(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074567
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】産業資材用包装材料、包装袋および包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240524BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240524BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240524BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240524BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08L23/06
B32B27/00 H
B65D30/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185821
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】柏原 知美
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AA04
3E064AA05
3E064AA06
3E064AA09
3E064AB23
3E064BA24
3E064BA25
3E064BA29
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3E064BA46
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3E086AA23
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3E086BA35
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3E086BB63
3E086CA31
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3E086CA40
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK05A
4F100AK46A
4F100AK51A
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4F100AK70
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4F100GB15
4F100JA04
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4F100YY00A
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4F100YY00C
4J002BB021
4J002BB031
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】厚さが小さいながらも機械的物性に優れるとともに、リサイクル性に優れる産業資材用包装材料を提供する。
【解決手段】基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備え、基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、総厚さが150μm以下である、産業資材用包装材料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備え、
前記基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
総厚さが150μm以下である、
産業資材用包装材料。
【請求項2】
前記基材が、JIS K7161-1:2014に準拠して測定される、50MPa以上の降伏応力を有する延伸基材であり、前記包装材料が、半導体材料用包装材料である、請求項1に記載の産業資材用包装材料。
【請求項3】
前記基材が、延伸基材であり、
前記シーラント層が、未延伸層である、
請求項1に記載の産業資材用包装材料。
【請求項4】
前記基材が、高密度ポリエチレンを主成分として含有する延伸基材であり、
前記シーラント層が、未延伸層である、
請求項1に記載の産業資材用包装材料。
【請求項5】
前記接着層が、接着剤により構成される接着剤層、または、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層である、請求項1に記載の産業資材用包装材料。
【請求項6】
包装材料全体におけるポリエチレンの含有割合が80質量%以上である、請求項1に記載の産業資材用包装材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の産業資材用包装材料を備える包装袋。
【請求項8】
請求項7に記載の包装袋と、
前記包装袋内に収容された産業資材と、
を備える、包装体。
【請求項9】
前記産業資材が、半導体材料である、請求項8に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業資材用包装材料、包装袋および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
産業資材を収容するため、包装袋が用いられている。産業資材は、凹凸形状を通常は有する。このため、産業資材を収容する包装袋は、機械的物性に優れることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
単層のポリエチレンフィルムのみで包装袋を作製する場合、機械的物性を向上させるという観点から、樹脂密度を高く、かつフィルムの厚さを大きくする必要がある。しかしながら、樹脂密度が高いポリエチレンを用いて製膜する場合は、フィルムの厚さを大きくするほどフィルムにシワが発生しやすい。この場合は、例えば、高密度樹脂専用の製膜機を用いる必要がある。また、フィルムの厚さが大きいことにより、プラスチック使用量の増加、および専有体積の増加という問題も存在する。
【0004】
また、基材としてのポリエステルフィルムとシーラント層としてのポリエチレンフィルムとを用いて包装袋を作製することにより、フィルムの厚さが小さくとも機械的物性が向上する。しかしながらその一方で、包装袋のリサイクル性が低下するという問題がある。近年、プラスチック海洋汚染および地球温暖化など、環境問題に対する取り組みが重要視されている。環境負荷低減という観点から、包装袋をリサイクルすることが求められている。
【0005】
本開示の課題は、厚さが小さいながらも機械的物性に優れるとともに、リサイクル性に優れる産業資材用包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の産業資材用包装材料は、基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備え、基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、該包装材料の総厚さが150μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、厚さが小さいながらも機械的物性に優れるとともに、リサイクル性に優れる産業資材用包装材料を提供できる。例えば、2枚以上のポリエチレンフィルムを貼り合わせすることで、厚さが小さいながらも機械的物性に優れる包装材料を作製できる。また、このことによりプラスチック使用量を低減できる。基材およびシーラント層がいずれもポリエチレンを主成分として含有することにより、包装材料はリサイクル性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の産業資材用包装材料の一実施形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0011】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分(例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、ガスバリア性樹脂などの樹脂材料、および添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本明細書において、ポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定できる。
【0013】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0014】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0015】
本明細書において、ポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.965g/cm3以下である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.928g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.928g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.928g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.928g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.928g/cm3以下である。本明細書において、ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0016】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0017】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0018】
本明細書において、ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレン(以下「バイオマスポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。すなわち、ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレン等に代えて、バイオマス由来のエチレン等を用いてもよい。バイオマスポリエチレンは、カーボンニュートラルな材料であることから、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。バイオマスポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0019】
ポリエチレンとしては、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレン(以下「リサイクルポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。これにより、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、フィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。ケミカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどをモノマーレベルまで分解し、当該モノマーを再度重合してポリエチレンを得る方法である。
【0020】
本明細書において、基材または層における「主成分」とは、当該基材または層中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0021】
[産業資材用包装材料]
本開示の産業資材用包装材料は、基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体である。以下の記載において、本開示の産業資材用包装材料を「本開示の積層体」ともいう。このような構成の積層体、特に基材とシーラントフィルムとを貼り合わせてなる積層体は、総厚さが小さい場合でも、突刺し強度および引張強度などの機械的物性に優れる。
【0022】
基材は、ポリエチレンを主成分として含有する。シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有する。基材に含まれるポリエチレンは、シーラント層に含まれるポリエチレンと同一でもよく、異なってもよい。
【0023】
本開示の積層体において基材とシーラント層とは、それぞれ、同種の樹脂材料であるポリエチレンを主成分として含有する。このような構成を有する積層体を用いることにより、例えば、リサイクル性に優れる包装袋を作製できる。
【0024】
図1に、本開示の積層体の一実施形態に係る模式断面図を示す。
図1の積層体1は、基材10と、接着層20と、シーラント層30と、を厚さ方向にこの順に備える。
【0025】
本開示の積層体全体におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。このような積層体を用いてモノマテリアル化した包装袋を作製でき、包装袋のリサイクル性を向上できる。ポリエチレンの含有割合の上限は特に限定されないが、99質量%でもよい。
【0026】
本開示の積層体の総厚さは、ポリエチレン使用量の低減および包装袋の減容化という観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは145μm以下、さらに好ましくは140μm以下、よりさらに好ましくは135μm以下である。本開示の積層体の総厚さは、積層体の強度および耐熱性という観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは60μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは90μm以上である。
【0027】
<基材>
本開示の積層体は、基材を備える。
基材は、ポリエチレンを主成分として含有する。
基材に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、基材の強度および耐熱性という観点からは、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンがより好ましい。
【0028】
基材に含まれるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2g/10分以上、さらに好ましくは0.3g/10分以上、特に好ましくは0.5g/10分以上である。ポリエチレンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。本明細書において、ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0029】
基材に含まれるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。本明細書において、各種材料のTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0030】
基材におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。このような基材を備える積層体は、リサイクル性に優れる。
【0031】
基材は、ポリエチレン以外の樹脂材料を含有してもよい。当該樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン以外の、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂およびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0032】
基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、染料および改質用樹脂が挙げられる。
【0033】
基材は、延伸基材でもよく、未延伸基材でもよいが、延伸基材が好ましい。延伸基材とは、延伸処理が施された基材を意味する。延伸基材は、例えば、耐熱性および強度に優れ、また、後述する降伏応力が高い。このような延伸基材は、例えば包装材料の外層として要求される物性を充分に満足できる。
【0034】
延伸処理は、一軸延伸でもよく、二軸延伸でもよい。
縦方向(基材の長手方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。横方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。延伸基材は、例えば、一軸延伸基材であり、具体的には、MD方向へ一軸延伸された基材(MDO基材)である。延伸倍率が2倍以上であると、例えば、基材の剛性、強度および耐熱性を向上でき、基材への印刷適性を向上でき、また、基材の透明性を向上できる。延伸倍率が10倍以下であると、例えば、フィルムの破断等を起こさず、良好な延伸を実施できる。
【0035】
基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。以下、多層構造を有する基材を「多層基材」ともいう。多層基材は、強度、剛性および耐熱性に優れる。延伸基材の層数は、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上であり、好ましくは7層以下、より好ましくは5層以下である。
【0036】
基材は、ポリエチレン層を備える。
基材は、ポリエチレン層からなってもよく、ポリエチレン層とバリア性樹脂層とを備えてもよい。基材は、ポリエチレン層とバリア性樹脂層との間に、接着性樹脂層をさらに備えてもよい。基材は、ポリエチレン層を2層以上備えてもよい。基材は、バリア性樹脂層を2層以上備えてもよい。基材は、接着性樹脂層を2層以上備えてもよい。
【0037】
基材の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。厚さが下限値以上の基材は、例えば、強度、剛性および耐熱性に優れる。厚さが上限値以下の基材は、例えば、加工性に優れる。
【0038】
基材は、例えば、材料を製膜してフィルムを作製し、所望により、該フィルムを延伸することにより作製できる。製膜の方法としては、例えば、インフレーション成形法およびTダイ成形法が挙げられる。インフレーション成形法によれば、製膜に続いて延伸を行うことができる。
【0039】
基材は、一実施形態において、共押出樹脂フィルムである。
基材は、一実施形態において、2層以上のポリエチレン層を構成する材料を、共押出インフレーション成形法等により共押出製膜し、得られたフィルムをさらに延伸処理して得られた樹脂フィルムである。
【0040】
基材は、一実施形態において、ポリエチレン層を構成する材料と、基材が接着性樹脂層を備える場合は接着性樹脂層を構成する材料と、バリア性樹脂層を構成する材料とを、共押出インフレーション成形法等により共押出製膜し、得られたフィルムをさらに延伸処理して得られた樹脂フィルムである。
【0041】
基材には、表面処理が施されていてもよい。このような基材は、例えば、他の層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、例えば、物理的処理および化学的処理が挙げられる。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、ならびにグロー放電処理が挙げられる。化学的処理としては、例えば、化学薬品を用いた酸化処理が挙げられる。
【0042】
基材の降伏応力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは110MPa以上、よりさらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは180MPa以上である。本開示者らは、上記下限値以上の降伏応力を有する基材を備える積層体が、産業資材用包装材料、特に半導体材料用包装材料として好適であることを見出した。これは、産業資材は凹凸形状を通常は有することから、包装材料には凹凸形状に起因した力が働くところ、基材の降伏応力が高いと包装材料が伸びにくく、破れにくいためであると推測される。基材の降伏応力の上限値は特に限定されないが、例えば500MPaでもよく、400MPaでもよい。
降伏応力は、JIS K7161-1:2014に準拠して測定される引張降伏応力である。具体的には、15mm幅、50mm長の試験片を用意し、引張試験機を用いて50mm/minの速度で試験片を引っ張り、降伏応力を測定する。基材は、少なくとも一つの引張方向において、上記下限値以上の降伏応力を有することが好ましい。例えば一軸延伸基材の場合は、引張方向が延伸方向であるときの降伏応力が上記下限値以上であることが好ましい。
【0043】
基材としては、例えば、
高密度ポリエチレンを主成分として含有する基材、
中密度ポリエチレンを主成分として含有する第1の層と、高密度ポリエチレンを主成分として含有する第2の層と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第3の層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第4の層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第5の層とを備える多層基材、ならびに
バリア性樹脂層(第1の層)と、接着性樹脂層(第2の層)と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第3の層と、直鎖状低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第5の層とを備える多層基材、
が挙げられる。
【0044】
基材としては、例えば、
高密度ポリエチレンを主成分として含有する延伸基材、
高密度ポリエチレンを主成分として含有する未延伸基材、
中密度ポリエチレンを主成分として含有する第1の層と、高密度ポリエチレンを主成分として含有する第2の層と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第3の層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第4の層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第5の層とを備える延伸多層基材、ならびに
バリア性樹脂層(第1の層)と、接着性樹脂層(第2の層)と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第3の層と、直鎖状低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第5の層とを備える延伸多層基材、
が挙げられる。これらの中でも、基材の降伏応力が高く、また突刺し強度が高いという観点から、高密度ポリエチレンを主成分として含有する延伸基材が好ましい。
【0045】
(ポリエチレン層)
ポリエチレン層は、ポリエチレンを主成分として含有する。
ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、60質量%以上、または70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0046】
(バリア性樹脂層)
基材は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層を備えてもよい。このような基材は、例えば、耐熱性、強度、剛性、ならびに酸素バリア性および水蒸気バリア性などのガスバリア性に優れる。
【0047】
ガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルおよび(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらの中でも、基材の突刺し強度という観点から、ポリアミドが好ましい。
【0048】
ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが好ましく、結晶性脂肪族ポリアミドがより好ましい。ポリアミドとしては、半芳香族ポリアミドも好ましく、非晶性半芳香族ポリアミドがより好ましい。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドの混合物を用いてもよい。
【0049】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ホモポリアミドおよび脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。以下の例示において、ポリアミドを「PA」とも記載する。
【0050】
脂肪族ホモポリアミドとしては、具体的には、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリエナントラクタム(PA7)、ポリウンデカンラクタム(PA11)、ポリラウリルラクタム(PA12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリテトラメチレンドデカミド(PA412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(PA59)、ポリペンタメチレンセバカミド(PA510)、ポリペンタメチレンドデカミド(PA512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリノナメチレンアジパミド(PA96)、ポリノナメチレンアゼラミド(PA99)、ポリノナメチレンセバカミド(PA910)、ポリノナメチレンドデカミド(PA912)、ポリデカメチレンアジパミド(PA106)、ポリデカメチレンアゼラミド(PA109)、ポリデカメチレンデカミド(PA1010)、ポリデカメチレンドデカミド(PA1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(PA126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(PA129)、ポリドデカメチレンセバカミド(PA1210)およびポリドデカメチレンドデカミド(PA1212)が挙げられる。
【0051】
脂肪族共重合ポリアミドとしては、具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(PA6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(PA6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(PA6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(PA6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(PA6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(PA6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(PA6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(PA6/66/612)が挙げられる。
【0052】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは1.5以上、より好ましく2以上、さらに好ましくは2.5以上である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、JIS K6920-2:2009に準拠して、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mLに溶解させ、25℃で測定される。
【0053】
結晶性脂肪族ポリアミドとしては、例えば、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA6/66およびPA6/66/12が挙げられる。結晶性脂肪族ポリアミドの融点(Tm)は、好ましくは180℃以上である。結晶性脂肪族ポリアミドのTmは、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0054】
半芳香族ポリアミドとは、芳香族ジアミンに由来する構成単位と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミド、または、脂肪族ジアミンに由来する構成単位と、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミドである。例えば、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成されるポリアミド、および脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから構成されるポリアミドが挙げられる。
半芳香族ポリアミドは、一実施形態において、非晶性半芳香族ポリアミドである。
【0055】
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(PA6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6T/6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカミド共重合体(PA6T/12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA6I/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)共重合体(PA6T/M5T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6/6I)およびポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)が挙げられる。
【0056】
半芳香族ポリアミドのメルトボリュームレート(MVR)は、好ましくは5cm3/10分以上、より好ましくは10cm3/10分以上である。半芳香族ポリアミドのMVRは、好ましくは200cm3/10分以下、より好ましくは100cm3/10分以下である。MVRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度275℃、荷重5.00kgで測定される。
【0057】
バリア性樹脂層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、50質量%超であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0058】
バリア性樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0059】
バリア性樹脂層の厚さは、耐熱性およびガスバリア性などの上述した物性という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。バリア性樹脂層の厚さは、基材のリサイクル性という観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
【0060】
(接着性樹脂層)
基材は、ポリエチレン層とバリア性樹脂層との間に、接着性樹脂層をさらに備えてもよい。このような基材は、例えば、ポリエチレン層とバリア性樹脂層との密着性に優れる。
【0061】
接着性樹脂層は、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂が挙げられる。これらの中でも、リサイクル性および密着性という観点から、ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィンが好ましく、酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンがより好ましく、酸変性ポリエチレン等の変性ポリエチレンがさらに好ましい。
【0062】
変性ポリオレフィンとしては、例えば、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和カルボン酸、またはその酸無水物、エステルもしくは金属塩による、ポリオレフィンの変性物、特にポリオレフィンのグラフト変性物が挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、具体的には、不飽和カルボン酸変性ポリエチレンが好ましく、無水マレイン酸変性ポリエチレンがより好ましい。
【0063】
変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。変性ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、変性ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、変性ポリエチレンの場合は190℃である。
【0064】
接着性樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0065】
接着性樹脂層の厚さは、上記密着性という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。接着性樹脂層の厚さは、基材のリサイクル性という観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0066】
<接着層>
本開示の積層体は、基材とシーラント層との間に、接着層を備える。接着層としては、例えば、接着剤により構成される接着剤層、およびポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層が挙げられる。
【0067】
本開示の積層体は、一実施形態において、基材とシーラント層との間に、接着剤により構成される接着剤層を備える。このような積層体は、例えば、層間密着強度に優れる。
【0068】
接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、溶剤型の接着剤でもよく、無溶剤型の接着剤でもよい。溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。無溶剤型の接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0069】
接着剤層のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法が挙げられる。
【0070】
接着剤層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。接着剤層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
【0071】
本開示の積層体は、基材とシーラント層としてのシーラントフィルムとを、上記接着剤を用いたラミネート法により貼り合わせて製造でき、例えば、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。
【0072】
本開示の積層体は、一実施形態において、基材とシーラント層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層を備える。このような積層体は、従来の非ポリエチレン系接着剤(例えば2液硬化型ポリウレタン接着剤)により構成される接着剤層を備える積層体と比較して、積層体におけるポリエチレンの含有割合をより高くすることができる。このような積層体は、リサイクル性に優れる。
【0073】
押出樹脂層は、ポリエチレンを主成分として含有する。押出樹脂層におけるポリエチレンと、基材およびシーラント層におけるポリエチレンとは、同一でもよく、異なってもよい。
【0074】
押出樹脂層に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、接着性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0075】
押出樹脂層におけるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは3g/10分以上であり、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは25g/10分以下、さらに好ましくは20g/10分以下である。
【0076】
押出樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性および接着性のバランスという観点から、好ましくは100℃以上であり、また、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0077】
押出樹脂層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%である。このような押出樹脂層を備える積層体は、例えば、接着性およびリサイクル性に優れる。
【0078】
押出樹脂層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。このような押出樹脂層を備える積層体は、例えば、層間接着性およびリサイクル性に優れる。
【0079】
押出樹脂層は、例えば、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物を溶融させ、基材上に押し出すことにより形成できる。このときの溶融温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上であり、また、好ましくは340℃以下、より好ましくは335℃以下である。
【0080】
基材とシーラント層としてのシーラントフィルムとを貼り合わせる方法として、例えば、ポリエチレンを主成分として含有する溶融樹脂を用いた溶融押出ラミネート法、特にサンドラミネート法を用いることができる。これにより、例えば、積層体のポリエチレンの含有割合を高くすることができる。また、例えばドライラミネーションによりこれらを積層する場合に比べて、乾燥工程およびエージング工程にかかる時間を低減でき、したがって積層体の生産効率を向上できる。
【0081】
<シーラント層>
本開示の積層体は、シーラント層を備える。本開示の積層体を用いて包装袋を作製した場合に、例えば、基材は包装袋の外側を向く層であり、シーラント層は包装袋の収容空間に面する層(包装袋の最内層)である。
【0082】
シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有する。
シーラント層に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0083】
シーラント層に含まれるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。
【0084】
シーラント層に含まれるポリエチレンの融点(Tm)は、ヒートシール性という観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、また、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0085】
シーラント層におけるポリエチレンの含有割合は、50質量%超であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。このようなシーラント層を備える積層体は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0086】
シーラント層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0087】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
シーラント層の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、よりさらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上である。シーラント層の厚さは、好ましくは140μm以下、より好ましくは135μm以下、さらに好ましくは130μm以下、よりさらに好ましくは125μm以下、特に好ましくは120μm以下である。シーラント層の厚さは、強度および加工適性という観点から、包装袋中に収容される産業資材の質量に応じ適宜変更することが好ましい。
【0088】
シーラント層は、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸層である。したがってシーラント層に対応するシーラントフィルムは、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸フィルムである。「未延伸」とは、全く延伸されていない層またはフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されている層またはフィルムも含む概念である。延伸処理の詳細については基材の説明において上述したとおりである。シーラントフィルムは、従来公知の方法により製造できる。シーラントフィルムは、例えば、Tダイ法またはインフレーション法により製造できる。
【0089】
<印刷層>
本開示の積層体は、基材の一方の面または両方の面上に設けられた印刷層をさらに備えてもよい。本開示の積層体は、一実施形態において、基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順に備えてもよい。
【0090】
印刷層は、画像を含む。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装袋中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0091】
印刷層は、一実施形態において、着色剤を含有する。
着色剤としては、例えば、無機顔料および有機顔料等の顔料、ならびに、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料および昇華性色素等の染料が挙げられる。また、着色剤としては、紫外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料、および赤外線を吸収することにより蛍光を発する赤外線発光材料等の蛍光発光材料も挙げられる。
【0092】
印刷層における着色剤の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。印刷層における着色剤の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0093】
印刷層は、一実施形態において、着色剤に加えて樹脂材料を含有する。
樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物およびエネルギー線硬化性化合物の硬化物が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、アセタール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース樹脂、石油樹脂およびフッ素樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、シリコーン樹脂および(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂が挙げられる。エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、多官能性(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0094】
印刷層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。印刷層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0095】
印刷層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0096】
印刷層は、例えば、上述した成分および必要に応じて溶媒を含有するインキ組成物を用いて形成できる。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、活版印刷法および転写印刷法が挙げられる。印刷層は、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法により形成してもよい。印刷層は、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて形成してもよい。
【0097】
印刷層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。印刷層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0098】
[包装袋および包装体]
本開示の包装袋は、本開示の積層体を備える。
本開示の包装袋は、例えば、
1つ以上の本開示の積層体と、
上記積層体のシーラント層同士が接合されているシール部と、
産業資材を収容する収容部と、
を備える。
シール部は、収容部を画成する内縁を含む。
【0099】
本開示の包装体は、
本開示の包装袋と、
上記包装袋内に収容された産業資材と、
を備える。
【0100】
本開示の包装袋は、一実施形態において、表面を構成する表面シートおよび裏面を構成する裏面シートを備える。表面シートは、1枚の本開示の積層体により構成されていてもよく、裏面シートは、もう1枚の本開示の積層体により構成されていてもよい。表面シートおよび裏面シートは、一体となっていてもよく、1枚の本開示の積層体により構成されていてもよい。表面シートおよび裏面シートは、1つのチューブ状の本開示の積層体により構成されていてもよい。
【0101】
シール部の形成方法としては、例えば、加熱などによって積層体のシーラント層を溶融させ、シーラント層同士を融着させるヒートシールが挙げられ、具体的には、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。例えば、包装袋中に産業資材を収容した後、包装袋の開口部をヒートシールすることにより、包装袋を密封できる。
【0102】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。包装袋の平面形状は、例えば、矩形でもよく、矩形以外の円形等の形状でもよい。
【0103】
包装袋は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装袋を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線が挙げられる。
【0104】
一実施形態において、本開示の積層体を、基材が外側、シーラント層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示の積層体をシーラント層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記積層体で構成されてもよい。
【0105】
本開示の積層体を用いて包装袋を作製する一例を説明する。
積層体を2枚準備する。2枚の積層体のシーラント層を対向させて積層体を重ね合わせる。次いで、積層体の外周周縁部である左右および下部の三方にヒートシール部を形成する。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が得られる。
【0106】
本開示の積層体を2枚用いる代わりに、本開示の積層体を1枚準備し、該積層体のシーラント層が対向するように折って重ね合わせ、次いで、その左右の外周周縁部の二方にヒートシール部を形成して、包装袋を作製してもよい。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が得られる。この場合、折り返された下部にもヒートシール部を形成してもよい。
【0107】
上記で製造した包装袋の未ヒートシール部の開口部から、産業資材を装入する。次いで、包装袋の開口部をヒ-トシールしてヒートシール部を形成して、包装袋中に産業資材が収容された包装体を得ることができる。
【0108】
上記産業資材としては、例えば、シリコン材料(例えばポリシリコン材料)およびシリコンウェハなどの半導体材料、金属材料、集積回路(IC)、コンデンサおよび半導体素子などの電子部品、半導体装置用バルブおよび半導体製造用フィルタなどの半導体関連部品、精密機械、磁気ディスク、Oリングならびにベローズが挙げられる。これらの中でも、半導体材料が好ましく、シリコン材料がより好ましく、ポリシリコン材料がさらに好ましい。
【0109】
本開示は、例えば以下の[1]~[9]に関する。
[1]基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備え、前記基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、前記シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、総厚さが150μm以下である、産業資材用包装材料。
[2]前記基材が、JIS K7161-1:2014に準拠して測定される、50MPa以上の降伏応力を有する延伸基材であり、前記包装材料が、半導体材料用包装材料である、前記[1]に記載の産業資材用包装材料。
[3]前記基材が、延伸基材であり、前記シーラント層が、未延伸層である、前記[1]または[2]に記載の産業資材用包装材料。
[4]前記基材が、高密度ポリエチレンを主成分として含有する延伸基材であり、前記シーラント層が、未延伸層である、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の産業資材用包装材料。
[5]前記接着層が、接着剤により構成される接着剤層、または、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の産業資材用包装材料。
[6]包装材料全体におけるポリエチレンの含有割合が80質量%以上である、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の産業資材用包装材料。
[7]前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の産業資材用包装材料を備える包装袋。
[8]前記[7]に記載の包装袋と、前記包装袋内に収容された産業資材と、を備える、包装体。
[9]前記産業資材が、半導体材料である、前記[8]に記載の包装体。
【実施例0110】
本開示の積層体について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示の積層体は実施例によって何ら限定されない。以下の記載において「質量部」は単に「部」と記載する。
【0111】
[基材の作製]
基材の作製で用いた成分を示す。
・高密度ポリエチレン
ダウ・ケミカル・カンパニー、ELITE 5960G、
密度:0.960g/cm3、融点:134℃、MFR:0.85g/10分
・高密度ポリエチレン
SCG社、H619F、
密度:0.965g/cm3、MFR:0.70g/10分
・中密度ポリエチレン
エクソンモービル社、Enable 4002MC、
密度:0.940g/cm3、融点:128℃、MFR:0.25g/10分
・低密度ポリエチレン
PTT社、LD2420F、
密度:0.922g/cm3、融点:112℃、MFR:0.75g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン
エクソンモービル社、Exceed XP8656ML、
密度:0.916g/cm3、融点:121℃、MFR:0.5g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン
エクソンモービル社、Exceed 1327MA、
密度:0.927g/cm3、融点:123℃、MFR:1.3g/10分
・スリップ剤含有マスターバッチ(MB)
Ampacet社、SLIP61 10061-K、
密度:0.910g/cm3、MFR:10g/10分
・ナイロン6/66C
BASF社、Ultramid C33、
密度:1.12g/cm3、融点:196℃、粘度数:195、相対粘度:3.3
・非晶性半芳香族ポリアミド
EMS社、Grivory G21、
密度:1.18g/cm3、MVR:20cm3/10分
・接着性樹脂
三井化学社、ADMER AT1955E、
無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、
密度:0.890g/cm3、MFR:2.6g/10分
【0112】
[延伸フィルム(基材1)]
70部の中密度ポリエチレン(Enable 4002MC)と、30部の高密度ポリエチレン(ELITE 5960G)とを混合して、ブレンドポリエチレンAを得た。
70部の中密度ポリエチレン(Enable 4002MC)と、30部の低密度ポリエチレン(LD2420F)とを混合して、ブレンドポリエチレンBを得た。
98部の直鎖状低密度ポリエチレン(Exceed XP8656ML)と2部のスリップ剤含有MB(SLIP61 10061-K)とを混合して、ブレンドポリエチレンCを得た。
【0113】
ブレンドポリエチレンA、高密度ポリエチレン(H619F)、ブレンドポリエチレンCおよびブレンドエチレンBを、インフレーション成形法により、ブレンドポリエチレンA-1層(15μm)/高密度ポリエチレン層(20μm)/ブレンドポリエチレンC層(55μm)/ブレンドポリエチレンB層(20μm)/ブレンドポリエチレンA-2層(15μm)の層厚さ比で5層共押出しを行いチューブ状に製膜し、総厚さ125μmのポリエチレンフィルムを得て、チューブ状のフィルムをニップ箇所で折りたたみ、2枚重ねにした。括弧内の数値は層の厚さを示す。上記で作製したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸し、さらに、ブレンドポリエチレンA-2層にコロナ放電処理を行った後、端部をスリットして2枚に分けて、厚さ25μmの延伸フィルム(以下「基材1」ともいう)を得た。基材1は、厚さ3μmのブレンドポリエチレンA-1層と、厚さ4μmの高密度ポリエチレン層と、厚さ11μmのブレンドポリエチレンC層と、厚さ4μmのブレンドポリエチレンB層と、厚さ3μmのブレンドポリエチレンA-2層とを備える。
【0114】
[延伸フィルム(基材2)]
80部のナイロン6/66C(Ultramid C33)と20部の非晶性半芳香族ポリアミド(Grivory G21)とを混合して、ブレンドナイロンを得た。
50部の直鎖状低密度ポリエチレン(Exceed XP8656ML)と50部の中密度ポリエチレン(Enable 4002MC)とを混合して、ブレンドポリエチレンDを得た。
70部の中密度ポリエチレン(Enable 4002MC)と30部の直鎖状低密度ポリエチレン(Exceed 1327MA)とを混合して、ブレンドポリエチレンEを得た。
【0115】
ブレンドナイロン、接着性樹脂(ADMER AT1955E)、直鎖状低密度ポリエチレン(Exceed XP8656ML)、ブレンドポリエチレンDおよびブレンドポリエチレンEを、インフレーション成形法により、ブレンドナイロン層(10μm)/接着性樹脂層(10μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(40μm)/ブレンドポリエチレンD層(20μm)/ブレンドポリエチレンE層(20μm)の層厚さ比で5層共押出しを行いチューブ状に製膜し、総厚さ100μmのフィルムを得て、チューブ状のフィルムをニップ箇所で折りたたみ、2枚重ねにした。このフィルムを長手方向(MD)に4倍の延伸倍率で延伸し、さらに、ブレンドポリエチレンE層にコロナ放電処理を行った後、端部をスリットして2枚に分けて、厚さ25μmの延伸フィルム(以下「基材2」ともいう)を得た。基材2は、厚さ2.5μmのブレンドナイロン層と、厚さ2.5μmの接着性樹脂層と、厚さ20μmかつ3層のポリエチレン層とを備える。
【0116】
以下の基材を用いた。PEFはポリエチレンフィルムを意味する。
PE3K-H:フタムラ化学社、厚さ25μmの縦一軸延伸PEF
カラリヤンYA-2:デンカ社、厚さ18μmの横一軸延伸PEF(高密度PEF)
ハイブロンP:東京インキ社、厚さ25μmの縦一軸延伸PEF(高密度PEF)
【0117】
[シーラントフィルム(PEF1)]
直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社、エボリューSP2020、密度:0.916g/cm3、融点:116℃、MFR:2.3g/10分)をインフレーション成形法により製膜することにより、厚さ250μmのフィルム(以下「PEF1」ともいう)を得た。
【0118】
[シーラントフィルム(PEF2)]
直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社、エボリューSP2320、密度:0.920g/cm3、融点:118℃、MFR:1.9g/10分)をインフレーション成形法により製膜することにより、厚さ100μmまたは130μmのフィルム(以下「PEF2」ともいう)を得た。
【0119】
以下のシーラントフィルムを用いた。
L-140R-1:アイセロ社製、厚さ100μmのPEF
L-535:アイセロ社製、厚さ100μmのPEF
HD:タマポリ社、厚さ100μmまたは70μmの高密度PEF
【0120】
[実施例1]
基材として厚さ25μmの縦一軸延伸PEF(PE3K-H)およびシーラントフィルムとして厚さ100μmのPEF(L-140R-1)を、フィルムのコロナ処理された面が互いに向かい合うようにして、2液硬化型ウレタン接着剤(ロックペイント社、商品名:RU-77t/硬化剤H-7)を介して接着層厚さ3μmでドライラミネートして、ポリエチレン積層体を得た。得られたポリエチレン積層体を包装材料として用いた。
【0121】
[実施例2~8]
基材および/またはシーラントフィルムを表1に記載したフィルムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン積層体を得た。得られたポリエチレン積層体を包装材料として用いた。
【0122】
[比較例1~10]
表2に記載した基材またはシーラントフィルムそのものを包装材料として用いた。
【0123】
[物性評価]
包装材料の物性の評価方法を以下に記載する。
特に言及しない限り、各物性の測定時の環境は、温度23℃および湿度50%RHである。各物性についてそれぞれ3個の試験片について測定を行い、得られた3個の値の算術平均値をそれぞれの物性値として記載した。
【0124】
<降伏応力(基材)>
JIS K7161-1:2014に準拠して、基材の降伏応力を測定した。基材をカットして、幅:15mm、長さ:50mmのサイズを有する試験片を得た。引張試験機(インストロンジャパン製、型番5565C5090)を用いて50mm/minの速度で試験片を引っ張り、降伏応力を測定した。基材として延伸基材を用いている場合は、延伸方向に試験片を引っ張り、降伏応力を測定した。
【0125】
<突刺し強度>
JIS Z1707:2019に準拠して、包装材料の突刺し強度を測定した。包装材料をカットして、幅:5cm、長さ:5cmのサイズを有する試験片を得た。測定器として、卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用いた。直径:1.0mm、先端形状半径:0.5mmの半円形の針を、試験速度:50mm/minで試験片に突き刺し、針が試験片を貫通するまでの最大強度(N)を測定した。ポリエチレン積層体の場合は、上記針を基材面に突き刺し、突刺し強度(N)を測定した。
【0126】
<引張強度>
JIS K7127:1997に準拠して、包装材料の引張強度を測定した。包装材料をカットして、幅:15mm、長さ:50mmのサイズを有する試験片を得た。測定器として、卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用い、試験速度:300mm/minにて引張強度を測定した。基材として延伸基材を用いている場合は、延伸基材の延伸方向の引張強度を測定した。
【0127】
【0128】