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  • 特開-殺菌機能付きグリッパ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074563
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】殺菌機能付きグリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240524BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240524BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20240524BHJP
   C12M 1/12 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B25J15/08 C
A61L2/10
B25J15/08 P
C12M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185812
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小久保 護
(72)【発明者】
【氏名】出口 直也
【テーマコード(参考)】
3C707
4B029
4C058
【Fターム(参考)】
3C707AS33
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV03
3C707EV04
3C707EV21
3C707NS07
4B029AA27
4B029DG04
4C058AA24
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】グリッパの殺菌を省スペースで効率的に行う。
【解決手段】殺菌機能付きグリッパ20は、容器などの物品Mを把持する一対のグリップ部材23、24を備える。グリップ部材23の先端側内側面には、物品Mに当接する1つの当接部23Aが設けられ、当接部23Aの前後には紫外線照射部26B、26Cが設けられる。グリップ部材24の先端側内側面には、2つの当接部24A、24Bが設けられ、その間には紫外線照射部26Aが設けられる。殺菌処理時、グリッパ20をグリップ部材23、24が最接近する殺菌状態として紫外線照射部26Aから当接部23Aに紫外線が照射され、紫外線当接部26B、26Cから当接部24A、24Bに紫外線が照射されて、物品Mとの当接部を殺菌する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持する一対のグリップ部材を備え、
前記各グリップ部材に紫外線照射手段を設けて、各グリップ部材の物品との当接部を紫外線で殺菌することを特徴とする殺菌機能付きグリッパ。
【請求項2】
上記各グリップ部材に設けた紫外線照射手段が、互いに他方のグリップ部材の当接部に紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の殺菌機能付きグリッパ。
【請求項3】
上記各グリップ部材に、上記当接部が形成される先端側内側面に照射面を位置させて上記紫外線照射手段を設けるとともに、紫外線を透過させる部材により上記当接部を構成して前記照射面上に設け、
当該当接部を構成する部材に紫外線を照射して当接部の表面を殺菌することを特徴とする請求項1に記載の殺菌機能付きグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を把持するグリッパの物品との当接部に対して殺菌処理を行う殺菌機能付きグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
内部が無菌状態に維持されるアイソレータ内に、物品を把持するグリッパを備えたロボットを設置して、容器や資材をハンドリングすることで細胞培養作業の自動化が行われている(特許文献1)。このようなアイソレータ内の無菌空間に外部から資材等の物品を搬入する場合は、アイソレータ内を外部に直接開放することはせず、一旦パスボックスに物品を収容してパスボックス内で過酸化水素蒸気等の除染ガスを使用して物品の表面を完全に除染する。しかし、搬入する物品が細胞懸濁液を収容した容器などの場合、細胞が適正温度以上の温度に曝されることや、容器表面やパスボックス内面に付着した有害な除染成分の除去に時間を要することから、パスボックス内での除染は行わずに作業者がグローブ操作により容器の表面をアルコール等の殺菌液を染み込ませた不織布で拭くことで清浄化して、アイソレータに搬入している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5163886号公報
【特許文献2】特許第6386228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のように手作業により容器の拭き取り作業を行う場合、除染が不十分な可能性があり、細胞懸濁液やその他汚染物質が容器の表面に付着したままアイソレータ内に持ち込まれるリスクがある。アイソレータ内の容器はグリッパでハンドリングされるため、容器が汚染されているとグリッパを介して汚染がアイソレータ内に広がり得る。
【0005】
本発明は、無菌空間内におけるグリッパの殺菌を省スペースで効率的行うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明である殺菌機能付きグリッパは、物品を把持する一対のグリップ部材を備え、前記各グリップ部材に紫外線照射手段を設けて、各グリップ部材の物品との当接部を紫外線で殺菌することを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の発明である殺菌機能付きグリッパは、第1の発明において、上記各グリップ部材に設けた紫外線照射手段が、互いに他方のグリップ部材の当接部に紫外線を照射することを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の発明である殺菌機能付きグリッパは、第1の発明において、上記各グリップ部材に、上記当接部が形成される先端側内側面に照射面を位置させて上記紫外線照射手段を設けるとともに、紫外線を透過させる部材により上記当接部を構成して前記照射面上に設け、当該当接部を構成する部材に紫外線を照射して当接部の表面を殺菌することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無菌空間内におけるグリッパの殺菌を省スペースで効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の第1実施形態である殺菌機能付きグリッパを採用したアイソレータシステムの配置を示す平面図である。
図2】物品を把持する第1実施形態のグリッパの平面図である。
図3】第1実施形態においてグリッパの殺菌処理を行うときのグリップ部材の配置を示すグリッパの平面図である。
図4】グリップ部材の先端側内側面における当接部と紫外線照射面の配置を示す斜視図である。
図5】第2実施形態のグリッパの平面図である。
図6】第2実施形態のグリップ部材における当接部と紫外線照射面の配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態である殺菌機能付きグリッパを採用したアイソレータシステムの配置を示す平面図である。
【0012】
第1実施形態におけるアイソレータシステム10は、内部に無菌状態で各種操作を行うための無菌空間が形成されたアイソレータ12と、外部からアイソレータ12内へ容器や資材等の物品Mを搬入するためのパスボックス14と、アイソレータ12内で培養容器に播種した細胞を所定の温度からなる培養環境で培養するためのインキュベータ16とを備える。なお、アイソレータ12とパスボックス14、インキュベータ16との間は、開閉扉14A、16Aにより仕切られ、アイソレータ12との間の物品Mの受け渡しは、これら開閉扉14A、16Aを開閉して行われる。
【0013】
アイソレータ12内の無菌空間には、物品Mを操作するためのロボット18が設けられる。ロボット18の本体18Aにはアーム18Bが設けられ、アーム18Bの先端には物品Mを把持するためのグリッパ20が設けられる。なお、当該グリッパ20は殺菌機能付きグリッパであり、後述する殺菌機能を備える。
【0014】
パスボックス14の側面には、物品Mをパスボックス14内へ搬入、あるいはパスボックス14から外部へ搬出するための開閉扉14Bが設けられる。パスボックス14の前面には、作業者がパスボックス14の外側から装着し、パスボックス14内で作業を行うための一対のグローブ22が設けられる。パスボックス14内において、作業者はグローブ22で物品Mを保持し、アルコール(消毒用エタノール)等の殺菌液を染み込ませた不織布などの布Fを用いて物品Mの表面に付着している汚染物質を拭い取る。なお、本実施形態における物品Mとしては、細胞懸濁液を収容して密封した円筒形の容器の他、アイソレータ12内で使用する円筒形のピペットや遠沈管、培養容器等の培養操作に用いる資材がある。
【0015】
図2は、物品Mを把持する第1実施形態のグリッパ20の平面図である。グリッパ20は一対の平行なグリップ部材23、24を備える。グリップ部材23、24の基端部は基部25に支持され、基部25内には、グリッパ20を開閉するため、グリップ部材23、24同士を接近および離隔するように逆向きに移動させる開閉機構25Aが内蔵される。
【0016】
グリップ部材23、24の先端側内側面には、断面が円形の物品Mの側面に当接し物品Mを把持するための、断面が三角形の山形に形成された当接部がそれぞれ設けられる。第1実施形態のグリッパ20では、図2において左側のグリップ部材23に1つの当接部23Aが設けられ、右側のグリップ部材24に2つの当接部24A、24Bが設けられる。
【0017】
グリップ部材23の当接部23A、およびグリップ部材24の当接部24A、24Bは互いに向かい合わないように配置され、例えば円筒形の物品Mの外周は、当接部23A、24A、24Bにより3点で保持される。すなわち、当接部23Aは物品Mの中心に向けて押し当てられ、当接部24A、24Bは、それぞれ当接部23Aよりも僅かにグリップ部材24の先端側および基端側において、物品Mに押し当てられる。
【0018】
図3は、第1実施形態においてグリッパ20の殺菌処理を行うときのグリップ部材23、24の配置を示すグリッパ20の平面図である。グリッパ20の殺菌処理は、グリッパ20による物品Mの移送が終了した後で、物品Mを解放してから次に物品Mを把持するまでの間に行われ、物品Mを解放したグリッパ20を図3に示すように、開閉機構25Aの作動によりグリップ部材23、24を互いに最接近させた殺菌状態として行われる。
【0019】
図3に示されるように、グリップ部材24の先端側内側面において、当接部23Aに対面する位置には紫外線照射部(紫外線照射手段)26Aが設けられる。一方、グリップ部材23の先端側内側面において、グリップ部材24の当接部24A、24Bに対面する位置にはそれぞれ紫外線照射部(紫外線照射手段)26B、26Cが設けられる。すなわち、紫外線照射部26Aは、グリップ部材24における当接部24A、24Bの間に設けられ、当接部23Aは、グリップ部材23における紫外線照射部26B、26Cの間に設けられる。なお、図4は、グリップ部材23の先端側内側面における当接部23A、紫外線照射部26B、26Cの照射面26Ba、26Caの配置を示す斜視図であり、このように当接部23A、24A、24Bはそれぞれ上下に長く形成され、紫外線照射部26A、26B、26Cの各照射面26Aa、26Ba、26Caもそれぞれ対面する当接部23A、24A、24Bと同等の長さで上下に長く設けている。
【0020】
図3の状態において、紫外線照射部26A、26B、26Cを作動させると、各照射面26Aa、26Ba、26Caから照射された紫外線は、各々当接部23A、24A、24Bに照射される。すなわち、当接部23A、24A、24Bの各々の物品Mと当接する先端には、向かい合わせに配置された照射面26Aa、26Ba、26Caから紫外線が照射され、各当接部23A、24A、24Bは紫外線で殺菌される。このような紫外線照射部26A、26B、26Cへの電力供給は、図示しない電源からグリップ部材23、24内部に配線された電線を介して行われる。
【0021】
以上のように構成される第1実施形態におけるグリッパ20の殺菌処理について、具体的に説明する。
【0022】
パスボックス14からアイソレータ12内に搬入された資材からなる物品Mを、グリッパ20のグリップ部材23、24を互いに接近させて把持し、ロボット18の動作によりアイソレータ12内の所定の収容部に移送する。移送先でグリップ部材23、24を離隔させて物品Mを解放すると、グリッパ20は次に移送する容器からなる物品Mを把持するために、ロボット18の動作によりパスボックス14の開閉扉14A付近まで移動する。この間にグリップ部材23、24を図3に示すように最接近させて、この殺菌状態で各照射面26Aa、26Ba、26Caから紫外線(UV-C)を照射することにより、当接部23A、24A、24Bを紫外線で殺菌する。
【0023】
次にパスボックス14の開閉扉14A付近でグリップ部材23、24を離隔させてグリッパ20を開放状態としてから、グリップ部材23、24を接近させてグリッパ20を閉鎖状態として容器からなる物品Mを把持し、ロボット18の動作によりアイソレータ12内の遠心処理部に把持した物品Mを移送する。遠心処理部でグリップ部材23、24を離隔させて物品Mを解放すると、遠心処理中に次の容器や資材からなる物品Mを移送するために、ロボット18の動作によりグリッパ20を移動させるが、この間にもグリップ部材23、24を図3に示すように最接近させて、紫外線照射部26A、26B、26Cの照射面26Aa、26Ba、26Caから紫外線を照射して当接部23A、24A、24Bを殺菌する。
【0024】
このように、グリッパ20の物品Mの把持を解除した後で、次に物品Mを把持するまでの間に、グリップ部材23、24の各当接部23A、24A、24Bを紫外線で殺菌するので、仮に外部から搬入された物品Mに微生物や雑菌等の汚染物質が付着していた場合であっても、グリッパ20のグリップ部材23、24の当接部23A、24A、24Bを介して汚染物質が次に把持される物品Mに付着してクロスコンタミネーション(交差汚染)を引き起こすことが防止される。
【0025】
なお、本実施形態の紫外線照射手段としては、波長域がUV-C(深紫外線)として分類される200~280nmの深紫外線LEDを採用してる。また、第1実施形態の当接部23A、24A、24Bの材質としては、ポリアセタールや超高分子量ポリエチレン等の樹脂、シリコーンやニトリルゴム等のゴムが用いられる。
【0026】
以上のように、第1実施形態のグリッパによれば、紫外線照射手段をLEDとすることでグリッパのグリップ部材に内蔵することが可能となり、グリッパ自体に殺菌機能が付与されているため省スペースで効率的にグリッパの殺菌を行うことができる。また、第1実施形態では物品との当接部に紫外線を照射するため、最小限の設備とすることでより省スペースで効率的に殺菌を行うことができる。さらには、紫外線照射手段をグリッパのグリップ部材に内蔵しているため、グリッパを次の物品Mの把持のために移動させる間にもグリップ部材を殺菌することが可能となる。
【0027】
次に図5図6を参照して第2実施形態の殺菌機能付きグリッパについて説明する。第2実施形態は、第1実施形態のアイソレータシステム10の殺菌機能付きグリッパ20を第2実施形態の殺菌機能付きグリッパ30で置き換えたものに対応する。したがって、第1実施形態と同様の構成に関しては同一参照符号を用いその説明を省略する。
【0028】
図5は、第2実施形態のグリッパ30の平面図である。グリッパ30も一対の平行なグリップ部材33、34を備え、グリップ部材33、34の基端部は基部35に支持され、グリップ部材33、34同士は、基部35に内蔵された開閉機構35Aにより接近および離隔するように逆向きに移動される。
【0029】
グリップ部材33、34の先端側内側面には当接部33A、34Aが設けられ、これら当接部33A、34Aの対向面には、例えば円筒形の容器からなる物品Mの外周形状に適合した形状(円弧形状)の当接面33Aa、34Aaが形成されている。第2実施形態の当接部33A、34Aを構成する部材には、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ガラス等の紫外光を透過させる素材が用いられる。グリップ部材33、34の先端側内側面には、各々紫外線照射部36A、36Bが照射面36Aa、36Baを互いに対向させるようにグリップ部材33、34の先端側内側面に位置させて埋設され、当接部33A、34Aは紫外線照射部36A、36Bの照射面36Aa、36Baを覆ってこれらの上に配置されて形成されている。図6は、グリップ部材33の先端側内側面において当接部33Aを紫外線照射部36Aの照射面36Aa上に設けた状態を示す斜視図である。
【0030】
第2実施形態のグリッパ30の殺菌処理では、紫外線照射部36A、36Bの照射面36Aa、36Baから照射された紫外線(UV-C)が、当接部33A、34Aの内部を透過して当接面33Aa、34Aaの全面から放射されようになっており、これにより当接部33、34Aの当接面33Aa、34Aaの表面が殺菌される。
【0031】
以上のように、第2実施形態の殺菌機能付きグリッパにおいても第1実施形態と同様の効果が得られる。第2実施形態では、当接部に物品の外周形状に適合した形状の当接面を形成しているので、前記第1実施形態よりも把持が安定するとともに、グリッパで把持することのできる物品の自由度が増大する。
【0032】
また、第2実施形態では、グリップ部材33、34を最接近させた状態および離隔させた状態のいずれにおいても当接部33A、34Aの殺菌が可能であり、紫外線の影響を受けない物品であれば把持している間も含めて常時、紫外線照射部36A、36Bから紫外線を照射することもできる。
【0033】
なお、前記第1、第2実施形態においてグリッパの殺菌処理は、拭き取り作業を行った物品をグリッパで把持した場合を想定して行っているが、これに限らずあらゆる物品を把持した場合の全てに対して行ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 アイソレータシステム
12 アイソレータ
20、30 殺菌機能付きグリッパ
23、24、33、34 グリップ部材
23A、24A、24B、33A、34A 当接部
26A、26B、26C、36A、36B 紫外線照射部(紫外線照射手段)
26Aa、26Ba、26Ca、36Aa、36Ba 照射面
M 物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6