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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074547
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/16 20060101AFI20240524BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F04B39/16 K
F04C29/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185782
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 直人
(72)【発明者】
【氏名】上田 健史
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩志
(72)【発明者】
【氏名】秋本 諒
(72)【発明者】
【氏名】安井 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄大
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003BG09
3H129AA04
3H129AA13
3H129AB03
3H129BB35
3H129CC24
3H129CC26
3H129CC45
(57)【要約】
【課題】アキュムレータ容器に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散してしまうことを抑制し、気液分離管に液冷媒が吸入されることを抑える。
【解決手段】密閉型圧縮機は、円筒状の圧縮機本体容器と、圧縮機本体容器の下方に設けられた円筒状のアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器の内部に配置されてアキュムレータ容器から吸入した冷媒を圧縮して圧縮機本体容器内に吐出する圧縮部と、を備える。アキュムレータ容器は、冷凍サイクルからアキュムレータ容器の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管と、アキュムレータ容器の内部から圧縮部へ気体冷媒を送る気液分離管と、を有する。アキュムレータ吸入管は、アキュムレータ容器の内部に吸入された冷媒を、アキュムレータ容器の内周面の周方向に沿って旋回させるように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の圧縮機本体容器と、前記圧縮機本体容器の下方に設けられた円筒状のアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記アキュムレータ容器から吸入した冷媒を圧縮して前記圧縮機本体容器内に吐出する圧縮部と、を備える密閉型圧縮機であって、
前記アキュムレータ容器は、冷凍サイクルから前記アキュムレータ容器の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管と、前記アキュムレータ容器の内部から前記圧縮部へ気体冷媒を送る気液分離管と、を有し、
前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータ容器の内部に吸入された冷媒を、前記アキュムレータ容器の内周面の周方向に沿って旋回させるように設けられている、密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記アキュムレータ容器は、一端側に開口が形成されたカップ状のアキュムレータシェルを有し、前記アキュムレータシェルの開口側が前記圧縮機本体容器に接合され、
前記気液分離管及び前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータシェルを貫通して設けられている、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータ容器の内部へ延びる端部の管軸方向が、前記アキュムレータ容器の内周面に沿うように設けられている、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記アキュムレータ吸入管の前記端部は、前記端部の管軸に対して傾斜した開口端を有し、
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータ容器の内周面から前記開口端までの前記端部の長さが大きい側が、前記アキュムレータ容器の中央側に位置するように設けられている、
請求項3に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータ容器の外周面の法線方向に沿って前記アキュムレータシェルを貫通し、当該アキュムレータ吸入管の端部が、前記アキュムレータ容器の前記内周面に沿う方向に曲げられている、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記アキュムレータ吸入管は、冷凍サイクルから冷媒を吸入する吸入管と、前記吸入管と前記アキュムレータ容器とを接続する接続管と、を有し、
前記接続管は、前記アキュムレータ容器の内周面に沿って開口が形成された吸入口を有する、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記接続管は、当該接続管の管軸方向が前記アキュムレータ容器の内周面に沿うように設けられている、
請求項6に記載の密閉型圧縮機。
【請求項8】
前記気液分離管は、前記アキュムレータシェルの内部において前記アキュムレータ容器の上下方向に沿って延びる端部を有し、
前記端部の開口端が、前記アキュムレータ吸入管の端部よりも上方に位置する、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項9】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータシェルの内部において、前記気液分離管の開口端は、前記アキュムレータ吸入管の開口端よりも、前記アキュムレータ容器の径方向における内周側に配置されている、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項10】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記気液分離管の前記開口端の管軸が、前記アキュムレータ容器の中心に位置する、
請求項9に記載の密閉型圧縮機。
【請求項11】
前記アキュムレータシェルは、下方へ向かって膨らんだ底面を有し、
前記気液分離管は、前記底面に沿って曲がっている、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項12】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記気液分離管の開口端は、前記底面と重なる位置に配置される、
請求項11に記載の密閉型圧縮機。
【請求項13】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータ容器の内部において、前記アキュムレータ吸入管の端部を、当該端部の管軸方向に沿って仮想的に延長した範囲内に、前記気液分離管が配置されていない、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項14】
前記アキュムレータ容器の上下方向から見たとき、前記アキュムレータ吸入管の端部の開口端が位置する仮想円の円周上において、前記アキュムレータ吸入管の前記開口端を始点とし、前記気液分離管が前記仮想円に交差する位置を終点としたとき、前記始点と前記終点とを前記冷媒の流れの向きで前記仮想円の周方向に沿って結んだ長さは、前記仮想円の円周長さの1/2倍以上である、
請求項2または6に記載の密閉型圧縮機。
【請求項15】
前記アキュムレータシェルの内部において、前記アキュムレータ容器の上下方向に沿い、かつ、前記アキュムレータ吸入管の端部の管軸方向に平行な平面に前記アキュムレータ吸入管の端部を投影した第1領域と、前記平面に前記気液分離管を投影した第2領域とが重ならない、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項16】
前記圧縮機本体容器及び前記アキュムレータ容器の外部に設けられ、前記気液分離管から前記圧縮部へ気体冷媒を送る連絡管を更に備え、
前記気液分離管は、前記アキュムレータシェルの側壁を貫通して前記アキュムレータシェルの外部へ延びるとともに、前記連絡管に接続されている、
請求項2乃至5、8乃至13、15のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項17】
前記アキュムレータ吸入管は、前記アキュムレータ容器の内部に吸入された冷媒によって、前記アキュムレータ容器内の底部に貯留した液冷媒を前記アキュムレータ容器の内周面の周方向に沿って旋回させるように設けられている、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型圧縮機としては、縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に圧縮部と、圧縮部を駆動するモータを収容し、圧縮機本体容器の下方に、冷媒を気体冷媒と液体冷媒(以下、液冷媒とも称する。)とに分離して気体冷媒を圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられたものが知られている(以下、アキュムレータ一体型圧縮機とも称する)。アキュムレータ容器は、冷凍サイクルにおける蒸発器側からアキュムレータ容器の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管と、アキュムレータ容器の内部から圧縮部へ気体冷媒を送る気液分離管と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-109283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなアキュムレータ一体型圧縮機では、例えば、運転停止状態から起動する場合等において、アキュムレータ容器内の底部に液冷媒が溜まっているときにアキュムレータ容器の内部へアキュムレータ吸入管から冷媒が吸入されることがある。このような場合には、アキュムレータ容器の内部へ吸入された冷媒の流れによって液冷媒の液面が波打ち、冷媒の流れで乱れた液冷媒が飛び散ることで、気液分離管に多量の液冷媒が流入する問題がある。気液分離管から吸入された多量の液冷媒が圧縮部へ送られると、液冷媒は非圧縮性であるため、圧縮部が損傷するおそれがある。
【0005】
また、アキュムレータ一体型圧縮機全体の高さの小型化を図る観点では、アキュムレータ容器を小さくするため、アキュムレータ容器の内部の高さを低くすることが考えられる。しかし、アキュムレータ容器の内部の高さが低くなることで、気液分離管の開口端と、アキュムレータ容器内に貯留する液冷媒の液面との距離が近づくことになり、上述した問題が顕在化する。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、アキュムレータ容器に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散してしまうことを抑制し、気液分離管に液冷媒が吸入されることを抑えられる密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様は、円筒状の圧縮機本体容器と、圧縮機本体容器の下方に設けられた円筒状のアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器の内部に配置されてアキュムレータ容器から吸入した冷媒を圧縮して圧縮機本体容器内に吐出する圧縮部と、を備える密閉型圧縮機であって、アキュムレータ容器は、冷凍サイクルからアキュムレータ容器の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管と、アキュムレータ容器の内部から圧縮部へ気体冷媒を送る気液分離管と、を有し、アキュムレータ吸入管は、アキュムレータ容器の内部に吸入された冷媒を、アキュムレータ容器の内周面の周方向に沿って旋回させるように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様によれば、アキュムレータ容器に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散してしまうことを抑制し、気液分離管に液冷媒が吸入されることを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例1のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施例1のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。
図4図4は、実施例1のロータリ圧縮機の要部を示す縦断面図である。
図5図5は、比較例のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。
図6図6は、比較例のロータリ圧縮機のアキュムレータ容器内に溜まった液冷媒の液面の波打ちを模式的に示す縦断面図である。
図7図7は、実施例1におけるアキュムレータ容器内に溜まった液冷媒の液面の挙動を模式的に示す縦断面図である。
図8図8は、実施例2のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。
図9図9は、実施例3のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。
図10図10は、実施例4のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する密閉型圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する密閉型圧縮機が限定されるものではない。
【実施例0011】
(ロータリ圧縮機の構成)
本実施例では、密閉型圧縮機の一例として、ロータリ圧縮機について説明する。図1は、実施例1のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。図2は、実施例1のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、圧縮機本体容器10の内部に、圧縮部吸入管102から冷媒を吸入して圧縮した冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出する圧縮部12と、圧縮部12を駆動するモータ11と、が収容され、圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出し、さらに吐出管107を通して冷凍サイクルの凝縮器側(図示せず)に吐出する内部高圧型の密閉型圧縮機である。
【0013】
圧縮機本体容器10は、縦型円筒状のメインシェル10aと、カップ状のトップシェル10bと、カップ状のボトムシェル10cと、を有し、メインシェル10aの上端部にトップシェル10bの開口側10gが第1の溶接部Vで溶接によって固定され、メインシェル10aの下端部にボトムシェル10cの開口側10dが第2の溶接部Wで溶接によって固定されることにより構成されている。
【0014】
冷凍サイクルの蒸発器側の低圧冷媒を圧縮部12に吸入するための圧縮部吸入管102がメインシェル10aを貫通して設けられている。詳しくは、メインシェル10aにガイド管101がろう付されて固定され、圧縮部吸入管102はガイド管101の内側を通ってガイド管101にろう付されて固定されている。
【0015】
圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部から冷凍サイクルの凝縮器側に吐出するための吐出管107がトップシェル10bを貫通して設けられている。吐出管107はトップシェル10bに直接ろう付されて固定されている。
【0016】
圧縮機本体容器10の下方には、冷凍サイクルの蒸発器側から吸入される低圧冷媒の気液を分離して気体冷媒だけを圧縮部12に吸入させるためのアキュムレータ容器25が設けられている。詳しくは、圧縮機本体容器10におけるメインシェル10aとボトムシェル10cの第2の溶接部Wよりも下方の位置で、アキュムレータシェル26の開口側26aをボトムシェル10cの開口側10dとは反対側(以下、ボトムシェル10cの反開口側とも称する)10eに第3の溶接部Xで溶接によって固定してアキュムレータシェル26の内部が密閉されることによりアキュムレータ容器25が形成されている。
【0017】
アキュムレータシェル26には、冷凍サイクルの蒸発器側からアキュムレータ容器25の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管27と、アキュムレータ容器25の内部から圧縮部12へ気体冷媒を送る気液分離管31と、がそれぞれアキュムレータシェル26を貫通してアキュムレータシェル26にろう付されて固定されている。
【0018】
アキュムレータ容器25の外部で気液分離管31は、アキュムレータ容器25の内部から気体冷媒を圧縮部12へ送る連絡管104を介して、圧縮部吸入管102に接続されている。連絡管104は、圧縮機本体容器10及びアキュムレータ容器25の外部に設けられており、アキュムレータ容器25の外部へ延ばされた気液分離管31の端部に接続されている。アキュムレータ容器25の内部におけるアキュムレータ吸入管27及び気液分離管31の詳細については後述する。
【0019】
アキュムレータシェル26における下部には、ロータリ圧縮機1全体を支持するベース部材310が溶接によって固定されている。ベース部材310は、例えば、金属板によって形成されており、アキュムレータシェル26の開口側26aとは反対側(アキュムレータシェル26の反開口側)26bを支持する。
【0020】
圧縮部12は、シリンダ121と、上端板160Tと、下端板160Sと、回転軸15を有し、上端板160T、シリンダ121、下端板160Sは順に積層され複数のボルト175により固定されている。上端板160Tには主軸受部161Tが設けられている。下端板160Sには副軸受部161Sが設けられている。回転軸15には主軸部153と偏心部152と副軸部151と、が設けられている。回転軸15の主軸部153が上端板160Tの主軸受部161Tに篏合し、回転軸15の副軸部151が下端板160Sの副軸受部161Sに篏合することにより、回転軸15は回転自在に支持される。
【0021】
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を有している。ステータ111は、メインシェル10aの内周面に焼嵌めされて固定されている。ロータ112は、回転軸15に焼嵌めされて固定されている。
【0022】
圧縮機本体容器10の内部には、圧縮部12の摺動部材の潤滑及び吸入室133と吐出室131とのシールのために、圧縮部12がほぼ浸漬する量の潤滑油18が封入されている。
【0023】
次に、図2によって圧縮部12を詳しく説明する。
シリンダ121には内部に円筒状の中空部130が設けられ、中空部130にはピストン125が配置されている。ピストン125は回転軸15の偏心部152に嵌め込まれている。シリンダ121には中空部130から外向きに設けられた溝部が設けられ、溝部にはベーン127が配置されている。シリンダ121には外周から溝部に通じるスプリング穴124が設けられ、スプリング穴124にはスプリング126が配置されている。ベーン127の一端がスプリング126によってピストン125に押し当てられることにより、シリンダ121の中空部130においてピストン125の外側の空間が吸入室133と吐出室131に区画される。シリンダ121には、外周から吸入室133に連通する吸入穴135が設けられている。吸入穴135には圧縮部吸入管102が接続される。上端板160Tには、上端板160Tを貫通して吐出室131に連通する吐出穴190が設けられている。上端板160Tには、吐出穴190を開閉する吐出弁200と、吐出弁200の反りを規制する吐出弁押さえ201と、がリベット202によって固定されている。上端板160Tの上側には、吐出穴190を覆う上端板カバー170が配置され、上端板160Tと上端板カバー170とで閉塞される上端板カバー室180を形成する。上端板カバー170は、上端板160Tとシリンダ121とを固定する複数のボルト175によって上端板160Tに固定される。上端板カバー170には、上端板カバー室180と圧縮機本体容器10の内部を連通する上端板カバー吐出穴172が設けられている。
【0024】
以下に、回転軸15の回転による吸入冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌め込まれたピストン125が公転運動することにより、吸入室133が容積を拡大しながら冷媒を吸入する。冷媒の吸入経路として、冷凍サイクルの低圧冷媒は、アキュムレータ吸入管27を通してアキュムレータ容器25の内部に吸入され、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒に液が混ざっていた場合にはアキュムレータ容器25内の下部に滞留し、気体冷媒だけがアキュムレータ容器25の内部の上方に開口した気液分離管31に吸入される。気液分離管31に吸入された気体冷媒は、連絡管104と圧縮部吸入管102とを通って吸入室133に吸入される。冷凍サイクルの蒸発器側から吸入される冷媒のうち液冷媒の量が多い場合は、アキュムレータ容器25の内部において液冷媒の液面が気液分離管31の開口端31cよりも上昇して多量の液冷媒が気液分離管31に流れ込む可能性がある。気液分離管31を通して圧縮部12に多量の液冷媒が流れ込むと圧縮部12を損傷させる原因となる。気液分離管31に多量の液冷媒が流れ込むことを防止するため、気液分離管31には、液冷媒や潤滑油18を少量ずつ気液分離管31に吸入させるための液戻し穴34が設けられている。実施例では、液戻し穴34が、気液分離管31の端部31bにおけるアキュムレータシェル26の上下方向に延びる部分と、アキュムレータシュル26の後述する底面26eに近づけられた下端部分との2か所に設けられている。
【0025】
次に、回転軸15の回転による吐出冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌め込まれたピストン125が公転運動することにより、吐出室131が容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が吐出弁200の外側の上端板カバー室180の圧力よりも高くなると、吐出弁200が開いて吐出室131から上端板カバー室180へ冷媒を吐出する。上端板カバー室180に吐出された冷媒は、上端板カバー170に設けられた上端板カバー吐出穴172から圧縮機本体容器10内に吐出される。
【0026】
圧縮機本体容器10内に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、トップシェル10bに設けられた吐出管107から冷凍サイクルの凝縮器側に吐出される。
【0027】
次に、潤滑油18の流れを説明する。
圧縮機本体容器10内の下部に封入されている潤滑油18は、回転軸の遠心力により回転軸の内部(図示せず)を通って圧縮部12に供給される。圧縮部12に供給された潤滑油18は、冷媒に巻き込まれ霧状となって冷媒とともに圧縮機本体容器10の内部に排出される。霧状となって圧縮機本体容器10の内部に排出された潤滑油18はモータ11の回転力によって遠心力で冷媒と分離され、油滴となって再び圧縮機本体容器10内の下部に戻る。しかしながら一部の潤滑油18は分離されずに冷媒とともに冷凍サイクルに排出される。冷凍サイクルの凝縮器側に排出された潤滑油18は冷凍サイクル内を循環してアキュムレータ容器25に戻り、アキュムレータ容器25の内部で分離されアキュムレータ容器25内の下部に滞留する。アキュムレータ容器25内の下部に滞留した潤滑油18は液冷媒とともに液戻し穴34を通って少量ずつ気液分離管31に流入し、吸入冷媒とともに吸入室133に吸入される。
【0028】
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、本実施例のロータリ圧縮機1の特徴について説明する。本実施例における特徴には、図1に示すように、アキュムレータ容器25の内部におけるアキュムレータ吸入管27の配置が含まれる。
【0029】
図3は、実施例1のロータリ圧縮機1の要部を示す横断面図である。図4は、実施例1のロータリ圧縮機1の要部を示す縦断面図である。
【0030】
図3に示すように、アキュムレータ吸入管27は、アキュムレータ容器25の内部に吸入する冷媒を、アキュムレータ容器25の内周面(アキュムレータシェル26の内周面26c)の周方向Aに沿って旋回させるように設けられている。アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ容器25の内部に吸入された冷媒は、アキュムレータ容器25内の底部に貯留した液冷媒をアキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って旋回させる(図6参照)。
【0031】
このように冷媒を旋回させることにより、アキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面に、アキュムレータ吸入管27から吸入された冷媒が吹き付けられることが抑えられる。そのため、アキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面がアキュムレータ吸入管27から吸入された冷媒によって波打ち液冷媒が飛散してしまうことが、抑制される。これにより、アキュムレータ容器25内の液冷媒の液面が波打つことで液冷媒が飛び散り、気液分離管31に多量の液冷媒が流入することが、抑えられる。
【0032】
また、アキュムレータ容器25内の底部に貯留した液冷媒をアキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って旋回させるようにアキュムレータ吸入管27が配置されていることで、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ容器25の内部に吸入された冷媒に遠心力が働き、アキュムレータ吸入管27から吸入される冷媒を遠心分離によって液冷媒と気体冷媒とに効果的に分離することができる。そのため、気体冷媒と液体冷媒とを分離する、アキュムレータ容器25の機能を高められる。
【0033】
なお、本実施例1において「旋回させる」とは、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う冷媒の流れを、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aにおける少なくとも一部に生じさせることを指しており、アキュムレータ容器25の内周面の全周にわたって冷媒が流れることに限定されない。
【0034】
図3及び図4に示すように、気液分離管31及びアキュムレータ吸入管27は、アキュムレータシェル26の側壁(外周面26d)を貫通してアキュムレータシェル26の外部へ延びるとともに、連絡管104に接続されている。気液分離管31は、図3に示すように、アキュムレータ容器25の上下方向(回転軸15の軸方向、または鉛直方向)から見たとき、アキュムレータ容器25の内部においてアキュムレータ容器25の径方向に延びている。
【0035】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータシェル26を貫通するアキュムレータ吸入管27は、アキュムレータ容器25の内部へ延びる端部27bの管軸Ta1方向が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿うように設けられている。アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向は、アキュムレータ容器25の上下方向を鉛直方向としたとき、鉛直方向と直交する水平面に沿って設けられている。これにより、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う冷媒の旋回流を生じさせることが可能になる。
【0036】
本実施例1では、アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う構造の一例として、アキュムレータ吸入管27の直管状の端部27bの管軸Ta1方向が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う仮想円Cに接するように設けられている。また、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cの端面は、アキュムレータ容器25の上下方向に沿って形成されている。これにより、アキュムレータ吸入管27の開口端27cからアキュムレータ容器25の内部へ吸入された冷媒が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って適切に流れるので、アキュムレータ容器25の内部で旋回する冷媒の流量を確保できる。なお、アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う構造には、端部27bが周方向Aに沿って湾曲される構造も含まれる。
【0037】
気液分離管31は、図1及び図4及び図7に示すように、アキュムレータシェル26の内部においてアキュムレータ容器25の上下方向に沿って延びる端部31bを有しており、この端部31bの開口端31cが、アキュムレータ吸入管27の端部27bの上端27dよりも上方に位置する。図4に示すように、アキュムレータ容器25の上下方向において、気液分離管31の開口端31cは、アキュムレータ吸入管27の端部27bの上端27dから上方へ距離h延ばされている。これにより、図7に示すように、気液分離管31の端部31bの開口端31cが、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面から上方へ遠ざけられるので、液面から飛び散った液冷媒が気液分離管31の開口端31cへ流入することを抑えられる。また、気液分離管31の端部31bの開口端31cが、アキュムレータ容器25の上下方向(鉛直方向)で上向きに開口していることで、気液分離管31の開口端31cをアキュムレータ容器25の上端に近づけて配置することができ、液面から飛び散った液冷媒が気液分離管31の開口端31cへ流入することを抑えられる。
【0038】
図3に示すように、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ容器25の内部において、気液分離管31の端部31bの開口端31cは、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cよりも、アキュムレータ容器25の径方向における内周側に配置されている。これにより、アキュムレータ吸入管27から吸入された冷媒が、アキュムレータ容器25の内周面に沿って旋回するときに気液分離管31の端部31bに衝突することが避けられるので、アキュムレータ容器25内に生じる冷媒の旋回流を適正に形成できる。また、図3及び図7に示すように、キュムレータ吸入管27から吸入された冷媒の旋回流によって、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒も旋回する。そして、アキュムレータ容器25内の冷媒の旋回流によって、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面は、液面における内周側が外周側よりも低くなる。このため、気液分離管31の開口端31cが、液面において外周側よりも低くなる内周側に配置されることで、液面と開口端31cとの距離を確保できるので、液面から飛び散った液冷媒が開口端31cへ流入することを抑えられる。
【0039】
実施例1では一例として、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、気液分離管31の端部31bの管軸Ta2が、アキュムレータ容器25の中心Oを通るように設けられている。アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面は、冷媒の旋回流によって液面における中央が最も低くなる。このため、液冷媒の液面における中央に気液分離管31の開口端31cが配置されることで、液面から開口端31cを最大限に遠ざけられ、液面からの液冷媒が開口端31cへ流入することを更に抑えられる。
【0040】
アキュムレータシェル26は、下方へ向かって膨らんだ皿状の底面26eを有する。底面26eは、アキュムレータシェル26の上下方向から見たときのアキュムレータシェル26の中央、すなわち底面26eの中央が、底面26eの外周部よりも低くなるように形成されている。
【0041】
アキュムレータ容器25の内部において、気液分離管31は、アキュムレータシェル26の底面26eに沿って曲がっている。気液分離管31は、アキュムレータシェル26を貫通した位置から底面26eに沿って下降し、アキュムレータシェル26の中央近傍から上方に向かって湾曲し、アキュムレータシェル26の上下方向(回転軸15の軸方向)に沿って上方へ延ばされている。気液分離管31の開口端31cの端面は、アキュムレータシェル26の上下方向(アキュムレータ容器25の上下方向、鉛直方向)に直交するように形成されており、開口端31cの開口が圧縮機本体容器10のボトムシェル10cの反開口側10eと対向している。このように気液分離管31がアキュムレータシェル26の底面26eに沿って曲がることにより、気液分離管31に設けられる液戻し穴34をアキュムレータ容器25内の底面26e近傍に配置することができ、液冷媒の液面の高さが低い場合でも液冷媒を少量ずつ気液分離管31に吸入させることができる。そのため、アキュムレータ容器25を上下方向に対して大型化できないという制約があっても、気液分離管31の液戻し穴34をアキュムレータ容器25の底面26e近傍に設けることができるとともに、気液分離管31の開口端31cをアキュムレータ容器25の上端に近づけて配置することができ、気液分離管31がアキュムレータ容器25の内部空間を有効に活用することができる。
【0042】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、気液分離管31の端部31bの開口端31cは、アキュムレータシェル26の底面26eと重なる位置に配置されている。これにより、気液分離管31をアキュムレータシェル26の底面26eに沿って曲げることが可能になり、上述と同様に、気液分離管31の長さを適正に確保しながら、アキュムレータ容器25の上下方向に占める気液分離管31の長さを短くできるので、アキュムレータ容器25の上下方向に対する小型化が図られる。
【0043】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ容器25の内部において、アキュムレータ吸入管27の端部27bを、この端部27bの管軸Ta1方向に沿って仮想的に延長した範囲B内に、気液分離管31が配置されていない。言い換えると、アキュムレータ容器25の内部において、範囲Bの外側に気液分離管31が配置されている。これにより、アキュムレータ吸入管27の開口端27cからアキュムレータ容器23の内部へ吸入された直後の冷媒が気液分離管31に衝突することを避けられるので、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面が気液分離管31に衝突した冷媒の流れによって波打ち液冷媒が飛散してしまうことを抑えると共に、冷媒の旋回流の流速低下を抑えられる。更に、冷媒の旋回流の流速低下が抑えられることで、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面における中央側を低く保つことができる。
【0044】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cが位置する仮想円Cの円周上において、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cを始点D1とし、気液分離管31が仮想円Cに交差する位置を終点D2としたとき、始点D1と終点D2とを、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cからの冷媒の流れの向きで仮想円Cの周方向Aに沿って結んだ長さ(例えば、図3の仮想円Cを示す点線上で、始点D1と終点D2とを周方向Aに沿って結んだ長さ)は、仮想円Cの円周長さの1/2倍以上である。実施例1では、始点D1と終点D2とを仮想円Cの周方向Aに沿って結んだ長さは、仮想円Cの円周長さの3/4倍程度の長さになっている。ここで仮想円Cの中心は、アキュムレータ容器25の上下方向(鉛直方向)から見たときの、アキュムレータ容器25の中心Oである。これにより、アキュムレータ吸入管27の開口端27cから供給された冷媒が気液分離管31に衝突するまでの距離が確保されるので、アキュムレータ吸入管27から供給された冷媒の流速低下を抑えて、アキュムレータ容器25内に冷媒の旋回流を容易に発生させることができる。
【0045】
図4に示すように、アキュムレータシェル26の内部において、アキュムレータ容器25の上下方向に沿い、かつ、アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向に平行な平面上にアキュムレータ吸入管27の端部27bを投影した第1領域E1と、上述の平面上に気液分離管31を投影した第2領域E2とが重ならない。単純に言い換えると、アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向に平行な、アキュムレータ容器25の内部の縦断面において、アキュムレータ吸入管27と気液分離管31と上下方向にずれている。これにより、アキュムレータ容器25の上下方向におけるアキュムレータ吸入管27の高さで旋回する冷媒の流れが、気液分離管31に衝突することを避けられるので、適正な旋回流を生じさせ易くなる。実施例1では、第2領域E2が、第1領域E1の下側を通るように、アキュムレータ容器25の内面側からアキュムレータ容器25の径方向に延び、アキュムレータ容器25の中央で上方へ延びている。このため、アキュムレータ吸入管27の高さをアキュムレータ容器25の内周面近傍に沿って流れる旋回流が、気液分離管31に衝突することを避けられる。
【0046】
また、上述したように実施例1のロータリ圧縮機1は、アキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の開口側26aが、圧縮機本体容器10のボトムシェル10cの反開口側10eに接合されているので、圧縮機本体容器10の内部で発生した熱がアキュムレータ容器25へ伝わり易い。このため、圧縮機本体容器10から伝わった熱によって、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒を蒸発させ易くなる。その結果、アキュムレータ容器25内に溜まる液冷媒の量を減らし、液冷媒の液面の高さを低くできるので、液面が波打った場合であっても液面から飛び散った液冷媒が気液分離管31に流入することが抑えられる。
【0047】
なお、実施例1におけるアキュムレータ容器25の内周面は、アキュムレータ容器25の上下方向と平行に形成されたが、例えば、アキュムレータ容器25の内周面の内径が底面側に向かって次第に小さくなるようにアキュムレータ容器25の上下方向に対して内周面が傾斜されてもよい。このようにアキュムレータ容器25の内周面の形状によってアキュムレータ容器25内に生じる冷媒の旋回流が調整されてもよい。
【0048】
(アキュムレータ容器の内部に溜まった液冷媒の液面の挙動)
アキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面の挙動について、実施例と比較例とで比較する。図5は、比較例のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。図6は、比較例のロータリ圧縮機のアキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面の波打ちを模式的に示す縦断面図である。図7は、実施例1におけるアキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面の挙動を模式的に示す縦断面図である。
【0049】
図5に示すように、比較例のロータリ圧縮機501では、アキュムレータ吸入管502の端部502bの開口端502cが、アキュムレータ容器25の内周面(アキュムレータシェル26の内周面26c)の径方向に延びている。比較例のロータリ圧縮機501は、アキュムレータ容器25の内部におけるアキュムレータ吸入管502を除き、実施例1のロータリ圧縮機1と同一構造である。
【0050】
図6に示すように、比較例では、アキュムレータ吸入管502から吸入された冷媒が、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面に吹き付けられることで、液冷媒の液面が波打ち、液面から液冷媒が飛び散り易く、液冷媒が気液分離管31の開口端31cから吸入される問題がある。この問題は、実施例1のように、アキュムレータ容器25の上下方向に対して小型化が図られることで、液冷媒の液面と気液分離管31の端部31bの開口端31aとの距離が近い場合に顕著になる。
【0051】
一方、実施例1では、図7に示すように、アキュムレータ吸入管27から吸入された冷媒が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って旋回し、冷媒の旋回流が、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面に沿って流れる。そして、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒における液面付近は、冷媒の旋回流によって周方向Aに沿って流される。このとき、アキュムレータ容器25内に存在する液冷媒と気体冷媒とに働く遠心力により、気体冷媒よりも密度の大きい液冷媒がアキュムレータ容器25内の外周側に集まるとともに、液冷媒よりも密度の小さい気体冷媒がアキュムレータ容器25内の内周側に集まる。その結果、アキュムレータ容器25の内周面近傍における液冷媒の液面が、アキュムレータ容器25の中央の液面よりも上昇するように液面が変化する。このように液面を変化させるように冷媒が液面に沿って旋回することで、アキュムレータ吸入管27から供給された冷媒によって液面が波打って液冷媒が飛散することが抑制され、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒が気液分離管31へ流入することが抑えられる。
【0052】
(実施例1の効果)
上述したように実施例1のロータリ圧縮機1のアキュムレータ容器25は、冷凍サイクルからアキュムレータ容器25の内部へ冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管27と、アキュムレータ容器25の内部から圧縮部12へ気体冷媒を送る気液分離管31と、を有しており、アキュムレータ吸入管27が、アキュムレータ容器25の内部に吸入された冷媒を、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って旋回させるように設けられている。これにより、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散することを抑制し、気液分離管31に液冷媒が吸入されることを抑えられる。その結果、アキュムレータ容器25から圧縮部12へ液冷媒が送られることを抑え、液冷媒によって圧縮部12が損傷することを防げる。
【0053】
また、実施例1のロータリ圧縮機1において、アキュムレータ容器25は、一端側に開口が形成されたカップ状のアキュムレータシェル26を有し、アキュムレータシェル26の開口側26aが圧縮機本体容器10に接合されており、気液分離管31及びアキュムレータ吸入管27が、アキュムレータシェル26を貫通して設けられている。このため、圧縮機本体容器10の内部で発生した熱がアキュムレータ容器25へ伝わり易ので、圧縮機本体容器10から伝わった熱によって、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒を蒸発させ易くなる。その結果、アキュムレータ容器25内に溜まる液冷媒の量を減らし、液冷媒の液面の高さを低くできるので、液面が波打った場合であっても液面から飛び散った液冷媒が気液分離管31に流入することが抑えられる。
【0054】
また、実施例1のロータリ圧縮機1において、気液分離管31は、アキュムレータシェル26の内部においてアキュムレータ容器25の上下方向に沿って延びる端部31bを有し、この端部31bの開口端31cが、アキュムレータ吸入管27の端部27bよりも上方に位置する。これにより、気液分離管31の端部31bの開口端31cが、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面から上方へ遠ざけられるので、液面から飛び散った液冷媒が気液分離管31の開口端31cへ流入することを抑えられる。
【0055】
また、実施例1のロータリ圧縮機1において、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータシェル26の内部において、気液分離管31の開口端31cは、アキュムレータ吸入管27の開口端27cよりも、アキュムレータ容器25の径方向における内周側に配置されている。これにより、アキュムレータ吸入管27から吸入された冷媒が、アキュムレータ容器25の内周面に沿って旋回するときに気液分離管31の端部31bに衝突することが避けられるので、アキュムレータ容器25内に生じる冷媒の旋回流を適正に確保できる。また、冷媒の旋回流に伴い、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面における外周側よりも液面が低くなる内周側に配置されることで、液面と開口端31cとの距離を確保できるので、液面から飛び散った液冷媒が開口端31cへ流入することを抑えられる。
【0056】
また、実施例1のロータリ圧縮機1は、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、気液分離管31の開口端31cの管軸Ta2が、アキュムレータ容器25の中心Oに位置する。これにより、冷媒の旋回流に伴って、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面において最も低くなる中央に気液分離管31の開口端31cが配置されることで、液面から開口端31cを最大限に遠ざけられ、液面からの液冷媒が開口端31cへ流入することを更に抑えられる。
【0057】
また、実施例1のロータリ圧縮機1において、アキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26は、下方へ向かって膨らんだ底面26eを有しており、気液分離管31が、底面26eに沿って曲がっている。これにより、アキュムレータ容器25内における気液分離管31の長さを適正に確保しながら、気液分離管31がアキュムレータ容器25の上下方向に占める長さを短くできるので、アキュムレータ容器25の上下方向に対する小型化が図られる。
【0058】
また、実施例1のロータリ圧縮機1において、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、気液分離管31の開口端31cは、アキュムレータシェル26の底面26eと重なる位置に配置される。これにより、気液分離管31をアキュムレータシェル26の底面26eに沿って曲げることが可能になり、気液分離管31の長さを適正に確保しながら、アキュムレータ容器25の上下方向に占める気液分離管31の長さを短くできるので、アキュムレータ容器25の上下方向に対する小型化が図られる。
【0059】
また、実施例1のロータリ圧縮機1は、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ容器25の内部において、アキュムレータ吸入管27の端部27bを、この端部27bの管軸Ta1方向に沿って仮想的に延長した範囲B内に、気液分離管31が配置されていない。これにより、アキュムレータ吸入管27の開口端27cからアキュムレータ容器25の内部へ吸入された直後の冷媒が気液分離管31に衝突することを避けられるので、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面が、気液分離管31に衝突した冷媒の流れによって波打って液冷媒が飛散することを抑えると共に、冷媒の旋回流の流速低下を抑えられる。
【0060】
また、実施例1のロータリ圧縮機1は、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ吸入管27の端部27bの開口端27cが位置する仮想円Cの円周上において、アキュムレータ吸入管27の開口端27cを始点D1とし、気液分離管31が仮想円Cに交差する位置を終点D2としたとき、始点D1と終点D2とを冷媒の流れの向きで仮想円Cの周方向Aに沿って結んだ長さは、仮想円Cの円周長さの1/2倍以上である。これにより、アキュムレータ吸入管27の開口端27cから供給された冷媒が気液分離管31に衝突するまでの距離が確保されるので、アキュムレータ吸入管27から供給された冷媒の流速低下を抑えて、アキュムレータ容器25内に冷媒の旋回流を効率的に発生させることができる。
【0061】
また、実施例1のロータリ圧縮機1は、アキュムレータシェル26の内部において、アキュムレータ容器25の上下方向に沿い、かつ、アキュムレータ吸入管27の端部27bの管軸Ta1方向に平行な平面にアキュムレータ吸入管27の端部27bを投影した第1領域E1と、この平面に気液分離管31を投影した第2領域E2とが重ならない。これにより、アキュムレータ容器25の上下方向におけるアキュムレータ吸入管27の高さで旋回する冷媒の流れが、気液分離管31に衝突することを避けられるので、適正な旋回流を生じさせ易くなる。
【0062】
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。他の実施例において、実施例1と同一の構成部材には、実施例1と同一の符号を付けて説明を省略する。
【実施例0063】
図8は、実施例2のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。実施例2は、アキュムレータ吸入管の開口端の形状が、実施例1におけるアキュムレータ吸入管27と異なる。
【0064】
図8に示すように、実施例2のロータリ圧縮機2が備えるアキュムレータ吸入管37の端部37bは、端部37bの管軸Ta1に対して端面が傾斜した開口端37cを有する。アキュムレータ吸入管37の端部37bの管軸Ta1方向は、アキュムレータ容器25の上下方向と直交する水平面に沿って設けられている。アキュムレータ吸入管37の開口端37cの端面は、アキュムレータ容器25の上下方向(回転軸15の軸方向)に沿って形成されている。
【0065】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ吸入管37は、アキュムレータ容器25の内周面(アキュムレータシェル26の内周面26c)から開口端37cまでの端部37bの長さが大きい側が、アキュムレータ容器25の中央側に位置するように設けられている。言い換えると、アキュムレータ吸入管37の端部37bは、アキュムレータ容器25の径方向における外周側の端部37bの長さを第1長さL1とし、内周側の端部37bの長さを第2長さL2としたとき、L1<L2となるように、端部37bの管軸Ta1に対して開口端37cが傾斜されている。
【0066】
(実施例2の効果)
実施例2のロータリ圧縮機2は、上述のようにアキュムレータ吸入管37の開口端37cが形成されることにより、アキュムレータ吸入管37の開口端37cから供給された冷媒がアキュムレータ容器25の中央側へ広がることが抑えられ、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って冷媒を効率よく旋回させることが可能になる。このため、実施例2においても、実施例1と同様に、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散することを抑制し、気液分離管31へ液冷媒が吸入されることを抑えられる。その結果、アキュムレータ容器25から圧縮部12へ液冷媒が送られることを抑え、液冷媒によって圧縮部12が損傷することを防げる。
【実施例0067】
図9は、実施例3のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。実施例3は、アキュムレータ吸入管の端部の形状が、実施例1、2におけるアキュムレータ吸入管27、37と異なる。
【0068】
図9に示すように、実施例3のロータリ圧縮機3が備えるアキュムレータ吸入管47は、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、アキュムレータ容器25の外周面(アキュムレータシェル26の外周面26d)の法線方向に沿ってアキュムレータシェル26を貫通して設けられており、アキュムレータ容器25の内部において、アキュムレータ吸入管47の端部47bが、アキュムレータ容器25の内周面(アキュムレータシェル26の内周面26c)に沿う方向に曲げられている。
【0069】
実施例3では一例として、アキュムレータ吸入管47の端部47bは、この端部47bの管軸Ta1方向に沿って仮想的に延長した範囲B内に、気液分離管31が配置されないように、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに隣り合う気液分離管31側とは反対側に向かって、周方向Aに沿って曲げられている。
【0070】
これにより、アキュムレータ吸入管47の端部47bからアキュムレータ容器25の内部へ吸入された直後の冷媒が気液分離管31に衝突することを避けられるので、アキュムレータ容器25内に溜まった液冷媒の液面が、気液分離管31に衝突した冷媒の流れによって波打って液冷媒が飛散することを抑えると共に、冷媒の旋回流の流速低下を抑えられる。
【0071】
また、アキュムレータ吸入管47の端部47bの管軸Ta1方向は、アキュムレータ容器25の上下方向と直交する水平面に沿って設けられている。アキュムレータ吸入管47の端部47bの開口端47cの端面は、アキュムレータ容器25の上下方向に沿って形成されている。なお、アキュムレータ吸入管47がアキュムレータシェル26を貫通する外周面26dの法線方向は、外周面26dに直交する方向に限定されず、直交する方向に対して1度~2度程度、傾斜されてもよい。
【0072】
また、アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、気液分離管31の開口端31cとアキュムレータ吸入管47の開口端47cとの位置関係は、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aにおける気液分離管31の位置を0°としてアキュムレータ吸入管47の開口端47cの位置が、気液分離管31の開口端31cの位置に対して±90°以内に配置される。これにより、アキュムレータ容器25の外部に延ばされるアキュムレータ吸入管47と気液分離管31とを、アキュムレータ容器25の周方向に対して互いに近づけて配置することができる。このため、アキュムレータ吸入管47と気液分離管31によって、アキュムレータ容器25の径方向へ膨らむ箇所がまとめられ、アキュムレータ容器25の径方向への大型化を抑制することができる。また、アキュムレータ吸入管47の開口端47cから供給された冷媒が気液分離管31に衝突するまでの距離が確保されるので、アキュムレータ吸入管47から供給された冷媒の流速低下を抑えて、アキュムレータ容器25内に液冷媒の旋回流を容易に発生させることができる。
【0073】
(実施例3の効果)
実施例3のロータリ圧縮機3によれば、アキュムレータ吸入管47が、アキュムレータシェル26の外周面26dに直交するように貫通することで、アキュムレータシェル26の穴あけ加工が容易になり、穴あけ工程での不良品の発生を低減し、ロータリ圧縮機3の生産性の向上が図られる。実施例3においても、実施例1、2と同様に、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散することを抑制し、気液分離管31に液冷媒が吸入されることを抑えられる。その結果、アキュムレータ容器25から圧縮部12へ液冷媒が送られることを抑え、液冷媒によって圧縮部12が損傷することを防げる。
【実施例0074】
図10は、実施例4のロータリ圧縮機の要部を示す横断面図である。実施例4は、アキュムレータ吸入管とアキュムレータ容器25との接続構造が実施例1~3と異なる。
【0075】
図10に示すように、実施例4のロータリ圧縮機4が備えるアキュムレータ吸入管57は、冷凍サイクルから冷媒を吸入する吸入管58と、吸入管58とアキュムレータ容器25とを接続する接続管59と、を有する。接続管59は、アキュムレータ容器25(アキュムレータシェル26)を貫通して設けられており、アキュムレータ容器25の内周面に沿って開口が形成された吸入口59aを有する。接続管59は、アキュムレータシェル26にろう付け等によって接合されている。吸入管58は、接続管59に差し込まれて接続管59にろう付け等によって接合されている。
【0076】
アキュムレータ容器25の上下方向から見たとき、接続管59は、この接続管59の管軸Ta3方向がアキュムレータ容器25の内周面に沿うように設けられている。接続管59の管軸Ta3方向は、アキュムレータ容器25の上下方向と直交する水平面に沿って設けられている。実施例4では一例として、接続管59の管軸Ta3方向が、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿う仮想円Cに接するように設けられている。
【0077】
(実施例4の効果)
実施例4のロータリ圧縮機4は、アキュムレータ吸入管57の接続管59が、アキュムレータ容器25の内周面に沿って開口が形成された吸入口59aを有することにより、実施例1(実施例2、3)のようにアキュムレータ吸入管27(37、47)の端部27b(37b、47b)がアキュムレータ容器25の内周面から突出せずに、冷媒を吸入する吸入口59aがアキュムレータ容器25の内周面に近づけられるので、アキュムレータ容器25の内周面に沿う冷媒の旋回流を容易に発生させることができる。実施例4においても、実施例1~3と同様に、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散することを抑制し、気液分離管31に液冷媒が吸入されることを抑えられる。その結果、アキュムレータ容器25から圧縮部12へ液冷媒が送られることを抑え、液冷媒によって圧縮部12が損傷することを防げる。
【0078】
なお、本実施例1~4では、1シリンダ型のロータリ圧縮機について説明したが、2シリンダ型のロータリ圧縮機に適用されてもよい。図示しないが、2シリンダ型のロータリ圧縮機の場合には、アキュムレータ容器25の上下方向から見たときに、アキュムレータ容器25の内部において、例えば、2本の気液分離管31が互いに平行に間隔をあけて配置される。この場合、アキュムレータ容器25の内部において、各気液分離管31の開口端31cは、アキュムレータ容器25の中心O近傍に配置され、アキュムレータ吸入管27が、上述した各実施例1~4と同様に設けられる。
【0079】
なお、本実施例1~4では、密閉型圧縮機としてロータリ圧縮機を例にして説明したが、例えばスクロール圧縮機に適用されてもよい。図示しないが、スクロール圧縮機の場合であっても、アキュムレータ吸入管27は、アキュムレータ容器25の内部に吸入された冷媒を、アキュムレータ容器25の内周面の周方向Aに沿って旋回させるように設けられている。これにより、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒によってアキュムレータ容器25の内部に溜まった液冷媒の液面が波打って液冷媒が飛散することを抑制し、気液分離管31に液冷媒が吸入されることを抑えられる。その結果、アキュムレータ容器25から圧縮部12へ液冷媒が送られることを抑え、液冷媒によって圧縮部12が損傷することを防げる。
【符号の説明】
【0080】
1 ロータリ圧縮機
10 圧縮機本体容器
12 圧縮部
25 アキュムレータ容器
26 アキュムレータシェル
26c 内周面
26d 外周面
26e 底面
27、37、47、57 アキュムレータ吸入管
27b、37b、47b 端部
27c、37c、47c 開口端
31 気液分離管
31b 端部
31c 開口端
58 吸入管
59 接続管
59a 吸入口
A 周方向
B 範囲
C 仮想円
D1 始点
D2 終点
E1 第1領域
E2 第2領域
L1 第1長さ
L2 第2長さ
O 中心
Ta1、Ta2、Ta3 管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10