(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074596
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ウェハー膜種自動判定システム及びウェハー自動分類装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240524BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20240524BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20240524BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L21/66 L
G01N21/00 B
G01N21/3563
G01N21/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185866
(22)【出願日】2022-11-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】523055857
【氏名又は名称】ハマダレクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 健也
(72)【発明者】
【氏名】福山 紗英子
【テーマコード(参考)】
2G059
4M106
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB10
2G059BB16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
4M106AA01
4M106AA12
4M106AA13
4M106BA04
4M106BA08
4M106CA21
4M106DH12
4M106DH13
4M106DJ17
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】ウェハー1の画像に基づきウェハー1の膜種を多くの種類に分類し判定できるウェハー膜種判定システム及び同システムによって膜種判定されたウェハー1を、予め膜種登録された格納ボックスに搬送し分別格納できるウェハー自動分類装置を提供すること。
【解決手段】赤外光撮像手段3で撮像されたウェハー1の赤外画像、可視光表撮像手段4で撮像されたウェハー1の可視光表画像、可視光裏撮像手段5で撮像されたウェハー1の可視光裏画像及びHS撮像手段6で撮像されたウェハー1のSG画像に基づいて、ウェハー1の代表膜種についての判定結果を出力するニューラルネットワーク10を備えているウェハー膜種自動判定システム及びウェハー収容手段19と、ウェハー格納手段20と、ウェハー搬入移送手段21と、ウェハー搬送手段23等を備え、膜種判別前のウェハー1をウェハー膜種自動判定システムに搬入し、膜種判定結果に応じてウェハー格納手段20の一つに分別格納するウェハー自動分類装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光に感度を有し、利用するシリコンウェハーを透過した赤外光による赤外画像を撮像する赤外光撮像手段と、
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面又は裏面で反射した可視光による可視光画像を撮像する可視光撮像手段と、
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面又は裏面で反射した可視光の波長ごとの強度を示すスペクトルグラフ画像を撮像するHS撮像手段と、
前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光画像及び前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する機械学習手段を備えている
ことを特徴とするウェハー膜種自動判定システム。
【請求項2】
前記可視光撮像手段は、前記ウェハーの表面で反射した可視光による可視光表画像及び前記ウェハーの裏面で反射した可視光による可視光裏画像を撮像するものであり、
前記機械学習手段は、前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光表画像及び前記可視光裏画像並びに前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のウェハー膜種自動判定システム。
【請求項3】
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面のエッジ部で反射した可視光による可視光表エッジ画像及び前記ウェハーの裏面のエッジ部で反射した可視光による可視光裏エッジ画像を撮像するエッジ撮像手段をさらに備え、
前記機械学習手段は、前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光表画像及び前記可視光裏画像、前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像並びに前記エッジ撮像手段で撮像された前記可視光表エッジ画像及び前記可視光裏エッジ画像に基づいて、前記ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載のウェハー膜種自動判定システム。
【請求項4】
前記機械学習手段は、
前記赤外画像に基づいて、前記膜の種類についての赤外画像判定結果を出力する赤外画像用機械学習手段と、
前記可視光画像に基づいて、前記膜の種類についての可視光画像判定結果を出力する可視光画像用機械学習手段と、
前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記膜の種類についてのSG画像判定結果を出力するSG画像用機械学習手段と、
前記赤外画像用機械学習手段、前記可視光画像用機械学習手段及び前記SG画像用機械学習手段から出力された赤外画像判定結果、可視光画像判定結果及びSG画像判定結果が入力されると、前記赤外画像判定結果、前記可視光画像判定結果及び前記SG画像判定結果の組合せと代表膜種との関係を照合し、前記ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果として代表膜種データを出力する膜種組合せ照合手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のウェハー膜種自動判定システム。
【請求項5】
利用するシリコンウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する請求項1~4のいずれかに記載のウェハー膜種自動判定システムと、
予め各々異なる膜の種類が登録されている複数のウェハー格納手段と、
前記判定結果が出力された前記ウェハーを、該判定結果が示す膜の種類が登録されている前記複数のウェハー格納手段のうちの一つに格納するウェハー搬送手段を備えている
ことを特徴とするウェハー自動分類装置。
【請求項6】
膜種判別前の前記ウェハーを複数枚収容可能なウェハー収容手段と、
前記ウェハー収容手段から前記ウェハーを1枚ずつ取り出して、前記ウェハー膜種自動判定システムに搬入し、搬入した前記ウェハーを前記ウェハー膜種自動判定システムから搬出し、前記ウェハー搬送手段に受け渡すウェハー搬入移送手段を備えている
ことを特徴とする請求項5に記載のウェハー自動分類装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコンウェハーの再生加工に際して、利用するシリコンウェハー(以下「ウェハー」という。)に成膜されている膜を除去する工程(以下「膜除去フロー」という。)の選定に利用するためのウェハー膜種自動判定システム及び同システムによる判定結果に基づいてウェハーを分別するウェハー自動分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスプロセスにおいて発生した使用済みのモニター、ダミーといったシリコンウェハーは、再利用するために再生加工を行うが、ウェハーの再生加工においては、まず初めにウェハーの表面や裏面に成膜された膜種を判定分類し、膜種に合わせた膜除去フローを選定する必要がある。
従来このような膜種判定においては、蛍光灯下2,000lxほどの照度環境下で、目視による官能検査を行っている。この官能検査は、ウェハー外観の色味の違いから表面、裏面、エッジ部の膜種を判定し、人が膜種ごとにウェハーの分類を行うといったものである。
そして、膜種の判定は10~15ほどに分類することによって行われ、この膜種の分類数は次工程の膜除去フローを適正化するために必要な数が用意される。
しかし、例えば酸化膜と一括りに言っても膜厚の違いで外観色は変化し、外観種は数十種類にも及ぶ。よって、大分類で10~15膜種ともなると、少なく見積もっても数百種類以上の外観種が存在している状況であり、官能検査の難易度が窺える。
そもそも膜種判定が必要となっている背景として、各顧客における使用工程が多岐にわたっておりウェハーの枚葉管理が困難、膜種毎に分類されて入荷されることがないといった理由により、様々な顧客から預かったウェハーに成膜されている膜の種類(以下「ウェハーの膜種」という。)が未知の状態であることが挙げられる。そして、上記の膜種判定技術における問題点は3点ある。
1点目は、官能検査であるため、検査者間及び同一検査者の膜種判定のばらつきが生じてしまうこと。2点目は、膜種の誤判定があった場合、膜除去の工程で適切な処理ができず膜残りといった工程不良の問題が生じること及び膜除去装置の金属汚染を引き起こしてしまう可能性があること。3点目は、人による検査、分類作業であるため、検査者の習熟度によって処理枚数に差が生じ技能を習得するまでに相応の時間を要することである。
【0003】
そこで、ウェハーの再生加工に際して、光学的な手法によって、ウェハーの膜種を判別して各形成膜種別にウェハーを仕分け、適切な膜除去を行えるようにするための方法や装置が提案されている。
例えば、特許文献1(特開平9-17833号公報)には、半導体ウェハーの赤外吸収スペクトルを測定し、半導体ウェハー表面の形成膜種等を判別、評価することにより、各形成膜種別に半導体ウェハーを仕分けし、形成膜種別に設定した最適の処理工程にて再生半導体ウェハーとなす点及びCPUが予め設定した種々の形成膜種を有する半導体ウェハーの赤外吸収スペクトルを記憶しており、測定装置からの赤外吸収スペクトルと比較して形成膜種を推定する点が記載されている(特に、要約及び段落0022を参照)。
また、特許文献2(特開2002-26096号公報)には、使用済シリコンウェハーを再生するために、ウェハー上に形成された膜の種類を、目視、表面抵抗、赤外吸収スペクトル、光反射率等により特定した後、膜の特性に適した除去を施す方法もある旨記載されている(特に、段落0004~0005を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-17833号公報
【特許文献2】特開2002-26096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2には、ウェハーの膜種を判別、評価する具体的な手法として、赤外吸収スペクトルによる分析手法しか記載されていない。
そして、特許文献1においては、窒化膜、酸化膜、窒化膜+酸化膜、レジスト+窒化膜+酸化膜の4種に分別して収納されており(段落0025を参照)、特許文献2においては、式(1)~(3)で示される吸光度の比に基づいてシリコン結晶の品質を評価しているが、特許文献1の段落0016に記載されているように、赤外光の透過率は半導体ウェハーの種類によって異なっている。具体的には、基板へのP(リン)やB(ボロン)等のドーパント種やドーパント量によって透過率が変動し、さらには基板上に成膜された金属膜ではないアモルファスカーボン膜をはじめとする有機物においても赤外光を透過しにくい膜種があるため、赤外吸収スペクトルのみで膜種を判定することは困難であった。また、特許文献2の段落0047等の記載から見て再生予定のウェハーを多くの種類には分別できず、上記の官能検査のように、膜種を10~15に分類することは不可能であった。
本発明は、このような問題を解決するために、予め撮像したウェハーの画像に基づいて、ウェハーの膜種を多くの種類に分類して判定することが可能なウェハー膜種判定システムの提供を第1の課題としており、同ウェハー膜種判定システムによって膜種判定されたウェハーを、予め膜種登録された格納ボックスに搬送し分別格納することが可能なウェハー自動分類装置の提供を第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、
赤外光に感度を有し、利用するシリコンウェハーを透過した赤外光による赤外画像を撮像する赤外光撮像手段と、
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面又は裏面で反射した可視光による可視光画像を撮像する可視光撮像手段と、
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面又は裏面で反射した可視光の波長ごとの強度を示すスペクトルグラフ画像を撮像するHS撮像手段と、
前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光画像及び前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する機械学習手段を備えているウェハー膜種自動判定システムである。
【0007】
上記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のウェハー膜種自動判定システムにおいて、
前記可視光撮像手段は、前記ウェハーの表面で反射した可視光による可視光表画像及び前記ウェハーの裏面で反射した可視光による可視光裏画像を撮像するものであり、
前記機械学習手段は、前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光表画像及び前記可視光裏画像並びに前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力することを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明のウェハー膜種自動判定システムにおいて、
可視光に感度を有し、前記ウェハーの表面のエッジ部で反射した可視光による可視光表エッジ画像及び前記ウェハーの裏面のエッジ部で反射した可視光による可視光裏エッジ画像を撮像するエッジ撮像手段をさらに備え、
前記機械学習手段は、前記赤外光撮像手段で撮像された前記赤外画像、前記可視光撮像手段で撮像された前記可視光表画像及び前記可視光裏画像、前記HS撮像手段で撮像された前記スペクトルグラフ画像並びに前記エッジ撮像手段で撮像された前記可視光表エッジ画像及び前記可視光裏エッジ画像に基づいて、前記ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力することを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明のウェハー膜種自動判定システムにおいて、
前記機械学習手段は、
前記赤外画像に基づいて、前記膜の種類についての赤外画像判定結果を出力する赤外画像用機械学習手段と、前記可視光画像に基づいて、前記膜の種類についての可視光画像判定結果を出力する可視光画像用機械学習手段と、前記スペクトルグラフ画像に基づいて、前記膜の種類についてのSG画像判定結果を出力するSG画像用機械学習手段と、
前記赤外画像用機械学習手段、前記可視光画像用機械学習手段及び前記SG画像用機械学習手段から出力された赤外画像判定結果、可視光画像判定結果及びSG画像判定結果が入力されると、前記赤外画像判定結果、前記可視光画像判定結果及び前記SG画像判定結果の組合せと代表膜種との関係を照合し、前記ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果として代表膜種データを出力する膜種組合せ照合手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための請求項5に係る発明は、
利用するシリコンウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する請求項1~4のいずれかに記載のウェハー膜種自動判定システムと、
予め各々異なる膜の種類が登録されている複数のウェハー格納手段と、
前記判定結果が出力された前記ウェハーを、該判定結果が示す膜の種類が登録されている前記複数のウェハー格納手段のうちの一つに格納するウェハー搬送手段を備えているウェハー自動分類装置である。
【0011】
上記の課題を解決するための請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明のウェハー自動分類装置において、
膜種判別前の前記ウェハーを複数枚収容可能なウェハー収容手段と、
前記ウェハー収容手段から前記ウェハーを1枚ずつ取り出して、前記ウェハー膜種自動判定システムに搬入し、搬入した前記ウェハーを前記ウェハー膜種自動判定システムから搬出し、前記ウェハー搬送手段に受け渡すウェハー搬入移送手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のウェハー膜種自動判定システムは、赤外光撮像手段で撮像されたウェハーの赤外画像、可視光撮像手段で撮像されたウェハーの可視光画像及びHS撮像手段で撮像されたウェハーのスペクトルグラフ画像に基づいて、ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する機械学習手段を備えているので、ウェハーの赤外画像、可視光画像及びスペクトルグラフ画像を撮像し機械学習手段に入力するだけで、精度の安定した膜種判定が可能となる。そのため、各ウェハーに対して適切な膜除去フローを選定できる、膜残りや膜除去装置の金属汚染等の問題が生じにくい、検査者の習熟度によらずに所定時間内に必要な枚数のウェハーを確実に処理できるといった効果が得られる。
【0013】
請求項2に係る発明のウェハー膜種自動判定システムは、請求項1に係る発明が奏する上記の効果に加え、機械学習手段が、赤外光撮像手段で撮像されたウェハーの赤外画像、可視光撮像手段で撮像されたウェハーの可視光表画像及び可視光裏画像並びにHS撮像手段で撮像されたウェハーのスペクトルグラフ画像に基づいて、ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力するので、ウェハーの赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像及びスペクトルグラフ画像を撮像し機械学習手段に入力するだけで、各ウェハーに対してより適切な膜除去フローを選定できる。
【0014】
請求項3に係る発明のウェハー膜種自動判定システムは、請求項2に係る発明のウェハー膜種自動判定システムが奏する上記の効果に加え、機械学習手段が、赤外光撮像手段で撮像されたウェハーの赤外画像、可視光撮像手段で撮像されたウェハーの可視光表画像及び可視光裏画像、HS撮像手段で撮像されたウェハーのスペクトルグラフ画像並びにエッジ撮像手段で撮像されたウェハーの可視光表エッジ画像及び可視光裏エッジ画像に基づいて、ウェハーの表面及び裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力するので、ウェハーの赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像、スペクトルグラフ画像、可視光表エッジ画像及び可視光裏エッジ画像を撮像し機械学習手段に入力するだけで、各ウェハーに対してさらに適切な膜除去フローを選定できる。
【0015】
請求項4に係る発明のウェハー膜種自動判定システムは、請求項1に係る発明が奏する上記の効果に加え、機械学習手段が、赤外画像に基づいて、膜の種類についての赤外画像判定結果を出力する赤外画像用機械学習手段と、可視光画像に基づいて、膜の種類についての可視光画像判定結果を出力する可視光画像用機械学習手段と、スペクトルグラフ画像に基づいて、膜の種類についてのSG画像判定結果を出力するSG画像用機械学習手段と、赤外画像用機械学習手段、可視光画像用機械学習手段及びSG画像用機械学習手段から出力された赤外画像判定結果、可視光画像判定結果及びSG画像判定結果が入力されると、赤外画像判定結果、可視光画像判定結果及びSG画像判定結果の組合せと代表膜種との関係を照合し、ウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果として代表膜種データを出力する膜種組合せ照合手段を備えているので、判定結果の誤りをさらに低減することができる。
【0016】
請求項5に係る発明のウェハー自動分類装置は、利用するシリコンウェハーの表面又は裏面に成膜されている膜の種類についての判定結果を出力する請求項1~4のいずれかに記載のウェハー膜種自動判定システムと、予め各々異なる膜の種類が登録されている複数のウェハー格納手段と、判定結果が出力されたウェハーを、該判定結果が示す膜の種類が登録されている複数のウェハー格納手段のうちの一つに格納するウェハー搬送手段を備えているので、処理能力が安定しており、人による分別作業を削減できる。
【0017】
請求項6に係る発明のウェハー自動分類装置は、請求項5に係る発明が奏する上記の効果に加え、膜種判別前のウェハーを複数枚収容可能なウェハー収容手段と、ウェハー収容手段からウェハーを1枚ずつ取り出して、ウェハー膜種自動判定システムに搬入し、搬入したウェハーをウェハー膜種自動判定システムから搬出し、ウェハー搬送手段に受け渡すウェハー搬入移送手段を、さらに備えており、膜種判別前のウェハーをウェハー膜種自動判定システムに搬入したり、搬入したウェハーをウェハー膜種自動判定システムから搬出したりする必要がなくなるので、人による作業をさらに削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1に係るウェハー膜種自動判定システムのブロック図。
【
図2】実施例1における機械学習手段の一例を示す図。
【
図3】目視による判定と可視光表画像学習手段による判定を比較した結果を示す表。
【
図4】実施例1における代表膜種決定表の一部を示す図。
【
図5】実施例2に係るウェハー膜種自動判定システムのブロック図。
【
図6】実施例2における代表膜種決定表の一部を示す図。
【
図7】実施例3に係るウェハー自動分類装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例によって、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例0020】
図1は実施例1に係るウェハー膜種自動判定システムのブロック図である。
図1に示すように、実施例1に係るウェハー膜種自動判定システムは、ウェハーの表面及び裏面(以下「ウェハー面」という。)を撮像するウェハー面撮像ステージと、ウェハー面撮像ステージで撮像されたウェハー面の各種画像に基づいて、ウェハーの膜種についての判定結果を出力する機械学習手段からなっている。
【0021】
ウェハー面撮像ステージは、
図1の左側に示すように、以下の構成を備えている。
(A)ウェハー1の外周を数か所(
図1では3か所)で保持する機構を有する円環状の平板からなるウェハー保持台2。
(B)ウェハー保持台2の上方に設置され、赤外光に感度を有しウェハー1を透過した赤外光による赤外画像を撮像する赤外光撮像手段3。
(C)ウェハー保持台2の斜め上に設置され、可視光に感度を有しウェハー1の表面で反射した可視光による可視光表画像を撮像する可視光表撮像手段4。
(D)ウェハー保持台2の斜め下に設置され、可視光に感度を有しウェハー1の裏面で反射した可視光による可視光裏画像を撮像する可視光裏撮像手段5。
(E)ウェハー保持台2の上方に設置され、可視光に感度を有しウェハー1の表面で反射した可視光の波長ごとの強度を示すスペクトルグラフ画像(以下「SG画像」という。)を撮像するハイパースペクトル撮像手段6(以下「HS撮像手段」という。)。
(F)ウェハー保持台2の下方に設置されている赤外撮像用照明手段7。
(G)ウェハー保持台2の斜め上方に設置されている上方側白色光照明手段8。
(H)ウェハー保持台2の斜め下方に設置されている下方側白色光照明手段9。
なお、赤外光撮像手段3、可視光表撮像手段4及び可視光裏撮像手段5の撮像領域は、ウェハー1の全面であり、HS撮像手段6の撮像領域は、ウェハー1全面の20~70%(通常は30~50%)である。
【0022】
実施例1の機械学習手段は、
図1の右側に示すように、以下の構成を備えている。
(a)赤外光撮像手段3から赤外画像が入力されると、ウェハー1の膜種を判定し、赤外画像判定結果を出力する赤外画像用機械学習手段10IR。
(b)可視光表撮像手段4から可視光表画像が入力されると、ウェハー1の膜種を判定し、可視光表画像判定結果を出力する可視光表画像用機械学習手段10VF。
(c)可視光裏撮像手段5から可視光裏画像が入力されると、ウェハー1の膜種を判定し、可視光裏画像判定結果を出力する可視光裏画像用機械学習手段10VB。
(d)HS撮像手段6からSG画像が入力されると、ウェハー1の膜種を判定し、SG画像判定結果を出力するSG画像用機械学習手段10SG。
(e)赤外画像用機械学習手段10IR、可視光表画像用機械学習手段10VF、可視光裏画像用機械学習手段10VB及びSG画像用機械学習手段10SGから出力された赤外画像判定結果、可視光表画像判定結果、可視光裏画像判定結果及びSG画像判定結果が入力されると、それらの判定結果の組合せと代表膜種との関係を照合し、ウェハー1の膜種についての判定結果として代表膜種データを出力する膜種組合せ照合手段11。
【0023】
赤外画像用機械学習手段10IR、可視光表画像用機械学習手段10VF、可視光裏画像用機械学習手段10VB及びSG画像用機械学習手段10SGは、それぞれウェハー1の赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像及びSG画像が入力されると、ウェハー1の膜種を判定し判定結果を出力するものであるが、いずれも同様の構成を備えている。そして、実施例1では各機械学習手段にニューラルネットワーク10を採用している。
図2は、実施例1で採用しているニューラルネットワーク10の構成を示す図であり、入力層10I、出力層10A、サンプルデータ蓄積手段10L、サンプルデータ蓄積手段10Lに多数のサンプルデータを入力するサンプルデータ入力手段10T及び図示しない複数の畳み込み層、プーリング層、BN層(Batch-normalization層)、ドロップアウト層(drop-out層)、全結合層、その他で構成されている。
一般には2~3層の畳み込み層と1層のプーリング層を組合せたものを1単位とし、この数単位を直列させたものに、さらに2~4層の全結合層を組合せることが多く、BN層及びドロップアウト層は必ずしも必要ないが、これらの層を設けることにより、ニューラルネットワーク10全体のパフォーマンス向上が期待できる。
【0024】
ニューラルネットワーク10には、サンプルデータ入力手段10Tを介してサンプルデータ蓄積手段10Lに多数のサンプルデータが蓄えられ、事前に学習させてパラメータの最適化が行われる。その後、入力層10Iにウェハー面撮像ステージにおいて取得したウェハー1の赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像及びSG画像が入力されると、それぞれの画像を解析し高い判別精度でウェハー1の膜種を判定することができる。
サンプルデータ入力手段10Tに入力されるサンプルデータは、予め膜種が判明しているサンプルウェハーについて、ウェハー面撮像ステージにおいて取得したサンプルウェハーの赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像及びSG画像(以下「サンプル画像」という。)と、そのサンプルウェハーの膜種を示すサンプル膜種データを一組にしたものである。
また、サンプル膜種データは画像ごとに異なっており、実施例1においては、画像ごとに以下に示すサンプル膜種データを付与している(一部共通しているものあり)。
・赤外画像:淡色膜(淡)、濃色膜(濃)
・可視光表画像及び可視光裏画像:膜無し(ベア)、アモルファスカーボン(アモルファスC)、銅(Cu)、銅以外の金属膜(メタル)、窒化膜(SiN)、酸化膜(SiO2)、パターン、レジスト、ポリシリコン(ポリSi)、厚ポリシリコン(厚ポリ)
・SG画像:膜無し(ベア)、レジスト、銅(Cu)、それ以外の膜(その他)
なお、サンプルデータの蓄積数が多いほど判別精度は向上するが、実施例1では費用対効果を考慮し、赤外画像を除き1.5~5.5万組のサンプルデータを蓄積して最適化を行っている(赤外画像は濃淡のみであるため、数十組~数百組を蓄積すれば十分)。
さらに、実施例1においては、サンプルデータの容量を削減するために、入力する全ての画像データに対して圧縮及びトリミング処理を施した上で、各機械学習手段のサンプルデータ蓄積手段10Lにサンプルデータを蓄積している。
【0025】
図3は、1000枚のウェハー1に対する熟練者の目視による判定と可視光表画像用機械学習手段10VFによる判定を比較した結果を示す表である。
例えば、一番上の行からは、熟練者は102枚をベアと判定し、可視光表画像用機械学習手段10VFは97枚をベア、5枚をポリSiと判定したことが分かる。そして、両者の一致率(精度)は最も高いCuで100%、最も低い厚ポリで85%であり、全体では94.4%であった。
すなわち、可視光表画像用機械学習手段10VFだけで判定すると、5%以上の誤判定が出る可能性があるので、実施例1では、膜種組合せ照合手段11によって、赤外画像用機械学習手段10IR、可視光表画像用機械学習手段10VF、可視光裏画像用機械学習手段10VB及びSG画像用機械学習手段10SGによる判定結果の組合せから代表膜種を決定し、代表膜種データを出力するようにしている。
【0026】
図4は、膜種組合せ照合手段11が有している代表膜種決定表の一部を示す図である。
膜種組合せ照合手段11は、例えば、赤外画像による判定結果が「濃」、可視光表画像による判定結果が「メタル」、可視光裏画像による判定結果が「SiO
2」、SG画像による判定結果が「その他」であれば代表膜種を「メタル」と決定し(膜種組合せ1)、赤外画像による判定結果が「淡」、可視光表画像による判定結果が「レジスト」、可視光裏画像による判定結果が「SiO
2」、SG画像による判定結果が「その他」であれば代表膜種を「不明」と決定し(膜種組合せ4)、赤外画像による判定結果が「淡」、可視光表画像による判定結果が「ベア」、可視光裏画像による判定結果が「SiO
2」、SG画像による判定結果が「その他」であれば代表膜種を「SiO
2」と決定する(膜種組合せ6)。また、各画像による判定結果の組合せが代表膜種決定表にない組合せであった場合も「不明」と決定する。
なお、「不明」と決定された場合には、熟練者の目視による判定を実施する。
実施例2においても、各機械学習手段のサンプルデータ蓄積手段10Lに多数のサンプルデータが蓄えられ、事前に学習させてパラメータの最適化が行われた後、入力層10Iにウェハー面撮像ステージ及びウェハーエッジ撮像ステージにおいて取得したウェハー1の赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像、SG画像、表エッジ画像及び裏エッジ画像が入力されると、それぞれの画像を解析し高い判別精度でウェハー1の膜種を判定することができる。また、サンプルデータ入力手段10Tに入力されるサンプルデータも、実施例1と同様、予め膜種が判明しているサンプルウェハーについて、ウェハー面撮像ステージ及びウェハーエッジ撮像ステージにおいて取得したサンプル画像(サンプルウェハーの赤外画像、可視光表画像、可視光裏画像、SG画像、表エッジ画像及び裏エッジ画像)と、そのサンプルウェハーの膜種を示すサンプル膜種データを一組にしたものである。
また、表エッジ画像及び裏エッジ画像に対して付与するサンプル膜種データは、膜無し(エッジ膜無)、アモルファスカーボン(アモルファスC)、エッジレジスト、レジスト、
それ以外の膜(その他)である。そして、実施例2においては、表エッジ画像用機械学習手段10FE及び裏エッジ画像用機械学習手段10BEのサンプルデータ蓄積手段10Lに、5~6万組のサンプルデータを蓄積して最適化を行っている。
なお、実施例2においても、サンプルデータの容量を削減するために、入力する全ての画像データに対して圧縮及びトリミング処理を施した上で、各機械学習手段のサンプルデータ蓄積手段10Lにサンプルデータを蓄積している。