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特開2024-74600金型、それを備える成形機及び成形品の成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074600
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】金型、それを備える成形機及び成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/30 20060101AFI20240524BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B29C33/30
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185875
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】豊森 佑夏
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK32
4F202CK42
4F202CK53
4F202CK81
4F202CL01
4F202CL02
4F202CL42
4F202CR06
(57)【要約】
【課題】金型分解時間を短縮すると共に、分解するときに必要な力を従来よりも小さくする。
【解決手段】金型1に、上型2と、下型3と、これらの間のキャビティ50に面し、複数の中子構成部品4a,4b,4cよりなる中子4とを設ける。第1中子構成部品4aの外周面と、下型3の金型側当接面3aとの接触部に、第1中子構成部品4aの外周面に、隙間を確保すると共に中子4を調芯する複数の突起部4gを一体に設ける。また、複数の中子構成部品4a,4b,4cにおける中子構成部品同士の接触部に、隙間を確保すると共に複数の中子構成部品4a,4b,4cを調芯する複数の突起部4e,4fを一体に設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型と、第2型と、第1型及び第2型の間のキャビティに面し、複数の中子構成部品よりなる中子と、を含む金型であって、
前記中子構成部品の外周面と、前記第1型又は前記第2型の金型側当接面との接触部には、前記中子構成部品の外周面及び前記金型側当接面の少なくとの一方に、隙間を確保すると共に前記中子を調芯する複数の突起部が一体に設けられている
ことを特徴とする金型。
【請求項2】
前記複数の中子構成部品における中子構成部品同士の接触部には、隙間を確保すると共に前記中子構成部品を調芯する複数の突起部が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記突起部は、対応する当接面に対して脱着可能な別部品で構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記突起部の別部品は、前記別部品が脱着可能に取り付けられる当接面よりも柔らかい材料で構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記突起部は、対応する当接面に肉盛りして設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金型。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金型と、
前記第1型及び前記第2型を開閉する型締め機構と、
を備える
ことを特徴とする成形機。
【請求項7】
第1型と、第2型と、第1型及び第2型の間のキャビティに面し、複数の中子構成部品よりなる中子とを備え、
前記中子構成部品の外周面と、前記第1型又は前記第2型の金型側当接面との接触部には、前記中子構成部品の外周面及び前記金型側当接面の少なくとの一方に、隙間を確保すると共に前記中子を調芯する複数の突起部が一体に設けられ、かつ
前記複数の中子構成部品における中子構成部品同士の接触部には、隙間を確保すると共に前記中子構成部品を調芯する複数の突起部が一体に設けられている、金型を準備し、
前記複数の突起部を前記第1型若しくは第2型の前記金型側当接面又は前記複数の中子構成部品の中子側当接面に接触させながら調芯された状態で組み付け、
前記キャビティに成形材料を充填し、成形品を成形し、
前記第1型及び第2型を型開きし、中子構成部品をそれぞれ取り出し、
前記成形品を前記中子構成部品から取り出す。
ことを特徴とする成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中子構成部品よりなる中子を有する金型、それを備える成形機及び成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び2のように、キャビティ面を有する第1の金型及び第2の金型と、型閉時に第1の金型及び第2の金型の側周面の少なくとも3方向に当接する複数の位置決め部材とを備え、型閉により形成されたキャビティ内で製品を成形するための成形用金型が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-190823号公報
【特許文献2】特開2007-190824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記成形用金型では、位置決め部材(調芯用部材)が複数あり、調芯効果を出すためには、同時に全ての調芯用部材を稼働させる必要がある。稼働させるタイミングがずれると、中子は金型本体の中子受けに対して芯ずれする。上手く調芯できないと、中子がかじって金型分解に時間がかかるため、調芯状態を修正するのに時間がかかる。また、稼働させるタイミングがたとえ同時であっても、調芯用部材と中子の接触部分の表面状態が異なると位置決めの最終位置に調芯用部材が移動するタイミングがずれて結局中子を調芯することが難しくなるという問題がある。
【0005】
一方、篏合により広い面で位置決めをする場合には、分解する際には摩擦抵抗が大きく、大きな力を必要とする。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金型分解時間を短縮すると共に、分解するときに必要な力を従来よりも小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、この発明では、第1型又は第2型と各中子構成部品との接触部に突起部を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、第1型と、第2型と、第1型及び第2型の間のキャビティに面し、複数の中子構成部品よりなる中子と、を含む金型を対象とし、
前記金型における、
前記中子構成部品の外周面と、前記第1型又は前記第2型の金型側当接面との接触部には、前記中子構成部品の外周面及び前記金型側当接面の少なくとの一方に、隙間を確保すると共に前記中子を調芯する複数の突起部が一体に設けられている。
【0009】
前記の構成によると、中子構成部品と第1型又は第2型との少なくとも一方に複数の突起部を設けるだけで、芯出し作業を行うことなく、接触部において、適度な隙間を確保すると共に中子を調芯することができる。このため、調芯用部材を中子構成部品と別に設ける必要がなくなって部品点数が減り分解時間の短縮につながって生産性が向上する。また、接触面積が減るので、金型分解時や中子交換時に接触部におけるかじりなどのトラブルが少なくなると共に、分解時に必要な力が従来よりも小さくて済む。このため、金型の耐用期間が延び、作業者への負担が軽減される。さらに、金型の分解を自動化する場合でも小さな力で済むので、より小さいパワーの駆動源を用いることができる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
前記複数の中子構成部品における中子構成部品同士の接触部には、隙間を確保すると共に前記中子構成部品を調芯する複数の突起部が一体に設けられている。
【0011】
前記の構成によると、中子構成部品同士の接触部においても前記第1の発明と同様の作用効果が得られる。特に、中子構成部品同士の接触部において、少なくとも一方の当接面に複数の突起部を設けるだけで、芯出し作業を行うことなく、接触部において、適度な隙間を確保すると共に中子構成部品を調芯することができる。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記突起部は、対応する当接面に対して脱着可能な別部品で構成されている。
【0013】
前記の構成によると、突起部を金型や中子構成部品とは別部品で構成することで、金型や中子構成部品の余計な機械加工が不要となり、また、脱着が可能であるため、突起部が摩耗した場合でも突起部のみを交換すればく、金型の耐用年数が増える。
【0014】
第4の発明では、第3の発明において、
前記突起部の別部品は、前記別部品が脱着可能に取り付けられる当接面よりも柔らかい材料で構成されている。
【0015】
前記の構成によると、意図的に柔らかい突起部側を摩耗させることで、金型や中子構成部品は傷つかず、突起部側のみ交換すればよく、金型の耐用年数が増える。
【0016】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記突起部は、対応する当接面に肉盛りして設けられている。
【0017】
前記の構成によると、突起部が必要な箇所に肉盛りをして適宜機械加工すればよいので、金型や中子構成部品側を削って削り出しで突起部を形成する場合に比べて機械加工が減り、製造コストが抑えられる。
【0018】
第6の発明の成形機は、
第1から第5のいずれか1つの発明の金型と、
前記第1型及び前記第2型を開閉する型締め機構と、を備える。
【0019】
前記の構成によると、効率的で耐久性の高い金型を有する成形機が得られる。
【0020】
第7の発明では、
第1型と、第2型と、第1型及び第2型の間のキャビティに面し、複数の中子構成部品よりなる中子と、を備え、
前記中子構成部品の外周面と、前記第1型又は前記第2型の金型側当接面との接触部には、前記中子構成部品の外周面及び前記金型側当接面の少なくとの一方に、隙間を確保すると共に前記中子を調芯する複数の突起部が一体に設けられ、かつ
前記複数の中子構成部品における中子構成部品同士の接触部には、隙間を確保すると共に前記中子構成部品を調芯する複数の突起部が一体に設けられている、金型を準備し、
前記複数の突起部を前記第1型若しくは第2型の前記金型側当接面又は前記複数の中子構成部品の中子側当接面に接触させながら調芯された状態で組み付け、
前記キャビティに成形材料を充填し、成形品を成形し、
前記第1型及び第2型を型開きし、中子構成部品をそれぞれ取り出し、
前記成形品を前記中子構成部品から取り出す。
【0021】
前記の構成によると、前述した前記第1の発明及び第2の発明と同様の作用効果が得られる。この成形方法により、製造コストの安い品質のよい成形品が得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、金型分解時に中子や金型本体を傷つけにくくなり、トラブルが減ることで分解時間の短縮につながると共に、分解するときに必要な力が従来よりも小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る、型締め状態の金型を示す断面図である。
図2】成形後、第1型を開いたときの様子を示す図1相当断面図である。
図3】エジェクタロッドで中子全体を持ち上げて第3中子構成部品が下型から離れ、第3エジェクタプレートが第3段差部に止められたときの様子を示す図1相当断面図である。
図4】第2中子構成部品が第3中子構成部品から離れ、第2エジェクタプレートが第2段差部に止められたときの様子を示す図1相当断面図である。
図5】第1中子構成部品が第2中子構成部品から離れ、第1エジェクタプレートが第1段差部に止められたときの様子を示す図1相当断面図である。
図6】第1中子構成部品の外周面に設けた第1突起部を拡大して示す斜視図である。
図7】変形例1に係る第2中子構成部品の内周面に設けた第2突起部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1図5は本発明の実施形態1の金型1を示し、この金型1は、図示しない成形機に開閉可能に設けられ、例えば、第1型としての上型2と、第2型としての下型3と、上型2及び下型3の間のキャビティ50に面し、複数の(本実施形態では3つの)中子構成部品4a,4b,4cよりなる中子4とを含み、アンダーカット部5aを有する成形品5を成形する金型である。上型2及び下型3は、例えば、S45C,S55Cなどの機械構造用炭素鋼よりなる。成形品5は、基本的には、アンダーカット部5aを有するが、アンダーカット部5aを有さない成形品でもよい。詳しくは図示しないが、成形機は、上型2及び下型3を開閉する型締め機構と、後述するエジェクタ機構10を駆動するエジェクタ駆動機構とを備えている。
【0026】
中子4は、例えば、上端の外径が下端の外径よりも大きい円柱状の第1中子構成部品4aと、第1中子構成部品4aの下側が挿通される中央貫通孔を有し、上端の外径が下端の外径よりも大きい円筒状の第2中子構成部品4bと、第2中子構成部品4bの下側が挿通される中央貫通孔を有し、上端の外径が下端の外径よりも大きい円筒状の第3中子構成部品4cとを備える。そして、第1中子構成部品4aと第2中子構成部品4bと第3中子構成部品4cとの間のキャビティ50で成形品5のアンダーカット部5aが形成されるようになっている。なお、複数の中子構成部品4a,4b,4cの個数や形状はこれに限定されず、1個や2個だけでもよいし、4個以上でもよい。
【0027】
図6に示すように、第1中子構成部品4aの外周面には、第2中子構成部品4bとの接触部に、適度な隙間を確保すると共に第1中子構成部品4aを調芯する第1突起部4eが一体に設けられている。第1突起部4eは、例えば、円周方向に等間隔に合計3つ設けられているが、4つ以上設けられていてもよい。
【0028】
図6に例示するように、第1突起部4eの挿入方向先端側(下側)には、C面取り4jが形成されている。これは、R面取りや曲面加工でもよい。
【0029】
図7に本実施形態の変形例1を例示するように、第1突起部4eの代わりに第2中子構成部品4b’の内周面における第1中子構成部品4aとの接触部に第1突起部4e’を設けてもよい。この第1突起部4e’の挿入方向先端側にもC面取り4jが形成されている。
【0030】
基本的には、第1中子構成部品4a側の第1突起部4eか第2中子構成部品4b側の第1突起部4e’のどちらかを設ければよいが、互いに干渉しない位置に両方設けてもよい。
【0031】
同様に、第2中子構成部品4bの外周面には、第3中子構成部品4cとの接触部に、適度な隙間を確保すると共に第2中子構成部品4bを調芯する第2突起部4fが一体に設けられている。第2突起部4fは、例えば、円周方向に等間隔に合計3つ設けられているが、4つ以上設けられていてもよい。第2突起部4fの代わりに第3中子構成部品4cの内周面における第2中子構成部品4bとの接触部に第2突起部を設けてもよし、干渉しないように両方に設けてもよい。
【0032】
そして、第3中子構成部品4cの外周面4dには、下型3の金型側当接面3aとの間に、適度な隙間を確保すると共に第3中子構成部品4cを調芯する第3突起部4gが一体に設けられている。第3突起部4gは、例えば、円周方向に等間隔に合計3つ設けられているが、4つ以上設けられていてもよい。第3突起部4gの代わりに下型3の内周面における第3中子構成部品4cとの接触部に第3突起部を設けてもよし、干渉しないように両方に設けてもよい。
【0033】
例えば、第1~第3突起部4e,4f,4gは、対応する当接面に肉盛りして設けられている。肉盛りであれば、中子構成部品4a,4b,4cの外周面を機械加工した後に、突起部を設ける位置に肉盛りをし、C面取り4jなど適切な形状に加工すればよい。そうすれば、突起部4e,4f,4gが必要な箇所に肉盛りをして適宜機械加工すればよいので、金型1や中子構成部品4a,4b,4c側を削って削り出しで突起部を形成する場合に比べて機械加工が減り、製造コストが抑えられる。
【0034】
肉盛りする材料を中子構成部品4a,4b,4cや下型3よりも柔らかい、例えばアルミニウム合金や真鍮など金属材料としてもよい。そうすれば、肉盛りの機械加工は容易であると共に、意図的に柔らかい突起部側を摩耗させることで、金型1や中子構成部品4a,4b,4cは傷つかず、突起部側のみ補修をすればよい。
【0035】
第1~第3突起部4e,4f,4gの上下方向の位置は特に限定されないが、中子構成部品4a,4b,4cの取外しを考えると、挿入方向反対側(上側)にある方が、挿入方向先端側(下側)にある場合よりも、後述するエジェクタロッド14のストロークが少なくて済む。
【0036】
金型1は、さらに複数の中子構成部品4a,4b,4cをそれぞれ押し出すエジェクタ機構10を含む。
【0037】
エジェクタ機構10は、下型3の内部に、複数の中子構成部品4a,4b,4cを、上方に延びる押し出し棒11a,12a,13aを介してそれぞれ押し出す、複数の例えば円板状のエジェクタプレート11,12,13を有する。複数の中子構成部品4a,4b,4cのうち最初に持ち上げる第1中子構成部品4aを押す第1エジェクタプレート11と、他の第2及び第3エジェクタプレート12,13とは、磁石15により互いに吸着されている。詳しく後述するが、これにより、第1エジェクタプレート11をエジェクタロッド14で持ち上げたときに他の第2及び第3エジェクタプレート12,13も持ち上がり、下型3の内部に複数の段差によって形成された複数の当接面(段差部16,17,18)に順次当たることで、第1中子構成部品4aと反対側の第3中子構成部品4cから順次離れるように構成されている。磁石15は、電磁石でもよいが、永久磁石であれば簡易な構造でコストも安い。
【0038】
次に、本実施形態に係る成形品の成形方法について図面を用いて説明する。
【0039】
図1に示す型締め状態で、射出ポート2aから比較的流動性の高い成形材料が射出されてキャビティ50内に充填され、加熱又は冷却される。例えば、本実施形態では、適温で加熱され加硫されたキャビティ50内のシリコーンゴムから成形品5としてのゴム製品が形成される。
【0040】
次いで、図2に示すように、型開き工程が開始される。まず、上型2を上昇させると、成形品5が露出する。成形品5は、アンダーカット部5aを有するため、このままの状態では、中子4から取り出せない。
【0041】
次に、図3に示すように、エジェクタロッド14を上昇させて第1エジェクタプレート11を押し上げる。すると、第1エジェクタプレート11と第2エジェクタプレート12と第3エジェクタプレート13とは磁石15によって互いに吸着されていることから、中子4全体が下型3から上昇する。このとき、第3中子構成部品4cの第3突起部4gが下型3の金型側当接面3aに当接していることから、第3中子構成部品4cの外周面4d全体が金型側当接面3aに接している場合に比べて接触面積が格段に狭く、摩擦力が小さいことから、エジェクタロッド14の押出力は小さくて済む。このため、金型側当接面3a側にかじりなどのトラブルが生じにくい。
【0042】
そして、さらにエジェクタロッド14を上昇させると、第3エジェクタプレート13は、下型の第3段差部18に当接してそれ以上は上昇しないことから、磁石15の吸着力に抗して第2エジェクタプレート12が第3エジェクタプレート13から離れる。
【0043】
すると、図4に示すように、第2中子構成部品4bが第3中子構成部品4cから離れる。このとき、第1エジェクタプレート11と第2エジェクタプレート12とは、依然として磁石15によって互いに吸着されていることから、第1エジェクタプレート11と第2エジェクタプレート12とが第3エジェクタプレート13から離れ、成形品5の下側も第3中子構成部品4cから離れる。このとき、第2中子構成部品4bの第2突起部4fが第3中子構成部品4cの第3中子側当接面4iに当接していることから、第2中子構成部品4bの外周全体が第3中子側当接面4iに接している場合に比べて接触面積が格段に狭く、摩擦力が小さいことから、エジェクタロッド14の押出力は小さくて済む。このため、第3中子側当接面4i側にかじりなどのトラブルが生じにくい。
【0044】
そして、さらにエジェクタロッド14を上昇させると、第2エジェクタプレート12は、下型の第2段差部17に当接してそれ以上は上昇しないことから、磁石15の吸着力に抗して第1エジェクタプレート11のみが第2エジェクタプレート12から離れる。
【0045】
すると、図5に示すように、第1中子構成部品4aが第2中子構成部品4bから離れる。なお、第1エジェクタプレート11は、下型3の第1段差部16に当接して停止する。このとき、成形品5の上下中間部も第2中子構成部品4bから離れる。そして、第1中子構成部品4aの第1突起部4eが第2中子構成部品4bの第2中子側当接面4hに当接していることから、第1中子構成部品4aの外周全体が第2中子側当接面4hに接している場合に比べて接触面積が格段に狭く、摩擦力が小さいことから、エジェクタロッド14の押出力は小さくて済む。このため、第2中子側当接面4h側にかじりなどのトラブルが生じにくい。
【0046】
そして、成形品5の外周側を手で掴むなどにより、成形品を中子4から取り外す。
【0047】
その後、成形品5のバリなどを取り除けば成形品5が完成する。
【0048】
逆に、分解した金型1を再び組み立てるには、前記と逆の動作を行えばよい。
【0049】
分解した中子4は、シリコーンゴムなどの残留物を取り除き、再び組み付けて予熱処理などを行う。このときも、第1突起部4e~第3突起部4gを設けていることから、調芯作業が極めて容易で、組付時の労力も少なくて済む。
【0050】
組立後は、再びキャビティ50に連通する射出ポート2aから成形品5となる成形材料を充填するとよい。金型1の分解を、時間をかけずに容易に行うことができるので、各中子構成部品4a,4b,4cは冷めにくく熱膨張の差が小さいため正常に中子4を組み合わせることができる。
【0051】
このように本実施形態では、上型2を開いた状態で、エジェクタ機構10によって中子構成部品4a,4b,4cを順次押し出すことができるので、金型1全体を分解することなく、複数の中子構成部品4a,4b,4cを分解して成形品5を取り出すことができる。
【0052】
そして、中子構成部品4a,4b,4cと下型3との少なくとも一方に複数の突起部4e,4f,4gを設けるだけで、芯出し作業を行うことなく、接触部において、適度な隙間を確保すると共に中子4を調芯することができる。
【0053】
このため、調芯用部材を中子構成部品4a,4b,4cと別に設ける必要がなくなって部品点数が減り分解時間の短縮につながって生産性が向上し、また、接触面積が減るので、金型1分解時や中子4交換時に接触部におけるかじりなどのトラブルが少なくなると共に、分解時に必要な力が従来よりも小さくて済む。したがって、金型1の耐用期間が延び、作業者への負担が軽減される。さらに、自動化する場合でも小さな力で済むので、より小さいパワーの駆動源を用いることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、金型1分解時に中子4や下型3を傷つけにくくなり、トラブルが減ることで分解時間の短縮につながると共に、分解するときに必要な力が従来よりも小さくて済む。
【0055】
詳しくは図示しないが、本実施形態の変形例2としての複数の突起部は、対応する当接面に対して脱着可能な別部品で構成してもよい。例えば、突起部を埋め込みネジなどで脱着可能に構成するとよい。
【0056】
本変形例2のように、突起部を下型3や中子構成部品4a,4b,4cとは別部品で構成することで、下型3や中子構成部品4a,4b,4cの余計な加工が不要となり、また、脱着が可能であるため、突起部が摩耗した場合でも突起部のみを交換すればよい。
【0057】
そして、本変形例2に係る突起部の別部品は、別部品が脱着可能に取り付けられる当接面よりも柔らかい材料で構成してもよい。例えば、アルミニウム合金や真鍮などで構成する。このように、意図的に柔らかい突起部側を摩耗させることで、下型3や中子構成部品4a,4b,4cは傷つかず、突起部側のみ交換すればよい。このため、補修が容易で、金型1の耐久年数が増える。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
すなわち、前記実施形態では、第1型を可動型である上型2とし、第2型を固定型である下型3としたが、いずれが可動型又は固定型でもよく、また、可動方向は水平方向でもよいのはもちろんである。前記実施形態では、中子4が第2型の下型3側に組み付けられているが、第1型側に設けられていてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、成形品5のアンダーカット部5aは、内周面側に設けたリブ状としたが、外周面側に設けたリブ状のものとしてもよい。この場合には、アンダーカット部の形状に合わせて中子構成部品の形状及び配置を変更すればよい。また、エジェクタプレート及び磁石も中子構成部品の形状及び配置に合わせてそれぞれ設けるとよい。
【0061】
前記実施形態では、成形品5は、シリコーンゴムなどのゴム製品としたが、成形材料は、弾性を有するエラストマーでもよいし、熱可塑性樹脂材料や熱硬化性樹脂材料でもよい。
【0062】
前記実施形態では、金型1は、射出成形型であるが、圧縮成形型であってもよく、したがって、成形機は、射出成形機でも圧縮成形機でもよい。
【0063】
前記実施形態では、エジェクタ機構10は、1本のエジェクタロッド14を上昇させて中子4を分解しているが、そのような構成に限定されず、例えば、各中子構成部品4a,4b,4c毎に独立して上昇可能なエジェクタロッドを設けてもよい。
【0064】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 金型(第1型)
2 上型(第2型)
2a 射出ポート
3 下型
3a 金型側当接面
4 中子
4a 第1中子構成部品
4b,4b’ 第2中子構成部品
4c 第3中子構成部品
4d 第3中子構成部品の外周面
4e,4e’ 第1突起部
4f 第2突起部
4g 第3突起部
4h 第2中子側当接面
4i 第3中子側当接面
4j C面取り
5 成形品
5a アンダーカット部
10 エジェクタ機構
11 第1エジェクタプレート
12 第2エジェクタプレート
13 第3エジェクタプレート
11a,12a,13a 押し出し棒
14 エジェクタロッド
15 磁石
16 第1段差部
17 第2段差部
18 第3段差部
50 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7