請求項1に記載の船舶のガス消火装置。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
1 防護区画、1a 避圧口、2 ダクト、3 配管、4 噴射ノズル、5 ガス貯蔵容器、7 操舵室、8 スイッチ、9 放出経路、15 制御部、16 起動装置、17 集合管、21 火災感知器、23 ドア、50 容器弁、90 船舶のガス消火装置。
図1