IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074579
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】成形構造体
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/12 20060101AFI20240524BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240524BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240524BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240524BHJP
   G02B 27/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G02B1/12
G02B5/00 Z
G02B5/02 C
G02B1/18
G02B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185840
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 豪朗
(72)【発明者】
【氏名】十川 博行
(72)【発明者】
【氏名】岡 遼太郎
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA07
2H042AA33
2H042BA03
2H042BA11
2H042BA13
2H042BA18
2K009DD11
2K009EE02
2K009EE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い吸水性及び親水性を有し、液滴排出性及び防曇性に優れた成形構造体を提供する。
【解決手段】基材と、基材の表面に複数の溝要素を第1の方向に沿って一列に連結してなる少なくとも1つの第1の溝と、を有している。複数の溝要素の各々は、第1領域と、第1領域の第1の方向に接続された第2領域とを有し、溝要素の第2領域と溝要素に隣接する溝要素の第1領域との境界面であり、第1の方向に垂直な面における断面を第1開口面とし、溝要素の第1領域と第2領域との境界面であり、第1の方向に垂直な面における断面を第2開口面としたとき、第2領域は、第2開口面から第1開口面に向かうに従って溝幅及び溝深さが減少し、第1領域は、境界面において第2開口面より大きく第2開口面を包含する大きさの溝断面を有し、第1の方向に一定の溝断面を有して伸長している成形構造体。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に複数の溝要素を第1の方向に沿って一列に連結してなる少なくとも1つの第1の溝と、を有し、
前記複数の溝要素の各々は、第1領域と、前記第1領域の前記第1の方向に接続された第2領域とを有し、
前記溝要素の前記第2領域と前記溝要素に隣接する溝要素の第1領域との境界面であり、前記第1の方向に垂直な面における断面を第1開口面とし、
前記溝要素の前記第1領域と前記第2領域との境界面であり、前記第1の方向に垂直な面における断面を第2開口面としたとき、
前記第2領域は、前記第2開口面から前記第1開口面に向かうに従って溝幅及び溝深さが減少し、
前記第1領域は、前記境界面において前記第2開口面より大きく前記第2開口面を包含する大きさの溝断面を有し、前記第1の方向に一定の溝断面を有して伸長している、
成形構造体。
【請求項2】
前記第1の方向における前記第1領域及び前記第2領域の長さをそれぞれL1,L2としたとき、L1≧L2である請求項1に記載の成形構造体。
【請求項3】
前記境界面における前記第1領域及び前記第2領域の溝深さをそれぞれD3,D2としたとき、D3>D2である請求項1に記載の成形構造体。
【請求項4】
前記第1領域は、深さ方向における溝幅が一定、又は深さ方向において溝幅が単調に減少する形状を有する請求項1に記載の成形構造体。
【請求項5】
前記第1領域は直方体形状を有し、
前記第1の方向における前記第1領域及び前記第2領域の長さをL1,L2とし、前記第1開口面における溝幅及び溝深さをW1,D1とし、前記第2領域の前記境界面における溝幅及び溝深さをW2,D2とし、前記第1領域の前記境界面における溝幅及び溝深さをW3,D3としたとき、前記溝要素は、
W1<W2<W3 ・・・式(1)
D1<D2≦D3 ・・・式(2)
(D1/W1)>(D2/W2) ・・・式(3)
を満たす、請求項1に記載の成形構造体。
【請求項6】
前記第1領域は、前記前記第1領域の伸長方向に垂直な面において矩形形状、V字形状、U字形状及び放物面形状のいずれかの断面を有する請求項1に記載の成形構造体。
【請求項7】
前記基材の前記表面は曲面形状をなし、前記第1の溝は前記曲面形状の前記表面に沿って連結されている請求項1に記載の成形構造体。
【請求項8】
前記基材は前記表面に複数の前記第1の溝を有し、当該複数の第1の溝は前記第1の方向に直交する方向に一定の間隔を有して配列されている、請求項1に記載の成形構造体。
【請求項9】
前記第1の溝に交差する少なくとも1つの第2の溝を有する請求項8に記載の成形構造体。
【請求項10】
前記第2の溝は、前記溝要素の前記第1領域の位置で前記少なくとも1つの第1の溝に交差している、請求項9に記載の成形構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形構造体、特に基材の表面に微細溝が形成された成形構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部品などの表面が曇ることを防ぐために、部品表面に防曇コーティングを施すことや、部品表面に水滴を水膜化させるための微細溝を形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スプレーや薄膜の塗布や、電気的な手段に頼ることなく、基材表面の構造だけで、親水性、防曇性、セルフクリーニング性を発現する成形構造体について開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、親水性を有する鏡の表面に水膜として保持可能な許容量を超えた余剰の水を誘導する手段を設けた浴室用鏡について開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、第1領域1及び第2領域からなる溝要素を連結した溝が形成された成形構造体について開示されている。
【0006】
また、非特許文献1には、開口表面の微細溝の形状と、接触角、毛細管流動に関する動力学の研究について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-193002号公報
【特許文献2】特開2000-279296号公報
【特許文献3】特開2022-053229号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R.R.Rye et al., Capillary Flow in Irregular Surface Grooves,Langmuir 1998, 14, 3937-3943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、防曇コーティングでは保水量に限界があり、液滴排出効果も無い。また、毛細管現象を利用した従来の縦溝加工では、水滴のピン止め効果が発現し、液滴が移動しなくなってしまう問題があった。また、液滴が移動しなくなると、視認できるような大きな水滴が形成されるという問題があった。
【0010】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高い吸水性及び親水性を有し、液滴排出性及び防曇性に優れた光学部品などの成形構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1実施形態による成形構造体は、
基材と、
前記基材の表面に複数の溝要素を第1の方向に沿って一列に連結してなる少なくとも1つの第1の溝と、を有し、
前記複数の溝要素の各々は、第1領域と、前記第1領域の前記第1の方向に接続された第2領域とを有し、
前記溝要素の前記第2領域と前記溝要素に隣接する溝要素の第1領域との境界面であり、前記第1の方向に垂直な面における断面を第1開口面とし、
前記溝要素の前記第1領域と前記第2領域との境界面であり、前記第1の方向に垂直な面における断面を第2開口面としたとき、
前記第2領域は、前記第2開口面から前記第1開口面に向かうに従って溝幅及び溝深さが減少し、
前記第1領域は、前記境界面において前記第2開口面より大きく前記第2開口面を包含する大きさの溝断面を有し、前記第1の方向に一定の溝断面を有して伸長している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】静止状態における固体の表面張力γas、液体の表面張力γal、及び固体/液体間の界面張力γslの3つの張力を説明する図である。
図1B】溝構造と液滴移動の関係を説明する図である。
図2A】本発明の第1の実施形態による成形構造体の上面を模式的に示す上面図である。
図2B】成形構造体10の表面に形成された溝(GR)の一部を拡大して示す部分拡大図である。
図2C】連結された溝要素GEを模式的に示す斜視図である。
図2D】溝要素GEの第1領域R1及び第2領域R2を模式的に示す斜視図である。
図3A】x方向から見たときの溝要素GEの側面を示す図である。
図3B】z方向から見たときの溝要素GEを模式的に示す図である。
図4】溝要素GE1から、溝要素GE1の+z方向に接続された溝要素GE2への液滴の移動を説明する図である。
図5A】基材の表面部に形成された比較例1(CMP1)の溝要素GCを拡大して示す部分拡大上面図である。
図5B】比較例1の溝要素GCの第1領域R1及び第2領域R2を模式的に示す斜視図である。
図5C】x方向から見たときの溝要素GCの側面を示す図である。
図6A】溝要素GEが連結された溝が配列された実施例1(EX1)の成形構造体を模式的に示す上面図である。
図6B】溝要素GCが連結された溝が配列された比較例1(CMP1)の成形構造体を模式的に示す上面図である。
図7A】実施例1(EX1)の溝に滴下された水滴の変化を溝の伸長方向に平行な側面側から接触角計のカメラで観察した観察像を示す図である。
図7B】基材上に滴下された水滴AQの接触角φを模式的に示す図である。
図8】比較例1(CMP1)の溝に滴下された水滴の変化を観察した観察像である。
図9】実施例1(EX1)及び比較例1(CMP1)の場合について、水滴滴下後の経過時間に対する水滴端部AQ2の接触角φの測定結果を示すグラフである。
図10】実施例1(EX1)について、水滴端部AQ2及びAQ1の溝方向の移動距離を示すグラフである。
図11】比較例1(CMP1)について、水滴端部AQ2及びAQ1の溝方向の移動距離を示すグラフである。
図12A】本実施形態の改変例1の溝要素GEを示す斜視図である。
図12B】z方向から見たときの改変例1の溝要素GEを模式的に示す図である。
図13A】本実施形態の改変例2の溝における連結された2つの溝要素GEを示す上面図である。
図13B図13Aの2つの溝要素GEを側方から見た側面図である。
図14A】第2の実施形態の溝(GR)における溝要素GEを示す側面図である。
図14B】x方向から見たときの溝要素GEの側面を示す図である。
図15A】第3の実施形態の溝(GR)における溝要素GEを示す側面図である。
図15B】x方向から見たときの溝要素GEの側面を示す図である。
図16A】第4の実施形態の成形構造体の断面を示す断面図である。
図16B図16Aの溝の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図17A】第5の実施形態の成形構造体の基材の表面を模式的に示す上面図である。
図17B】溝GXが溝GRに交差する部分Wを拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0014】
[毛細管現象による微細溝内の液滴移動]
毛細管現象が発生した溝内で液滴は、以下の式により移動の可否が決定される。
【0015】
【数1】
【0016】
なお、上記したYoungの式及び拡張したYoungの式において、θは平衡接触角(equilibrium contact angle)である。また、外周長Sは、溝の当該断面における溝の外周の全長又は弧長(arc length)である。
【0017】
[第1の実施形態]
上記したように、溝内の流体の移動のしやすさについては、溝形状によらず、基材表面における溝幅Wおよび溝の軸に垂直な断面における溝の外周長Sが関係していることがわかっている。
【0018】
本出願の発明者らは、溝要素の保水性を高め、毛細管力による液滴の移動のしやすさを考慮することによって、保水性及び親水性に優れ、液滴排出性及び防曇性に優れた溝を実現するに至った。
【0019】
(1)成形構造体の構造
図2Aは、本発明の第1の実施形態による成形構造体10の上面を模式的に示す上面図であり、図2Bは、成形構造体10の表面に形成された溝(GR)15の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【0020】
図2Aに示すように、成形構造体10の基材11の表面11Sには、z方向(以下、第1の方向ともいう。)に伸長する互いに平行な複数の微細な溝GR(以下、第1の溝ともいう。)が形成されている。当該複数の溝GRはx方向(第2の方向)に配列され、y方向(深さ方向、第3の方向)に掘られた溝である。
【0021】
複数の溝GRはx方向(第2の方向)に一定の間隔で配列されていても、あるいは異なる間隔で配列されていてもよい。
【0022】
図2Bに示すように、本実施形態の溝(GR)15の各々は、溝要素GEがz方向に繰り返し連結又は接続された構造を有する。溝要素GEは、第1領域R1とその+z方向に接続された第2領域R2とからなる。第1領域R1及び第2領域R2は、z方向においてそれぞれ長さ(領域長)L1及びL2を有する。
【0023】
図2Cは、連結された溝要素GEを模式的に示す斜視図である。具体的には、成形構造体10に形成された、z軸方向に連結する溝要素GEのみを立体的に示した斜視図である。また、図2Dは、溝要素GEの第1領域R1及び第2領域R2を模式的に示す斜視図である。なお、理解の容易さのため、第1領域R1及び第2領域R2を分離して図示している。
【0024】
また、図3Aは、x方向から見たときの溝要素GEの側面を示す図であり、図3Bは、z方向に沿って(図3A、方向VZ)見たときの溝要素GEを模式的に示す図である。ここで、z方向に沿って見たときの方向をVZと表している。
【0025】
溝要素GEの第1領域R1及び第2領域R2は、溝15の伸長方向(+z方向)に垂直な断面(xy面)において矩形形状を有している。すなわち、第1領域R1は、直方体形状を有し、溝GRの伸長方向(+z方向)において溝幅W及び溝深さDは一定であり、W=W3,D=D3である(図3B)。
【0026】
また、第2領域R2においては、溝15の伸長方向(+z方向)に沿って溝幅W及び溝深さDが減少している。具体的には、溝幅WがW2からW1に減少し、溝深さDがD2からD1に減少している。
【0027】
かかる構造によって、毛細管現象による駆動力が+z方向(水滴を移動させたい方向)に働く。
【0028】
また、溝要素GE(すなわち第1領域R1及び第2領域R2)は、溝15のz方向の中心線CL(図2B参照)を含み、基材11の表面11Sに垂直な面に対して対称な構造を有している。
【0029】
より詳細には、図2Dに示すように、第1領域R1は、溝15の伸長方向(z方向)に垂直な断面(xy面)における溝要素GEの端部の開口部の面(以下、開口面という。)OP1(第1開口面)と、第1領域Rと第2領域R2との境界面であり、溝幅W及び溝深さDが第1開口面OP1よりも大なる開口面OP2(第2開口面)とを有している。換言すれば、開口面OP2の面積は、開口面OP1よりも大きい。
【0030】
すなわち、第2領域R2は、第1領域R1との境界における共通面として第2開口面OP2を有するとともに、溝15の伸長方向(+z方向)に向かうに従って溝幅W及び溝深さDが減少し、隣接する溝要素GEの第1領域R1との境界における共通面でもある第1開口面OP1を有している。
【0031】
換言すれば、第2領域R2は、図2Dに示すように、開口面OP2及び開口面OP1をそれぞれ底面及び上面とする四角錐台形状を有している。また、より具体的には、図3Bに示すように、第1開口面OP1は溝幅W1及び溝深さD1を有し、第2開口面OP2は溝幅W2及び溝深さD2を有している(W1<W2、D1<D2≦D3)。
【0032】
また、第1領域R1は、側面(溝の内壁)SS1と、底面BS1とを有し、第2領域R2は、側面(溝の内壁)SS2と、底面BS2とを有している。
【0033】
(2)液滴移動の要件
本願の発明者は、検討及び実験の結果、上記した溝構造を有し、溝要素GEの第1領域R1及び第2領域R2が所定の形状及び条件を満たすとき、液滴が微細溝内を+z方向に移動することを見出した。この溝要素GEの形状及び条件について、以下に詳細に説明する。
【0034】
図4は、溝要素GE1から、溝要素GE1の+z方向に接続された溝要素GE2への液滴の移動を説明する図である。説明の容易さのため、図2B図3A及び図3Bと同様な図を一組として示している。また、溝要素GE1、GE2を特に区別しない場合には、溝要素GEとして説明する。
【0035】
なお、液滴が水の場合を例に説明する。また、溝要素GE中の水についてハッチングを施して示している。
【0036】
初期状態ST1において、溝要素GE1に水WT(図中、ハッチングを施している)が入り始める。さらに水WTが溝要素GE1に入ると水位が上昇し、溝要素GE1に水WTが蓄えられる(ST2:水位上昇)。
【0037】
さらに、毛細管現象による駆動力が生じる程度に溝要素GE1に水WTが流入すると、ST2(水位上昇)の状態から、溝要素GE1から溝要素GE2への水の移動(ST3)が生じる状態に遷移する。
【0038】
基材11の表面まで水位が上昇することで、溝要素GE1の上部に存在する水滴AQが移動するため接触角が小さくなり親水性を示す(ST4:親水化)。
【0039】
そして、隣接する溝要素GE2が、初期状態ST1となり、ST1(初期状態)~ST4(親水化)が繰り返される。
【0040】
従って、表面張力により水が広がり、溝要素GEに水が入る状態が続く限り、水位は上昇し続け、第1の方向(+z方向)への水の移動が生じる。
【0041】
本願の発明者は、溝を有する成形構造体が以下の条件を満たすときに、基材11上の余剰の水を特定方向へ移動させやすい構造体を提供することができることを見出した。具体的には、溝要素GEが以下の条件を満たすときに、溝要素GE1から溝要素GE2への水の移動が生じる。
【0042】
まず、溝要素GEの第2領域R2は、第2開口面OP2から当該第2領域R2に隣接する溝要素GEの第1領域R1の第1開口面OP1に向かうに従って(すなわち、上記第1の方向に)溝幅W及び溝深さDが減少する構造を有している。
【0043】
また、溝要素GEの第1領域R1は、直方体形状を有している。すなわち、第1領域R1の溝幅W3及び溝深さD3は伸長方向で一定である。第1開口面OP1における溝幅及び溝深さをW1,D1とし、第2開口面OP2における溝幅及び溝深さをW2,D2としたとき、溝要素GEは、
W1<W2<W3 ・・・式(1)
D1<D2≦D3 ・・・式(2)
(D1/W1)>(D2/W2) ・・・式(3)
を満たしている。
【0044】
さらに、図2B及び図2Dに示すように、第1領域R1は、一端において第1開口面OP1を包含する溝断面GS1と、他端において第2開口面OP2を包含する溝断面GS2とを有している。
【0045】
また、溝断面GS1は、隣接する溝要素GEの第2領域R2との連結部(境界面)における第1領域R1の溝断面であり、溝断面GS2は、1の溝要素GEの第1領域R1と第2領域R2との境界面における第1領域R1の溝断面である。
【0046】
すなわち、1の溝要素GEにおける第1領域R1と第2領域R2との境界面における第1領域R1の溝断面GS2は、第2開口面OP2よりも大なる面積の溝断面を有している。また、隣接する2つの溝要素GEの境界面における第1領域R1の溝断面GS1は隣接する第2領域R2の第1開口面OP1よりも大きい。
【0047】
より具体的には、第1領域R1の溝断面GS2は、第2開口面OP2よりも大なる溝幅W3及び溝深さD3を有する。また、本実施形態においては、第1領域R1は直方体形状を有し、溝断面GS1は溝断面GS2と同一の溝幅W3及び溝深さD3を有する。
【0048】
なお、第2領域R2の溝幅W又は溝深さDは単調に変化(すなわち、増大又は減少)していることが好ましい。さらに、溝幅W又は溝深さDは、第1の方向に線形に増大又は減少していることが好ましい。
【0049】
なお、ここで単調に増大又は減少とは、実際の溝15の表面又は内壁面に微細な凹凸を有する場合には、溝15の表面又は内壁面が全体として単調に溝幅W及び溝深さDが増大又は減少していればよい。
【0050】
(3)評価
第1の実施形態の溝15(実施例1、EX1)を有する成形構造体10における水滴の移動について、比較例1(CMP1)と比較して以下に詳細に説明する。
【0051】
図5Aは、基材111の表面部に形成された比較例1(CMP1)の溝要素GCを拡大して示す部分拡大上面図である。なお、2つの溝要素GCが連結された場合を示しているが、多数の溝要素GCが連結されて溝が形成され、また、当該溝が複数配列されて成形構造体が形成されている点は実施例1の場合と同様である。
【0052】
図5Bは、溝要素GCの第1領域R1及び第2領域R2を模式的に示す斜視図である。なお、第1領域R1及び第2領域R2を分離して図示している。
【0053】
また、図5Cは、x方向(図5A、方向VX)から見たときの溝要素GCの側面を示す図である。ここで、x方向に沿って見たときの方向をVXと表している。
【0054】
なお、説明及び理解の容易さのため、比較例1(CMP1)の溝要素GCに関し、第1及び第2領域、第1及び第2開口面、第1及び第2領域の側面(溝の内壁)及び底面等について実施例1(EX1)と同一の参照符号を付して説明する。
【0055】
図5Bに示すように、比較例1の溝要素GCの第2領域R2は、実施例1の第2領域R2とは異なり、第1領域R1との共通の面(同一面)として第2開口面OP2を有している。すなわち、溝要素GCにおいては、第2領域R2の第1領域R1側の端面と、第1領域R1の第2領域R2側の端面とは同一面である。
【0056】
さらに、図5A図5Cに示すように、比較例1の第1領域R1は、溝の伸長方向(+z方向)に向かうに従って溝幅W及び溝深さDが増大している点において、実施例1の第1領域R1と異なっている。
【0057】
(3.1)保水量及び毛細管力
実施例1(EX1)の溝15及び比較例1(CMP1)の溝が形成された成形構造体のサンプルを作成し、液滴移動の効果を検証した。
【0058】
なお、実施例および比較例の成形構造体のサンプルは、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)からなる基板にレーザ加工により溝を形成して作成した。また実施例および比較例を構成するサンプルでの水滴の観察は、接触角計を用い、いずれも接触角計のノズルから2.0μlの水滴を滴下して行った。
【0059】
図6Aは、溝要素GEが連結された溝15が配列された実施例1(EX1)の成形構造体10を模式的に示す上面図である。複数の溝15が間隔SPで配列されている。なお、2つの溝要素GEの連結状態を図示しているが、液滴の大きさを超える多数の溝要素GEが連結されている。
【0060】
同様に、図6Bは、溝要素GCが連結された溝15Cが配列された比較例1(CMP1)の成形構造体を模式的に示す上面図である。複数の溝15Cが間隔SPで配列されている。
【0061】
実施例1(EX1)の溝要素GEについては、L1=70μm、L2=30μm、W1=70μm、W2=84μm、W3=100μm、D1=168μm、D2=178μm、D3=200μmとした。
【0062】
また、比較例1(CMP1)の溝要素GCについては、L1=70μm、L2=30μm、W1=70μm、W2=W3=84μm、D1=168μm、D2=D3=178μmとした。
【0063】
実施例1の溝要素GEの第1領域R1の体積VE1は1400×103μm3、第2領域R2の体積VE2は400×103μm3である。また、比較例1の溝要素GCの第1領域R1の体積VC1は933×103μm3、第2領域R2の体積VC2(=VE2)は400×103μm3である。
【0064】
したがって、実施例1の溝要素GEの全体積VE(=VE1+VE2)は、1800×103μm3、比較例1の溝要素GCの全体積VC(=VC1+VC2)は、1333×103μm3である。
【0065】
すなわち、実施例1の溝要素GEの全体積VE(=VE1+VE2)は比較例1の溝要素GCの全体積VC(=VC1+VC2)の135%であり、実施例1の溝要素GEは比較例1の溝要素GCよりも大きな保水量を有する。なお、実施例1と比較例1の溝のz方向における長さL(=L1+L2)は等しい値で計算されている。つまり、実施例1の溝要素GEは、比較例1の溝要素GCに対して単位長さあたりの体積が135%となっていることがわかる。
【0066】
また、接触角計のノズルから成形構造体上に滴下する液適量を2.00μl(=2.00×109μm3)とし、滴下直後の接触角(平衡接触角)θを90°とすると、成形構造体の基材上の液適の断面積SQは3.05×109μm3、当該断面に含まれる溝要素GE及び溝要素GCの個数(100×140μm2に1個で計算される)は、217.6個である。
【0067】
そうすると、当該液適に接する比較例1の溝要素GCの全体積の当該液適(2.00μl)に対する割合は、1333×103μm3×217.6/2.00×109μm3=14.5%である。
【0068】
一方当該液適に接する実施例1の溝要素GEの全体積の当該液適(2.00μl)に対する割合は、1800×103μm3×217.6/2.00×109μm3=19.6%である。したがって、実施例1の溝要素GEは比較例1の溝要素GCよりも大きな保水量を有する。
【0069】
さらに、本実施形態の溝要素GEの第1領域R1は直方体形状を有し、溝方向(z方向)において一定の溝幅W及び溝深さDを有している。一方、比較例1の溝要素GCの第1領域R1においては、液滴の移動方向(+z方向)とは反対方向(-z方向)に溝幅W及び溝深さDが減少する構造を有している。
【0070】
したがって、比較例1の溝要素GCにおいては、液滴を移動させたい方向とは反対方向(-z方向)に毛細管現象による駆動力が生じ、液滴の移動が阻害される。
【0071】
なお、
すなわち、本実施形態の溝要素GEにおいては、比較例1に比較してより大きな液滴の駆動力が発現され、液滴の移動効果が高い。
【0072】
(3.2)水滴の移動及び接触角の測定結果
実施例1(EX1)の溝15における水滴の移動について、比較例1(CMP1)の場合と比較して以下に説明する。
【0073】
図7Aは、実施例1(EX1)の溝15にノズルから水滴を滴下し、滴下された水滴の変化を基板11の溝15の伸長方向の中心軸に平行な側面(図中、方向VX)側から接触角計(協和界面科学製PCA-11)のカメラで観察した観察像を示している。なお、基板11の斜め上方から観察した。また、水滴の滴下後の経過時間が1sec(秒)、10sec、20sec、30secの像を順次並べて示している。
【0074】
また、図7Bは、基材11上に滴下された水滴AQの接触角φを模式的に示している。接触角φが大きい場合(φ=φ1)と小さい場合(φ=φ2)の水滴AQを模式的に示している。以下において、接触角φは、基材11上の水滴AQが基材表面11Sとなす角度として測定された。
【0075】
図8は、実施例1(EX1)の場合と同様に、比較例1(CMP1)の溝15Cに滴下された水滴の変化を観察した観察像である。
【0076】
図7Aを参照すると、実施例1(EX1)においては、滴下直後(経過時間1sec)の位置から、時間の経過とともに水滴AQの+z側の水滴端部AQ2が溝方向(+z方向)に向かって移動しており、一方、-z側の水滴端部AQ1には殆ど移動が観察されなかった。
【0077】
また、図8を参照すると、比較例1(CMP1)においては、滴下直後(経過時間1sec)の位置から、時間の経過とともに水滴AQの+z側の水滴端部AQ2が溝方向(+z方向)に向かって移動しているが、その移動量は実施例1(EX1)よりも小さかった。一方、-z側の水滴端部AQ1には殆ど移動が観察されなかった。
【0078】
図9は、水滴滴下後の経過時間に対する水滴端部AQ2の接触角φの測定結果を示すグラフである。実施例1(EX1)及び比較例1(CMP1)の場合について示している。
【0079】
図9に示すように、比較例1(CMP1)の場合、水滴端部AQ2の接触角φは滴下直後において88.4°であり、接触角φは時間の経過とともに低減し、経過時間が30secでは63.8°であった。
【0080】
一方、実施例1(EX1)の場合では、水滴端部AQ2の接触角φは、滴下直後ではφ=89.5°、経過時間が30secではφ=43.0°であった。比較例1と比べ、時間の経過とともに水滴AQの接触角が大きく低減されることが確認された。
【0081】
したがって、本実施形態の溝要素GEによれば、保水量が増大されたことで、接触角が大きく低減されることが確認された。
【0082】
図10及び図11は、それぞれ実施例1(EX1)及び比較例1(CMP1)について、水滴端部AQ2の溝方向(+z方向)の移動距離(黒丸)及び水滴端部AQ1の溝方向の移動距離(黒三角)を示すグラフである。
【0083】
図10に示すように、実施例1(EX1)の場合、水滴端部AQ1には殆ど移動が観察されず、水滴端部AQ2は溝方向に大きく移動することが確認された。図11に示す比較例1(CMP1)の場合では、水滴端部AQ2は溝方向に移動するものの、実施例1の場合の1/2程度の移動距離であった。
【0084】
したがって、本実施形態の溝要素GEによれば、大きな接触角の低下及び高い液滴の移動効果が得られることが確認された。
【0085】
以上、述べたように、本実施形態の溝要素GEによれば、大きな保水量によって高い吸水性を有するとともに、液滴の接触角が大きく低減されることによって高い親水性を有する。したがって、高い液滴排出性、防曇性を有する成形構造体を提供することができる。
(4)本実施形態の改変例
図12Aは、本実施形態の改変例1の溝要素GEを示す斜視図である。また、図12Bは、z方向から見たときの改変例1の溝要素GEを模式的に示す図である。
【0086】
上記した実施形態においては、溝要素GEの第1領域R1が直方体形状を有する場合を例に説明したが、これに限らない。
【0087】
図12Aに示すように、第1領域R1は、第1領域R1の上面(基材表面での開口面)及び底面を、上面及び底面とする四角錐台形状(又は切頭錐台形状)を有していてもよい。この場合、溝GRの伸長方向(z方向)の中心軸CLに垂直な面における溝GRの断面は台形状である。
【0088】
図12Bに示すように、本改変例1の場合においても、第1領域R1の溝断面GS2は、第2開口面OP2よりも大なる溝幅W3(最小の溝幅)及び溝深さD3を有する。また、溝断面GS2及び溝断面GS1は同一の形状及びサイズを有する。
【0089】
なお、第1領域R1は、深さ方向に溝幅Wが狭くなる溝断面を有することが好ましい。この場合、第1領域R1における水位(液滴)の上昇がより早くなるため、第2領域R2への水の移動が促進され、水の移動効果が高い。
【0090】
また、第1領域R1の形状は四角錐台形状に限らない。例えば、第1領域R1は、中心軸CLに垂直な面における溝断面が多角形である多角錐柱形状を有していてもよい。
【0091】
図13Aは、本実施形態の改変例2の溝25における連結された2つの溝要素GEを示す上面図であり、図13Bは、当該2つの溝要素GEを側方(図13Aに示す方向VX)から見た側面図である。
【0092】
具体的には、溝要素GEの第1領域R1は、内壁面及び底面における各辺が面取りされたフィレット部(面取り)RCを有していてもよい。
【0093】
このようなフィレット部RCを有することにより第2領域R2への液滴の移動がより促進される。
【0094】
さらに、第1領域R1は、第1領域R1の伸長向に垂直な面において矩形形状、V字形状、U字形状及び放物面形状等の断面を有していてもよい。これらの場合においても、第1領域R1は、第2領域R2との境界面において第2開口面OP2より大きく第2開口面OP2を包含する大きさの溝断面GS2を有し、伸長方向(第1の方向)に一定の断面を有して伸長した構造を有していればよい。
【0095】
なお、第1領域R1は、深さ方向における溝幅Wが単調に減少する溝断面を有することが好ましい。また、伸長方向における第1領域R1の長さL1及び第2領域R2の長さL2は、L1≧L2を満たすことが好ましい。また、第1領域R1と第2領域R2との境界面における第1領域R1の溝深さD3及び第2領域R2の溝深さは、D3>D2を満たすことが好ましい。
【0096】
[第2の実施形態]
図14Aは、第2の実施形態の成形構造体における溝(GR)35の溝要素GEを示す側面図であり、図14Bは、x方向(図14A、方向VZ)から見たときの溝要素GEの側面を示す図である。なお、溝35は、図2Aに示した場合と同様に基材11の表面11Sに形成され、成形構造体が構成されている。
【0097】
第2の実施形態の溝25においては、第1の実施形態と同様に、第1領域R1は直方体形状を有するが、その深さD3は、第1領域R1と第2領域R2との境界面における第2領域R2の深さD2に等しい(D3=D2)。その他の点においては、第1の実施形態の溝15と同一である。
【0098】
第1の実施形態の溝15と比較すると、保水量は低減し、吸収性は低下するものの、本実施形態の溝25によれば、液滴の接触角が大きく低減されることによって高い親水性を有する。
【0099】
[第3の実施形態]
図15Aは、第3の実施形態の成形構造体における溝(GR)45の溝要素GEを示す側面図であり、図15Bは、x方向(図15A、方向VX)から見たときの溝要素GEの側面を示す図である。溝45が基材11の表面11Sに形成され、成形構造体が構成されている点は上記した実施形態の場合と同様である。
【0100】
図15Aに示すように、隣接する溝要素GEは、それらの中心線CL1及びCL2間の間隔がΔxであるように連結されている。各々は、上記した第1の実施形態の改変例2における溝25の溝要素GEと同一である。
【0101】
本実施形態の溝45によれば、液滴の移動方向を基材面内で変更することができる。また、基材面内における溝要素GEの疎密を調整することができる。したがって、液滴の排出方向及び液滴の排出量を基材面内で自由に調整することができる。
【0102】
[第4の実施形態]
図16Aは、第4の実施形態の成形構造体50の断面を示す断面図である。また図16Bは、溝55の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0103】
成形構造体50の基材51は曲面形状を有し、内側の面51Iに溝55が設けられている。図16Bに示すように、溝55の溝要素GE1は溝要素GE2に対して角度θjで溝要素GE2に連結されている。すなわち、各溝要素GEj(j=1,2,・・・)がz方向(第1の方向)に対して垂直な方向に角度θjで連結されている。
【0104】
すなわち、角度θjを順次変更して溝要素GEを連結することによって、基材51の曲面形状の表面に沿って溝55が形成されている。
【0105】
なお、溝55の溝要素GEjについては、上記した実施形態の溝要素GEを適用することができる。
【0106】
また、平板状の基材11に上記した実施形態の溝要素GEを形成して平板状の成形構造体を形成し、当該成形構造体を曲げることによって、曲面状の成形構造体50を形成してもよい。この場合、溝要素GEは当該曲面に沿って湾曲し、曲面状の成形構造体50が形成される。
【0107】
本実施形態によれば、曲面状の基材11の表面においても溝55を形成することができ、高い液滴排出性、防曇性を有する曲面状の成形構造体を提供することができる。
【0108】
[第5の実施形態]
上記した実施形態においては、基材11の表面11Sの第1の方向(z方向)に伸長する互いに平行な複数の溝GRが形成されている場合について説明した。第5の実施形態においては、当該複数の溝GRに交差する溝GX(第2の溝)が形成されている。
【0109】
図17Aは、第5の実施形態の成形構造体60の基材11の表面11Sを模式的に示す上面図である。基材表面11Sには、z方向(第1の方向)に伸長する互いに平行な複数の微細な溝GRが形成されている。
【0110】
複数の溝GRの各々の溝要素GEがz方向において同一位置であるように複数の溝GRが配置されている。すなわち、各溝GRの第1開口面OP1がx軸に平行な線上に整列し、また、第2開口面OP2がx軸に平行な線上に整列するように複数の溝GRが整列して配置されている。
【0111】
また、基材表面11Sには、x方向(第2の方向)に伸長し、少なくとも1つの溝GRに交差する少なくとも1つの微細な溝GXが形成されている。図17Aに示す場合では、互いに平行な複数の溝GXが形成されている。また、溝GXは、基材表面11Sにおいて一定の幅を有している。
【0112】
図17Bは、溝GXが溝GRに交差する部分Wを拡大して示す部分拡大図である。溝GXは、溝要素GEの第2開口面OP2の位置、すなわち第2開口面OP2を含む領域で溝GRに交差している。
【0113】
本実施形態においては、溝GXが第1領域R1において溝GRに交差している。第1領域R1の保水量が大きい点で溝GXが第1領域R1の位置で溝GRに交差していることが特に好ましい。
【0114】
なお、水滴に対する第1領域R1から第2領域R2への駆動力が発揮される点で、溝GXが第2開口面OP2の位置で溝GRに交差していてもよい。
【0115】
しかし、溝GXが溝GRに交差する位置は、第1領域R1及び第2開口面OP2の位置に限定されないが、第1開口面OP1の位置以外の領域で溝GRに交差することが好適である。上記した溝要素GEの構成によれば、第1開口面OP1において毛細管現象による駆動力が発揮され、溝要素GEから当該GEに隣接する溝要素GEへの水滴の移動が促進されるからである。
【0116】
溝GRに交差する複数の溝GXを配列することによって、水滴を基材表面11S上に伸ばして水膜化することができる。従って、複数の溝GXを配列する間隔は水滴の大きさに応じて定めることが好適である。
【0117】
例えば、図17Aに示すように、z方向において、複数の溝GXが溝要素GEの複数周期(PZ=n×GE、nは2以上の整数)毎に溝GRに交差するように設けられている。
【0118】
図17Aに示すように、複数の溝GRが周期PX、複数の溝GXが周期PZで溝GRに交差するように配列される場合、周期PX及びPZは、水滴の大きさに応じて、例えば、成形構造体の用途に応じた、所定の水滴の大きさの範囲内であるように定めることが好適である。
【0119】
溝GXが溝GRに交差する角度に特に限定は無いが、複数の溝GXが複数の溝GRに直交するように設けられていることが好ましい。
【0120】
なお、溝GXの上面形状及び断面形状は特に限定されないが、溝GXが基材表面11Sにおいて一定の幅を有する場合には、溝GXの基材表面11Sにおける幅は溝GRの第2領域R2の長さL2未満であることが好ましい。
【0121】
また、溝GXとして上記した溝GRと同様な構造を有していてもよい。この場合、溝GX及び溝GRは、溝GX及び溝GRの各第1領域R1が互いに交差するように接続されていることが好ましい。
【0122】
あるいは、溝GXは、基材表面11Sにおいて一定の幅を有し、溝GXの伸長方向に垂直な面における断面が矩形形状、三角形形状(V字形状)又はU字形状又は放物面形状を有していてもよく、あるいは不規則形状の溝であってもよい。
【0123】
[他の実施形態]
上記した実施形態においては、溝要素GE(すなわち第1領域R1及び第2領域R2)が、溝GRの中心線CLを含み、基材表面11Sに垂直な面、に対して対称な構造を有している場合を例に説明したが、非対称であってもよい。
【0124】
本発明による成形構造体は、特に車両(Vehicle)の灯具又はウインドウなどの内外表面に好適に用いることができるが、これに限定されない。
【0125】
また、基材11はガラス、樹脂などを用いることができる。基材11は透明な素材に限らず、着色されていてもよい。あるいは、鏡など裏面に反射層が形成されていてもよい。
【0126】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、高い液滴排出効果を有し、防曇効果に優れた光学部品などの成形構造体を提供することができる。
【符号の説明】
【0127】
10,50:成形構造体
11,51:基材
11S:基材表面
15,25,35,45,55:溝
AQ:水滴
GE:溝要素
GR:溝
GX:溝
OP1:第1開口面
OP2:第2開口面
R1:第1領域
R2:第2領域
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B