(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007462
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ガラス接着用フィルム、包装材、包装体及びガラス接着用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240110BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106732
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022105945
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AC07
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB85
3E086DA08
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AG00
4F100AK03A
4F100AK06B
4F100AK07A
4F100AK24A
4F100AK42C
4F100AK64A
4F100AK66A
4F100AL06A
4F100AL07A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH66C
4F100GB15
4F100GB18
4F100JA04A
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JL12A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、タックが抑制されたガラス接着用フィルム及び包装材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム;23℃における複合弾性率が250MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム;変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上である、ガラス接着用フィルム;変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上である、ガラス接着用フィルム;に関する。また、本発明はガラス接着用フィルムを含む包装材及び包装体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム。
【請求項2】
23℃における複合弾性率が250MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項5】
前記変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項6】
前記変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項7】
対ガラス剥離強度が7N/15mm以上である、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項8】
対ガラス剥離強度が40N/15mm以下である、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項9】
前記ガラス接着用フィルムは、前記変性ポリオレフィンを含むシール層と、支持層とを有する、請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項10】
前記シール層中における変性量が0.01~5質量%である、請求項9に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項11】
前記支持層が低密度ポリエチレンを含む、請求項9に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項12】
前記シール層の厚みが5μm超である、請求項9に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルムを含む包装材。
【請求項14】
金属を含む層をさらに有する、請求項13に記載の包装材。
【請求項15】
蓋材である、請求項13に記載の包装材。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のガラス接着用フィルムでガラス容器を密閉してなる包装体。
【請求項17】
請求項13に記載の包装材でガラス容器を密閉してなる包装体。
【請求項18】
変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上である、ガラス接着用フィルム。
【請求項19】
変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上である、ガラス接着用フィルム。
【請求項20】
前記変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、請求項18又は19に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項21】
前記変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、請求項18又は19に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項22】
前記変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、請求項18又は19に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項23】
前記変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、請求項18又は19に記載のガラス接着用フィルム。
【請求項24】
変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材。
【請求項25】
変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材。
【請求項26】
前記変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、請求項24又は25に記載の包装材。
【請求項27】
前記変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、請求項24又は25に記載の包装材。
【請求項28】
前記変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、請求項24又は25に記載の包装材。
【請求項29】
前記変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、請求項24又は25に記載の包装材。
【請求項30】
蓋材である、請求項24又は25に記載の包装材。
【請求項31】
請求項24又は25に記載の包装材でガラス容器を密閉してなる包装体。
【請求項32】
変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法。
【請求項33】
変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス接着用フィルム、包装材、包装体及びガラス接着用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス容器やプラスチック容器の口縁部に蓋材を熱溶着させ、固着してなる包装体が用いられている。包装体を得るために用いられる蓋材としては、例えば、容器口縁部に対して熱溶着性能を発揮するシール層、支持基材及びアルミニウム等を含む耐熱性層を積層した蓋材が知られている。
【0003】
包装体においては、内容物を保護する観点から、蓋材のシール強度が高く、蓋材が容器に対して優れた密封性を発揮することが求められている。一方で、蓋材のシール強度が高すぎると蓋材の易剥離性(イージーピール性)が低下してしまい、蓋材を手で開封しにくくなるといった問題が生じる。また、蓋材のシール強度が高すぎると開封時に容器内に収容された内容物が飛び出す恐れもある。このように、容器の口縁部を蓋材で固着してなる包装体には、密封性と易剥離性といった相反する性能が求められている。
【0004】
密封性と易剥離性といった相反する性能を発揮するために、シール層にポリエチレンを用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、基材と、この基材の上に積層されたシール層と、を有するガラス容器用蓋材であって、シール層が、エチレン系樹脂(A)を50質量%から85質量%、1KOHmg/gから80KOHmg/gの酸価を有する酸変性ポリオレフィンワックス(B)を15質量%を超えて50質量%以下含有するガラス容器用蓋材が開示されている。また、特許文献2には、ガラス容器を密閉するための易貫通性蓋材であって、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)と、酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)とが積層してなる多層構成を有する蓋材が開示されており、樹脂層(B)用樹脂として、エチレン-アクリル酸共重合体やエチレン-メタクリル酸共重合体が具体的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-262979号公報
【特許文献2】特開2013-249071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の包装体に用いられる蓋材はタック(フィルム表面のべたつき)が強く、蓋材の製造工程において、蓋材を構成するフィルム同士が意図せず接着してしまう場合があった。特に、蓋材のガラス接着用フィルムをインフレーション成形によって製造する場合、空気流によって、フィルムを袋状体とし、袋状体から2枚のフィルムを製膜する工程を経ることが必須となるため、フィルムのタックの強さが問題となる。
【0007】
そこで本発明者は、このような従来技術の課題を解決するために、タックが抑制されたガラス接着用フィルム及び包装材を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、ガラス接着用フィルムを構成する樹脂の貯蔵弾性率を所定範囲にコントロールすることにより、タックが抑制されたガラス接着用フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム。
[2] 23℃における複合弾性率が250MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルム。
[3] 変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、[1]又は[2]に記載のガラス接着用フィルム。
[4] 変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、[1]~[3]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[5] 変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[6] 変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[7] 対ガラス剥離強度が7N/15mm以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[8] 対ガラス剥離強度が40N/15mm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[9] ガラス接着用フィルムは、変性ポリオレフィンを含むシール層と、支持層とを有する、[1]~[8]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[10] シール層中における変性量が0.01~5質量%である、[9]に記載のガラス接着用フィルム。
[11] 支持層が低密度ポリエチレンを含む、[9]又は[10]に記載のガラス接着用フィルム。
[12] シール層の厚みが5μm超である、[9]~[11]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載のガラス接着用フィルムを含む包装材。
[14] 金属を含む層をさらに有する、[13]に記載の包装材。
[15] 蓋材である、[13]又は[14]に記載の包装材。
[16] [1]~[12]のいずれかに記載のガラス接着用フィルムでガラス容器を密閉してなる包装体。
[17] [13]~[15]のいずれかに記載の包装材でガラス容器を密閉してなる包装体。
[18] 変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上である、ガラス接着用フィルム。
[19] 変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上である、ガラス接着用フィルム。
[20] 前記変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、[18]又は[19]に記載のガラス接着用フィルム。
[21] 前記変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、[18]~[20]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[22] 前記変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、[18]~[21]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[23] 前記変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、[18]~[22]のいずれかに記載のガラス接着用フィルム。
[24] 変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材。
[25] 変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材。
[26] 前記変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである、[24]又は[25]に記載の包装材。
[27] 前記変性ポリオレフィンが、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である、[24]~[26]のいずれかに記載の包装材。
[28] 前記変性ポリオレフィン中における変性量が0.01~5質量%である、[24]~[27]のいずれかに記載の包装材。
[29] 前記変性ポリオレフィンの結晶融解温度が160℃以下である、[24]~[28]のいずれかに記載の包装材。
[30] 蓋材である、[24]~[29]のいずれかに記載の包装材。
[31] [24]~[30]のいずれかに記載の包装材でガラス容器を密閉してなる包装体。
[32] 変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法。
[33] 変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法。
【0010】
[A]26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むフィルムをガラスに対して接着することを含む、接着方法。
[B]ガラスに接着使用するための、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むフィルム。
[C]ガラス容器密閉に使用するための、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むフィルム。
[D]ガラスに接着させるための、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むフィルムの使用。
[E]ガラスに接着させるフィルムの製造のための、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンの使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タックが抑制されたガラス接着用フィルムを得ることができる。また、本発明によれば、タックが抑制されたガラス接着用フィルムを用いて包装材や包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ガラス接着用フィルムの一実施形態を説明する断面図である。
【
図2】
図2は、包装材の一実施形態を説明する断面図である。
【
図3】
図3は、包装材の一実施形態を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、剥離強度測定用のヒートシール体の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0014】
(ガラス接着用フィルム)
本発明は、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むガラス接着用フィルム(以下、単にフィルムという場合もある)に関する。また、本発明は、変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上である、ガラス接着用フィルムに関する。本発明においては、ガラス接着用フィルムの26℃における貯蔵弾性率を所定値以上とすることにより、ガラス接着用フィルムのタックを抑制することができる。なお、本明細書における、「タック」とは、ガラス接着用フィルムの表面のべたつきを意味し、タックが強い場合、ガラス接着用フィルムの表面のべたつきが強いことになる。
【0015】
本発明は、23℃における複合弾性率が250MPa以上の変性ポリオレフィンを含む、ガラス接着用フィルムに関する。また、本発明は、変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上である、ガラス接着用フィルムに関する。本発明においては、ガラス接着用フィルムの23℃における複合弾性率を所定値以上とすることにより、ガラス接着用フィルムのタックを抑制することができる。
【0016】
本発明のガラス接着用フィルムはタックが抑制されているが、ガラスに対して優れた接着性(熱溶着性)を発揮することができる。一方で、本発明のガラス接着用フィルムは、易剥離性(イージーピール性)も兼ね備えている。なお、ガラス接着用フィルムをガラスに貼着した後にフィルムを剥離する際には、シール層の層内剥離が生じて容器からフィルムが剥離されてもよく(凝集剥離)、シール層全体がガラス容器から剥離されてもよく(界面剥離)、シール層とシール層に隣接される層との層間で界面破壊又は凝集破壊を生じながら剥離することで容器からフィルム基材が剥離されてもよい(層間剥離)。
【0017】
ガラス接着用フィルムの対ガラス剥離強度は、7N/15mm以上であることが好ましく、10N/15mm以上であることがより好ましく、12N/15mm以上であることがさらに好ましく、15N/15mm以上であることが一層好ましく、17N/15mm以上であることが特に好ましく、20N/15mm以上であることが最も好ましい。また、ガラス接着用フィルムの対ガラス剥離強度は、50N/15mm以下であることが好ましく、40N/15mm以下であることがより好ましく、35N/15mm以であることがさらに好ましく、30N/15mm以下であることがよりさらに好ましく、25N/15mm以下であることが特に好ましい。ガラス接着用フィルムの対ガラス剥離強度を上記範囲内とすることにより、ガラス容器への優れた密着性と易剥離性(イージーピール性)が両立されやすくなる。なお、後述するように、ガラス接着用フィルムが積層体であって、ガラス接着用フィルムが変性ポリオレフィンを含むシール層を有する場合であっても、対ガラス剥離強度は、同様の値を示す。
【0018】
ガラス接着用フィルムの対ガラス剥離強度は、引張試験機を用いて測定することができる。具体的には、ガラス接着用フィルムをガラスシート(厚み2.5mm)に重ね合わせ、シール温度220℃、シール圧力0.05MPa、シール時間5秒、シールバー幅5mmでヒートシールし、ヒートシール体を得る。なお、ヒートシール箇所は、
図4に示されるように端辺から1cmの箇所であって、MDに直交する方向に幅5mmの箇所とする(
図4における網掛け部分)。得られたヒートシール体から縦6cm×横15mmの短冊状体を切り出し、短冊状体の端部(ヒートシール箇所とは反対側に位置する端部)を試験機のチャックに取り付け、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離試験を行い、剥離強度(N/15mm)を測定する。引張試験機としては、例えば、オリエンテック社製の引張試験機テンシロン「RTM-100」を用いることができる。
【0019】
さらに、本発明のガラス接着用フィルムは変性ポリオレフィンを含むため、ガラス容器に熱溶着させる際の温度を比較的低温とすることができる。具体的には、ガラス接着用フィルムをガラス容器に熱溶着させる際の温度を180~220℃程度とすることが可能となる。熱溶着時の温度を低温とすることができれば、生産効率を高めることができ、また、ガラス接着用フィルムが支持基材を有する場合、支持基材の材質の選択肢が広がる。
【0020】
ガラス接着用フィルムの全ヘーズは、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましく、16%以下であることがさらに好ましく、13%以下であることが一層好ましく、10%以下であることが特に好ましい。また、ガラス接着用フィルムの全ヘーズの下限は低い方が好ましいが、通常0.1%、さらには1%である。ガラス接着用フィルムの全ヘーズを上記範囲内とすることにより、ガラス容器内容物の視認性に優れる傾向となる。
【0021】
ガラス接着用フィルムの外部ヘーズは、20%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、13%以下であることが一層好ましく、10%以下であることが特に好ましい。また、ガラス接着用フィルムの外部ヘーズの下限は低い方が好ましいが、通常0.5%、さらには1%である。
【0022】
ガラス接着用フィルムの内部ヘーズは、2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.3%以下であることが一層好ましい。また、ガラス接着用フィルムの内部ヘーズの下限は低い方が好ましいが、通常0.01%、さらには0.5%である。
【0023】
ガラス接着用フィルムの全ヘーズ、外部ヘーズ、内部ヘーズを上記範囲内とすることにより、ガラス容器内容物の視認性に優れる傾向となる。なお、後述するように、ガラス接着用フィルムが積層体であって、ガラス接着用フィルムが変性ポリオレフィンを含むシール層を有する場合であっても、全ヘーズ、外部ヘーズ、内部ヘーズは、同様の値を示すことが好ましい。
【0024】
ガラス接着用フィルムのヘーズは、旧JIS K7105:1981に準拠してヘーズメーターを用いて測定することができる。
【0025】
ガラス接着用フィルムの引張降伏点荷重は、好ましくは樹脂流れ方向(MD)と直交方向(TD)とのいずれかが、より好ましくはMD及びTDのいずれにおいても、13N以上であることが好ましく、14N以上であることがより好ましく、15N以上であることがさらに好ましい。また、ガラス接着用フィルムの引張降伏点荷重は20N以下であることが好ましく、18N以下であることがより好ましく、17N以下であることがさらに好ましい。ガラス接着用フィルムの引張降伏点荷重を上記範囲内とすることにより、包装材作製の際に、製袋装置においてフィルム逃げを防止し、フィルムを好適に搬送しやすくなる。なお、後述するように、ガラス接着用フィルムが積層体であって、ガラス接着用フィルムが変性ポリオレフィンを含むシール層を有する場合であっても、降伏点荷重は、同様の値を示すことが好ましい。
【0026】
ガラス接着用フィルムの引張降伏点荷重は、JIS K7161:2014に準拠し、温度23℃、チャック間距離40mm、引張速度500mm/分の条件で、引張試験機を用いて測定することができる。
【0027】
ガラス接着用フィルム同士の静摩擦係数は、0.65以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることがよりさらに好ましい。ガラス接着用フィルム同士の静摩擦係数を上記範囲内とすることにより、包装材作製の際に、製袋装置においてフィルム逃げを防止し、シワが入ってしまった場合に容易にシワを抜けやすくしフィルムを好適に搬送でき、また、包装材とした際の口開きも良好となる傾向となる。なお、後述するように、ガラス接着用フィルムが積層体であって、ガラス接着用フィルムが変性ポリオレフィンを含むシール層を有する場合であっても、静摩擦係数は、同様の値を示すことが好ましい。
【0028】
ガラス接着用フィルムの静摩擦係数は、フィルム表面同士について、JIS K7125:1999に準拠し、滑り片質量200g(接触面積が一辺63mmの正方形)、接触面積40cm2、試験速度100mm/分、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%の条件で、摩擦試験機を用いて測定することができる。
【0029】
<変性ポリオレフィン>
本発明のガラス接着用フィルムは、熱溶着性樹脂を含むことが好ましく、熱溶着性樹脂として、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上の変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。変性ポリオレフィンの26℃における貯蔵弾性率は240MPa以上であることが好ましく、280MPa以上であることがより好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましく、400MPa以上であることが一層好ましく、450MPa以上であることがより一層好ましく、500MPa以上であることがさらに一層好ましく、550MPa以上であることが特に好ましく、600MPa以上であることがより特に好ましく、650MPa以上であることがさらに特に好ましく、700MPa以上であることが最も好ましい。変性ポリオレフィンの26℃における貯蔵弾性率の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、5000MPa以下であることが好ましく、4000MPa以下であることがより好ましく、3000MPa以下であることがさらに好ましく、2000MPa以下であることが一層好ましい。
【0030】
変性ポリオレフィンの26℃における貯蔵弾性率は、フィルムから長さ4mm、幅8cmの短冊状試験片を作製し、粘弾性スペクトロメーターを用い、測定モードを引張で、標線間長2cm、周波数10Hz、歪み0.1%、温度範囲-50~200℃、加熱速度3℃/分で昇温し、26℃における貯蔵弾性率を測定する。なお、試験片となるフィルムに方向性がある場合には、フィルムの樹脂流れ方向(押出成形の場合は押出方向)に直交する方向(TD方向)について測定すればよい。ラミネート成形やプレス成形等のように方向性がない場合には、一方向のみ測定すればよい。粘弾性スペクトロメーターとしては、例えば、アイティー計測制御株式会社製のDVA-200を用いることができる。フィルムの作製は、例えば実施例に記載の方法を採用できる。
【0031】
本発明のガラス接着用フィルムは、23℃における複合弾性率が250MPa以上の変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。変性ポリオレフィンの23℃における複合弾性率は270MPa以上であることが好ましく、300MPa以上であることがより好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましく、400MPa以上であることが一層好ましく、450MPa以上であることがより一層好ましく、500MPa以上であることがさらに一層好ましく、550MPa以上であることが特に好ましく、600MPa以上であることがより特に好ましく、650MPa以上であることがさらに特に好ましく、700MPa以上であることが最も好ましい。変性ポリオレフィンの23℃における複合弾性率の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、5000MPa以下であることが好ましく、4000MPa以下であることがより好ましく、3000MPa以下であることがさらに好ましく、2000MPa以下であることが一層好ましい。
【0032】
変性ポリオレフィンの23℃における複合弾性率は、以下の方法で測定することができる。具体的には、変性ポリオレフィン層を含む試験片もしくは変性ポリオレフィン層からなる試験片を20mm×20mm角に切り取り、得られた試験片をガラス基板に木工ボンドで貼り付ける。この際、変性ポリオレフィン層が測定面として露出するように貼合する。そして、変性ポリオレフィン層に対して、ナノインデンター装置を用い、室温(23℃)環境下で複合弾性率を測定する。具体的には、実施例に記載の条件に基づいて測定することができる。そして、得られた変位-荷重ヒステリシス曲線に対して、装置付帯のソフトウェア(triboscan)で数値処理を行い、複合弾性率を算出する。なお、ナノインデンター装置としては、例えば、ハイジトロンTI980(BRUKER社製)を用いることができる。
【0033】
本発明においては、26℃における貯蔵弾性率及び/又は23℃における複合弾性率の数値が所定値以上の変性ポリオレフィンを用いることにより、得られるフィルムの貯蔵弾性率及び複合弾性率を所望の範囲とすることが容易となる。これにより、ガラスへの優れた密着性を発揮しつつも、フィルムのタックを抑制することができる。フィルムのタックが低く抑えられると、例えば、フィルムの製造工程において、フィルム同士が意図せず接着することを抑制することができ、フィルムの生産効率を高めることができる。また、26℃における貯蔵弾性率及び/又は23℃における複合弾性率の上限を上記好ましい範囲とすることにより、得られるフィルムの貯蔵弾性率及び複合弾性率を所望の範囲とすることが容易となるため、ガラスへの優れた密着性を維持しつつ、フィルム剥離時のハンドリング性や耐衝撃性を良好にすることができる。
【0034】
フィルム成形時には、インフレーション成形法を採用することもある。インフレーション成形法においては、フィルムを形成する樹脂を溶融押出した後、空気を注入することで袋状体とし、この袋状体の端部を切断することで、袋状体から2枚のフィルムが形成される。この際、フィルムのタックが強いと、フィルム同士がブロッキングし、袋状体から2枚のフィルムが形成できなくなるといった問題が生じる。しかしながら、本発明においては、26℃における貯蔵弾性率及び/又は23℃における複合弾性率の数値が所定値以上の変性ポリオレフィンを用いることにより、タックが抑制されたフィルムを得ることができるため、樹脂を溶融押出した後、袋状体から2枚のフィルムを形成することが容易となる。その結果、フィルムをインフレーション成形によって作製する場合であっても、成形効率が落ちることなく、フィルムの生産効率を高めることができる。また、Tダイ法を採用する場合であっても、ロール状のフィルムを繰り出す際の取り扱い性や、枚葉状のフィルムを重ねて保管する場合における取り扱い性も高めることが可能となり、押出成形時のブロッキングも抑制しやすい傾向となる。
【0035】
本発明で用いられる変性ポリオレフィンは特に限定されないが、例えば、炭素原子数2~20のオレフィンを用いて重合されたものであることが好ましく、変性ポリエチレンであってもよく、変性ポリプロピレンであってもよい。また、変性ポリオレフィンはエチレンとポリプロピレンの共重合体の変性物であってもよい。中でも、変性ポリオレフィンは、変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0036】
変性ポリプロピレンはプロピレンと他の成分との共重合体であることが好ましい。変性ポリオレフィンがプロピレンと他の成分との共重合体である場合、変性ポリオレフィンは、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物であることが特に好ましい。変性ポリオレフィンとして上記のような変性ポリプロピレンを用いることにより、変性ポリオレフィンの貯蔵弾性率や複合弾性率を適切な範囲にコントロールしやすくなり、これにより、適度な密着性を有しつつも、タックが抑制されたガラス接着用フィルムが得られやすくなる。
【0037】
変性ポリオレフィンがプロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である場合、α-オレフィンの炭素原子数は特に限定されるものではないが、汎用性の観点から、2以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることがさらに好ましく、2以上4以下であることがよりさらに好ましい。例えば、変性ポリオレフィンは、プロピレンとエチレンの共重合体であってもよく、共重合体はランダム共重合体であってもよいしブロック共重合体であってもよいが、分子凝集力が抑制されて軟化点が低くなることにより、低温シール性が向上しやすいことから、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0038】
変性ポリオレフィンが、プロピレンと他の成分との共重合体の変性物である場合、共重合体の全質量に対するプロピレン由来単位の含有量は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。なお、共重合体の全質量に対するプロピレン由来単位の含有量は99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましい。共重合体におけるプロピレン由来単位の含有量を上記範囲内とすることにより、変性ポリオレフィンの貯蔵弾性率や複合弾性率を適切な範囲にコントロールしやすくなり、これにより、適度な密着性を有しつつも、タックが抑制されたガラス接着用フィルムが得られやすくなる。
【0039】
変性ポリオレフィンがプロピレンとα-オレフィンとの共重合体の変性物である場合、共重合体の全質量に対するα-オレフィン由来単位の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることがよりさらに好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましく、8質量%以上であることがさらに一層好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。なお、共重合体の全質量に対するα-オレフィン由来単位の含有量は60質量%未満であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることがよりさらに好ましく、30質量%以下であることが一層好ましい。共重合体におけるα-オレフィン由来単位の含有量を上記範囲内とすることにより、低温シール性に優れる傾向となり、適度な密着性を有しつつもタックが抑制され、適度な弾性率を有するガラス接着用フィルムが得られやすくなる。
【0040】
変性ポリオレフィンは、変性基(極性基)を有する単量体由来の単位を有する。変性基(極性基)を有する単量体は酸成分であることが好ましく、酸成分は不飽和カルボン酸又はその無水物であることが好ましい。すなわち、本発明で用いられる変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸成分は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マレイン酸又は無水マレイン酸であることがより好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、プロピレン系単量体と共重合されていればよく、その形態は特に限定されるものではない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などが挙げられる。不飽和カルボン酸成分としては、1種もしくは2種以上が用いられてもよい。
【0041】
変性ポリオレフィン中における変性量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、変性ポリオレフィン中における変性量は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく2質量%以下であることがよりさらに好ましい。
ここで、変性ポリオレフィン中における変性量とは、変性ポリオレフィンを構成する樹脂中に含まれる変性基(極性基)を有する単量体単位の割合である。すなわち、変性ポリオレフィン中における変性量は、変性ポリオレフィンを構成する樹脂成分の全質量に対して、変性基(極性基)を有する単量体単位の質量が占める割合である。なお、上述したとおり、変性基(極性基)は酸性基であることが好ましく、この場合、変性量は酸変性量となり、酸変性量も上記範囲内であることが好ましい。変性ポリオレフィン中における変性量(酸変性量)を上記範囲内とすることにより、ガラス接着用フィルムの剥離強度を適切な範囲にコントロールしやすくなる。
【0042】
ガラス接着用フィルム中における変性量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましい。また、ガラス接着用フィルム中における変性量は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることがよりさらに好ましく、1.5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
ここで、ガラス接着用フィルム中における変性量とは、ガラス接着用フィルムを構成する樹脂中に含まれる変性基(極性基)を有する単量体単位の割合である。すなわち、ガラス接着用フィルム中における変性量は、ガラス接着用フィルムを構成する樹脂成分の全質量に対して、変性基(極性基)を有する単量体単位の質量が占める割合である。なお、上述したとおり、変性基(極性基)は酸性基であることが好ましく、この場合、変性量は酸変性量となり、酸変性量も上記範囲内であることが好ましい。ガラス接着用フィルム中における変性量(酸変性量)を上記範囲内とすることにより、ガラス接着用フィルムの剥離強度を適切な範囲にコントロールしやすくなる。
【0043】
変性ポリオレフィン中及びガラス接着用フィルム中の変性量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。具体的には、オルトジクロロベンゼンと重ベンゼンの混合溶媒に溶解し、130℃で1H NMR及び13C NMR測定を行い、得られるスペクトルのピーク面積比から算出することができる。NMR法での定量が難しい場合は、例えば熱キシレンに変性ポリオレフィンを溶解させ中和滴定法により求めてもよい。
【0044】
変性ポリオレフィンの結晶融解温度は160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。変性ポリオレフィンの結晶融解温度を上記上限値以下とすることにより、低温融着性に優れるフィルムが得られやすくなる。変性ポリオレフィンの結晶融解温度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましい。また、変性ポリオレフィンの結晶融解温度は、125℃以上であることも好ましい態様である。変性ポリオレフィンの結晶融解温度を上記下限値以上とすることにより、タックが抑制されたフィルムが得られやすくなる。
【0045】
本明細書において、変性ポリオレフィンの結晶融解温度とは、JIS K7121:2012に準じて測定される温度であって、結晶融解ピークのピークトップが示す温度である。
【0046】
変性ポリオレフィンのMFRは、例えば下記範囲であることが好ましい。変性ポリオレフィンが変性ポリプロピレンである場合は230℃、2.16kg荷重の条件で、変性ポリオレフィンが変性ポリエチレンである場合は190℃、2.16kg荷重で測定したMFRは、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることがより好ましく、0.5g/10分以上であることがさらに好ましく、1g/10分以上であることが一層好ましい。また、MFRは、20g/10分以下であることが好ましく、15g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましく、8g/10分以下であることが一層好ましい。変性ポリオレフィンのMFRを上記下限値以上とすることにより、流動性がよく加工性が向上する傾向となり、また、押出製膜時等の樹脂圧も低く抑えることができ設備に負荷がかかりにくく、メヤニも生じにくいという利点がある。また、低い温度での加工もより容易となる。また、MFRを上記上限値以下とすることにより、フィルムの厚みムラが生じにくく、Tダイを使用した押出製膜時のネックインを抑制しやすかったり、インフレーション成形による製膜の場合は、形状を保持しやすいといった利点もあり、フィルムの生産効率を高めることができる。なお、変性ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して測定される値である。
【0047】
変性ポリオレフィンの数平均分子量は特に限定されるものではないが、例えば、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。また、変性ポリオレフィンの数平均分子量は200000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましい。変性ポリオレフィンの数平均分子量を上記範囲内とすることにより、フィルムの製造工程に置いて溶融樹脂に適度な流動性を付与することができ、生産効率を高めることができる。なお、変性ポリオレフィンの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー法によって算出でき、具体的には、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用い、140℃で測定できる。
【0048】
変性ポリオレフィンの降温結晶化温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、85℃以上であることが一層好ましい。変性ポリオレフィンの降温結晶化温度は120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがさらに好ましく、95℃以下であることが一層好ましい。
【0049】
変性ポリオレフィンの結晶融解熱量は30J/g以上であることが好ましく、40J/g以上であることがより好ましく、50J/g以上であることがさらに好ましい。変性ポリオレフィンの結晶融解熱量は100J/g以下であることが好ましく、90J/g以下であることがより好ましく、80J/g以下であることがさらに好ましく、75J/g以下であることがよりさらに好ましい。
このような結晶融解熱量の範囲とすることで、変性ポリオレフィンを含むガラス接着用フィルムはガラスに対する接着性(熱溶着性)と機械強度のバランスに優れる傾向となりやすい。なお、本明細書において、変性ポリオレフィンの結晶融解熱量は、JIS K7121:2012に準じて測定される結晶融解ピークの面積から算出される値である。
【0050】
変性ポリオレフィンの密度は、0.75g/cm3以上であることが好ましく、0.8g/cm3以上であることがより好ましく、0.83g/cm3以上であることがさらに好ましく、0.85g/cm3以上であることが一層好ましく、0.87g/cm3以上であることが特に好ましい。変性ポリオレフィンの密度は、0.96g/cm3以下であることが好ましく、0.94g/cm3以下であることがより好ましく、0.93g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.92g/cm3以下であることが一層好ましく、0.91g/cm3以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、変性ポリオレフィンの密度は、JIS K7112:1999 A法に準じて測定される値である。
【0051】
変性ポリオレフィンとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製のユーメックス1001、ユーメックス1010、ユーメックス100TS、ユーメックスCA620、ユーメックス5200、ユーメックス5500、三井化学株式会社製のアドマーQB551、アドマーQB550、アドマーQF500、アドマーQF551、アドマーQF580、アドマーQE840、三菱ケミカル株式会社製のモディックP565、モディックP502、モディックP512VB、モディックP553A、モディックP674V、モディックP555、モディックP908等を挙げることができる。
【0052】
<任意成分>
本発明のガラス接着用フィルムは、上述した変性ポリオレフィンに加えて、未変性ポリオレフィンをさらに含んでもよい。未変性ポリオレフィンとしては特に限定されないが、上記変性ポリプロピレンと同様のポリプロピレンで変性されていないものを用いることができる。例えば、シングルサイト触媒、特にメタロセン系ポリプロピレンやブロックポリプロピレン等を挙げることができる。メタロセン系ポリプロピレンは、メタロセン触媒を用いて重合したポリプロピレンであり、プロピレンとエチレンとの共重合体である。メタロセン触媒を用いて重合したポリプロピレンを用いることで、分量分布が狭いポリプロピレンを製造しやすくフィルム強度が向上する傾向となる。また、ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にポリエチレンが分散して含まれた構造を有するものであることが好ましい。ガラス接着用フィルムが上記のような未変性ポリプロピレンを含むことで、フィルム強度を高めることができ、また、熱溶着温度(ヒートシール温度)を低温にすることができる。
【0053】
また、本発明のガラス接着用フィルムは、上述した変性ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィン樹脂と非相溶な樹脂をさらに含んでいてもよい。非相溶な樹脂としては特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、環状オレフィン、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)等が例示される。ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルが例示される。アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が例示される。これらの非相溶樹脂と変性ポリオレフィンは、ガラス接着用フィルム中において海島構造を形成していてもよい。
【0054】
ガラス接着用フィルムが上述したような非相溶樹脂を含む場合、非相溶樹脂の含有量は、ガラス接着用フィルムに含まれる樹脂成分の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが一層好ましい。また、非相溶樹脂の含有量は、ガラス接着用フィルムに含まれる樹脂成分の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが一層好ましい。
【0055】
本発明のガラス接着用フィルムは、上述した変性ポリオレフィンや樹脂成分に加えて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、着色剤、無機充填材、有機充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤(スリップ剤)、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤などが挙げられる。中でも、製膜性の観点から、ガラス接着用フィルムは、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤(スリップ剤)及び耐ブロッキング剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。なお、これらの添加剤は、フィルムを構成する樹脂と一緒に直接配合してもよいし、予め樹脂と任意成分を配合したマスターバッチを作製してからフィルムを形成することとしてもよい。なお、ガラス接着用フィルムは2種以上の添加剤を適宜組み合わせて含んでいてもよい。
【0056】
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩、有機ホスファイト化合物、有機ホスフェート化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。また、有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などは、金属塩を使用してもよい。
【0057】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル〕ホスファイト、トリス(モノー/ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニルホスファイト)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン等の各種の亜リン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイトが好ましい。
【0058】
有機ホスフェート化合物は、好ましくは、有機リン酸エステル化合物、又は有機リン酸エステル化合物の金属塩であり、金属としては、周期律表第Ia、IIa、IIb、IIIa及びIIIbから選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、中でも、マグネシウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムがさらに好ましい。
【0059】
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、酸性有機リン酸エステルとして、ジステアリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェートが挙げられる。また、酸性有機リン酸エステルの金属塩としては、ビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、モノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、トリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、モノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0060】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0061】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを用いることができる。
【0062】
フェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、4-メトキシフェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、β-トコフェロール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン、BHT)、プロピオン酸ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)等が挙げられる。
【0063】
イオウ系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル-β,β’-チオジブチレート、チオビス(β-ナフトール)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート等が挙げられる。
【0064】
滑剤としては、一般的に分子中に酸、エステル、水酸基、アミド基、金属塩などの極性部分と、脂肪族基などの非極部分を有する化合物が挙げられる。具体的な滑剤としては、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、脂肪族基を有する金属塩、フッ素系ポリマー、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族炭化水素系化合物、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどでもよいし、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などでもよい。また、ポリアルキレングリコールは分子骨格に分岐を有するものであってもよい。これらの中では、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
脂肪酸エステルとしては、滑剤として使用される公知の脂肪酸エステルを使用できる。脂肪酸エステルは、脂肪酸と各種のアルコールとを原料とするエステルであり、分子内に長鎖脂肪族基とエステル基を持つものが好ましい。脂肪酸エステル系滑剤の具体例としては、例えば、一価アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸エステル又は部分エステル、又はこれらの部分ケン化物などが挙げられる。高級脂肪酸エステルに使用される高級脂肪酸としては、例えば炭素原子数10以上、好ましくは炭素原子数12以上、より好ましくは炭素原子数16以上、さらに好ましくは炭素原子数20以上であり、また、好ましくは炭素原子数36以下、より好ましくは炭素原子数32以下である。
【0067】
具体的には、モンタン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂肪酸オクチルエステル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、ネオペンチルグリコールジオレート、ネオペンチルグリコールジカプリン酸エステルなどのネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリオレートなどのトリメチロールプロパントリ脂肪酸エステル、トリメチロールプロパンジカプリン酸エステルなどのトリメチロールプロパンジ脂肪酸エステルなどの各種のトリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラオレートなどのペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサイソノナン酸エステルなどのジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド、オレイン酸トリグリセライドなどの脂肪酸グリセライド、ペンタエリスリトール脂肪酸縮合エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸縮合エステルなどが挙げられる。これらの中では、モンタン酸エステルが好ましい。
脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
滑剤として使用される金属塩は、脂肪族基を有する金属塩であればよい。脂肪族基としては、脂肪族炭化水素基、脂肪族アシル基などが挙げられる。脂肪族基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素原子数8以上、より好ましくは炭素原子数10以上であり、また、好ましくは炭素原子数30以下、より好ましくは炭素原子数24以下、さらに好ましくは炭素原子数16以下である。
【0069】
脂肪酸金属塩としては、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ひまし油脂肪酸などの炭素原子数8~30程度、好ましくは炭素原子数10~24の高級脂肪酸とアルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、鉛およびバリウムなどの金属との塩であり、好ましくは、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸金属塩としては、アルキル基の炭素原子数が好ましくは8~24、より好ましくは10~16のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩が挙げられる。また、使用される金属としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどが好ましい。金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
フッ素系ポリマーとしては、分子内に炭素-フッ素結合を有するフッ素樹脂が挙げられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ三フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリマー鎖の両末端または片末端にフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体、パーフルオロカルボン酸エステル等が挙げられる。フッ素系ポリマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
脂肪酸アミドとしては、滑剤として使用できる公知の脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸アミドは、脂肪酸とアミンからなるアミドであり、分子内に長鎖脂肪族基とアミド基を持つものであり、脂肪酸アマイドとも呼ばれる。具体的には、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、エタノールアミド、エステルアミド、置換尿素、脂肪酸とアミンの重縮合物などがある。使用される脂肪酸は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。また、脂肪酸の炭素原子数は、例えば8~30程度、好ましくは10~24である。好ましい脂肪酸アミドの例としては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N-オレイルパルミトアミド、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などが挙げられる。脂肪酸アミドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
脂肪族アルコールとしては、滑剤として使用できる公知の脂肪族アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールは、例えば炭素原子数6~30、好ましくは炭素原子数10~24の脂肪族アルコールである。脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、カプロイルアルコール、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。脂肪酸アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
脂肪酸としては、滑剤として使用できる公知の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、炭素原子数6~30、好ましくは炭素原子数10~24の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。脂肪酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
脂肪族炭化水素系化合物としては、滑剤として使用できる公知の脂肪族炭化水素系化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素系化合物の具体例としては、例えば、炭素原子数16以上の流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィンなどのパラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス、およびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などが挙げられる。脂肪族炭化水素化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
オルガノポリシロキサンとしては、滑剤として使用できる公知のオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンが挙げられ、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていてもよく、直鎖状であってもよいし一部分岐していてもよい。オルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
耐ブロッキング防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、ゼオライト、タルク、珪藻土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等の無機フィラー、デンプン、球状ガラス、球状アクリル樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、フィルム表面に微細な凹凸を形成して、隣接するフィルム同士の密着抑制効果が高いことから、無機フィラーであることが好ましい。
【0077】
上記した添加剤の含有量は、ガラス接着用フィルムの全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい、また、添加剤の含有量は、ガラス接着用フィルムの全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0078】
(ガラス接着用フィルムの層構成)
本発明のガラス接着用フィルムは、単層体であってもよく、積層体であってもよい。ガラス接着用フィルムが積層体の場合、ガラス接着用フィルムは、上述した変性ポリオレフィンを含むシール層(変性ポリオレフィン層)と、支持層とを有することが好ましい。なお、本明細書においてシール層とは、ガラス容器の口縁部に当接され、熱溶着される層である。また、支持層は、ガラス接着用フィルムに保形性や強度を付与するための層である。
【0079】
図1は、シール層と支持層を含むガラス接着用フィルムの構成を説明する断面図である。
図1に示されるように、ガラス接着用フィルム100は、上述した変性ポリオレフィンを含むシール層10と、支持層20とを有する。支持層20は単層であってもよいが、
図1に示されるように、支持層20は、中間層22と外層24を有していてもよい。支持層20が多層構造である場合、中間層22と外層24は異なる樹脂から構成される層であってもよく、同種の樹脂から構成される層であってもよい。なお、中間層22と外層24を同種の樹脂から構成した場合、層間密着性が高まるため好ましい。
【0080】
シール層中における変性量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましい。また、シール層中における変性量は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることがよりさらに好ましく、1.5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。シール層中における変性量(酸変性量)を上記範囲内とすることにより、ガラス接着用フィルムの剥離強度を適切な範囲にコントロールしやすくなる。
【0081】
ガラス接着用フィルムにおけるシール層の厚みは、5μm超であることが好ましく、7.5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、シール層の厚みは、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。ガラス接着用フィルムにおけるシール層の厚みを上記範囲内とすることにより、ガラス容器への優れた密着性と易剥離性(イージーピール性)が両立されやすくなる。
【0082】
ガラス接着用フィルムにおける支持層の厚みは、7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが一層好ましい。また、支持層の厚みは、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることがよりさらに好ましく、30μm以下であることが一層好ましい。なお、支持層が中間層と外層を有する場合、上記支持層の厚みは、2層の合計の厚みである。また、支持層が中間層と外層を有する場合、外層の厚みは中間層の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0083】
ガラス接着用フィルムが積層体である場合、当該積層体の総厚は、12μm超えであることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、積層体の総厚は、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。
【0084】
ガラス接着用フィルムが支持層を有する場合、支持層の構成材料は特に限定されるものではないが、製膜性、透明性、接着性、経済性の観点からポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。中でも、支持層は、中密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンを含むことが好ましく、低密度ポリエチレンを含むことが特に好ましい。
【0085】
被着体に貼合される前のガラス接着用フィルムは、さらに、剥離シートを備えるものであってもよい。本発明は、剥離シート付きガラス接着用フィルムに関するものであってもよく、剥離シートは、シール層のブロッキングや損傷を防ぐ目的で設けられる。剥離シートとしては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、特にシンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等からなるフィルムを挙げることができる。
【0086】
(ガラス接着用フィルムの製造方法)
本発明は、変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法に関する。また、本発明は、変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムの製造方法に関する。本発明のガラス接着用フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション成形法などの押出成形、押出ラミネート、ドライラミネート等、公知の積層方法により適宜製造可能である。また、共押出フィルムの作製は、公知の共押出法を用いることができ特に限定されないが、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、或いはそれらを組み合わせた方法を用いることができ、インフレーション成形法、Tダイ法などによりフィルム製膜することができる。本発明のガラス接着用フィルムのタックは低く抑えられているため、インフレーション成形法を採用することが好ましい。このように、本発明のガラス接着用フィルムは、インフレーション成形フィルムであることが好ましい。
【0087】
具体的に、ガラス接着用フィルムの製造方法は、変性ポリオレフィンを加熱溶融し、押出成形する工程を含むことが好ましい。押出成形法としてインフレーション成形法を採用してもよく、インフレーション成形法では、変性ポリオレフィンを加熱溶融し、押出成形しつつ空気を吹き込むことで袋状に成形する工程を含むことが好ましい。その後、袋状端部を切断する工程を経て、袋状体から2枚のフィルムが形成される。本発明のガラス接着用フィルムはタックが低く抑えられているため、インフレーション成形法において袋状体から2枚のフィルムを製膜しやすい。このため、インフレーション成形法を用いたガラス接着用フィルムの生産効率を高めることができる。
【0088】
本発明のガラス接着用フィルムは、無延伸フィルムでもよいが、フィルムの製造工程において一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸を施してもよい。ただし、後述するように包装材の用途としては、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0089】
(包装材)
上述したガラス接着用フィルムは、ガラス貼合用の包装材として用いることができる。本発明は、上述したガラス接着用フィルムを含む包装材に関するものである。また、本発明は、変性ポリオレフィンを含み、26℃における貯蔵弾性率が240MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材に関する。さらに、本発明は、変性ポリオレフィンを含み、23℃における複合弾性率が250MPa以上であるシール層を有するガラス接着用フィルムを含む、包装材に関する。
【0090】
例えば、本発明のガラス接着用フィルムを蓋材として利用することができる。この場合、ガラス容器に蓋材を熱溶着(ヒートシール)することで、ガラス容器を密閉して包装体を得ることができる。容器としては、ガラス製のカップやトレーなどを挙げることができる。
【0091】
本発明の包装材は、上述したガラス接着用フィルムからなるものであってもよい。また、本発明の包装材は、上述したガラス接着用フィルムに他の層を積層した積層フィルムであってもよい。この場合、他の層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン)、ポリメチルペンテン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等を用いたフィルムを挙げることができる。また、他の層として、アルミニウムや鉄等の金属を含む層を設けてもよい。このような層は蒸着層であってもよいが、アルミニウムや鉄等の金属を含むフィルムをラミネートしたり接着剤等を用いて接着したりすることで設けられるものであってもよい。包装材において、他の層を設けることにより、包装材の強度や耐熱性を高めたり、用途に応じた機能を付与したりすることができる。
【0092】
図2は、包装材の一実施形態を説明する断面図である。
図2に示されるように、包装材200は、シール層10、支持層20(中間層20と外層24)及びアルミニウム層30をこの順で積層してなるものであってもよい。なお、図示はしていないが、各層の間には、接着層や機能層が設けられていてもよい。
【0093】
また、
図3は、包装材の一実施形態を説明する断面図である。
図3に示されるように、包装材200は、例えば、シール層10、支持層20(中間層22と外層24)、アルミニウム層30及びポリエチレンテレフタレート層40をこの順で積層してなるものであってもよい。このように、アルミニウム層30の表面には、さらにポリエチレンテレフタレート層といった他の層が設けられていてもよい。また、アルミニウム層30の表面には、印刷層や塗工層、保護層等が設けられていてもよい。
【0094】
(包装体)
本発明のガラス接着用フィルムは、例えば、上述したガラス接着用フィルムでガラス容器を密閉してなる包装体やガラス容器の胴部周囲に貼合されるラベル等に好適に使用することができる。すなわち、本発明は、上述したガラス接着用フィルムでガラス容器を密閉してなる包装体に関する。また、本発明は上述した包装材でガラス容器を密閉してなる包装体に関する。なお、本明細書において、ガラス容器とは、開口部を有する容器本体がガラスで形成されている容器のことをいうが、容器本体が全てガラスで形成されている容器だけではなく、容器本体の一部がガラス以外の素材で形成されている容器も含まれる。ただし、ガラス容器は、ガラス接着用フィルムにより接着される口縁部がガラスで形成されている容器であることが好ましい。
【0095】
ガラス接着用フィルムが積層体である場合、ガラス容器の口縁部にガラス接着用フィルムのシール層側の面を当接し、熱溶着(ヒートシール)する。熱溶着温度(ヒートシール温度)は特に限定されるものではないが、例えば、180~220℃程度とすることもできる。本発明の包装体は、180~220℃といった比較的低温範囲において熱溶着され、所望の剥離強度を備える。このため、安定した密封性と易開封性とを兼ね備えた包装体を得ることができる。
【実施例0096】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0097】
(単層体:実施例1~3、6~11及び13)
東洋精機製作所社製のラボプラストミル「4C150」に、表3に記載の割合で原料を投入して、220℃、60rpm、空気雰囲気下で5分間溶融混練した。金属製ロールとゴム製ロールとを用いたラミネート成形(220℃)により、溶融混練した樹脂から厚み50μmのフィルムを作製した。
【0098】
(単層体:実施例4、5、12及び比較例1)
東洋精機製作所社製のラボプラストミル「4C150」に、表3に記載の原料を投入して、金属製ロールとゴム製ロールとを用いたラミネート成形(220℃)により、厚み50μmのフィルムを作製した。
【0099】
得られた単層フィルムについて、後述する方法で26℃における貯蔵弾性率及び対ガラス剥離強度を測定し、タック性を評価した。その結果を表3にまとめた。
【0100】
なお、各原料の構成成分は以下のとおりである。
メタロセンPP:メタロセン系ランダムポリプロピレン(プロピレン由来単位96質量%、エチレン由来単位4質量%)、26℃における貯蔵弾性率899MPa
酸変性PP1:酸変性ポリプロピレン(プロピレン由来単位97.5質量%、エチレン由来単位1.3質量%、無水マレイン酸由来単位(変性量)1.2質量%)、26℃における貯蔵弾性率1159MPa
酸変性PP2:酸変性ポリプロピレン(プロピレン由来単位:エチレン由来単位=80.3:19.7(質量%比)、酸変性PP2中の無水マレイン酸由来単位(変性量)0.03質量%)、26℃における貯蔵弾性率740MPa
酸変性PP3:酸変性ポリプロピレン(プロピレン由来単位:エチレン由来単位=74:26(質量%比)、酸変性PP3中の無水マレイン酸由来単位(変性量)0.11質量%)、26℃における貯蔵弾性率670MPa
酸変性PP4:酸変性ポリプロピレン(プロピレン由来単位:エチレン由来単位=97:3(質量%比)、酸変性PP4中の無水マレイン酸由来単位(変性量)1.7質量%)、26℃における貯蔵弾性率890MPa
酸変性PP5:酸変性ポリプロピレン(プロピレン由来単位:エチレン由来単位=100:0(質量%比)、酸変性PP5中の無水マレイン酸由来単位(変性量)2.4質量%)、26℃における貯蔵弾性率1620MPa
酸変性PE:酸変性ポリエチレン(エチレン由来単位:1-ブテン由来単位=93:7(質量%比)、酸変性PE中の無水マレイン酸由来単位(変性量)0.06質量%)、26℃における貯蔵弾性率514MPa
ニュクレルN1108C:エチレンメタクリル酸共重合体(エチレン由来単位89質量%、メタクリル酸由来単位11質量%)、26℃における貯蔵弾性率220MPa
【0101】
(Tダイ共押出積層体:実施例1~5及び12)
外層及び中間層の形成には、下記の表1に示したメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体:m-LLDPE)を用いた。シール層の形成には、下記表4に示した配合の樹脂組成物を用いた。3種3層のTダイ共押出製膜機に各層を構成する原料を投入して溶融混練し、各層の厚みが表4に記載のとおりとなるようにそれぞれ共押出して製膜して、厚さ30μmの積層体を得た。なお、各層の溶融混練条件は下記のとおりとした。
外層:スクリュー径Φ40mm単軸、温度190~200℃、スクリュー回転数14rpm
中間層:スクリュー径Φ32mm単軸、温度190~200℃、スクリュー回転数550rpm
シール層:スクリュー径Φ32mm単軸、温度190~210℃、スクリュー回転数330rpm
【0102】
【0103】
得られた積層体について、後述する方法で対ガラス剥離強度及びシール層の複合弾性率を測定し、剥離状態を評価した。なお、対ガラス剥離強度の測定には、以下の方法で作製したヒートシール体を用いた。その結果を表4にまとめた。
【0104】
(剥離強度測定用のアルミ積層体の作製)
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ7μmのアルミニウムフィルム及び上記で得られた単層体又は積層体をこの順で重ね合わせ、それぞれの層間を、エステル系接着剤TM569(東洋モートン社製)を介してドライラミネートした。なお、積層体をラミネートする際には、外層の表面に接着剤を付与し、アルミニウムフィルムと貼合した。その後、45℃で48時間エージング処理を行い、アルミ積層体を得た。
【0105】
(剥離強度測定用のヒートシール体の作製)
ガラスシート(厚み2.5mm)に、上記により得られたアルミ積層体のシール層側が接するように重ね合わせ、シール温度220℃、シール圧力0.05MPa、シール時間5秒、シールバー幅5mmでヒートシールし、ヒートシール体を得た(
図4)。
図4に示されるように、ヒートシール体は、作製したアルミ積層体200のシール層側とガラスシート301とを重ね合わせ、TD方向に延びる端辺から1cmの箇所をMDに直交する方向に幅5mmで上記条件にてヒートシールしたものである。
【0106】
(測定及び評価方法)
<樹脂の物性>
樹脂の結晶融解温度は、JIS K7121:2012に準じて測定された、結晶融解ピークのピークトップが示す温度である。
樹脂の降温結晶化温度は、JIS K7121:2012に従った測定した。
樹脂の結晶融解熱量は、JIS K7122:2012に従った測定した。
樹脂の密度は、JIS K7112:1999 A法に準じて測定された値である。
樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、190℃、2.16kg荷重、もしくは、230℃、2.16kg荷重で測定した。
【0107】
<貯蔵弾性率>
実施例1~3、6~11及び13は原料を溶融混錬した後の樹脂組成物を、実施例4、5、12及び比較例1は原料ペレットを、小型卓上プレス機(井本製作所社製)を用いて温度220℃、圧力20MPaでプレスし、厚さ500μmのシートを作製した。得られたシートから幅4mm、長さ8cmの試験片を作製し、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、測定モードを引張で、標線間長2cm、周波数10Hz、歪み0.1%、温度範囲-50~200℃、加熱速度3℃/分で昇温し、26℃における貯蔵弾性率を測定した。なお、試験片となるシートに方向性がある場合には、フィルムの樹脂流れ方向(押出成形の場合は押出方向)に直交する方向(TD方向)について測定すればよい。ラミネート成形やプレス成形等のように方向性がない場合には、一方向のみ測定すればよい。
【0108】
<複合弾性率>
実施例1A、実施例2~4、実施例5A及び実施例12Aの積層体から大きさ20mm×20mm角に切り取り、得られた試験片をガラス基板に木工ボンドで貼り付けた。この際、外層がガラス基板に接するように貼合した。ガラス基板に貼合された試験片のシール層に対して、ナノインデンター装置「ハイジトロンTI980(BRUKER社製)」を用い、室温条件(23℃)において複合弾性率を測定した。具体的には、得られた試験片のシール層側から、ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針を用いて押し込み試験を行い、変位-荷重ヒステリシス曲線を得た。押し込み試験は、探針の接触深さが100nm程度となるように最大荷重を設定して、表2に記載の条件で実施した。
ナノインデンターでの押し込み試験のプロセスは下記の通りである。
(1)試験片表面を検知するため、所定の荷重(実施例4は0.5μN、それ以外は2μN)を検知するまで探針を試料片表面に近付ける。
(2)荷重が0μNになるまで探針を試料から引き離す。この際、試料片表面が探針と接していると負の荷重が検知される。
(3)試料への探針の押し込みと引き抜きを行う。
なお、表2に記載したLift Heightとは、上記(2)において、荷重が確実に0μNになっている探針の引き離し距離である。引き離し距離がLift Heightの値に到達した時に荷重が0μNになってもよいが、引き離し距離がLift Heightの値に到達する前に荷重が0μNになることが好ましい。
上記の方法で得られた変位-荷重ヒステリシス曲線に対して、装置付帯のソフトウェア(Triboscan10.2.0.2)で数値処理を行い、複合弾性率を算出した。該試験を40か所(10μm間隔)で行って得られた複合弾性率の平均値を複合弾性率とした。
【0109】
【0110】
<剥離強度>
実施例及び比較例で得た単層体及び積層体の対ガラス剥離強度は、オリエンテック社製引張試験機テンシロン「RTM-100」を用いて測定した。具体的には、実施例及び比較例で得た単層体及び積層体を用いて上記した剥離強度測定用のヒートシール体を作製した。得られたヒートシール体から、
図4に示すように縦6cm×横15mmの短冊状体を5個切り出し、真ん中の3個のサンプル(n=3)を測定に使用した。その後、それぞれのサンプルを
図4のX方向から開いて端部を試験機のチャックに取り付け、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離試験を行い、剥離強度(N/15mm)を測定した。なお、測定は、室温条件(23℃)で行った。
【0111】
<タック性評価>
実施例及び比較例で得たフィルム(単層体)の端辺がかさなるように2つ折りし(180°折り曲げ)、以下の基準でタック性を評価した。なお、測定は、室温条件(23℃)で行った。
A:折り曲げたフィルムが剥がれ速やかに元の状態に戻る(タックが低い)。
B:折り曲げたフィルムが剥がれて元に戻るまで2~3秒要する。
C:折り曲げたフィルムが4秒間以上剥がれない(タックが高い)。
【0112】
<剥離状態の評価(ガラス側の剥離痕)>
剥離強度測定後のヒートシール体について、ガラス側の剥離状態を目視で観察した。剥離痕が確認されるものを「有」、剥離痕が確認されないものを「無」と評価した。「無」のものがリサイクル性の観点から好ましいと考えられる。
【0113】
【0114】
*1:190℃、2.16kg荷重で測定
*2:230℃、2.16kg荷重で測定
*3:180℃、2.16kg荷重で測定
【0115】
【0116】
表中「-」は測定を行っていないことを示す。
【0117】
比較例のシール層を構成する樹脂の26℃における貯蔵弾性率は240MPaを下回っており、フィルムのタックが高かった。
一方、実施例では、シール層を構成する樹脂の26℃における貯蔵弾性率は240MPa以上であり、タックが低いフィルムが得られた。フィルムのタックが低い場合、後述するようなインフレーション成形において製膜性が高まる。また、実施例で得られたフィルムは、ガラスに対して、良好な密着性と易剥離性を発揮する剥離強度が得られていた。さらに、実施例で得られたフィルムは、ガラスに剥離痕が残ることが抑制されていた。
【0118】
(インフレーション成形積層体:実施例3、4、8、11及び13)
外層及び中間層の形成には、上記の表1に示したメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体:m-LLDPE)を用いた。シール層の形成には、下記表5に示した配合の樹脂組成物を用いた。3種3層のインフレーション成形製膜機に各層を構成する原料を投入して溶融混練し、各層の厚みが表5に記載のとおりとなるようにそれぞれ共押出して製膜して、厚さ30μmの積層体を得た。なお、各層の溶融混練条件は下記のとおりとした。
外層:スクリュー径Φ50mm単軸、温度180℃
中間層:スクリュー径Φ55mm単軸、温度180℃
シール層:スクリュー径Φ50mm単軸、温度190℃
【0119】
(剥離強度測定用のアルミ積層体の作製)
Tダイ共押出積層体と同様の条件で、アルミ積層体を作製した。
【0120】
(剥離強度測定用のヒートシール体の作製)
シール温度を180、200、220℃とし、シール時間を1.0秒、3.0秒、5.0秒とした以外はTダイ共押出積層体と同様の条件で、ヒートシール体を作製した。
【0121】
<剥離強度>
Tダイ共押出積層体と同様の条件で、剥離強度を測定した。
【0122】
<剥離状態の評価(ガラス側の剥離痕)>
Tダイ共押出積層体と同様の条件で、ガラス側の剥離状態を目視で観察した。
【0123】
【0124】
実施例で得られたインフレーション成形積層体においては、インフレ製膜性が良好であり、インフレーション成形工程で得られる袋状体から2枚のフィルムを容易に製膜することができた。
【0125】
また、インフレーション成形積層体についてもTダイ共押出積層体と同様に、ガラスに対して、良好な密着性と易剥離性を発揮する剥離強度が得られていた。また、シール時間を短くした場合及びシール温度を低くした場合についても、ガラスに対して、良好な密着性と易剥離性を発揮する剥離強度が得られていた。
【0126】
また、実施例で得られた積層体を含む蓋材をカップ型のガラス容器に貼合し密閉したり、実施例で得られた積層体を含むラベルをガラス容器の胴部周囲に貼合したりする場合、良好な接着性を発揮する一方で、易剥離が可能であり、かつ剥離後には剥離痕が観察されない蓋材やラベルが得られると考えられる。