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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074548
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ステアリングロックシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/0215 20130101AFI20240524BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20240524BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185783
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 太一
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL18
2E250SS01
(57)【要約】
【課題】製品の不具合にともなう故障の発生頻度を低減させて安全性を担保し、かつ、ISO26262の要件を満たしつつ設計が容易であり検証の負担を軽減できる。
【解決手段】ステアリングロックシステム1は、車両を起動させるイグニッション電源5と、イグニッション電源5のオン状態またはオフ状態を表すイグニッション電源信号の出力を保持するラッチ回路15と、車両のステアリング2のロック判定を行い、ロック判定に基づいてステアリング2へロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部8と、ロック要求信号とイグニッション電源信号とに基づいてステアリング2のロックを行うステアリングロック駆動部7と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行可能な状態でオン状態を取る電源と、
前記電源のオン状態またはオフ状態を表す電源信号の出力を保持するラッチ回路と、
前記車両のステアリングのロック判定を行い、前記ロック判定に基づいて前記ステアリングへロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部と、
前記ロック要求信号と前記電源信号とに基づいて前記ステアリングのロックを行うステアリングロック駆動部と、を備えるステアリングロックシステム。
【請求項2】
前記ステアリングロック駆動部は、
前記ラッチ回路が保持する前記電源信号がオフ状態、かつ前記ロック要求信号がロック指令の場合にステアリングのロックを実行し、
前記ラッチ回路が保持する前記電源信号がオフ状態、かつ前記ロック要求信号がロック未指令の場合、
前記ラッチ回路が保持する前記電源信号がオン状態、かつ前記ロック要求信号がロック指令の場合、または、
前記ラッチ回路が保持する前記電源信号がオン状態、かつ前記ロック要求信号がロック未指令の場合にステアリングのロックを実行しない請求項1に記載のステアリングロックシステム。
【請求項3】
前記ラッチ回路が保持する前記電源信号のオン状態をオフ状態にリセットさせるリセット信号を出力するリセット処理装置と、
前記リセット処理装置と前記ラッチ回路との間に設けられて前記電源信号がオン状態の場合に前記リセット処理装置が出力する前記リセット信号が前記ラッチ回路へ入力されることを防止するラッチリセット防止回路と、を備える請求項2に記載のステアリングロックシステム。
【請求項4】
前記ラッチリセット防止回路は、前記電源信号がオフ状態の場合に前記リセット信号を前記ラッチ回路へ出力する請求項3に記載のステアリングロックシステム。
【請求項5】
車両の走行状態または停車状態を表す静動信号の出力を保持するラッチ回路と、
前記車両のステアリングのロック判定を行い、前記ロック判定に基づいて前記ステアリングへロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部と、
前記ロック要求信号と前記静動信号に基づいて前記ステアリングのロックを行うステアリングロック駆動部と、を備えるステアリングロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、ステアリングロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止用として車両に搭載されるステアリングロックシステムが知られている。従来のステアリングロックシステムは、車両に搭載されてステアリングロックの要否を個々に判定する複数のマイコンを備え、これら複数のマイコンの個々の判定を比較してステアリングシャフトの回転をロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-10438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
降車信号を出力するセンサーと、車速信号を出力するセンサーと、それぞれのセンサーの出力を個々独立に受信して個々独立にステアリングロックの要否を判断する複数のマイコンと、を備えるステアリングロックシステムが知られている。この従来のステアリングロックシステムは、ステアリングロックの判定に2つのマイコンを使用する。例えば、一方のマイコンは、降車状態を検出する降車信号を受信してステアリングロックの判定を行う。他方のマイコンは、走行状態を検出する車速信号を受信してステアリングロックの判定を行う。従来のステアリングロックシステムは、ステアリングロックの実否判断に冗長性を有し、走行中のステアリングロック制御の誤った実行を防止する。換言すると、従来のステアリングロックシステムは、停車状態を個別に判定する複数の信号により車両が停車していることを判定し、ステアリングロックを駆動する。
【0005】
このような構成を備える従来のステアリングロックシステムは、機能安全活動においてISO26262規格で定義される自動車安全水準(Automotive Safety Integrity Level、以下、単に「ASIL」と言う。)の最高水準であるASIL-Dを達成する。ASILのレベルはA、B、C、Dの4段階があり、ASIL-Aはハザードによるリスクの程度が最も低いことを示し、ASIL-Dはハザードによるリスクの程度が最も高いことを示す。ASIL-Aにも満たない水準はASIL-QM(Quality Management)と呼ばれる。
【0006】
従来のステアリングロックシステムは、停車状態を個別に判定する複数の信号として、車速信号と、シフトP信号とを用いる。しかしながら、MT仕様の車両はシフトPの信号を出力し得ない。したがって、MT仕様の車両では、シフトP信号以外の信号を停車信号として求める必要がある。しかしながら、ASIL-Bの安全水準を担保できる信号が少なく、別途専用のセンサーを搭載する場合にはコストアップを招く。
【0007】
さらに、ASILのレベルが高くなるにつれてマイコンに搭載されるソフトウェアの検証プロセスが増加し、ソフトウェアの開発工数が増える。しかも、2つの独立したマイコンのそれぞれに少なくともASIL-Bの安全水準を要求する場合には、検証プロセスはさらに倍増し、ソフトウェアの開発の負担も倍増する。
【0008】
そこで、本発明は、製品の不具合にともなう故障の発生頻度を低減させて安全性を担保し、かつ、ISO26262の要件を満たしつつ設計が容易であり検証の負担を軽減可能なステアリングロックシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムは、車両が走行可能な状態でオン状態を取る電源と、前記電源のオン状態またはオフ状態を表す電源信号の出力を保持するラッチ回路と、前記車両のステアリングのロック判定を行い、前記ロック判定に基づいて前記ステアリングへロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部と、前記ロック要求信号と前記電源信号とに基づいて前記ステアリングのロックを行うステアリングロック駆動部と、を備えている。
【0010】
また、前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムは、車両の走行状態または停車状態を表す静動信号の出力を保持するラッチ回路と、前記車両のステアリングのロック判定を行い、前記ロック判定に基づいて前記ステアリングへロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部と、前記ロック要求信号と前記静動信号に基づいて前記ステアリングのロックを行うステアリングロック駆動部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製品の不具合にともなう故障の発生頻度を低減させて安全性を担保し、かつ、ISO26262の要件を満たしつつ設計が容易であり検証の負担を軽減可能なステアリングロックシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムのブロック図。
図2】本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムのラッチ回路制御部の論理回路図。
図3】本発明の実施形態に係る第二例のステアリングロックシステムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るステアリングロックシステムについて図1から図3を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムのブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、車両の盗難を防止するため、車両のエンジン(図示省略)が停止し、かつ所要のロック条件が満たされた場合にステアリング2をロックする。ステアリングロックシステム1は、ハンドルロックシステムとも呼ばれる。ステアリングロックシステム1は、車両(図示省略)を起動させるイグニッション電源5と、ボディコントロールモジュール6(Body Control Module、以下「BCM6」と呼ぶ。)と、ステアリングロック駆動部7と、ステアリング2と、を備えている。
【0016】
BCM6は、車両の各種ライト、ワイパー、ドアロックなどの機能を制御する電子回路(図示省略)を備えている。また、BCM6は、ステアリング2のロック判定を行い、このロック判定に基づいてステアリング2のロックを要求するロック要求信号を出力するステアリングロック制御部8と、ラッチ回路制御部9と、を備えている。
【0017】
ステアリングロック制御部8は、ステアリング2のロック判定を行い、このロック判定に基づいてステアリング2のロックを要求するロック要求信号を出力する。ステアリングロック制御部8は、ステアリング2のロック判定を行うロック判定部11と、ロック判定部11のロック判定に基づいてステアリング2のロックをステアリングロック駆動部7に要求するロック要求信号を出力するロック要求出力部12と、を備えている。ステアリングロック制御部8は、マイコンと、マイコンで実行される、降車状態を検出する降車信号を受信してステアリングロックの判定を行うプログラムを記憶する記憶装置と、を備えている。
【0018】
ロック判定部11は、車両の降車状態を検出する降車センサー(図示省略)の出力信号である降車信号を受信し、この降車信号に基づいてロック判定、すなわちステアリングロックの要否を判定する。降車信号は、例えば、エンジンが運転状態から停止した後、車両の搭乗者が降車にともない車載ドアの開閉を行った場合に、降車状態が成立したと判断した降車センサーが出力する信号である。ロック判定部11は、この降車信号を受信した場合に、ステアリング2のロックを要すると判定する。
【0019】
ロック要求出力部12は、ロック判定部11のロック判定に基づいて、ステアリング2のロックを要求するロック要求信号をステアリングロック駆動部7へ出力する。なお、ステアリング2のロックを要求するロック要求信号をロック指令と呼ぶ。例えば、ロック判定部11がステアリング2のロックを要すると判定した場合には、ロック要求出力部12は、ロック指令をステアリングロック駆動部7へ出力する。
【0020】
なお、ロック要求信号は、0値または1値を取る二値化信号であるものとする。ロック指令は1値を取るロック要求信号である。0値のロック要求信号を、説明の便宜としてロック未指令と呼ぶ。
【0021】
イグニッション電源5は、車載バッテリーから各種電気系統の電気部品を機能させるための電源である。イグニッション電源5は、各種電気系統の電気部品へ電力を送る場合にオン状態を取り、各種電気系統の電気部品へ電力を送らない場合にオフ状態を取る。エンジンを搭載していないEV(Electric Vehicle)では、イグニッション電源5は、イグニッションスイッチ、所謂プッシュスタートストップスイッチの操作に対応する。イグニッション電源5がオフ状態の状態で、例えばブレーキを踏まずにイグニッションスイッチが2回押し下される、またはブレーキを踏んでイグニッションスイッチが1回押し下されることで、イグニッション電源5は、オン状態に遷移する。
【0022】
ここで、説明の便宜のため、イグニッション電源5からBCM6へ入力されるイグニッション電源5のオン状態またはオフ状態を表す信号をイグニッション電源信号と呼ぶ。イグニッション電源信号は、イグニッション電源5のオン状態またはオフ状態に対応する二値化信号である。イグニッション電源信号は、イグニッション電源5が所定の電圧を出力している場合にオン状態を表し、イグニッション電源5が所定の電圧を出力していない場合にオフ状態を表す二値化信号であっても良い。イグニッション電源5がオン状態の場合にイグニッション電源信号は1値を取り、イグニッション電源5がオフ状態の場合にイグニッション電源信号は0値を取るものとする。
【0023】
リセット処理装置13は、イグニッション電源5がオフ状態、かつアクセサリー電源(図示省略)がオフ状態である車両電源のロック状態で降車信号が入力されるとリセット信号を出力する。リセット信号は、0値または1値を取る二値化信号である。リセット信号は、イグニッション電源信号が0値(オフ状態)の場合には1値を取り、イグニッション電源信号が1値(オン状態)の場合には0値を取るものとする。なお、リセット処理装置13は、バッテリーの消耗を避けるため、降車のタイミングで一時的に1値のリセット信号を出力することが好ましい。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るステアリングロックシステムのラッチ回路制御部の論理回路図である。
【0025】
図1に加えて図2に示すように、本実施形態に係るステアリングロックシステム1のラッチ回路制御部9は、イグニッション電源5のオン状態またはオフ状態を表すイグニッション電源信号の出力を保持するラッチ回路15と、ラッチ回路15の出力およびロック要求出力部12の出力に基づいてステアリング2のロック要求信号の遮断処理を行うロック駆動遮断部16と、を備えている。
【0026】
また、ラッチ回路制御部9は、ラッチ回路15の出力状態のリセットを防止するラッチリセット防止回路17を備えている。
【0027】
ここで先ず、リセット処理装置13は、イグニッション電源信号のオン状態を表すラッチ回路15の出力を、オフ状態を表す出力にリセットさせることを企図して1値のリセット信号を出力する。つまり、イグニッション電源5がオフ状態かつアクセサリー電源がオフ状態である車両電源のロック状態で降車信号が入力された場合に出力される1値のリセット信号は、イグニッション電源信号のオン状態を表すラッチ回路15の出力を、オフ状態を表す出力にリセットさせることを企図して出力される。なお、アクセサリー電源がオフ状態の状態で、例えばブレーキを踏まずにイグニッションスイッチが1回押し下されることで、アクセサリー電源は、オン状態に遷移する。また、ブレーキを踏んでイグニッションスイッチが1回押し下されることで、イグニッション電源5のオン状態への遷移とともにアクセサリー電源もオン状態へ遷移する。
【0028】
ラッチリセット防止回路17は、リセット処理装置13とラッチ回路15との間に設けられている。ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源信号が1値(オン状態)の場合にリセット処理装置13が出力するリセット信号(1値のリセット信号)がラッチ回路15へ入力されることを防止する。
【0029】
ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源5から入力されるイグニッション電源信号を否定するNOT回路21と、NOT回路21の出力とリセット処理装置13の出力であるリセット信号との論理積を出力するAND回路22と、を備えている。
【0030】
AND回路22は、2つの入力端子25、26と、1つの出力端子27と、を有している。AND回路22の第一入力端子25は、NOT回路21を介してイグニッション電源5の出力に接続されている。AND回路22の第二入力端子26は、リセット処理装置13に接続されている。AND回路22の出力端子27は、ラッチ回路15に接続されている。AND回路22の出力は、ラッチリセット防止回路17の出力である。
【0031】
先ず、ラッチ回路15のリセットを企図しない0値のリセット信号がリセット処理装置13からラッチリセット防止回路17に入力される場合には、AND回路22の第二入力端子26には0値が入力される。AND回路22は論理積を出力するので、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源5から入力されるイグニッション電源信号の値に係わらず、常に0値を出力する。つまり、リセット処理装置13がラッチ回路15のリセットを企図しない0値のリセット信号を出力する場合には、ラッチリセット防止回路17は、常に0値を出力する。
【0032】
次いで、ラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号がリセット処理装置13からラッチリセット防止回路17に入力される場合には、AND回路22の第一入力端子25には1値が入力される。AND回路22は論理積を出力するので、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源5から入力されるイグニッション電源信号の値によって出力を変える。
【0033】
オン状態を表す1値のイグニッション電源信号がイグニッション電源5からラッチリセット防止回路17に入力され、かつラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号がリセット処理装置13からラッチリセット防止回路17に入力される場合を説明する。NOT回路21によってイグニッション電源信号は反転される。そのため、AND回路22の第一入力端子25には0値が入力される一方、第二入力端子26には1値が入力される。AND回路22は論理積を出力するので、ラッチリセット防止回路17は0値を出力する。つまり、リセット処理装置13がラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号を出力していても、オン状態を表す1値のイグニッション電源信号を出力している場合には、ラッチリセット防止回路17は、0値を出力する。
【0034】
オフ状態を表す0値のイグニッション電源信号がイグニッション電源5からラッチリセット防止回路17に入力され、かつラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号がリセット処理装置13からラッチリセット防止回路17に入力される場合を説明する。NOT回路21によってイグニッション電源信号は反転される。そのため、AND回路22の第一入力端子25には1値が入力され、第二入力端子26には1値が入力される。AND回路22は論理積を出力するので、ラッチリセット防止回路17は1値を出力する。つまり、リセット処理装置13がラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号を出力し、かつオフ状態を表す0値のイグニッション電源信号を出力している場合には、ラッチリセット防止回路17は、1値を出力する。
【0035】
つまり、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源信号が0値(オフ状態)であり、かつリセット信号がラッチ回路15のリセットを企図する1値の場合には、ラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号を通過させ、その他の場合には、ラッチ回路15のリセットを企図しない0値を出力する。換言すると、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源信号が1値(オン状態)の場合には、常にラッチ回路15のリセットを企図しない0値を出力する。
【0036】
ラッチ回路15は、たすき掛けに接続された一対のNOR回路29a、29bを備えている。それぞれのNOR回路29a、29bは、否定論理和すなわち、全ての入力の論理和をとったものの反転を出力する。ラッチ回路15は、S入力端子31と、R入力端子32と、Q出力端子33と、を備えている。S入力端子31は、イグニッション電源5に直接的に接続されている。R入力端子32は、ラッチリセット防止回路17に接続されている。Q出力端子33は、ロック駆動遮断部16に接続されている。なお、イグニッション電源5が出力するイグニッション電源信号は、ラッチ回路15のS入力端子31に入力される。そのため、イグニッション電源信号は、ラッチ回路15の入力として好適な二値化信号であることが好ましい。
【0037】
ラッチリセット防止回路17がラッチ回路15のリセットを企図しない0値を出力する場合のラッチ回路15の出力について説明する。
【0038】
R入力端子32の入力であるラッチリセット防止回路17の出力が0値の間にS入力端子31の入力であるイグニッション電源信号が1値(オン状態)に遷移した場合には、Q出力端子33の出力は1値に遷移する。つまり、ラッチ回路15の出力は1値になる。S入力端子31の入力であるイグニッション電源信号が0値(オフ状態)に戻った後も、ラッチ回路15は、Q出力端子33の1値の出力を保持する。つまり、イグニッション電源5がオン状態、かつラッチリセット防止回路17がリセット信号を遮断している場合に、ラッチ回路15は、イグニッション電源5のオン状態を表す1値を出力し、これを保持する。
【0039】
したがって、ラッチリセット防止回路17からリセットを企図しない0値が入力され、かつイグニッション電源信号から一旦1値(オン状態)が入力された場合には、ラッチ回路15は、イグニッション電源信号の値に係わらず、イグニッション電源5のオン状態を表す1値を出力し、これを保持する。なお、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源信号がオフ状態であり、かつリセット信号がラッチ回路15のリセットを企図する1値の場合に、ラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号を出力する。つまり、イグニッション電源信号がオフ状態であっても、リセット処理装置13がリセット信号を出力しない限り、ラッチ回路15は、イグニッション電源5のオン状態を表す1値を出力し、これを保持する。
【0040】
次いで、イグニッション電源5がオフ状態を表す0値を出力する場合のラッチ回路15の出力について説明する。
【0041】
S入力端子31の入力であるイグニッション電源信号が0値(オフ状態)の間にR入力端子32の入力であるラッチリセット防止回路17の出力がリセットを企図する1値に遷移した場合には、Q出力端子33の出力は0値に遷移する。なお、ラッチリセット防止回路17は、イグニッション電源信号が0値(オフ状態)であり、かつリセット信号がラッチ回路15のリセットを企図する1値の場合には、ラッチ回路15のリセットを企図する1値のリセット信号を通過させ、その他の場合には、ラッチ回路15のリセットを企図しない0値を出力する。つまり、イグニッション電源5がオフ状態、かつリセット信号が出力される車両電源のロック状態の場合に、ラッチ回路15は、イグニッション電源5のオン状態を表す1値の出力状態からリセットされてオフ状態を表す0値を出力し、これを保持する。したがって、リセット処理装置13が出力する1値のリセット信号は、イグニッション電源5が0値(オフ状態)のイグニッション電源信号を出力する場合に、ラッチ回路15が保持するイグニッション電源信号の1値(オン状態)、つまりQ出力端子33の1値の出力を、0値(オフ状態)の出力にリセットする。
【0042】
また、S入力端子31の入力であるイグニッション電源信号が0値(オフ状態)の間にR入力端子32の入力であるラッチリセット防止回路17の出力が0値に遷移した場合には、Q出力端子33の出力は変化しない。つまり、ラッチ回路15の出力は、ラッチリセット防止回路17の出力に係わらず維持される。ラッチ回路15がイグニッション電源5のオン状態を表す1値を出力している場合には、この状態が維持され、ラッチ回路15がイグニッション電源5のオフ状態を表す0値を出力している場合には、この状態が維持される。
【0043】
以上のように、ラッチリセット防止回路17は、ラッチ回路15がイグニッション電源5のオン状態を表す1値を保持している場合には、リセット処理装置13がリセット信号を誤送信した場合であっても、企図しないラッチ回路15の遷移を防止する。
【0044】
ラッチ回路制御部9は、リセット信号とイグニッション電源信号の2つの信号を比較し、企図しないリセット信号の入力によるラッチ回路15の企図しない出力状態の遷移を防ぐ。よって、ラッチ回路制御部9は、イグニッション電源5のオン状態またはオフ状態の出力を保持するラッチ回路15の誤作動を防止し、その後の処理であるステアリング2のロック制御の誤作動を低減でき、安全性の向上を図ることができる。
【0045】
なお、ラッチ回路15の出力が不定になって安定性を欠くので、S入力端子31およびR入力端子32の双方に同時に1値を入力することは好ましくない。
【0046】
また、1値のイグニッション電源信号がR入力端子32に入力され、かつ1値のリセット信号がS入力端子31に入力されることを避けるため、ラッチリセット防止回路17は、S入力端子31ではなくR入力端子32に接続されている。
【0047】
ロック駆動遮断部16の入力側は、ラッチ回路15の出力、およびステアリングロック制御部8のロック要求出力部12の出力に接続されている。ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15が出力するイグニッション電源信号、およびロック要求出力部12が出力するロック要求信号に基づいて、イグニッション電源信号のオン状態またはオフ状態を表す二値化信号をステアリングロック駆動部7へ出力するか否かを切り替える。
【0048】
ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15の出力を否定する第二NOT回路41と、第二NOT回路41の出力とロック要求出力部12の出力であるロック要求信号との論理積を出力する第二AND回路42と、を備えている。
【0049】
第二AND回路42は、2つの入力端子45、46と、1つの出力端子47と、を有している。第二AND回路42の第一入力端子45は、ロック要求出力部12に接続されている。第二AND回路42の第二入力端子46は、第二NOT回路41を介してラッチ回路15の出力に接続されている。第二AND回路42の出力端子47は、ステアリングロック駆動部7に接続されている。第二AND回路42の出力は、ロック駆動遮断部16の出力である。
【0050】
先ず、ロック要求出力部12がロック未指令を表す0値のロック要求信号を出力する場合には、第二AND回路42の第一入力端子45には0値が入力される。第二AND回路42は論理積を出力するので、ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15の出力の値に係わらず、常に0値を出力する。
【0051】
次いで、ロック要求出力部12がロック指令を表す1値のロック要求信号の場合には、第二AND回路42の第一入力端子45には1値が入力される。第二AND回路42は論理積を出力するので、ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15の出力の値によって出力を変える。
【0052】
ロック要求出力部12がロック指令を表す1値を出力し、かつラッチ回路15がイグニッション電源5のオン状態を表す1値を出力する場合を説明する。第二NOT回路41によってラッチ回路15の出力は反転される。そのため、第二AND回路42の第一入力端子45には1値が入力される一方、第二入力端子46には0値が入力される。第二AND回路42は論理積を出力するので、ロック駆動遮断部16は0値を出力する。
【0053】
ロック要求出力部12がロック指令を表す1値を出力し、かつラッチ回路15がイグニッション電源5のオフ状態を表す0値を出力する場合を説明する。第二NOT回路41によってラッチ回路15の出力は反転される。そのため、第二AND回路42の第一入力端子45には1値が入力され、第二入力端子46には1値が入力される。第二AND回路42は論理積を出力するので、ロック駆動遮断部16は1値を出力する。
【0054】
つまり、ロック駆動遮断部16は、ロック要求信号がロック指令を表す1値であり、かつイグニッション電源信号がイグニッション電源5のオフ状態を表す0値の場合に、ステアリング2のロックを企図する1値のロック指令を通過させ、その他の場合には、ステアリング2のロックを企図しない0値のロック未指令を通過させる。換言すると、ロック駆動遮断部16は、ステアリングロック制御部8でロック未指令の出力条件が成立している場合には、ラッチ回路15の出力に係わらず、ステアリング2のロックを企図しない0値のロック未指令を通過させる。また、ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15がイグニッション電源5のオン状態を表す1値を保持している場合には、ステアリングロック制御部8の出力に係わらず、ステアリング2のロックを企図しない0値のロック未指令を出力する。換言すると、ロック駆動遮断部16は、ラッチ回路15がイグニッション電源5のオン状態を表す1値を保持している場合には、ステアリングロック制御部8の出力を遮断する。
【0055】
なお、ロック駆動遮断部16の出力をロック遮断信号と呼ぶ。ロック遮断信号は、0値または1値を取る二値化信号である。1値のロック遮断信号は、ステアリング2のロックを企図するロック指令を表し、0値のロック遮断信号は、ステアリング2のロックを企図しないロック未指令を表す。
【0056】
図1へ戻って、ステアリングロック駆動部7は、ステアリングロック制御部8が出力するロック要求信号を受け取るロック要求入力部51と、ラッチ回路制御部9が出力するロック遮断信号を受け取るロック駆動遮断入力部52と、ロック要求入力部51の出力に基づいてステアリング2のロックを作動させるロック作動部53と、ロック駆動遮断入力部52の出力に基づいてロック作動部53からステアリング2へのロックの作動を遮断するスイッチ部55と、を備えている。
【0057】
ロック要求入力部51は、ステアリングロック制御部8のロック要求出力部12が出力するロック要求信号を取得し、ロック要求信号がロック指令である場合にロック作動部53へロックの作動要求を出力し、ロック要求信号がロック未指令である場合にロック作動部53へロックの解除要求を出力する。
【0058】
ロック作動部53は、ロック要求入力部51からロックの作動要求が入力された場合には、ステアリング2のロックを作動させる信号を出力し、またはロックを作動させる電力を供給する。
【0059】
スイッチ部55は、ロック駆動遮断入力部52の指令に基づいて、ロック作動部53からステアリング2へ出力される信号の通過あるいは遮断を切り替える開閉器、または電力の供給または遮断を切り替える開閉器である。
【0060】
ロック駆動遮断入力部52は、ラッチ回路制御部9のロック駆動遮断部16が出力するロック遮断信号を取得し、ロック遮断信号がロック指令である場合にスイッチ部55を閉じてステアリング2へ出力される信号の通過、または電力の供給を許可し、ロック遮断信号がロック未指令である場合にスイッチ部55を開いてステアリング2へ出力される信号の遮断、または電力の供給を遮断する。
【0061】
ステアリング2は、車両の搭乗者が操舵するためのステアリングホイール61と、ステアリングホイール61に回転一体のステアリングシャフト62と、ステアリングシャフト62の回転を拘束することでステアリング2をロックするステアリングロック機構63と、を備えている。
【0062】
ステアリングロック機構63は、ロック作動部53が出力する信号、またはロック作動部53が供給する電力によってステアリング2をロック(拘束)する。
【0063】
ステアリングロック機構63は、例えば、ロック作動部53が出力する信号、またはロック作動部53が供給する電力によって駆動される駆動モーター(図示省略)と、駆動モーターによって移動するロックバー(図示省略)と、を備えている。ステアリングシャフト62の外周面は、ロックバーが嵌合可能な凹部を有している。ステアリングロック制御部8の出力およびラッチ回路制御部9の出力の両方がロック指令の場合には、駆動モーターが作動し、駆動モーターの作動に連動してロックバーがステアリングシャフト62に近づく方向へ移動して凹部に嵌合する。凹部に嵌合したロックバーは、ステアリングシャフト62の回転を阻止してハンドルをロックする。ステアリング2のロックを解除する場合には、凹部に嵌合したロックバーが凹部から離脱する方向へ移動するよう駆動モーターが駆動される。
【0064】
次に、本実施形態に係るステアリングロックシステム1の他の例を説明する。なお、第二例で説明するステアリングロックシステム1Aにおいて、第一例のステアリングロックシステム1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図3は、本発明の実施形態に係る第二例のステアリングロックシステムのブロック図である。
【0066】
図3に示すように、本実施形態に係る第二例のステアリングロックシステム1A(以下、単に「ステアリングロックシステム1A」と呼ぶ。)は、第一例のステアリングロックシステム1のイグニッション電源5が出力するイグニッション電源信号に代えて、例えば車速センサー65が出力する静動信号をラッチ回路制御部9に入力する。
【0067】
静動信号は、車両の走行状態または停車状態に対応する二値化信号である。静動信号は、例えば車速センサー65が0値より大きい走行速度を出力している場合に走行状態を表し、車速センサー65が0値の走行速度を出力している場合に停車状態を表す。車両が走行状態の場合に静動信号は1値を取り、車両が停車状態の場合に静動信号は0値を取るものとする。
【0068】
つまり、車両の走行状態を表す1値の静動信号は、第一例のステアリングロックシステム1のイグニッション電源5のオン状態を表す1値のイグニッション電源信号に相当し、車両の停車状態を表す0値の静動信号は、第一例のステアリングロックシステム1のイグニッション電源5のオフ状態を表す0値のイグニッション電源信号に相当する。
【0069】
静動信号が1値(走行状態)の場合には、ラッチ回路15は、リセット信号の値に係わらず、車両の走行状態を表す1値を出力し、これを保持する。ラッチリセット防止回路17は、ラッチ回路15が車両の走行状態を表す1値を保持している場合には、リセット処理装置13がリセット信号を誤送信した場合であっても、企図しないラッチ回路15の遷移を防止する。つまり、ステアリングロックシステム1Aのラッチ回路制御部9は、第一例のイグニッション電源信号に代わる静動信号によって、第一例のステアリングロックシステム1のラッチ回路制御部9と同様に動作する。
【0070】
したがって、ステアリングロックシステム1Aのラッチ回路制御部9は、リセット信号と静動信号の2つの信号を比較し、企図しないリセット信号の入力によるラッチ回路15の企図しない出力状態の遷移を防ぐ。よって、ラッチ回路制御部9は、車両の走行状態または停車状態の出力を保持するラッチ回路15の誤作動を防止し、その後の処理であるステアリング2のロック制御の誤作動を低減でき、安全性の向上を図ることができる。
【0071】
本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、イグニッション電源5がオン状態ならば車両が走行中であるという考え方を導入する。そうすることで、ステアリングロックシステム1は、車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標をASIL-Dの安全水準で担保すべき車両状態を、イグニッション電源5のオン状態に限定する。そのため、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、車両が走行状態または停止状態を判定するための信号(検出値)を、あらゆる車両が一般に備えるイグニッション電源5が出力する信号(イグニッション電源信号)で賄うことができる。この場合、イグニッション電源5をオン状態またはオフ状態に切り替えるイグニッションスイッチ(図示省略)に求められる安全水準は、ASIL-QMであることが望ましい。
【0072】
そこで、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、ラッチ回路15によって、車両の走行中、イグニッション電源5のオン状態を保持する。イグニッションスイッチを含むイグニッション電源信号の出力回路に故障があって、イグニッション電源信号が不意にオフ状態に変化した場合であっても、ラッチ回路15は、車両の走行中、イグニッション電源5のオン状態を保持する。そのため、ステアリングロックシステム1は、車両の走行中のステアリング2のロック禁止状態を維持して車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標を達成できる。
【0073】
したがって、ステアリングロックシステム1は、従来のステアリングロックシステムがマイコン制御で担保していた安全水準を、ソフトウェアの不要な素子のみで構成される回路(ラッチ回路15)で担保し、安全目標を達成するために必要なマイコン数を低減させる。そのため、ステアリングロックシステム1は、ソフトウェアの開発工数を低減できる。また、ステアリングロックシステム1は、必要なマイコンの数量が削減されたシンプルなハードウェア構成を備えるので、多数のマイコンを要する従来のステアリングロックシステムよりも故障率を低減可能であって、安全水準を高め易い。この故障率の低減効果は、ASIL-Dのように高い安全水準の容易な達成をもたらし、ステアリングロックシステム1全体の部品点数の低減や、システムの設置容積の小型化に寄与できる。なお、ステアリングロック制御部8は、マイコンで実行される、車両の走行中のステアリング2のロック禁止を判断して車両の走行中のステアリング2のロック防止をステアリングロック駆動部7へ指令するプログラムを備えていても良い。つまり、ラッチ回路制御部9は、車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標をステアリングロック制御部8で実行されるプログラムと分担するものであっても良いし、単独で担保するものであっても良い。
【0074】
なお、車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標は、イグニッション電源5のオフ状態を含む概念である。しかしながら、イグニッション電源5のオフ状態かつ車両の走行中に発生する事象の危険性および発生確率は、イグニッション電源5のオン状態かつ車両の走行中に発生する事象の危険性および発生確率に比べて極めて低い。そこで、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標を、イグニッション電源5がオン状態に限定してASIL-Dのように高い安全水準で担保している。イグニッション電源5がオフ状態に限定する場合には、車両の走行中のステアリング2のロック防止という安全目標は、ASIL-Dより低い水準、例えばASIL-Bで担保し得る。
【0075】
また、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、ラッチ回路15が保持するイグニッション電源信号がオフ状態かつロック要求信号がロック指令の場合にステアリング2のロックを実行する。つまり、ステアリングロックシステム1は、極めて高い安全水準で走行中のステアリング2のロックを回避できる。なお、ステアリングロックシステム1のラッチ回路15は、ラッチ回路15が保持するイグニッション電源信号がオフ状態かつロック要求信号がロック未指令の場合、ラッチ回路15が保持するイグニッション電源信号がオン状態かつロック要求信号がロック指令の場合、またはラッチ回路15が保持するイグニッション電源信号がオン状態かつロック要求信号がロック未指令の場合には、ロック未指令の状態にリセットされ、つまりステアリングロックシステム1は、ステアリング2のロックを実行しない。
【0076】
さらに、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、イグニッション電源信号がオン状態の場合にリセット処理装置13が出力するリセット信号がラッチ回路15へ入力されることを防止するラッチリセット防止回路17を備えている。そのため、ステアリングロックシステム1は、故障によってリセット処理装置13が不意に1値のリセット信号を出力した場合であっても、ラッチ回路15が保持するイグニッション電源5のオン状態を維持し続けることができる。
【0077】
また、本実施形態に係るステアリングロックシステム1は、イグニッション電源信号がオフ状態の場合にリセット信号をラッチ回路15へ出力するラッチリセット防止回路17を備えている。そのため、ステアリングロックシステム1は、車両が停止していると推定される、イグニッション電源信号がオフ状態の場合に限って、ラッチ回路15をリセットし、ステアリング2のロックを実行できる。
【0078】
なお、ステアリングロックシステム1は、イグニッション電源5のオン状態およびオフ状態に代えてアクセサリー電源のオン状態およびオフ状態をラッチ回路15で保持するものであっても良く、イグニッション電源5およびアクセサリー電源の他に、車両が走行可能な走行可能な状態でオン状態を取り、車両が走行不能な状態でオフ状態を取る電源の状態をラッチ回路15で保持するものであっても良い。この場合、リセット処理装置13は、電源のオン状態を表すラッチ回路15の出力を、オフ状態を表す出力にリセットさせることを企図して1値のリセット信号を出力する。つまり、1値のリセット信号は、電源がオフ状態で降車信号が入力された場合にリセット処理装置13から出力される。
【0079】
また、第二例のステアリングロックシステム1Aは、車両が走行状態または停止状態を判定するための信号(検出値)を、あらゆる車両が一般に備える車速センサー65が出力する信号(静動信号)で賄う。そのため、第二例のステアリングロックシステム1Aは、第一例のステアリングロックシステム1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0080】
1、1A…ステアリングロックシステム、2…ステアリング、5…イグニッション電源、6…ボディコントロールモジュール(BCM)、7…ステアリングロック駆動部、8…ステアリングロック制御部、9…ラッチ回路制御部、11…ロック判定部、12…ロック要求出力部、13…リセット処理装置、15…ラッチ回路、16…ロック駆動遮断部、17…ラッチリセット防止回路、21…NOT回路、22…AND回路、25…第一入力端子、26…第二入力端子、27…出力端子、29a、29b…NOR回路、31…S入力端子、32…R入力端子、33…Q出力端子、41…第二NOT回路、42…第二AND回路、45…第一入力端子、46…第二入力端子、47…出力端子、51…ロック要求入力部、52…ロック駆動遮断入力部、53…ロック作動部、55…スイッチ部、61…ステアリングホイール、62…ステアリングシャフト、63…ステアリングロック機構、65…車速センサー。
図1
図2
図3