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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074599
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】補強部材及び車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 23/00 20060101AFI20240524BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B62D23/00
B62D21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185872
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB17
3D203BB20
3D203BB22
3D203BB24
3D203BB25
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB56
3D203BB62
3D203CA02
3D203CA08
3D203CA40
3D203CA53
3D203CA56
3D203CA65
3D203CA69
3D203CB07
(57)【要約】
【課題】車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制し得る補強部材及びこれを備えた車体構造を提供する。
【解決手段】補強部材は、車体骨格部材の閉断面内に設けられる。補強部材は、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有する。荷重伝達部は、車体骨格部材に加わる荷重をアーチ部に伝達する。車体構造は、閉断面を有する車体骨格部材と、車体骨格部材の閉断面内に設けられた補強部材を備える。補強部材は、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有する。荷重伝達部は、車体骨格部材に加わる荷重をアーチ部に伝達する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体骨格部材の閉断面内に設けられる補強部材であって、
前記補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、前記アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有し、
前記荷重伝達部は、前記車体骨格部材に加わる荷重を前記アーチ部に伝達する
ことを特徴とする補強部材。
【請求項2】
前記アーチ部がカテナリ曲線に沿ったアーチ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の補強部材。
【請求項3】
前記荷重伝達部が、前記アーチ部の前記凸面上において、前記アーチ形状の突出方向と同一方向に立設され、前記補強部材の長手方向にわたって設けられたリブ部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強部材。
【請求項4】
前記リブ部が、前記リブ部の立設方向からの平面視においてハニカム形状又は格子形状をなすことを特徴とする請求項3に記載の補強部材。
【請求項5】
閉断面を有する車体骨格部材と、前記車体骨格部材の前記閉断面内に設けられた補強部材を備え、
前記補強部材は、前記補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、前記アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有し、
前記荷重伝達部は、前記車体骨格部材に加わる荷重を前記アーチ部に伝達する
ことを特徴とする車体構造。
【請求項6】
前記車体骨格部材が、その長手方向に直交する断面で見たときに、荷重受け壁部及び荷重受け壁部の両端に設けられた側壁部を有するコ字形形状をなし、
前記アーチ部の両端部が、前記側壁部に当接している
ことを特徴とする請求項5に記載の車体構造。
【請求項7】
前記車体骨格部材の長手方向に直交する断面で見たときに、前記アーチ部の中央部の凸面と前記荷重受け壁部の内面との間に隙間を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材及び車体構造に係り、さらに詳細には、車体骨格部材の閉断面内に設けられる補強部材及びこれを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の軽量化に対する要求に伴い、車体構造に対しても更なる軽量化が要求されている。特許文献1は、フロントサイドメンバー等の車体骨格部材の変形を良好に抑制できる車体構造を開示している。特許文献1の図4に開示された車体構造は、内部に空間を有するフロントサイドメンバー等の車体骨格部材12と、車体骨格部材12の内部に設けられ、車体骨格部材12の長手方向に直交する断面視で略半円筒状の補強部材30と、を備えている。補強部材30は、衝突荷重により車体骨格部材12が曲げ変形されるときの圧縮側へ、その曲面部30Aを向けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-190547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の図4に開示されたような車体構造においては、矢印UPで示される車体上方側と反対側である車体下方側から車体骨格部材に衝突等による局所的な荷重が入力されると、補強部材に荷重が分散されて伝達されず、車体骨格部材の肩口に応力集中による座屈が発生して、車体骨格部材が変形してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制し得る補強部材及びこれを備えた車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、所定のアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた所定の荷重伝達部を有する補強部材とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の補強部材は、車体骨格部材の閉断面内に設けられる。
この補強部材は、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有する。
この荷重伝達部は、車体骨格部材に加わる荷重をアーチ部に伝達する。
【0008】
また、本発明の車体構造は、閉断面を有する車体骨格部材と、車体骨格部材の閉断面内に設けられた補強部材を備える。
この補強部材は、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた荷重伝達部を有する。
この荷重伝達部は、車体骨格部材に加わる荷重をアーチ部に伝達する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、上述のアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられた上述の荷重伝達部を有する補強部材としたため、車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制し得る補強部材及びこれを備えた車体構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の車体構造の第1実施形態を示す概略分解斜視図である。
図2図1に示した車体構造を示す概略斜視図である。
図3図2に示した車体構造をIII-III線に沿って切った概略断面図である。
図4】第2実施形態の車体構造を示す概略断面図である。
図5】第3実施形態の補強部材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の補強部材及び車体構造について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下で引用する図面においては、説明の都合上荷重受け壁部が上方に位置する場合を例示して説明しているが、荷重が入力される方向に応じて、その位置を下方、前方、後方、左方、右方等に適宜変更することができる。
【0012】
(第1実施形態)
図1図3に示すように、本実施形態の車体構造1は、閉断面10aを有する車体骨格部材10と、車体骨格部材10の閉断面10a内に設けられた本実施形態の補強部材20を備えている。
【0013】
ここで、本発明において「閉断面を有する車体骨格部材」とは、車体骨格部材自体が閉断面を有する場合に限定されず、例えば、開断面を有する車体骨格部材が、車体構造部材と組み合わされて形成された閉断面を有する場合も含む。また、本発明において「車体骨格部材の閉断面」とは、車体骨格部材自体の閉断面に限定されず、例えば、開断面を有する車体骨格部材が、車体構造部材と組み合わされて形成された閉断面も含む。
【0014】
本実施形態においては、車体骨格部材10自体が、閉断面10aを有する。具体的には、車体骨格部材10が、車体骨格部材10の長手方向(図中矢印Xで示す方向)に直交する断面で見たときに、言い換えれば直交する断面視において(図3参照)、コ字形形状をなす車体骨格部材10Aと、矩形形状を有する車体骨格部材10Bを有する。車体骨格部材10Aは、その長手方向に直交する断面視(図3参照)において、荷重受け壁部(頂壁部)11及び荷重受け壁部11の両端に曲げ成形により設けられた側壁部13,13を有するコ字形形状をなしている。車体骨格部材10Aは、更に側壁部13,13の先端に曲げ成形により設けられたフランジ部15,15を有することにより、コ字形形状の一例であるハット形形状をなしている。上述の車体構造1においては、ハット形断面形状の車体骨格部材10Aのフランジ部15,15がパネル形状の車体骨格部材10Bと接合されることによって閉断面10aが形成されている。
【0015】
本実施形態においては、補強部材20が、補強部材20の長手方向(図中矢印Xで示す方向)に直交する断面視(図3参照)において、アーチ形状を有するアーチ部21と、アーチ部21の凸面21aの一例である外側曲面に設けられた荷重伝達部23を有している。荷重伝達部23は、荷重受け壁部11に当接しており、車体骨格部材10に加わる荷重をアーチ部21に伝達する。
【0016】
また、本実施形態においては、アーチ部21がカテナリ曲線に沿ったアーチ形状を有している。さらに、本実施形態においては、アーチ部21の両端部211,211が接合材40,40を介して側壁部13,13に当接している。
【0017】
さらに、本実施形態においては、荷重伝達部23がアーチ部21の凸面21a上において、アーチ形状の突出方向(図中矢印Yで示す方向)と同一方向に立設され、補強部材20の長手方向(図中矢印Xで示す方向)にわたって設けられた複数のリブ部23A~23Oからなる。
【0018】
さらに、本実施形態においては、車体骨格部材10の長手方向(図中矢印Xで示す方向)に直交する断面視(図3参照)において、アーチ部21の中央部213の凸面21aと荷重受け壁部11の内面11aとの間に隙間Gを有している。
【0019】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態においては、補強部材20の長手方向に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部21と、アーチ部21の凸面21aに設けられた荷重伝達部23を有し、荷重伝達部23が車体骨格部材10に加わる荷重をアーチ部21に伝達する。そのため、衝突等によって荷重受け壁部に局所的に荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達部で分散されて、アーチ部に伝達される。これにより、補強部材の質量増加を抑制しつつ、エネルギー吸収量を増加させることが可能となる。その結果、車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制することができる。
【0020】
なお、図2において、衝突等によって荷重受け壁部11に局所的に荷重が入力される様子を矢印Pで示す圧力で圧子40が荷重受け壁部11に押し付けられる場合を例にして示している。
【0021】
また、本実施形態においては、アーチ部21がカテナリ曲線に沿ったアーチ形状を有している。そのため、アーチ部21に分布荷重が伝達された場合、アーチ部21内をアーチ形状の接線方向に沿って(圧縮)荷重が効率的に伝達される。カテナリ曲線に沿ったアーチ形状を有するアーチ部21には、例えば、繊維強化樹脂のように繊維方向で仕事をする材料を適用することが好ましい。これにより、補強部材の質量増加を更に抑制しつつ、エネルギー吸収量を更に増加させることが可能となる。
【0022】
さらに、本実施形態においては、荷重伝達部23が、アーチ部21の凸面21a上において、アーチ形状の突出方向と同一方向に立設され、補強部材20の長手方向にわたって設けられた複数のリブ部23A~23Oからなる。そのため、荷重受け壁部に局所的に入力された荷重がアーチ部の長手方向の両端にまで分散して伝達されやすい。これにより、補強部材の質量増加を更に抑制しつつ、エネルギー吸収量を更に増加させることが可能となる。
【0023】
さらに、本実施形態においては、車体骨格部材10がその長手方向に直交する断面で見たときに荷重受け壁部11及び荷重受け壁部11の両端に設けられた側壁部13,13を有するコ字形形状をなし、アーチ部21の両端部211,211が接合材40,40を介して側壁部13,13に当接している。そのため、アーチ部に伝達された荷重が側壁部に伝達されやすい。これにより、補強部材の質量増加を更に抑制しつつ、エネルギー吸収量を更に増加させることが可能となる。
【0024】
さらに、本実施形態においては、アーチ部21の凹面21bの一例である内側曲面にアーチ形状の突出方向と逆方向に立設され車体構造部材30に当接した荷重伝達部を有していない。これにより、軽量化及び変形抑制効果の指標となるエネルギー吸収効率をより向上させることができる。
【0025】
さらに、本実施形態においては、車体骨格部材10の長手方向に直交する断面で見たときに、アーチ部21の中央部213の凸面21aと荷重受け壁部11の内面11aとの間に隙間Gを有している。そのため、塗装(例えば電着塗装)の際に、塗装液を被塗装面に供給しやすくなるという副次的な利点がある。
【0026】
また、図4及び図5は、本発明の補強部材及び車体構造の実施形態を説明する図である。より具体的には、図4は、第2実施形態の車体構造を図2のIII-III線と同様の位置の線に沿って切った概略断面図である。また、図5においては、車体骨格部材の記載を省略している。なお、以下の実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0027】
(第2実施形態)
図4に示すように、本実施形態の車体構造2は、本実施形態の補強部材20Aにおけるアーチ部21Aが曲率一定の円弧に沿ったアーチ形状を有すること以外は、第1実施形態の車体構造1と同様の構造を有している。
【0028】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態においては、補強部材20Aにおけるアーチ部21Aが曲率一定の円弧に沿ったアーチ形状を有している。そのため、軽量化及び変形抑制効果の指標となるエネルギー吸収効率が上述の第1実施形態よりも低いものの、車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制し得る。
【0029】
(第3実施形態)
図5に示すように、本実施形態の補強部材20Bは、リブ部23(23F)がリブ部23の立設方向(図中矢印Yで示す方向)からの平面視において格子形状をなしており、補強部材20Bがいわゆる交差ヴォールト構造を形成するアーチ状穴20aを有していること以外は、第1実施形態の補強部材20又は第2実施形態の補強部材20Aと同様の構造を有している。
【0030】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態においては、リブ部23(23F)がリブ部23の立設方向からの平面視において格子形状をなしている。そのため、第1又は第2実施形態の利点に加えて、補強部材のせん断剛性が向上するという利点がある。また、図示しない荷重受け壁部の(面の)法線方向に対して角度を持って斜め方向から局所的な荷重が入力されても、その荷重が荷重伝達部で分散されて、アーチ部に分布荷重が伝達されやすい。これにより、補強部材の質量増加を更に抑制しつつ、エネルギー吸収量を更に増加させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態においては、補強部材20Bがいわゆる交差ヴォールト構造を形成するアーチ状穴20aを有している。そのため、第1又は第2実施形態の利点に加えて、補強部材における形状自由度の向上や軽量化が実現できるという利点がある。また、車体骨格部材においても、ボルト締結部や溶接部、肉抜き部を設けるなどの形状自由度の向上や軽量化が実現できるという利点がある。
【0032】
ここで、上述の実施形態における各構成要素の仕様や材種について更に詳細に説明する。
【0033】
(車体骨格部材)
車体骨格部材としては、代表的には、フロントサイドメンバー、フロントクロスメンバー、フロアサイドメンバー、フロアクロスメンバー、リアサイドメンバー、リアクロスメンバー、フロントピラー、センタピラー、リアピラー、ルーフサイドレール、サイドシルメンバーなどを挙げることができる。
【0034】
車体骨格部材の材種としては、例えば、高張力鋼等の鉄合金などの金属からなるものを挙げることができる。
【0035】
(車体構造部材)
車体骨格部材と組み合わされる車体構造部材としては、代表的には、各種パネル部材やリインフォースメントパネル部材などのパネル形状を有する部材を挙げることができるが、これに限定されない。車体構造部材は、例えば、ハット形断面形状を有する部材であってもよく、パネル形状を有する部材とハット形断面形状を有する部材とが組み合わせられたものでもよい。車体構造部材の材種としては、車体骨格部材の材種と同一でも異なってもよいが、例えば、高張力鋼等の鉄合金などの金属からなるものを挙げることができる。
【0036】
(補強部材)
補強部材としては、リブ部の一部がリブ部の立設方向からの平面視において格子形状をなしている場合を図示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、例えば、リブ部の一部がリブ部の立設方向からの平面視においてハニカム形状をなしていてもよく、リブ部の全部がリブ部の立設方向からの平面視において格子形状やハニカム形状をなしていてもよい。また、補強部材としては、アーチ部の両端部が接合材を介して側壁部に当接している場合、つまりアーチ部の両端部が側壁部に接合している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、例えば、アーチ部の両端部が側壁部に直接当接していてもよい。このとき、アーチ部の両端部が側壁部に接合していることが好ましい。
【0037】
補強部材としては、例えば、ガラスや炭素などの連続繊維又は非連続繊維を強化材とし、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂やポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂を挙げることができる。その中でも、炭素繊維とエポキシ樹脂を利用した炭素繊維強化樹脂を用いることが好ましい。リブ部などの複雑な形状を有する補強部材を歩留まり良く成形することができるという観点からは、連続繊維を用いた繊維強化樹脂よりも非連続繊維を含むシートモールディングコンパウンドを用いた繊維強化樹脂を適用することが好ましい。また、非連続繊維を含むシートモールディングコンパウンドを用いた繊維強化樹脂は、一般的に、引張強度よりも圧縮強度が大きいという性質を有しているので、上述したアーチ部を有する補強部材に用いることが好適である。さらに、非連続繊維を含むシートモールディングコンパウンドを用いた繊維強化樹脂は、連続繊維からなる一方向基材を用いた繊維強化樹脂と強度を等価にした場合、塑性的な変形をすることができて、エネルギー吸収量を連続繊維からなる一方向基材を用いた繊維強化樹脂よりも増加させることが可能となる。
【0038】
(接合材)
高張力鋼と繊維強樹脂とを接合(接着)することができる従来公知の接合材(接着材)を用いることができる。接合材(接着材)には、繊維強化樹脂に含まれるマトリックス樹脂と同一の樹脂材を用いてもよく、異なる樹脂材を用いてもよい。
【0039】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
本発明においては、車体構造を軽量化しつつ、車体骨格部材の変形を良好に抑制し得る補強部材及びこれを備えた車体構造を提供すべく、補強部材の長手方向及び短手方向の少なくとも一方に直交する断面で見たときに、アーチ形状を有するアーチ部と、アーチ部の凸面に設けられ、車体骨格部材に加わる荷重をアーチ部に伝達する荷重伝達部を有する構成としたことを骨子とする。
【0041】
従って、説明の都合上、補強部材の長手方向に直交する断面で見たときに、上述のアーチ部と、上述の荷重伝達部を有する補強部材を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、補強部材の短手方向(図中矢印Zで示す方向)に直交する断面で見たときに、上述のアーチ部と、上述の荷重伝達部を有する補強部材としてもよい。この補強部材は、閉断面内に1つ以上設けられていればよい。また、この補強部材が、閉断面内に2つ以上設けられている場合、例えば、車体骨格部材の長手方向にわたってアーチ部同士が外接するように連続的に設けられてもよく、アーチ部同士が離れて又はアーチ部同士が離れつつもこれらを一体化する連結壁を介して非連続的に設けられていてもよい。また、このような連続的及び非連続的な補強部材が組み合わされて設けられていてもよい。
【0042】
また、容易に製造できるという観点から、リブ部からなる荷重伝達部を有する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、例えば、車体骨格部材とアーチ部との間に充填された発泡体で荷重伝達部を形成してもよい。
【0043】
また、車体骨格部材の変形をより良好に抑制し得るという観点から、アーチ部の両端部が側壁部に当接している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、例えば、アーチ部の両端部が車体構造部材にのみ当接していてもよい。
【0044】
また、塗装(例えば電着塗装)の際に、塗装液を車体骨格部材や車体構造部材の被塗装面に供給しやすくなるという観点から、車体骨格部材の長手方向に直交する断面で見たときに、アーチ部の中央部の凸面と荷重受け壁部の内面との間に隙間を有する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、例えば、アーチ部の中央部の凸面と荷重受け壁部の内面とが直接接触していてもよい。
【0045】
また、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、車体骨格部材、車体構造部材、補強部材、接合材などの仕様や材質の細部を変更することや、一の実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と入れ替えて又は組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,2 車体構造
10,10A,10B 車体骨格部材
10a 閉断面
11 荷重受け壁部
11a 内面
13 側壁部
15 フランジ部
20,20A,20B 補強部材
20a アーチ状穴
21,21A アーチ部
21a 凸面
21b 凹面
211 両端部
213 中央部
23,23A~23O 荷重伝達部(リブ部)
40 接合材
50 圧子
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5